(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177696
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ボートコントロールシステムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/21 20060101AFI20221124BHJP
B63B 32/30 20200101ALI20221124BHJP
B63H 25/46 20060101ALI20221124BHJP
B63B 34/70 20200101ALI20221124BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B63H21/21
B63B32/30
B63H25/46
B63B34/70
G06F3/01 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084122
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 順敬
(72)【発明者】
【氏名】中村 光義
(72)【発明者】
【氏名】黒川 光章
(72)【発明者】
【氏名】福本 晋平
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA04
5E555AA71
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC16
5E555CA42
5E555CB66
5E555CC01
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることが可能なボートコントロールシステムおよび船舶を提供する。
【解決手段】このボートコントロールシステム102は、船体101に牽引されるユーザUを撮像する撮像部5と、撮像部5に撮像された画像からユーザUの所定の状態を判別する画像処理部6と、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、船体101の推進状態を変化させるジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うボートコントロールユニット8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に牽引されるユーザを撮像する撮像部と、
前記撮像部に撮像された画像から前記ユーザの所定の状態を判別する画像処理部と、
前記画像処理部により判別された前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行う制御部と、を備える、ボートコントロールシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像処理部により判別された前記ユーザの所定の操船指示を示す前記所定の状態に基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のボートコントロールシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像処理部により判別された前記ユーザの前記所定の操船指示を示すジェスチャーに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載のボートコントロールシステム。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記撮像部により前記ユーザの前記所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、前記ユーザが前記所定の状態にあると判別するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記推進部を調整して、前記船体の推進速度および前記ユーザに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させる制御を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項6】
前記推進部は、前記船体の推進力を発生させる推進力発生部の駆動源であるエンジンおよびモータの少なくとも一方を含み、
前記制御部は、前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記エンジンおよび前記モータの少なくとも一方の駆動力の大きさを調整して、前記船体の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている、請求項5に記載のボートコントロールシステム。
【請求項7】
前記推進部は、前記船体に搭載されたバラストタンクと、前記バラストタンク内の貯水量を変更するバラストポンプとを含み、
前記制御部は、前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記バラストポンプにより前記バラストタンク内の貯水量を調整して、前記ユーザに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている、請求項5または6に記載のボートコントロールシステム。
【請求項8】
前記推進部は、開閉可能な導水口を有し、前記導水口を開くことにより前記船体の後方に向かう水流を発生させるスクープ装置を含み、
前記制御部は、前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記スクープ装置の前記導水口の開閉を切り換えて、前記ユーザに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている、請求項5~7のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記ユーザの前記所定の操船指示として、前記撮像部により撮像された前記ユーザの上肢によるジェスチャーおよび下肢によるジェスチャーの少なくとも一方を判別するように構成され、
前記制御部は、前記画像処理部により判別された前記上肢によるジェスチャーおよび前記下肢によるジェスチャーの少なくとも一方に基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項3に記載のボートコントロールシステム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記画像処理部により前記上肢または前記上肢の手の所定の指が上方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の推進速度を大きくする制御を行い、
前記画像処理部により前記上肢または前記上肢の手の所定の指が下方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の推進速度を小さくする制御を行うように構成されている、請求項9に記載のボートコントロールシステム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記画像処理部により前記上肢または前記上肢の手の所定の指が上方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記ユーザに向かう波を大きくする制御を行い、
前記画像処理部により前記上肢または前記上肢の手の所定の指が下方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記ユーザに向かう波を小さくする制御を行うように構成されている、請求項9に記載のボートコントロールシステム。
【請求項12】
前記制御部は、
前記画像処理部により前記上肢が左方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記ユーザに向かう前記船体の左舷側の波を発生させる制御を行い、
前記画像処理部により前記上肢が右方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記ユーザに向かう前記船体の右舷側の波を発生させる制御を行うように構成されている、請求項9に記載のボートコントロールシステム。
【請求項13】
前記制御部は、前記画像処理部により、前記ユーザの前記所定の状態が落水した状態であると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体を停止させる制御を行うように構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項14】
前記制御部は、前記船体が停止している場合に、前記画像処理部により、前記ユーザの前記所定の状態が、前記ユーザの下肢が水中に位置しており、前記船体の推進を開始させる状態であると判別されたことに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の推進速度を徐々に大きくする制御を行うように構成されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項15】
前記画像処理部は、前記ユーザを個別に判別可能に構成されており、
