(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177694
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ポンプ装置、可変速制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20221124BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20221124BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F04B49/02 311
F04B49/10 311
F04D15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084120
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】玉川 充
(72)【発明者】
【氏名】小島 研太
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA02
3H020BA23
3H020CA01
3H020CA08
3H020DA04
3H020EA02
3H020EA07
3H145AA06
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA04
3H145CA03
3H145CA09
3H145CA21
3H145DA07
3H145EA13
3H145EA17
3H145EA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過電圧が生じることを防止できるポンプ装置、可変速制御装置、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】ポンプ装置は、ポンプと、ポンプを駆動するモータ30と、モータ30を可変速回転駆動する制御盤50と、を備える。制御盤50は、ポンプの運転中にポンプの停止条件が満たされポンプを停止する前の制御盤50の出力周波数またはモータ30の回転速度が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値T1未満であると、通常停止動作でポンプを停止し、出力周波数または回転速度が第1の閾値T1以上であると、通常停止動作に比較して緩やかな減速度で出力周波数を減速する保護停止動作でポンプを停止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速回転駆動する可変速制御装置と、
を備え、
前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が満たされ前記ポンプを停止する前の前記可変速制御装置の出力周波数または前記モータの回転速度が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを停止し、前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する、ポンプ装置。
【請求項2】
前記出力周波数及び前記回転速度は、検出値または指令値である、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が満たされ前記ポンプを停止する前の前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記可変速制御装置内の電流値または電力値が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある電流値または回転数に基づく第2の閾値以下の軽負荷であると、前記保護停止動作で前記ポンプを停止し、
前記電流値または前記回転数が前記第2の閾値より大きい場合は、前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であっても、前記通常停止動作で前記ポンプを停止する、請求項1または請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速回転駆動する可変速制御装置と、
を備え、
前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が満たされると通常停止動作で前記ポンプを停止し、前記通常停止動作による前記可変速制御装置の出力周波数の減速時に、前記可変速制御装置の直流中間電圧値が、予め設定された、前記可変速制御装置に過電圧を生じさせるおそれがある電圧値に基づく第3の閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作に切り替える、ポンプ装置。
【請求項5】
前記通常停止動作は、予め設定された所定の減速度で前記出力周波数を減速する停止動作である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記通常停止動作の減速度は、前記可変速制御装置の出力周波数を最高出力周波数からゼロまで第1の減速時間で下降させる減速度であり、
前記保護停止動作の減速度は、前記第1の減速時間より長い第2の減速時間で、前記最高出力周波数からゼロまで下降させる減速度である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記可変速制御装置は、前記ポンプの停止動作として前記通常停止動作が初期設定されており、前記保護停止動作を行うと、前記ポンプの停止動作として前記保護停止動作が設定され、前記ポンプが停止し、前記出力周波数がゼロもしくは前記モータの回転速度が0min-1になると、または、前記保護停止動作中、前記ポンプの始動条件が整い前記ポンプの始動動作が開始されると、前記ポンプの停止動作の設定を、前記通常停止動作に戻す、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記可変速制御装置は、過電圧が生じると前記ポンプを停止し、その後に前記ポンプのリトライを行う、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
ポンプを駆動するモータを可変速回転駆動する可変速制御装置であって、
前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が整い前記ポンプを停止する前の前記可変速制御装置の出力周波数または前記モータの回転速度が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを停止し、前記出力周波数または前記回転速度が前記閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する、可変速制御装置。
【請求項10】
