(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177690
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】冷却装置、溶接継手、冷却装置の製造方法、溶接継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/18 20060101AFI20221124BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20221124BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20221124BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F28F9/18
B23K26/21 G
B23K26/21 P
F28D1/047 C
F28F9/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084116
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
4E168
【Fターム(参考)】
3L065CA15
3L103AA01
3L103DD32
4E168BA02
4E168BA12
4E168BA87
4E168CB03
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
(57)【要約】
【課題】内部に冷却液が流通する部材同士をレーザ溶接にて接合しても冷却液が漏れることを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】内部に冷却液が流通する複数の貫通孔が形成された装置本体10と、装置本体10における、貫通孔11の孔方向の端部に接合されて、複数の貫通孔11を連通させる空間が形成された連通部材20と、を備え、装置本体10と連通部材20とは、装置本体10に形成された、孔方向に対して傾斜した外側傾斜面14と、連通部材20に形成された、孔方向に対して傾斜した内側傾斜面22とを接触させた状態で、外側傾斜面14及び内側傾斜面22に対して交差する方向にレーザ光が照射され、外側傾斜面14の少なくとも一部と内側傾斜面22の少なくとも一部とが溶融することにより接合している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却液が流通する複数の貫通孔が形成された装置本体と、
前記装置本体における、前記貫通孔の孔方向の端部に接合されて、複数の当該貫通孔を連通させる空間が形成された連通部材と、
を備え、
前記装置本体と前記連通部材とは、当該装置本体に形成された、前記孔方向に対して傾斜した第1面と、当該連通部材に形成された、当該孔方向に対して傾斜した第2面とを接触させた状態で、当該第1面及び当該第2面に対して交差する方向にレーザ光が照射され、当該第1面の少なくとも一部と当該第2面の少なくとも一部とが溶融することにより接合している
冷却装置。
【請求項2】
前記第1面は、前記装置本体の外面が前記孔方向の端部に行くに従って前記貫通孔に近くなるように形成された面であり、
前記連通部材の前記第2面は、前記空間の開口部が拡がるように形成された面である、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1面及び前記第2面は平面であり、
前記レーザ光は、前記平面に対して斜め方向に照射されている、
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1面及び前記第2面は曲面であり、
前記レーザ光は、前記曲面に対して交差する方向に照射されている、
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項5】
対向する2つの部材がレーザ溶接にて接合している溶接継手であって、
前記2つの部材の内の一方の部材に形成された、対向方向に傾斜する第1面と、他方の部材に形成された、当該対向方向に傾斜する第2面とを接触させた状態で、当該第1面及び当該第2面に対して交差する方向にレーザ光が照射され、当該第1面の少なくとも一部と当該第2面の少なくとも一部とが溶融することにより接合している、
溶接継手。
【請求項6】
前記第1面及び前記第2面は平面であり、
前記レーザ光は、前記平面に対して斜め方向に照射されている、
請求項5に記載の溶接継手。
【請求項7】
前記第1面及び前記第2面は曲面であり、
前記レーザ光は、前記曲面に対して交差する方向に照射されている、
請求項5に記載の溶接継手。
【請求項8】
