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  • 特開-排土治具、排土装置、及び排土方法 図1
  • 特開-排土治具、排土装置、及び排土方法 図2
  • 特開-排土治具、排土装置、及び排土方法 図3
  • 特開-排土治具、排土装置、及び排土方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177622
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】排土治具、排土装置、及び排土方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20221124BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20221124BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20221124BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E01D22/00 B
E02D27/32 A
E02D27/34 Z
E01D19/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084020
(22)【出願日】2021-05-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 ▲靖▼
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【テーマコード(参考)】
2D046
2D059
【Fターム(参考)】
2D046DA03
2D046DA11
2D059AA03
2D059GG40
(57)【要約】
【課題】補強鋼板外部の土砂を引き込んでしまうという問題を解消して、最終段階の排土作業の作業性が良好で、隅角部や補強鋼板最下部の土砂もきれいに排土することができる排土装置の排土治具、排土装置、及び排土方法を提供する。
【解決手段】柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、この補強鋼板と既設構造物の隙間の土砂を排土する排土装置の排土治具において、上下端が開放された筒状の排土治具本体を具備し、この排土治具本体の側面板に、圧縮気体を注入する注入口を形成するとともに、前記排土治具本体の既設構造物側となる正面板に、上下方向に土砂吸引用の吸引欠込みを形成し、反対側となる背面板に、下端が前記吸引欠込みの上端より下方へ下がった直線状として欠込みを形成しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、この補強鋼板と前記既設構造物の隙間の土砂を排土する排土装置の排土治具であって、
上下端が開放された筒状の排土治具本体を備え、
この排土治具本体の側面板には、圧縮気体を注入する注入口が形成されているとともに、
前記排土治具本体の既設構造物側となる正面板には、上下方向に開口した土砂吸引用の吸引欠込みが形成され、反対側となる背面板には、下端が前記吸引欠込みの上端より下方へ下がった直線状となっており欠込みが形成されていないこと
を特徴とする排土装置の排土治具。
【請求項2】
前記排土治具本体の側面板は、前記注入口が形成された位置より下方が外側に折れ曲がり拡幅していること
を特徴とする請求項1に記載の排土装置の排土治具。
【請求項3】
前記排土治具本体は、前記補強鋼板内の土砂を外部へ排出する土砂流体排出手段が接続される上部が複数に分かれていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の排土装置の排土治具。
【請求項4】
前記吸引欠込みは、正面板から側面板に亘り形成されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の排土装置の排土治具。
【請求項5】
柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、当該補強鋼板と既設構造物の隙間の土砂を排土する排土装置であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の排土装置の排土治具と、前記注入口に接続された圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、前記排土治具本体の上端に接続された土砂流体排出手段と、を備えること
を特徴とする排土装置。
【請求項6】
柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、当該補強鋼板と既設構造物の隙間の土砂を排土する排土方法であって、