前記画像処理部により判別される前記ユーザのユーザ判別データと、前記制御部により各々の前記ユーザに向けて前記推進部を調整したことにより取得された調整制御データとを関連付けて記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記船体の推進を開始させる場合において、前記撮像部により撮像された前記ユーザの画像データと、前記記憶部に記憶された前記ユーザ判別データとに基づいて前記ユーザの個人認証を行い、前記個人認証の結果に基づいて、認証された前記ユーザの前記ユーザ判別データに関連付けられた前記調整制御データを特定するとともに、特定された前記調整制御データに基づいて、前記船体の初期の前記推進状態を、認証された前記ユーザに向けた初期設定状態にする制御を行うように構成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項16】
前記制御部は、自動で操船する制御を行うことが可能に構成されているボートコントロールユニットであり、
前記ボートコントロールユニットは、自動で操船する制御を行うことに加えて、前記画像処理部により判別された前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項17】
オンオフスイッチを含み、ロープを介して前記船体に接続され、前記ユーザに把持されるハンドルをさらに備え、
前記制御部は、前記画像処理部により判別された前記ユーザの前記所定の状態、および、前記オンオフスイッチのオンオフ状態との組み合わせに基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載のボートコントロールシステム。
【請求項18】
船体と、
前記船体に搭載されるボートコントロールシステムとを備え、
前記船体には、前記船体の推進状態を変化させる推進部が設けられ、
前記ボートコントロールシステムは、
前記船体に牽引されるユーザを撮像する撮像部と、
前記撮像部に撮像された画像から前記ユーザの所定の状態を判別する画像処理部と、
前記画像処理部により判別された前記ユーザの前記所定の状態に基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行う制御部と、を含む、船舶。
【請求項19】
前記制御部は、前記画像処理部により判別された前記ユーザの所定の操船指示を示す前記所定の状態に基づいて、前記推進部を調整して、前記船体の前記推進状態を変化させる制御を行うように構成されている、請求項18に記載の船舶。
【請求項20】
前記推進部が水流を噴出するジェット推進部を含み、ジェット推進艇として構成されている、請求項18または19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボートコントロールシステムおよび船舶に関し、特に、船舶に牽引されるユーザが自ら船体の推進状態を変化させるためのボートコントロールシステムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に牽引されるユーザが自ら船体の推進状態を変化させるためのボートコントロールシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船体に牽引されるユーザの手首に装着される制御装置を備えるボートコントロールシステムが開示されている。この制御装置には、船体の推進速度を変化させるためのボタン、および、バラストタンクの貯水量を調整してユーザに向かう波の大きさを変化させるためのボタンなどの船体の推進状態を変化させる種々のボタンが設けられている。船体に牽引されるユーザは、制御装置が装着された腕とは異なる腕により制御装置のボタン操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0284762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のボートコントロールシステムでは、船体に牽引されるユーザが制御装置の種々のボタンを操作する際に、船体に向いていた視線が制御装置の種々のボタンに向いてしまうことなどに起因して落水などが生じる場合がある。このため、従来から、船体に牽引されるユーザ自らが、船体の推進状態を容易に変化させることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることが可能なボートコントロールシステムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるボートコントロールシステムは、船体に牽引されるユーザを撮像する撮像部と、撮像部に撮像された画像からユーザの所定の状態を判別する画像処理部と、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この発明の第1の局面によるボートコントロールシステムは、上記のように、撮像部に撮像された画像からユーザの所定の状態を判別する画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行う制御部を設ける。これによって、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体の推進状態を変化させることができるので、従来のように船体に牽引されるユーザが手首につけられた制御装置のボタンなどを操作する必要がなくなる。したがって、従来のように船体に向いていた視線が制御装置の種々のボタンに向いてしまうことがなくなり、船体に牽引されるユーザは船体を視認し続けることができるようになる。その結果、船体に牽引されるユーザが船体に牽引されることに集中することができるようになるため、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることができる。
【0009】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、制御部は、画像処理部により判別されたユーザの所定の操船指示を示す所定の状態に基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、画像処理部によりユーザの所定の操船指示を示す所定の状態を判別して、船体の推進状態を変化させることができるので、ユーザが能動的(意識的)に船体の推進状態を変化させることができる。したがって、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態をより容易に変化させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、画像処理部により判別されたユーザの所定の操船指示を示すジェスチャーに基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザはジェスチャーにより船体の推進状態を変化させることができるので、ユーザがボタンなどを操作することなく、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態をより一層容易に変化させることができる。
【0011】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、画像処理部は、撮像部によりユーザの所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、ユーザが所定の状態にあると判別するように構成されている。このように構成すれば、撮像部によりユーザの所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、画像処理部により、ユーザが所定の状態にあると判別することができるので、撮像部により瞬間的に撮像された画像などに基づいて、ユーザが意図しない形で船体の推進状態が変化してしまうことを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、制御部は、推進部を調整して、船体の推進速度およびユーザに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船体の推進速度およびユーザに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させることができるので、船体に牽引されるユーザがウェイクボードやウェイクサーフィンなどを行っている場合に、船体の推進状態をユーザが望む状態に容易に調整することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、推進部は、船体の推進力を発生させる推進力発生部の駆動源であるエンジンおよびモータの少なくとも一方を含み、制御部は、ユーザの所定の状態に基づいて、エンジンおよびモータの少なくとも一方の駆動力の大きさを調整して、船体の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、エンジンおよびモータの少なくとも一方の駆動力の大きさを調整することにより、容易に船体の推進速度を変化させることができる。
【0014】
上記制御部が、推進部を調整して船体の推進速度およびユーザに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させる制御を行う構成において、好ましくは、推進部は、船体に搭載されたバラストタンクと、バラストタンク内の貯水量を変更するバラストポンプとを含み、制御部は、ユーザの所定の状態に基づいて、バラストポンプによりバラストタンク内の貯水量を調整して、ユーザに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザの所定の状態に基づいて、バラストポンプによりバラストタンク内の貯水量を調整することにより、容易にユーザに向かう波の形状を変化させることができる。
【0015】
