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特開2022-177663防音壁ユニット及び防音板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177663
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】防音壁ユニット及び防音板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
G10K11/16 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084080
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】510118101
【氏名又は名称】株式会社丸高工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 一昌
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄造
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 一弥
(72)【発明者】
【氏名】徳永 光博
(72)【発明者】
【氏名】薩田 聡
(72)【発明者】
【氏名】小原 尚大
(72)【発明者】
【氏名】市川 愛友佳
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA04
5D061AA06
5D061BB21
5D061BB37
(57)【要約】
【課題】騒音の拡散を防止するとともに分解・再組立が容易な防音壁ユニットを提供する。
【解決手段】主面を有する複数の防音板100a~100gを各々の主面が同一面上となるように配置し、連結具200a~200gで連結するとともに、隙間が生じる場合は、空気の注入量に応じて体積が大きくなる防音袋600A~600Cで閉塞して防音壁ユニットを構成する。複数の防音板100a~100gは、それぞれ、耐水面を有する板体と、板体の耐水面と反対側の面に固定される遮音シートとを含み、遮音シート及び板体の露出面が吸振性を有する第1生地材、例えばパンチカーペットで覆われている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する複数の防音板を各々の主面が同一面上となるように配置して成る防音壁ユニットであって、
前記複数の防音板は、それぞれ、耐水面を有する板体と、前記板体の耐水面と反対側の面に固定される遮音シートとを含み、前記遮音シート及び前記板体の露出面が断熱防振性の第1生地材で覆われている、防音壁ユニット。
【請求項2】
前記遮音シートがゴム製又は樹脂製である、
請求項1に記載の防音壁ユニット。
【請求項3】
前記遮音シートと前記第1生地材との間に吸音材が介在する、
請求項1又は2に記載の防音壁ユニット。
【請求項4】
表裏面を有し、裏面側に前記第1生地材の任意の部位に剥離自在に付着される第2生地材が設けられ、表面側に前記第1生地材が設けられた防音帯をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音壁ユニット。
【請求項5】
隣り合う前記防音板同士を連結させる連結具をさらに有し、
前記連結具は、1枚の金属板の成型品であって、前記防音板の厚み分の間隔で対向する一対の長尺辺を有する平面領域と、
前記平面領域の一方の長尺辺及び他方の長尺辺からそれぞれ第1方向に延びて対向する一対の第1折曲片と、
前記平面領域の一方の長尺辺及び他方の長尺辺からそれぞれ第2方向に延びて対向する一対の第2折曲片と、に成型されており、
隣り合う2つの前記防音板の一方を前記一対の第1折曲片で挟持し、隣り合う2つの前記防音板の他方を前記一対の第2折曲片で挟持する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の防音壁ユニット。
【請求項6】
側面視で略平行四辺形となる可撓性の袋体に、吸音材及び遮音材の少なくとも一方を充填して構成された補填袋をさらに有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の防音壁ユニット。
【請求項7】
流体取込機構を備え、前記防音板では遮蔽しきれない隙間に入り込み、前記流体取込機構を通じて入り込んだ流体の量に応じてその体積が変化する防音袋をさらに有し、前記防音袋は、その外面に吸音材及び遮音材の少なくとも一方が当接する弾性チューブと前記吸音材及び先記遮音材とを前記第1生地材で包装して成る、
請求項1から6のいずれか一項に記載の防音壁ユニット。
【請求項8】
ゴム製、樹脂製又はこれらを組み合わせて成る遮音シートに吸音材を積層した複合シートを作成する第1工程と、