コンピュータを、
ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が整い前記ポンプを停止する前の可変速制御装置の出力周波数または前記ポンプを駆動するモータの回転速度と、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値とを比較する手段と、
前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを始動する手段と、
前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプを駆動するモータを可変速制御するポンプ装置、可変速制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、インペラを駆動するモータを可変速回転する可変速制御装置を備えるポンプ装置が知られている。この種のポンプ装置では、所定の減速時間で出力周波数を減速した後に、減速中の直流電圧値が所定の電圧値を越えたことにより過電圧保護動作によりポンプを停止すると、減速時間を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、可変速制御装置が過電圧または過電流とならないように、可変速制御装置の出力周波数の指令を自動調整するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、このようなポンプ装置は、過電圧保護機能によりポンプを停止すると、ポンプを始動する技術が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5667906号公報
【特許文献2】特開2019-80419号公報
【特許文献3】特開2020-76371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプ装置では、ポンプの停止動作に伴うモータの回生動作により、可変速制御装置内に過電圧が生じるおそれがある。この過電圧により、過電圧保護の機能によってポンプが停止されることで、給水先への給水が遮断される断水が生じる。
【0006】
そこで本発明は、可変速制御装置が過電圧となることを防止できるポンプ装置、可変速制御装置、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速回転駆動する可変速制御装置と、を備え、前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が満たされ前記ポンプを停止する前の前記可変速制御装置の出力周波数または前記モータの回転速度が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを停止し、前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する。
本発明の一態様によれば、可変速制御装置は、ポンプを駆動するモータを可変速回転駆動する可変速制御装置であって、前記可変速制御装置は、前記ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が整い前記ポンプを停止する前の前記可変速制御装置の出力周波数または前記モータの回転速度が、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを停止し、前記出力周波数または前記回転速度が前記閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する。
本発明の一態様によれば、プログラムは、コンピュータを、ポンプの運転中に前記ポンプの停止条件が整い前記ポンプを停止する前の可変速制御装置の出力周波数または前記ポンプを駆動するモータの回転速度と、予め設定された、過電圧が生じるおそれがある周波数または回転数に基づく第1の閾値とを比較する手段と、前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値未満であると、通常停止動作で前記ポンプを始動する手段と、前記出力周波数または前記回転速度が前記第1の閾値以上であると、前記通常停止動作に比較して緩やかな減速度で前記出力周波数を減速する保護停止動作で前記ポンプを停止する手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、過電圧が生じることを防止できるポンプ装置、可変速制御装置、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図3】同給水装置に用いられるポンプ装置のインバータの構成を示す説明図。
【
図5】同ポンプの停止動作での減速度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る給水装置1の例を、
図1乃至
図5を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る給水装置1の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、給水装置1の構成を示す説明図である。
図3は、給水装置1に用いられるポンプ装置が有するインバータボックス51の構成を模式的に示す説明図である。
図4は、給水装置1の動作の一例を示す流れ図である。
【0012】
給水装置1は、例えば、貯水槽や、建造物に設けられた蛇口やシャワーヘッド等の給水に給水する自動給水装置である。例えば、給水装置1は、受水槽等に接続され、受水槽の水を増圧給水する。なお、給水装置1は、水道本管に設けられた水道分管に接続され、水道分管から供給される水を増圧する、所謂直結式給水装置であってもよい。
【0013】
図1に示すように、給水装置1は、例えば、ポンプ装置11と、配管ユニット12と、アキュムレータ13と、を備えている。また、給水装置1は、圧力検出装置15及び流量検出装置16等の各種センサ類を備えている。
【0014】
図1に示すように、ポンプ装置11は、複数のポンプユニット20と、制御盤(可変速制御装置)50と、を備えている。ポンプ装置11は、制御盤50によってポンプユニット20を単独で運転し、また、複数のポンプユニット20を運転し、二次側に揚水する。本実施形態においては、ポンプ装置11は、例えば、2台のポンプユニット20を備える例を説明する。ポンプユニット20は、モータ30と、ポンプ40と、を備えている。
【0015】
モータ30は、例えば、永久磁石を用いるPMモータである。モータ30は、例えば信号線により、制御盤50に接続されている。モータ30は、制御盤50によって駆動制御される。
【0016】
ポンプ40は、モータ30に接続されている。ポンプ40は、インペラを単数又は複数有する、単段または複数段のポンプである。ポンプ40のインペラは、モータ30のモータ軸に直接的に接続されるか、又はモータ軸に継手等を介して接続された主軸に接続される。ポンプ40は、モータ軸の回転に伴ってインペラが回転することで、流体を増圧して二次側に圧送する。
