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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177658
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】キャップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20221124BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20221124BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B29C45/17
B65D47/20 111
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084074
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】505430975
【氏名又は名称】株式会社ヤシマ精工
(71)【出願人】
【識別番号】508226171
【氏名又は名称】株式会社グラセル
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大軒 興二
(72)【発明者】
【氏名】谷村 敏昭
【テーマコード(参考)】
3E084
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3E084AB01
3E084AB06
3E084CA01
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA02
3E084FB01
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB06
3E084LA18
3E084LD13
4F202AH57
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK52
4F202CK74
4F206AH57
4F206JA07
4F206JM05
4F206JN25
4F206JQ81
4F206JQ90
4F206JT07
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】内容物の吐出に際して液切れのよいスリットバルブ付きキャップを一工程で製造することができる方法を提供する。
【解決手段】スリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えたキャビティに溶融樹脂を射出充填する一次射出成形により一次射出成形品を得、前記一次射出成形品が固化する前に一次射出成形のときの射出充填圧とは異なる圧力をスリットバルブ部分に付加する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体と、前記キャップ本体の開放側の開口部に設けられて容器内圧の上昇により開放されるスリットを有するスリットバルブとの2部品から構成される、容器内の内容物を吐出させるスリットバルブ付きキャップの製造方法であって、前記スリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えたキャビティに溶融樹脂を射出充填する一次射出成形により一次射出成形品を得、前記一次射出成形品が固化する前に一次射出成形のときの射出充填圧とは異なる圧力をスリットバルブ部分に付加することを特徴とするスリットバルブ付きキャップの製造方法。
【請求項2】
キャップ本体が蓋体を備えることを特徴とする請求項1に記載のスリットバルブ付きキャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャップの製造方法に関し、特に、高粘度、あるいは中粘度の液体を収納する可撓性を有する容器に嵌合して用いられ、内容物を注出後に、液垂れを防止するキャップであって、かつ、一体に成形されたキャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシング、ソース、ケチャップなどの液体調味料や、オリーブオイルなどの食用油、蜂蜜などの高粘度液体食品、シャンプー、リンス、コンデショナーなどのトイレタリー、台所用液体洗剤など、中粘度や高粘度の液体は、収納する容器から注出した後、いつまでも内容物が糸を引くように注出口から出続いて、液切れできない問題があった。液切れしないと、内容物は容器の周囲に垂れて、汚してしまい、カビの発生や害虫が繁殖し易いなど、衛生上の問題も発生していた。
【0003】
そこで、中粘度や高粘度の液体を収納する容器の内容物の適量吐出が可能でかつその吐出に際して良好な液切れを可能とするスリットタイプのバルブ(以下スリットバルブと記載)が使用されている。
【0004】
スリットバルブは通常、十字状の切り込みが形成されており、容器の胴部を加圧して内圧を高め、バルブの中央域に設けたスリットを瞬時に開放させることにより内容物を適量吐出することができるようになっている。そして、このスリットバルブは、内容物として、クリームのような粘度の高いものを用いる場合でも、オイル系の化粧料や植物油等の比較的粘度の低いものを用いる場合でも、内容物を吐出させた際の切れが良好となる点で好ましく、様々なスリットバルブを備えたキャップが公知である。
【0005】
たとえば、特許文献1は、このようなスリットバルブを備えた構造体を開示する。この公報に開示されたスリットバルブ構造体は、所定値よりも高い圧力によって開放されるスリットを有するスリットバルブと、このスリットバルブを導入保持する開口を有し該スリットバルブを容器本体の口部に取り付けるためのスリットバルブ保持部材からなるスリットバルブ構造体において、前記スリットバルブはストレートな形状の内壁を有するものであり、前記スリットバルブ保持部材は、前記スリットバルブのスリットを全周にわたって包囲し、前記スリットから排出される内容物の飛散を防止する飛散防止壁を備えるものであることを特徴とする。
