(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177724
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】清掃方法、処理方法、清掃装置、制御装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A47L 1/02 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
A47L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084158
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健志
(57)【要約】
【課題】異なる大きさや形状の窓に対してもロボットアームを用いて容易に清掃をすることが可能となる清掃方法、処理方法、清掃装置、制御装置及びコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される清掃部材を窓の表面に接近接触させるステップと、前記清掃部材を窓の表面に倣わせて窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓の表面に倣わせて前記窓枠の第2部分に到達させるステップと、前記窓の表面に接近接触させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を含む清掃方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、
前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、
前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、
を含む清掃方法。
【請求項2】
前記清掃部材を前記窓の表面に接近させる前記ステップは、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓の表面から離間した位置で停止させるステップを含む、
請求項1に記載の清掃方法。
【請求項3】
前記清掃部材を前記窓の表面に接近させる前記ステップは、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓の表面に接触させるステップを含む、
請求項1に記載の清掃方法。
【請求項4】
前記清掃部材を窓枠の第2部分に到達させるステップと、
前記清掃部材を窓枠の第3部分に到達させるステップと、
前記清掃部材を窓枠の第4部分に到達させるステップと、
を更に含み、
前記窓枠は、4つの辺を有し、
前記第1部分は、前記窓枠の第1辺の部分に相当し、
前記第2部分は、前記窓枠の第2辺の部分に相当し、
前記第3部分は、前記窓枠の第3辺の部分に相当し、
前記第4部分は、前記窓枠の第4辺の部分に相当する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の清掃方法。
【請求項5】
前記ロボットアームの移動経路を決定するステップは、
前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓枠の角部分の位置を取得するステップを含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の清掃方法。
【請求項6】
前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置を記録するステップを含む、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の清掃方法。
【請求項7】
前記清掃部材は、ブレード、又は、ウエスを備える、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の清掃方法。
【請求項8】
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される部材を枠体に囲繞される対象物の表面に接近させるステップと、
前記部材を前記枠体の第1部分に到達させるステップと、
前記対象物の表面に接近させたときの前記部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記部材の位置に基づいて、前記対象物の表面を処理するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、
を含む処理方法。
【請求項9】
柔軟性を備える駆動機構と、清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームと、
前記ロボットアームを制御する制御装置であって、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、
前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、
を実行可能に構成される制御装置と、
を備える清掃装置。
【請求項10】
柔軟性を備える駆動機構と清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームを制御する制御装置であって、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、
前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、
を実行させるように構成される、
制御装置。
【請求項11】
コンピュータに、
柔軟性を備える駆動機構と清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、
前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、
前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、
を実行させるための制御命令を生成させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃方法、処理方法、清掃装置、制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物等に設けられた窓を自動的に清掃する清掃装置が知られている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、磁力により窓の両面に付着する掃除ユニットを、使用者がリモートコントローラを用いてコントロールすることにより窓を清掃する清掃装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、建築物の屋上から清掃部材であるスクレイパーが配設された構造体を降下させ、その降下量を制御してスクレイパーの高さを調整することにより、窓の表面を清掃する清掃装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-529949号公報
【特許文献2】特表2013-526330号公報
【特許文献3】特開平03-114425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された清掃装置は、掃除ユニットを窓の両面から窓に設置させる必要があるため、大きく開閉しない窓の清掃や高層の窓の清掃には適さない。特許文献3に記載された清掃装置は、建築物の屋上からの構造体の降下量を制御することによって清掃部材であるスクレイパーの高さを調整するものであるから、清掃部材を精度良く移動させることが困難である。
【0007】
そこで清掃部材を精度良く移動させるために、移動経路を事前にロボットアームに教示し、この移動経路に沿って清掃部材を移動させることにより窓を清掃することも考え得る。しかしながら、全ての移動経路についてロボットアームに位置及び姿勢を教示することは煩雑である。ましてや、異なる大きさや形状の窓ごとに全ての移動経路についてロボットアームに教示を行うことは、更に煩雑である。
【0008】