請求項5に記載の排土装置の前記排土治具を用いて、前記補強鋼板の前記既設構造物側の最下部の土砂を前記吸引欠込みから吸引して排土すること
を特徴とする排土方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアリフト効果を利用した排土装置、その排土治具、及びそれらを用いた排土方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋脚やその基礎などの柱状の既設構造物を補強する補強工法としては、予め既設構造物の周りに仮締切体を設置してドライエリアを構築した後、土砂を掘削して補強物を巻き立てるRC巻立て工法や鋼板巻立て工法が行われていた。しかし、補強工事と直接関係ない仮締切体などを設置する仮設工事に時間と費用がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、既設橋脚・基礎などの柱状の既設構造物を補強するために補強鋼板を地中に圧入して補強する補強鋼板圧入工法が開発されるに至った。この補強鋼板圧入工法は、仮設締切体を設置して掘削する従来のRC巻立て工法や鋼板巻立て工法と比べて、施工性・経済性に優れていることから近年、柱状のRC構造物の補強工法の主流となっている。
【0004】
この補強鋼板圧入工法における補強鋼板内の土砂の排土方法としては、鋼管内の土砂混じりの水に圧縮空気やガスを吹き込んで管内の気泡混合液の見掛け比重を外部の液よりも小さくすることで相対的な揚力を発生させて排土するエアリフト工法などが知られている。しかし、単純にエアリフト工法を適用しただけでは、橋脚などの構造物と補強鋼板との間の狭隘な隙間においては、排土管の管径が限定されるため、排土効率が悪く、施工性も悪いという問題があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、柱状構造物外周の環状空間からのエアリフト効果を用いた排土装置において、前記環状空間の水位を所定水位に保つ水供給手段と、前記環状空間をその下部の連通を許容して所定間隔に仕切り縦方向に伸びる排出流路を形成する着脱自在な仕切部材と、排出流路の底部に向けて空気又は空気と水の混合流体を下向きに噴射する流体供給管と、仕切部材の最下端部より上部位置で水平又は斜め上向きに高圧空気を噴射する高圧空気供給管とを前記排出流路内に配置したるエアリフト効果を用いた排土装置が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0011]~[0021]、図面の図2図3等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエアリフト効果を用いた排土装置は、排土効率は改善されているが、圧入が完了した補強鋼板の下端から補強鋼板外部の土砂を引き込んでしまい、最終段階の排土掘削の作業性が良好ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-328385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、補強鋼板外部の土砂を引き込んでしまうという問題を解消して、最終段階の排土作業の作業性が良好で、隅角部や補強鋼板最下部の土砂もきれいに排土することができる排土装置、その排土治具、及び排土方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る排土装置の排土治具は、柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、この補強鋼板と前記既設構造物の隙間の土砂を排土する排土装置の排土治具であって、上下端が開放された筒状の排土治具本体を備え、この排土治具本体の側面板には、圧縮気体を注入する注入口が形成されているとともに、前記排土治具本体の既設構造物側となる正面板には、上下方向に開口した土砂吸引用の吸引欠込みが形成され、反対側となる背面板には、下端が前記吸引欠込みの上端より下方へ下がった直線状となっており欠込みが形成されていないことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る排土装置の排土治具は、請求項1に係る排土装置の排土治具において、前記排土治具本体の側面板は、前記注入口が形成された位置より下方が外側に折れ曲がり拡幅していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る排土装置の排土治具は、請求項1又は2に係る排土装置の排土治具において、前記排土治具本体は、前記補強鋼板内の土砂を外部へ排出する土砂流体排出手段が接続される上部が複数に分かれていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