上記制御部が、推進部を調整して船体の推進速度およびユーザに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させる制御を行う構成において、好ましくは、推進部は、開閉可能な導水口を有し、導水口を開くことにより船体の後方に向かう水流を発生させるスクープ装置を含み、制御部は、ユーザの所定の状態に基づいて、スクープ装置の導水口の開閉を切り換えて、ユーザに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、スクープ装置の導水口の開閉を切り換えることにより、容易にユーザに向かう波の形状を変化させることができる。
【0016】
上記制御部が、ジェスチャーに基づいて推進部を調整して船体の推進状態を変化させる制御を行う構成において、好ましくは、画像処理部は、ユーザの所定の操船指示として、撮像部により撮像されたユーザの上肢によるジェスチャーおよび下肢によるジェスチャーの少なくとも一方を判別するように構成され、制御部は、画像処理部により判別された上肢によるジェスチャーおよび下肢によるジェスチャーの少なくとも一方に基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、画像処理部により、比較的動かしやすい部位であるユーザの上肢または下肢によるジェスチャーを判別して、船体の推進状態を変化させることができるので、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を特に容易に変化させることができる。
【0017】
この場合、好ましくは、制御部は、画像処理部により上肢または上肢の手の所定の指が上方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、船体の推進速度を大きくする制御を行い、画像処理部により上肢または上肢の手の所定の指が下方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、船体の推進速度を小さくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上肢または上肢の手の所定の指を上下に向ける簡易なジェスチャーにより、船体の推進速度を変化させることができる。
【0018】
上記制御部が、上肢によるジェスチャーおよび下肢によるジェスチャーの少なくとも一方に基づいて推進部を調整して船体の推進状態を変化させる制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、画像処理部により上肢または上肢の手の所定の指が上方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、ユーザに向かう波を大きくする制御を行い、画像処理部により上肢または上肢の手の所定の指が下方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、ユーザに向かう波を小さくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上肢または上肢の手の所定の指を上下に向ける簡易なジェスチャーにより、ユーザに向かう波の大きさを変化させることができる。
【0019】
上記制御部が、上肢によるジェスチャーおよび下肢によるジェスチャーの少なくとも一方に基づいて推進部を調整して船体の推進状態を変化させる制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、画像処理部により上肢が左方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、ユーザに向かう船体の左舷側の波を発生させる制御を行い、画像処理部により上肢が右方に向けられるジェスチャーであると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、ユーザに向かう船体の右舷側の波を発生させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上肢を左右に向ける簡易なジェスチャーにより、ユーザに向かう船体の左右の波を発生させることができる。
【0020】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、制御部は、画像処理部により、ユーザの所定の状態が落水した状態であると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、船体を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザが落水した際に、操船者が停止操作を行わなくても、自動で船体を停止させることができる。
【0021】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、制御部は、船体が停止している場合に、画像処理部により、ユーザの所定の状態が、ユーザの下肢が水中に位置しており、船体の推進を開始させる状態であると判別されたことに基づいて、推進部を調整して、船体の推進速度を徐々に大きくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船体の推進を開始させる際に、操船者が始動操作を行わなくても、自動でかつスムーズにユーザをウェイクサーフィンや、ウェイクボードの板に乗る姿勢に移行させることができる。
【0022】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、画像処理部は、ユーザを個別に判別可能に構成されており、画像処理部により判別されるユーザのユーザ判別データと、制御部により各々のユーザに向けて推進部を調整したことにより取得された調整制御データとを関連付けて記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、船体の推進を開始させる場合において、撮像部により撮像されたユーザの画像データと、記憶部に記憶されたユーザ判別データとに基づいてユーザの個人認証を行い、個人認証の結果に基づいて、認証されたユーザのユーザ判別データに関連付けられた調整制御データを特定するとともに、特定された調整制御データに基づいて、船体の初期の推進状態を、認証されたユーザに向けた初期設定状態にする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、個人認証により、牽引されるユーザを判別することができるので、牽引されるユーザに適した所定の推進速度などの初期設定状態に自動で設定することができる。
【0023】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、制御部は、自動で操船する制御を行うことが可能に構成されているボートコントロールユニットであり、ボートコントロールユニットは、自動で操船する制御を行うことに加えて、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ボートコントロールユニットを、自動で操船する用途だけでなく、制御部により牽引されるユーザ自らが操船を行う用途にも用いることができる。このため、牽引されるユーザ自らが操船を行うための専用の制御装置をボートコントロールユニットとは別個に設ける場合と比較して、装置構成を簡素化することができる。
【0024】
上記第1の局面によるボートコントロールシステムにおいて、好ましくは、オンオフスイッチを含み、ロープを介して船体に接続され、ユーザに把持されるハンドルをさらに備え、制御部は、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態、および、オンオフスイッチのオンオフ状態との組み合わせに基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、画像処理部により、オンオフスイッチを押した状態のユーザの所定の状態と、オンオフスイッチを押さない状態のユーザの所定の状態とを区別することができるので、ユーザの所定の状態のパターン数の幅を広げることができる。
【0025】
この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に搭載されるボートコントロールシステムとを備え、船体には、船体の推進状態を変化させる推進部が設けられ、ボートコントロールシステムは、船体に牽引されるユーザを撮像する撮像部と、撮像部に撮像された画像からユーザの所定の状態を判別する画像処理部と、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行う制御部と、を含む。
【0026】
この発明の第2の局面による船舶は、上記のように、撮像部に撮像された画像からユーザの所定の状態を判別する画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行う制御部を設ける。これによって、画像処理部により判別されたユーザの所定の状態に基づいて、船体の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体の推進状態を変化させることができるので、従来のように船体に牽引されるユーザが手首につけられた制御装置のボタンなどを操作する必要がなくなる。したがって、従来のように船体に向いていた視線が制御装置の種々のボタンに向いてしまうことがなくなり、船体に牽引されるユーザは船体を視認し続けることができるようになる。その結果、船体に牽引されるユーザが船体に牽引されることに集中することができるようになるため、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることが可能な船舶を提供することができる。
