(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177741
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】移動体及び移動体の経路決定方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221124BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221124BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20221124BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G08G1/16 C
B60W30/10
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084192
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴信
(72)【発明者】
【氏名】脇田 敏裕
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA15
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181AA27
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC19
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301LL01
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】柔軟性が高くスムースに移動体が走行できる経路を得ることができる。
【解決手段】 現在位置から目標位置に向かって走行する移動体であって、予め設定された第一設定時間内に移動体が現在位置から走行可能な第一区間候補を複数探索する第一区間候補探索部と、予め設定された第二設定時間内に移動体が第一区間候補の終点から走行可能な第二区間候補を第一区間候補の終点ごとに複数探索する第二区間候補探索部と、目標位置の存在する方向である目標方向を認識する目標方向認識部と、移動体の周囲の障害物の位置を検出する障害物位置認識部と、目標方向及び障害物の位置に基づいて、複数の第一区間候補及び複数の第二区間候補の中から移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定する経路決定部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置から目標位置に向かって走行する移動体であって、
予め設定された第一設定時間内に前記移動体が前記現在位置から走行可能な第一区間候補を複数探索する第一区間候補探索部と、
予め設定された第二設定時間内に前記移動体が前記第一区間候補の終点から走行可能な第二区間候補を前記第一区間候補の終点ごとに複数探索する第二区間候補探索部と、
前記目標位置の存在する方向である目標方向を認識する目標方向認識部と、
前記移動体の周囲の障害物の位置を検出する障害物位置認識部と、
前記目標方向及び前記障害物の位置に基づいて、前記複数の第一区間候補及び前記複数の第二区間候補の中から前記移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定する経路決定部と、
を備える移動体。
【請求項2】
前記現在位置における前記移動体の並進速度を認識する走行状態認識部を更に備え、
前記経路決定部は、前記現在位置における前記移動体の並進速度と前記複数の第一区間候補における前記移動体の並進速度である第一並進速度との差分が第一並進速度閾値未満となるように前記第一区間を決定する、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記現在位置における前記移動体の回転速度を認識する走行状態認識部を更に備え、
前記経路決定部は、前記現在位置における前記移動体の回転速度と前記複数の第一区間候補における前記移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第一回転速度変化閾値未満となるように前記第一区間を決定する、請求項1に記載の移動体。
【請求項4】
前記経路決定部は、決定した前記第一区間の終点を起点とする前記複数の第二区間候補における前記移動体の並進速度である第二並進速度と前記第一区間における前記移動体の速度である第一並進速度との差分が第二並進速度閾値未満となるように前記第二区間を決定する、請求項1又は2に記載の移動体。
【請求項5】
前記経路決定部は、決定した前記第一区間の終点を起点とする前記複数の第二区間候補における前記移動体の回転速度である第二回転速度と前記第一区間における前記移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第二回転速度変化閾値未満となるように前記第二区間を決定する、請求項1又は3に記載の移動体。
【請求項6】
現在位置から目標位置に向かって走行する移動体の経路決定方法であって、
予め設定された第一設定時間内に前記移動体が前記現在位置から走行可能な第一区間候補を複数探索する第一区間候補探索ステップと、
予め設定された第二設定時間内に前記移動体が前記第一区間候補の終点から走行可能な第二区間候補を前記第一区間候補の終点ごとに複数探索する第二区間候補探索ステップと、
前記目標位置の存在する方向である目標方向を認識する目標方向認識ステップと、
前記移動体の周囲の障害物の位置を検出する障害物位置認識ステップと、
前記目標方向及び前記障害物の位置に基づいて、前記複数の第一区間候補及び前記複数の第二区間候補の中から前記移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定する経路決定ステップと、
