(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177660
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ろ過装置及びろ過方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
G01N1/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084076
(22)【出願日】2021-05-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】504049626
【氏名又は名称】ビーエルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】政木 一央
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 頼博
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA03
2G052GA27
2G052GA28
2G052HC08
2G052HC29
2G052JA04
(57)【要約】
【課題】気体の混入を防ぐことができ、試料毎にろ材を入れ替える必要のない、ろ過装置及びろ過方法を提供する。
【解決手段】試料供給部(110)と、前記試料供給部(110)の下方に備えられたろ材シート(120)と、前記ろ材シート(120)に対して前記試料供給部(110)と反対側から、ろ過された流動性試料を吸引する吸引部(130)とを備えている、ろ過装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性試料をろ過するためのろ過装置であって、
試料供給部と、前記試料供給部の下方に備えられたろ材シートと、前記ろ材シートに対して前記試料供給部と反対側から、ろ過された前記流動性試料を吸引する吸引部とを備え、
前記試料供給部と前記ろ材シートとは接しておらず、
前記ろ材シートは、連続的に搬送可能になっており、
前記試料供給部から供給される前記流動性試料の供給速度は、前記ろ材シートを通過して吸引される前記流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定されている、ろ過装置。
【請求項2】
前記ろ材シートは、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している、請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記ろ材シートを支持するための支持部材を備え、
前記支持部材は、前記ろ材シートに対する支持面を有する台座であり、前記ろ材シートを通過して前記流動性試料を吸引するための貫通孔が前記台座に設けられている、請求項1または2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ材シートは、ロール状に巻回されたろ材シートが、巻き取り装置によって、巻き取られることによって、連続的に搬送可能になっている、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項5】
試料を管路に導入するためのサンプリング装置と、
前記管路内を移送される試料について分析を行う分析装置と、
を含む流れ分析装置であって、請求項1~4のいずれか1項に記載のろ過装置を含む、流れ分析装置。
【請求項6】
流動性試料をろ過するためのろ過方法であって、
試料供給部から前記流動性試料を供給する工程と、
供給した前記流動性試料を、前記試料供給部の下方に備えられたろ材シートでろ過する工程と、を含み、
前記ろ過する工程では、前記ろ材シートに対して前記試料供給部と反対側から、ろ過された前記流動性試料を吸引し、
前記試料供給部と前記ろ材シートとは接しておらず、
前記ろ材シートは、連続的に搬送され、
前記試料供給部から供給される前記流動性試料の供給速度は、前記ろ材シートを通過して吸引される前記流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定される、ろ過方法。
【請求項7】
前記ろ材シートは、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している、請求項6に記載のろ過方法。
【請求項8】
試料を管路に導入する試料導入工程と、
前記管路内を移送される試料について分析を行う分析工程と、
を含む流れ分析方法であって、
請求項6または7に記載のろ過方法によりろ過を行うろ過工程を含む、流れ分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置及びろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
定量分析において、分析対象物質とそれ以外の阻害物質との分離は、正確な分析を行う上で非常に重要である。分離方法として、溶媒抽出、固相抽出、キレート抽出、クロマトグラム分離等、多種の方法が存在するが、懸濁物質と溶液との物理的な分離方法としては、ろ過が頻繁に用いられている。
【0003】
定性分析及び定量分析において、分析装置に試料を供給する際においても、懸濁物質と溶液との分離を行う際にはろ過を用いる。ろ過は通常試料毎に行われ、ろ過された試料を分析装置に供する。
【0004】
連続的に分析する試料を連続的にろ過する装置として、例えば、特許文献1には、流動性試料から不溶成分を分離するためのろ過装置が開示されている。また、特許文献2には、流れ分析方法の一種であるフローインジェクション法(FIA)においてろ過機を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-192415号公報
【特許文献2】特開昭62-113066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来技術は、全量をろ過するため、定期的なろ材の交換を行う必要がある。また、定期的なろ材の交換を行うには、大掛かりな機構が必要になる。試料のろ材通過とろ材の交換とのタイミングが合わなければ、前の試料の測定対象物が次の試料の測定結果に影響を与える。また、試料中に不定期のタイミングで測定に影響が出るほどの多量の気体が混入する場合には、試料毎のろ過装置でのろ過を連続的に行って正確な分析を行うという点で十分ではなかった。
【0007】
