IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ソフト株式会社の特許一覧

特開2022-177677仮想空間ビデオ通話システムおよび方法
<>
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図1
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図2
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図3
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図4
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図5
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図6
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図7
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図8
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図9
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図10
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図11
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図12
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図13
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図14
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図15
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図16
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図17
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図18
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図19
  • 特開-仮想空間ビデオ通話システムおよび方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177677
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】仮想空間ビデオ通話システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20221124BHJP
   G06Q 10/10 20120101ALI20221124BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20221124BHJP
   H04N 7/14 20060101ALI20221124BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20221124BHJP
【FI】
G06T19/00 300A
G06Q10/10
G06F13/00 650R
G06F13/00 650A
H04N7/14 170
H04N21/431
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084100
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】593059773
【氏名又は名称】富士ソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 知則
(72)【発明者】
【氏名】信原 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】秋田 仁
【テーマコード(参考)】
5B050
5B084
5C164
5L049
【Fターム(参考)】
5B050AA10
5B050BA09
5B050BA11
5B050CA07
5B050CA08
5B050EA09
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA05
5B084AA01
5B084AA16
5B084AA18
5B084AA30
5B084AB07
5B084AB11
5B084AB13
5B084AB31
5B084AB39
5B084BA07
5B084BB01
5B084CA07
5B084CB06
5B084CB12
5B084CB23
5B084CE02
5B084CE12
5B084CF03
5B084CF12
5B084DB02
5B084DB08
5B084DC02
5B084DC03
5B084DC06
5B084EA17
5B084EA47
5C164FA10
5C164SC11S
5C164UB90P
5C164VA16P
5C164YA21
5L049AA12
(57)【要約】
【課題】ユーザにとっての使い勝手を向上できるようにした仮想空間ビデオ通話システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】仮想空間ビデオ通話システム1は、複数のクライアント端末3へ提供される仮想空間4を制御する仮想空間制御部21と、仮想空間でのビデオ通話を制御するビデオ通話制御部22とを備え、仮想空間制御部は、複数のクライアント端末のうち第1クライアント端末に対応する第1アバターが、複数のクライアント端末のうち第2クライアント端末に対応する第2アバターに仮想空間で接触したか判定し、ビデオ通話制御部は、仮想空間制御部により第1アバターと第2アバターとが仮想空間で接触したと判定されると、第1クライアント端末と第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアント端末が仮想空間を介してビデオ通話を行う仮想空間ビデオ通話システムであって、
前記複数のクライアント端末へ提供される仮想空間を制御する仮想空間制御部と、
前記仮想空間でのビデオ通話を制御するビデオ通話制御部とを備え、
前記仮想空間制御部は、前記複数のクライアント端末のうち第1クライアント端末に対応する第1アバターが、前記複数のクライアント端末のうち第2クライアント端末に対応する第2アバターに前記仮想空間で接触したか判定し、