そこで本発明は、異なる大きさや形状の窓に対してもロボットアームを用いて容易に清掃をすることが可能となる清掃方法、処理方法、清掃装置、制御装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、窓の清掃方法を開示する。この方法は、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を含む。
【0010】
ここで、前記清掃部材を前記窓の表面に接近させる前記ステップは、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓の表面から離間した位置で停止させるステップを含んでもよい。
【0011】
又、前記清掃部材を前記窓の表面に接近させる前記ステップは、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓の表面に接触させるステップを含んでもよい。
【0012】
更に、前記清掃部材を窓枠の第2部分に到達させるステップと、前記清掃部材を窓枠の第3部分に到達させるステップと、前記清掃部材を窓枠の第4部分に到達させるステップと、を更に含んでもよい。ここで前記窓枠は、4つの辺を有し、前記第1部分は、前記窓枠の第1辺の部分に相当し、前記第2部分は、前記窓枠の第2辺の部分に相当し、前記第3部分は、前記窓枠の第3辺の部分に相当し、前記第4部分は、前記窓枠の第4辺の部分に相当することが好ましい。
【0013】
加えて、前記ロボットアームの移動経路を決定するステップは、前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓枠の角部分の位置を取得するステップを含んでもよい。
【0014】
なお、前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置を記録するステップを更に含んでもよい。
【0015】
前記清掃部材は、ブレード、又は、ウエスを備えてもよい。
【0016】
本出願は、処理方法を開示する。この方法は、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される部材を枠体に囲繞される対象物の表面に接近させるステップと、前記部材を前記枠体の第1部分に到達させるステップと、前記対象物の表面に接近させたときの前記部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記部材の位置に基づいて、前記対象物の表面を処理するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を含む。
【0017】
更に本出願は、清掃装置を開示する。この装置は、柔軟性を備える駆動機構と、清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームと、前記ロボットアームを制御する制御装置であって、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を実行可能に構成される制御装置と、を備える。
【0018】
更に本出願は、制御装置を開示する。この装置は、柔軟性を備える駆動機構と清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームを制御する制御装置であって、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を実行させるように構成される。
【0019】
加えて本出願は、コンピュータプログラムを開示する。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、柔軟性を備える駆動機構と清掃部材を保持可能な保持機構とを備えるロボットアームに保持される前記清掃部材を窓の表面に接近させるステップと、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記窓の表面に接近させたときの前記清掃部材の位置及び前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を実行させるための制御命令を生成させる。
【0020】
ここでコンピュータは、制御装置と呼ばれてもよい。コンピュータは、実施形態に記載された構成により実現されてもよい。
【0021】
コンピュータプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。例えば、非一時的(Non-transitory)に情報を記録可能なNAND型又はNOR型のフラッシュメモリ等の半導体メモリに記録されてもよい。
【0022】
ここで、「柔軟性を備えた」とは、弾性、粘性又は弾性及び粘性を備えていることをいう。弾性とは、応力を加えると変形し、応力を除去すると元に戻る性質をいい、弾性変形のしやすさを示す可撓性という言葉で表現される場合もある。粘性とは、流体の流動速度を一様化する応力を生じさせる性質をいう。柔軟性を備えた駆動機構は、柔軟性を付与するための、例えば、磁性流体、機械ばね、空気ばね、磁力ばね及びベーンモータの何れか一つを少なくとも備えてもよい。
【0023】
「清掃部材の位置に基づいて」とは、清掃部材の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づく場合の他、清掃部材の位置に応じた情報を取得し、取得された情報に基づく場合を含む。例えば、「前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて」とは、「前記第1部分に到達したときの」前記清掃部材を保持するロボットアームの位置情報に基づく場合を含む。
【0024】
「前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定する」とは、清掃される窓の表面の領域(又は、この領域を含む領域)についてロボットアームの移動経路を設定することをいう。ロボットアームの移動経路は、複数の位置におけるロボットアームの各リンクの位置(姿勢を含む。)を示す情報によって定められてもよい。なお、決定された移動経路は、その他の要因等に基づいてその後に修正等されることを妨げるものではない。加えて清掃される窓の表面の領域は、必ずしも窓の表面全体でなくてもよい。
【0025】
「前記対象物の表面を処理するための前記ロボットアームの移動経路を決定する」とは、処理される対象物の表面の領域(又は、この領域を含む領域)についてロボットアームの移動経路を設定することをいう。ロボットアームの移動経路は、複数の位置におけるロボットアームの各リンクの位置(姿勢を含む。)を示す情報によって定められてもよい。なお、決定された移動経路は、その他の要因等に基づいてその後に修正等されることを妨げるものではない。加えて処理される対象物の表面の領域は、必ずしも対象物の表面全体でなくてもよい。
【0026】
ロボットアームに保持される清掃部材が移動するとき、ロボットアームは、清掃部材を窓の表面に倣わせてもよい。
【0027】
「清掃部材を窓の表面に倣わせる」とは、清掃部材を窓の表面に接触させながら、清掃部材を窓の表面に対して相対的に移動させることをいう。相対的に移動させることは、並進移動に限られず、相対的に回転移動させることを含む。「清掃部材を窓の表面に倣わせる」とき、清掃部材は、清掃部材が接触している窓の表面に垂直な方向及び平行な方向の力が作用するように窓の表面を押し付けられてもよい。
【0028】
前記ロボットアームは、複数の駆動軸を有し、前記複数の駆動軸は、前記柔軟性を備えた駆動機構として、直列弾性アクチュエータをそれぞれ備えてもよい。
【0029】
直列弾性アクチュエータ(Series Elastic Actuator)は、例えば、モータと、ばね等の弾性体とを備える。モータから出力されるトルクは、弾性体を介して、剛性を有するリンクに伝達される。このため、ロボットアームによる対象物を組付け部位に接触させて倣わせることを容易に実現することが可能になる。直列弾性アクチュエータが備える弾性体が弾性変形するように、清掃部材を窓体の表面に倣わせることが好ましい。
【0030】