【0027】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、画像処理部により判別されたユーザの所定の操船指示を示す所定の状態に基づいて、推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、画像処理部によりユーザの所定の操船指示を示す所定の状態を判別して、船体の推進状態を変化させることができるので、ユーザが能動的(意識的)に船体の推進状態を変化させることができる。したがって、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態をより容易に変化させることができる。
【0028】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、推進部が水流を噴出するジェット推進部を含み、ジェット推進艇として構成されている。このように構成すれば、ジェット推進部を含むジェット推進艇において、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、船体に牽引されるユーザ自らが船体の推進状態を容易に変化させることが可能なボートコントロールシステムおよび船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態によるジェット推進艇を示す側面図である。
【
図2】実施形態によるジェット推進艇を示す平面図である。
【
図3】実施形態によるジェット推進艇のスクープ装置により船体の右方に波を発生させた状態を示す平面図である。
【
図4】実施形態によるジェット推進艇のスクープ装置により船体の左方に波を発生させた状態を示す平面図である。
【
図5】実施形態によるジェット推進艇のBCUによる推進速度を変化させる制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図6】BCUによる推進速度を変化させる制御処理を実行する際のユーザのジェスチャーを示した図である。
【
図7】実施形態によるジェット推進艇のBCUによるユーザに向かう波の大小を変化させる制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図8】BCUによるユーザに向かう波の大小を変化させる制御処理を実行する際のユーザのジェスチャーを示した図である。
【
図9】実施形態によるジェット推進艇のBCUによるユーザに向かう波の形状を変化させる制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図10】BCUによるユーザに向かう波の形状を変化させる制御処理を実行する際のユーザのジェスチャーを示した図である。
【
図11】変形例によるオンオフスイッチを有するハンドルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
[実施形態]
(ジェット推進艇の全体構成)
図1~
図10を参照して、第1実施形態によるボートコントロールシステム102を備えるジェット推進艇100の構成について説明する。
【0033】
図中のFWDは、ジェット推進艇100の前進方向(船体101を基準とした前方)を示しており、BWDは、ジェット推進艇100の後進方向(船体101を基準とした後方)を示している。
【0034】
図中のLは、ジェット推進艇100の左舷方向(船体101を基準とした左舷方向)を示しており、Rは、ジェット推進艇100の右舷方向(船体101を基準とした左舷方向)を示している。
【0035】
一例ではあるが、
図1および
図2に示すボートコントロールシステム102を備えるジェット推進艇100は、ジェット推進艇100の牽引具4によりユーザUを牽引して行うウェイクボードや、ウェイクサーフィンなどの用途に使用される。
【0036】
ボートコントロールシステム102は、ジェット推進艇100に牽引されるユーザUを撮像部5により撮像するように構成されている。そして、ボートコントロールシステム102は、画像処理部6により、撮像部5に撮像された画像から、ジェスチャー(
図6、
図8、
図10に示すG10、G11、G20、G21、G30、G31を参照)などのユーザUの所定の状態を判別するように構成されている。その結果、ボートコントロールシステム102は、ボートコントロールユニット8により、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、船体101の推進状態を変化させるジェット推進部1を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。
【0037】
すなわち、ジェット推進艇100に牽引されるユーザUは、ボートコントロールシステム102により、ジェット推進艇100の推進速度を変えるなどのジェット推進艇100の駆動操作を、ジェット推進艇100に牽引されながら自ら行うことが可能となる。
【0038】
ジェット推進艇100は、船体101と、船体101に搭載されるボートコントロールシステム102とを備えている。
【0039】
(船体の構成)
船体101は、ジェット推進部1と、バラストタンク20およびバラストポンプ21と、スクープ装置3と、牽引具4とを備えている。なお、ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3は、特許請求の範囲の「推進部」の一例である。
【0040】
(船体の「ジェット推進部」の構成)
ジェット推進部1は、エンジン10と、エンジン10により駆動される推進力発生部11とを備えている。
【0041】
エンジン10は、推進力発生部11の駆動源である。エンジン10の駆動力の大きさ(回転数)が調整されることにより、ジェット推進艇100の推進速度が調整される。
【0042】
推進力発生部11は、エンジン10により駆動されることによって、船体101に設けられた吸水口(図示せず)から水を吸い込むとともに、吸い込んだ水をノズル11cから噴射するように構成されている。その結果、ジェット推進艇100は、推進する。推進力発生部11は、ドライブシャフト11aと、インペラ11bと、ノズル11cと、デフレクタ11dと、バケット11eとを有している。
【0043】
ドライブシャフト11aは、エンジン10のクランクシャフトに接続されており、エンジン10から後方に延びている。ドライブシャフト11aは、後端近傍にインペラ11bが固定されている。
【0044】
インペラ11bは、船体101内に設けられ、下流側のノズル11cに繋がる水の流路上に配置されている。インペラ11bは、ドライブシャフト11aとともに回転することにより、水の流路内にノズル11cに向けた流れを発生させるように構成されている。エンジン10の回転数が大きい程、ノズル11cに向けた流れは大きくなり、エンジン10の回転数が小さい程、ノズル11cに向けた流れは小さくなる。
【0045】
ノズル11cは、インペラ11bが配置される水の流路の最下流位置に配置されている。ノズル11cは、水の排出口(噴射口)として機能を有している。すなわち、ノズル11cは、水を噴射して船体101に推力を付与するように構成されている。ノズル11cには、デフレクタ11dおよびバケット11eが設置されている。
【0046】
デフレクタ11dは、上下方向に延びる軸線回りに左右方向に回動可能なように構成されている。すなわち、デフレクタ11dは、ノズル11cから噴射される水の向きを左右方向に変更可能なように構成されている。デフレクタ11dは、船体101の操作部の操作に応じて、左右方向に回動するように構成されている。
【0047】
バケット11eは、左右方向に延びる軸線回りに上下方向に回動可能なように構成されている。すなわち、バケット11eは、ノズル11cから噴射される水の向きを前後方向に変更可能なように構成されている。バケット11eは、船体101の操作部の操作に応じて、上下方向に回動するように構成されている。
【0048】
(船体の「バラストタンク」および「バラストポンプ」の構成)
バラストタンク20は、水を貯めるタンクであり、船体101に複数(3つ)設けられている。バラストタンク20は、船底に配置されている。
【0049】
バラストタンク20は、中央のバラストタンク20aと、左方のバラストタンク20bと、右方のバラストタンク20cとを含んでいる。
【0050】
中央のバラストタンク20aは、船体101の左右方向の中心線上で、かつ、船体101の前方側に配置されている。左方のバラストタンク20bは、船体101の左右方向の中心線よりも左方で、かつ、中央のバラストタンク20aよりも後方に配置されている。右方のバラストタンク20cは、船体101の左右方向の中心線よりも右方で、かつ、中央のバラストタンク20aよりも後方に配置されている。
【0051】
バラストポンプ21は、各バラストタンク20に対して1つずつ設けられている。バラストポンプ21は、ジェット推進艇100の外部から水を汲み上げて、または、外部に水を排出して、バラストタンク20の貯水量を変更するように構成されている。
【0052】
ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、バラストポンプ21によりすべてのバラストタンク20a、20b、20cの貯水量を大きくした場合、推進時において、船体101全体の水面に対する位置が低くなるように構成されている。その結果、ジェット推進艇100は、推進時において、船体101からユーザUに向かう波を大きくするように構成されている。
【0053】