を含む移動体の経路決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体及び移動体の経路決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の経路決定に関する技術文献として、特開2012-243029号公報が知られている。この公報には、現在位置から最終目標地に至るための大域経路を生成する移動体において、前方に障害物を検出した場合に障害物を回避して大域経路に復帰する局地経路の候補を複数生成することが示されている。移動体は、複数生成した局地経路の候補のそれぞれについて、最終目標地となす角度、移動可能速度、障害物までの距離から評価値を計算し、評価値が最大となる候補を障害物回避のための局地経路として採用する。また、この公報には経路候補の生成にDWA[Dynamic Window Approach]を用いることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Fox, D.Burgard, W. Thrun, S. “The dynamic windows approach to collision avoidance.IEEE Robotics and automation magazine 4(1) (1997)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の移動体では、比較的単純な経路生成しか行うことができず、隘路進入などの場合にスムースに移動できる経路を得ることができないと言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、現在位置から目標位置に向かって走行する移動体であって、予め設定された第一設定時間内に移動体が現在位置から走行可能な第一区間候補を複数探索する第一区間候補探索部と、予め設定された第二設定時間内に移動体が第一区間候補の終点から走行可能な第二区間候補を第一区間候補の終点ごとに複数探索する第二区間候補探索部と、目標位置の存在する方向である目標方向を認識する目標方向認識部と、移動体の周囲の障害物の位置を検出する障害物位置認識部と、目標方向及び障害物の位置に基づいて、複数の第一区間候補及び複数の第二区間候補の中から移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定する経路決定部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る移動体によれば、第一区間候補と第二区間候補を少なくとも含む複数段階の経路探索を行い、移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定することで、一段階の経路探索しか行わない従来の技術と比べて、柔軟性が高くスムースに移動体が走行できる経路を得ることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る移動体において、現在位置における移動体の並進速度を認識する走行状態認識部を更に備え、経路決定部は、現在位置における移動体の並進速度と複数の第一区間候補における移動体の並進速度である第一並進速度との差分が第一並進速度閾値未満となるように第一区間を決定してもよい。
この移動体によれば、現在位置における移動体の並進速度と複数の第一区間候補における移動体の並進速度である第一並進速度との差分が第一並進速度閾値未満となるように第一区間を決定するので、並進速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第一区間を選択することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る移動体において、現在位置における移動体の回転速度を認識する走行状態認識部を更に備え、経路決定部は、現在位置における移動体の回転速度と複数の第一区間候補における移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第一回転速度変化閾値未満となるように第一区間を決定してもよい。
この移動体によれば、現在位置における移動体の回転速度と複数の第一区間候補における移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第一回転速度変化閾値未満となるように第一区間を決定するので、回転速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第一区間を選択することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る移動体において、経路決定部は、決定した第一区間の終点を起点とする複数の第二区間候補における移動体の並進速度である第二並進速度と第一区間における移動体の並進速度である第一並進速度との差分が第二並進速度閾値未満となるように第二区間を決定してもよい。
この移動体によれば、決定した第一区間の終点を起点とする複数の第二区間候補における移動体の並進速度である第二並進速度と第一区間における移動体の並進速度である第一並進速度との差分が第二並進速度閾値未満となるように第二区間を決定するので、第一区間及び第二区間の並進速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第二区間を選択することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る移動体において、経路決定部は、決定した第一区間の終点を起点とする複数の第二区間候補における移動体の回転速度である第二回転速度と第一区間における移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第二回転速度変化閾値未満となるように第二区間を決定してもよい。