本発明の一実施態様は、前記課題を解決することにより、大掛かりで煩雑な装置を必要とせず、試料のろ材通過とろ材の交換のタイミングを合わせる必要もなく、そして気体の混入を防ぐことができ、試料毎にろ材を入れ替える必要のない、ろ過装置及びろ過方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様は以下の構成を包含する。
【0009】
〔1〕流動性試料をろ過するためのろ過装置であって、試料供給部と、前記試料供給部の下方に備えられたろ材シートと、前記ろ材シートに対して前記試料供給部と反対側から、ろ過された前記流動性試料を吸引する吸引部とを備え、前記試料供給部と前記ろ材シートとは接しておらず、前記ろ材シートは、連続的に搬送可能になっており、前記試料供給部から供給される前記流動性試料の供給速度は、前記ろ材シートを通過して吸引される前記流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定されている、ろ過装置。
【0010】
〔2〕前記ろ材シートは、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している、〔1〕に記載のろ過装置。
【0011】
〔3〕前記ろ材シートを支持するための支持部材を備え、前記支持部材は、前記ろ材シートに対する支持面を有する台座であり、前記ろ材シートを通過して前記流動性試料を吸引するための貫通孔が前記台座に設けられている、〔1〕または〔2〕に記載のろ過装置。
【0012】
〔4〕前記ろ材シートは、ロール状に巻回されたろ材シートが、巻き取り装置によって、巻き取られることによって、連続的に搬送可能になっている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のろ過装置。
【0013】
〔5〕試料を管路に導入するためのサンプリング装置と、前記管路内を移送される試料について分析を行う分析装置と、を含む流れ分析装置であって、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のろ過装置を含む、流れ分析装置。
【0014】
〔6〕流動性試料をろ過するためのろ過方法であって、試料供給部から前記流動性試料を供給する工程と、供給した前記流動性試料を、前記試料供給部の下方に備えられたろ材シートでろ過する工程と、を含み、前記ろ過する工程では、前記ろ材シートに対して前記試料供給部と反対側から、ろ過された前記流動性試料を吸引し、前記試料供給部と前記ろ材シートとは接しておらず、前記ろ材シートは、連続的に搬送され、前記試料供給部から供給される前記流動性試料の供給速度は、前記ろ材シートを通過して吸引される前記流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定される、ろ過方法。
【0015】
〔7〕前記ろ材シートは、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している、〔6〕に記載のろ過方法。
【0016】
〔8〕試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料について分析を行う分析工程と、を含む流れ分析方法であって、〔6〕または〔7〕に記載のろ過方法によりろ過を行うろ過工程を含む、流れ分析方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施態様によれば、大掛かりで煩雑な装置を必要とせず、試料のろ材通過とろ材の交換のタイミングを合わせる必要もなく、そして気体の混入を防ぐことができ、試料毎にろ材を入れ替える必要のない、ろ過装置及びろ過方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るろ過装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るろ過装置の一部の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る流れ分析装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る流れ分析装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、例えば、試料液体および試薬が気泡によって分節された、細管内の連続的な流れの中に、それぞれ試料および試薬を導入し、反応操作を行った後、気泡を除去した状態か、又は定期的に気相にて分節した状態(例えば、4秒に1回毎の分節)で下流に設けた検出器で、分析成分を検出して定量する方法である連続流れ分析法(CFA)において、加熱を行った後の試料の下流に連続ろ過装置を備えてろ過を行う場合、流路内を試料が連続的に流れ来ない場合があることに着目した。また、加熱分解を行った場合、液に分解で発生した気体が不定期に含まれるため、定期的に気相にて分節するCFAには気体が不定期に混入することがあった。また、CFAでは試料と試料との切り替えで迅速、正確にろ紙を入れ替える必要があり、液だれの防止、次の試料へのキャリーオーバーの考慮等を勘案した、大掛かりな機構が必要である。
【0020】
かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、大掛かりで煩雑な装置を必要とせず、試料のろ材通過とろ材の交換のタイミングを合わせる必要もなく、そして気体の混入を防ぐことができ、試料毎にろ材を入れ替える必要のないろ過装置及びろ過方法を見出し、本発明を完成させた。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0022】
(I)ろ過装置
本発明の一実施形態に係るろ過装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るろ過装置の概略構成を示す側面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るろ過装置の一部の構成を示す斜視図である。
【0023】
本発明の一実施形態に係るろ過装置10は、流動性試料をろ過するためのろ過装置である。「流動性試料」とは、流動性を有する試料であれば特に限定されるものではないが、例えば、可溶成分と不溶成分とを含む懸濁試料である。「ろ過する」とは、流動性試料から不溶成分を分離して除去することを意図する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るろ過装置10は、試料供給部110と、ろ材シート120と、吸引部130と、支持部材140と、巻き取り装置150とを備えている。
【0024】
試料供給部110は、ろ材シート120に流動性試料を供給するための部材である。試料供給部110は、流動性試料を吐出するための試料供給口111を備えている。
