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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177714
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20221124BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084147
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岡山 倫久
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197EB03
2H197EB08
2H197EB23
2H197HA03
(57)【要約】
【課題】位置決め機能の低下を抑制できる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、オフ基板20にアライメントマーク50を形成する工程と、アライメントマークの形成後、オフ基板20の主面21上にエピタキシャル膜を形成する工程と、エピタキシャル膜からオフ基板20にわたって設けられる素子領域30に半導体素子を形成する工程を備える。イオン注入により、オフ基板20の非素子領域32の一部の色調を周辺部分51と異ならせて、アライメントマーク50を形成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面(21)が結晶の基底面に対してオフ角を有する基板(20)に、アライメントマーク(50)を形成する工程と、
前記アライメントマークの形成後、前記基板の前記主面上にエピタキシャル成長法によってエピタキシャル膜(60)を形成する工程と、
前記エピタキシャル膜から前記基板にかけて設けられる素子領域(30)に半導体素子を形成する工程と、を備え、
前記アライメントマークを形成する工程において、イオン注入により、前記基板の非素子領域(32)の一部の色調を前記非素子領域の他の部分と異ならせて、前記アライメントマークを形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記アライメントマークは、前記非素子領域の他の部分に対して色が濃い、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、SiC基板である、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記アライメントマークを形成する工程において、アルミニウムをイオン注入する、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記アライメントマークを形成する工程において、窒素をイオン注入する、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アライメントマークを形成する工程において、前記非素子領域の前記主面から所定範囲内に、前記アライメントマークを形成する、請求項1~5いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板にアライメントマークを形成し、次いでエピタキシャル膜を形成する半導体装置の製造方法を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-168682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、オフ角を有する基板に、トレンチ型のアライメントマークを形成する。このため、トレンチの側面の結晶面に応じたエピタキシャル膜の成膜速度の相違によりアライメントマークの形状が変化し、位置決め機能が低下してしまう。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、半導体装置の製造方法にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、位置決め機能の低下を抑制できる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された半導体装置の製造方法は、
主面(21)が結晶の基底面に対してオフ角を有する基板(20)に、アライメントマーク(50)を形成する工程と、
アライメントマークの形成後、基板の主面上にエピタキシャル成長法によってエピタキシャル膜(60)を形成する工程と、
エピタキシャル膜から基板にかけて設けられる素子領域(30)に半導体素子を形成する工程と、を備え、
アライメントマークを形成する工程において、イオン注入により、基板の非素子領域(32)の一部の色調を非素子領域の他の部分と異ならせて、アライメントマークを形成する、半導体装置の製造方法。
【0007】
開示された半導体装置の製造方法によれば、イオン注入により基板の色調が変化した部分をアライメントマークとする。オフ角を有する基板の内部に色調変化によるアライメントマークを形成するため、エピタキシャル膜の形成時に成膜速度の相違によりアライメントマークが変形するのを抑制することができる。この結果、位置決め機能の低下を抑制することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半導体ウェハを示す平面図である。