前記ビデオ通話制御部は、前記仮想空間制御部により前記第1アバターと前記第2アバターとが前記仮想空間で接触したと判定されると、前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させる
仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項2】
前記ビデオ通話制御部は、前記仮想空間制御部により前記第1アバターと前記第2アバターとが前記仮想空間で接触したと判定されると、前記第1アバター内に前記第1クライアント端末からの画像を表示させると共に、前記第2アバター内に前記第2クライアント端末からの画像を表示させることにより、前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させる
請求項1に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項3】
前記ビデオ通話制御部は、前記仮想空間制御部により前記第1アバターと前記第2アバターとが離れたと判定されると、前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間のビデオ通話を終了させる
請求項2に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項4】
前記仮想空間制御部は、前記ビデオ通話制御部により前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間でビデオ通話が開始される際に、前記第1アバターおよび前記第2アバターの少なくとも一部を拡大させる
請求項2に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項5】
前記仮想空間制御部は、前記ビデオ通話制御部による前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間のビデオ通話の準備中に、前記第1アバターおよび前記第2アバターにビデオ通話を準備中であることを示す所定のエフェクトを設定する
請求項1に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項6】
前記仮想空間制御部は、前記第1アバターが前記仮想空間を移動することにより前記第2アバターに接触したかを判定する
請求項1に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項7】
前記仮想空間制御部は、前記第1クライアント端末により前記第1アバターの目的位置が指定されると、前記第1アバターの現在位置から前記目的位置までの所定の経路を算出し、前記算出された所定の経路に沿って前記第1アバターを移動させる
請求項6に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項8】
前記所定の経路を決定する複数の経路モードがあらかじめ用意されており、
前記仮想空間制御部は、前記複数の経路モードのうち前記第1クライアント端末により選択された経路モードにしたがって前記所定の経路を算出する
請求項7に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項9】
ビデオ通話制御部は、前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間のビデオ通話からキーワードを抽出し、
前記仮想空間制御部は、前記ビデオ通話制御部により抽出されたキーワードの少なくとも一部を、前記第1クライアントまたは前記第2クライアント端末以外の他のクライアント端末から確認できるように前記仮想空間に表示させる
請求項1に記載の仮想空間ビデオ通話システム。
【請求項10】
複数のクライアント端末が仮想空間を介してビデオ通話を行う方法であって、
前記複数のクライアント端末と双方向通信可能に接続される計算機は、
前記複数のクライアント端末のうち第1クライアント端末に対応する第1アバターが、前記複数のクライアント端末のうち第2クライアント端末に対応する第2アバターに前記仮想空間で接触したか判定し、
前記仮想空間制御部により前記第1アバターと前記第2アバターとが前記仮想空間で接触したと判定されると、前記第1クライアント端末と前記第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させる
ビデオ通話方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間ビデオ通話システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザがネットワーク上のサーバに設けられた仮想空間に集い、チャットやゲームなどを通じて交流する技術は知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5969476号公報
【特許文献2】特開2003-058484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年は、在宅で仕事をするテレワークの普及に伴い、コミュニケーションの機会が不足しており、職場の仲間意識の維持や情報共有などに問題が生じている。
【0005】
そこで、仮想的なオフィスに社員のアバターを集め、ビデオ通話することが考えられるが、一般的なビデオ通話システムでは、仮想オフィス内のアバター位置に関係なく、通話相手をリストから選択して通話開始ボタンを操作する。したがって、仮想オフィスにビデオ通話を導入した場合であっても、それはスマートフォンなどでビデオ通話するのと大差なく、現実のオフィスで頻繁に行われているような、話したい人の傍に行って話しかけるという気軽さや便利さに欠ける。
【0006】
ところで音声通話の場合はデータ量が少ないため、例えばアバターに設定された円形の通話範囲内の他のアバターを音声チャネルへ自動的に招待し、音声通話を開始することも考えられる。
【0007】
しかし、ビデオ通話の場合は、音声通話よりもデータ量が大きい。したがって、仮に、通話範囲内の他のアバターとビデオ通話を自動的に開始する方法の場合、コンピュータリソースおよび通信帯域を多量に消費する。一方、ビデオ通話を開始するためのボタンを画面に用意し、そのボタンを押したときにビデオ通話を始めることも考えられるが、その場合は、通話開始のために特別な操作が必要となり、現実のオフィスで会話を始める場合とは乖離しており、ユーザにとっての使い勝手が低く、気軽なコミュニケーションを促進することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ユーザにとっての使い勝手を向上できるようにした仮想空間ビデオ通話システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの観点に係る仮想空間ビデオ通話システムは、複数のクライアント端末が仮想空間を介してビデオ通話を行う仮想空間ビデオ通話システムであって、複数のクライアント端末へ提供される仮想空間を制御する仮想空間制御部と、仮想空間でのビデオ通話を制御するビデオ通話制御部とを備え、仮想空間制御部は、複数のクライアント端末のうち第1クライアント端末に対応する第1アバターが、複数のクライアント端末のうち第2クライアント端末に対応する第2アバターに仮想空間で接触したか判定し、ビデオ通話制御部は、仮想空間制御部により第1アバターと第2アバターとが仮想空間で接触したと判定されると、第1クライアント端末と第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させる。