【0025】
ろ材シート120は、試料供給部110の下方に備えられている。具体的には、ろ材シート120は、試料供給部110と吸引部130との間において、試料供給口111から吐出されて落下した流動性試料を受け止めることができる位置にある。
【0026】
巻き取り装置150は、ろ材シート120を巻き取り、ろ材シート120を連続的に搬送するための装置である。ろ材シート120は、ロール状に巻回されたろ材シート120が、巻き取り装置150によって、巻き取られることによって、連続的に搬送可能になっている。ろ材シート120が連続的に搬送されることにより、常に新しいろ材シート120が試料供給部110と吸引部130との間に搬送されるため、吸引部130に吸引されなかった過剰な流動性試料がろ材シート120の表面を搬送元側に拡散することなく、ろ過後のろ材シート120(廃ろ材シート)とともに排出される。そのため、流動性試料毎に新しいろ材シートを設置する必要がない。なお、
図1及び2に示すろ過装置では、ろ材シート120は、巻き取り装置150によって、巻き取られることによって、連続的に搬送可能になっているが、ろ材シート120が搬送可能になっていれば、その機構は必ずしも巻き取り装置150によって巻き取られることによるものでなくてもよい。例えば、ベルトコンベアによりろ材シート120を搬送してもよい。
【0027】
ろ材シート120の搬送速度は、吸引部130に吸引されなかった過剰な流動性試料がろ材シート120の表面を搬送元側に拡散されない速度であればよい。ろ材シート120の搬送速度は、試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度及びろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度に応じて適宜設定すればよい。ろ材シート120の搬送速度は、例えば、0.5cm/分以上10cm/分以下であってもよく、1cm/分以上5cm/分以下であってもよく、2cm/分以上4cm/分以下であってもよい。
【0028】
ろ材シート120は、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している。これにより、吸引部130に吸引されなかった過剰な流動性試料が巻き取り装置150の方向に流れていくため、ろ材シート120の搬送先から搬送元に向かって流れることをより効果的に防ぐことができる。そのため、ろ材シート120が連続的に搬送されるとともに、ろ材シート120のろ過に使用されていない部分で試料供給口111から吐出して落下した流動性試料を受け止めることができる。ろ材シート120に浸み込まなかった過剰な流動性試料は、廃ろ材シートとともに、廃液として、巻き取り装置150の下方に排出される。
【0029】
ろ材シート120の水平方向に対する傾斜角度は、特に限定されないが、例えば、1度以上30度以下であることが好ましく、5度以上20度以下であることがより好ましく、8度以上15度以下であることがさらに好ましい。ろ材シート120の傾斜角度がこのような範囲であることにより、ろ材シート120が試料供給口111から吐出して落下した流動性試料を確実に受け止めることができつつ、前述した効果を得ることができる。なお、
図1及び2に示すろ過装置では、ろ材シート120は、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜しているが、吸引部130に吸引されなかった過剰な流動性試料が、ろ材シート120の表面を搬送元側に大きく拡散することがない限りにおいて、ろ材シート120は必ずしも傾斜していなくてもよい。
【0030】
ろ材シート120は帯状であることが好ましい。ろ材シート120の幅は、試料供給口111から吐出して落下した流動性試料を十分に受け止めることができる大きさであればよい。ろ材シート120の幅は、例えば、5mm以上100mm以下であってもよく、10mm以上40mm以下であってもよく、15mm以上35mm以下であってもよく、20mm以上30mm以下であってもよい。
【0031】
ろ材シート120は、流動性試料に含まれる可溶成分と不溶成分とを分離することができるものであればよい。ろ材シートとしては、例えば、ろ紙シート、布シート、メンブレンシート等が挙げられる。ろ材シート120の材質としては、例えば、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、綿、麻、絹等が挙げられる。
【0032】
吸引部130は、ろ材シート120に対して試料供給部110と反対側から、ろ過された流動性試料を吸引する。吸引部130には、図示しないポンプが接続されており、吸引部130は、当該ポンプによって、ろ過された流動性試料を吸引することができる。
【0033】
試料供給部110とろ材シート120とは接していない。試料供給部110から供給される流動性試料が落下して、ろ材シート120によりろ過される。これにより、流動性試料に含まれる気体(例えば、分節用の気体、不定期に混在する空気、分解時に発生したガス等)が空気中に開放される。
【0034】
試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度は、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定されている。これにより、吸引部130は、気体を取り込むことなく、ろ過された流動性試料を吸引することができる。
【0035】
試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度は、例えば、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度に対して、1.05倍以上3倍以下であることが好ましく、1.1倍以上2倍以下であることがより好ましい。これにより、吸引部130は、気体を取り込むことなく、ろ過された流動性試料を吸引することができ、且つ、ろ過装置10に供給する試料の無駄を低減することができる。試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度は、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度よりも0.1mL/分以上速いことが好ましい。これにより、吸引部130は、気体を取り込むことなく、ろ過された流動性試料を吸引することができる。例えば、試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度が0.3mL/分以上5mL/分以下であるとき、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度は、0.2mL/分以上4.5mL/分以下であることが好ましい。また、試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度が0.5mL/分以上5mL/分以下であるとき、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度は、0.3mL/分以上4mL/分以下であることが好ましい。また、試料供給部110から供給される流動性試料の供給速度が1mL/分以上3mL分以下であるとき、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度は、0.5mL/分以上2mL/分以下であることが好ましい。