内部に冷却液が流通する複数の貫通孔が形成された装置本体を製造する工程と、
前記装置本体における前記貫通孔の孔方向の端部に対向するように配置されて、複数の当該貫通孔を連通させる空間が形成された連通部材を製造する工程と、
前記装置本体に形成された、前記孔方向に対して傾斜した第1面と、前記連通部材に形成された、当該孔方向に対して傾斜した第2面とを接触させる工程と、
前記第1面及び前記第2面に対して交差する方向にレーザ光を照射する工程と、
を有する冷却装置の製造方法。
【請求項9】
前記装置本体を製造する工程は、押出成形にて製造した素材に対して加工を施す、
請求項8に記載の冷却装置の製造方法。
【請求項10】
対向する2つの部材の内の一方の部材に形成された対向方向に傾斜する第1面と、他方の部材に形成された当該対向方向に傾斜する第2面とを接触させる工程と、
前記第1面及び前記第2面に対して交差する方向にレーザ光を照射する工程と、
を有する溶接継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、溶接継手、冷却装置の製造方法及び溶接継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材料を用いて成形された部材同士が突き合わせられた状態でレーザ溶接にて接合することが提案されている。
例えば、特許文献1に記載された液冷式冷却装置は、内部に冷却液が流通する装置本体と、装置本体を流通する冷却液の流通方向を変更する変更部材と、を備えている。そして、変更部材は、装置本体側の端面と、装置本体の長手方向の端面とが突き合わせられた状態で、突き合わせ部にレーザ溶接が施されることにより接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
突き合わせた部材同士をレーザ溶接する際に、突き合わせた部材同士に対して一方の面側からレーザを照射すると、熱収縮により、他方の面側に隙間が発生するおそれがある。また、部材同士を突き合わせる際に、部材間に位置ずれが生じるおそれがある。それゆえ、内部に冷却液が流通する部材同士を突き合わせた状態でレーザ溶接を行うと、内部から冷却液が漏れるおそれがある。
本発明は、内部に冷却液が流通する部材同士をレーザ溶接にて接合しても冷却液が漏れることを抑制することができる冷却装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、内部に冷却液が流通する複数の貫通孔が形成された装置本体と、前記装置本体における、前記貫通孔の孔方向の端部に接合されて、複数の当該貫通孔を連通させる空間が形成された連通部材と、を備え、前記装置本体と前記連通部材とは、当該装置本体に形成された、前記孔方向に対して傾斜した第1面と、当該連通部材に形成された、当該孔方向に対して傾斜した第2面とを接触させた状態で、当該第1面及び当該第2面に対して交差する方向にレーザ光が照射され、当該第1面の少なくとも一部と当該第2面の少なくとも一部とが溶融することにより接合している冷却装置である。
ここで、前記第1面は、前記装置本体の外面が前記孔方向の端部に行くに従って前記貫通孔に近くなるように形成された面であり、前記連通部材の前記第2面は、前記空間の開口部が拡がるように形成された面であっても良い。
また、前記第1面及び前記第2面は平面であり、前記レーザ光は、前記平面に対して斜め方向に照射されていても良い。
また、前記第1面及び前記第2面は曲面であり、前記レーザ光は、前記曲面に対して交差する方向に照射されていても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、対向する2つの部材がレーザ溶接にて接合している溶接継手であって、前記2つの部材の内の一方の部材に形成された、対向方向に傾斜する第1面と、他方の部材に形成された、当該対向方向に傾斜する第2面とを接触させた状態で、当該第1面及び当該第2面に対して交差する方向にレーザ光が照射され、当該第1面の少なくとも一部と当該第2面の少なくとも一部とが溶融することにより接合している、溶接継手である。
ここで、前記第1面及び前記第2面は平面であり、前記レーザ光は、前記平面に対して斜め方向に照射されていても良い。
また、前記第1面及び前記第2面は曲面であり、前記レーザ光は、前記曲面に対して交差する方向に照射されていても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、内部に冷却液が流通する複数の貫通孔が形成された装置本体を製造する工程と、前記装置本体における前記貫通孔の孔方向の端部に対向するように配置されて、複数の当該貫通孔を連通させる空間が形成された連通部材を製造する工程と、前記装置本体に形成された、前記孔方向に対して傾斜した第1面と、前記連通部材に形成された、当該孔方向に対して傾斜した第2面とを接触させる工程と、前記第1面及び前記第2面に対して交差する方向にレーザ光を照射する工程と、を有する冷却装置の製造方法である。