本出願は、窓の清掃方法を開示する。この方法は、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される清掃部材を窓枠の第1部分に到達させるステップと、前記ロボットアームに保持される前記清掃部材を前記窓枠の第2部分に到達させるステップと、前記第1部分に到達したときの前記清掃部材の位置及び前記第2部分に到達したときの前記清掃部材の位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定するステップと、を含む。
【0031】
ここで前記窓枠は、4つの辺を有し、前記第1部分は、前記窓枠の第1辺の部分に相当し、前記第2部分は、前記窓枠の第2辺の部分に相当する。
【0032】
更に、前記窓枠の第3辺の部分に相当する第3部分に清掃部材を到達させ、前記窓枠の第4辺の部分に相当する第4部分に清掃部材を到達させ、更に前記第3部分及び前記第4部分に到達したときの前記清掃部材の各位置に基づいて、前記窓の表面を清掃するための前記ロボットアームの移動経路を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る清掃装置のロボットシステムの機能ブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態に係る清掃装置のロボットアームの外観である。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態に係る清掃装置のロボットアームの外観である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る清掃方法における清掃対象物である窓の模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る清掃方法における清掃対象物である窓と、清掃領域との位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図5A】
図5Aは、一実施形態に係る清掃方法のフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、一実施形態に係る清掃方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る清掃方法における移動経路に従った場合の清掃部材の位置と、実際の清掃部材の位置との相違を説明するための模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る清掃方法における倣い動作中に許容範囲を超えた場合の減速動作を含む速度制御方法について説明するためのグラフである。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る清掃方法において、窓表面の揺らぎに対する清掃部材の追随動作を模式的に説明する断面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る清掃方法において、ロボットアームに対して窓枠が相対的に傾いたときの清掃部材の追随動作を模式的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態における説明及び図面は、本発明を特許が請求されている範囲よりも限定して解釈する目的で開示されるものではない。
[第1実施形態]
【0035】
第1実施形態は、清掃部材をガラス製の窓G(
図3。「対象物」の一例)の表面に接触させた状態で清掃部材を移動させて窓Gの窓枠Fに到達させるステップを経てロボットアームの移動経路を決定する窓の清掃方法を開示する。
図1は、ロボットシステム100(「清掃装置」の一例)の機能ブロック図を示している。
図2A及び
図2Bは、本実施形態に係るロボットアーム20の外観を示している。
【0036】
ロボットシステム100は、ロボットアーム20と、ロボットアーム20を制御する制御装置10とを備えている。
【0037】
ロボットアーム20は、例えば、垂直多関節ロボットであり、ゴンドラ等に固定されるベース20Bと、複数のリンク20Lと、各リンク20Lを接続するジョイント20Jと、ジョイント20Jにおいてリンク20Lを回転駆動するための複数の直列弾性アクチュエータ20Dとを備える。本実施形態に係るロボットアーム20は、7軸の垂直多関節ロボットであり、
図2A及び
図2Bに示されるように、リンク20Lを伸ばすことによって、ベース20Bを動かすことなく、先端のリンク20Lに保持されるブレードBを左右に大きく動かすことが可能に構成される。但し、ロボットアームは、本実施形態に限られるものではなく、例えば、水平多関節型ロボット装置、パラレルリンク型ロボット装置であってもよい。
【0038】
リンク20Lは、剛性を有する部材から構成されており、例えば、ベース20Bに対して回動可能に取り付けられた胴部に相当するリンク20Lと、胴部に対して回動可能に取り付けられた上腕部に相当するリンク20Lと、上腕部に対して回動可能に取り付けられた前腕部に相当するリンク20Lと、前腕部に対して回動可能に取り付けられた手先部に相当するリンク20L等を含む複数のリンク20Lを備える。
【0039】
ロボットアーム20の先端のリンク20Lには、清掃部材を保持するための保持機構が設けられている。保持機構は、例えば、清掃部材をねじによって固定するための雌ねじが形成された雌ねじ部から構成される。但し、清掃部材を保持するための保持機構は、様々な構成を採用することが可能であり、例えば、清掃部材を保持するための複数の吸着パッドと制御装置から送信される制御信号に基づいて吸着パッドに負圧を発生させるアクチュエータを備えるものや、或いは、金属等の磁性体材料から構成される清掃部材を磁力により保持するための磁場を電磁的に発生させるためのコイルを備えるものであってもよい。また、先端のリンク20Lに、アクチュエータによって開閉する一対の可動プレート(グリッパと呼ばれる場合もある。)を備えるエンドエフェクタを更に取り付け、可動プレート等によって、清掃部材を挟持可能な保持機構を採用することも可能である。
【0040】
本実施形態に係るロボットアーム20は、複数のリンク20Lをそれぞれ回転駆動するための複数の直列弾性アクチュエータ20D(「柔軟性を備えた駆動機構」の一例、
図1)を備えている。
【0041】
直列弾性アクチュエータ20Dは、SEA(Serial Elastic Actuators)とも呼ばれる、知られた駆動機構であり、例えば、欧州特許第2,890,528号には、SEAの一例が記載されている。直列弾性アクチュエータ20Dは、駆動部20DAと、駆動部20DAに接続される弾性体20DEとから構成される。駆動部20DAは、例えば、サーボモータから構成される。弾性体20DEは、例えば、機械ばねから構成される。直列弾性アクチュエータ20Dにおいて駆動部20DAから出力される動力は、弾性体20DEを介して、出力側のリンク20L(但し、先端のリンク20Lの場合、清掃部材を含む。)
に伝達し、これを回動させる。
【0042】
更に、直列弾性アクチュエータ20Dは、負荷の大きさを取得するためのセンサと、弾性体20DEの変位量を取得するためのセンサと、サーボモータの変位量を取得するためのセンサを含む複数のセンサを備えている。
【0043】
負荷の大きさは、例えば、駆動部20DAを構成するサーボモータに流れる電流量を取得する電流センサから取得することが可能である。
【0044】
弾性体20DEの変位量は、弾性体20DEの両端の変位量(回転角度)を取得するために弾性体20DEの両端にそれぞれ設けられた光学的センサ、弾性体20DEに磁石等を取り付けこの磁石等から発生する磁場を検出する磁気センサ、又は、弾性体20DEに設けられた歪センサ等から取得することが可能である。弾性体20DEの変位量及び弾性体20DEの弾性定数に基づいて発生するトルクを取得することも可能となる。
【0045】
上記と同様に、サーボモータの変位量は、エンコーダ等の光学的センサ、ホール素子等の磁気センサ、又は、歪センサ等から取得することが可能である。
【0046】
以上のような構成の下、柔軟性を備えた駆動機構に相当する直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動される部分の慣性、質量及び長さ、外力並びに弾性体20DEである機械ばねの弾性率をパラメータとする運動方程式が成立する。このため、制御装置10は、機械ばねの弾性率及び変位量等に基づいて、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御を行うように構成される。