【0036】
支持部材140は、ろ材シート120を支持するための部材である。支持部材140は、ろ材シートに対する支持面141を有する台座である。支持部材140には、ろ材シート120を通過して流動性試料を吸引するための貫通孔142が設けられている。貫通孔142には、当該貫通孔142に密接する管状の吸引部130が差し込まれている。
【0037】
支持部材140の幅は、ろ材シート120を安定的に支持することができれば、特に限定されるものではなく、ろ材シート120の幅と同一であっても、ろ材シート120の幅より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0038】
支持部材140の傾斜角度は、ろ材シート120との間に隙間が生じない角度であれば、特に限定されるものではない。
【0039】
貫通孔142の内径は、吸引部130を差し込むことができ、ろ過された流動性試料の全てが漏れ出すことなく吸引部130の内部に吸引することができる大きさであればよい。貫通孔142の内径は、例えば、0.2mm以上10mm以下であってもよく、1mm以上5mm以下であってもよく、2mm以上4mm以下であってもよい。
【0040】
吸引部130の外径は、貫通孔142に差し込むことができ、ろ過された流動性試料の全てが漏れ出すことなく吸引部130の内部に吸引することができる大きさであればよい。そのため、貫通孔142の内径と吸引部130の外径とは、同一であることが好ましい。吸引部130の外径は、例えば、0.2mm以上10mm以下であってもよく、1mm以上5mm以下であってもよく、2mm以上4mm以下であってもよい。
【0041】
吸引部130の内径は、ろ過された流動性試料の全てを吸引部130の内部に吸引することができ、且つ、安定したろ過を行うことができる大きさであればよい。吸引部130の内径は、例えば、0.05mm以上5mm以下であってもよく、0.1mm以上2mm以下であってもよく、0.2mm以上1.5mm以下であってもよい。
【0042】
或いは、貫通孔142に、吸引部130が差し込まれている代わりに、貫通孔142自体が吸引部130であって、貫通孔142が、ポンプが接続された管路に接続されていてもよい。
【0043】
なお、
図1及び2に示すろ過装置には、支持部材140が備えられているが、ろ材シートが保持される限り、必ずしも、支持部材140が備えられていなくてもよい。また、支持部材140が備えられている場合でも、支持部材140は、必ずしも台座である必要はなく、ろ材シートを支持できれば、その形状は特に限定されるものではない。さらに、
図2に示すろ過装置では、支持部材140の幅は、ろ材シート120の幅と同一であるが、支持部材140の幅は、必ずしもろ材シート120の幅と同一である必要はなく、ろ材シート120の幅より広くてもよいし、狭くても良い。
【0044】
(II)ろ過方法
以下に、本発明の一実施形態に係るろ過方法について説明する。なお、説明の便宜上、(I)のろ過装置にすでに記載した事項については、その説明を繰り返さない。
【0045】
本発明の一実施形態に係るろ過方法は、流動性試料をろ過するためのろ過方法であって、試料供給部110から前記流動性試料を供給する工程と、供給した前記流動性試料を、前記試料供給部110の下方に備えられたろ材シート120でろ過する工程と、を含む。
【0046】
前記ろ過する工程では、前記ろ材シートに対して前記試料供給部110と反対側から、ろ過された前記流動性試料を吸引する。前記試料供給部110と前記ろ材シート120とは接しておらず、前記ろ材シート120は、連続的に搬送される。前記試料供給部110から供給される前記流動性試料の供給速度は、前記ろ材シート120を通過して吸引される前記流動性試料の吸引速度より大きくなるように設定される。ろ材シート120は、搬送元から搬送先に向かって、上方から下方に傾斜している。
【0047】
本発明の一実施形態に係るろ過方法は、試料供給部110から前記流動性試料を供給する工程の前に、ろ材シート120を洗浄する工程を含んでいてもよい。これにより、ろ材シート120に含まれる不純物質(例えば、アルミ、鉄、銅等の金属等)を取り除くことができる。そのため、洗浄したろ材シート120によりろ過された流動性物質に当該不純物質が混合されることを防ぐことができる。ろ材シート120の洗浄には、例えば、水、流動性試料に含まれる溶媒等を用いることができる。
【0048】
(III)流れ分析装置
以下に、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置について説明する。なお、説明の便宜上、(I)のろ過装置にすでに記載した事項については、その説明を繰り返さない。
【0049】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るろ過装置について図面を参照して説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係る流れ分析装置1の概略構成を示す図である。
【0050】
本発明の一実施形態に係る流れ分析装置1は、サンプリング装置11と、気泡分節装置12と、試薬添加装置13と、加熱装置14と、ろ過装置10と、分析装置15とを含んでいる。
【0051】
サンプリング装置11は、試料をサンプリングして管路16に導入するための装置である。本発明の一実施形態において、サンプリング装置11は、試料を管路16に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するサンプリング用ポンプとを備えている。前記サンプリング用ポンプにより、試料が管路16内に所定の流量で導入される。前記試料は分析対象となる物質または元素を含む液体である。
【0052】