る排土装置の排土治具は、請求項1ないし3のいずれかに係る排土装置の排土治具において、前記吸引欠込みは、正面板から側面板に亘り形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る排土装置は、柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、当該補強鋼板と既設構造物の隙間の土砂を排土する排土装置であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の排土装置の排土治具と、前記注入口に接続された圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、前記排土治具本体の上端に接続された土砂流体排出手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る排土方法は、柱状の既設構造物の周りに補強鋼板を圧入する際に、当該補強鋼板と既設構造物の隙間の土砂を排土する排土方法であって、請求項5に記載の排土装置の前記排土治具を用いて、前記補強鋼板の前記既設構造物側の最下部の土砂を前記吸引欠込みから吸引して排土することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1~6に係る発明によれば、排土治具本体の既設構造物側には、土砂吸引用の吸引欠込みが形成され、反対側には、下端が下方に延長されて欠込みが形成されていないので、補強鋼板外部の土砂を引き込んでしまうという問題を解消することができる。このため、鋼板最下部の最終段階の排土作業の作業性が良好となっている。また、請求項1~6に係る発明によれば、上昇流を発生させる領域を排土治具で覆うため、局所的にエアリフト効果を作用させることができ、より強力な揚力を発生させて、排土治具本体の下端や吸引欠込みから吸引することがきる。このため、比重が重い礫も排出できるとともに、隅角部や補強鋼板最下部の土砂もきれいに排土することができる。
【0016】
特に、請求項2に係る発明によれば、排土治具本体の側面が拡幅しているので、注入口に接続される治具が邪魔にならずに、補強鋼板の補剛材の際まで排土治具本体を寄せることができる。このため、補強鋼板内の入隅に溜まった土砂もきれいに排土することができる。
【0017】
特に、請求項3に係る発明によれば、土砂流体排出手段が接続される上部が複数に分かれているので、排土量に影響するサクションホースやサニーホースなどの土砂流体排出手段の全体の断面積を変えないで、その径を小さくすることができる。このため、特注しないで必要な数量を安価に入手可能な市販のサクションホースやサニーホースなどを用いて所望の排土量を達成することができる。
【0018】
特に、請求項4に係る発明によれば、吸引欠込みが正面板から側面板に亘り形成されているので、補強鋼板内の入隅となる補強鋼板の補剛材の近傍から直接吸引することが可能となり、さらに隅角部や補強鋼板最下部の土砂もきれいに排土することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る排土装置を用いて排土する耐震補強工事の概要を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る排土装置を用いて排土している状態を既設構造物から補強鋼板方向に見た正面図である。
図3図3は、同上の排土装置を用いて排土している状態を示す平面図である。
図4図4は、同上の排土装置を用いて排土している状態を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る排土装置、排土治具、及び排土方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1図4を用いて、本発明の実施形態に係る排土装置、その排土治具、及びこれらを用いた排土方法について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る排土装置1を用いて排土する耐震補強工事の概要を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る排土装置1を用いて排土している状態を既設構造物から補強鋼板方向に見た正面図であり、図3は、図2の排土装置1を用いて排土している状態を示す平面図である。そして、図4は、図2の排土装置1を用いて排土している状態を示す鉛直断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る排土装置1は、柱状の既設RC構造物(既設構造物)である橋脚P1に補強鋼板S1を巻き立て、圧入し、無収縮モルタルなどの経時硬化材により一体化することによって耐震補強を行う補強鋼板圧入工法の排土作業に好適に用いられる。