また、ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、バラストポンプ21によりすべてのバラストタンク20a、20b、20cの貯水量を小さくした場合、推進時において、船体101全体の水面に対する位置が高くなるように構成されている。その結果、ジェット推進艇100は、推進時において、船体101からユーザUに向かう波を小さくするように構成されている。
【0054】
また、ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、バラストポンプ21により左方のバラストタンク20bの貯水量を右方のバラストタンク20cの貯水量よりも大きくなるように調整した場合、船体101の左方が低くなるように船体101が傾くように構成されている。その結果、ジェット推進艇100は、推進時において、船体101からユーザUに向かう左方側の波を大きくするように構成されている。
【0055】
また、ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、バラストポンプ21により右方のバラストタンク20cの貯水量を左方のバラストタンク20bの貯水量よりも大きくなるように調整した場合、船体101の右方が低くなるように船体101が傾くように構成されている。その結果、ジェット推進艇100は、推進時において、船体101からユーザUに向かう右方側の波を大きくするように構成されている。
【0056】
(船体の「スクープ装置」の構成)
スクープ装置3は、ジェット推進艇100の外部の水を通過させることが可能な筒形状の部材であり、船体101に複数(2つ)設けられている。スクープ装置3は、開閉可能な導水口30を有している。すなわち、導水口30は、外部から水を取り込む開閉可能な蓋部材(図示せず)を含んでいる。スクープ装置3は、導水口30を開くことにより船体101の後方に向かう水流(波)を発生させるように構成されている。スクープ装置3の導水口30の開閉を切り換えることにより、船体101からユーザUに向かう波の形状が変化する。
【0057】
スクープ装置3は、左方のスクープ装置3aと、右方のスクープ装置3bとを含んでいる。
【0058】
左方のスクープ装置3aは、船体101の後端近傍の左方端部に配置されている。右方のスクープ装置3bは、船体101の後端近傍の右方端部に配置されている。
【0059】
図3に示すように、ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、推進時において、左方のスクープ装置3aの導水口30を開くとともに右方のスクープ装置3bの導水口30を閉じることにより、船体101からユーザUに向かう右方側の波を発生させ、または、右方側の波を大きくするように構成されている。
【0060】
また、
図4に示すように、ジェット推進艇100(ボートコントロールシステム102)は、推進時において、左方のスクープ装置3aの導水口30を閉じるとともに右方のスクープ装置3bの導水口30を開くことにより、船体101からユーザUに向かう左方側の波を発生させ、または、左方側の波を大きくするように構成されている。
【0061】
(船体の「牽引具」の構成)
牽引具4は、ロープ40と、ハンドル41とを含んでいる。
【0062】
ロープ40の一端は、船体101の船尾に接続されている。ロープ40の他端は、牽引時にユーザUが把持するハンドル41に接続されている。
【0063】
(ボートコントロールシステムの構成)
図1および
図2に示すボートコントロールシステム102は、ジェット推進艇100に牽引されるユーザUの所定の状態に基づいて、船体101の推進状態を変化させるように構成されている。要するに、ボートコントロールシステム102は、主として、ジェット推進艇100に牽引されるユーザUが自らジェット推進艇100の駆動を制御するためのシステムである。
【0064】
ボートコントロールシステム102は、撮像部5と、画像処理部6と、記憶部7と、ボートコントロールユニット(以下、BCUと記載する)8とを備えている。なお、BCU8は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0065】
(ボートコントロールシステムの「撮像部」の構成)
撮像部5は、船体101に取り付けられている。一例ではあるが、撮像部5は、船体101の船尾付近に取り付けられている。撮像部5は、ジェット推進艇100に牽引されるユーザUを撮像するために、ジェット推進艇100の後方領域を少なくとも撮像するように画角が調整されている。「ジェット推進艇100の後方領域」とは、ウェイクボードなどを行うユーザUがジェット推進艇100に牽引された状態で左右方向に移動したとしても、撮像部5の画角にユーザUが確実に収まる範囲である。すなわち、撮像部5は、落水時を除いて、牽引されるユーザUを継続して撮像可能に構成されている。
【0066】
(ボートコントロールシステムの「画像処理部」の構成)
図1および
図2に示す画像処理部6は、有線通信または無線通信により、撮像部5から、牽引されるユーザUを撮像した画像データD1を取得可能に構成されている。画像処理部6は、撮像部5により撮像された画像(画像データD1)から、ユーザUの所定の状態を判別するように構成されている。
【0067】
詳細には、画像処理部6は、ユーザUの所定の状態を判別するために、種々のユーザUの姿勢パターンが予め記憶(登録)された記憶部(図示せず)を含んでいる。「ユーザUの所定の状態」とは、たとえば、ユーザUの所定の操船指示を示すジェスチャー、ユーザUがウェイクボードから落水した状態、および、船体101の推進を開始する際のユーザUの下肢が水中に位置する状態などである。
【0068】
一例ではあるが、画像処理部6は、ユーザUの所定の操船指示として、撮像部5により撮像されたユーザUの上肢U1によるジェスチャー(
図6、
図8、
図10に示すG10、G11、G20、G21、G30、G31を参照)を判別するように構成されている。
【0069】
これらの「ユーザUの所定の状態」は、画像処理部6の記憶部にユーザUの姿勢パターンとして、予め記憶(登録)されている。
【0070】
画像処理部6は、画像データD1におけるユーザUの状態と、予め記憶部に記憶されたユーザUの姿勢パターンとが一致するか否かの画像認識処理を行うように構成されている。
【0071】
そして、画像処理部6は、画像データD1におけるユーザUの状態と、予め記憶部に記憶されたユーザUの姿勢パターンとが一致する場合には、ユーザUが所定の状態にあると判別するように構成されている。
【0072】
この際、画像処理部6は、撮像部5によりユーザUの所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、ユーザUが所定の状態にあると判別するように構成されている。一例ではあるが、所定時間とは、1秒や、2秒、3秒程度の数秒の僅かな時間である。
【0073】
一方、画像処理部6は、画像データD1におけるユーザUの状態と、予め記憶部に記憶されたユーザUの姿勢パターンとが一致しない場合には、ユーザUが所定の状態にはないと判別するように構成されている。すなわち、画像処理部6は、ユーザUの状態とユーザUの姿勢パターンとが一致しない場合には、ユーザUが所定の状態にあると判別することがないように構成されている。
【0074】
この他に、画像処理部6は、ユーザUを個別に判別可能に構成されている。具体的には、画像処理部6は、撮像部5により撮像した顔などのユーザUを判別するためのユーザ判別データD2を記憶部7に記憶するように構成されている。なお、画像処理部6は、撮像部5により撮像したユーザUのウェットスーツの色や模様などにより、ユーザを判別するように構成されていてもよい。
【0075】
そして、画像処理部6は、撮像部5によりジェット推進艇100に牽引されるユーザUの撮像を開始した際に、画像データD1を介して取得したユーザUのデータが、記憶部7に記憶されているユーザ判別データD2と一致するか否かを判別するように構成されている。要するに、画像処理部6は、過去に、ジェット推進艇100により牽引したことのあるユーザUであるか否かを判別することが可能に構成されている。
【0076】
その結果、画像処理部6がジェット推進艇100により牽引したことのあるユーザUであると判別した場合には、ボートコントロールシステム102は、記憶部7に記憶されている調整制御データD2a(ユーザUのユーザ判別データD2に関連付けられた推進状態を調整するためのデータ)に基づいて、船体101の推進状態を、牽引されるユーザUのレベルに適した自動調整の状態に変化させるように構成されている。なお、自動調整の状態は、牽引されるユーザUのジェスチャーなどの所定の状態に基づいて事後的に変更することが可能である。
【0077】
(ボートコントロールシステムの「記憶部」の構成)
記憶部7には、船体101の推進状態を、牽引されるユーザUのレベルに適した自動調整の状態に変化させるために用いられるデータが記憶されている。詳細には、記憶部7は、画像処理部6により判別されるユーザUのユーザ判別データD2と、BCU8により各々のユーザUに向けて「ジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3」などを調整したことにより取得された調整制御データD2aとを関連付けて記憶するように構成されている。
【0078】
(ボートコントロールシステムの「BCU」の構成)
ボートコントロールユニット(BCU)8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む制御装置である。
【0079】
BCU8は、ジェット推進艇100を自動で操船する制御を行うことが可能に構成されている。一例ではあるが、「自動で操船する制御」とは、ジェット推進艇100の推進方向を保持するヘディングホールド制御、ジェット推進艇100の推進コースを保持するコースホールド制御、および、ジェット推進艇100の位置を保持する定点保持制御などである。すなわち、BCU8は、ジェット推進艇100を自動で操船する制御モードを可能とする制御装置である。