気泡分節装置12は、前記管路16に導入された試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路16内に作製するための装置である。本発明の一実施形態において、気泡分節装置12は、気体を管路16に導く気体導入管と、前記気体導入管に吸引力を付与する気体導入用ポンプとを備えている。気泡分節を行うことにより、気泡で分断された分節液内での渦流により試薬等の混合を好適に行うことができる。また、分節液は、気泡で分断され独立して管路16内を流れるため、試料間相互の拡散を防ぐことができる。気泡分節の気体は、空気であることが好ましいが、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスであってもよいし、窒素及び酸素等の様々な気体を用いることもできる。これらの気体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。このように、試料が気泡によって分節された、管路内の連続的な流れの中に、試薬を導入し、反応操作を行った後、気泡を除去し、下流に設けた検出器で分析を行う方法は、連続流れ分析法(CFA)と呼ばれる。
【0053】
試薬添加装置13は、前記管路16に沿って移送される試料の流れの中に試薬を添加するための装置である。試薬添加装置13は、試薬を管路16に導く試薬導入管と、前記試薬導入管に吸引力を付与する試薬導入用ポンプとを備えている。前記試薬は、試料の前処理において添加される試薬であり得る。前記試薬としては、これに限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、及びふっ酸等の酸;過酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸ナトリウム等のアルカリ等を挙げることができる。
【0054】
加熱装置14は、前記管路16に沿って移送される試料に、加熱処理を行う。加熱装置14は、ヒーターを備えた恒温槽であり得る。しかし、加熱装置14の構成はこれに限定されるものではなく、超音波分解装置、マイクロウェーブ、及びオートクレーブ分解装置等であってもよい。また、加熱装置14内で、前記管路16はコイル又は螺旋を形成している。本発明の一実施形態では、加熱装置14は、試薬添加装置13の下流に備えられる。試薬が添加された試料を、加熱することにより、試料の試薬との反応を促進させ、前処理を行うことができる。
図3の例では、流れ分析装置は、1つの試薬添加装置13と、1つの加熱装置14とからなる前処理ユニット17を備えているが、1つの試薬添加装置13の代わりに、複数の試薬を添加するために、複数の試薬添加装置13が備えられていてもよい。また、
図3の例では、流れ分析装置は、前処理ユニット17を1つ備えているが、流れ分析装置は、複数の前処理ユニット17を備えていてもよい。かかる場合、流れ分析装置は各前処理ユニット17毎にろ過装置10を備えていてもよく、複数の前処理ユニット17はそれぞれ異なる数の試薬添加装置13を備えていてもよい。複数の前処理ユニット17を備えていることにより、例えば、加熱下で酸分解を行った後、再度酸を添加して加熱下で酸分解を行う形態の前処理を行うことができる。複数の試薬添加装置13が備えられている場合、各試薬添加装置13により添加される試薬は同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
また、
図3の例では、試薬添加装置13は、気泡分節装置12の下流に備えられているが、試薬添加装置13の配置はこれに限定されるものではない。試薬添加装置13は、気泡分節装置12の上流に備えられていてもよい。或いは、試薬添加装置13により導入する試薬が、試薬添加装置13は加熱装置14の下流に備えられることもある。或いは、前処理に用いられる試薬を導入するための1又は複数の試薬添加装置13が加熱装置14の上流に備えられ、且つ、1又は複数の試薬添加装置13が加熱装置14の下流に備えられていてもよい。
【0056】
ろ過装置10は、試薬が添加され、加熱された試料(流動性試料)をろ過する。ろ過装置10の詳細は、(I)で説明した通りである。ろ過装置10によって、流動性試料から不溶成分を除去することにより、管路16内及び/又は下流の分析装置15内で不溶成分が詰まってしまうことにより分析不可能になることを防止することができる。ろ過された流動性試料が分析装置15に供給されることにより、分析装置15はろ過された流動性試料を適切に分析することができる。また、
図3の例では、ろ過装置10は、加熱装置14の下流に備えられているが、ろ過装置10の配置はこれに限定されるものではない。ろ過装置10は、気泡分節装置12の上流に備えられていてもよい。
【0057】
分析装置15は、ろ過された流動性試料について分析を行う装置である。本発明の一実施形態において、分析装置15は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)である。しかし、分析装置15は、これに限定されるものではなく、どのような分析装置であってもよく、例えば、原子吸光光度計、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)、誘導結合プラズマトリプル四重極質量分析装置、イオン電極計、又は分光光度計であってもよい。また、分析装置15は、金属元素の有無又は濃度を測定するための装置に限定されるものではなく、測定対象も特に限定されない。また、分析は、定量分析であるか、定性分析であるかを問わない。
【0058】
前述の実施形態1に係る流れ分析装置によれば、管路16内に、連続的に試料を導入し、気泡分節を行い、試薬を導入し、加熱装置で反応を促進させ、ろ過装置で流動性試料をろ過し、分析装置で連続的に分析データを計測することができる。
【0059】
前述の実施形態1では、流れ分析装置は、試薬添加装置13及び加熱装置14を備えている。しかし、前記流れ分析装置は、必ずしも、試薬添加装置13及び加熱装置14を備えている必要はなく、試薬添加装置13及び加熱装置14のいずれをも備えていない構成であってもよい。前処理を行う必要がない試料、及び前処理を既に行った試料等を分析する場合は、試薬添加装置13及び加熱装置14のいずれをも備えていない構成であってもよい。かかる場合であっても、流れ分析装置は、ろ過装置10を備えている。或いは、流れ分析装置は、加熱装置14のみを備え、試薬添加装置13を備えていない構成であってもよいし、逆に、試薬添加装置13のみを備え、加熱装置14を備えていない構成であってもよい。かかる場合であっても、流れ分析装置は、ろ過装置10を備えている。例えば、事前に酸及びアルカリ等の試薬を添加した試料を管路16に導入する場合、及び、前処理に加熱を必要とするが試薬を必要としない場合等は、加熱装置14のみを備え、試薬添加装置13を備えていない構成とすることができる。いずれの構成とするかは試料の前処理方法に応じて適宜選択すればよい。