ここで、前記装置本体を製造する工程は、押出成形にて製造した素材に対して加工を施しても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、対向する2つの部材の内の一方の部材に形成された対向方向に傾斜する第1面と、他方の部材に形成された当該対向方向に傾斜する第2面とを接触させる工程と、前記第1面及び前記第2面に対して交差する方向にレーザ光を照射する工程と、を有する溶接継手の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内部に冷却液が流通する部材同士をレーザ溶接にて接合しても冷却液が漏れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る液冷式冷却装置の斜視図である。
【
図2】液冷式冷却装置を構成する部品を分解した図である。
【
図6】比較例に係る接合部の概略構成の一例を示す図である。
【
図7】レーザ光の照射部位のずれの許容量を示す図である。
【
図8】第1変形例に係る液冷式冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図9】第2変形例に係る液冷式冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る液冷式冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る液冷式冷却装置1の斜視図である。
図2は、液冷式冷却装置1を構成する部品を分解した図である。
図3は、
図1のIII-III部の断面図である。
第1実施形態に係る液冷式冷却装置1は、内部に複数の貫通孔11が形成された装置本体10と、装置本体10における、貫通孔11の孔方向の端部に接合されて、複数の貫通孔11を連通させる空間が形成された連通部材20と、を備えている。また、液冷式冷却装置1は、装置本体10の外部から内部に冷却液を流入させる入口ジョイント30と、装置本体10の内部から外部に冷却液を流出させる出口ジョイント40と、を備えている。
【0009】
(装置本体10)
装置本体10は、押出加工にて成形された、JIS A6063合金の押出材を用いて成形されている。そして、装置本体10は、押出方向が長手方向となる直方体状の部材であり、かつ、長手方向及び短手方向の大きさが、長手方向及び短手方向に直交する方向である上下方向の大きさよりも大きい板状の部材である。なお、装置本体10は、押出加工にて成形された、JIS A3003合金、JIS A1100合金の押出材を用いて成形されていても良い。
【0010】
貫通孔11は、装置本体10における長手方向の一方の端部から他方の端部まで貫通している。つまり、貫通孔11は、孔方向が長手方向となるように形成されている。装置本体10には、
図2に示すように、短手方向の中央部に中央壁110が設けられており、貫通孔11は、中央壁110よりも手前側と、中央壁110よりも奥側とに、それぞれ6つ形成されている。
手前側の6つの貫通孔11は、入口ジョイント30を介して流入し、連通部材20に至る前の冷却液が流通する流入側流路111として機能する。
他方、奥側の6つの貫通孔11は、連通部材20を通過後に流入し、出口ジョイント40に至る前の冷却液が流通する流出側流路112として機能する。
【0011】
また、装置本体10には、長手方向における中央部に、上面から凹んだ空間12が2つ形成されている。2つの空間12の内の一つは、流入側流路111と連通するように形成された流入側空間121であり、他方は、流出側流路112と連通するように形成された流出側空間122である。
流入側空間121は、上壁13、及び、貫通孔11間の壁が例えば切削加工にて除去されることで形成された空間である。
流出側空間122は、上壁13、及び、貫通孔11間の壁が例えば切削加工にて除去されることで形成された空間である。
【0012】
(連通部材20)
連通部材20は、装置本体10における長手方向の両端部それぞれに配置されている。
連通部材20は、概形が直方体の部材であるとともに、装置本体10側の端面から凹んだ凹部21が形成されている。凹部21により、流入側流路111と流出側流路112とが連通させられている。
連通部材20における装置本体10側の端部と装置本体10の長手方向の端部とは、レーザ溶接が施されることにより接合されている。この装置本体10と連通部材20との接合部50の形状等については後で詳述する。
【0013】
