(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177726
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】鋼管杭の連結構造、鋼管杭の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
E02D5/24 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084162
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】507225584
【氏名又は名称】ガイアパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中山 奉一
(72)【発明者】
【氏名】今枝 正良
(72)【発明者】
【氏名】平野 健一
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA19
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB13
(57)【要約】
【課題】上下に配置された鋼管杭を、スリーブを介して適正に連結できる鋼管杭の連結構造及び製造方法を提供する。
【解決手段】下側鋼管杭10には円筒状の第1継手部30が設けられ、上側鋼管杭20には円筒状の第2継手部40が設けられている。第1継手部30は、下側鋼管杭10の上端部のうち径方向外側の部分から、軸方向において第2継手部40側に向かって延びている。第2継手部40は、上側鋼管杭20の径方向外側の部分に設けられている。第1継手部30の端部には第1凸部32が形成されており、第2継手部40の端部には第2凹部43が形成されている。第1凸部32が第2凹部43に嵌め合わされた状態において、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とが離間し、かつ、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とが同心になっている。各継手部30,40に形成された各貫通孔34,44には、スリーブ50が嵌め合わされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された円筒状の鋼管杭(10,20)の端部同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方である第1鋼管杭(10)において、前記第1鋼管杭の径方向内外のいずれかの側に前記第1鋼管杭と同心となるように設けられた円筒状の第1継手部(30)と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方である第2鋼管杭(20)において、前記第2鋼管杭の径方向内外のうち前記第1継手部と同じ側に前記第2鋼管杭と同心となるように設けられた円筒状の第2継手部(40)と、
を備え、
前記第1継手部は、前記第1鋼管杭の軸方向端面(11)を越えて前記第2継手部側に向かって延びており、
前記第2継手部は、前記第2鋼管杭の軸方向端面(21)から軸方向において前記第1鋼管杭とは反対側に後退した位置に設けられており、
前記第1継手部の端部には、軸方向において前記第2継手部側に突出する凸部(32)が形成されており、
前記第2継手部の端部には、軸方向において前記第1継手部側とは反対側に凹むとともに、前記凸部に嵌め合わされる凹部(43)が形成されており、
前記第2鋼管杭のうち前記第2継手部よりも前記第1継手部側の部分が前記第1継手部に嵌め合わされるとともに、前記凸部が前記凹部に嵌め合わされた状態において、前記第1鋼管杭と前記第2鋼管杭とが離間し、かつ、前記第1鋼管杭と前記第2鋼管杭とが同心になっており、
前記凸部が前記凹部に嵌め合わされた状態において、前記第1継手部及び前記第2鋼管杭それぞれを径方向に貫通する貫通孔(34,44,45,36,46)が形成されており、
前記第1継手部と前記第2鋼管杭とを連結するために、前記第1継手部及び前記第2鋼管杭それぞれの前記貫通孔に跨るようにして前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブ(50)を備える、鋼管杭の連結構造。
【請求項2】
前記スリーブは、前記鋼管杭の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、前記鋼管杭の径方向を高さ方向とする錐台状をなしており、
前記貫通孔の開口面積は、前記鋼管杭の径方向内側にいくほど小さくなっており、
前記スリーブの各錐体面が前記貫通孔の内周面に密接している、請求項1に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項3】
前記第2鋼管杭に形成された前記貫通孔(45)の軸方向の長さ寸法が、前記スリーブのうち、前記第2鋼管杭に挿入される部分の軸方向の長さ寸法よりも大きくされている、請求項1に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項4】