作成された前記複合シートを耐水面を有する木製合板の前記耐水面と反対側の面に固定する第2工程と、
前記木製合板の前記耐水面、端面及び前記遮音シートの表面を断熱防振性の第1生地材で覆う第3工程と、を有する、
防音板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源の近傍に仮設して騒音の周囲への拡散を防ぐとともに分解・再組立が容易な防音壁ユニット及び防音板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音が周囲に拡散することを防止する技術として、例えば特許文献1に記載された防音パネル、特許文献2に記載された防振材、特許文献3に記載された吸音マットなどが知られている。特許文献1に記載の防音パネルは、互いを繋いで騒音源を覆うための接続部がその縁部に形成された枠体と、この枠体内の適所に設けられた補強材と、補強材の下部に設けられた鉄板層と、鉄板層の下面に打設したコンクリート層と、コンクリート層の下面に、空気層を介して設けた吸音層とを備える。また、特許文献2に記載の防振材は、複数の防振ゴムが所定の間隔を設けて配置され、間隔部分には合成樹脂発泡体と板材又は網材とが積層されて配置され、防振ゴムと合成樹脂発泡体と板材又は網材とが一体的に構成されるものである。特許文献3に記載の吸音マットは、吸音性または吸音断熱性を有するシート状材料を天然または合成布地で包囲するとともに、このシート状材料を包囲した布地の縁部を補強用材料で補強して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-032400号公報
【特許文献2】特開平09-242314号公報
【特許文献3】特開平11-022055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建造物の内装工事の現場では、作業箇所に応じて防音壁を設置したり、移動させることが多い。また、作業時には、電動工具が作動するときの打撃音のほか、金属製の建材同士が衝突する際の衝撃音や作業者の発声音など、様々な周波数の騒音が入り混じる。特許文献1に記載された防音パネルは、鉄板層とコンクリート層とを含んで構成されるため、剛性は高いものの一度設置するとサイズの変更や移設が困難であり、仮設用に適さない。特許文献2に記載の防振材も同様であり、防振ゴムと合成樹脂発泡体と板材又は網材とが一体的に構成されているため、設置後の移設が困難であり、仮設用に適さない。また、特許文献3に記載の吸音マットは、シート状材料で包囲された布地の縁部を補強用材料で補強するだけなので、防音壁として使用するためは充分な剛性を得ることが困難である。
【0005】
本発明は、様々な周波数の騒音発生源の近傍に任意のサイズで仮設して騒音の拡散を防ぐとともに分解・再組立が容易な防音壁ユニットを提供することを主たる目的とする。本発明の他の目的は、防音壁ユニットの主要部品となる防音板の製造方法を提供することにある。本発明のその他の目的は、後述する実施の形態例から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の一態様は、主面を有する複数の防音板を各々の主面が同一面上となるように配置して成る防音壁ユニットであって、前記複数の防音板は、それぞれ、耐水面を有する板体と、前記板体の耐水面と反対側の面に固定される遮音シートとを含み、前記遮音シート及び前記板体の露出面が断熱防振性を有する第1生地材で覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の実施の態様は、ゴム製、樹脂製又はこれらを組み合わせて成る遮音シートに吸音材を積層した複合シートを作成する第1工程と、作成された前記複合シートを耐水面を有する木製合板の前記耐水面と反対側の面に固定する第2工程と、前記木製合板の前記耐水面、端面及び前記遮音シートの表面を断熱防振性の第1生地材で覆う第3工程と、を有する、防音板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防音板を構成する板体(例えば木製合成)の耐水面、遮音シート(例えばゴム製、樹脂製又はこれらを組み合わせて成るシート)、断熱防振性の第1生地材により、様々な周波数の騒音の拡散を防ぐとともに、複数の防音板で防音壁ユニットを構成することから、分解、再組立が容易になるという格別の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本実施形態の防音板の斜視図、(b)は主面を上方から視た上面図、(c)は防音板の側面側の構造説明図、(d)は防音板の端面側の構造説明図である。
図2】防音板を製造するための工程図である。