連通部材20は、例えば、JIS A3000系合金からなる条に深絞り加工が施されることにより成形されたものであることを例示することができる。また、連通部材20は、例えば、JIS A3000系合金又はJIS A1000系アルミニウムからなる素材に切削加工が施されることにより成形されたものであっても良い。
【0014】
(入口ジョイント30)
入口ジョイント30は、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される入口パイプ31と、入口パイプ31を保持する保持部材32とを有している。
入口ジョイント30は、入口パイプ31の下端部が装置本体10の流入側空間121に挿入され、保持部材32の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材32と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。
【0015】
(出口ジョイント40)
出口ジョイント40は、入口ジョイント30と同様の部材であり、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される出口パイプ41と、出口パイプ41を保持する保持部材42とを有している。
出口ジョイント40は、出口パイプ41の下端部が装置本体10の流出側空間122に挿入され、保持部材42の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材42と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。
【0016】
(液冷式冷却装置1の作用)
以上のように構成された液冷式冷却装置1には、装置本体10の上面であって、入口ジョイント30及び出口ジョイント40が設けられた部位よりも長手方向の外側に、この液冷式冷却装置1により冷却される被冷却物が載せられる。被冷却物は、複数の直方体状の単電池101からなる組電池100であることを例示することができる。
【0017】
そして、液冷式冷却装置1においては、入口ジョイント30の入口パイプ31から装置本体10の流入側空間121内に流入した冷却液が、流入側流路111を通って連通部材20の凹部21内に至る。連通部材20の凹部21内に至った冷却液は、その後、流出側流路112を通って流出側空間122に至り、出口ジョイント40の出口パイプ41から流出する。このようにして、冷却液が、装置本体10の流入側流路111及び流出側流路112を流通する間に、装置本体10の上面に載せられた組電池100を冷却する。
【0018】
(装置本体10と連通部材20との接合部)
次に、装置本体10と連通部材20との溶接部について詳細に説明する。なお、装置本体10における長手方向の両端部の形状、及び、長手方向の両端部それぞれに対向するように配置された連通部材20の形状は、長手方向に直交する面に対して対称である。以下に、装置本体10と連通部材20とを溶接する部分の形状について、
図3に示した、装置本体10における長手方向の右端部側の形状を例に説明し、長手方向の左端部側の形状についての説明は省略する。
【0019】
図4は、
図3のIV部の拡大図である。
図5は、レーザ溶接工程を説明する斜視図である。
装置本体10は、長手方向の端部における外側の部位に、長手方向に対して傾斜した平面である外側傾斜面14を全周に亘って有している。外側傾斜面14は、装置本体10の外面が長手方向の端部に行くに従って貫通孔11に近くなるように形成された面である。外側傾斜面14は、押出加工が施された後に、切削加工又はプレス加工が施されることにより形成されることを例示することができる。なお、上下方向の端部に形成された外側傾斜面14と、短手方向の端部に形成された外側傾斜面14とが交わる部位は、
図2に示すような角部ではなく、丸められていても良い。
【0020】
他方、連通部材20は、長手方向の開口側の部位における内側の部位に、長手方向に対して傾斜した平面である内側傾斜面22を全周に亘って有している。内側傾斜面22は、連通部材20内の空間の開口部が拡がるように形成された面である。内側傾斜面22は、深絞り加工にて凹部21が形成される際に、プレス加工が施されることにより形成されることを例示することができる。あるいは、内側傾斜面22は、深絞り加工にて凹部21が形成された後に、切削加工が施されることにより形成されても良い。あるいは、内側傾斜面22は、切削加工にて凹部21が形成される際に、切削加工が施されることにより形成されても良い。なお、上下方向の端部に形成された内側傾斜面22と、短手方向の端部に形成された内側傾斜面22とが交わる部位は、角部ではなく、丸められていても良い。
【0021】