この移動体によれば、決定した第一区間の終点を起点とする複数の第二区間候補における移動体の回転速度である第二回転速度と第一区間における移動体の回転速度である第一回転速度との差分が第二回転速度変化閾値未満となるように第二区間を決定するので、第一区間及び第二区間の回転速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第二区間を選択することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、現在位置から目標位置に向かって走行する移動体の経路決定方法であって、予め設定された第一設定時間内に予め設定された第一速度条件で移動体が現在位置から走行可能な第一区間候補を複数探索する第一区間候補探索ステップと、予め設定された第二設定時間内に予め設定された第二速度条件で移動体が第一区間候補の終点から走行可能な第二区間候補を第一区間候補の終点ごとに複数探索する第二区間候補探索ステップと、目標位置の存在する方向である目標方向を認識する目標方向認識ステップと、移動体の周囲の障害物の位置を検出する障害物位置認識ステップと、目標方向及び障害物の位置に基づいて、複数の第一区間候補及び複数の第二区間候補の中から移動体が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定する経路決定ステップと、を含む。
【0013】
本発明の他の態様に係る移動体の経路決定方法によれば、第一区間候補と第二区間候補を少なくとも含む複数段階の経路探索を行い、経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定することで、一段階の経路探索しか行わない従来の技術と比べて、柔軟性が高くスムースに移動体が走行できる経路を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様及び他の態様によれば、一段階の経路探索しか行わない従来の技術と比べて、柔軟性が高くスムースに移動体が走行できる経路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る移動体を示すブロック図である。
【
図2】(a)複数の第一区間候補の探索結果の一例を示す図である。(b)複数の第一区間候補から延びる第二区間候補(1候補のみ)の探索結果の一例を示す図である。(c)複数の第一区間候補から延びる複数の第二区間候補の探索結果の一例を示す図である。
【
図3】目標方向の有効距離を説明するための図である。
【
図4】(a)経路決定の一例を示す図である。(b)経路決定の他の例を示す図である。
【
図5】移動体の経路決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)第一並進速度評価処理の一例を示すフローチャートである。(b)第一回転速度評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】(a)第二並進速度評価処理の一例を示すフローチャートである。(b)第二回転速度評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】(a)従来の技術により探索された経路の一例を示す図である。(b)本実施形態に係る移動体による経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る移動体を示すブロック図である。
図1に示す移動体1は、自動車、パーソナルモビリティ、ロボットなど現在位置から目標位置に向かって地上を走行する移動物体である。移動体1は、自律走行する車両(自動運転車両)、自律走行するパーソナルモビリティ、又は自律走行ロボットであってもよい。
【0018】
[移動体の構成]
本実施形態に係る移動体1の構成について図面を参照して説明する。
図1に示すように、移動体1は、移動体1を制御する制御装置10を備えている。
【0019】
制御装置10は、CPU[Central Processing Unit]及び記憶部を有する電子制御ユニットである。制御装置10は、一般的なコンピュータとして構成されてもよい。記憶部は、ROM[Read Only Memory]及び/又はRAM[Random Access Memory]であってもよく、RAID(RedundantArrays of Inexpensive Disks)構成とされたHDD[Hard Disk Drive]やSSD[Solid State Drive]などの記憶媒体であってもよい。制御装置10は、外部と通信するためのネットワークカードなどの通信デバイスを備えていてもよい。制御装置10は、ユーザと情報をやり取りするための入出力デバイスを備えていてもよい。
【0020】
制御装置10には、GNSS[Global Navigation Satellite System]受信部2、レーダセンサ3、カメラ4、速度センサ5、加速度センサ6、回転速度センサ7、及び移動体駆動部8が接続されている。
【0021】
GNSS受信部2は、移動体1に設けられ、四個以上のGNSS衛星から信号を受信することにより移動体1の位置(例えば移動体1の緯度及び経度)を測定する。GNSS受信部2は、測定した移動体1の位置情報を制御装置10へ送信する。また、移動体1は、必ずしもGNSS受信部2を有する必要はない。
【0022】
レーダセンサ3は、移動体1に設けられ、電磁波を用いて移動体1の周囲の障害物を検出する検出機器である。レーダセンサ3は、ミリ波レーダであってもよく、LiDAR[Light Detection and Ranging]であってもよい。レーダセンサ3は、移動体1の周囲の障害物の検出結果を制御装置10に送信する。
【0023】
カメラ4は、移動体1に設けられ、移動体1の周囲を撮像する撮像機器である。カメラ4は、移動体1の周囲の撮像画像を制御装置10に送信する。カメラは、単眼カメラであってもよく、距離情報を取得できるステレオカメラやTOF[Time of Flight]カメラであってもよい。なお、移動体1は、レーダセンサ3とカメラ4のうち少なくとも一方を備えていればよい。
【0024】
速度センサ5は、移動体1の並進速度を検出する検出機器である。移動体1の並進速度とは、移動体1の位置変化の速度である。速度センサ5は、例えば移動体1の車輪速から並進速度を検出する。なお、移動体1は車輪移動に限られない。移動体1は、例えば二足歩行や四足歩行であってもよい。速度センサ5は、移動体1の並進速度の検出結果を制御装置10に送信する。