図2】オフ基板を示す断面図である。
図3】半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4】半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6】半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7】参考例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、半導体ウェハおよびオフ基板について説明する。
【0012】
<半導体ウェハおよびオフ基板>
図1および図2に示すように、半導体ウェハ10は、オフ基板20を備えている。半導体ウェハ10は、後述するように、オフ基板20上に成膜されたエピタキシャル膜60を備えている。半導体ウェハ10は、所定位置にオリフラ10aを有している。オリフラ10aは、オリエンテーション・フラットの略称である。半導体ウェハ10は、オリフラ10aに代えて、ノッチなどの他のマークを有してもよい。
【0013】
オフ基板20は、主面21が結晶の基底面に対してオフ角を有している。オフ基板20は、オフ角を有する基板に相当する。本実施形態のオフ基板20は、SiC製のインゴットをスライスして形成されている。SiC単結晶(六方晶)の基底面である(0001)面は、結晶方位における<0001>方向に垂直な面である。(0001)面は、Si面と称されることがある。図2に示すように、オフ基板20の主面21は、基底面である(0001)面に対してオフ角を有している。主面21は、(0001)面に対して傾いている。
【0014】
図1に示すように、半導体ウェハ10は、複数の素子領域30を有している。素子領域30は、半導体素子が形成される領域である。素子領域30は、チップ形成領域と称されることがある。素子領域30は、ダイシングライン31によって区画されている。ダイシングライン31に沿って半導体ウェハ10をダイシング(カット)することで、半導体素子(チップ)が個片化される。半導体ウェハ10は、ダイシングライン31に対応する非素子領域32を有している。非素子領域32は、半導体素子が形成されない領域である。
【0015】
素子領域30には、MOSFET、IGBTなどのスイッチング素子やダイオードなどの半導体素子が形成される。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。
【0016】
<半導体装置の製造方法>
次に、図3図6に基づき、オフ基板20を用いた半導体装置の製造方法について説明する。つまり、図1に示した半導体ウェハ10の製造方法について説明する。図3は、図1のIII-III線に対応する断面図である。図4図6は、図3に対応している。
【0017】
先ず、オフ基板20にアライメントマークを形成する。図3に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、オフ基板20の主面21上に、レジストマスク40を成膜する。レジストマスク40は、非素子領域32の範囲に開口部41を有している。開口部41は、アライメントマークの形成位置に対応している。レジストマスク40は、少なくともひとつの開口部41を有している。レジストマスク40は、複数の開口部41を有してもよい。複数の開口部41は、互いに離れた位置に設けられる。
【0018】
レジストマスク40の形成後、図4に示すように、イオン注入によりアライメントマーク50を形成する。開口部41から露出するオフ基板20の表層部に、イオン注入する。オフ基板20において、イオン注入した部分の色調が変化する。色調は、イオン注入時に変化する。具体的には、淡緑色透明のオフ基板20に、アルミニウム(Al)をイオン注入すると、注入部分が濃緑色となる。アルミニウムの濃度が高いほど、色が濃くなる。アルミニウムに代えて、窒素(N)を用いてもよい。この場合も、アルミニウムと同様の傾向を示す。
【0019】
このように、イオン注入によりオフ基板20において色調が変化した部分をアライメントマーク50とする。非素子領域32の一部に、色調変化によるアライメントマーク50を形成する。アライメントマーク50は、アライメントマーク50の周辺部分51とは色調、たとえば濃淡が異なる。周辺部分51は、非素子領域32の他の部分である。アライメントマーク50は、周辺部分51よりも濃い。アライメントマーク50は、周辺部分51および素子領域30の部分よりも濃い。つまり、アライメントマーク50は、オフ基板20の他の部分よりも濃い。レジストマスク40が複数の開口部41を有する場合には、イオン注入により複数のアライメントマーク50が形成される。
【0020】
アライメントマーク50の深さ方向の位置は、ドーパントの種類、注入エネルギーなどによって調整することができる。本実施形態では、図4に示すように、アライメントマーク50を主面21から所定の範囲に形成する。アライメントマーク50の形成後、図5に示すように、レジストマスク40を除去する。
【0021】
次に、エピタキシャル膜を形成する。図6に示すように、エピタキシャル成長法によって、オフ基板20の主面21上にエピタキシャル膜60を成膜する。エピタキシャル膜60は、エピタキシャル層と称されることがある。エピタキシャル膜60は、アライメントマーク50を被覆する。エピタキシャル膜60は、透明である。
【0022】