【0017】
図2に示すように、制御盤50は、モータ30を制御するためのコンピュータである。
図2に示すように、制御盤50は、例えば、モータ30と同数のインバータボックス51と、制御装置60と、を備えている。
【0018】
インバータボックス51は、例えば、インバータ52と、電圧測定部54と、電流測定部55と、周波数測定部56と、インバータ制御基板53と、を備えている。
【0019】
インバータ52は、インバータ制御基板53を介して制御装置60からのインバータ制御信号を受け取る。インバータ52は、このインバータ制御信号に応じて動作する。例えば、インバータ52は、制御装置60からのインバータ制御信号に応じてモータ30の運転を制御する。
【0020】
図3に示すように、インバータ52は、例えば、コンバータ回路を含むコンバータ部52aと、インバータ回路を含むインバータ部52bと、平滑コンデンサ52cと、を備えている。コンバータ部52aは、例えば、ダイオードや制御回路等を含むコンバータ回路により構成される整流装置である。インバータ部52bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIPM(Intelligent Power Module)等のパワー半導体素子や制御回路等を含むインバータ回路により構成される周波数発生装置である。平滑コンデンサ52cは、例えば、フィルムコンデンサである。フィルムコンデンサは、電解コンデンサに比較して、リプル電流が大きく、静電容量が小さい。
【0021】
このように構成されたインバータ52は、電源70に接続されている。ここで、電源70は、例えば三相電源である。電源70から流れる電流は、コンバータ部52aによって直流に変換され、平滑コンデンサ52cにて整流され、インバータ部52bにて可変電圧可変周波数の交流に変換され、モータ30に入力される。
【0022】
電圧測定部54は、制御盤50内の電圧を測定する。電圧測定部54は、制御盤50が過電圧であるか否かの判定に用いる電圧を検出する。また、電圧測定部54は、後述する、ポンプ40の停止動作の選択に用いられる制御盤50の電力を算出する為の電圧を測定する。
【0023】
電圧測定部54は、例えば、インバータボックス51の電圧、具体例として、インバータ52の電圧を測定する。電圧測定部54は、インバータ52の電圧として、例えば、コンバータ部52a及びインバータ部52bの間の電圧である直流中間電圧を測定する。電圧測定部54は、測定した電圧に対応する信号をプロセッサ57に送信する。なお、電圧測定部54が検出するインバータボックス51の電圧は、上述の直流中間電圧に限定されない。他の例では、電圧測定部54が測定する電圧は、インバータ52が接続される電源70の電圧である電源交流電圧であってもよい。
【0024】
電流測定部55は、制御盤50内の電流を測定する。電流測定部55は、ポンプ40の停止動作の選択に用いられる制御盤50の電流を測定する。また、電流測定部55は、ポンプ40の停止動作の選択に用いあれる制御盤50の電力を算出する為の電流を測定する。
【0025】
電流測定部55は、例えば、インバータボックス51の電流、具体例として、インバータ52の電流を測定する。電流測定部55は、インバータ52の電流として、例えば、コンバータ部52a及びインバータ部52bの間の電流である直流中間電流を測定する。電流測定部55は、測定した電流に対応する信号をプロセッサ57に送信する。なお、電流測定部55が測定するインバータボックス51の電流は、直流中間電流に限定されない。他の例では、電流測定部55が測定するインバータ52の電流は、インバータ52が接続される電源70から供給される電流であってもよい。
【0026】
周波数測定部56は、インバータ52の出力周波数を検出する。周波数測定部56は、測定した出力周波数に対応する信号をプロセッサ57に送信する。
【0027】
インバータ制御基板53は、制御装置60からのインバータ制御信号に基づいてインバータ52を制御する。インバータ制御基板53は、例えば、プロセッサ57と、メモリ58と、を備えている。
【0028】
プロセッサ57は、インバータ52を制御するための制御回路である。プロセッサ57は、典型的にはマイコンであるが、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、DSC(Digital Signal Controller)またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ57は、例えば、通信制御、周波数制御などの任意の処理を行う。
【0029】
図2に示すように、プロセッサ57は、インバータ52、電圧測定部54、電流測定部55、及び周波数測定部56に接続されている。プロセッサ57は、例えば、処理回路と、メモリと、を含む。プロセッサ57は、例えば、不揮発性のEEPROM(登録商標)領域と、揮発性のDRAM領域等のメモリと、を含む。プロセッサ57は、メモリ又はEEPROM領域に保存されたプログラムを実行することで、通信制御プロセッサ、周波数プロセッサ等として機能し得る。なお、プロセッサ57内の構成や各部の機能分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。
【0030】
プロセッサ57は、例えば、制御装置60から受信したインバータ制御信号をインバータ52へ出力し、モータ30を制御する。プロセッサ57は、本実施形態の例では、目標圧力一定運転等により、ポンプ40を制御する。
【0031】
メモリ58は、プロセッサ57によって使用される各種データやプログラムが記憶される。メモリ58は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read only memory)又はNAND型フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。また、メモリ58は、フラッシュメモリを搭載したSSD(Solid State Drive)を含む。また、メモリ58は、不揮発性メモリに加え、電源遮断時に消去してもよいデータが展開されるワークエリアを有するRAMを含み得る。
【0032】
制御装置60は、圧力検出装置15、流量検出装置16、電圧測定部54、電流測定部55、及び周波数測定部56からの信号に基づいて、インバータ制御基板53にインバータ制御信号を送信する。
【0033】
例えば、制御装置60は、流量検出装置16で検出された流量及び圧力検出装置15で検出された圧力に対応する検出信号に基づいて、モータ30の停止及び始動を行う。具体例として、制御装置60は、圧力検出装置15で検出された検出信号から算出されたポンプ40の二次側の圧力が予め定められた始動圧力以下に低下したことを検知すると、モータ30を駆動して、ポンプ40を始動する。制御装置60は、流量検出装置16からの検出信号に基づいて、流量が少水量であることを検知するとポンプ40を停止させる。