【0060】
試薬添加装置13及び加熱装置14のいずれをも備えていない実施形態では、流れ分析装置は、流動性試料を管路16に導入するためのサンプリング装置11と、前記管路16に沿って移送される試料について分析を行う分析装置15とを含む流れ分析装置であって、さらに、流動性試料をろ過するためのろ過装置10を含む。
【0061】
図3の例では備えられていないが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、さらに、管路16の途中に、さらにプール槽(液溜め)が備えられていてもよい。流れ分析装置は密閉空間の中に試料を流し分析を行う方法であるため、圧が高くなる場合がある。かかる場合にも、プール槽を備えることにより、圧を逃がし、各工程に必要な容量を好適に分注して採取することができる。プール槽は、管路16の途中であればその配置は特に限定されるものではないが、好ましくは加熱装置14の下流、より好ましくは加熱装置14(複数の加熱装置14が備えられている場合は最も下流の加熱装置14)と分析装置15との間に備えられている。流れ分析装置内の圧を逃がす手段としては、プール槽以外にも、例えば、空気(気体)と液とを適量廃液するデバブラー、減圧弁等を備えることができる。
【0062】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、加熱装置14の下流側から、試料の流れに抗する圧力を付与する加圧装置を備えていてもよい。前記加圧装置は、例えば、コンプレッサーとバルブとを備えている。かかる加圧装置を備えることにより、加熱装置14における気泡の膨張の抑制、及び、加熱と加圧との相乗効果により、加熱装置14における反応を促進することができる。前記加圧装置により付与される圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.14MPa以下である。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置では、サンプリング装置11として、オートサンプラーを使用することができる。また、サンプリングの前に、超音波ホモジナイザー又は攪拌器を備えて、試料の粉砕、及び/又は攪拌を行ってもよい。
【0064】
或いは、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、管路16の途中に、さらに希釈装置を備えていてもよい。これにより、サンプルの濃度に応じて希釈を行う必要がある場合に、流れ分析装置中で、自動的に所望の希釈を行うことができる。かかる希釈装置としては、市販の自動希釈装置を好適に用いることができる。
【0065】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を、サンプリング装置11に組み込んだ装置、又は、サンプリング装置11の上流に組み込んだ装置であってもよい。流れ分析装置は、液体の試料を流れ分析法を用いて分析する装置であり、固体等の液体以外の試料はそのまま測定することばできない。そのため、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を組み込むことにより、固体等の液体以外の試料の前処理から分析に至るまでを一貫して行うことができる。かかる装置としては、固体等の液体以外の試料を全自動で前処理する装置がより好ましく、例えば、試薬添加、混合、加熱、メスアップを全自動で行う全自動酸分解前処理装置を好適に用いることができる。
【0066】
本実施形態において、流れ分析装置がCFAを使用する分析装置である場合を例に挙げたが、CFAに限られず、試料中に気体が混入する連続的な分析装置であれば特に限定されない。
【0067】
〔実施形態2〕
図4は、本発明の実施形態2に係る流れ分析装置2の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0068】
本発明の実施形態2に係る流れ分析装置2は、前述した実施形態1に係る流れ分析装置1の構成に加えて、さらに、マーカー導入装置18と、高温高圧分解装置19と、懸濁物捕集カートリッジ20と、界面活性剤添加装置21と、混合コイル22と、マーカー検出装置23と、脱気装置24とを含んでいる。また、サンプリング装置11と高温高圧分解装置19との間、懸濁物捕集カートリッジ20と界面活性剤添加装置21との間に、それぞれ気泡分節装置12をさらに含んでいる。
【0069】
マーカー導入装置18は、マーカーを管路16に導入するための装置である。本発明の一実施形態において、マーカー導入装置18は、マーカーを管路16に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するポンプとを備えている。前記マーカーは、マーカー検出装置23で検出可能な物質を含んでいればよく、当該物質であってもよいし、当該物質を含む溶液であってもよいし、当該物質を含む分散液であってもよい。
【0070】
ここで、前記マーカー導入装置18と、前記サンプリング装置11とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料が、交互に管路16に導入可能となっている。すなわち、前記マーカー導入装置18からの管路16へのマーカーの導入と、前記サンプリング装置11からの管路16への1以上の所定数の試料の導入とが交互に切り替えられるようになっている。この切り替えは、手動で行われてもよいし、自動で行われるようになっていてもよい。
【0071】
前記マーカーと、1つの試料が、交互に管路16に導入可能となっている場合は、1つの試料の前に毎回マーカーが管路16に導入される。そして、1つの試料ごとに、マーカーを検出したマーカー検出装置23よりマーカーの検出信号が分析装置15に出力され、前記検出信号に基づいて、分析装置15は分析データを取得する。これにより、試料の導入から分析装置まで、安定して、均一の時間で送液ができない場合であっても、分析データ取得のタイミングがずれることがないため、安定して連続的に試料を測定することができる。
【0072】
また、前記マーカーと、2つ以上の所定数の試料が、交互に管路16に導入可能となっている場合は、2つ以上の所定数の試料の前に1回マーカーが管路16に導入される。そして、マーカーを検出したマーカー検出装置23よりマーカーの検出信号が分析装置15に出力され、前記検出信号に基づいて、分析装置15は前記所定数の試料の分析データを順次取得する。これにより、試料の導入から分析装置まで、安定して、均一の時間で送液ができない場合であっても、分析データ取得のタイミングのずれを一定の範囲に減少させることができるため、安定して連続的に試料を測定することができる。前記所定数の上限は、試料の種類、前処理の方法等により、適宜選択すればよいが、例えば80、77、50、20、15、または10であり得る。