【0006】
ところが、特許文献1に開示されたスリットバルブ構造体は、スリットバルブ保持部材を備えたキャップ本体、スリットバルブおよびバルブ押さえの3部品により構成されている。そのため、この特許文献1に開示されたスリットバルブ構造体においては、比較的小さな3つの部品を別々に製造して、組み付ける必要がある。このため、このスリットバルブ構造体の製造工数が大きくなったり製造コストが高くなったりする可能性がある。
【0007】
そこで、部品点数を少なくして製造コストの増大を抑えることを目的とした、スリットバルブ付きキャップが、特許文献2ないし5に開示されている。図8図9(a)(b)、図10-11、図12-13に、それぞれ特許文献2、3、4、5に開示されたスリットバルブ付きキャップを示す。
【0008】
図8に示すスリットバルブ付きキャップ21は、蓋体22とキャップ本体23とがヒンジ部24を介して連結され、このスリットバルブ付きキャップ21は、蓋体22と、キャップ本体23と、キャップ本体23の開放側の開口部25に設けられて容器内圧の上昇により開放されるスリット27を有するスリットバルブ26とを有し、リブ28とスリットバルブ26は融着により接合一体化される。
【0009】
図9(a)に示すスリットバルブ付きキャップ31は、液止弁32と、注出口本体33と、蓋部34とを有し、液止弁32と、注出口本体33はインサート成形によって一体化され、蓋部34はヒンジ部35を介して注出口本体33と繋がり、図9(b)に示すように、液止弁32は中央で交差する2本のスリット36で分割された4つの液止弁体37を有する。
【0010】
図10に示すスリットバルブ付きキャップ41は、キャップ本体42と、キャップ本体42の天壁部43を開閉する蓋体44と、キャップ本体42と蓋体44とを連結するヒンジ部45とを備え、キャップ本体42、蓋体44およびヒンジ部45が一体に形成され、図11に示すように、天壁部43の薄肉部46に破断可能な弱化ライン47が形成され、薄肉部46を弾性変形することにより弱化ライン47が破断されて、天壁部43を上下方向に貫く開閉可能なスリットが形成される。
【0011】
図12に示すスリットバルブ付きキャップ51は、天壁部52に内容物の注出孔53が形成された有頂筒状のキャップ本体54と、注出孔53を開放可能に閉塞するスリット弁55と、天壁部52を開閉する蓋体56と、蓋体56とキャップ本体54とを連結するヒンジ部57とを備え、キャップ本体54、スリット弁55、蓋体56及びヒンジ部57は一体に形成される。スリット弁55は、図13に示すように、注出孔53を開放可能に閉塞する複数の閉塞体58と、閉塞体58の基端部とキャップ本体54とを連結するヒンジ部59とを備えている。
【0012】
特許文献2の段落[0025]には、「スリット330は、たとえば、キャップ本体120の開口部200とスリットバルブ300とが一体化された後にスリットバルブ300の中心付近が十字形状に切断されることにより設けられる。このスリット330を設けるための切断処理は射出成形機内で行うようにしても構わない。」と記載されており、図8に示すスリットバルブ付きキャップ21は、スリットを設けるための処理を余分に行う必要がある。
【0013】
特許文献3の段落[0025]には、「液止弁21は、上記のように、注出口本体と一体的に製造できるが、液止弁21のスリット211は、インサート射出成形後、プレスで刃を入れて、加工することも出来る。もちろん、インサート成形する前に、スリットを入れておくことも可能である。・・・インサート成形後、スリットを入れても良いし、インサート成形前にスリットを入れておいても良い。」と記載されており、図9(a)(b)に示すスリットバルブ付きキャップ31も、スリットを設けるための処理を余分に行う必要がある。
【0014】
特許文献4には、破断可能な弱化ライン47をどのように形成するかについて記載されていない。また、特許文献5には、スリット弁55に複数の閉塞体58をどのように形成するかについて記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4145523号明細書
【特許文献2】特開2015-51789号公報
【特許文献3】特開2018-95277号公報
【特許文献4】特開2020-164186号公報
【特許文献5】特開2021-6472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑み、内容物の吐出に際して液切れのよいスリットバルブ付きキャップを一工程で製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の第一発明は、キャップ本体と、前記キャップ本体の開放側の開口部に設けられて容器内圧の上昇により開放されるスリットを有するスリットバルブとの2部品から構成される、容器内の内容物を吐出させるスリットバルブ付きキャップの製造方法であって、前記スリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えたキャビティに溶融樹脂を射出充填する一次射出成形により一次射出成形品を得、前記一次射出成形品が固化する前に一次射出成形のときの射出充填圧とは異なる圧力をスリットバルブ部分に付加することを特徴とする。
【0018】