【0034】
また、制御装置60は、圧力検出装置15で検出された圧力に基づき、モータ30の回転速度を制御し、吐出し圧力一定制御又は推定末端圧力一定制御等の目標圧力一定制御により、ポンプ40を可変速制御する。なお、ポンプ40の回転速度は、モータ30の回転速度と同一であり、そして、ポンプ40(モータ30)の回転速度は、インバータ52の出力周波数と一定の関係を有する。
【0035】
また、制御装置60は、制御盤50内の電圧が過電圧となると、モータ30への出力を停止してポンプ40を停止する過電圧保護動作を行う。過電圧保護動作は、制御盤50が過電圧となる状態が継続されることを防止する機能である。制御装置60は、具体的には、電圧測定部54で測定された電圧に基づいて、過電圧を判定する。また、制御装置60は、過電圧保護動作により、ポンプ40の始動動作中、及び、ポンプ40の始動動作後の停止動作を除く駆動中にポンプ40を停止すると、ポンプ40を始動する。換言すると、制御装置60は、電圧測定部54で過電圧を検出するとポンプ40を停止し、ポンプ40の始動動作中、及び、ポンプ40の始動動作後であって停止動作を除く駆動中に電圧測定部54が過電圧を検出してポンプ40を一旦停止させ、ポンプを再始動させる。
【0036】
また、制御装置60は、ポンプユニット20の制御に加えて、例えば、通信端末100と無線接続することにより、適宜、運転データを通信端末100に送信してもよい。なお、運転データは、ある運転点での、周波数、電流、電圧、圧力、流量、振動値、モータの絶縁抵抗、及び受水槽の設定などといった、給水装置1の運転状態を示すデータである。
【0037】
このような制御装置60は、
図2に示すように、例えば、通信部61、入力部62、インターフェース63、表示部64、設定部65、メモリ66及びプロセッサ67を備えている。
【0038】
通信部61は、プロセッサ67により制御され、無線通信技術を用いて、通信端末100などの外部装置と通信可能な任意の通信インターフェースである。通信部61は、例えば、通信モジュール又は通信基板等として実装されていてもよい。通信モジュールは、例えばコネクタを介して制御装置60の制御基板に着脱自在に設けられてもよい。具体的には、通信部61は、例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energyの規格(以下、BLE規格ともいう)、Wi-Fi(登録商標)、NFC等の無線通信技術、又はUSB等の有線通信技術を用いて、通信端末100等の外部装置に接続できる。
【0039】
例えば、通信部61は、制御装置60の識別情報を含むアドバタイズパケットをブロードキャスト通信する。また、例えば、通信部61は、当該アドバタイズパケットを受信する通信端末100から接続要求を受けると、通信端末100との間の通信を接続してもよい。通信部61は、プロセッサ67に電気的に接続され、通信端末100との間の通信を接続可能な通信手段の一例である。なお、アドバタイズパケットのブロードキャスト通信は通信部61と外部の通信端末100との一方が行い、他方が受信する構成でもよい。
【0040】
入力部62は、例えば、ボタンを含む操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス、等のユーザ入力を受け付ける装置と、圧力センサ、マイクロフォン、カメラなどのセンサとの、少なくともいずれかを有する。入力部62は、パラメータ設定、各運転モードの設定等の任意のユーザからの指令であるユーザ入力を受け付ける装置である。
【0041】
例えば、入力部62は、ユーザがポンプ40の始動の指令を入力する操作、及び、ユーザによるポンプ40の停止の指令を入力する操作を可能に構成されている。入力部62は、ユーザにより操作がなされると、操作に応じた信号をプロセッサ67に送信する。
【0042】
インターフェース63は、流量検出装置16及び圧力検出装置15や、外部端末等が電気的に接続可能な端子又は回路である。
【0043】
表示部64は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスを有する。また、表示部64は、表示デバイスに代えて、又は、表示デバイスに加えて、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)点灯部等を有していても良い。
【0044】
メモリ66は、データの読出及び書込が可能である。メモリ66は、プロセッサ67によって使用されるデータ、ポンプ40の運転データやポンプ40の制御に用いる各種データやプログラム等を格納する。メモリ66は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read only memory)又はNAND型フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。また、メモリ66は、フラッシュメモリを搭載したSSD(Solid State Drive)を含む。なお、メモリ66は、不揮発性メモリに加え、電源遮断時に消去してもよいデータが展開されるワークエリアを有するRAMを含み得る。
【0045】
メモリ66に格納されるデータとしては、例えば、制御装置60を識別する識別情報、コード、テーブルなどが適宜記憶される。メモリ66は、例えば、制御に必要な情報として、各種プログラムや、各種基準値や閾値を記憶する。なお、各種閾値や設定値は、例えば操作入力によってユーザが任意に設定変更可能に構成されている。
【0046】
また、メモリ66には、ポンプ40の制御に要するパラメータが記憶される。例えばパラメータは、制御目標に関するデータであり、定格圧力、末端圧力、始動圧力、定格流量等が挙げられる。
【0047】
また、パラメータは、ポンプ40の始動動作に関するデータを含んでいる。また、パラメータは、ポンプ40の停止動作に関するデータを含んでいる。停止動作に関するデータは、例えば、後述する通常停止動作または保護停止動作を選択する為の閾値を含んでいる。この閾値は、本実施形態の例では、保護停止動作を行う条件の1つである第1の条件が満たされたか否かの判定に用いる第1の閾値T1と、保護停止動作を行う他の条件である第2の条件が満たされたか否かの判定に用いる第2の閾値T2と、を含んでいる。
【0048】
第1の閾値T1は、予め設定されたインバータ52の周波数またはモータ30の回転速度であり、通常始動動作を行うと制御盤50内に過電圧が生じるおそれがある周波数または回転速度に基づく値である。第1の閾値T1は、例えば、通常停止動作を行うことで制御盤50内に過電圧が生じるおそれがある、出力周波数または回転速度以上の値である。
【0049】