【0073】
前記マーカー検出装置23で検出可能なマーカーは特に限定されるものではないが、試料中に含まれない物質であることが好ましい。また、マーカーは管路16に導入されてからマーカー検出装置23までの間に添加される試薬及び熱により分解されない物質であることが好ましい。例えば、前記マーカーは、分光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ロジウム、ニッケル、銅、クロム、マンガン、ヨウ素、コバルト、硝酸イオン、リン酸イオン、及びケイ酸イオン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、ボルタンメトリー計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、銅、カドミウム、ニッケル、水銀、ヒ素、及びセレン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオン電極計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、カルシウム、カリウム、ふっ素、及びアンモニア等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオンクロマトグラフィーで検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、無機酸及び有機酸のイオン、フェノール、ヒドラジン、アミノ酸、並びに多糖類等を挙げることができる。或いは、前記物質は、濁度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ふっ酸以外の酸で溶解しない微粒子の物質であるシリカ等を挙げることができる。或いは、前記物質は、蛍光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、クマリン、及びナフタリン等を挙げることができる。中でも、検出の容易さから、特に好ましいマーカーは、ロジウム、コバルト、ニッケル、及び銅等である。
【0074】
高温高圧分解装置19は、前処理として、金属成分を溶液化し、試料中に共存する有機物、懸濁物、及び金属錯体等を分解するための装置である。高温高圧分解装置19は、試料を廃液と、廃液が除去された試料とに分離する。高温高圧分解装置19は、廃液を排出し、廃液が除去された試料を管路16に供給する。
【0075】
懸濁物捕集カートリッジ20は、ろ過された流動性試料からろ材シート120の残渣を除去するための装置である。ろ材シート120の素材によっては、ろ過された流動性試料にろ材シート120の残渣が混入する場合がある。この場合、懸濁物捕集カートリッジ20がろ過された流動性試料からろ材シート120の残渣を除去することにより、マーカー検出装置23及び分析装置15に当該残渣の混入による詰まり及び汚染を防止することができる。
【0076】
本実施形態において、ろ過装置10は、加熱装置14と懸濁物捕集カートリッジ20との間に配置されている。しかし、ろ過装置10の配置はこれに限定されず、サンプリング装置11と分析装置15との間であればよい。ろ過装置10は、分析装置15の種類に応じて適宜配置すればよく、例えば、サンプリング装置11と気泡分節装置12との間であってもよいし、マーカー検出装置23と脱気装置24との間であってもよい。
【0077】
懸濁物捕集カートリッジ20は、ろ材シート120の残渣を捕集することができ、ろ過された流動性試料に対して汚染することのない素材であれば特に限定されない。懸濁物捕集カートリッジ20としては、例えば、石英ウール、セルロース等を用いることができる。
【0078】
界面活性剤添加装置21は、流動性試料に対して界面活性剤を添加するための装置である。流動性試料に対して界面活性剤を添加することにより、液体を安定して流すことができ、汚れの付着を防止することができ、且つ、管路16内の詰まりを起こしにくくすることができる。
【0079】
混合コイル22は、流動性試料と界面活性剤とを混合するための装置である。螺旋状に巻かれた混合コイル22中を液性の異なる流動性試料と界面活性剤とが通過する際に、攪拌が行われて、流動性試料と界面活性剤とを混合することができる。
【0080】
マーカー検出装置23と分析装置15とは直列に配置されている。試料の前処理が終わった後であって、分析装置15に導入される前の段階で、マーカー検出装置23は、前記管路16から導入される液体を連続的に測定し、前記マーカーを検出すれば、検出信号を分析装置15に出力する。そして、分析装置15は、前記検出信号を受け取った後、分析データの取得を開始する。この場合は、分析装置15が到達した試料を測定できるように、分析データの取得を開始するタイミングを調節すればよい。例えば、分析装置15が前記検出信号を受け取った後、所定時間後に分析データの取得を開始するように設定すればよい。
【0081】
本発明の一実施形態において、マーカー検出装置23は、分光光度計であり、マーカーにロジウムが含まれる場合は、ロジウムを検出したときに、検出信号を分析装置15に出力する。しかし、マーカー検出装置23は、分光光度計に限定されるものではなく、例えば、ボルタンメトリー計、イオン電極計、イオンクロマトグラフィー、濁度計及び蛍光光度計であり得る。分析装置15及びマーカー検出装置23には、それぞれ、管路16及び前記分岐管から、順次流れる前記マーカー及び前記試料が同じタイミングで導入される。或いは、分析装置15及びマーカー検出装置23に、順次流れる前記マーカー及び前記試料が導入されるタイミングは、同じではなくずれていてもよいが、その場合は、分析装置15よりも、マーカー検出装置23に、順次流れる前記マーカー及び前記試料が早いタイミングで導入される必要がある。また、前記の一実施形態では、分析装置15は、前記検出信号を受け取れば、分析データの取得を開始するようになっているが、前記検出信号を受け取った後、所定時間後に分析データの取得を開始するように設定してもよい。
【0082】
本発明の一実施形態において、分析装置15とマーカー検出装置23とは、前述のように直列に配置されている。しかし、分析装置15とマーカー検出装置23とは、並列に配置されていてもよい。
【0083】
脱気装置24は、セグメントを区画していた気泡を排出するための装置である。脱気装置24は、管路16から気泡が排出する脱気管と、気泡の排出速度を決定する脱気用ポンプを備えている。脱気装置24が気泡を排出することにより、分析装置15に気泡が混じらない仕組みとなっている。