【0080】
BCU8は、上記のジェット推進艇100を自動で操船する制御を行うことに加えて、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、「ジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3」を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。
【0081】
BCU8は、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の操船指示を示す所定の状態に基づいて、「ジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3」を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。
【0082】
具体的には、BCU8は、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の操船指示を示すジェスチャーに基づいて、「ジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3」を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。
【0083】
結果として、BCU8は、「ジェット推進部1、バラストタンク20およびバラストポンプ21、および、スクープ装置3」を調整して、船体101の推進速度およびユーザUに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている。
【0084】
ここで、船体101の推進状態を変化させるために、BCU8は、最終的に以下のような各種の制御を行う。
【0085】
BCU8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、ジェット推進部1のエンジン10の駆動力(回転数)の大きさを調整して、船体101の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている。また、BCU8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、ジェット推進部1の向きを調整して、船体101の推進方向を変化させる制御を行うように構成されている。
【0086】
BCU8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、バラストポンプ21によりバラストタンク20(20a、20b、20c)内の貯水量を調整して、ユーザUに向かう波の形状(左右の位置、大きさ)を変化させる制御を行うように構成されている。
【0087】
BCU8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、スクープ装置3(3a、3b)の導水口30の開閉を切り換えて、ユーザUに向かう波の形状(左右の位置、大きさ)を変化させる制御を行うように構成されている。
【0088】
また、BCU8は、画像処理部6により、ユーザUの所定の状態が落水した状態であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101を停止させる制御を行うように構成されている。一例ではあるが、「落水した状態」とは、たとえば、船体101が停止していない状態で、画像処理部6により、ユーザUの下肢が撮像できなくなった状態である。
【0089】
BCU8は、船体101が停止している場合に、画像処理部6により、ユーザUの所定の状態が、ユーザUの下肢が水中に位置しており、船体101の推進を開始させる状態であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101の推進速度を徐々に大きくする制御を行うように構成されている。
【0090】
また、BCU8は、船体101の推進を開始させる場合において、撮像部5により撮像されたユーザUの画像データD1と、記憶部7に記憶されたユーザ判別データD2とに基づいてユーザの個人認証を行い、個人認証の結果に基づいて、認証されたユーザUのユーザ判別データD2に関連付けられた調整制御データD2aを特定するように構成されている。
【0091】
そして、BCU8は、特定された調整制御データD2aに基づいて、船体101の初期の推進状態を、認証されたユーザUに向けた初期設定状態にする制御を行うように構成されている。
【0092】
具体例として、所定のユーザUでは時速50kmの初期設定状態に設定され、所定のユーザUとは異なる所定のユーザUでは時速70kmの初期設定状態に設定される。すなわち、BCU8は、各ユーザUのレベル(ウェイクサーフィンなどの上手さ)に応じて、初期の船体101の推進状態を設定するように構成されている。
【0093】
(BCUによる推進速度を変化させる制御処理)
図5および
図6を参照して、BCU8により実行される推進速度を変化させる制御処理のフローについて説明する。
【0094】
ステップS1において、船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図6に示すユーザUのジェスチャーG10が行われたか否かが判断される。船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS2に進む。船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS3に進む。
【0095】
次に、ステップS2において、エンジン10の回転数が大きくなり、船体101の推進速度が大きくなる。そして、船体101の推進速度を変化させる制御処理が完了する。
【0096】
また、ステップS3において、船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図6に示すユーザUのジェスチャーG11が行われたか否かが判断される。船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS4に進む。船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS1に戻る。
【0097】
次に、ステップS4において、エンジン10の回転数が小さくなり、船体101の推進速度が小さくなる。そして、船体101の推進速度を変化させる制御処理が完了する。
【0098】
(BCUによるユーザに向かう波の大小を変化させる制御処理)
図7および
図8を参照して、BCU8により実行されるユーザUに向かう波の大小を変化させる制御処理のフローについて説明する。
【0099】
ステップS11において、船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1の所定の指(たとえば親指)が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図8に示すユーザUのジェスチャーG20が行われたか否かが判断される。上肢U1の所定の指が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS12に進む。上肢U1の所定の指が上方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS13に進む。
【0100】
次に、ステップS12において、全体(3つ)のバラストタンク20(20a、20b、20c)の貯水量が大きくなり、ユーザUに向かう波が大きくなる。そして、ユーザUに向かう波の大小を変化させる制御処理が完了する。
【0101】
また、ステップS13において、船体101に牽引されるユーザUの右方または左方の上肢U1の所定の指(たとえば親指)が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図8に示すユーザUのジェスチャーG21が行われたか否かが判断される。上肢U1の所定の指が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS14に進む。上肢U1の所定の指が下方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS1に戻る。
【0102】
次に、ステップS14において、全体(3つ)のバラストタンク20(20a、20b、20c)の貯水量が小さくなり、ユーザUに向かう波が小さくなる。そして、ユーザUに向かう波の大小を変化させる制御処理が完了する。なお、ユーザUに向かう左右の波の発生させる制御処理を、スクープ装置3(3a、3b)の導水口30の開閉を調整することにより行ってもよい。
【0103】
(BCUによるユーザに向かう波の形状を変化させる制御処理)
図9および
図10を参照して、BCU8により実行されるユーザUに向かう波の形状を変化させる制御処理のフローについて説明する。
【0104】
ステップS21において、船体101に牽引されるユーザUの左の上肢U1が左方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図10に示すユーザUのジェスチャーG30が行われたか否かが判断される。左の上肢U1が左方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS22に進む。左の上肢U1が左方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS23に進む。