第2の閾値T2は、予め設定された電流値または電力値であり、電流測定部55で測定された電流値、または、電流測定部55で測定された電流値及び電圧測定部54で測定された電圧値に基づいて算出される電力と比較される。第2の閾値T2は、通常停止動作を行うことで制御盤50に過電圧が生じるおそれがある電流値または電力値に基づく値である。第2の閾値T2は、例えば、通常停止動作を行うことで制御盤50内に過電圧が生じるおそれがある電流値以上の値または電力値以上の値である。
【0050】
なお、保護停止動作を行う条件は、第1の条件及び第2の条件の一方のみであってもよい。例えば、保護停止動作を行う条件が、第1の条件のみが満たされたことである場合は、第1の閾値T1のみを含み、第2の閾値T2を含まない。または、保護停止動作を行う条件が第2の条件のみが満たされことである場合は、第2の閾値T2のみを含み、第1の閾値T1は含まない。
【0051】
例えばパラメータは、製造工程における給水装置1の試運転時や、給水装置1の設置後に、作業員が、制御装置60の入力部62を操作するか、又は、外部端末をインターフェース63に接続し、外部端末を操作して、初期値が設定される。
【0052】
プロセッサ67は、統括制御部である。プロセッサ67は、典型的にはマイコンであるが、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ67は、例えば、通信制御、表示制御、ポンプ制御などの任意の処理を行う。
図2に示すように、プロセッサ67は、例えば、インターフェース63やインバータ制御基板53等を介して、流量検出装置16、圧力検出装置15、インバータ52、電圧測定部54、電流測定部55及び、周波数測定部56に接続される。
【0053】
プロセッサ67は、例えば、処理回路とメモリとを含む。プロセッサ67は、例えば、不揮発性のEEPROM領域67aと、揮発性のDRAM領域67bとを含む。また、プロセッサ67は、メモリ66又はEEPROM領域67aに保存されたプログラムを実行することで、通信制御部67c及びポンプ制御部67d等として機能し得る。なお、プロセッサ67内の各部の機能分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。
【0054】
通信制御部67cは、通信部61を制御して、通信端末100との無線通信を行う。
ポンプ制御部67dは、圧力検出装置15、流量検出装置16、電圧測定部54、電流測定部55、及び周波数測定部56を含む各種センサからの検出信号に基づいて、給水装置1の運転状態を示す運転データを取得し、当該運転データをメモリ66、EEPROM領域67a及び/又はDRAM領域67bに記憶する。
【0055】
また、ポンプ制御部67dは、メモリ66又はEEPROM領域67aに保存されたポンプ制御のためのプログラムと、各パラメータとに基づいてインバータ制御信号を生成し、インバータ制御信号を、インバータ制御基板53を介してインバータ52へ出力し、モータ30を制御する。これにより、ポンプ制御部67dは、ポンプ40の始動動作を行い、例えば目標圧力一定制御によりポンプ40を制御し、ポンプ40の停止動作を行う。
【0056】
以下、プロセッサ67によるポンプ40の制御機能の一例を説明する。ここで、制御機能の一例とは、プロセッサ67がプログラムに基づき、ポンプ40を始動する始動動作を行う制御機能、ポンプ40を目標圧力一定制御で動作する制御機能、ポンプ40を停止する停止動作を行う制御機能、及び、電圧測定部54で測定された電圧値に基づいて過電圧を判定すると、ポンプ40を停止する制御機能である。
【0057】
また、制御機能の一例は、プロセッサ67がプログラムに基づき、ポンプ40の始動動作中、または、始動動作後であってポンプ40の停止動作を除く駆動中に、電圧測定部54で測定された電圧に基づいて過電圧を判定してポンプ40を一旦停止した後、ポンプ40を再始動させる制御機能である。
【0058】
なお、ポンプ制御部67dによる各処理は適宜設定できることから、以下、プロセッサ67の処理の一例として説明する。また、各種データの読み出し及び記憶(格納)は、メモリ66、EEPROM領域67a及びDRAM領域67bを適宜設定できることから、各種データの読み出し及び記憶については、メモリ66を用いた一例として説明する。
【0059】
また、プロセッサ67は、プログラムに基づいて、電圧測定部54の測定した電圧に基づいて過電圧を判定すると、ポンプ40を停止する。
【0060】
また、プロセッサ67は、プログラムに基づいて、ポンプ40の始動動作中、及び、始動動作後であってポンプ40の停止動作を除く駆動中に過電圧保護機能によりポンプ40を一旦停止すると、ポンプ40を再始動する。
【0061】
ポンプ40の始動動作後、プロセッサ67は、例えば、プログラムに基づいて、目標圧力一定制御にてポンプ40を単独運転する給水処理を行う。プロセッサ67は、例えば、流量検出装置16、圧力検出装置15で検出された流量及び圧力の各検出値、モータ30の回転速度(周波数)、並びに、メモリ66等に格納された各種データ及びプログラム等に基づいて、インバータ52の出力周波数を制御し、ポンプ40を目標圧力一定制御で駆動制御する。これにより、ポンプ40の単独運転による給水処理が行われる。
【0062】
また、プロセッサ67は、例えば、ポンプ40を目標圧力一定制御で駆動しているときに、ポンプ40を増台する増台処理、及び、ポンプ40を減台する減台処理を行う。
【0063】
また、プロセッサ67は、例えば、プログラムに基づいて、ポンプ40の運転中に、ポンプ40の停止条件が満たされたか否かの判定処理を行う。そして、プロセッサ67は、ポンプ40の停止条件が満たされたと判定すると、ポンプ40の停止動作を開始する前例えば直前に、保護始動動作を行う条件が満たされているか否かを判定する処理を行う。本実施形態の例では、保護停止動作を行う条件は、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされることである。プロセッサ67は、第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方が満たされてないと判定すると、ポンプ40の停止動作として、通常始動動作を行う処理をする。
【0064】
通常停止動作は、予め設定された減速度で、インバータ52の出力周波数をゼロに下降させる停止動作である。通常停止動作の予め設定された減速度は、制御盤50内に過電圧が生じるおそれがない減速度である。
【0065】
通常停止動作は、例えば、インバータ52の出力周波数を、予め設定された、所定の単位時間当たりの変化率でゼロまで下降させる停止動作である。この変化率は、インバータ52の出力周波数を、最高出力周波数からゼロまで、予め設定された所定の第1の減速時間t3で下降されるものであり、最高出力周波数を第1の減速時間t3で除算した値である。
【0066】