前記スリーブは、横断面において、前記鋼管杭の周方向の長さ寸法が、前記鋼管杭の軸方向の長さ寸法よりも大きい横長スリーブである、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項5】
前記第1継手部は、前記第1鋼管杭の径方向内側に設けられており、
前記第2継手部は、前記第2鋼管杭の径方向内側に設けられており、
前記凸部が前記凹部に嵌め合わされた状態において、前記第1鋼管杭の端面(11)と前記第2鋼管杭の端面(21)との間に、前記第1継手部と前記第1鋼管杭との溶接部が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の鋼管杭の連結構造。
【請求項6】
円筒状の鋼管杭(10,20)の第1端側に、前記鋼管杭と同心となるように円筒状の第1継手部(30)を接合し、前記鋼管杭の第2端側に、前記鋼管杭と同心となるように円筒状の第2継手部(40)を接合する接合工程を備える鋼管杭の製造方法において、
前記第1継手部の端部には、軸方向において前記鋼管杭の第2端側から第1端側へと向かう方向に突出する凸部(32)が形成されており、
前記第2継手部の端部には、軸方向において前記鋼管杭の第2端側から第1端側に凹む凹部(43)が形成されており、
前記凹部の軸方向における凹み寸法は、前記凸部の軸方向における突出寸法と同じであり、
前記接合工程は、前記鋼管杭の第1端側の端面(11)から前記凸部の先端までの軸方向における距離(LA)が、前記鋼管杭の第2端側の端面(21)から前記凹部の基端までの軸方向における距離(LB)よりも大きくなるように、前記鋼管杭の径方向内外のいずれかの側に前記第1継手部及び前記第2継手部を接合する工程であり、
前記鋼管杭の第2端側及び前記第1継手部のそれぞれには、径方向に貫通し、かつ、スリーブ(50)が嵌め合わされる貫通孔(34,44,45,36,46)が形成されており、
上下に配置された前記鋼管杭のうち、一方の鋼管杭(20)の第2端側が、他方の鋼管杭(10)に設けられた前記第1継手部に嵌め合わされるとともに、前記一方の鋼管杭の前記凹部が前記他方の鋼管杭の前記凸部に嵌め合わされる場合、前記一方の鋼管杭の第2端側の前記貫通孔と、前記他方の鋼管杭に設けられた前記第1継手部の前記貫通孔とが同軸になっている、鋼管杭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の連結構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を軟弱地盤に築く場合において、構造物を支持するために杭基礎が用いられる。杭基礎では、円筒状の鋼管杭の先端部を軟弱地盤の下にある支持層まで到達させる必要がある。そこで、掘削刃が設けられた鋼管杭を回転させながら地盤に埋設し、埋設した鋼管杭の上端部に新たな鋼管杭の下端部を連結し、連結した鋼管杭を回転させながら埋設する工法が用いられている。
【0003】
先に埋設された鋼管杭と、その鋼管杭の上側に配置される鋼管杭とを連結するために、鋼管杭の埋設が実施される現場において、溶接を用いることなく、上下に配置された鋼管杭の端部同士を連結する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
この技術について説明すると、下側鋼管杭の上端部には円筒状のインサイドシリンダが接合され、上側鋼管杭の下端部には、インサイドシリンダに外側から嵌め合わされる円筒状のアウトサイドシリンダが接合されている。アウトサイドシリンダとインサイドシリンダとが嵌め合わせられた状態において、上側鋼管杭の下端面とインサイドシリンダの上端面とが当接する。インサイドシリンダ及びアウトサイドシリンダそれぞれには、この当接状態においてアウトサイドシリンダの外周面からインサイドシリンダの内周面まで貫通する貫通孔が形成されている。
【0005】
各シリンダの貫通孔には、円錐台形状のテーパロック部が嵌め合わされる。これにより、インサイドシリンダとアウトサイドシリンダとが連結される。連結された状態において上側鋼管杭を回転させると、上側鋼管杭に作用する回転トルクが下側鋼管杭に伝達され、下側鋼管杭も回転させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼管杭の製造段階における加工精度等に起因して、鋼管杭の軸方向端面の平面度が大きくなり得る。この場合、上側鋼管杭の下端面に当接するインサイドシリンダの貫通孔の中心軸線と、アウトサイドシリンダの貫通孔の中心軸線とがずれることがある。各貫通孔の中心軸線がずれると、貫通孔にテーパロック部を挿入しにくくなる懸念がある。この場合、テーパロック部を介した上,下側鋼管杭の連結が上手くいかなくなる懸念がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上下に配置された鋼管杭を適正に連結することができる鋼管杭の連結構造、及び鋼管杭の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上下に配置された円筒状の鋼管杭の端部同士を連結する鋼管杭の連結構造において、
上下に配置された前記鋼管杭のうち一方である第1鋼管杭において、前記第1鋼管杭の径方向内外のいずれかの側に前記第1鋼管杭と同心となるように設けられた円筒状の第1継手部と、