【0047】
なお、直列弾性アクチュエータ20Dは、駆動部20DAであるサーボモータの駆動軸に接続され、動力を機械ばね等の弾性体20DEに伝達するギヤを備えていてもよい。更に、直列弾性アクチュエータ20Dは、粘性に基づいて衝撃を緩和させるダンパ機構及び動力の伝達をスイッチするためのクラッチ機構を備えてもよい。粘性を有するダンパ機構等の粘性体を付与する場合、又は、ギヤの歯車間の摩擦等から生じる減衰を加味する場合、運動方程式には、粘性定数がパラメータとして加えられた運動方程式が成立する。
【0048】
例えば、サーボモータの駆動軸にギヤが接続され、ギヤの出力軸に弾性体を介して負荷(下流側のリンク等)が接続される直列弾性アクチュエータ20Dの場合、ギヤの出力軸に生じるトルクは、サーボモータに流れる電流及びギヤ比に比例し、このトルクが、ギヤの出力軸の角加速度に慣性を乗じた値と、ギヤの出力軸の角加速度にギヤの粘性を乗じた値と、弾性体の変位量に弾性率を乗じた値との和と等しくなる運動方程式が成立する。この運動方程式に基づいて、直列弾性アクチュエータ20Dの伝達関数を導くことにより、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御が可能となる。
【0049】
以上のような構成により、ロボットアーム20の複数のリンク20Lを回動させることが可能になるため、リンク20Lの先端に取り付けられる清掃部材の位置及び姿勢を自由に変化させることが可能となる。なお、本開示における位置を示す情報は、合理的に必要と考えられる場合、姿勢を示す情報を含む場合がある。更にロボットアーム20は、窓枠F等を画像認識するための撮像装置20C及び使用者と情報の授受を行うためのディスプレイ20DIを含む入出力手段を備えてもよい。更にロボットアーム20は、弾性を有さない駆動部によって駆動される知られたリンクを一部に備えてもよい。
【0050】
続いて制御装置10の構成について説明する。
図1には、制御装置10の機能ブロックが示される。
図3は、清掃対象である窓Gの模式図である。清掃部材によって清掃されるガラス製の窓Gは、窓枠Fに嵌め込まれる。このため、窓Gは、窓枠Fに囲繞されている。窓Gは、例えば、矩形状に形成され、この場合窓枠Fは、窓Gを囲むように、鉛直方向に延伸する2つの平行な枠F1及び枠F2と、枠F1及び枠F2の上端部及び下端部を接続する垂直方向に延伸する2つの平行な枠F3及び枠F4とを備える。
【0051】
清掃部材は、窓Gの素材等を考慮して窓Gの表面上の塵等の除去に好適な知られた構成のものを使用することが可能であり、本実施形態では一例として、先端のリンク20Lに固定するための複数の雄ねじが貫通するための貫通孔が形成された支持部と、窓の表面を清掃する板状の弾性体からなるブレードBとから構成される。但し清掃部材は、これに限られるものでなく、窓Gの表面を清掃するための布体(「ウエス」の一例)、又は、清掃ブラシを備えていてもよい。更に、清掃部材は、洗浄液を含ませた布体(「ウエス」の一例)及びこの布体により窓Gに塗布された洗浄液を拭き取る板状の弾性体(「ブレードB」の一例)とから構成されてもよい。
【0052】
図1に示されるように、制御装置10は、清掃部材の一例であるブレードB(
図3)を窓Gに接近させたときの、ブレードBの位置情報を取得する基準点取得部10Aと、ブレードBを移動させて窓枠Fの一部分に到達(接触)させたときのブレードBの位置情報を取得する接触点取得部10Bと、基準点取得部10Aにより取得された位置情報及び接触点取得部10Bにより取得された位置情報に基づいて窓枠Fの位置情報を取得する窓枠位置取得部10Cと、窓枠位置取得部10Cによって取得された窓枠Fの位置情報に基づいてロボットアーム20の移動経路を取得する経路取得部10Dと、移動経路と実際の位置との変位の許容範囲を取得する許容範囲取得部10Eと、経路取得部10Dによって取得された経路に従って、各直列弾性アクチュエータ20Dの駆動部20DAに相当するサーボモータを制御するための制御命令及を取得する制御命令取得部10Fと、記憶部10Gとを備える。
【0053】
清掃部材を窓の表面に接近(接触を含む)させたときの清掃部材の位置を基準点と呼ぶ。基準点取得部10Aは、基準点OP(
図3)の位置情報を取得する。具体的には、基準点取得部10Aは、ブレードBを窓Gの表面に接近させたときのロボットアーム20の手先位置に相当する先端のリンク20Lのセンターポイントの位置情報を取得し、この位置情報に基づいてロボットアーム20に保持される清掃部材の位置情報を基準点の位置情報として取得する。ロボットアーム20の手先位置に相当する先端のリンク20Lそのものが清掃部材として機能する場合は、先端のリンク20Lのセンターポイント等の位置情報を基準点の位置情報として取得してもよい。基準点は窓の表面の中心付近でよいが、これに限られるものではない。
【0054】
なお、清掃部材を窓の表面に接近(接触を含む)させるためのロボットアーム20の動作方法は、限られるものではない。例えば、教示モードにおいて清掃部材が窓の表面に接触するようにオペレータがロボットアーム20を動かし、このときの清掃部材の位置情報を基準点取得部10Aが基準点の位置情報として取得してもよい。あるいは、ロボットアーム20が自動的に清掃部材を窓の表面に接触又は接近するように動作し、センサ等により清掃部材が窓の表面に接触又は接近したことを検出したときの清掃部材の位置情報を基準点取得部10Aが基準点の位置情報として取得してもよい。
【0055】
清掃部材を窓枠の一部に到達(接触)させたときの清掃部材の位置を接触点と呼ぶ。接触点取得部10Bは、接触点P1乃至接触点P4(
図3)の位置情報を取得する。具体的には、接触点取得部10Bは、基準点OPから枠F2及び枠F4に平行な方向DR1にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ枠F1の一部分(「第1部分」の一例)に到達(接触)させたときの清掃部材の位置情報を接触点P1の位置情報として取得する。
【0056】
同様に接触点取得部10Bは、接触点P1から枠F2及び枠F4に平行な方向にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ枠F2の一部分(「第2部分」の一例)に到達(接触)させたときの清掃部材の位置情報を接触点P2の位置情報として取得する。
【0057】
更に接触点取得部10Bは、接触点P2から枠F2及び枠F4に平行な方向にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ次いで枠F1及び枠F3に平行な方向にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ枠F3の一部分(「第3部分」の一例)に到達(接触)させたときの清掃部材の位置情報を接触点P3の位置情報として取得し、最後に接触点P3から枠F1及び枠F3に平行な方向DR4にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ枠F4の一部分(「第4部分」の一例)に到達(接触)させたときの清掃部材の位置情報を接触点P4の位置情報として取得する。
【0058】
窓枠位置取得部10Cは、基準点OP及び接触点P1~P4の位置情報に基づいて窓枠Fの位置情報を取得する。具体的には、窓枠位置取得部10Cは、基準点OP及び接触点P1を結ぶ直線であって接触点P3及び接触点P4を通過する2つの直線を示す情報を取得し、この直線に垂直であって接触点P1及び接触点P2を通過する2つの直線を示す情報を取得し、これら4つの直線の交点を窓枠FのコーナーC1~C4(「角部分」の一例)の位置情報として取得する。コーナーC1~C4の位置情報は、窓G(厳密には窓Gのうち窓枠Fに当接する部分を除く露出部分)の形状及び大きさを示す。このため、本実施形態に係る清掃方法を利用することにより、窓の形状及び大きさが予めわかっていなくても、ロボットアームを用いて容易に清掃をすることが可能となる。従ってロボットアーム20の可動範囲を限度として、異なる大きさや形状の窓に対しても容易に清掃をすることが可能となる。なお、コーナーC1~C4の位置情報は、窓Gの形状及び大きさを示すとともに、窓枠Fの内縁の形状及び大きさを示す情報にも相当する。また、