【0010】
ビデオ通話制御部は、仮想空間制御部により第1アバターと第2アバターとが仮想空間で接触したと判定されると、第1アバター内に第1クライアント端末からの画像を表示させると共に、第2アバター内に第2クライアント端末からの画像を表示させることにより、第1クライアント端末と第2クライアント端末との間でビデオ通話を開始させることができる。
【0011】
ビデオ通話制御部は、仮想空間制御部により第1アバターと第2アバターとが離れたと判定されると、第1クライアント端末と第2クライアント端末との間のビデオ通話を終了させてもよい。
【0012】
仮想空間制御部は、ビデオ通話制御部により第1クライアント端末と第2クライアント端末との間でビデオ通話が開始される際に、第1アバターおよび第2アバターの少なくとも一部を拡大させることができる。
【0013】
仮想空間制御部は、ビデオ通話制御部による第1クライアント端末と第2クライアント端末との間のビデオ通話の準備中に、第1アバターおよび第2アバターにビデオ通話を準備中であることを示す所定のエフェクトを設定することもできる。
【0014】
仮想空間制御部は、第1アバターが仮想空間を移動することにより第2アバターに接触したかを判定してもよい。
【0015】
仮想空間制御部は、第1クライアント端末により第1アバターの目的位置が指定されると、第1アバターの現在位置から目的位置までの所定の経路を算出し、算出された所定の経路に沿って第1アバターを移動させてもよい。
【0016】
所定の経路を決定する複数の経路モードがあらかじめ用意されており、仮想空間制御部は、複数の経路モードのうち第1クライアント端末により選択された経路モードにしたがって所定の経路を算出してもよい。
【0017】
ビデオ通話制御部は、第1クライアント端末と第2クライアント端末との間のビデオ通話からキーワードを抽出し、仮想空間制御部は、ビデオ通話制御部により抽出されたキーワードの少なくとも一部を、第1クライアントまたは第2クライアント端末以外の他のクライアント端末から確認できるように仮想空間に表示させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の仮想空間ビデオ通話システムの全体概要図。
図2】仮想空間ビデオ通話システムの機能構成図。
図3】仮想オフィスの説明図。
図4】ビデオ通話の準備中であるアバターの様子を示す説明図。
図5】ビデオ通話中の様子を示す説明図。
図6】アバターの位置およびサイズを調整した様子を示す説明図。
図7】全体処理のフローチャート。
図8】ビデオ通話処理のフローチャート。
図9】ビデオ通話に他のアバターが加わる様子を示す説明図。
図10】3人でビデオ通話する様子を示す説明図。
図11】移動中のアバターに他のアバターが接触することによりビデオ通話が開始される様子を示す説明図。
図12】ビデオ通話中の様子を示す説明図。
図13】第2実施例に係り、ビデオ通話中のキーワードを仮想オフィスに表示させる処理を示すフローチャート。
図14】ビデオ通話中のアバターのキーワードを表示する様子を示す説明図。
図15】第3実施例に係る全体処理のフローチャート。
図16】第4実施例に係る全体処理のフローチャート。
図17】移動モードに応じて経路を決定するテーブル。
図18】第5実施例に係る全体処理のフローチャート。
図19】第6実施例に係る仮想空間ビデオ通話システムの機能構成図。
図20】第7実施例に係る全体処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、自分のアバターを話したい相手のアバターに向けて移動させて接触させるだけという直感的操作により、現実のオフィスでの会話と同様に、手軽に他のユーザとビデオ通話できるようにした仮想空間ビデオ通話システムを提供する。
【0020】
図1は、本実施形態の仮想空間ビデオ通話システム1の全体概要を示す。仮想空間ビデオ通話システム1は、例えば、仮想オフィス提供サーバ2と、複数のクライアント端末3とを備えている。
【0021】
仮想オフィス提供サーバ2は、「仮想空間」としての仮想オフィス4を各クライアント端末3へ提供する。仮想オフィス提供サーバ2は、仮想オフィス4を制御する「仮想空間制御部」としての仮想オフィス制御部21と、仮想オフィスで行われるビデオ通話を制御するビデオ通話制御部22を備える。以下の説明では、仮想空間ビデオ通話システム1をビデオ通話システム1と、仮想オフィス提供サーバ2をサーバ2と、それぞれ略記する場合がある。
【0022】
ユーザは、クライアント端末3を用いてサーバ2へアクセスし、仮想オフィスサービスへログインすることにより、自分のアバターGP1を仮想オフィス4に出現させる。クライアント端末3は、後述のように、そのユーザインターフェース部32に画像取得部としてのカメラを有する。
【0023】
仮想オフィス4は、ユーザの属する企業が使用する仮想空間である。仮想オフィス4のレイアウトは現実のオフィスのレイアウトに似せることもできるし、現実のオフィスとは異ならせることもできる。
【0024】
仮想オフィス4では、例えば、机GP2や椅子GP3などの什器備品、机上ネームプレートGP4、会議室GP5、集中室GP6(いずれも図3参照)などが描画される。アバターGP1があらかじめ定められた座席から離れている間、その座席には、ゴーストアバターGP12が表示される。ゴーストアバターGP12は、ユーザはログインしているがその座席には居ないことを示す。他のユーザがゴーストアバターGP12に接触すると、当該他のユーザはゴーストアバターGP12に対応するアバターGP1の場所へ移動させられる。
【0025】
例えば、仮想オフィス4が第1フロアと第2フロアのように複数フロアを持つ場合を説明する。第1フロアにいる第1アバターGP1が第2フロアへ移動しているときに、第1フロアにいる第2アバターGP1が第1アバターGP1のゴーストアバターGP12に接触すると、第2アバターGP1は第2フロアの第1アバターGP1の隣に移動する。
【0026】
アバターGP1には、そのアバターの情報を示す情報表示部GP11が対応付けられて表示される。情報表示部GP11は、例えば、アバターGP1を操作するユーザの氏名を含む。情報表示部GP11は、氏名に加えて、ユーザの所属部署名、ユーザの行動の活発さを示す数値、ユーザの状態を示す情報などを表示することもできる。
【0027】