外側傾斜面14における長手方向に対する傾斜角度α14と、内側傾斜面22における長手方向に対する傾斜角度α22とは同じに設定されている。そして、内側傾斜面22における内側の部位221の上下方向の大きさL221は、外側傾斜面14における内側の部位141の上下方向の大きさL141以上であり、内側傾斜面22における外側の部位222の上下方向の大きさL222は、外側傾斜面14における外側の部位142の上下方向の大きさL142以下であることを例示することができる。また、内側傾斜面22における内側の部位221の短手方向の大きさは、外側傾斜面14における内側の部位141の短手方向の大きさ以上であり、内側傾斜面22における外側の部位222の短手方向の大きさは、外側傾斜面14における外側の部位142の短手方向の大きさ以下であることを例示することができる。外側傾斜面14及び内側傾斜面22は、言い換えれば、装置本体10の端部が連通部材20の内側に嵌り込み、内側傾斜面22全てが外側傾斜面14に接するように形成されているのが望ましい。これにより、連通部材20の肉厚が厚くならないようにすることが可能となる。
【0022】
ただし、外側傾斜面14と内側傾斜面22とが接触するのであれば、以下の態様であっても良い。例えば、内側傾斜面22における内側の部位221の上下方向の大きさL221が、外側傾斜面14における内側の部位141の上下方向の大きさL141よりも大きく、内側傾斜面22における内側の部位221の短手方向の大きさが、外側傾斜面14における内側の部位141の短手方向の大きさよりも大きくても良い。また、内側傾斜面22における外側の部位222の上下方向の大きさL222が、外側傾斜面14における外側の部位142の上下方向の大きさL142よりも大きく、内側傾斜面22における外側の部位222の短手方向の大きさが、外側傾斜面14における外側の部位142の短手方向の大きさよりも大きくても良い。
【0023】
また、例えば、内側傾斜面22における内側の部位221の上下方向の大きさL221が、外側傾斜面14における内側の部位141の上下方向の大きさL141よりも小さく、内側傾斜面22における内側の部位221の短手方向の大きさが、外側傾斜面14における内側の部位141の短手方向の大きさよりも小さくても良い。また、内側傾斜面22における外側の部位222の上下方向の大きさL222が、外側傾斜面14における外側の部位142の上下方向の大きさL142よりも小さく、内側傾斜面22における外側の部位222の短手方向の大きさが、外側傾斜面14における外側の部位142の短手方向の大きさよりも小さくても良い。
【0024】
装置本体10と連通部材20とを接合するにあたっては、先ず、装置本体10の外側傾斜面14を連通部材20の内側傾斜面22に突き当てて、外側傾斜面14と内側傾斜面22とを接触させた状態で、外側から、連通部材20の外面23に対して、レーザ装置150のレーザヘッド151からレーザ光Lを照射する。レーザ装置150は、レーザ光Lを、外側傾斜面14及び内側傾斜面22に対して斜め方向に照射する。そして、レーザヘッド151を、連通部材20の端部形状に沿って、連通部材20の周囲に少なくとも1周移動させることで、レーザ光Lを連続的に照射する。
【0025】
レーザ装置150のレーザ源は特に限定されない。YAGレーザ、CO2レーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザであることを例示することができる。また、レーザ光Lの照射方向は、連通部材20の外面23に対して直交する方向でも良いし、直交方向に対して傾斜した方向であっても良い。
【0026】
そして、レーザ出力及びレーザヘッド151の移動速度を、装置本体10の外側傾斜面14の少なくとも一部と、連通部材20の内側傾斜面22の少なくとも一部とが溶融した溶融部51を成形するエネルギー密度となるように設定する。また、レーザ出力及びレーザヘッド151の移動速度を、溶融部51が貫通孔11内に突出しないエネルギー密度となるように設定する。
【0027】
以上説明したように、液冷式冷却装置1の製造方法は、対向する装置本体10及び連通部材20の内の一方の部材である装置本体10に形成された、長手方向(対向方向の一例)に傾斜する外側傾斜面14(第1面の一例)と、他方の部材である連通部材20に形成された内側傾斜面22(第2面の一例)とを接触させる工程を有する。また、液冷式冷却装置1の製造方法は、連通部材20の外面23に対して直交する方向(外側傾斜面14及び内側傾斜面22に対して斜め方向の一例)にレーザ光Lを照射する工程を有する。そして、上述の製造方法により製造された液冷式冷却装置1においては、装置本体10の外側傾斜面14の少なくとも一部と、連通部材20の内側傾斜面22の少なくとも一部とが溶融することにより接合している。
【0028】