【0025】
加速度センサ6は、移動体1の加速度を検出する検出機器である。加速度センサ6は、移動体1の前後方向の加速度と横方向の加速度を区別して検出してもよい。加速度センサ6は、移動体1の加速度の検出結果を制御装置10に送信する。なお、移動体1は必ずしも加速度センサ6を備える必要はない。
【0026】
回転速度センサ7は、移動体1の回転速度を検出する検出機器である。回転速度センサ7は、移動体1の回転速度の検出結果を制御装置10に送信する。なお、移動体1の回転速度に代えてヨーレート(回転角速度)を送信するヨーレートセンサを用いてもよい。
【0027】
移動体駆動部8は、移動体1を走行させるための駆動機器である。移動体駆動部8は、例えば移動体1の車輪を駆動させる各種のアクチュエータを含んで構成される。移動体駆動部8の構成は特に限定されず、移動体1の種類に応じた構成が採用される。
【0028】
移動体駆動部8は、移動体1が車両である場合、エンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを含んでもよい。エンジンアクチュエータは、制御装置10からの制御信号に応じて車両のエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両の駆動力を制御する。なお、車両がハイブリッド車である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータに制御装置10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。車両が電気自動車である場合には、動力源としてのモータに制御装置10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。
【0029】
ブレーキアクチュエータは、制御装置10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、制御装置10からの制御信号に応じて車両の電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を制御する。これにより、操舵アクチュエータは車両の操舵トルクを制御する。
【0030】
次に、制御装置10の機能的構成について説明する。
図1に示すように、制御装置10は、走行状態認識部11、目標方向認識部12、第一区間候補探索部13、第二区間候補探索部14、障害物位置認識部15、経路決定部16、及び移動体制御部17を有している。なお、以下に説明する制御装置10の機能の一部は、移動体1と通信可能なサーバにおいて演算される態様であってもよい。
【0031】
走行状態認識部11は、移動体1の走行状態を認識する。走行状態には、移動体1の並進速度と回転速度が含まれる。走行状態には、移動体1の加速度が含まれてもよく、ヨーレートが含まれてもよい。走行状態認識部11は、例えば速度センサ5、加速度センサ6、及び回転速度センサ7の検出結果に基づいて移動体1の走行状態を認識する。
【0032】
目標方向認識部12は、移動体1の現在位置と予め設定された目標位置とに基づいて、移動体1の目標方向を認識する。目標位置とは、移動体1の到達目標として予め設定された位置である。目標位置は、例えば移動体1の現在位置を含む平面座標に目標座標値を入力することで設定される。目標位置は、移動体1のユーザ(乗員や管理者など)が設定してもよく、移動体1が予め決められた条件に沿って自律的に設定してもよい。目標位置の設定方法は特に限定されない。
【0033】
目標方向とは、移動体1の現在位置を基準としたときの目標位置の存在する方向である。目標方向は、現在位置と目標位置とを結ぶ直線の延在方向に相当する。目標方向認識部12は、一例として、移動体1の現在位置を基準とする平面座標上における目標位置(目標座標値)から目標方向を認識する。
【0034】
なお、目標方向認識部12は、地図情報を用いて目標方向を認識してもよい。目標方向認識部12は、GNSS受信部2による移動体1の位置情報から地図上における移動体1の現在位置を認識する。目標方向認識部12は、デッドレコニングやSLAM[Simultaneous Localization and Mapping]の技術を用いて地図上における移動体1の現在位置を認識してもよい。目標方向認識部12は、地図上における移動体1の現在位置と地図上に設定された目標位置とに基づいて、目標方向を認識することができる。
【0035】
その他、目標方向認識部12は、目標位置に置かれた磁気マーカーと移動体1に備えられた磁気マーカー受信機とによって、目標方向を認識してもよい。
【0036】
第一区間候補探索部13は、移動体1の現在位置を起点として、第一区間の候補である第一区間候補を複数探索する。第一区間とは、移動体1の走行する経路を構成する区間である。第一区間候補は、第一区間の候補である。第一区間候補は、予め設定された第一設定時間内に移動体1が現在位置から走行可能な区間として探索される。第一設定時間は、1秒であってもよく、3秒であってもよく、5秒であってもよく、10秒であってもよく、15秒であってもよく、1分であってもよい。第一設定時間は、移動体1の制御装置10における制御周期に対応する時間であってもよい。第一設定時間は、任意の時間を設定することができる。
【0037】
第一区間候補探索部13は、DWA[Dynamic Window Approach]として、第一設定時間内に移動体1が現在位置から走行可能な第一区間候補を探索する。DWAについては、“Fox, D. Burgard, W. Thrun, S.:The dynamicwindows approach to collision avoidance. IEEE Robotics and automation magazine4(1) (1997)”に記載がある。評価関数などについては後述する。
【0038】