ユーザの状態には、例えば、体調、睡眠時間、体温、心拍数、疲労度、幸福度などの生体情報やメンタル情報を含めてもよい。ユーザが、生体情報を測定する機能を持つウェアラブル端末を装着している場合、情報表示部GP11に表示される生体情報は随時更新される。生体情報から疲労度や幸福度などのメンタル情報を算出する機械学習モデルをサーバ2が持つ場合、ユーザのメンタル情報も情報表示部GP11に随時表示させることができる。
【0028】
ユーザの自己申告した生体情報またはメンタル情報を情報表示部GP11に表示させることもできる。例えば、ユーザがクライアント端末3を介してサーバ2へ入力した体調、体温、疲労度などの値を情報表示部GP11に表示させてもよい。
【0029】
情報表示部GP11は、生体情報またはメンタル情報などを数値またはテキストとして表示させることもできるし、情報表示部GP11またはアバターGP1の色や形状として表現することもできる。例えば、体調の悪い場合は、アバターGP1を赤く表示したり、心拍数に応じて情報表示部GP11を点滅させたりしてもよい。なお、生体情報またはメンタル情報は情報表示部GP11に常時表示させる必要はなく、ポインタを情報表示部GP11に合わせたときに、いわゆるポップアップウインドウを開かせて表示させることもできる。
【0030】
仮想オフィス4内でビデオ通話をする場合を説明する。例えば、図1中央の仮想オフィス4内の右下側に示すように、ユーザU3がユーザU10とのビデオ通話を希望する場合を説明する。以下、例えば、ユーザU1の使用するアバターGP1をアバターGP1(U1)と、ユーザU1の使用するゴーストアバターGP12をゴーストアバターGP12(U1)と表記する。
【0031】
ユーザU3のアバターGP1(U3)は、ユーザU10のアバターGP1(U10)とのビデオ通話を希望する場合、現実のオフィスでもそうするように、自席からアバターGP1(U10)の居る場所へ移動する。このとき、ユーザU3は、アバターGP1(U10)をポインタPTなどで選択してクリックするだけでよい。仮想オフィス制御部21は、アバターGP1(U10)が選択されると、アバターGP1(U3)の現在位置からアバターGP1(U10)までの経路RTを算出し、その経路RTに沿ってアバターGP1(U3)を所定速度で移動させる。
【0032】
所定速度は、現実のオフィスでユーザが歩く速度に似せた速度である。移動経路RTは、現実のオフィスでの移動に似せて、アバターGP1(U3)が他のアバター(例えばGP1(U9))に接触しないように算出される。
【0033】
もしも、アバターGP1(U9)が、アバターGP1(U10)に向けて移動中のアバターGP1(U3)と接触した場合は、後述するように、その時点でアバターGP1(U3)とアバターGP1(U9)とのビデオ通話が開始される。ユーザU3が話し相手として最初に決めたユーザU10とのビデオ通話を優先する場合は、後述のように、他ユーザU9からのビデオ通話を拒否するモードを選択することもできる。
【0034】
さて、アバターGP1(U3)は、経路RTを移動してアバターGP1(U10)の場所に到着する。アバターGP1(U3)は、その外縁がアバターGP1(U10)の外縁に接触する位置で停止する。
【0035】
アバターGP1(U3)とアバターGP1(U10)が接触すると、ビデオ通話制御部22はビデオ通話の準備を開始する。ビデオ通話の準備が整うまでの間、仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話の対象であるアバターGP1(U3),GP1(U10)のそれぞれにビデオ通話準備中を示す所定のエフェクトGP13を表示させる。所定のエフェクトGP13は、例えば、アバターGP1の色を変えたり、明滅させたり、サイズを拡縮させたり、アニメーションを表示させたりすることにより、ビデオ通話の対象者U3,U10だけでなく、周囲の他のユーザにもビデオ通話の開始を通知する。
【0036】
図1の下側に示すように、ビデオ通話が開始される場合、ビデオ通話に参加する各アバターGP1(U3),GP1(U10)は、そのサイズが所定量だけ拡大する。そして、拡大されたアバターの中にユーザのビデオVDが表示される。すなわち、拡大されたアバターGP1(U3)の中には、ユーザU3の顔画像を含むビデオVD(U3)が表示される。同様に、拡大されたアバターGP1(U10)の中には、ユーザU10のビデオVD(U10)が表示される。
【0037】
詳しくは、アバターGP1の中にユーザの顔画像が表示されるか否かは、クライアント端末3のカメラの向き、就業規則などに依存する。ユーザがいわゆる顔出しを希望しない場合、ユーザはカメラをオフにしたり、ユーザの居ない方向にカメラを向けたり、静止画像またはアニメーションを顔画像に代えて表示させたりすることもできる。
【0038】
ビデオ通話に参加していない他のユーザには、ビデオ通話中のアバターは通常サイズで表示される。ビデオ通話中であることを他のユーザへ明確に知らせるために、ビデオ通話中のアバターの色や形または大きさを変化させてもよい。
【0039】
このように構成される本実施形態の仮想空間ビデオ通話システム1によれば、ユーザは、自分を象徴するアバターを話したい相手のアバターに接触させるだけでビデオ通話を開始することができるため、直感的操作で手軽にビデオ通話を利用することができ、現実のオフィスでの会話と同様のコミュニケーションを簡単に取ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、アバターの内部にユーザの顔画像を表示させるため、その顔画像を通じて話し相手の様子を知ることができる上に、アバター以外の画面を顔画像で隠さないため、ビデオ通話の当事者は、仮想オフィス4内の状況を確認しながらビデオ通話を行うことができ、利便性が向上する。
【0041】
通常のビデオ通話システムの場合、ビデオ通話そのものが目的であるため、ビデオ通話に参加する各ユーザの顔画像をできるだけ大きく写しだそうとする。これに対し、本実施形態の仮想空間ビデオ通話システム1は、仮想オフィス4内での総合的コミュニケーションの推進が目的であり、ビデオ通話はそのための一つの手段に過ぎない。仮想オフィス4でのコミュニケーションには、ユーザが着席しているか、出かけているかといった着席状態の確認、他のアバターによるビデオ通話の有無、他のアバターが移動する様子、多忙であることを示すマークの有無、といった非言語コミュニケーションも含まれる。このため、本実施形態の仮想空間ビデオ通話システム1は、非言語コミュニケーションも十分に利用できるように、ビデオ通話中の顔画像をアバター内に留める。顔画像は小さくても、ユーザの様子はわかるため、ビデオ通話でのコミュニケーションに支障はない。
【0042】
本実施例では、ユーザは、話したい相手のアバターを選択するだけで、そのユーザのアバターから話し相手のアバターまでの経路が算出され、ユーザのアバターは経路上を通常の歩行速度で移動する。したがって、仮想オフィス4であるがゆえの操作の利便性を享受しつつ、現実のオフィスを模した仮想オフィス4を得ることができる。