図3等においては接触点P1~P4及びコーナーC1~C4を強調するためにこれらを示す点は、実際よりも大きく模式的に示されている。
【0059】
経路取得部10Dは、窓枠位置取得部10Cによって取得された窓枠Fの位置情報に基づいてロボットアーム20の移動経路を取得する。
【0060】
経路取得部10Dは、窓枠位置取得部10Cによって取得された窓枠Fを内部に含むような清掃領域ARを設定する。
【0061】
図4は、清掃領域ARと窓枠Fとの位置関係を示す模式図である。同図に示されるように、清掃領域ARは、窓枠Fより大きく、かつ、窓枠Fを内部に包含する。従って清掃領域ARは、接触点P1~P4及びコーナーC1~C4を内部に包含するように設定される。
【0062】
このように清掃領域ARを大きく設定することにより、例えば、風雨等によるロボットアーム20を搭載するゴンドラの揺れによるロボットアーム20と窓枠Fとの相対位置の変動やロボットアーム20の移動精度等に起因して窓枠位置取得部10Cによって取得されたコーナーC1~C4が実際の窓枠Fのコーナーからずれた位置に存在した場合であっても、ロボットアーム20は、コーナーC1~C4を結んだ領域からはみ出た部分を清掃することが可能となる。また、ロボットアーム20は柔軟性を有する駆動機構を備えているため、後述するように、窓枠Fが傾いた場合であってもブレードBを窓枠FのエッジEに当接させながらエッジEに沿って移動させることが可能となる。
【0063】
次いで経路取得部10Dは、清掃領域ARの全域をブレードBが清掃するために、ロボットアーム20の基準位置(例えば、ロボットアーム20の手先位置に相当する先端のリンク20Lのセンターポイント)が通過する移動経路及びそのためのロボットアーム20の各リンク20Lの位置及び姿勢を取得する。移動経路の開始地点は、開始位置と呼ばれる場合がある。移動経路の方向が変わる地点及び移動経路の最終地点は、目標位置と呼ばれる場合がある。
【0064】
許容範囲取得部10Eは、基準位置の経路を基準として、ロボットアーム20の実際の基準位置が経路から離れることができる許容範囲を示す情報を取得する。例えば、ある目標位置にロボットアーム20の基準位置が到達した時の、直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動されるリンク20Lの角度がαであるとき、そのリンク20Lの許容範囲を示す情報は、例えば、α±βという角度情報として取得される。βは、直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEの弾性率等に基づいて、弾性変形可能な範囲として予め設定可能な角度単位の情報である。複数方向に対して柔軟性を有するために、ロボットアーム20が複数の直列弾性アクチュエータ20Dを備える場合、許容範囲取得部10Eは、直列弾性アクチュエータ20Dに駆動される複数のリンク20Lごとに許容範囲を示す情報を取得することが可能である。
【0065】
なお、許容範囲を示す情報は、リンク20Lの角度が変動した結果、ロボットアーム20の別の部位である基準位置が取り得る所定領域を示す位置情報であってもよい。即ち、所定のリンク20Lの角度がα+βであるとき、βにリンク20Lの長さを乗じた距離だけそのリンク20Lの先端が変位するから、それに応じて、下流のロボットアーム20の部位も変位する。従って、許容範囲取得部10Eは、ロボットアーム20の他の部位を基準位置とし、この基準位置が取り得る所定領域を示す位置情報として取得してもよい。以下では、先端のリンク20Lによって保持されるブレードBのセンターポイントをロボットアーム20の基準位置とする場合を中心に説明する。許容範囲は、基準位置において少なくとも±5mm以上経路から離れることを許容するように構成されることが好ましい。
【0066】
許容範囲を示す情報は、記憶部10Gに格納されるコンピュータプログラム内において、予め、駆動機構が備える弾性又は粘性に基づく定数として定められることができる。従って、制御装置10の演算素子がコンピュータプログラムを読み出すことにより、許容範囲を示す情報が取得されるように構成されてもよい。或いは、制御装置10は、教示装置50から、許容範囲を示す情報を取得してもよい。
【0067】
制御命令取得部10Fは、基準位置を経路に従って移動させるための各モータを制御するための制御命令を演算処理等により取得し、ロボットアーム20に供給する。例えば、制御命令取得部10Fは、逆運動学演算(インバースキネマティクス)により、基準位置が経路上に位置するための各モータの回転角度を算出し、これに基づいて制御命令を生成して、記憶部10Gに格納することが可能である。
【0068】
記憶部10Gは、各実施形態に示される各処理を実行するためのコンピュータプログラム(経路生成アルゴリズムを含む)及び必要なデータその他の情報を格納する。
【0069】
以上述べた制御装置10のハードウェア構成に関し、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサである演算素子と、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶素子と、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶素子と、これらを接続するバス等の通信手段を備えるコンピュータから構成することが可能である。不揮発性記憶素子は、非一時的(Non-transitory)に情報を記憶する記憶媒体である。揮発性記憶素子は、これらコンピュータプログラムの少なくとも一部及び演算処理結果等を一時的に記憶する。記憶部10Gは、これら記憶素子により構成される。また、記憶部10Gに格納されるコンピュータプログラムを演算素子が実行することにより、基準点取得部10A、接触点取得部10B、窓枠位置取得部10C、経路取得部10D、許容範囲取得部10E及び制御命令取得部10Fとして機能する。但し、これら演算素子、不揮発性記憶素子等の少なくとも一部は、インターネット等の通信ネットワークに接続された遠隔地に設置されていてもよい。例えば、演算素子は、通信ネットワークを介して、コンピュータプログラム又は必要なデータを取得するように構成されてもよい。
【0070】
制御装置10とロボットアーム20は、無線又は有線による通信手段によって情報の送受信が可能に構成されている。
【0071】
制御装置10には、ロボットシステム100に動作教示するための教示装置50が接続、又は、一体的に設けられてもよい。また、教示装置50は、ロボットアーム20に設けられてもよく、例えば、ディスプレイ20DIを含む入出力手段を教示装置50の一部として利用してもよい。
【0072】
教示装置50は、例えば、オンラインティーチングを行うための携帯型の教示ペンダントを備える。教示装置50は、制御装置10と同様に、演算素子、揮発性記憶素子、不揮発性記憶素子を備え、更に、ディスプレイを有する表示手段及び複数の操作キー並びにレバーを有する入力手段を備えている。入力手段は、ディスプレイを押圧して入力を行うタッチパネル式の入力手段から構成されてもよい。
【0073】
続いて、ロボットシステム100による清掃方法を説明する。
図5A及び
図5Bは、ロボットシステム100による清掃方法を示すフローチャートである。
【0074】
まずオペレータは、教示モードにおいてロボットアーム20を動かしてロボットアーム20に保持される清掃部材であるブレードBを窓Gの表面の中心付近に接近させる(ステップS51)。後述するようにこのときブレードBは、窓Gの表面に接触してもよいし、窓Gの表面に接触することなく、窓Gの表面から離間した位置で停止してもよい。本例ではブレードBは窓Gの表面に接触する。
【0075】
基準点取得部10Aは、ブレードBを窓Gの表面に接近させたときの清掃部材の位置情報を基準点の位置情報として取得し、記憶部10Gに格納させる(ステップS52)。
【0076】
制御装置10は、基準点OPから枠F2及び枠F4に平行な方向DR1(
図3)に枠F1に向かってロボットアーム20に保持されるブレードBを移動させる(ステップS53)。このロボットアーム20及び清掃部材の移動は、窓枠位置取得のためのプログラムとして予め記憶部10Gに格納されている制御命令に基づいて行ってもよいし、携帯型の教示ペンダント等を用いてオペレータがロボットアーム20を操作することにより行ってもよい。
【0077】