上下に配置された前記鋼管杭のうち他方である第2鋼管杭において、前記第2鋼管杭の径方向内外のうち前記第1継手部と同じ側に前記第2鋼管杭と同心となるように設けられた円筒状の第2継手部と、
を備え、
前記第1継手部は、前記第1鋼管杭の軸方向端面を越えて前記第2継手部側に向かって延びており、
前記第2継手部は、前記第2鋼管杭の軸方向端面から軸方向において前記第1鋼管杭とは反対側に後退した位置に設けられており、
前記第1継手部の端部には、軸方向において前記第2継手部側に突出する凸部が形成されており、
前記第2継手部の端部には、軸方向において前記第1継手部側とは反対側に凹むとともに、前記凸部に嵌め合わされる凹部が形成されており、
前記第2鋼管杭のうち前記第2継手部よりも前記第1継手部側の部分が前記第1継手部に嵌め合わされるとともに、前記凸部が前記凹部に嵌め合わされた状態において、前記第1鋼管杭と前記第2鋼管杭とが離間し、かつ、前記第1鋼管杭と前記第2鋼管杭とが同心になっており、
前記凸部が前記凹部に嵌め合わされた状態において、前記第1継手部及び前記第2鋼管杭それぞれを径方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記第1継手部と前記第2鋼管杭とを連結するために、前記第1継手部及び前記第2鋼管杭それぞれの前記貫通孔に跨るようにして前記貫通孔に嵌め合わされるスリーブを備える。
【0010】
本発明では、第2鋼管杭のうち第2継手部よりも第1継手部側の部分が、第1継手部の凸部を第2継手部の凹部に嵌め合わせるためのガイド部分となる。このガイド部分が第1継手部に嵌め合わされるとともに凸部が凹部に嵌め合わされた状態において、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが離間している。つまり、第1鋼管杭及び第2鋼管杭それぞれの軸方向端面同士が当接していない。このため、第1継手部の凸部と第2継手部の凹部との嵌め合いにより、鋼管杭の軸方向端面の平面度の影響を受けることなく、第1継手部に対する第2鋼管杭の軸方向における相対位置が定まる。これにより、第1継手部の貫通孔の中心軸線と、第2鋼管杭の貫通孔の中心軸線とのずれを抑制でき、貫通孔にスリーブが挿入しにくくなることを防止できる。その結果、スリーブを介した上,下側鋼管杭の連結を適正に行うことができる。
【0011】
また、本発明では、第1継手部の凸部が第2継手部の凹部に嵌め合わされる構成に加えて、スリーブにより第1継手部及び第2鋼管杭が強固に連結される。これにより、第1,第2継手部に加えて、スリーブにより、回転トルクを受け持つことができる。その結果、上下に配置された鋼管杭の連結部分が大きく変形したり破損したりすることを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】嵌め合わせられた鋼管杭の連結部分の正面図。
【
図3】嵌め合わせられた鋼管杭の連結部分の縦断面図(
図2の3-3線断面図)。
【
図4】嵌め合わせられる前における鋼管杭の連結部分の縦断面図。
【
図9】ナットカバーが上側鋼管杭の内周面に設けられるとともに、スリーブが貫通孔に嵌め合わせられた状態における
図3の9-9線断面図。
【
図12】その他の実施形態に係る嵌め合わせられた鋼管杭の連結部分の正面図。
【
図13】その他の実施形態に係る嵌め合わせられる前における鋼管杭の連結部分の縦断面図。
【
図14】その他の実施形態に係る嵌め合わせられた鋼管杭の連結部分の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る鋼管杭の連結構造を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。連結構造は、
図1に示すように、先に地盤に埋設される鋼管杭と、その鋼管杭の後に続けて埋設される鋼管杭とを連結するものである。以下では、上下に配置される対となる鋼管杭のうち、下側に配置されるものを下側鋼管杭10と称し、上側に配置されるものを上側鋼管杭20と称すこととする。上下方向に配置された複数の鋼管杭のうち、最も下側の鋼管杭の下端部には、掘削ビットDBと、拡翼DWとが設けられている。拡翼DWは、半円板状をなしており、鋼管杭の下端部に複数(2つを例示)設けられている。
【0014】
図2~
図4に示すように、下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20は、円筒状をなしている。下側鋼管杭10の外径寸法と上側鋼管杭20の外径寸法とは同じである。また、下側鋼管杭10の厚さ寸法と上側鋼管杭20の厚さ寸法とは同じである。
【0015】
下側鋼管杭10及び上側鋼管杭20の連結構造は、第1継手部30及び第2継手部40を備えている。第1継手部30は、各鋼管杭10,20の上端部に設けられており、第2継手部40は、各鋼管杭10,20の下端部に設けられている。なお、上下方向に配置された複数の鋼管杭のうち、最も下側の鋼管杭の下端部には、拡翼DW等が設けられているため、第2継手部40が設けられていない。
【0016】
第1継手部30は、鋼製の部材である。第1継手部30は、
図2~
図6に示すように、円筒状をなす円筒部31と、第1凸部32とを備えている。円筒部31の内径寸法は、下側鋼管杭10の外径寸法よりもやや大きい。下側鋼管杭10の上端部に円筒部31が外側から嵌め合わされた状態で、下側鋼管杭10の上端部が円筒部31の下端部に溶接により接合されている。これにより、第1継手部30は、下側鋼管杭10と同心となる。第1継手部30の厚さ寸法は、下側鋼管杭10の厚さ寸法よりも大きい。