【実施例0043】
図2図12を用いて第1実施例を説明する。図2は、仮想空間ビデオ通話システム1の機能構成を示す。
【0044】
仮想空間ビデオ通話システム1は、図1でも述べたように、仮想オフィス提供サーバ2と、複数のクライアント端末3とを備えており、サーバ2と各クライアント端末3とは通信ネットワークCNを介して双方向通信可能に接続されている。
【0045】
サーバ2は、プロセッサ200およびメモリ201を備えたコンピュータであり、メモリ201に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、仮想オフィス提供サーバ2としての機能が実現される。
【0046】
サーバ2は、例えば、仮想オフィス制御部21と、ビデオ通話制御部22と、データベース(図中、DB)23および通信部24を備える。仮想オフィス制御部21およびビデオ通話制御部22の詳細は後述する。
【0047】
データベース23には、例えば、仮想オフィスサービスを利用する各ユーザの認証情報を管理するテーブル、各ユーザの仮想オフィスの利用履歴を管理するテーブル、仮想オフィス4に配置される各種オブジェクトの位置および表示形態などを管理するテーブル(いずれも不図示)などが含まれる。
【0048】
通信部24は、通信ネットワークCNを介して各クライアント端末3と双方向通信する機能である。
【0049】
記憶媒体MMは、例えば、フラッシュメモリまたはハードディスクドライブなどの比較的長時間データを保持可能な記憶媒体である。記憶媒体MMをサーバ2に接続することにより、記憶媒体MMとメモリ201の間でコンピュータプログラムの少なくとも一部を転送することができる。
【0050】
クライアント端末3は、ユーザにより使用されるコンピュータである。クライアント端末3は、例えば、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(いわゆるスマートフォンを含む)、ウェアラブル端末などのように構成される。
【0051】
クライアント端末3は、例えば、仮想オフィスアプリケーション31と、ユーザインターフェース(図中、UI)部32と、通信部33を備える。
【0052】
仮想オフィスアプリケーション31は、仮想オフィス4でアバターGP1を操作するためのコンピュータプログラムである。ユーザインターフェース部32は、ユーザとクライアント端末3とが情報入出力装置(不図示)を介して情報を入出力する機能である。情報入出力装置としては、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、マイクロフォン、カメラ、モニタディスプレイ、プリンタ、スピーカなどがある。通信部33は、通信ネットワークCNを介してサーバ2と双方向通信する機能を持つ。
【0053】
図3は、仮想オフィス4の例を示す。仮想オフィス4は、仮想的な2次元空間または仮想的な三次元空間として構成される。仮想オフィス4は、いわゆる仮想的な2.5次元空間として構成されてもよい。
【0054】
上述の通り、仮想オフィス4には、各ユーザに対応するアバターGP1と、現実のオフィスに配置されるような什器備品GP2,GP3と、机上ネームプレートGP4と、会議室GP5と、集中室GP6などが設けられる。
【0055】
会議室GP5は、ユーザ同士がアバターを介して会議する領域である。会議室GP5に誰が入室しているかは、会議室GP5以外の領域から目視で確認できる。アバターGP1が会議室GP5に入室すると、自動的にビデオ通話の参加者となる。例えば、アバターGP1(U8)の居る会議室GP5へアバターGP1(U12)が入室すると、アバター同士のビデオ通話が開始される。アバター同士が接触する必要はない。会議室GP5は、会議のための領域であるから、入室時点でそのアバターがビデオ通話を希望していることは明らかなためである。
【0056】
集中室GP6は、作業や思考に専念したいユーザの使用する領域である。集中室GP6には、一人のアバターのみ入ることができる。他のアバターは、集中室GP6内のアバターに接触できないため、集中室GP6に入室しているアバターとビデオ通話をすることはできない。例えば、集中室GP6に入室しているアバターの机上ネームプレートGP4にメッセージを表示することにより、連絡することができる。
【0057】
アバターGP1は、全ユーザに共通のデザインを適用してもよいし、髪型やアクセサリーなどのパーツ毎に選択可能としてもよい。アバターGP1は、人間を模したデザインである必要はなく、動植物などでもよい。アバターには、通常のアバターGP1、ゴーストアバターGP12、多忙アバターGP1Nなどの複数種類が用意されてもよい。多忙アバターGP1Nは、多忙であり、他ユーザからのビデオ通話を受け付けないことを周囲に知らせるためのアバターである。したがって、多忙アバターGP1Nに他ユーザのアバターGP1が接触しても、ビデオ通話は開始されない。
【0058】
上述のアバター以外に、例えば、ビデオ通話を歓迎することを周囲に知らせるための雑談アバターなどを用意してもよい。ユーザは、所望のアバターを自由に選択できる。
【0059】
図4は、ユーザU1がユーザU16とビデオ通話する様子を示す。ユーザU1が、話したい相手のアバターGP1(U16)を画面上で選択すると、アバターGP1(U1)からアバターGP1(U16)までの経路RTが算出され、アバターGP1(U1)はその経路RT上を所定速度(現実のオフィスでの歩行に対応する速度)で移動する。
【0060】
そして、アバターGP1(U1)が目的位置であるアバターGP1(U16)の場所へ到達すると、アバターGP1(U1)は、その外縁がアバターGP1(U16)の外縁に接する位置で停止する。アバター同士は実質的に重ならない。重なってしまうとビデオ通話でビデオVDが表示される面積が小さくなるためである。ビデオVDの表示領域に影響を与えない範囲で、アバター同士が重なってもよい。アバター同士が接触すると、ビデオ通話の準備を開始していることを示すエフェクトGP13が各アバターGP1(U1),GP1(U16)に表示される。
【0061】
図5は、ビデオ通話が開始された様子を示す。ビデオ通話する各アバターGP1(U1),GP1(U16)は、そのサイズが所定量(所定割合)だけ拡大する。アバターの全体が大きくなってもよいし、アバターの一部(例えば上半身または頭部に相当する部分)だけが大きくなってもよい。
【0062】
拡大されたアバターの中に、ユーザの使用するクライアント端末3で撮影されたビデオVDが表示される。ビデオVDは、クライアント端末3のカメラで撮影したライブ映像に限らず、ユーザの選択したアニメーションまたは静止画像でもよい。
【0063】
アバター同士が接触した位置において、アバター内でビデオVDが表示されるため、アバターを操作するユーザは、ビデオ通話するアバター以外の仮想オフィス4の様子を容易に確認することができる。
【0064】