図3】(a)は本実施形態で用いる連結具の平面図、(b)、(c)は連結具の折曲状態のバリエーションを示す図、(d)は隣り合う防音板の連結状態を示す図である。
図4】(a)は本実施形態で用いる防音帯の正面図、同(b)は裏面図、同(c)は側面図である。
図5】(a)は長いサイズの補填袋の右側面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
図6】(a)は短いサイズの補填袋の右側面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
図7】(a)は本実施形態で用いる防音袋の上面図、(b)は側面図である。
図8】防音袋の構造説明図である。
図9】本実施形態の防音壁ユニットの一態様を示した図。
図10】本実施形態の防音壁ユニットの他の一態様を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。本実施形態では、例えば建造物の内装工事の現場などにおいて、電動工具を使用する際の打撃音、モータ音、金属部材の衝突音、作業者の発声音など、可聴音以外の周波数の音を含む様々な音が突発的に発生する作業現場を囲うために仮設される防音壁ユニットに適用した場合の例を説明する。本実施形態の防音壁ユニットは、複数の防音板、可撓性を持つ補填袋、隙間などを塞ぐ防音袋、必要に応じて使用される、隣り合う防音板同士を離脱自在に連結させる連結具などを含んで構成される。
【0011】
<防音板>
図1(a)は本実施形態に係る防音板100の斜視図、(b)は主面(幅広面)を上方から視た上面図、(c)は防音板100の側面側の構造説明図、(d)は防音板100の端面側の構造説明図である。図1(a),(b)を参照すると、防音板100は、主面である幅広面の縦(長尺辺)のサイズがW11、横(幅)のサイズがH11、高さ(厚み)のサイズがD11の四角形又は略四角形のパネル体である。これらの縦横のサイズW11,H11は、複数枚でベニア板の基本サイズ(910mm×1820mm)となる小型サイズであって良い。また、同じ縦横のサイズW11,H11のものが複数枚製造されるが、その場合、厚みD11は、ほぼ同じにしておくことが望ましい。なお、図1(c),(d)では、構造説明の便宜上、実際には接触している部材同士が離れており、それ故に、実際の防音板100の厚みD11よりも大きいサイズで示されている。
【0012】
防音板100は、工具類や金属部材等が衝突しても変形することのない高い剛性を有する板体11を基材とする。板体11には、幅広面の表面が耐水面111となる木材(例えばラワン)合板112を用いることができる。木材合板112は、音の吸音率、透過率又は反射係数が異なる複数種類の木材を加熱押圧して規格品の縦横サイズに製造されたものであり、同じ厚みであれば、単層板よりも剛性が高く、吸遮音効果もある。
【0013】
また、耐水面111は、木材合板の合板組織の露出面が研磨された後、硬化剤入りの耐水塗料等でコーティングされているため、垂直入射音の通過を遮断し、垂直以外の角度で入射される音についてはそれを反射させる効果がある。反射された音のうち、木材合板112に再び向かう音は音圧が減衰され、やがて消滅する。板体11は、一般的な木材合板の表面を耐水性塗料でコーティングして作成しても良いが、コンクリートの型枠用合板である木製コンクリートパネル(以下、「コンパネ」と略す)を所定サイズに裁断して用いることもできる。コンパネは、コンクリート製造作業に用いたものであっても良いので、防音のコストパフォーマンスを高めることができる。以後の説明では、板体11をコンパネ11と称する場合がある。
【0014】
防音板100は、例えば図2の工程を経て製造することができる。まず、所定サイズ、例えばコンパネ11の基本サイズ(910mm×1820mm)を整数分の1に裁断したサイズのコンパネ11を作業台にセットする。必要に応じて、四つの端面あるいは幅広面の角部に、鬼目ナット(登録商標)を打ちこむ(S101)。鬼目ナットは、複数の防音板100を主面に対して所定角度で連結して防音室を組み立てたり、後述する連結具200を補強するためなどに使用される。鬼目ナットを用いることで、部材組織を壊すことなく、何度でも分解・再組立することが可能となる。
【0015】
所定サイズのコンパネ11を作業台にセットすると、次に、シート状の防音ゴムマット12をコンパネ11の縦横サイズに合わせて裁断する(S102)。防音ゴムマット12は、市販品を裁断して用いることができる。防音ゴムマット12は、音の通過を遮断するとともに、表面に加わる音圧に起因する振動、特に900Hz未満の低周波音を吸収する厚みのものを用いることができる。
【0016】