【0017】
第1凸部32は、円筒部31のうち軸方向上端から上側に向かって延びている。第1凸部32は、第1継手部30の周方向に等間隔に並んで複数(2つを例示)形成されている。第1継手部30において、周方向に並ぶ第1凸部32の間が第1凹部33とされている。本実施形態では、
図6に示すように、第1凸部32の周方向における長さ寸法が、円筒部31の周方向における長さ寸法の1/4とされている。このため、第1凹部33の周方向における長さ寸法も、円筒部31の周方向における長さ寸法の1/4とされている。
【0018】
第2継手部40は、鋼製の部材である。第2継手部40の外径寸法と第1継手部30の外径寸法とは同じである。第2継手部40の厚さ寸法は、上側鋼管杭20の厚さ寸法よりも大きく、第1継手部30の厚さ寸法と同じである。第2継手部40は、
図2~
図4及び
図7,
図8に示すように、円環状をなす円環部41と、第2凸部42とを備えている。上側鋼管杭20のうち軸方向下端から上側に後退した位置に円環部41が外側から嵌め合わされた状態で、円環部41の上端部が上側鋼管杭20に溶接により接合されている。これにより、第2継手部40は、上側鋼管杭20と同心となる。
【0019】
第2凸部42は、円環部41のうち軸方向下端から下側に向かって延びている。第2凸部42は、第2継手部40の周方向に等間隔に並んで、第1凸部32と同数形成されている。第2継手部40において、周方向に並ぶ第2凸部42の間が第2凹部43とされている。第2継手部40の下端面に対する第2凹部43の軸方向における凹み寸法は、円筒部31の上端面に対する第1凸部32の軸方向における突出寸法と同じである。
【0020】
本実施形態では、
図8に示すように、第2凸部42の周方向における長さ寸法が、円環部41の周方向における長さ寸法の1/4とされている。このため、第2凹部43の周方向における長さ寸法も、円環部41の周方向における長さ寸法の1/4とされている。つまり、第2凸部42及び第2凹部43の周方向における長さ寸法は、第1凸部32及び第1凹部33の周方向における長さ寸法と同じである。
【0021】
図5及び
図6に示すように、第1凸部32の周方向における側面が第1傾斜側面32aとされている。第1傾斜側面32aは、
図6に示すように、第1継手部30の中心軸線Oを通って、かつ、中心軸線Oが延びる方向に平行な平面上にある。また、
図7及び
図8に示すように、第2凸部42の周方向における側面が第2傾斜側面42aとされている。第2傾斜側面42aは、
図8に示すように、第2継手部40の中心軸線Oを通って、かつ、中心軸線Oが延びる方向に平行な平面上にある。これにより、第1凸部32を第2凹部43に嵌め合わせる作業工程において、下側鋼管杭10に対する上側鋼管杭20の軸ずれを小さくできる。
【0022】
図1、
図3及び
図4を参照して、鋼管杭の製造工程のうち、鋼管杭に各継手部30,40を接合する工程について説明する。
図3及び
図4には、2本の鋼管杭10,20それぞれの端部が示されているが、1本の鋼管杭のうち、第1端側が図中下側に示す下側鋼管杭10の端部に相当し、第2端側が図中上側に示す上側鋼管杭20の端部に相当する。
【0023】
接合工程では、鋼管杭の第1端側に、鋼管杭と同心となるように第1継手部30を接合し、鋼管杭の第2端側に、鋼管杭と同心となるように第2継手部40を接合する。詳しくは、鋼管杭の第1端側の端面11から第1凸部32の先端までの軸方向における距離LAが、鋼管杭の第2端側の端面21から第2凹部43の基端までの軸方向における距離LBよりも大きくなるように、鋼管杭の径方向外側に第1継手部30及び第2継手部40を接合する。
【0024】
図3及び
図4に示すように、第1継手部30の内径寸法は、上側鋼管杭20の外径寸法よりもやや大きい。これにより、上側鋼管杭20に対する第1継手部30のすき間嵌めが可能となる。上側鋼管杭20のうち第2継手部40よりも下側の部分が、第1凸部32を第2凹部43に嵌め合わせるためのガイド部分となる。このガイド部分が第1継手部30の円筒部31に嵌め合わされるとともに、第1凸部32が第2凹部43に嵌め合わされる。これにより、第1凸部32の上端面が第2凹部43に密接するとともに、第1傾斜側面32aが第2傾斜側面42aに密接した状態となる。この状態において、下側鋼管杭10の上端面11が上側鋼管杭20の下端面21から離間している。
【0025】
第1継手部30の円筒部31には、外側貫通孔34が形成されている。外側貫通孔34は、第1継手部30の周方向に等間隔に並んで複数(4つを例示)形成されている。各外側貫通孔34は、同じ形状であり、第1継手部30の軸方向において同一位置に形成されている。
【0026】
上側鋼管杭20の下端部には、内側貫通孔44が形成されている。内側貫通孔44は、上側鋼管杭20の周方向に等間隔に並んで、外側貫通孔34の数と同数形成されている。各内側貫通孔44は、同じ形状であり、上側鋼管杭20の軸方向において同一位置に形成されている。各外側貫通孔34のいずれか1つと各内側貫通孔44のいずれか1つとが合わさるように、第1凸部32が第2凹部43に嵌め合わせられる。これにより、第1継手部30の外周面から上側鋼管杭20の内周面まで貫通する4つの貫通孔34,44が形成される。