図6は、ビデオ通話時におけるアバター表示の変形例を示す。図5では、アバター同士が仮想オフィス4で接触した位置でビデオ通話を開始させた。本変形例では、互いに接触するアバター同士(ビデオ通話する一組のアバター)の位置を、最初の接触位置とは異なる位置に変更させて、ビデオ通話を開始させる。図6では、アバターGP1(U1),GP1(U16)は、仮想オフィス4の中央部に再配置されている。仮想オフィス4の中央部に限らず、例えば、仮想オフィスの四隅の領域などにアバター同士を移動させてビデオ通話させてもよい。
【0065】
図7は、仮想空間ビデオ通話システム1の全体処理を示すフローチャートである。以下に述べるフローは一例であって、図示する以外の方法でも本実施例の仮想空間ビデオ通話システム1を実現することができる。
【0066】
サーバ2の仮想オフィス制御部21は、図示せぬ初期化処理およびユーザのログイン処理を終えた後で、クライアント端末3からユーザの操作を受け付けると(S11)、そのユーザ操作に応じて仮想オフィス4の表示を制御する(S12)。
【0067】
仮想オフィス制御部21は、ユーザがアバターの移動を指示したか監視しており(S13)、アバターの移動操作が指示された場合(S13:YES)、移動元(現在位置)と移動先(目標位置)との間を結ぶ経路RTを算出する(S14)。経路RTは、他ユーザのアバターおよび机などのオブジェクトに接触しないように算出される。
【0068】
仮想オフィス制御部21は、移動対象のアバターを経路RTに沿って移動先まで所定速度で移動させる(S15)。仮想オフィス制御部21は、移動対象のアバターが他のアバターと接触したか判定する(S16)。移動対象のアバターが他のアバターと接触すると(S16:YES)、仮想オフィス制御部21は、アバターの移動を停止させ(S17)、ビデオ通話制御部22に対してビデオ通話の開始を指示する(S18)。
【0069】
移動対象のアバターが、話し相手として選択したアバターの場所まで移動した場合は、各アバターの外縁同士が接触するため(S16:YES)、各アバターを操作するユーザ間で、アバター内でのビデオ通話が開始される(S18)。
【0070】
移動対象のアバターが経路RTを移動中に、話し相手として選択していない他のアバターと接触した場合(S16:YES)、その予定外のアバターを操作するユーザとのビデオ通話がアバター内で開始される(S18)。
【0071】
移動対象のアバターが経路RTを移動中に、既にビデオ通話中のアバターのいずれか一方と接触した場合(S16:YES)、移動対象のアバターを操作するユーザは、既に始まっているビデオ通話に参加する(S18)。
【0072】
仮想オフィス制御部21は、仮想オフィスサービスの停止が指示されるまで(S19)、本処理を実行する。
【0073】
図8は、図7中のビデオ通話処理S18の詳細を示すフローチャートである。ビデオ通話制御部22は、アバター同士が接触してビデオ通話の開始が指示されると、ビデオおよび音声の共有などのビデオ通話の準備を開始する(S31)。
【0074】
ビデオ通話制御部22は、ビデオ通話の準備を開始すると、仮想オフィス制御部21に準備中エフェクトGP13の表示を要求する(S32)。
【0075】
ビデオ通話制御部22は、ビデオ通話の準備が完了すると(S33:YES)、準備中エフェクトGP13の表示の停止とアバター21のサイズ拡大とを、仮想オフィス制御部21に要求する(S34)。
【0076】
仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話を行うアバターの仮想オフィス4内での位置を調整するか判定する(S35)。アバターの位置を調整する場合(S35:YES)、仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話を行うアバター同士を所定のビデオ通話領域に移動させる(S36)。
【0077】
所定のビデオ通話領域とは、ビデオ通話をするアバターの置かれる領域である。所定のビデオ通話領域は、例えば、仮想オフィス4の中央部でもよいし、四隅でもよい。仮想オフィス4内でビデオ通話するユーザ数に応じて、所定のビデオ通話領域にアバターを移動させるか否かを決定してもよい。例えば、ビデオ通話するユーザが多い場合、アバターの接触位置でそのままビデオ通話させ、ビデオ通話するユーザが少ない場合、仮想オフィス4の中央部や四隅にアバターを移動させることができる。
【0078】
アバターの位置を調整せずに現在位置のままでビデオ通話させる場合(S35:NO)、ステップS36をスキップしてステップS37へ進む。
【0079】
ビデオ通話制御部22は、アバター内にクライアント端末3のカメラで撮影したビデオVDを表示させると共に(S37)、音声通話を開始させる(S38)。
【0080】
仮想オフィス制御部21は、アバター同士の接触が解消したか否か、すなわちビデオ通話中のアバター同士が離れたか判定する(S39)。アバター同士が接触し続けている間(S39:NO)、ビデオ通話は維持される(S37,S38)。アバター同士が離れると(S39:YES)、ビデオ通話は終了する(S40)。
【0081】
仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話の終了を知ると、アバターの位置およびサイズを、ステップS34およびステップS36の実施前の状態へ戻す(S41)。
【0082】
なお、アバター同士の接触が解消した場合であっても、ただちにビデオ通話を終了させるのではなく、所定の短時間だけビデオ通話を継続させることもできる。例えば、ユーザが誤操作によりアバターを動かしてしまったような場合に備えるためである。
【0083】
図9図10は、既に行われているビデオ通話に他のアバターが加わる例を示す。ここでは、アバターGP1(U1)とアバターGP1(U16)とが接触して、ユーザU1とユーザU16の間でビデオ通話が行われているものとする。
【0084】
第3のユーザU5がアバターGP1(U5)を移動させて、アバターGP1(U1)またはアバターGP1(U16)のいずれかに接触した場合、図10に示すように、アバターGP1(U5)もビデオ通話に加わる。
【0085】
図11図12は、話したい相手のアバターへ向けて移動中のアバターに、他のアバターが接触して予定外のビデオ通話が開始される様子を示す。
【0086】
ユーザU1がユーザU16とビデオ通話するために、アバターGP1(U1)をアバターGP1(U16)に向けて経路RT1を移動させている場合において、ユーザU5がユーザU1とのビデオ通話を希望すると、ユーザU5は、アバターGP1(U5)を移動中のアバターGP1(U1)へ接触させる。
【0087】
ユーザU5が移動中のアバターGP1(U1)を選択すると、アバターGP1(U5)からアバターGP1(U1)までの経路RT2が設定される。アバターGP1(U5)は、その経路RT2に沿って移動し、移動中のアバターGP1(U1)に接触する。
【0088】