第一区間候補探索部13は、例えば、予め設定された第一速度条件に基づいて、第一区間候補の探索を行う。第一速度条件は、一例として、ユーザが予め設定した並進速度と回転速度の組み合わせである。第一速度条件は、例えば、曲率が大きいため回転速度が一定値以上になると並進速度が低くなるように設定されてもよい。第一速度条件は、移動体1の走行性能に応じて設定することができる。第一区間候補探索部13は、並進速度及び/又は回転速度が異なっていれば、重なるように複数の第一区間候補を探索してもよい。
【0039】
第一区間候補探索部13は、移動体1が周囲に物体の存在しない平面を走行すると仮定して、第一区間候補を複数探索する。また、第一区間候補探索部13は、例えば角度条件(例えばsinやcosによる条件)を付与することで、複数の第一区間候補が適切に離れるように探索を行ってもよい。
【0040】
図2(a)は、複数の第一区間候補の探索結果の一例を示す図である。
図2(a)に、第一区間候補PA、第一区間候補PAの起点Sa(移動体1の現在位置)、第一区間候補PAの終点(到達点)Eaを示す。
図2(a)ではXY平面座標系を用い、起点Saが(X,Y):(0,0)に対応する。
図2(a)に示すように、第一区間候補探索部13は、移動体1の現在位置を起点Saとして移動体1の前方に広がる複数の第一区間候補PAを探索する。
【0041】
なお、
図2(a)では移動体1を前方にのみ移動可能として複数の第一区間候補PAを示しているが、移動体1は前方以外の方向に移動可能であってもよい。例えば移動体1が後方に移動可能である場合には、起点Saを中心としてX軸方向に反転した複数の第一区間候補PA(Y軸のマイナス方向に広がる複数の第一区間候補PA)を追加で探索することができる。移動体1が360°任意の方向に移動可能である場合には、起点Saを中心とした360°の方向で
図2(a)と同様に広がる複数の第一区間候補PAを追加で探索してもよい。第一区間候補PAの探索数には上限が設定されていてもよい。
【0042】
第二区間候補探索部14は、複数の第一区間候補PAの終点Eaをそれぞれ起点として、第二区間の候補である第二区間候補を複数探索する。第二区間とは、第一区間に続いて移動体1の走行する経路を構成する区間である。第二区間候補は、予め設定された第二設定時間内に移動体1が第一区間候補PAの終点Eaから走行可能な区間として探索される。
【0043】
第二設定時間は、1秒であってもよく、3秒であってもよく、5秒であってもよく、10秒であってもよく、15秒であってもよく、1分であってもよい。第二設定時間は、移動体1の制御装置10における制御周期に対応する時間であってもよい。第二設定時間は、第一設定時間と同じ時間であってもよく、異なる時間であってもよい。第二設定時間は、第一設定時間より長い時間であってもよい。第二設定時間は、任意の時間を設定することができる。
【0044】
第二区間候補探索部14は、DWAとして第二設定時間内に移動体1が第一区間候補PAの終点Eaから走行可能な第二区間候補を探索する。第二区間候補探索部14は、例えば、予め設定された第二速度条件に基づいて第二区間候補の探索を行う。第二速度条件は、一例として、ユーザが予め設定した並進速度と回転速度の組み合わせである。第二速度条件は、第一速度条件と同じであってもよく、異なっていてもよい。第二区間候補探索部14は、並進速度及び/又は回転速度が異なっていれば、重なるように複数の第二区間候補を探索してもよい。
【0045】
第二区間候補探索部14も、移動体1が周囲に物体の存在しない平面を走行すると仮定して、第二区間候補を複数探索する。また、第二区間候補探索部14も、例えば角度条件(例えばsinやcosによる条件)を付与することで、複数の第二区間候補が適切に離れるように探索を行ってもよい。
【0046】
図2(b)は、第一区間候補(1候補のみ)から延びる複数の第二区間候補の探索結果の一例を示す図である。ここでは、説明を分かりやすくするため、第一区間候補を1候補のみ示している。
図2(b)に、第二区間候補PB、第二区間候補PBの起点Sb(第一区間候補PAの終点Eaと同じ)、第二区間候補PBの終点(到達点)Ebを示す。
【0047】
図2(b)では、
図2(a)に示す第一区間候補PAを延長するように複数の第二区間候補PBが探索された場合を示している。第二区間候補探索部14は、第二区間候補PBの起点Sbにおける移動体1の向きの変更を許容して第二区間候補PBの探索を行ってもよい。
【0048】
図2(c)は、複数の第一区間候補から延びる複数の第二区間候補の探索結果の一例を示す図である。
図2(c)では図を見やすくするため符号を省略する。第二区間候補探索部14は、例えば
図2(c)に示すように、移動体1が第一区間候補PAの終点Eaから走行可能な第二区間候補PBを複数探索する。
【0049】
なお、移動体1が後方に移動可能である場合には、起点Saを中心としてX軸方向に反転した複数の第一区間候補PA及び第二区間候補PBを追加で探索することができる。同様に、移動体1が360°任意の方向に移動可能である場合には、起点Saを中心とした360°の方向で
図2(c)と同様に広がる複数の第一区間候補PA及び第二区間候補PBを追加で探索してもよい。第二区間候補PBの探索数には上限が設定されていてもよい。
【0050】
障害物位置認識部15は、レーダセンサ3の障害物の検出結果及び/又はカメラ4の撮像画像に基づいて、移動体1の周囲の障害物の位置を認識する。障害物とは、移動体1の移動の障害となるものである。障害物には、壁などの構造物、ポールなどの設置物、歩行者や他の移動体などが含まれる。障害物位置認識部15は、外部サーバ(例えば移動体1が走行中の施設のサーバや交通情報サーバ)からの通信により障害物の位置を認識してもよい。
【0051】
経路決定部16は、目標方向認識部12の認識した目標方向と障害物位置認識部15の認識した障害物の位置に基づいて、第一区間候補PA及び第二区間候補PBの中から移動体1が走行する経路として用いる第一区間及び第二区間を決定する。
【0052】
具体的に、経路決定部16は、目標方向と障害物の位置に基づいて、第一区間候補PA及び第二区間候補PBの評価を行う。経路決定部16は、例えば下記の式(1)として示す評価関数Gaを用いて第一区間候補PA及び第二区間候補PBの評価値を算出する。
【数1】
【0053】