【0027】
ちなみに、外側貫通孔34及び内側貫通孔44は、例えば、以下に説明する方法で形成されればよい。工場において、鋼管杭に接合する前の第1継手部30に対して加工機(例えば、ホールソー又はドリル)で孔開け加工することにより、第1継手部30に外側貫通孔34を形成する。そして、外側貫通孔34が形成された第1継手部30を鋼管杭に溶接により接合する。また、工場において、鋼管杭に第2継手部40を溶接により接合した後、第2継手部40が接合された鋼管杭に対して加工機で孔開け加工することにより、鋼管杭に内側貫通孔44を形成する。この際、例えば、鋼管杭に対する第2継手部40の位置を基準として、内側貫通孔44を形成すればよい。
【0028】
第1継手部30の第1凸部32と第2継手部40の第2凹部43との嵌め合いにより、各鋼管杭10,20の軸方向端面11,21の平面度の影響を受けることなく、第1継手部30に対する上側鋼管杭20の軸方向における相対位置が定まる。これにより、第1継手部30の外側貫通孔34の中心軸線と、上側鋼管杭20の内側貫通孔44の中心軸線とのずれを抑制でき、各貫通孔34,44の内周面が第1継手部30の外周面から上側鋼管杭20の内周面まで極力連続するようにできる。その結果、各貫通孔34,44に、後述するスリーブ50が挿入しにくくなることを防止できる。
【0029】
本実施形態において、各貫通孔34,44は、各鋼管杭10,20の周方向に長い長方形状をなしている。外側貫通孔34の中心軸線は第1継手部30の径方向に延びるとともに、外側貫通孔34は、径方向内側にいくほど開口面積が小さくなるように形成されている。また、内側貫通孔44の中心軸線は上側鋼管杭20の径方向に延びるとともに、内側貫通孔44は、径方向内側にいくほど開口面積が小さくなるように形成されている。
【0030】
図9及び
図10に示すように、連結構造は、スリーブ50を備えている。本実施形態において、スリーブ50は、鋼製の部材であり、貫通孔34,44に嵌め込まれる。スリーブ50は、各鋼管杭10,20の径方向内側にいくほど横断面の面積が小さくなるとともに、各鋼管杭10,20の径方向を高さ方向とする角錐台状をなしている。つまり、スリーブ50において、径方向内側の端面を先端面52とし、径方向外側の端面を後端面53とする場合、先端面52と後端面53とが4つの錐体面54でつながっている。先端面52は、径方向外側に凹む円弧面になっている。この円弧面の曲率と、上側鋼管杭20の内周面の曲率とは同じである。なお、後端面53は、径方向外側に凸となる円弧面になっている。この円弧面の曲率と、第1継手部30の外周面の曲率とは同じである。
【0031】
スリーブ50の横断面は、各鋼管杭10,20の周方向に長い長方形状をなしている。スリーブ50の横断面形状は、各貫通孔34,44と合同の形状である。このため、スリーブ50が貫通孔34,44に嵌め込まれると、スリーブ50の4つの錐体面54それぞれが貫通孔34,44の内周面に密接する。これにより、上側鋼管杭20に作用する回転トルクを下側鋼管杭10に的確に伝達できる。なお、スリーブ50の横断面において、短手方向の長さ寸法と長手方向の長さ寸法との比率は、例えば、1:1.2にしたり、1:1.5にしたりすることができる。また、錐体面54の周縁部等、スリーブ50の角部には、面取り(具体的には例えば、C面取り、R面取り又は糸面取り)が施されていてもよい。
【0032】
スリーブ50の中央部には、スリーブ50の横断面と直交する方向(つまり、各鋼管杭10,20の径方向)に貫通するボルト挿通孔51が形成されている。スリーブ50において、ボルト挿通孔51が延びる方向の長さ寸法は、第1継手部30及び上側鋼管杭20の合計厚さ寸法と略同じ寸法である。
【0033】
ボルト挿通孔51には、ボルト60が挿通されている。ボルト60は、軸部61及び頭部62を有している。軸部61の外周には、雄ねじが形成されている。ボルト60は、頭部62を各鋼管杭10,20の径方向外側に向けるとともに軸部61を径方向内側に向けた状態で、ボルト挿通孔51に挿通されている。頭部62は、スリーブ50の後端面53に当接している。なお、頭部62と後端面53との間にワッシャが介在していてもよい。また、後端面53には、ボルト60の頭部62が収容される凹部が形成されていてもよい。これにより、頭部62が第1継手部30の外周面から突出しなくなる。
【0034】
図6及び
図8に示すように、上側鋼管杭20の内周面のうち各内側貫通孔44に対応する位置にはナットカバー70が設けられている。ナットカバー70は、鋼製のものであり、ナット80を内包している。ナットカバー70は、軸部61にねじ込まれるナット80の位置決めとともに、ナット80の回転を規制する役割を果たす。
【0035】
ナットカバー70は、ベースプレート71を備えている。ベースプレート71の第1面は平坦面であり、ベースプレート71の第2面は、第1面から第2面へと向かう方向に凸となる円弧面になっている。この円弧面の曲率は、上側鋼管杭20の内周面の曲率と同じである。
【0036】