図5は、通常停止動作でのインバータ52の出力周波数の減速度の設定値の一例、及び、後述する保護停止動作でのインバータ52の出力周波数の減速度の設定値の一例を示している。
図5では、横軸は時間を示しており、縦軸は周波数を示している。
図5に示すように、本実施形態の例では、通常停止動作は、
図5に線L3で示すように、インバータ52の出力周波数を、一定の傾きでゼロまで下降させる減速度である。
【0067】
停止動作を行う直前とは、例えば、ユーザがポンプ40を停止する為に入力部62を操作して、プロセッサ67が入力部62から停止の操作がなされたことを示す信号を受信した時である。または、例えば、停止動作を行う直前とは、流量検出装置16が停止流量を検出し、プロセッサ67が、流量検出装置16からの信号を受信した時である。
【0068】
第1の条件は、インバータ52の出力周波数、または、モータ30の回転速度が、第1の閾値T1以上であることである。第1の閾値T1は、通常停止動作を行うことで制御盤50内に過電圧が生じるおそれがある出力周波数または回転速度である。
【0069】
インバータ52の出力周波数及びモータ30の回転速度は、測定値であってもよく、または、指令値であってもよい。インバータ52の出力周波数は、周波数測定部56により測定できる。モータ30の回転速度は、インバータ52の出力周波数と一定の関係を有するため、周波数測定部56の測定結果に基づいて、モータ30の回転速度を検出できる。
【0070】
なお、モータ30の回転速度は、インバータ52の出力周波数に基づいて検出することに限定されない。例えば、プロセッサ67は、他の手段により検出したモータ30の回転速度を用いてもよい。
【0071】
なお、インバータ52の出力周波数の指令値は、インバータ制御基板53からインバータ52に送信される出力周波数の指令値である。回転速度の指令値は、例えば、インバータ制御基板53からインバータ52に送信される出力周波数の指令値に基づいて算出される。
【0072】
第2の条件は、例えば、モータ30に作用する負荷が軽負荷であることである。軽負荷の一例は、電流測定部55で測定された電流、または、電流測定部55で測定された電流及び電圧測定部54で測定された電圧に基づいて算出される電力が第2の閾値T2以下であることである。第2の閾値T2は、通常停止動作を行うと、制御盤50に過電圧が生じるおそれがある電流値または電力値である。
【0073】
電流測定部55で測定される電流は、例えば、コンバータ部52a及びインバータ部52b間の直流中間電流である。なお、電流測定部55で測定される制御盤50内の電流は、コンバータ部52a及びインバータ部52b間の直流中間電流に限定されない。他の例では、電流測定部55は、例えば、インバータ52からモータ30への出力電流を測定してもよい。制御盤50内の電力は、例えば、コンバータ部52a及びインバータ部52b間の電力である。なお、制御盤50内の電流値及び電力値は、測定値が用いられたがこれに限定されない。他の例では、制御盤50内の電流値及び電力値は、指令値であってもよい。
【0074】
また、プロセッサ67は、プログラムに基づいて、第1の条件及び第2の条件の双方の条件が満たされていると判定すると、保護停止動作を行う。保護停止動作は、インバータ52の出力周波数の減速度を、通常停止動作に比較して緩やかにした停止動作である。インバータ52の出力周波数の減速度を、通常停止動作に比較して緩やかにした停止動作とは、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされている状態においても、制御盤50内に過電圧が生じるおそれがない停止動作である。
【0075】
出力周波数の減速度を通常停止動作に比較して緩やかにするとは、例えば、停止動作の開始からインバータ52の出力周波数がゼロまで下降する期間の単位時間当たりのインバータ52の出力周波数の変化率を、通常停止動作に比較して小さくすることである。
【0076】
保護停止動作の開始時のインバータ52の出力周波数は、通常停止動作の開始時のインバータ52の出力周波数よりも大きい。この為、保護停止動作は、単位時間当たりのインバータ52の出力周波数の変化率が、通常停止動作でのインバータ52の単位時間当たりの出力周波数の変化率より小さくなるように、停止動作開始からインバータ52の出力周波数がゼロまで下降する時間を、通常停止動作に比較して長くする。
【0077】
本実施形態の例では、保護停止動作の、単位時間当たりの出力周波数の変化率は、インバータ52の出力周波数を最高出力周波数からゼロまで、第1の減速時間t3より長い所定の第2の減速時間t4で下降する場合の単位時間当たりの出力周波数の変化率と同じ変化率で減速する。さらにこの一例としては、
図5に線L41で示すように、保護停止動作は、予め設定された所定の傾きで、インバータ52の出力周波数を下降させてもよい。
【0078】
なお、第2の減速時間はT4、例えば、複数あってもよい。そして、インバータ52の出力周波数またはモータ30の回転速度と第1の閾値T1の比較の結果、及び、電流測定部55で検出された電流値、または、電流測定部55で検出された電流値及び電圧測定部54で測定された電圧値に基づく電力値と第2の閾値T2との比較の結果に基づいて、複数の第2の減速時間からいずれかの第2の減速時間が選択されてもよい。
【0079】
例えば、第2の減速時間t4として、t41、t42、t43、t44が記憶されており、t41<t42<t43<t44である。そして、インバータ52の出力周波数またはモータ30の回転速度と第1の閾値T1の比較の結果、及び、電流測定部55で検出された電流値、または、電流測定部55で検出された電流値及び電圧測定部54で測定された電圧値に基づく電力値と第2の閾値T2との比較の結果に基づいて、t41、t42、t43及びt44のいずれかが用いられる。
【0080】
または、第2の減速時間t4は、例えば、保護停止動作開始時に設定された時間を、保護停止動作中の、インバータ52の出力周波数もしくはモータ30の回転速度、及び、電流測定部55で検出された電流値、もしくは、電流測定部55で検出された電流値及び電圧測定部54で測定された電圧値に基づく電力値に応じて、延ばしてもよい。
【0081】
また、通常停止動作に比較して出力周波数の減速度を緩やかにした減速度の他の例は、インバータ52の出力周波数を、ゼロまで複数の傾きで下降させてもよい。この例では、例えば、複数の傾きのいずれかは、通常停止動作でのインバータ52の出力周波数の単位時間当たりの出力周波数の変化率よりも大きくてもよいし、または、通常停止動作でのインバータ52の出力周波数の単位時間当たりの出力周波数の変化率同じであってもよい。
【0082】
例えば、
図5に出力周波数L42で示すように、ポンプ40の停止動作の開始から所定期間での単位時間当たりのインバータ52の出力周波数の変化率が、通常始動動作より大きくてもよい。または、他の例では、
図5に出力周波数L43で示すように、インバータ52の出力周波数がゼロまで下降する時点を含む所定期間での単位時間当たりのインバータ52の出力周波数の変化率が、通常始動動作より大きくてもよい。