この製造方法によれば、例えば、装置本体10と連通部材20とを、長手方向に直交する端面同士が接触するように突き合わせた状態で、当該突き合わせ部に対してレーザ光Lを照射する方法よりも、装置本体10と連通部材20とが接触した状態の装置本体10と連通部材20との位置ずれを小さくすることができる。その結果、液冷式冷却装置1においては、装置本体10と連通部材20との間に隙間が発生し難いので、内部から冷却液が漏れることが抑制される。
【0029】
また、連通部材20の外面23に対して直交する方向、言い換えれば、外側傾斜面14及び内側傾斜面22に直交する方向に対して傾斜する方向にレーザ光Lを照射するので、装置本体10と連通部材20との接合幅Q1を大きくすることができる。
【0030】
図6は、比較例に係る接合部550の概略構成の一例を示す図である。
比較例に係る装置本体510及び連通部材520の接合部550においては、長手方向に平行な面同士を接触させた状態で、連通部材520の外面523に対して、直交する方向にレーザ光Lが照射されることで接合されている。つまり、装置本体510と連通部材520との接触面であって長手方向に平行な面に対して直交する方向にレーザ光Lが照射されている。この比較例に係る装置本体510と連通部材520との接触面は、長手方向に平行であり、かつ、レーザ光Lの照射部位からの距離が、装置本体10と連通部材20との接触面までの距離よりも大きいので、接合幅Q2が接合幅Q1よりも小さくなる。
【0031】
つまり、第1実施形態に係る装置本体10と連通部材20との溶融部51の接合幅Q1は、比較例に係る装置本体510及び連通部材520の溶融部の接合幅Q2よりも大きいので、接合強度が大きくなる。その結果、第1実施形態に係る液冷式冷却装置1によれば、装置本体10と連通部材20との接合部位が割れ難くなるので、内部から冷却液が漏れることが抑制される。
【0032】
図7は、レーザ光Lの照射部位のずれの許容量を示す図である。
連通部材20の肉厚が同じである場合には、外側傾斜面14及び内側傾斜面22における長手方向に対する傾斜角度α14(傾斜角度α22)が小さいほど、外側傾斜面14と内側傾斜面22との接触領域における長手方向の距離が大きくなる。それゆえ、レーザ光Lの照射部位の目標位置から長手方向へのずれに対する許容量Uは、傾斜角度α14(傾斜角度α22)が小さい方が大きくなる。
以上のことより、傾斜角度α14(傾斜角度α22)は、15度以上、45度以下であることが望ましい。
【0033】
なお、上述した液冷式冷却装置1は、装置本体10の長手方向の中央部であって、短手方向の手前側の部位に入口ジョイント30を、短手方向の奥側の部位に出口ジョイント40を設けるとともに、連通部材20の凹部21にて、冷却液を、流入側流路111から流出側流路112へUターンさせるタイプの装置であるが、接合部50を適用するのは、特にこのタイプの装置に限定されない。
【0034】
また、装置本体10と連通部材20との接合部50は、対向する2つの部材がレーザ溶接にて接合している溶接継手として捉えることができる。この接合部50は、2つの部材の内の一方の部材である装置本体10に形成された、対向方向に一例としての長手方向に傾斜する外側傾斜面14と、他方の部材である連通部材20に形成された長手方向に傾斜する内側傾斜面22とを接触させた状態で、外側傾斜面14及び内側傾斜面22に対して交差する方向にレーザ光Lが照射され、外側傾斜面14の少なくとも一部と内側傾斜面22の少なくとも一部とが溶融することにより接合している。
また、接合部50の製造方法は、外側傾斜面14と内側傾斜面22とを接触させる工程と、外側傾斜面14及び内側傾斜面22に対して交差する方向にレーザ光Lを照射する工程とを有する。
【0035】
図8は、第1変形例に係る液冷式冷却装置200の概略構成の一例を示す図である。
第1変形例に係る液冷式冷却装置200は、装置本体10に相当する装置本体210と、装置本体210における長手方向の両端部それぞれに接合された連通部材220とを備えている。そして、液冷式冷却装置200においては、一方の連通部材220に、冷却液を流入させる貫通孔231が形成され、他方の連通部材220に、冷却液を流出させる貫通孔232が形成され、装置本体210の内部に、一方の連通部材220側から他方の連通部材220側へ冷却液が流れる。このように、冷却液が一方方向に流れる液冷式冷却装置200における、装置本体210と連通部材220との接合を、装置本体10と連通部材20との接合と同様にしても良い。
【0036】
なお、装置本体210には、中央壁110に相当する壁が設けられることなく、貫通孔11が連続して形成されていても良い。また、一方の連通部材220に入口ジョイント30を接合し、入口ジョイント30及び貫通孔231を介して冷却液を流入させても良い。同様に、他方の連通部材220に出口ジョイント40を接合し、出口ジョイント40及び貫通孔232を介して冷却液を流出させても良い。