【0023】
なお、この補強鋼板圧入工法では、補強対象の既設RC構造物である橋脚P1から反力をとって橋脚P1の側面にアンカーを用いて固定された複数台の圧入ジャッキPJで加圧リングPRを介して補強鋼板S1を地盤に圧入する。その後、補強鋼板S1を溶接接合又は機械的に組み立ててロット(段)を追加しながら、順次補強鋼板S1の組立・圧入を繰り返して地盤に圧入する。そして、ウォータージェットを併用しつつ排土装置1を用いて、排土治具2内の限定された範囲に局所的にエアリフト効果を発揮させて、補強鋼板S1と橋脚P1との隙間の土砂混じりの流水(流体)に激しい上昇流を生み出し、礫を含んだ土砂を排土する。
【0024】
<排土装置>
本実施形態に係る排土装置1は、図2図4に示すように、排土治具本体20を基体とする排土治具2と、この排土治具2内に圧縮気体である圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段3と、排土治具本体20の上端に接続された土砂流体排出手段4と、を備える。
【0025】
(排土治具)
排土治具2は、上下端が開放された概略が角筒状の排土治具本体20を基体とし、この排土治具本体20内に、局所的にエアリフト作用を起こす治具である。但し、図2図3に示すように、本実施形態に係る排土治具本体20は、中間部2bの水平断面形状が幅方向に長くなった長方形状となっており、図示形態では、橋脚P1と補強鋼板S1との隙間D1(図示形態では、D1=94mm)以下の奥行90mm程度、幅W1=235mm程度となっている。また、排土治具本体20の上部2aは、幅方向に沿って三叉に分かれた3本の円筒体21からなり、上端部の開口は、3つの円形開口22に分かれている(図3参照)。そして、排土治具本体20の下部2cは、側面板が途中で外側に折れ曲がり正面視で左右にテーパー状徐々に拡幅されて下端開口23の幅W2が中間部2bの幅W1より広くなっており、図示形態では、W2=342mmとなっている。
【0026】
また、図2に示すように、この排土治具本体20の左右一対の側面板には、圧縮空気供給手段3から圧縮空気を注入する注入口24がそれぞれ形成されている。
【0027】
そして、図2に示すように、注入口24には、後述の圧縮空気供給手段3の接続金具32及び送気管31が装着されている。前述の下端開口の幅W2と中央部の幅W1との幅の差は、両サイドの注入口24に装着された接続金具32と送気管31の突出分より大きくなっている。このため、図3に示す補強鋼板S1の補剛材Stの際まで、突出した接続金具32や送気管31が障害とならずに、補剛材Stの際まで排土治具本体20を寄せることができる。このため、補強鋼板S1内の入隅に溜まった土砂もきれいに排土することができる。
【0028】
また、図2に示すように、排土治具本体20の橋脚P1側(既設構造物側)となる正面板には、上下方向に開口した土砂吸引用の吸引欠込み25が形成されている。このため、図4に示すように、排土治具本体20内で発生したエアリフト効果の上昇流により、正面板に形成された吸引欠込み25を通じて既設RC構造物側から礫混じりの土砂を勢いよく吸引して排土することができる。
【0029】
一方、反対側の排土治具本体20の背面板には、吸引欠込み25が形成されていない。このため、背面板側、即ち、補強鋼板S1の外側から土砂Sdを引き込むおそれが低減される(図4参照)。よって、従来技術で述べた圧入が完了した補強鋼板S1の下端から補強鋼板S1外部の土砂Sdを引き込んでしまい、最終段階の排土掘削の作業性が良好ではないという問題を解消することができる。
【0030】
なお、吸引欠込み25が正面板にのみ形成されている場合を例示して説明したが、吸引欠込み25が側面板の橋脚P1側よりの一部に亘って設けられていてもよい。このように、吸引欠込み25が側面板の一部に及んでいることにより、補強鋼板S1内の入隅となる補強鋼板S1の補剛材Stの近傍から直接吸引することが可能となり、図4に示す橋脚P1のフーチングF1上の補強鋼板S1の最下部に堆積した隅角部の土砂もきれいに排土することができるからである。
【0031】
また、図示実施形態では、排土治具本体20は、高さH1=750mmとかなり小型でコンパクトなものとなっている。このため、空頭制限(上空制限)がある橋梁下でも揚重等が容易である。しかも、排土治具本体20を小型化することで排土治具2全体を軽量化することができ、人力での横移動が容易となり、施工性が向上する。
【0032】
(圧縮空気供給手段:圧縮気体供給手段)
圧縮空気供給手段3は、高い圧力をかけて空気を圧縮し送り出すコンプレッサー30と、このコンプレッサー30と排土治具本体20の側面板に形成された前述の注入口24とを繋ぐ送気管31と、この送気管31と注入口24とを接続する接続金具32など、から構成されている。