上記の式(1)において、Gは評価関数、Cは障害物最接近距離、Lは目標方向の有効距離である。障害物最接近距離Cは、評価対象の第一区間候補PA及び第二区間候補PBにおいて障害物と最も接近した箇所と障害物との距離である。障害物最接近距離Cは、評価対象の第一区間候補PA及び第二区間候補PBが障害物と接触する場合には-∞の値を取る。
【0054】
Lは目標方向における有効距離(例えば第一区間候補PAを目標方向に射影した場合の長さ)である。ここで、
図3は、目標方向の有効距離を説明するための図である。
図3に、第一区間候補PA、目標方向Tを示す。
図3に示すように、目標方向Tの有効距離とは、目標方向Tにおける第一区間候補PAの進行距離に相当する。評価対象である第一区間候補PAが目標方向Tに向かって長い距離を進むほど高い評価となる。一方で、第一区間候補PAが目標方向Tに向かって進む距離が短いと低い評価となる。第一区間候補PAが目標方向Tと反対側に進む場合には、マイナスの評価となる。a及びbは調整パラメータである。a及びbの値はユーザが任意に設定する。
【0055】
図4(a)は、経路決定の一例を示す図である。
図4(a)に、移動体1の現在位置Sa、目標位置G1、目標方向T1、壁(障害物)W1~W3、及び経路候補C1~C3を示す。経路候補C1~C3は、第一区間候補PA及び第二区間候補PBの組み合わせにより形成されている。
【0056】
図4(a)に示す状況において、経路決定部16は、壁W1~W3から適切に離間しており、目標方向T1における有効距離が最も長い経路候補C3の評価値を最も高く算出する。経路決定部16は、経路候補C1,C2と比べて、壁W1に多少近づいても目標方向T1における有効距離が長く、目標位置G1に近づいている経路候補C3を高く評価する。
【0057】
図4(b)は、経路決定の他の例を示す図である。
図4(b)に、移動体1の現在位置Sa、目標位置G2、目標方向T2、壁(障害物)W4~W6、及び経路候補C4~C6を示す。
図4(b)に示す状況において、経路決定部16は、壁W4~W6から適切に離間しており、目標方向T2における有効距離が最も長い経路候補C6の評価値を最も高く算出する。経路決定部16は、壁W4に接近し過ぎであり、目標方向T2における有効距離も短い経路候補C4,C5と比べて、目標位置G2に近づいている経路候補C6を高く評価する。
【0058】
経路決定部16は、並進速度や回転速度の変化を考慮して評価を行ってもよい。具体的に、経路決定部16は、例えば下記の式(2)として示す評価関数Gbを用いて第一区間候補PAの評価値を算出してもよい。
【数2】
【0059】
cは調整パラメータである。cの値はユーザが任意に設定する。Aaは第一区間候補用の速度変化判定値である。それ以外の要素は式(1)と同じであるため説明を省略する。速度変化判定値Aaは、移動体1の並進速度や回転速度の変化が一定閾値以上である場合に評価値を下げるために用いられる。
【0060】
具体的に、速度変化判定値Aaは、現在位置における移動体1の並進速度vcと第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v1との差分(絶対値)が第一並進速度閾値vmax1以上である場合、-∞の値を取る。
【0061】
また、速度変化判定値Aaは、現在位置における移動体1の回転速度wcと第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w1との差分(絶対値)が第一回転速度閾値wmax1以上である場合、-∞の値を取る。第一並進速度閾値vmax1及び第一回転速度閾値wmax1は、予め設定された値の閾値である。第一並進速度閾値vmax1は、移動体1の最大並進加速度に制御装置10の制御周期を乗じた値としてもよい。同様に、第一回転速度閾値wmax1は、移動体1の最大回転加速度に制御装置10の制御周期を乗じた値としてもよい。
【0062】
なお、回転速度は回転方向によって区別され、例えば右方向の回転速度を正の値、左方向の回転速度を負の値として表現される。同方向の回転速度の差分を取るときは、値の大きい方から小さい方を差し引いた差分の絶対値を第一回転速度閾値wmax1と比較する。逆方向の回転速度の差分を取るときには、何れも正の値として合計し、その合計値を差分として第一回転速度閾値wmax1と比較する。
【0063】
一方で、速度変化判定値Aaは、現在位置における移動体1の並進速度vcと第一並進速度v1との差分が第一並進速度閾値vmax1未満であり、且つ、現在位置における移動体1の回転速度wcと第一回転速度w1との差分が第一回転速度閾値wmax1未満である場合、ゼロの値を取る。
【0064】
経路決定部16は、上述した速度変化判定値Aaを含む評価関数Gbを用いることにより、移動体1の並進速度や回転速度の変化が急でスムースに走行できない第一区間候補PAを移動体1が走行する経路から除外することができる。
【0065】
なお、速度変化判定値Aaは、並進速度と回転速度のうち一方のみを考慮する態様であってもよい。速度変化判定値Aaは、現在位置における移動体1の並進速度vcと第一並進速度v1との差分が第一並進速度閾値vmax1以上である場合にのみ-∞の値を取ってもよく、現在位置における移動体1の回転速度wcと第一回転速度w1との差分が第一回転速度閾値wmax1以上である場合にのみ-∞の値を取ってもよい。
【0066】
また、経路決定部16は、例えば下記の式(3)として示す評価関数Gcを用いて第二区間候補PBの評価値を算出してもよい。
【数3】
【0067】
cは調整パラメータである。Abは第二区間候補用の速度変化判定値である。それ以外の要素は式(1)と同じであるため説明を省略する。速度変化判定値Abは、第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v1と第二区間候補PBにおける移動体1の並進速度である第二並進速度v2との差分(絶対値)が第二並進速度閾値vmax2以上である場合、-∞の値を取る。
【0068】