ベースプレート71は、矩形形状をなしており、具体的には上側鋼管杭20の周方向に長い長方形状をなしている。上側鋼管杭20の周方向におけるベースプレート71の長さ寸法は、上側鋼管杭20の周方向における内側貫通孔44の長さ寸法よりも大きい。内側貫通孔44の周方向においてベースプレート71が内側貫通孔44を跨いだ状態で、ベースプレート71の円弧面と上側鋼管杭20の内周面とが当接している。この当接状態において、ベースプレート71の長手方向における両端部それぞれが上側鋼管杭20の内周面に溶接により接合されている。これにより、上側鋼管杭20のうち内側貫通孔44の周辺部分の強度を高めている。
【0037】
なお、本実施形態では、上側鋼管杭20の軸方向におけるベースプレート71の長さ寸法は、上側鋼管杭20の軸方向における内側貫通孔44の長さ寸法よりも大きい。これにより、上側鋼管杭20のうち内側貫通孔44の周辺部分の強度をより高めている。
【0038】
ベースプレート71の中央部には、
図9に示すように、上側鋼管杭20の径方向に貫通するとともに、軸部61が挿通されるプレート孔71aが形成されている。プレート孔71aの中心軸線と、内側貫通孔44の中心軸線とは同じである。プレート孔71aの開口面積は、内側貫通孔44のうち径方向において最も内側の開口面積よりも小さい。このため、内側貫通孔44を上側鋼管杭20の径方向から見た場合、ベースプレート71のうちプレート孔71aが形成されていない部分により、内側貫通孔44が一部覆われている。なお、
図9には、ナットカバー70のうちベースプレート71のみ図示している。また、
図2~
図4及び
図8では、ナットカバー70の図示を省略している。
【0039】
図7に示すように、ナットカバー70は、支柱部72、板部73及び保持部74を備えている。本実施形態では、支柱部72、板部73及び保持部74が一体で構成されている。板部73は、板面をベースプレート71の平坦面に向けた状態で配置されている。板部73のうち、上側鋼管杭20の軸方向における両端部のそれぞれは、上側鋼管杭20の径方向外側に屈曲した支柱部72とされている。各支柱部72の先端部は、ベースプレート71の平坦面に溶接により接合されている。各支柱部72のうち、上側鋼管杭20の周方向における両端部のそれぞれは、上側鋼管杭20の軸方向に屈曲した保持部74とされている。ベースプレート71、支柱部72、板部73及び保持部74により囲まれる空間にナット80が収容されている。この空間は、ナット80よりもやや大きくされており、これによりナットカバー70とナット80との間に隙間ができるようになっている。この隙間により、軸部61をナット80の雌ネジにねじ込みやすくなっている。なお、板部73には、軸部61の干渉を防止する孔75が形成されている。また、
図9では、支柱部72等の図示を省略している。
【0040】
ナット80は、工場において、以下に説明する方法でナットカバー70に内包される。詳しくは、支柱部72をベースプレート71に溶接する前に、支柱部72、板部73及び保持部74により囲まれる空間にナット80を収容する。そして、支柱部72にベースプレート71を溶接する。これにより、ナット80がナットカバー70に内包される。
【0041】
ナット80が内包されたナットカバー70は、工場において鋼管杭の内周面に溶接により接合される。この溶接作業は、鋼管杭の軸方向端部の開口22(
図7参照)から例えばアーク溶接の溶接棒を差し入れることにより行われる。詳しくは、ベースプレート71の長手方向における両端部を鋼管杭の内周面に溶接接合する。この場合、ベースプレート71の短手方向における両端部のうち、上記開口22から遠い方の端部を溶接する場合と比較して、溶接作業を簡易に行うことができ、ひいては溶接作業の効率を高めることができる。
【0042】
ベースプレート71は、上側鋼管杭20の周方向に長い。このため、ベースプレート71の長手方向における端部からナット80までの距離を長くできる。その結果、ベースプレート71の端部を溶接する場合において、溶接によって発生した熱がナット80に及ぼす影響を抑制できる。これにより、ナット80の材料特性が変化することを防止できる。
【0043】
各継手部30,40が溶接接合された鋼管杭10,20は、鋼管杭を埋設する現場に運搬される。以下、
図11を用いて、埋設現場における下側鋼管杭10と上側鋼管杭20との連結方法について説明する。
【0044】
まず、
図11(A)に示すように、内側貫通孔44及び外側貫通孔34の位置が互いに合わせられた状態となるように、上側鋼管杭20を第1継手部30に嵌め合わせるとともに、第1凸部32を第2凹部43に嵌め合わせる。これにより、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とが同心となる。
【0045】
続いて、スリーブ50の先端面52がベースプレート71の円弧面に当接するまでスリーブ50を貫通孔34,44に挿入する。これにより、スリーブ50が貫通孔34,44に嵌め合わせられ、スリーブ50の各錐体面54が貫通孔34,44の内周面に密接する。スリーブ50の横断面の面積が径方向内側にいくほど小さくなっているため、スリーブ50を貫通孔34,44に挿入しやすい。
【0046】
続いて、
図11(B)に示すように、ボルト60の頭部62を各鋼管杭10,20の径方向外側に向けるとともに軸部61を径方向内側に向けた状態で、ボルト60をボルト挿通孔51に挿通し、プレート孔71aを介して軸部61の先端をナット80の雌ネジに挿入する。そして、ボルト60を時計回りに回転させて軸部61の雄ネジをナット80の雌ネジにねじ込む。この際、ナットカバー70により、ボルト60の回転に伴うナット80の供回りは発生しない。