【0033】
勿論、本発明に係る圧縮気体供給手段は、圧縮空気を供給するものに限られず、他の圧縮気体を供給するものであっても構わない。また、圧縮空気供給手段3としては、前述の他、レシーバータンクを設けてもよい。連続的にエアリフトで土砂流体を排出する際に作業性が向上するからである。
【0034】
(土砂流体排出手段)
土砂流体排出手段4は、図2図4に示すように、主に、排土治具本体20の三叉に分かれた前述の3本の円筒体21に装着された3本のサクションホース40から構成されている。このサクションホース40は、螺旋状の補強材で耐圧力が強化されて内周面が滑らかな円筒状となっており、外周面が前記補強材で補強されて凹凸が形成されて可撓性に富んだホースである。また、この土砂流体排出手段4は、礫混じりの土砂流体を補強鋼板S1の外部へ排出する機能を有している。
【0035】
ここで、前述のように、排土治具本体20の上部2aは、排土治具本体20の幅方向に沿って複数に分かれた小径の円筒体21となっているので、排土量に影響するサクションホースの全断面積を変えないで、サクションホースの径を小さくすることができる。このため、特注しないで必要な数量を安価に入手可能な市販のサクションホースを用いて所望の排土量を達成することができる。
【0036】
なお、土砂流体排出手段4として、サクションホース40を例に挙げて説明したが、サニーホースなど他の可撓性のあるフレキシブルな管体からなる土砂流体排出手段してもよいことは云うまでもない。
【0037】
また、図3図4に示すように、サクションホース40の外径は、橋脚P1と補強鋼板S1との隙間D1より小さいものとなる。しかし、排土装置1は、エアリフト効果を排土治具本体20内の限られた範囲で作用させるので、強力な上昇流を発生させることができ、サクションホース40を通過可能な礫であれば排出することが可能である。
【0038】
その上、排土治具本体20は、下部2cが補強鋼板S1の横方向に沿って幅広な形状となっている。このため、サクションホース40を通過できない大きさの礫も一定程度、排土治具本体20内に集積することができる。このため、従来のパイプによるエアリフト工法でパイプに詰まった礫を毎回一本釣りの要領で水上に引き上げて排除し、再度パイプを降下させる場合と比べて、治具を水上に引き上げる回数が少なくて済み、その分作業効率が向上する。
【0039】
以上説明した本発明の実施形態に係る排土装置、その排土治具、及びこれらを用いた排土方法によれば、吸引欠込み25が補強鋼板S1の反対側となる構造物側に形成されているので、補強鋼板S1外部の土砂Sdを引き込んでしまうという問題を解消することができる。このため、図4に示す橋脚P1のフーチングF1上の補強鋼板S1の最下部に堆積した土砂Sdもきれいに排土することができるとともに、最終段階の排土作業の作業性が良好となっている。
【0040】
その上、本実施形態に係る排土装置、排土治具、排土方法によれば、エアリフトを発生させる領域を排土治具2で覆うため、局所的にエアリフト効果を作用させることができ、より強力な上昇流を発生させて、排土治具本体20の下端開口23や吸引欠込み25から補強鋼板S1と橋脚P1との隙間D1の礫混じりの土砂を吸引することがきる。このため、比重が重い礫も排出できるとともに、隅角部の土砂もきれいに排土することができ、最終段階の排土作業も効率よく行うことができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態に係る排土装置1、排土治具2、それらを用いた排土方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0042】
特に、排土治具2として水平断面が長方形状の概略角筒状のものを例に挙げて説明したが、図1で示したように、既存の柱状構造物が円柱状や、又は小判型のものであった場合には、柱状の既設構造物の壁面形状に合わせて水平断面が円弧状の筒体とすることが好ましい。補強鋼板S1と補剛材Stとの入隅の形状が矩形ではなく、円弧状となっており、円弧状の筒体の方が、補強鋼板S1と橋脚P1(既設構造物)との隙間D1内の土砂を効率よく排土できるからである。
【符号の説明】
【0043】
1:排土装置
2:排土治具
2a:上部
2b:中間部
2c:下部
20:排土治具本体
21:円筒体
22:円形開口
23:下端開口
24:注入口
25:吸引欠込み
3:圧縮空気供給手段(圧縮気体供給手段)
30:コンプレッサー
31:送気管
32:接続金具
4:土砂流体排出手段
40:サクションホース(土砂流体排出手段)
P1:橋脚(既設構造物)
F1:フーチング
G1:地盤
Sd:(鋼板外部の)土砂
GA:グランドアンカー
PJ:圧入ジャッキ
PM:圧入架台
PR:加圧リング
S1:補強鋼板
St:補剛材
D1:隙間
図1
図2
図3
図4