移動中のアバターを追いかける場合の速度V2は、現実のオフィスでの早足に似せて、所定の速度V1よりも大きく設定することができる。これにより、図12に示すように、ユーザU5は、ユーザU1がユーザU16とビデオ通話する前に、ビデオ通話をすることができる。
【0089】
このように構成される本実施例によれば、ユーザは、自分の操作するアバターを話したい相手のアバターに接触させるだけでビデオ通話を開始することができ、ビデオ通話を開始させるためのボタン操作や音声指示などは不要である。したがって、仮想空間ビデオ通話システム1のユーザは、直感的操作で手軽にビデオ通話を利用することができ、現実のオフィスでの会話と同様のコミュニケーションを簡単に取ることができる。
【0090】
本実施例では、アバターの内部にユーザの顔画像を含むビデオVDを表示させるため、顔画像を通じて話し相手の様子を知ることができる上に、アバター以外の画面を顔画像で隠さないため、ビデオ通話の当事者は、仮想オフィス4内の状況を確認しながらビデオ通話を行うことができ、利便性が向上する。すなわち、本実施例によれば、仮想オフィス4の観察と、話し相手の状況確認とを一つの画面内で両立させることができる。
【0091】
本実施例では、ユーザは、話したい相手のアバターを選択するだけで、そのユーザのアバターから話し相手のアバターまでの経路が算出され、ユーザのアバターは経路上を通常の歩行速度で移動する。したがって、仮想オフィス4であるがゆえの操作の利便性を享受しつつ、現実のオフィスを模した仮想オフィス4を得ることができる。
【0092】
本実施例では、ユーザは、ビデオ通話中のアバターのいずれかに自分のアバターを接触させるだけで、そのビデオ通話に加わることができる。これにより、雑談をさらに促進することができる。
【0093】
本実施例では、ユーザは、ビデオ通話を行おうとして移動中のアバターに自分のアバターを接触させるだけで、予定外のビデオ通話を開催することもできる。これにより、現実のオフィスでよく見られるように、近くを通りがかったユーザを呼び止めて会話するといった使い方もでき、利便性が向上する。
【実施例0094】
図13および図14を用いて第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、第1実施例との差異を中心に述べる。本実施例では、ビデオ通話中のキーワードを仮想オフィス4内の他のユーザから見えるように表示させる。
【0095】
図13は、本実施例の仮想空間ビデオ通話システムの全体処理である。本処理は、図8で述べた処理と比べると、ステップS38とステップS39の間に新規なステップS50が追加されている。
【0096】
新規ステップS50では、仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話制御部22から渡されたキーワードを仮想オフィス4内に表示させる。ビデオ通話制御部22は、音声通話チャネルを流れる音声を認識してテキストデータに変換し、変換されたテキストデータを解析することにより、キーワードを抽出する。ビデオ通話制御部22は、抽出されたキーワードの一部または全部を仮想オフィス制御部21へ送る。仮想オフィス制御部21は、ビデオ通話制御部22から入力されたキーワードの一部または全部を、吹き出しGP14に表示させる。仮想オフィス4内の他のユーザは、吹き出しGP14に表示されるキーワードを見ることができる。
【0097】
図14では、各ユーザの発言を分離して吹き出しGP14に表示させるかのように示しているが、キーワードと発言者を明確に区別しなくてもよい。誰の発言かを区別せずに、複数の吹き出しGP14を順番に使用してキーワードを表示させることができる。あるいは、アバター同士の接触箇所に一つだけ吹き出しGP14を表示させてもよい。
【0098】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、ビデオ通話中のキーワードの少なくとも一部を仮想オフィス内に表示させることができるため、周囲のユーザに雑談内容などを推測させることができる。これにより、興味を刺激された他のユーザは、自分のアバターを雑談中のアバターに接触させて、その雑談に気軽に加わることができる。
【0099】
キーワードは、ユーザ属性に応じて抽出してもよいし、ユーザ属性を問わずにランダムに抽出してもよい。例えば、ユーザの所属する部署に対応付けられた辞書データベースに登録済みキーワードがビデオ通話の音声チャネルから検出された場合に、そのキーワードを仮想オフィス4に表示させることができる。
【0100】
さらに、会話内容を評価し、その得点をユーザ毎に管理してもよい。例えば、所属部署の業務または会社の事業に関連する所定のキーワードがビデオ通話から検出された場合は、通話中のユーザに高得点を与え、それら以外の一般的キーワードの場合は、通話中のユーザに低得点を与えてもよい。これにより、テレワーク中のユーザの業務貢献度を間接的に測定することもできる。
【実施例0101】
図15を用いて第3実施例を説明する。本実施例の仮想空間ビデオ通話システムでは、ユーザは事前にビデオ通話を拒否することができる。
【0102】
図15に示す全体処理と図7で述べた全体処理とを比べると、本処理では、ステップS16とステップS17の間に新規なステップS60が追加されている。
【0103】
仮想オフィス制御部21は、或るユーザのアバターが他のユーザのアバターに接触すると(S16:YES)、接触先アバターのユーザがビデオ通話を許可しているか判定する(S60)。接触先アバターのユーザがビデオ通話を許可していない場合(S60:NO)、ステップS17,S18をスキップしてステップS19へ移る。
【0104】
ユーザは、あらかじめビデオ通話の許否を選択することができる。ユーザがビデオ通話を許可していない場合、そのユーザは、図3に示す多忙アバターGP1Nのようなアバターを使用することになる。
【0105】
ユーザは、ビデオ通話の許否を例えば所定時間、所定時刻、所定の曜日で設定することもできる。例えば、ユーザは、午前9時から正午までのビデオ通話を拒否し、それ以外の時間帯ではビデオ通話を受け入れることができる。あるいは、ユーザは、或る時刻から所定時間だけビデオ通話を受け入れることもできる。このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【実施例0106】
図16および図17を用いて第4実施例を説明する。本実施例では、移動モードに応じてアバターを仮想オフィス4内で移動させる。
【0107】
図16は、本実施例の仮想空間ビデオ通話システム1の全体処理である。本処理と図7に示す処理とを比べると、本処理では、ステップS12とステップS14の間に、新規なステップS70およびS71が追加されている。
【0108】
本実施例の仮想空間ビデオ通話システム1では、ユーザは、行先(移動先)を決めずにアバターを移動させることができる。ここでは、この行先不定の移動を散策と呼ぶ。仮想オフィス制御部21は、ユーザがアバターの散策を指示すると(S70:YES)、そのユーザに設定された移動モードにしたがって移動先を決定する(S71)。仮想オフィス制御部21は、ステップS71で決定された移動先に向かう経路を算出し(S14)、その経路にそってアバターを所定速度で移動させる(S15)。