【0047】
ボルト60を更に回転させて軸部61の雄ネジをナット80の雌ネジに更にねじ込む。これにより、
図11(C)に示すように、ボルト60の頭部62によりスリーブ50が径方向内側に押さえ付けられ、第1継手部30と上側鋼管杭20とが強固に固定される。その結果、上側鋼管杭20と下側鋼管杭10とが強固に固定される。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、各鋼管杭10,20の軸方向端面11,21の平面度の影響を受けることなく、第1継手部30に対する上側鋼管杭20の軸方向における相対位置が定まる。これにより、第1継手部30の外側貫通孔34と、上側鋼管杭20の内側貫通孔44とを同軸にでき、各貫通孔34,44にスリーブ50が挿入しにくくなることを防止できる。その結果、スリーブ50を介した上,下側鋼管杭10,20の連結を適正に行うことができる。
【0049】
下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とが離間しているため、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20との間の力の伝達は、主に第1継手部30及び第2継手部40を介して行われる。この場合、第1継手部30の第1凸部32と第2継手部40の第2凹部43とに荷重が集中し、第1凸部32や第2凹部43が大きく変形したり、破損したりする懸念がある。
【0050】
この点、本実施形態では、第1継手部30の外側貫通孔34及び上側鋼管杭20の内側貫通孔44それぞれの内周面にスリーブ50が密接している。このため、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20との間の力の伝達を、第1凸部32及び第2凹部43に加えて、スリーブ50により、回転トルク及び軸方向荷重を受け持つことができる。これにより、第1凸部32や第2凹部43が大きく変形したり、破損したりすることを防止できる。
【0051】
スリーブ50の横断面において、各鋼管杭10,20の周方向の長さ寸法が、各鋼管杭10,20の軸方向の長さ寸法よりも大きい。これにより、鋼管杭の埋設時において下側鋼管杭10に対して上側鋼管杭20が相対回転する場合、回転トルクが作用する方向におけるスリーブ50の長さ寸法を大きくでき、その外力に対するスリーブ50の強度を高めることができる。その結果、スリーブ50が大きく変形したり、スリーブ50が破損したりすることを防止することができる。
【0052】
スリーブ50の横断面が、各鋼管杭10,20の周方向に長い長方形状をなしている。これにより、例えばスリーブの横断面が周方向に長い楕円形状の場合と比較して、スリーブ50の横断面の面積を大きくすることができる。これにより、スリーブ50の強度をより高めることができる。
【0053】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0054】
・スリーブの横断面及び貫通孔の形状としては、長方形状に限らず、例えば、各鋼管杭10,20の周方向に長い楕円形状又はオーバル形状といった長円形状であってもよい。
【0055】
また、スリーブの横断面及び貫通孔の形状としては、各鋼管杭10,20の周方向に長い形状に限らず、例えば、正方形状又は真円形状であってもよい。横断面形状が真円形状のスリーブは、円錐台状をなすこととなる。
【0056】
・スリーブとしては、各鋼管杭10,20の径方向において横断面の面積が一定のものであってもよい。この場合、例えば、横断面が長方形状の場合、スリーブは直方体形状になる。また、この場合、内側貫通孔44の一部がベースプレート71により覆われていることにより、スリーブ50の挿入時において、ベースプレート71がスリーブの位置決めとなる。これにより、スリーブ50が挿入されすぎるのを防止できる。
【0057】
・スリーブ50にボルト挿通孔51が形成されていなくてもよい。この場合、ボルト60、ナットカバー70及びナット80は不要である。なお、この場合、例えばスリーブ50の錐体面54に接着剤を塗布して貫通孔34,44に挿入することにより、スリーブ50の錐体面54と貫通孔34,44の内周面との間に接着層が形成されていてもよい。これにより、スリーブ50が貫通孔34,44から外れにくくなり、下側鋼管杭10と上側鋼管杭20とを強固に連結できる。
【0058】
・周方向に並ぶ各スリーブ50の横断面形状が異なっていてもよい。例えば、周方向に並ぶ各スリーブ50のうち、一部であってかつ少なくとも1つのスリーブの横断面が、鋼管杭の周方向に長い形状(例えば長方形状)をなしていてもよい。この場合、例えば、長方形状及び正方形状のスリーブが周方向に交互に並んでいてもよい。
【0059】
・周方向に並んで形成された各貫通孔34,44が、軸方向に複数列形成されていてもよい。例えば、軸方向に2列形成されている場合において、1列目の貫通孔を第1貫通孔と称し、2列目の貫通孔を第2貫通孔と称すこととする。この場合、第2貫通孔は、各鋼管杭10,20の軸方向において第1貫通孔の位置から下側にずれた位置であって、各鋼管杭10,20の周方向において第1貫通孔の位置からずれた位置に形成されていてもよい。つまり、第1貫通孔及び第2貫通孔の配列が、いわゆる千鳥配列になっていてもよい。