【0084】
(IV)流れ分析方法
以下に、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法について説明する。なお、説明の便宜上、(I)のろ過装置、(II)のろ過方法、及び(III)の流れ分析装置にすでに記載した事項については、その説明を繰り返さない。
【0085】
本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料について分析を行う分析工程と、を含む流れ分析方法であって、前述した(II)のろ過方法によりろ過を行うろ過工程を含む。
【0086】
前記試料導入工程は、試料を管路に導入する工程であり、例えばサンプリング装置により、複数の試料を、それぞれサンプリングして、所定の流量で、順次連続的に管路に導入する。
【0087】
前記分析工程は、前記管路に沿って移送される試料について分析を行う工程である。ここで、前記分析には、分析対象の有無の検出又は濃度の測定が含まれる。また、分析は、定量分析であるか、定性分析であるかを問わない。分析方法も特に限定されるものではなく、どのような分析であってもよいが、例えば、原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマトリプル四重極質量分析方法、イオン電極分析法、又は分光光度分析法を挙げることができる。
【0088】
また、分析対象も特に限定されるものではないが、例えば、金属元素の濃度を測定するための方法でありうる。
【0089】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、試料導入工程と、次の試料導入工程との間に、マーカーを管路16に導入するマーカー導入工程を含んでいてもよい。ここで、前記マーカー導入工程と、前記試料導入工程とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料とが、交互に管路に導入されるように行われることが好ましい。
【0090】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される試料に高温高圧分解処理を行う高温高圧分解工程を含んでいてもよい。高温高圧分解工程における加熱温度、圧力、及び時間は、分析対象等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。加熱温度は、例えば、110℃~130℃であり、圧力は、例えば、0.11MPa~0.15MPaであり、時間は、例えば、15分~25分である。
【0091】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬添加工程を含んでいてもよい。
【0092】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される試料に加熱処理を行う加熱工程を含んでいてもよい。かかる場合、分析工程は、加熱処理後の試料について行う。加熱工程における加熱温度及び加熱時間は、分析対象及び前処理方法等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。加熱温度は、例えば、25℃~150℃であり、加熱時間は、例えば、5分~1時間である。
【0093】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される流動性試料から、ろ材シートの残渣を捕集する懸濁物捕集工程を含んでいてもよい。
【0094】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される流動性試料に界面活性剤を添加する界面活性剤添加工程を含んでいてもよい。
【0095】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記管路に沿って移送される流動性試料と、界面活性剤添加工程において添加した界面活性剤とを混合する混合工程を含んでいてもよい。
【0096】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、マーカーを検出して検出信号を分析装置に出力するマーカー検出工程を含んでいてもよい。かかる場合、前記分析工程は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得する。
【0097】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、セグメントを区画していた気泡を排出する脱気工程を含んでいてもよい。
【実施例0098】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0099】
(実施例1~4)
図4に示す流れ分析装置を用いて、連続流れ分析法(CFA)により、試料中の各成分の定量を行った。当該流れ分析装置に含まれるろ過装置は、
図1、2に示すろ過装置であった。試料供給部から供給される流動性試料の供給速度は1.2mL/分、ろ材シート120を通過して吸引される流動性試料の吸引速度は、1mL/分、ろ材シートの搬送速度は3cm/分であった。ろ材シート及びの支持部材の幅は25mm、ろ材シート及び支持部材の傾斜角度は12度、貫通孔の内径は1mm、吸引部の外径は3mm、吸引部の内径は1mmであった。ろ材シートとして、ろ紙シート(JIS P3801、定量分析用、5種B)を用いた。マーカーとして100mg/Lのロジウム、及び1Mの硝酸を用い、試薬として30%の過酸化水素を用い、界面活性剤として0.1%のトリトン-Xを用いた。用いた分析装置は、誘導結合プラズマ質量分析装置であった。
【0100】
試料として、3種類の工場排水であるサンプル1~3、及びCd、Pb、As、Se、Cr、Zn、Fe、Cu、Mn、B、及びAlがそれぞれ25μg/L含まれていることが既知のサンプル4を用いた。各成分について検量線を作成し、試料中の各成分を定量した。BL1~4は、純粋のブランクを示す。いずれの測定においても、マーカーとして用いたロジウムのピークが良好にみられた。結果を表1に示す。なお、Feの定量下限値は10μg/L、Fe以外の成分の定量下限値は5μg/Lであった。
【0101】
【0102】
前述したろ過装置を含む流れ分析装置を用いても、いずれのサンプルについても問題なく測定できることが分かった。
前記ろ材シートは、ロール状に巻回されたろ材シートが、巻き取り装置によって、巻き取られることによって、連続的に搬送可能になっている、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置。