【0105】
次に、ステップS22において、右方のスクープ装置3bの導水口30が開かれるとともに、左方のスクープ装置3aの導水口30が閉じられて、ユーザUに向かう左舷側(左方側)の波を発生させる。そして、ユーザUに向かう波の形状を変化させる制御処理が完了する。
【0106】
また、ステップS23において、船体101に牽引されるユーザUの右の上肢U1が右方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したか否かが判断される。すなわち、
図10に示すユーザUのジェスチャーG31が行われたか否かが判断される。右の上肢U1が右方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断された場合、ステップS24に進む。右の上肢U1が右方に向けられたという情報を画像処理部6から取得したと判断されない場合、ステップS21に戻る。
【0107】
次に、ステップS24において、左方のスクープ装置3aの導水口30が開かれるとともに、右方のスクープ装置3bの導水口30が閉じられて、ユーザUに向かう右舷側(右方側)の波を発生させる。そして、ユーザUに向かう波の形状を変化させる制御処理が完了する。なお、ユーザUに向かう波の形状を変化させる制御処理を、バラストタンク20の貯水量を調整することにより行ってもよい。
【0108】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0109】
本実施形態では、上記のように、撮像部5に撮像された画像からユーザUの所定の状態を判別する画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、船体101の推進状態を変化させる推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うボートコントロールユニット8を設ける。これによって、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、船体101の推進状態を変化させる推進部を調整して、船体101の推進状態を変化させることができるので、従来のように船体101に牽引されるユーザUが手首につけられた制御装置のボタンなどを操作する必要がなくなる。したがって、従来のように船体101に向いていた視線が制御装置の種々のボタンに向いてしまうことがなくなり、船体101に牽引されるユーザUは船体101を視認し続けることができるようになる。その結果、船体101に牽引されるユーザUが船体101に牽引されることに集中することができるようになるため、船体101に牽引されるユーザU自らが船体101の推進状態を容易に変化させることができる。
【0110】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の操船指示を示す所定の状態に基づいて、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、画像処理部6によりユーザUの所定の操船指示を示す所定の状態を判別して、船体101の推進状態を変化させることができるので、ユーザUが能動的(意識的)に船体101の推進状態を変化させることができる。したがって、船体101に牽引されるユーザU自らが船体101の推進状態をよりより容易に変化させることができる。
【0111】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の操船指示を示すジェスチャーG10、G11、G20、G21、G30、G31に基づいて、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、ユーザUはジェスチャーG10、G11、G20、G21、G30、G31により船体101の推進状態を変化させることができるので、ユーザUがボタンなどを操作することなく、船体101に牽引されるユーザU自らが船体101の推進状態をより一層容易に変化させることができる。
【0112】
本実施形態では、上記のように、画像処理部6は、撮像部5によりユーザUの所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、ユーザUが所定の状態にあると判別するように構成されている。これによって、撮像部5によりユーザUの所定の状態が所定時間以上継続して撮像された場合に、画像処理部6により、ユーザUが所定の状態にあると判別することができるので、撮像部5により瞬間的に撮像された画像などに基づいて、ユーザUが意図しない形で船体101の推進状態が変化してしまうことを抑制することができる。
【0113】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進速度およびユーザUに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、船体101の推進速度およびユーザUに向かう波の形状の少なくとも一方を変化させることができるので、船体101に牽引されるユーザUがウェイクボードやウェイクサーフィンなどを行っている場合に、船体101の推進状態をユーザUが望む状態に容易に調整することができる。
【0114】
本実施形態では、上記のように、推進部は、船体101の推進力を発生させる推進力発生部11の駆動源であるエンジン10を有するジェット推進部1を含み、ボートコントロールユニット8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、エンジン10の駆動力の大きさを調整して、船体101の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、エンジン10の駆動力の大きさを調整することにより、容易に船体101の推進速度を変化させることができる。
【0115】
本実施形態では、上記のように、推進部は、船体101に搭載されたバラストタンク20(20a、20b、20c)と、バラストタンク20内の貯水量を変更するバラストポンプ21とを含み、ボートコントロールユニット8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、バラストポンプ21によりバラストタンク20内の貯水量を調整して、ユーザUに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、ユーザUの所定の状態に基づいて、バラストポンプ21によりバラストタンク20内の貯水量を調整することにより、容易にユーザUに向かう波の形状を変化させることができる。
【0116】
本実施形態では、上記のように、推進部は、開閉可能な導水口30を有し、導水口30を開くことにより船体101の後方に向かう水流を発生させるスクープ装置3(3a、3b)を含み、ボートコントロールユニット8は、ユーザUの所定の状態に基づいて、スクープ装置3の導水口30の開閉を切り換えて、ユーザUに向かう波の形状を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、スクープ装置3の導水口30の開閉を切り換えることにより、容易にユーザUに向かう波の形状を変化させることができる。
【0117】
本実施形態では、上記のように、画像処理部6は、ユーザUの所定の操船指示として、撮像部5により撮像されたユーザUの上肢U1によるジェスチャーG10、G11、G20、G21、G30、G31を判別するように構成され、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により判別された上肢U1によるジェスチャーG10、G11、G20、G21、G30、G31に基づいて、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、画像処理部6により、比較的動かしやすい部位であるユーザUの上肢U1によるジェスチャーG10、G11、G20、G21、G30、G31を判別して、船体101の推進状態を変化させることができるので、船体101に牽引されるユーザU自らが船体101の推進状態を特に容易に変化させることができる。
【0118】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により上肢U1が上方に向けられるジェスチャーG10(
図6参照)であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101の推進速度を大きくする制御を行い、画像処理部6により上肢U1が下方に向けられるジェスチャーG11(
図6参照)であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101の推進速度を小さくする制御を行うように構成されている。これによって、上肢U1を上下に向ける簡易なジェスチャーG10、G11により、船体101の推進速度を変化させることができる。
【0119】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により上肢U1の手の所定の指が上方に向けられるジェスチャーG20(
図8参照)であると判別されたことに基づいて、バラストタンク20およびバラストポンプ21(スクープ装置3)を調整して、ユーザUに向かう波を大きくする制御を行い、画像処理部6により上肢U1の手の所定の指が下方に向けられるジェスチャーG21(