【0060】
・工場において、各鋼管杭及び各継手部の温度が基準温度となる状況下において、第1継手部30の外側貫通孔34と、上側鋼管杭20の内側貫通孔44とが同軸になるように各貫通孔34,44が形成されたとしても、以下に説明する理由により、不都合が発生し得る。
図3を参照して説明すると、上側鋼管杭20の温度変化に伴い、上側鋼管杭20のうち円環部41よりも下側の部分の軸方向長さが変化し得る。例えば、上側鋼管杭20の温度上昇に起因して、上側鋼管杭20が軸方向に膨張し、外側貫通孔34の上側が上側鋼管杭20に塞がれる懸念がある。一方、上側鋼管杭20の温度下降に起因して、上側鋼管杭20が軸方向に収縮し、外側貫通孔34の下側が上側鋼管杭20に塞がれる懸念がある。外側貫通孔34が上側鋼管杭20に塞がれると、スリーブ50を挿入しにくくなる。
【0061】
そこで、
図12に示すように、上側鋼管杭20において内側貫通孔45の軸方向の長さ寸法が、スリーブ50のうち内側貫通孔45に挿入される部分の軸方向の長さ寸法よりも大きくされてもよい。なお、
図12では、スリーブ50のボルト挿通孔51、ボルト60及びベースプレート71等の図示を省略している。
【0062】
図12に示す構成によれば、上側鋼管杭20の温度変化に起因して外側貫通孔34の一部が塞がれることを防止し、スリーブ50を貫通孔34,45に挿入しにくくなることを防止できる。なお、この場合、スリーブ50のうち上側鋼管杭20の周方向における各錐体面54は、内側貫通孔45の内周面に密接している。このため、軸方向の荷重を各継手部30,40で受け持ちつつ、上側鋼管杭20からスリーブ50及び第1継手部30を介して下側鋼管杭10に回転トルクを伝達できる。
【0063】
・ベースプレート71の両面が平坦面であってもよい。この場合、スリーブ50の先端面52が平坦面になっていればよい。
【0064】
・第1継手部30が鋼管杭の下端部に設けられ、第2継手部40が鋼管杭の上端部に設けられていてもよい。
【0065】
・第1継手部及び第2継手部が鋼管杭の外周面ではなく内周面に設けられていてもよい。以下、
図13を用いて、
図4等に示した連結構造との相違点を中心に説明する。なお、
図13において、
図4等に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付してあるものもある。
【0066】
第1継手部30を構成する円筒部31の外径寸法は、下側鋼管杭10の内径寸法よりもやや小さい。下側鋼管杭10の上端部に円筒部31が内側から嵌め合わされた状態で、下側鋼管杭10の上端部における内周面に円筒部31の下端部が溶接により接合されている。一方、上側鋼管杭20のうち軸方向下端から上側に後退した位置に円環部41が内側から嵌め合わされた状態で、上側鋼管杭20の内周面に円環部41の上端部が溶接により接合されている。
【0067】
第1継手部30の外径寸法は、上側鋼管杭20の内径寸法よりもやや小さい。これにより、上側鋼管杭20に対する第1継手部30のすき間嵌めが可能となる。上側鋼管杭20のうち第2継手部40よりも下側の部分が、第1凸部32を第2凹部43に嵌め合わせるためのガイド部分となる。このガイド部分が第1継手部30の円筒部31に嵌め合わされるとともに、第1凸部32が第2凹部43に嵌め合わされる。この状態において、下側鋼管杭10の上端面11が上側鋼管杭20の下端面21から離間している。
【0068】
第1継手部30の円筒部31には、第1継手部30の周方向に等間隔に並んで複数の内側貫通孔36が形成されている。上側鋼管杭20の下端部には、上側鋼管杭20の周方向に等間隔に並んで、内側貫通孔36の数と同数の外側貫通孔46が形成されている。各内側貫通孔36のいずれか1つと各外側貫通孔46のいずれか1つとが合わさるように、第1凸部32が第2凹部43に嵌め合わせられる。これにより、上側鋼管杭20の外周面から第1継手部30の内周面まで貫通する貫通孔36,46が形成される。各貫通孔36,46の内周面は、上側鋼管杭20の外周面から第1継手部30の内周面まで連続している。各貫通孔36,46には、スリーブ50が嵌め込まれる。
【0069】
なお、
図14に示すように、上側鋼管杭20のうち第2継手部40よりも下側の部分を円筒部31に嵌め合わせるとともに、第1凸部32を第2凹部43に嵌め合わせる工程の実施後、第1継手部30の下端部における外周面と下側鋼管杭10の上端面11とを溶接により接合する工程を実施してもよい。この場合、下側鋼管杭10の上端面11と上側鋼管杭20の下端面21との間の隙間に溶接部が設けることとなる。これにより、溶接部が各鋼管杭10,20の外周面からはみ出さないようにしつつ、
図13に示すように第1継手部30を下側鋼管杭10の内周面に溶接する場合よりも、溶接作業を簡易に行うことができる。ちなみに、下側鋼管杭10の上端面11を、第1継手部30の下端部における外周面に加え、上側鋼管杭20の下端面21に溶接してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…下側鋼管杭(第1鋼管杭)、20…上側鋼管杭(第2鋼管杭)、30…第1継手部、40…第2継手部、50…スリーブ。