本願の第二発明は、本願第一発明においてキャップ本体が蓋体を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、一次射出成形品が固化する前に、射出成形型内の圧力を部分的に変えることにより、スリットバルブ付きキャップを一工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの蓋体を閉じた状態を示す透視側面図である。
図2図2は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの蓋体を開いた状態を示す透視側面図である。
図3図3は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの平面図である。
図4図4は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの底面図である。
図5図5は一般的な射出成形機の概略構成を示す図である。
図6図6は本発明の方法を実施することができる射出成形機の一実施例の縦断面図である。
図7図7は本発明の方法を実施することができる射出成形機の一実施例の図6とは異なる縦断面図である。
図8図8は特許文献2に記載されたスリットバルブ付きキャップの縦断面図である。
図9図9(a)は特許文献3に記載されたスリットバルブ付きキャップの縦断面図、図9(b)は液止弁部分の拡大斜視図である。
図10図10は特許文献4に記載されたスリットバルブ付きキャップの縦断面図である。
図11図11は特許文献4に記載されたスリットバルブ付きキャップの蓋体を開いた状態を示す上面図である。
図12図12は特許文献5に記載されたスリットバルブ付きキャップの縦断面図である。
図13図13は特許文献5に記載されたスリットバルブ付きキャップの蓋体を開いた状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は例示であり、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変更や修正が可能である。
【0022】
図1は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの蓋体を閉じた状態を示す透視側面図、図2は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの蓋体を開いた状態を示す透視側面図、図3は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの平面図、図4は本発明の方法により製造することができるスリットバルブ付きキャップの底面図である。
【0023】
図1図4において、1はキャップ本体、2はキャップ本体1の開放側の開口部を開閉する蓋体、3はキャップ本体1と蓋体2とを連結するヒンジ部、4は十字状のスリット5を有するスリットバルブである。
【0024】
本発明に従ってスリットバルブ付きキャップは、射出成形方法により製造することができるが、本発明の製造方法の概略を一般的な射出成形機に基づいて説明する。例えば、本発明の方法を実施するために、図5に示す射出成形機を用いることができる。すなわち、射出成形機は射出装置と、型締め装置と、金型から構成され、図5には、射出装置を(1)で示し、型締め装置を(2)で示し、金型を(3)で示す。図5において、Aはモーター、Bは射出機構、Cはスクリュー、Dはホッパー、Eはヒーター、Fは可塑化機構、Gはシリンダー、Hはタイバー、Iは型締め機構、Jは突出し機構である。
【0025】
射出装置では、成形材料をシリンダー内で加熱し溶融(可塑化)させ(可塑化機構)、溶融樹脂をスクリューで押し出して計量し、型締めされた金型内に注入し、スクリューの速度を制御し、一定量の溶融樹脂を押し出す。金型は、射出装置側(固定側)の雌型と、型締め機構側(移動側)の雄型からなり、雌雄の金型が合わさってできた空洞部(キャビティ)に溶融樹脂が射出され、射出された溶融樹脂は金型内のスプルーからゲートを通り、キャビティ内に流れ込み、金型内に充填した樹脂が冷却・固化したのち、可動側のエジェクタプレートに固定されたエジェクタピンが金型内の成形品を突き出すことで離型させる。型締め装置では、金型を閉じ(型締め)、材料の射出後、外側から冷却水で冷却し固化させるが、その際、樹脂が収縮して体積が減少するため、さらに樹脂を補給して金型内の圧力を保持し(保圧)、樹脂が冷却・固化したのち、金型を開いて成形品を取り出す。
【0026】
以上のように、射出成形の工程は、大きく分けて、「型締め」、「射出」、「保圧」、「冷却」、「型開き」及び「成形品の取出し」の6工程からなる。本発明の重要な特徴は、スリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えたキャビティに溶融樹脂を射出充填する一次射出成形により一次射出成形品を得、前記一次射出成形品が固化する前に一次射出成形のときの射出充填圧とは異なる圧力をスリットバルブ部分に付加することが最大の特徴である。
【0027】
次に、内容物の吐出に際して液切れのよいスリットバルブ付きキャップを一工程で製造するという課題を解決するために、好ましい射出成形条件について説明する。
《射出成形機》
射出成形機には、横型射出成形機、縦型射出成形機、ロータリー式射出成形機、低発泡射出成型機など、様々な形式のものが存在するが、内容物の吐出に際して液切れのよいスリットバルブ付きキャップを一工程で製造できるものであれば、特に限定されない。
【0028】
《樹脂温度》
樹脂温度は、樹脂のグレードに応じて適切な樹脂温度になるように、図5のヒーターEの温度設定を調整する。例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、樹脂温度は170~250℃になるように調整するのが好ましい。
【0029】
《金型温度》