次に、半導体素子を形成する。図6に示すように、素子領域30は、エピタキシャル膜60からオフ基板20にかけて設けられる。素子領域30は、エピタキシャル膜60とオフ基板20とにわたって設定される。
【0023】
半導体素子の形成においては、カメラを用いた画像解析により、アライメントマーク50の位置を認識する。オフ基板20およびエピタキシャル膜60は、可視光を透過する、すなわち透明である。アライメントマーク50は、上記したように周辺部分51、つまりイオン注入していない部分とは色調が異なる。したがって、オフ基板20内のアライメントマーク50を認識することができる。
【0024】
そして、アライメントマーク50を位置基準として、エピタキシャル膜60が成膜された半導体ウェハ10に対して半導体プロセスを実行する。これにより、複数の素子領域30のそれぞれに半導体素子(たとえば、MOSFET)を形成する。
【0025】
<第1実施形態のまとめ>
図7は、参考例を示す断面図である。参考例では、本実施形態の要素と同一または関連する要素について、本実施形態の符号の末尾にrを付け加えて示している。参考例では、トレンチ型のアライメントマーク50rを採用している。アライメントマーク50rは、ドライエッチングなどにより、オフ基板20rの主面21rに対してトレンチ(凹部)を形成してなる。
【0026】
オフ基板20rにアライメントマーク50rを形成後、エピタキシャル膜60rを成膜すると、トレンチの側面の結晶面に応じたエピタキシャル膜60rの成膜速度の相違により、図7に示すようにアライメントマーク50rが変形してしまう。よって、カメラを用いた画像解析により、アライメントマーク50rの位置を精度よく認識できない。つまり、アライメントマーク50rによる位置決め機能が低下する。
【0027】
本実施形態では、イオン注入により、オフ基板20の非素子領域32の一部の色調を非素子領域32の他の部分と異ならせる。イオン注入により色調変化した部分をアライメントマーク50とする。オフ基板20の内部に色調変化によるアライメントマーク50を形成するため、エピタキシャル膜60の形成時に成膜速度の相違によりアライメントマーク50が変形するのを抑制することができる。この結果、位置決め機能の低下を抑制することができる。
【0028】
本実施形態では、イオン注入時に、オフ基板20におけるイオン注入部分の色が、イオンを注入しない部分よりも濃くなる。イオン注入によって、オフ基板20の内部に濃淡のコントラストができる。したがって、アライメントマーク50の位置を精度よく認識することができる。これにより、位置決め機能を高めることができる。
【0029】
本実施形態では、オフ基板20がSiC基板である。オフ基板20は、淡緑色透明である。オフ基板20にアルミニウムをイオン注入すると、注入部分が濃緑色となる。イオン注入によってオフ基板20の内部に濃淡のコントラストができるため、アライメントマーク50の位置を精度よく認識することができる。同様に、オフ基板20であるSiC基板に窒素をイオン注入した場合にも、注入部分が濃緑色となる。イオン注入によってオフ基板20の内部に濃淡のコントラストができるため、アライメントマーク50の位置を精度よく認識することができる。
【0030】
アライメントマーク50を、主面21から離れた位置に形成してもよい。本実施形態では、アライメントマーク50を、オフ基板20において主面21から所定の範囲内に形成する。アライメントマーク50は、主面21に露出する。主面21が平坦なまま、アライメントマーク50は露出する。よって、主面21側からカメラで撮像する際に、アライメントマーク50の位置を、より精度よく認識することができる。これにより、位置決め機能をさらに高めることができる。
【0031】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0032】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0033】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0034】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0035】
オフ基板20は、上記した例に限定されない。主面が結晶の基底面に対してオフ角を有する基板であれば、トレンチの側面の結晶面に応じたエピタキシャル膜の成膜速度の相違により、トレンチ型のアライメントマークが変形する。よって、イオン注入によるアライメントマーク50を適用することで、位置決め機能の低下を抑制することができる。オフ基板20は、立方晶などの六方晶以外のSiC基板、GaNなどのGa系基板でもよい。
【0036】
非素子領域32として、ダイシングライン31に対応する領域の例を示したが、これに限定されない。たとえば、ダイシングライン31により区画される複数の領域の大部分を素子領域30とし、残りの領域を非素子領域32とする構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10…半導体ウェハ、
10a…オリフラ、
11、11r…主面、
20、20r…オフ基板、
30、30r…素子領域、
31…ダイシングライン、
32、32r…非素子領域、
40…レジストマスク、
41…開口部、
50、40r…アライメントマーク、
51…周辺部分、
60、60r…エピタキシャル膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7