また、綿状のグラスウール13をガラスクロス14で包み込み、これを防音ゴムマット12の露出面に積層させて複合シートを作成する(S103)。グラスウール13は、様々な方向からランダムな音圧で伝達される様々な周波数の振動波、特に900Hz以上の様々な周波数の音を90%以上の吸音率で吸収する素材(市販品)を用いることができる。ガラスクロス14は、それ自体で吸音するが、グラスウール13を板体11上で四角柱状に成型する役割を果たす。グラスウール13とガラスクロス14は、吸音率が異なる素材のものを用いることができる。
【0017】
ガラスクロス14は、グラスウール13をすべてを包み込んでも良く、あるいは、グラスウール13をシート状に成形してその幅広部を露出させた状態で包み込んでも良い。このようにして作成された複合シートは、様々な方向から様々な周波数及び音圧で入射された音を効果的に吸収する複合吸音材として機能する。そのため、複合シート内外における音の伝搬を効果的に阻止することができる。
【0018】
上記のようにして作成した複合シートを、コンパネ11の耐水面111(表面)に対して反対側となる面(裏面)に固定する(S104)。これにより、コンパネ11の耐水面111を基層として、木材合板112、防音ゴムマット12、グラスウール13、ガラスクロス14の順に積層された状態となり、コンパネ11付近における音の振動、振動の伝達並びにコンパネ11の表裏面での音の通過がより確実に阻止される。
【0019】
次に、コンパネ11の端面に、端部パンチカーペット15を貼り合わせる(S105)。端部パンチカーペット15は、端部からの音の入り込みや外部への音の漏れを抑制する。端部パンチカーペット15は、後述する裏面部パンチカーペット16及び表面部パンチカーペッド17と同じ断熱防振性の生地材であっても良いが、異なる種類の生地材にしても良い。あるいは、防音ゴムシートその他の遮蔽シートを貼り合わせても良く、耐水性塗料でコーティングしても良い。
【0020】
次に、コンパネ11の裏面及びすべての端面を裏面部パンチカーペット16で覆い、その裏面部パンチカーペット16の端部を、コンパネ11の表面の端面付近まで延ばした後、タッカーの針101で留める(S106)。また、コンパネ11の表面の露出部を表面部パンチカーペット17で覆い、タッカーの針101で止める(S107)。タッカーの針101は、コンパネ11の角部を除き、それぞれの露出部を、隣り合う針101の露出部と同一面上で直線状になるように打ち込む。その際、各針101の露出部の長さが、隣り合う他の針101の露出部の長さよりも短くなる間隔で打ち込むことが、各パンチカーペット16,17の剥離や音の拡散を防ぐ上で有効である。
なお、各パンチカーペット16,17は、タッカーの針101でなく、釘や楔で固定させても良い。
【0021】
裏面部パンチカーペット16及び表面部パンチカーペット17は、繊維を絡み合わせた不織布のカーペットであり、その表面が、後述するフック状に起毛する加工シート生地材(第2生地材)を剥離自在に付着させる生地材である。このような加工シート生地材が付着する生地材で、断熱性が確保される生地材であれば、パンチカーペット以外の生地材を用いることもできる。
【0022】
最後に、鬼目ナット付近をカッターで十字状に切り込む(S108)。鬼目ナットを使用するときは、切り込まれた部分を捲りあげる。鬼目ナットを使用しないときは、切り込まれた部分を元に戻し、鬼目ナットが露出しないようにする。
【0023】
以上のようにして製造された防音板100は、コンパネ11を基材とし、耐水面111を遮音材、木材合板112を吸音材として用いるので、剛性が高く、それ自体で壁としての機能を果たすことができる。また、防音ゴムマット12で900Hz未満の低周波音の拡散を抑制し、グラスウール13及びガラスクロス14で900Hz以上の可聴周波数音を吸音するので、高価な防音材を用いる必要がなく、製造コストに対する防音パフォーマンスを格段に高めることができる。
さらに、複数枚の防音板100を、それらの主面が同一面上となるように配置した任意サイズの防音壁ユニットを組み立てたり、複数の防音壁を立体的に連結して防音室の一部を形成することもできる。また、防音壁ユニットは、各防音板100を分解して再組立てることもできるので、仮設の作業をきわめて簡略にすることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、遮音シートとして防音ゴムマット12を使用した例を説明したが、防音ゴムマット12に代えて、アクリル板やプラスチック板などの合成樹脂板を用いても良い。
【0025】
<連結具>
次に、隣り合う一対の防音板100同士を同一平面上で連結させる際に使用される連結具について説明する。図3(a)は、本実施形態に係る連結具200の平面図である。この連結具200は、1枚の金属板、例えば四角形状の鋼板により簡易に作成することができる。すなわち、図3(a)に示されるように、金属板の長辺のほぼ中央部から短辺と平行に、防音板100の厚み分の間隔で対向する一対の長尺辺2031,2032を有する平面領域203が形成される。また、金属板のうち平面領域203に対して相対的に上方となる上方領域と、相対的に下方となる下方領域に、それぞれ、外縁から所定距離だけ内側よりで長尺辺2031,2032部分を除く3辺が切り欠かれる。切り欠かれた部分以外の領域は、枠状となる。