金型温度は成形品の収縮やキャビティ表面の転写を左右する重要なパラメ-タであり、水冷式温度調節機や油温度調節機などを用いて金型の温度を制御するが、重要なのはキャビティ表面温度であり、キャビティ表面温度を正確に制御するために、接触式表面温度計で測定した温度に基づいて金型温度の調整を行うのが好ましい。例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、金型温度は、10~50℃に制御するのが好ましい。
【0030】
《射出充填圧力》
射出充填圧力は、溶融樹脂を金型のキャビティへ充填するための圧力であり、
射出充填圧力が低すぎると、充填不良が発生する。一方、射出充填圧力が高すぎると、成形品の周囲にバリが発生したり、金型からの離型不良が生じることがある。この射出充填圧力は後記する保持圧力より大きく設定する。本発明の製造方法はスリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えたキャビティに溶融樹脂を射出充填する一次射出成形により一次射出成形品を得、前記一次射出成形品が固化する前に一次射出成形のときの射出充填圧とは異なる圧力をスリットバルブ部分に付加することが重要な特徴であり、例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、一次射出成形のときの射出充填圧力は、500~2000MPaとし、スリットバルブ部分に付加する圧力は、50~100MPaとするのが好ましい。
【0031】
《射出速度》
射出速度が遅すぎると充填不良が発生することがあり、射出速度が速すぎると、バリやジェッティング(成形品表面に発生する蛇行した模様)が発生することがある。例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、射出速度は、10mm/秒とするのが好ましい。
【0032】
《保圧》
保圧は充填補充のために不可欠で成形収縮に大きな影響を及ぼす。保圧が低すぎると樹脂がゲートから逆流してしまい、成形品の表面が縮むヒケや収縮が大きくなって成品寸法が小さくなる。保圧が高すぎると、バリや離型不良が生じることがある。例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、保圧は、500~1500MPaとするのが好ましい。保圧の効果を享受するためには保圧時間が重要で、ゲートシールするまで保圧状態を保持することが必要である。
【0033】
《射出時間》
充填時間と保圧時間の合計が射出時間であり、射出時間>ゲートシール時間の関係を満たすようにするのが好ましい。ゲートシール時間とはゲート部の樹脂が固化流動停止する時間であり、ゲートシールする前に保圧を切ると、金型内圧によって溶融樹脂がゲートから逆流し、成形品の充填密度が低下するため、寸法や物性のバラツキが大きくなったり、ソリ、ヒケ、ボイド等が生じることがある。
【0034】
《冷却時間》
保圧が終了した後、成形品を金型内で固化させておく時間が冷却時間である。冷却時間が短かすぎると収縮が大きくなり、成形品寸法が小さくなってしまい、突き出し時に変形したしまうことがある。一方、冷却時間が長いと成形サイクルが長くなり、生産性が低下する。例えば、樹脂としてポリプロピレンが使用される場合、冷却時間は、5~20ミリ秒とするのが好ましい。
【0035】
《樹脂》
本発明の製造方法で製造されるキャップの材料である樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0036】
《本発明の製造方法》
本発明の製造方法の詳細について、以下に説明する。図6は本発明の方法を実施することができる射出成形機の一実施例の縦断面図、図7は同じ射出成形機の異なる縦断面図である。
【0037】
図6及び図7において、SM1、SM2、SM3及びSM4は固定型、MM1、MM2、MM3,MM4およびMM5は可動型である。固定型と可動型が合わさってできるキャビティはスリットバルブ付きキャップの外形に相応する形状を備えている。そして、型締め装置で型締めされることによりできる、上記のキャビティ内に溶融樹脂が射出されることにより、図1図4に示す形状のスリットバルブ付きキャップを射出成形することができる。図6および図7において、11は本発明のスリットバルブ付きキャップ(黒い陰影で表された部分)、12は油圧シリンダー、13はプッシュバーである。上記のように、固定型と可動型が合わさってできるキャビティ内に溶融樹脂が射出されることにより得られるスリットバルブ付きキャップが固化する前に、油圧シリンダー12が作動することによって発生する油圧がプッシュバー13を介してスリットバルブ付きキャップ11のスリットバルブ部分に付加されることにより、図3および図4に示すような十字状のスリット5を形成することができる。
【0038】
溶融樹脂の射出されるときの射出充填圧と、プッシュバー13を介してスリットバルブ付きキャップのスリットバルブ部分に付加される油圧との相対的な比率は、前者を1とすれば、後者は1/10程度が好ましい。例えば、樹脂がポリプロピレンであれば、溶融樹脂の射出充填圧は500~1500MPa程度が好ましく、上記のスリットバルブ部分に付加される油圧は50~100MPa程度が好ましい。このようにして、一次射出成形品が固化する前に、射出成形型内の圧力を部分的に変えることにより、スリットバルブ付きキャップを一工程で製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上、説明したように、本発明は、内容物を注出後に、液垂れを防止するキャップの製造方法として好適である
【符号の説明】
【0040】
1 キャップ本体
2 蓋体
3 ヒンジ部
4 スリットバルブ
5 スリット
11 スリットバルブ付きキャップ
12 油圧シリンダー
13 プッシュバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13