【0083】
本実施形態の例では、メモリ66等に、停止動作の初期設定として通常停止動作が設定されている。プロセッサ67は、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされると、停止動作として保護停止動作を設定する。プロセッサ67は、保護停止動作によりポンプ40を停止すると、または、保護停止動作中にポンプ40の始動条件が満たされてポンプ40の始動動作が開始されると、停止動作の設定を、通常停止動作に戻す。
【0084】
ポンプ40が停止した状態とは、インバータ52の出力周波数がゼロになった状態、または、モータ30の回転速度が0min-1となった状態である。なお、ポンプ40が停止した状態は、インバータ52の出力周波数の指令値がゼロ、または、モータ30の回転速度の指令値が0min-1である状態であってもよい。
【0085】
このように、プログラムは、過電圧保護機能によりポンプ40を停止する手段として、機能させる。また、プログラムは、ポンプ40の始動動作中及び始動動作後であって停止動作を除く駆動中に過電圧保護機能によりポンプ40を一旦停止すると、ポンプ40を再始動する処理を行う手段として機能させる。また、プログラムは、ポンプ40の停止条件が満たされたか否かを判定する手段として、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされているか否かを判定する処理を行う手段として、通常始動動作を行う処理を行う手段として、保護停止動作を行う処理を行う手段として、制御盤50を機能させる。
【0086】
なお、本実施形態においては、給水装置1が複数台のポンプユニット20を有する例を用いて説明することから、制御盤50が制御装置60を備える例を示すが、ポンプユニット20が一台である場合には、給水装置1は、制御装置60を有さず、制御装置60の機能をインバータボックス51が備え、インバータボックス51が、圧力検出装置15、流量検出装置16、電圧測定部54、電流測定部55、及び周波数測定部56からの信号に基づいて、ポンプ40の始動動作及び停止動作を上述のように制御する構成としてもよい。
【0087】
配管ユニット12は、
図1に示すように、例えば、各ポンプ40に接続されるチェック弁12aと、チェック弁12aに接続された連結管12bと、を備えている。チェック弁12aは、ポンプ40の二次側に設けられており、ポンプ40の吐出口への水の逆流を防止する。
【0088】
アキュムレータ13は、例えば、連結管12bに接続されている。圧力検出装置15は、ポンプ装置11のポンプ40の始動圧力を検出可能に構成されている。圧力検出装置15は、ポンプ装置11の二次側、例えば連結管12bの二次側に設けられ、連結管12bの二次側の圧力を検出する。
【0089】
流量検出装置16は、ポンプ40の停止流量を検出可能に構成されている。流量検出装置16は、例えば、各ポンプ40の二次側にそれぞれ設けられ、各ポンプ40の吐出流量を検出する。
【0090】
次に、このような給水装置1とデータ通信を行う通信端末100の例について、以下説明する。通信端末100は、給水装置1と通信可能な情報処理装置である。通信端末100は、例えば、PC、モバイル端末等が挙げられるが、これらに限られない。通信端末100は、
図2に例示するように、例えば、通信部101、入力部102、メモリ103及びプロセッサ104を備える。
【0091】
通信部101は、プロセッサ104により制御され、無線通信技術を用いて、給水装置1等の外部装置と通信可能な任意の通信インターフェースである。入力部102は、ユーザ入力を受け付けるための入力I/Fであり、通信端末100に内蔵されてもよいし、通信端末100に外付けされてもよい。
【0092】
メモリ103は、プロセッサ104が各処理を実現するために当該プロセッサ104によって実行されるプログラム、および当該プロセッサ104によって使用されるデータなどを記憶する。
【0093】
プロセッサ104は、典型的にはCPUであるが、マイコン、FPGA、DSP、またはその他の汎用または専用のプロセッサ等であってもよい。プロセッサ104は、通信部101を介して給水装置1との間で無線通信を行う。プロセッサ104は、メモリ103に保存されたプログラムを実行することで、通信端末100を機能し得る。なお、プロセッサ104内の各部の機能分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。
【0094】
次に、本実施形態に係る給水装置1の目標圧力一定制御による給水の例を、
図4に示す流れ図を用いて説明する。
プロセッサ67は、ポンプ40の停止中にポンプ40の始動条件が満たされたか否かを判定する(ステップST1)。本実施形態の例では、入力部62からの始動の信号が受信されると、または、圧力検出装置15で検出されたポンプ40の二次側の圧力がメモリ66等に記憶された閾値としての始動圧力以下となると、始動条件が整う。
【0095】
プロセッサ67は、始動条件が満たされていない場合(ステップST1のNO)には、ポンプ40の停止を維持する。プロセッサ67は、始動条件が整ったと判定すると(ステップST1のYES)、所定の始動動作でポンプ40を始動する。プロセッサ67は、ポンプ40を始動すると、目標圧力一定制御にてポンプ40を運転する(ステップST2)。
【0096】
プロセッサ67は、ポンプ40を目標圧力一定制御で運転中、ポンプ40の停止条件が満たされたか否かを判定する(ステップST3)。本実施形態の例では、入力部62からポンプ40の停止の信号を受信すると、または、流量検出装置16で検出された流量がメモリ66等に記憶された閾値としての停止流量以下となると、停止条件が満たされる。
【0097】
停止条件が満たされていない場合(ステップST3のNO)には、プロセッサ67は、ポンプ40の運転を維持し、ポンプ40の停止条件が満たされたか否かの判定を継続する。
【0098】
停止条件が満たされると(ステップST3のYES)、プロセッサ67は、ポンプ40の停止の直前に、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされたか否かを判定する(ステップST4)。プロセッサ67は、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされている場合(ステップST4のYES)には、保護停止動作を行う(ステップST5)。プロセッサ67は、第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方が満たされていないと判定すると(ステップST4のNO)、通常停止動作を行う(ステップST6)。
【0099】