【0109】
図17は、移動モードを管理するテーブルT1を示す。移動モード管理テーブルT1は、移動モードを区別する管理番号と、移動モードの内容を管理する。
【0110】
移動モードとしては、例えば、同一フロア内をランダムに移動する、仮想的建物内の各フロアをランダムに移動する、同一フロア内をあらかじめ登録したルートで巡回する、仮想的建物内の各フロアをあらかじめ登録したルートで巡回する、同一フロア内の各アバターとの接触回数が均等となるルートで移動する、仮想的建物内の各フロアの各アバターとの接触回数が均等となるルートで移動する、などが考えられる。上記の移動モードに限らず、例えば、あらかじめ作成されたグループに属するユーザのアバターとの接触回数が均等となるように移動してもよい。
【0111】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、移動ルートに応じてユーザは仮想オフィス4または仮想的建物内を移動し、他のユーザとアバター内でのビデオ通話を行うことができる。
【実施例0112】
図18を用いて第5実施例を説明する。本実施例では、所定のイベントが発生すると、ユーザのアバターを強制的に移動させて雑談を促進させる。
【0113】
図18は、本実施例による仮想空間ビデオ通話システム1の全体処理である。本処理と図7の処理を比べると、本処理では、ステップS13とステップS14の間に新規なステップS80,S81が追加されている。
【0114】
仮想オフィス制御部21は、ユーザによるアバターの移動が指示されなかった場合(S13:NO)、所定のイベントとしての雑談タイムが発生したか判定する(S80)。雑談タイムとは、仮想オフィス4内での雑談を奨励する時間帯である。雑談タイム中の場合(S80:YES)、仮想オフィス制御部21は、移動先を選択し(S81)、ステップS14へ移る。ステップS81では、図17で述べたような移動ルートにしたがって移動先を決定することができる。
【0115】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、ユーザがビデオ通話を希望しない場合であっても(S13:NO)、所定のイベントの開催中には強制的にアバター内でのビデオ通話を行わせることができるため、仮想オフィス内のコミュニケーションを促進することができる。
【実施例0116】
図19を用いて第6実施例を説明する。本実施例では、クライアント端末3からユーザの生体情報をサーバ2へ送信し、サーバ2はユーザの生体情報から得られるユーザ状態に応じて、アバターの表示を制御したり、ビデオ通話の時間を制御したりする。
【0117】
図19は、本実施例の仮想空間ビデオ通話システム1Aの機能構成図である。クライアント端末3には、生体情報を検出する生体情報取得部34が接続されている。生体情報取得部34は、例えば、腕時計型または眼鏡型のようなウェアラブル端末型センサとして構成され、ユーザの体温や心拍数などを検出する。生体情報取得部34は、クライアント端末3に内蔵または外部接続されたカメラでもよい。
【0118】
サーバ2のユーザ状態管理部25は、クライアント端末3から収集されたユーザの生体情報をそのままで、あるいは統計処理などして管理する。仮想オフィス制御部21は、ユーザ状態管理部25により管理されるユーザ状態に応じて、アバターの情報表示部GP11に表示させる内容を変化させたり、アバターの外見を制御したりする。
【0119】
あるいは、仮想オフィス制御部21は、ユーザ状態としての疲労度が所定値に達した場合に、アバターを散策させて他のユーザとのビデオ通話を行わせることもできる。
【0120】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、ユーザの生体情報に基づくユーザ状態に応じて、アバターの外見またはビデオ通話を制御することができるため、より一層仮想空間ビデオ通話システムを利用する者の利便性を向上できる。
【実施例0121】
図20を用いて第7実施例を説明する。本実施例では、ユーザが自身のアバターの移動を操作している間において、ユーザのアバターが他のユーザのアバターに接触した場合は、ビデオ通話を開始しない。
【0122】
図20は、本実施例の仮想空間ビデオ通話システム1の全体処理を示すフローチャートである。本処理と図7で述べた処理とを比べると、本処理では、ユーザがドラッグ操作などによりアバターの移動を操作するため、移動経路RTを設定して移動させるステップS14,S15は存在しない。さらに、本実施例では、ユーザの操作でアバターの移動が停止するため、仮想オフィス制御部21がアバターの移動を停止させるステップS17も存在しない。
【0123】
これに対し、本実施例では、ステップS13とステップS16の間に新規なステップS91が追加されている。仮想オフィス制御部21は、ステップS13の後でステップS91を実行し、ステップS91の次にステップS16を実行する。
【0124】
ステップS91では、仮想オフィス制御部21は、アバターがユーザにより移動操作されているか判定する。仮想オフィス制御部21は、ユーザによってアバターが移動操作されている場合(S91:NO)は何もせず、ユーザによるアバターの移動操作が終了するまで待機する(S91:YES)。そして、仮想オフィス制御部21は、ユーザによるアバターの移動操作が終了すると、他のアバターと接触したか判定し(S16)、他のアバターと接触した場合(S16:YES)、ビデオ通話を開始させる(S18)。
【0125】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、ユーザが、ビデオ通話を希望するアバターに向けて、自身のアバターを手動操作で移動させる場合に、その移動途中で他のアバターに接触してしまっても、ビデオ通話は開始されない。このため、本実施例では、ユーザがビデオ通話を希望するユーザ以外のユーザとのビデオ通話が偶発的に行われるのを抑制でき、ユーザにとっての使い勝手が向上する。
【0126】
なお、ユーザによるアバターの操作は、ドラッグなどの手動操作に限らない。例えば、ユーザの視線を検出し、検出されたユーザの視線によりアバターの移動などを操作してもよい。あるいは、ユーザの手足の動作などの身体動作をカメラで検出し、ユーザの身体動作に応じてアバターを移動させることもできる。
【0127】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。上述の各実施例は適宜結合させて実施することができる。
【符号の説明】
【0128】
1,1A:仮想空間ビデオ通話システム、2:仮想オフィス提供サーバ、3:クライアント端末、4:仮想オフィス、21:仮想オフィス制御部、22:ビデオ通話制御部、GP1:アバター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20