【0026】
上方領域の枠状の領域を、便宜上、第1枠領域201と呼ぶ。また、上方領域の切り欠かれた部分を外縁とする領域を、便宜上、第1切欠領域204と呼ぶ。同様に、下方領域の枠状の領域を、便宜上、第2枠領域202と呼ぶ。また、下方領域の切り欠かれた部分を外縁とする領域を、便宜上、第2切欠領域205と呼ぶ。
【0027】
金属板のうち、第1枠領域201と第2枠領域202は、平面領域203に対して第1方向、例えば鉛直上方に折曲しても良いし、第2方向、例えば鉛直下方に折曲しても良い。ただし、第1切欠領域204は、第1枠領域201に対して反対方向に折曲され、第2切欠領域205は、第2枠領域202に対して反対方向に折曲される。
図3(b)は、第1枠領域201を平面領域203に対して第1方向に折曲し、第1切欠領域204を平面領域203に対して第2方向に折曲するとともに、第2枠領域202を平面領域203に対して第2方向に折曲し、第2切欠領域205を平面領域203に対して第1方向に折曲した例である。
図3(c)は、第1枠領域201を平面領域203に対して第1方向に折曲し、第1切欠領域204を平面領域203に対して第2方向に折曲するとともに、第2枠領域202を平面領域203に対して第1方向に折曲し、第2切欠領域205を平面領域203に対して第2方向に折曲した例である。なお、図3(b)の上下方向を逆にした態様で折曲しても良い。
【0028】
いずれの場合も、平面領域203の一方の長尺辺及び他方の長尺辺からそれぞれ第1方向に延びて対向する一対の第1折曲片と、平面領域203の一方の長尺辺及び他方の長尺辺からそれぞれ第2方向に延びて対向する一対の第2折曲片とに成型され、隣り合う2つの防音板の一方を一対の第1折曲片で挟持し、隣り合う2つの防音板の他方を一対の第2折曲片で挟持する。図3(d)は、隣り合う2つの防音板100A,100Bを連結した状態を示す正面図である。第1枠領域201は、一方の防音板100Aの正面側を鋏持し、第1切欠領域204は、他方の防音板100Bの正面側を鋏持している。
【0029】
このような構造の連結具200を用いることにより、端面が対向する一対の防音板100A,100Bを簡易に連結し、あるいは、取り外すことができる。また、各防音板100A,100Bの縦横サイズが異なっていても、厚みが同じであれば、これらを連結させて、各防音板100A,100Bの主面が同一平面となる防音壁ユニットを容易に組み立てたり、取り外すことができる。
【0030】
なお、図3(a),(d)は、金属板が四角形の鋼板である場合の例を示したが、金属板の形状は、円形、楕円形、三角形、五角以上の多角形その他の形状であっても良い。サイズも任意であって良い。また、第1枠領域201と第2枠領域202、第1切欠領域204と第2切欠領域205は、それぞれ互いに異なる形状であっても良い。さらに、連結した後に、ネジ止め等で各防音板100に仮止め固定する構造にしても良い。
【0031】
<防音帯>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る防音帯300について説明する。図4(a)は防音帯300の正面図、同(b)は裏面図、同(c)は側面図である。防音帯300は、長尺袋状に加工された表裏面を有する。その表面側には、防音板100の裏面部パンチカーペット16又は表面部パンチカーペット17と同じ色の同じ生地材(第1生地材)301を用いることができる。裏面側には、フック状に起毛し、裏面部パンチカーペット16又は表面部パンチカーペット17の表面に剥離自在に付着する加工シート生地材(第2生地材)302を用いることができる。加工シート生地材302の略中央部には、ファスナー303が設けられる。ファスナー303は、防音帯300の表面部と裏面部との間の空洞に、ゴムシート、軟質アクリルシート、ガラスクロスなどを詰め込んで、その厚みを調整するために設けられる。なお、図4におけるファスナー303の位置は例示であって、他の位置に設けても良い。また、ファスナー303に代わる他の留具を用いても良い。あるいは、留具を用いず、空洞にゴムシートやガラスクロスなどを詰め込んだ後に、縫い付ける構成であっても良い。
【0032】
このように構成される防音帯300は、その生地材自体で防振効果を奏するが、内部にゴムシート等を詰め込むことで、入射音の音圧を下げたり、入射音の拡散を抑止することができる。そのため、一対の隣り合う防音板100間に僅かな隙間が生じる場合であっても、当該隙間を防音帯300で塞ぐことで、各防音板100による防音性能の低下を回避することができる。また、防音帯300の表面側が、各防音板100と同じ色の第1生地材301で構成されているので、上記隙間を覆い隠すことができる。また、防音帯300の裏面部の加工シート生地材302が第1生地材301に剥離自在に付着できる生地材なので、上記隙間を簡易に覆い隠すことができ、さらに、防音帯300を積層して使用することもできる。