また、速度変化判定値Abは、第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w1と第二区間候補PBにおける移動体1の回転速度である第二回転速度w2との差分(絶対値)が第二回転速度閾値wmax2以上である場合、-∞の値を取る。第二並進速度閾値vmax2及び第二回転速度閾値wmax2は、予め設定された値の閾値である。第二並進速度閾値vmax2は、第一並進速度閾値vmax1と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。第二回転速度閾値wmax2も、第一回転速度閾値vmax2と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0069】
一方で、速度変化判定値Abは、第一並進速度v1と第二並進速度v2との差分が第二並進速度閾値vmax2未満であり、且つ、第一回転速度w1と第二回転速度w2との差分が第二回転速度閾値wmax2未満である場合、ゼロの値を取る。
【0070】
経路決定部16は、上述した速度変化判定値Abを含む評価関数Gcを用いることにより、移動体1の並進速度や回転速度の変化が急でスムースに走行できない第二区間候補PBを移動体1が走行する経路から除外することができる。
【0071】
なお、速度変化判定値Abは、並進速度と回転速度のうち一方のみを考慮する態様であってもよい。速度変化判定値Abは、第一並進速度v1と第二並進速度v2との差分が第二並進速度閾値vmax2以上である場合にのみ-∞の値を取ってもよく、第一回転速度w1と第二回転速度w2との差分が第二回転速度閾値wmax2以上である場合にのみ-∞の値を取ってもよい。
【0072】
経路決定部16は、複数の第一区間候補PA及び複数の第二区間候補PBの中から、最も評価値の高い組み合わせを第一区間及び第二区間として決定する。第一区間及び第二区間は、移動体1の走行する経路として用いられる区間である。
【0073】
なお、経路決定部16は、第一区間及び第二区間を段階的に決定してもよい。経路決定部16は、複数の第一区間候補PA及び複数の第二区間候補PBの組み合わせのうち評価値(合計値)が最も高いものではなく、複数の第一区間候補PAのうち最も評価値の高いものを第一区間として決定し、当該第一区間の終点を起点とする複数の第二区間候補PBのうち最も評価値の高いものを第二区間として決定してもよい。
【0074】
経路決定部16は、現在位置から目標位置に至る経路を求める必要はなく、目標位置に向かう経路(目標位置に至る経路の一部)を求められればよい。経路決定部16は、一定周期で経路としての第一区間及び第二区間の決定を繰り返す。経路決定部16は、移動体1が一度決定した第一区間及び第二区間を走行している途中に新たな第一区間及び第二区間の決定(経路の更新)を行ってもよい。
【0075】
移動体制御部17は、移動体1の走行を制御する。移動体制御部17は、経路決定部16の決定した経路から移動体1が走行するための駆動量(例えば車輪駆動量)を演算する。移動体制御部17は、演算した駆動量に応じた制御信号を移動体駆動部8に送信することで、経路に沿った移動体1の走行制御を行う。
【0076】
移動体制御部17は、例えば左右輪が対向軸上に配置される対向二輪型の移動機構を移動体1が有する場合、左右輪の回転数を演算する。具体的に、移動体制御部17は、第一区間の並進速度v及び回転速度wを用いて下記の式(4)、(5)を用いて左車輪の回転数rl,右車輪の回転数rrを求めてもよい。
【数4】
【0077】
上記の式(4),(5)におけるRは移動体1の車輪半径、Hは移動体1のトレッド(車輪の中心間距離)である。移動体制御部17は、上記の式(4),(5)によって算出した左車輪の回転数rl及び右車輪の回転数rrを制御信号として移動体駆動部8に送信することで、経路に沿った移動体1の走行制御を行う。
【0078】
[移動体の経路決定方法]
続いて、本実施形態に係る移動体1の経路決定方法について図面を参照して説明する。
図5は、移動体1の経路決定処理の一例を示すフローチャートである。
【0079】
図5に示すように、移動体1の制御装置10は、S1として、目標方向認識部12により移動体1の目標方向を認識する(目標方向認識ステップ)。目標方向認識部12は、例えば移動体1の現在位置と予め設定された目標位置とに基づいて移動体1の目標方向を認識する。
【0080】
S2において、制御装置10は、第一区間候補探索部13により第一区間候補PAを複数探索する(第一区間候補探索ステップ)。第一区間候補探索部13は、移動体1の現在位置を起点として、予め設定された第一設定時間内に移動体1が現在位置から走行可能な第一区間候補PAを複数探索する。
【0081】
S3において、制御装置10は、第二区間候補探索部14により第二区間候補PBを複数探索する(第二区間候補探索ステップ)。第二区間候補探索部14は、複数の第一区間候補PAの終点Eaを起点として、予め設定された第二設定時間内に移動体1が第一区間候補PAの終点Eaから走行可能な第二区間候補PBを複数探索する。
【0082】
S4において、制御装置10は、障害物位置認識部15により移動体1の周囲の障害物の位置を認識する(障害物位置認識ステップ)。障害物位置認識部15は、例えばレーダセンサ3の障害物の検出結果及び/又はカメラ4の撮像画像に基づいて、移動体1の周囲の障害物の位置を認識する。
【0083】
S5において、制御装置10は、経路決定部16により評価値の算出を行う。経路決定部16は、目標方向と障害物の位置に基づいて、第一区間候補PA及び第二区間候補PBの評価を行う(評価ステップ)。経路決定部16は、例えば上述した式(1)として示す評価関数Gaを用いて第一区間候補PA及び第二区間候補PBの評価値を算出する。
【0084】
S6において、制御装置10は、経路決定部16により経路決定(第一区間及び第二区間の決定)を行う(経路決定ステップ)。経路決定部16は、例えば複数の第一区間候補PA及び複数の第二区間候補PBの中から、最も評価値の高い組み合わせを第一区間及び第二区間として決定する。
【0085】
S7において、制御装置10は、移動体制御部17により移動体1の走行制御を行う(走行制御ステップ)。移動体制御部17は、制御信号を移動体駆動部8に送信することで、経路決定部16の決定した経路に沿って移動体1が走行するように制御する。
【0086】