接触点取得部10Bは、ブレードBが枠F1に到達したことを検出する(ステップS54)。具体的には、接触点取得部10Bは、一、又は、複数のリンク20L(例えば、先端のリンク20L)の加速度(又は角加速度)がゼロになったか否かをリンク20Lに設けられたセンサから取得する情報に基づいて判断し、リンク20Lの加速度(又は角加速度)がゼロになった時に、ブレードBが枠F1に接触し枠F1に到達したと判断する。但しブレードBが枠F1に到達したことの検出はこれに限られるものではなく、その他の方法により実現してもよい。
【0078】
接触点取得部10Bは、ブレードBが枠F1に到達したときのブレードBの位置情報を接触点P1の位置情報として取得し、記憶部10Gに格納させる(ステップS55)。
【0079】
制御装置10は、窓枠Fの全ての枠について接触点の位置情報を取得したか否か判断し(ステップS56)、「NO」の場合、同様に、接触点取得部10Bは、ブレードBが枠F2、枠F3及び枠F4に到達したときのブレードBの位置情報を接触点P2、接触点P3及び接触点P4の位置情報としてそれぞれ取得し、記憶部10Gに格納させる。
【0080】
ステップS56において「YES」の場合、窓枠位置取得部10Cは、上述した方法で窓枠FのコーナーC1~C4(「角部分」の一例)の位置情報を取得し、記憶部10Gに格納させる(ステップS57)。但し、後述するように、清掃領域を決定するための位置情報の取得方法はこれに限られるものではない。
【0081】
次いで経路取得部10Dは、窓枠位置取得部10Cによって取得された窓枠Fを内部に含むような清掃領域ARを設定する(ステップS58)。
【0082】
更に経路取得部10Dは、清掃領域ARの全域をブレードBが清掃するために、例えば、ロボットアーム20の先端のリンク20Lのセンターポイント、又は、清掃部材のセンターポイント等の基準位置が通過する移動経路を取得する(ステップS59)。
【0083】
なお、ブレードBの経路は、窓Gの形状、大きさ、複数の窓の配列、ゴンドラの移動経路等を考慮して多様に設定することが可能である。例えば、
図3において、接触点P4を開始位置とする移動経路を取得すれば、ブレードBの動きのロスが少ない。しかしながら、例えば、コーナーC2を開始位置とする移動経路を取得してもよい。
【0084】
本実施形態に係る清掃方法によれば、移動経路は、清掃部材が窓枠Fの一部分に接触した後に決定される。従って全ての移動経路についてロボットアームに位置及び姿勢を教示する必要がない。
【0085】
図6は、移動経路に従った場合のブレードBの位置と、実際のブレードBの位置の相違を説明するために、ロボットアーム20を用いて窓Gを清掃する様子を模式的に示す断面図である。同図では模式的にブレードBを枠F1及び枠F2と平行な方向に移動させて窓Gの表面を清掃する例を示している。
【0086】
同図において破線B1は、窓Gが存在しない場合における、基準位置が移動経路の開始位置と一致する時のブレードBの位置である。実線B1は、窓Gが存在する場合における開始位置における実際のブレードBの位置である。破線B1で示されるように、開始位置は、先端のリンク20L(不図示)又はブレードBが窓Gと干渉するように設定される。しかしながら実際は、窓Gが存在するため、ブレードBが窓Gの表面と接触し窓Gの表面を押し付ける。このため、先端のリンク20L又はブレードBが窓Gと干渉することはない。変位量D1は、一、又は、複数の直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEが窓Gの法線方向に弾性変形した量に相当する。このとき、変位量D1及び弾性体20DEの弾性率に基づいて生じる力が、ブレードBから窓Gに作用する。このため変位量D1は、ブレードBが窓Gの表面上の塵等を除去して好適に窓Gを清掃することが可能な程度の力を発生するように設定される。一方で変位量D1が大きすぎると、ブレードBが窓Gを破損してしまう。このため、変位量D1は、そのような窓Gの破損が発生しないように設定される。
【0087】
移動経路中に設定される少なくとも一部の目標位置は、清掃領域ARにブレードBが到達可能なように設定される。
図6において破線B3は、窓Gが存在しない場合における、基準位置が移動経路上の一つの目標位置と一致する時のブレードBの位置である。実線B4は、窓Gが存在する場合における実際のブレードBの位置である。
【0088】
破線B3で示されるように、目標位置は、清掃領域ARの端部にブレードBが到達可能なように設定されるため、先端のリンク20L(不図示)又はブレードBが窓枠Fの枠F3と干渉するように、平面視において窓GのエッジE(窓枠などの枠体と、窓等の枠体に囲繞される対象物表面との境界に相当する領域)よりも外側に設定される。
【0089】
しかしながら実際は枠F3が存在するため、ブレードBが枠F3のエッジE及び窓Gの表面と接触しエッジE及び窓Gの表面を押し付ける。このため、先端のリンク20L又はブレードBが枠F3と干渉することはない。変位量D2は、一、又は、複数の直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEが弾性変形した量に相当する。このとき、変位量及び弾性率に基づいて生じる力が、ブレードBから窓枠F及び窓Gに作用する。このため変位量D1と同様に変位量D2の窓G表面の法線方向における分力は、弾性体20DEの弾性率を考慮して、ブレードBが窓Gの表面上の塵等を除去可能な力以上であって、かつ、窓Gが破損することがない範囲の力を生じさせるように設定され、例えば、変位量D1と略同一に設定される。
【0090】
第1目標位置の次の目標位置である第2目標位置は、ブレードBの清掃経路に応じて決定される。
図6に示されるように、例えば第2目標位置は、反対側の枠F4の外側に設定される。同図において、窓体Wが存在しない場合における基準位置が第2目標位置と一致する時のブレードBの位置は、破線B5で示されている。一方で、窓体Wが存在する場合における、基準位置が第2目標位置と一致する時の実際のブレードBの位置は、実線B6で示されている。破線B5で示されるように、第2目標位置は、先端のリンク20L(不図示)又はブレードBが窓枠Fの枠F2と干渉するように設定される。実際は、枠F2が存在するため、ブレードBが枠F2のエッジE及び窓Gの表面と接触しエッジE及び窓Gの表面を押し付ける。このため、先端のリンク20L又はブレードBが枠F2と干渉することはない。変位量D3は、変位量D2と同一でよい。
【0091】
続いて制御命令取得部10Fは、経路取得部10Dによって取得された経路情報に基づいて、直列弾性アクチュエータ20Dへの制御命令を取得し、記憶部10Gに格納させる(ステップS60、
図5B)。
【0092】
次いでロボットアーム20は、制御装置10から受け取った制御命令に基づいて各リンク20Lを駆動する。
【0093】
まずロボットアーム20は、開始位置に移動する。この動作により
図6の実線B2で示されるように、ブレードBは、窓Gの表面に押し付けられる(ステップS61)。
【0094】
その後、ロボットアーム20は、ブレードBを目標位置に移動させる動作を繰り返す(ステップS62~ステップS67)。
【0095】
まずロボットアーム20は、ブレードBが窓Gの表面に押し付けた状態を維持しながらブレードBを第1目標位置に向かって移動させることにより、ブレードBを窓Gの表面に対して倣わせる(ステップS63)。
【0096】
具体的には、
図6において破線B1で示される開始位置(より正確には、基準位置が開始位置に存在するときのブレードBの位置。以下同様)から、破線B3で示される第1目標位置に向かって、実際には、実線B2で示される位置から、実線B4で示される位置に向かって、ブレードBを窓Gの表面に接触させたまま移動させる。実線と破線との変位量(経路と実際の基準位置との変位量)は、許容範囲内に存在する。このとき、直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEは、変位量に応じて弾性変形する。
【0097】
このような並進移動を伴う倣い動作を行っている間に、制御装置10は、変位量が許容範囲内に収まり、かつ、ブレードBが窓Gの表面を略一定若しくは一定範囲の力(例えば、中心値±30%以内)で押し付けるように制御する。変位量が許容範囲内に収まらせるために、制御装置10は、許容範囲を超える変位が生じたか否かを周期的に判断する(ステップS64)。