【0033】
<補填袋>
防音壁ユニットの一部に吸排気用のパイプあるいは給排水用のホースなどが設けられ、これらの配設位置を変更できない場合がある。また、既設の壁を防音壁ユニットとする際に当該壁に配管などが設けられている場合もある。そこで、本実施形態では、パイプ、ホース、配管などが存在する場合、それらの周辺を塞いで音の漏れ等を抑止する補填袋について説明する。
【0034】
図5及び図6は、本実施形態の補填袋500の構造説明図であり、それぞれ(a)は右側面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。図5図6は、サイズが異なるだけで同じ構造なので、便宜上、同じ符号を付してある。
【0035】
補填袋500は、右側面視又は左側面視で略平行四辺形の可撓性の第3生地材で構成された袋体501を有する。第3生地材は、パイルカーペットであっても良いが、可撓性を重視する観点からは、より薄い、綿アクリル混、ポリエステル綿混、綿麻混などを用いることができる。図5に示す袋体501のサイズは、長尺方向で910mm、幅が70mmである。また、図6に示す袋体501のサイズは、長尺方向で455mm、幅が70mmである。袋体501の内部には、それぞれ吸音材及び遮音材の少なくとも一方が充填される。吸音材は、900Hz以上の周波数で90%以上の吸音率を有するポリエステル素材(市販品)を用いることができる。遮音材は、オレフィン系樹脂に高比重成分を配合したシート材(市販品)を用いることができる。
【0036】
袋体501の前端部は、傾斜部5011と非傾斜部5012が設けられている。また、袋体501の後端部は、傾斜部5013と非傾斜部5014が設けられている。傾斜部5011,5013は、中央部から外周方向に渦巻き状に巻いたときの中央部の隙間を少なくするとともに、外周径の偏差を小さくするために設けられる。また、端部同士を対向させたときに略同径の環状となるようにするために設けられる。また、非傾斜部5012,5014は、補填袋500を巻回したときに内側の角部を傾斜部5011,5013の基部付近に食い込んで離れにくくするために設けられる。
なお、非傾斜部5012,5014は、図示の例では角部になっているが、補填袋500に吸音材等が充填されているため、実際はR状に近い形状となる。
【0037】
このように構成される補填袋500は、例えば複数の防音壁100で囲まれた直方体の空間の中央部に配管等が存在するために当該配管等の周囲に空隙が生じている場合の空隙の補填に使用される。そして、図5に例示される比較的長いものは、配管等に渦巻き状に巻き付けて使用される機会が多いが、一対の端部がそれぞれ傾斜部5011,5013になっているため、配管等への巻き始めの部分の隙間を小さくすることができる。最外端においても防音壁100の端面との間の隙間を小さくすることができる。
また、非傾斜部5012,5014により、渦巻き状や環状を維持することができる。そのため、配管を通じて補填袋500に伝達される音は、袋体501に充填された吸音材又は遮音材により吸収され、配管周囲への拡散が抑止される。
【0038】
<防音袋>
次に、本実施形態に係る防音袋600について説明する。この防音袋600は、上述した防音板100では遮蔽しきれない隙間に入り込み、流体取込機構を通じて入り込んだ流体の量に応じてその体積が変化する袋体を含んで構成される。
【0039】
図7(a)は防音袋600の主要部品である弾性チューブ(本例ではゴムチューブ)601の上面図、同(b)は側面図である。また、図8はこの防音袋600の構造説明図である。本実施形態では、流体として圧縮空気を用いる場合の例を挙げる。袋体は、主として、内部に空気の充填空間610が形成されるゴムチューブ601の周囲に吸音材612及び遮音シート613を当接した後、防音板100において用いたものと同色の第1生地材(パンチカーペット)602で全体を覆って構成される。
【0040】
ゴムチューブ601は、例えば図7(a)に示すように上面視で四角形であり、図7(b)に示すように側面視で略楕円形である。ゴムチューブ601の両端部は、ゴム板605,606で封止される。
【0041】
ゴムチューブ601の所定部位には、流体取込機構が取り付けられる。流体取込機構は、本実施形態では、米式バルブ(American Valve)604を主たる部品として含む。米式バルブ604は、米国の自動車や自動二輪に使用されるものと同じ構造のバルブであり、300~600kPaの空気圧に耐える構造を有するものとして市販されている。すなわち、プランジャー(弁体)にバネを装着し、その伸縮力で弁の開閉を行う。耐久性が高く、英式バルブや仏式バルブに比較して空気漏れが最も少なく空気保持性に優れるとされる。