このように構成された給水装置1によれば、制御盤50は、ポンプ40の運転中にポンプ40の停止条件が満たされ、かつ、第1の条件が満たされると、保護停止動作でポンプ40を停止する。この為、モータ30の回生が生じても、回生により生じる電圧を小さくできるので、制御盤50内の電圧が高い状態であっても過電圧が生じることを防止できる。結果、過電圧保護機能によるポンプ40の停止を防止できるので、給水先への給水が遮断される断水の発生を防止できる。さらに、モータ30の回生により生じる電圧を小さくできるので、インバータ52の平滑コンデンサ52cとして、リプル電流が大きく、静電容量が小さいコンデンサを用いることができる。リプル電流が大きく、静電容量が小さいコンデンサとして、フィルムコンデンサを用いることができる。さらに、プログラム等のソフトウェアにより過電圧が生じることを防止できるので、過電圧が生じることをコスト低く抑えて防止できる。さらに、既存の給水装置1に対しても上述のプログラムを用いることで、過電圧の発生を防止できる。
【0100】
さらに、制御盤50は、第1の条件に加えて第2の条件も満たされると、第2の停止動作でポンプ40を停止する。この為、制御盤50内に過電圧が生じることを、より一層防止できる。
【0101】
また、ポンプ40の始動動作中、及び、ポンプ40の始動動作後であってポンプ40の停止動作を除くポンプ40の駆動中に、万が一、過電圧保護機能によりポンプ40を停止しても、ポンプ40を再始動するリトライを行うことで、断水の期間を短くできる。
【0102】
上述したように、本実施形態に係るポンプ装置11によれば、制御盤50内に過電圧が生じることを防止できる。
【0103】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上記処理を実現するプログラム、通常始動動作に関するデータ、保護始動動作に関するデータ、第1乃至第4の閾値、通常停止動作に関するデータ、及び保護停止動作に関するデータは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供されてもよい。プログラム、通常始動動作に関するデータ、保護始動動作に関するデータ、第1乃至第4の閾値、通常停止動作に関するデータ、及び保護停止動作に関するデータは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記憶媒体に記憶される。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記憶媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラム、通常始動動作に関するデータ、保護始動動作に関するデータ、第1乃至第4の閾値、通常停止動作に関するデータ、及び、保護停止動作に関するデータを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0104】
また、上述の例では、ポンプ40の停止条件が満たされ、ポンプ40を停止する前に第1の条件及び第2の条件の双方が満たされると保護停止動作を行う構成が一例として説明されたがこれに限定されない。他の例では、ポンプ40の停止条件が満たされ、ポンプ40を停止する前に第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方が満たされると、保護停止動作を行ってもよい。
【0105】
また、上述の例では、第1の条件及び第2の条件について、満たされたか否かの判定がなされる構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、第1の条件のみ満たされたか否かを判定し、満たされると保護停止動作をする構成であってもよい。または、第2の条件のみ満たされたか否かを判定し、満たされると保護停止動作をする構成であってもよい。
【0106】
また、上述の例では、制御盤50は、ポンプ40の停止条件が満たされ、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされると、保護停止動作を行う構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、制御盤50は、ポンプ40の停止条件が満たされ、通常停止動作で出力周波数の減速時に、インバータ52の直流中間電圧が予め設定された電圧値である第3の閾値以上であることを検出すると、停止動作を通常停止動作から保護停止動作に切り替えてもよい。閾値は、制御盤50に過電圧が生じるおそれがある電圧値に基づく値である。閾値は、例えば、制御盤50に過電圧が生じるおそれがある電圧値以上の電圧値である。
【0107】
また、上述の例では、第2の条件が満たされた状態は、電流測定部55で測定された電流、または、電流測定部55で測定された電流及び電圧測定部54で測定された電圧に基づいて算出される電力が第2の閾値T2以下であることが一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、第2の条件が満たされた状態は、例えば、ポンプ40が空転している状態であってもよい。ポンプ40の空転は、例えば、ポンプ40の二次側の圧力が予め設定された圧力より低下したことを検出し、ポンプ40の回転数が予め設定された回転数より高いことを検出し、かつ、流量検出装置16が停止流量を検出していない状態であることを検出することで、検知できる。
【0108】
また、上述の例では、過電圧保護機能によりポンプ40を停止した後、ポンプ40を始動しすなわちリトライし、その後、ポンプ40の停止動作をする場合、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされたか否かに基づいて、通常停止動作、または、保護停止動作が行われる構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、リトライによるポンプ40の始動後にポンプ40を停止する場合は、第1の条件及び第2の条件の双方が満たされたか否かの判定をせず、インバータ52の出力周波数の減速度を、通常停止動作に比較して緩やかにした停止動作が行われてもよい。
【0109】
この例としては、ポンプ40のリトライ後の停止動作は、保護停止動作と同じ停止動作が行われてもよい。この場合、例えば前回の停止動作が保護停止動作である場合は、停止動作の設定を通常始動動作に戻す、ということを行わなくてもよい。または、リトライによるポンプ40の始動動作後にポンプ40を停止する場合、停止動作は、インバータ52からの出力周波数の減速度を、保護停止動作に比較して緩やかにした停止動作であってもよい。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0111】
1…給水装置、11…ポンプ装置、30…モータ、40…ポンプ、50…制御盤(可変速制御装置)、52…インバータ、52c…平滑コンデンサ、55…電流測定部、56…周波数測定部、60…制御装置、67…プロセッサ、67d…ポンプ制御部。