また、貫通孔231及び貫通孔232の形状は、装置本体210の短手方向が長手方向となる長孔である。しかしながら、貫通孔231及び貫通孔232の形状は、特に限定されない。また、連通部材220の形状は直方体状に限定されない。
【0037】
図9は、第2変形例に係る液冷式冷却装置300の概略構成の一例を示す図である。
第2変形例に係る液冷式冷却装置300は、装置本体210に相当する装置本体310と、連通部材220に相当する連通部材320とを備えている。連通部材320は、上方から見た形状が台形である。そして、一方の連通部材320には、短手方向の中央部に、冷却液を流入させる円形の貫通孔331が形成され、他方の連通部材320には、短手方向の中央部に、冷却液を流出させる円形の貫通孔332が形成されている。装置本体310は、装置本体210よりも短手方向の大きさが大きく、装置本体10と同様に、中央壁110よりも手前側と、中央壁110よりも奥側とに、それぞれ複数の貫通孔11が形成されている。
【0038】
以上のように構成された液冷式冷却装置300においては、一方の連通部材320に形成された貫通孔331から流入した冷却液が、中央壁110の両側に形成された貫通孔11を流れて、他方の連通部材320に形成された貫通孔332から流出する。そして、このように構成された液冷式冷却装置300における、装置本体310と連通部材320との接合を、装置本体10と連通部材20との接合と同様にしても良い。
【0039】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る液冷式冷却装置2の概略構成の一例を示す図である。
第2実施形態に係る液冷式冷却装置2は、第1実施形態に係る液冷式冷却装置1に対して、装置本体10と連通部材20との接合部50の形状が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第2実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0040】
第1実施形態に係る接合部50においては、装置本体10と連通部材20とが、平面である外側傾斜面14と内側傾斜面22とにより接触しているが、第2実施形態に係る接合部450においては、装置本体410と連通部材420とが接触する面は曲面である。
より具体的には、
図10に示すように、第2実施形態に係る装置本体410は、長手方向の端部における外側の部位の角部が全周に亘って丸められたR状部414を有している。他方、第2実施形態に係る連通部材420は、長手方向の開口側の部位における内側の部位に、短手方向に直交する面にて切断した断面形状が円弧状となるように全周に亘って凹んだ内側凹部422が形成されている。
【0041】
装置本体410と連通部材420とを接合するにあたっては、装置本体410のR状部414を連通部材420の内側凹部422に突き当てて、R状部414と内側凹部422とを接触させた状態で、外側から、連通部材420の外面423に対して、外面423に直交する方向にレーザ光Lを照射する。
【0042】
このように装置本体410と連通部材420とが曲面で接触する構成であっても、装置本体410と連通部材420とが接触した状態の装置本体410と連通部材420との位置ずれを小さくすることができる。その結果、液冷式冷却装置2においても、装置本体410と連通部材420との間に隙間が発生し難いので、内部から冷却液が漏れることを抑制される。
【0043】
また、装置本体410と連通部材420との接合部は曲面になるので、装置本体410と連通部材420との接合領域を大きくすることができる。その結果、液冷式冷却装置2においても、接合強度が大きくなるので、装置本体410と連通部材420との接合部位が割れることに起因して、内部から冷却液が漏れることが抑制される。
【0044】
なお、上下方向の端部に形成されたR状部414と、短手方向の端部に形成されたR状部414とが交わる部位は、角部であっても良い。例えば、切削加工を行う際に、R状部414を形成する切削工具を、短手方向と上下方向とに移動させることで、当該交わる部位が角部となるように成形することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,2,200,300…液冷式冷却装置、10,210,310,410…装置本体、11…貫通孔、14…外側傾斜面、20,220,320,420…連通部材、22…内側傾斜面、23…外面、30…入口ジョイント、40…出口ジョイント、50,450…接合部、51…溶融部、150…レーザ装置、151…レーザヘッド、414…R状部、422…内側凹部