【0098】
制御装置10が許容範囲を超える変位が生じたと判断した場合(NO)、制御装置10は、ロボットアーム20の移動速度を減速させるような制御命令を生成し、ロボットアーム20の駆動部に送出することにより減速させる(ステップS68)。
【0099】
図7は、倣い動作中に許容範囲を超えた場合の減速動作について説明するためのグラフである。この図は、横軸を時間とし、縦軸を直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動されるリンク20Lの角度とするグラフである。このグラフにおいて、対象となるリンク20Lは、時刻t11における角度α1を開始位置(又は第1の目標位置)とし、時刻t2における角度α2を第1の目標位置(又は第2の目標位置)とし、時間と共に角度が増加する角度変化となる経路P(計画軌跡)が設定されているとする。また、このリンク20Lの経路を基準とする許容範囲は、リンク20Lの角度を中心とする±β1である。更に、このグラフにおいて、実際の角度変化は、実線Aで示される。
【0100】
このグラフに示されるように、時刻t11において、リンク20Lの角度が経路Pを基準とする許容範囲外の角度になると、上述したように、制御装置10は、リンク20Lの回転速度及びブレードBの移動速度を減少させて、リンク20Lの角度が許容範囲内に収まるように制御する。一方で、時刻t11から時刻t2までの間、リンク20Lの角度が許容範囲内に収まっているため、制御装置10は、実線Aを経路Pに近づけるための制御を行わず、略一定の力でブレードBを窓Gに押し付けるように制御する。
【0101】
このような倣い動作を行うことにより、窓Gとロボットアーム20との相対的位置関係が変動しても、ブレードBを追従させることが可能になる。
【0102】
図8は、窓Gの表面の揺らぎ(窓Gの表面に垂直方向の変動)に対してブレードBが追従することを説明する模式的な断面図である。なお、ブレードBの一例として、図示されるように先端が細くなるブレードBを用いた場合を示している。
図8(A)は、ロボットアーム20と窓Gが共に静止しているときの窓Gとこれに接触するブレードBを示している。このとき窓Gの表面は、基準面PL1上に存在する。また、ブレードBの端部は、基準面P1上に位置している。
【0103】
図8(B)は、風雨等の影響により窓G又はロボットアーム20を運ぶゴンドラが揺れて、ロボットアーム20に対して窓Gが遠のいてしまった場合を示している。このとき、比較例におけるブレードCの端部は、基準面PL1上に位置するように制御されているため、窓Gの表面に接触することができない。従って、窓Gの表面を好適に清掃することができない。一方で、本実施形態に係るブレードBは、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアーム20を備えているから、窓Gの後退に追従して前進する。特に、制御装置10は、変位量が許容範囲内で、ブレードBが窓Gの表面を略一定の力で押し付けるように制御するから、窓Gの後退量に応じてブレードBが前進するようにロボットアーム20を制御することが可能となる。
【0104】
図8(C)は、ロボットアーム20に対して窓Gが近づいてしまった場合を示している。このとき、比較例におけるブレードCの端部は、基準面PL1上に位置するように制御されているため、窓Gと干渉する。ここで比較例におけるロボットアームが弾性を有さないリンクから構成されていると、ブレードCによって窓Gは破損してしまう可能性がある。また、比較例におけるロボットアームの手先に弾性体が挿入されている場合、窓Gの移動量に応じて、弾性体の圧縮量に基づく弾性力が発生するため、ブレードCが窓Gを押し付ける力を制御することができない。このため、窓Gを好適に清掃することが困難である。
【0105】
一方で、本実施形態に係るブレードBは、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアーム20を備えているから、窓Gの前進に追従して後退する。特に、制御装置10は、変位量が許容範囲内で、ブレードBが窓Gの表面を略一定の力で押し付けるように制御するから、窓Gの前進量に応じてブレードBが後退するようにロボットアーム20を制御することが可能となる。
【0106】
制御装置10は、ブレードBが第1目標位置に近づくと、窓枠FのエッジEの探索を開始する。具体的には、制御装置10は、一、又は、複数のリンク20L(例えば、先端のリンク20L)の加速度(又は角加速度)がゼロになったか否かをリンク20Lに設けられたセンサから取得する情報に基づいて判断し(ステップS65)、リンク20Lの加速度(又は角加速度)がゼロになった時(YES)に、ブレードBがエッジEに沿って当接していると判断することにより、エッジEを検出する(ステップS66)ように構成されている。
【0107】
図9は、窓枠Fが傾いたときのブレードBの動きを模式的に示す平面図である。但し、説明を簡明にするため、窓枠Fの傾斜を誇張している。この図に示されるように、窓枠Fが傾いた場合、まずブレードBの端部が窓枠Fに接触する。ここで
図6に示されるとおり第1目標位置は平面視において窓枠Fの外側に位置するため、ロボットアーム20は、ブレードBを更に窓枠Fの外側に向かって進行させようとする。ここで先端のリンク20Lは、柔軟性を有する駆動機構を備えているため、軸回りに回転することが可能である。従って、ロボットアーム20は、窓枠Fに接触するブレードBの端部を支点として、矢印AR8方向にブレードBを回転させ、その結果、ブレードBをエッジEに沿って当接させることが可能となる。このとき先端のリンク20Lを窓Gの表面に対してわずかに鋭角(例えば、60度以上90度未満)となるように傾けることによって、ブレードBを窓枠Fに押し付けることが可能となる。
【0108】
ブレードBがエッジEと略平行となるように、ブレードBがエッジEに沿って当接すると、ブレードBはそれ以上動けなくなるため、全てのロボットアーム20のリンク20Lの角加速度はゼロとなる。従って、制御装置10は、エッジEを検出し、第1目標位置に到達したと判断する。
【0109】
その後、ロボットアーム20は、ブレードBを第2目標位置に到達させるために、ステップS62~ステップS67を繰り返す。
【0110】
以後は、同様の動作を繰り返し、ブレードBを最後の目標位置に到達させることにより、窓Gの表面全体を清掃することが可能となる。
【0111】
以上述べたように、本実施形態に係る清掃方法よれば、窓のエッジまで清掃部材を届かせることが可能となるから、窓の隅々まで清掃することが可能となる清掃方法及び清掃装置を提供することが可能となる。
【0112】
なお、上述したように、ブレードBの経路は、窓Gの形状、大きさ、清掃すべき他の窓との位置関係等を考慮して多様に設定することが可能である。例えば、基準点OP及び接触点P1~P4の位置情報を取得する際に窓Gの清掃を兼ねてもよい。その場合、例えば、接触点P1(接触点P2)は、コーナーC1とコーナーC2の中心付近(コーナーC3とコーナーC4の中心付近)ではなく、コーナーC1又はコーナーC2に近接した位置(コーナーC3又はコーナーC4に近接した位置)となるようにしてもよい。
【0113】
又、許容範囲取得部10Eは、目標位置に関する許容範囲を示す情報を取得し、エッジEの探索に活用してもよい。例えば、ロボットアーム20の所定のリンク20Lの目標位置における角度が
図7に示されるようにα2であるとき、α2±β1をそのリンク20Lの目標位置についての許容範囲を示す情報として取得し、実際にそのリンク20Lの角度がα2±β1の範囲に存在することを、目標位置に到達したと判断する一つの条件として設定してもよい。同様に他の複数のリンク20Lについて、それぞれ目標位置についての許容範囲を示す情報を取得し、各リンク20Lがそれぞれ許容範囲内に到達したときに、ブレードBは、目標位置に到達したと判断し、次の目標位置に移動するように構成してもよい。
【0114】
更に、