【0042】
本実施形態では、ゴムチューブ601の内側に内部ゴムパッキン6042を介してバルブベース6040を固定するとともに、ゴムチューブ601の外側のバルブステム6041との間に、外部ゴムパッキン6043、ワッシャ6044、スプリングワッシャ6045を介挿し、ナット6046で締付固定されるものを流体取込機構として用いる。バルブステム6041はL型であり、図示しないエアコンプレッサの出力部にナット6047で固定される。
【0043】
ゴムチューブ601のサイズは、任意であるが、一例としては、長尺方向の長さL71は、コンパネ11の基本サイズのうち幅に相当する約910mm、ゴム板605,606の長さ(突出量)L72は15mm、一方のゴム板605の先端から米式バルブ604の取付位置までの長さL73は150mm、厚さD71は6mmである。
【0044】
このような構造の防音袋600は、空気を抜いた初期状態のときは、ゴムチューブ601、吸音材612,遮蔽シート613の厚みだけのサイズとなる。この初期状態で米式バルブ604を前面に出し、狭い隙間にセットした後、米式バルブ604から圧縮空気を注入すると、防音袋600は膨張して隙間を塞ぐ。分解するときは、空気を抜いて初期状態に戻し、再組立の際に、上記のように圧縮空気を注入すれば良い。
【0045】
<防音板等の使用態様>
次に、上述した防音板100等の使用態様について説明する。
図9は、本実施形態の防音壁ユニットの一態様を示した図であり、建造物の既設の壁の表面に、11枚の防音板100a~100kを連結して当接させた防音壁ユニットの部分例が示されている。
ここでは、防音板100a~100dと防音板100e~100hは同じサイズであるが、防音板100i~100kは、高さが同じで幅が小さいものが用いられている例が示されている。また、必ずしもそのようにする必要はないが、防音板100a~100dを連結させる連結具200a~200cと防音板100e~100hを連結させる連結具200e~200gは、同じサイズのものであるが、防音板100i~100kを連結させる連結具200h,200iは、少し小さめのサイズのものが使用されている。
また、小さいサイズの防音板100i~100kと大きいサイズの防音板100e~100hとの間に隙間が生じている。そのため、それぞれ異なる長さの3つの防音袋600A~600Cが、その隙間に装着され、米式バルブ604を介して圧縮空気により膨張して隙間を塞いでいる。
また、図上部には既設の配管900が存在する。この配管900の周囲は防音板100では塞ぐことができないので、補填袋500を巻いて配管900の周囲を塞いでいる。
【0046】
図10は、図9の防音壁ユニットに防音帯300A~300Fを貼り付けた例を示す。図9の場合、入射音の周波数や音圧によっては、防音板100a~100hのつなぎ目の部分や防音袋600A~600Cの隙間から漏れるおそれがある。また、連結具200a~200gも露出しているため、つぎはぎ感が残る。そこで、上記つなぎ目の部分に防音帯300A~300Fを付着するとともに、これらの防音帯300A~300Fの上に、別の防音帯300G~300Lを付着させたのが図10の例である。
防音帯300A~300Lは、防音板100a~100hと同じ色及び同じ材質のパンチカーペットであるため、防音壁ユニットを1枚の防音壁として違和感なく使用することができる。なお、図10の例では、配管900の近傍の補填袋500の部分については、防音帯300が付着されていないが、補填袋500の周囲の防音板100a,100i,100eにその一部が重なるサイズの防音帯300を用いることで、補填袋500が露出する面積を小さくすることができる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、様々な周波数の音の拡散を防止する複数の防音板100を連結具200で離脱自在に連結させ、連結時に生じる隙間には防音帯300を剥離自在に付着させ、隙間が大きい場合は防音袋600でそれを塞ぎ、配管900が存在する場合はその周辺を補填袋500で塞ぐので、様々な周波数の騒音の拡散を防ぐとともに、分解、再組立が容易な防音壁ユニットを実現することができる。
なお、防音板100、連結具200、補填袋500、防音袋600の使用態様が図9,10の態様に代表されるものでないことは勿論である。
また、本実施形態の防音板100を用いた防音壁ユニットは、工事現場のほか、家庭や事業所における防音壁として使用することもできる。
図1
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図7
図8
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図10