図8参照)であると判別されたことに基づいて、バラストタンク20およびバラストポンプ21(スクープ装置3)を調整して、ユーザUに向かう波を小さくする制御を行うように構成されている。これによって、上肢U1の手の所定の指を上下に向ける簡易なジェスチャーG20、G21により、ユーザUに向かう波の大きさを変化させることができる。
【0120】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により上肢U1が左方に向けられるジェスチャーG30(
図10参照)であると判別されたことに基づいて、スクープ装置3b(バラストタンク20およびバラストポンプ21)を調整して、ユーザUに向かう船体101の左舷側の波を発生させる制御を行い、画像処理部6により上肢U1が右方に向けられるジェスチャーG31(
図10参照)であると判別されたことに基づいて、スクープ装置3a(バラストタンク20およびバラストポンプ21)を調整して、ユーザUに向かう船体101の右舷側の波を発生させる制御を行うように構成されている。これによって、上肢U1を左右に向ける簡易なジェスチャーG30、G31により、ユーザUに向かう船体101の左右の波を発生させることができる。
【0121】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により、ユーザUの所定の状態が落水した状態であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101を停止させる制御を行うように構成されている。これによって、ユーザUが落水した際に、操船者が停止操作を行わなくても、自動で船体101を停止させることができる。
【0122】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット8は、船体101が停止している場合に、画像処理部6により、ユーザUの所定の状態が、ユーザUの下肢が水中に位置しており、船体101の推進を開始させる状態であると判別されたことに基づいて、ジェット推進部1を調整して、船体101の推進速度を徐々に大きくする制御を行うように構成されている。これによって、船体101の推進を開始させる際に、操船者が始動操作を行わなくても、自動でかつスムーズにユーザUをウェイクサーフィンや、ウェイクボードの板に乗る姿勢に移行させることができる。
【0123】
本実施形態では、上記のように、画像処理部6は、ユーザUを個別に判別可能に構成されており、画像処理部6により判別されるユーザUのユーザ判別データD2と、ボートコントロールユニット8により各々のユーザUに向けて推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整したことにより取得された調整制御データD2aとを関連付けて記憶する記憶部7をさらに備え、ボートコントロールユニット8は、船体101の推進を開始させる場合において、撮像部5により撮像されたユーザUの画像データと、記憶部7に記憶されたユーザ判別データD2とに基づいてユーザUの個人認証を行い、個人認証の結果に基づいて、認証されたユーザUのユーザ判別データD2に関連付けられた調整制御データD2aを特定するとともに、特定された調整制御データD2aに基づいて、船体101の初期の推進状態を、認証されたユーザUに向けた初期設定状態にする制御を行うように構成されている。これによって、個人認証により、牽引されるユーザUを判別することができるので、牽引されるユーザUに適した所定の推進速度などの初期設定状態に自動で設定することができる。
【0124】
本実施形態では、上記のように、ボートコントロールユニット(BCU)8は、自動で操船する制御を行うことが可能に構成され、自動で操船する制御を行うことに加えて、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態に基づいて、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、ボートコントロールユニット8を、自動で操船する用途だけでなく、ボートコントロールユニット8により牽引されるユーザU自らが操船を行う用途にも用いることができる。このため、牽引されるユーザU自らが操船を行うための専用の制御装置をボートコントロールユニットとは別個に設ける場合と比較して、装置構成を簡素化することができる。
【0125】
本実施形態では、上記のように、オンオフスイッチBを含み、ロープを介して船体101に接続され、ユーザUに把持されるハンドル41aをさらに備え、ボートコントロールユニット8は、画像処理部6により判別されたユーザUの所定の状態、および、オンオフスイッチBのオンオフ状態との組み合わせに基づいて、推進部(ジェット推進部1、バラストタンク20、バラストポンプ21およびスクープ装置3)を調整して、船体101の推進状態を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、画像処理部6により、オンオフスイッチBを押した状態のユーザUの所定の状態と、オンオフスイッチBを押さない状態のユーザUの所定の状態とを区別することができるので、ユーザUの所定の状態のパターン数の幅を広げることができる。
【0126】
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0127】
たとえば、上記実施形態では、本発明の制御部をボートコントロールユニットとして構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部をコースホールド制御などの自動で操船する制御を行うこと機能を有さない制御装置として構成してもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、本発明の船舶を、ジェット推進部を備えるジェット推進艇として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船舶を、船外機を備える船外機艇として構成してもよい。また、本発明では、船舶を、船内機を備える船内機艇として構成してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、ユーザの所定の状態のみに基づいて、船体の推進状態を変化させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図11に示すように、ユーザに把持されるハンドル41aにオンオフスイッチBを設けて、制御部は画像処理部により判別されたユーザの所定の状態、および、オンオフスイッチのオンオフ状態との組み合わせに基づいて、本発明の推進部を調整して、船体の推進状態を変化させる制御を行ってもよい。一例ではあるが、オンオフスイッチBを押して上肢U1を上方に上げるジェスチャーにより推進速度を大きくする制御を行い、オンオフスイッチBを押さずに上肢を上方に上げるジェスチャーにより波を大きくする制御を行ってもよい。また、オンオフスイッチBを押して上肢を下方に下げるジェスチャーにより推進速度を小さくする制御を行い、オンオフスイッチBを押さずに上肢を下方に下げるジェスチャーにより波を小さくする制御を行ってもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、上肢によるジェスチャーに基づいて船体の推進状態を変化させる制御を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、下肢や、頭部、身体全体などによるジェスチャーに基づいて船体の推進状態を変化させる制御を行ってもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、推進部が、駆動源としてエンジンを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、推進部が、駆動源としてモータを含んでいてもよい。なお、推進部が、駆動源としてエンジンおよびモータの両方を含んでいてもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、制御部と画像処理部とを別体で構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部と画像処理部とを一体で構成してもよい。
【0133】
また、上記実施形態で示した推進部の推進状態を変化させる各種のユーザの所定の状態は一例にすぎず、本発明の推進部の推進状態を変化させる各種のユーザの所定の状態は、上記実施形態に示したものに限られない。
【0134】
また、上記実施形態では、船体がスクープ装置を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船体がスクープ装置を備えていなくてもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、船体がバラストタンクおよびバラストポンプを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船体がバラストタンクおよびバラストポンプを備えていなくてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 ジェット推進部(推進部)
3、3a、3b スクープ装置(推進部)
5 撮像部
6 画像処理部
7 記憶部
8 ボートコントロールユニット(制御部)
10 エンジン
11 推進力発生部
20、20a、20b、20c バラストタンク(推進部)
21 バラストポンプ(推進部)
30 導水口
41a ハンドル
100 ジェット推進艇(船舶)
101 船体
102 ボートコントロールシステム
B オンオフスイッチ
D2 ユーザ判別データ
D2a 調整制御データ
G10、G11、G20、G21、G30、G31 ジェスチャー
U ユーザ
U1 上肢