図4に示されるように、清掃領域ARを枠F1よりも紙面上方に設定し、枠F2よりも紙面下方に設定したから、ブレードBの移動中に、ブレードBの紙面上端(下端)が枠F1(枠F2)を上方(下方)に押し付けるように清掃することも可能となる。具体的には基準位置が経路上に存在するときにブレードBの上端(下端)が枠F1(枠F2)と干渉するように経路を設定することにより、ブレードBは、枠F1(枠F2)をブレードBの進行方向と垂直かつ窓Gの表面と平行な方向に押し付けながら、かつ、窓Gの表面の法線方向に押し付けながら並進移動する。従って、枠F1(枠F2)のエッジE周辺を好適に清掃することが可能になる。更にブレードBの弾性を利用して窓GをブレードBの進行方向と平行かつ窓Gの表面と平行な方向に押し付けながら移動させてもよい。
【0115】
加えて、窓の表面上に、窓の開閉のためのロック機構等の障害物が設けられていても、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームに保持される清掃部材を窓枠のエッジに押し付けたのと同様に、ロック機構等の障害物のエッジに押し付けることにより、障害物の周辺も清掃することが可能となる。
【0116】
以上のとおりであるから、本実施形態に係る清掃方法を用いることによって、異なる大きさや形状の窓に対してもロボットアームを用いて容易に清掃をすることが可能となる。
【0117】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。他の実施形態と同様の構成又は機能については、同様の符号等を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0118】
第1実施形態においては、基準点OPの位置情報を取得するために清掃部材を窓Gの表面に接触させた。
【0119】
しかしながら本実施形態においては、基準点OPの位置情報を取得するために窓Gの表面に接触させることなく、窓Gの表面に向かって接近する清掃部材を窓Gの表面から離間した位置で停止させる。
【0120】
基準点取得部10Aは、窓Gの表面から離間した位置に存在する清掃部材の位置情報を基準点OPとして取得し、記憶部10Gに格納させる。
【0121】
ここで窓Gに近接した清掃部材と窓Gの表面との距離を、窓枠Fの高さ(窓Gの表面の法線方向における窓Gの表面からの高さ)より小さくすることによって、清掃部材を窓枠Fに向かって移動させたときに清掃部材を窓枠Fに接触させることが可能となる。
【0122】
従って接触点取得部10Bは、基準点OPから枠F2及び枠F4に平行な方向DR1にロボットアーム20に保持される清掃部材を移動させ枠F1の一部分(「第1部分」の一例)に到達(接触)させたときの清掃部材の位置情報を接触点P1の位置情報として取得することが可能となる。その他のプロセス及び構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0123】
以上述べたように、ロボットアーム20に保持される清掃部材を、窓Gの表面から離間した領域であって、かつ、窓枠Fの高さよりも窓Gの表面に近い領域内で移動させることにより、基準点OP及び接触点P1~P4の位置情報を取得することが可能となる。従って、基準点OP及び接触点P1~P4の位置情報を取得するために清掃部材を窓Gの表面に接触させる必要を無くすことが可能となる。
【0124】
[第3実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。他の実施形態と同様の構成又は機能については、同様の符号等を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0125】
第1実施形態においては、基準点OPの位置情報を取得し、これに基づいて窓枠Fの位置情報を取得した。
【0126】
しかしながら本実施形態においては、基準点OPの位置情報を取得することなく、窓枠Fの位置情報を取得する。
【0127】
具体的には、ロボットアーム20は清掃部材をエッジEに沿って移動させるステップを含んでよい。例えばロボットアーム20は清掃部材を枠F4のエッジEに当接させた状態で、エッジEに沿って移動させるステップを含んでよい。このとき、ロボットアーム20は清掃部材を枠F4のエッジEに当接させた状態で、エッジEに沿って方向DR1(
図3)に向かって移動させ、その後、反対の方向DR2に移動させてもよく、更に、この動作を繰り返し清掃部材の少なくとも一部をエッジEにこすりつけるような動作を実行させてもよい。制御装置10は、清掃部材をエッジEに沿って移動させたときの清掃部材又は基準位置の移動方向に従って、例えば枠F4のエッジEの延在方向を示す情報を取得することが可能となる。エッジEの延在方向は、枠F4の延在方向に等しい。従って、枠F4の延在方向に平行で接触点P3及び接触点P4を通過する2つの直線を示す情報を取得し、この直線に垂直であって接触点P1及び接触点P2を通過する2つの直線を示す情報を取得することにより同様にコーナーC1~C4の取得情報を取得することが可能となる。
【0128】
以上のような方法によれば、基準点OPを用いることなく窓枠Fの位置情報を取得することが可能となる。窓枠Fが傾いている場合であっても、精度良く窓枠Fの位置情報を取得することも可能となる。
【0129】
なお更なる変形例として、同一の枠の2つの部分に清掃部材を接触させることにより枠の延在方法を取得してもよい。例えば、枠F1の一部分に清掃部材を接触させたときの接触点P1に加えて、枠F1の他の一部分に清掃部材を接触させた時の接触点を取得し、この2つの接触点を接続する方向(枠F1及びそのエッジEの延在方向)に基づいて窓枠Fの位置情報を取得するように構成してもよい。
【0130】
また、簡便化を向上させるために、接触点の数を4点から1点、2点又は3点に減少させてもよい。このとき、他の情報(例えば、窓の大きさに関する情報)を利用することにより、窓枠Fの位置情報を取得するように構成してもよい。
【0131】
一方で、接触点の数を4点から5点以上に増加させてもよい。
【0132】
[第4実施形態]
第1実施形態乃至第3実施形態は、窓を対象物とし、窓枠を枠体とし、窓枠で囲まれる窓の表面を清掃する清掃方法に関するものである。
【0133】
しかしながら本発明は、枠体に囲繞される対象物の表面に処理を施す処理方法に適用可能である。本発明の処理方法を利用することにより対象物の表面の位置情報を取得することが可能となるため、対象物の表面に対して精度良く処理を施すことが可能となる。また、対象物の表面の大きさや形状が定まらない場合であっても全ての移動経路を事前に設定することなく処理を施すことが可能になる。
【0134】
即ち、第1実施形態等におけるブレードBを、対象物の表面に処理を施すための部材とすることにより、異なる大きさや形状の対象物に対しても全ての移動経路を事前に設定することなく、ロボットアームを用いて処理を施すことが可能となる。
【0135】
部材は、例えば、インクジェットヘッドである。インクジェットヘッドをロボットアーム20に保持させ、枠体に囲繞される対象物の表面に接近させるステップと、インクジェットヘッドを枠体の第1部分に到達させるステップとを経ることにより、枠体の位置情報(枠体で囲まれる対象物の表面の領域に相当)を取得することが可能となるから、その後、インクジェットを用いて対象物の表面にインクを塗布(「処理」の一例)することが可能となる。
【0136】
又、部材は、例えば、対象物の表面にカッティングシートを貼り付けるためのブレードである。ブレードをロボットアーム20に保持させ、枠体に囲繞される対象物の表面に接近させるステップと、ブレードを枠体の第1部分に到達させるステップとを経ることにより、枠体の位置情報(枠体で囲まれる対象物の表面の領域に相当)を取得することが可能となるから、その後、ブレードを用いて対象物の表面にカッティングシートを貼付(「処理」の一例)することが可能となる。
【0137】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、部材は、研磨装置として対象物の表面を研磨するために本発明を適用してもよい。その他、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0138】
10.制御装置
10A.基準点取得部
10B.接触点取得部
10C.窓枠位置取得部
10D.経路取得部
10E.許容範囲取得部
10F.制御命令取得部
10G.記憶部
20.ロボットアーム
20B.ベース
20D.直列弾性アクチュエータ
20DA.駆動部
20DE.弾性体
20DI.ディスプレイ
20J.ジョイント
20L.リンク
50.教示装置
100.ロボットシステム