図6(a)は、第一並進速度評価処理の一例を示すフローチャートである。第一並進速度評価処理は、
図5に示すフローチャートのS5において実行される。
【0087】
図6(a)に示すように、制御装置10は、S10として、経路決定部16により現在位置における移動体1の並進速度v
cと第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v
1との差分(絶対値)が第一並進速度閾値v
max1以上であるか否かを判定する(第一並進速度判定ステップ)。
【0088】
制御装置10は、上記差分が第一並進速度閾値vmax1以上であると判定した場合(S10:YES)、S11に移行する。制御装置10は、上記差分が第一並進速度閾値vmax1以上であると判定しなかった場合(S10:NO)、第一並進速度評価処理を終了する。
【0089】
S11において、制御装置10は、経路決定部16により第一区間候補PA(上記S10の判定がYESである第一区間候補PA)の評価値を-∞とする(第一並進速度評価ステップ)。経路決定部16は、例えば上述した式(2)の速度変化判定値Aaの値を-∞とすることで該当する第一区間候補PAの評価値を-∞として第一区間として選ばれないようにする。
【0090】
図6(b)は、第一回転速度評価処理の一例を示すフローチャートである。第一回転速度評価処理は、
図5に示すフローチャートのS5において実行される。
【0091】
図6(a)に示すように、制御装置10は、S20として、経路決定部16により現在位置における移動体1の回転速度w
cと第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w
1との差分(絶対値)が第一回転速度閾値w
max1以上であるか否かを判定する(第一回転速度判定ステップ)。
【0092】
制御装置10は、上記差分が第一回転速度閾値wmax1以上であると判定した場合(S20:YES)、S21に移行する。制御装置10は、上記差分が第一回転速度閾値wmax1以上であると判定しなかった場合(S20:NO)、第一回転速度評価処理を終了する。
【0093】
S21において、制御装置10は、経路決定部16により第一区間候補PA(上記S20の判定がYESである第一区間候補PA)の評価値を-∞とする(第一回転速度評価ステップ)。経路決定部16は、例えば上述した式(2)の速度変化判定値Aaの値を-∞とすることで該当する第一区間候補PAの評価値を-∞として第一区間として選ばれないようにする。
【0094】
図7(a)は、第二並進速度評価処理の一例を示すフローチャートである。第二並進速度評価処理は、
図5に示すフローチャートのS5において実行される。
【0095】
図7(a)に示すように、制御装置10は、S30として、経路決定部16により第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v
1と第二区間候補PBにおける移動体1の並進速度である第二並進速度v
2との差分(絶対値)が第二並進速度閾値v
max2以上であるか否かを判定する(第二並進速度判定ステップ)。
【0096】
制御装置10は、上記差分が第二並進速度閾値vmax2以上であると判定した場合(S30:YES)、S31に移行する。制御装置10は、上記差分が第二並進速度閾値vmax2以上であると判定しなかった場合(S30:NO)、第二並進速度評価処理を終了する。
【0097】
S31において、制御装置10は、経路決定部16により第二区間候補PB(上記S30の判定がYESである第二区間候補PB)の評価値を-∞とする(第二並進速度評価ステップ)。経路決定部16は、例えば上述した式(3)の速度変化判定値Abの値を-∞とすることで該当する第二区間候補PBの評価値を-∞として第二区間として選ばれないようにする。
【0098】
図7(b)は、第二回転速度評価処理の一例を示すフローチャートである。第二回転速度評価処理は、
図5に示すフローチャートのS5において実行される。
【0099】
図7(a)に示すように、制御装置10は、S40として、経路決定部16により第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w
1と第二区間候補PBにおける移動体1の回転速度である第二回転速度w
2との差分(絶対値)が第二回転速度閾値w
max2以上であるか否かを判定する(第二回転速度判定ステップ)。
【0100】
制御装置10は、上記差分が第二回転速度閾値wmax2以上であると判定した場合(S40:YES)、S41に移行する。制御装置10は、上記差分が第二回転速度閾値wmax2以上であると判定しなかった場合(S40:NO)、第二回転速度評価処理を終了する。
【0101】
S41において、制御装置10は、経路決定部16により第二区間候補PB(上記S40の判定がYESである第二区間候補PB)の評価値を-∞とする(第二回転速度評価ステップ)。経路決定部16は、例えば上述した式(3)の速度変化判定値Abの値を-∞とすることで該当する第二区間候補PBの評価値を-∞として第二区間として選ばれないようにする。
【0102】
以上説明した本実施形態に係る移動体1(及び移動体1の経路決定方法)によれば、第一区間候補PAと第二区間候補PBを少なくとも含むDWAによる多段階の経路探索を行い、目標方向及び障害物の位置に基づいて移動体1が走行する経路として用いられる第一区間及び第二区間を決定することで、一段階の経路探索しか行わない従来の技術と比べて、柔軟性が高くスムースに移動体1が走行できる経路を得ることができる。
【0103】
ここで、
図8(a)は、従来の移動体の経路決定方法による経路の一例を示す図である。
図8(a)に、従来の移動体の現在位置Sa、経路CZ、目標位置G10、目標方向T10、隘路N、及び壁(障害物)W10~W13を示す。
図8(a)に示すように、一段階の経路探索しか行わない従来の移動体では、壁W10と壁W11により形成された隘路Nに進入する経路を探索できない場合があった。
【0104】
図8(b)は、本実施形態に係る移動体1による経路の一例を示す図である。
図8(b)に、移動体1の経路C10を示す。
図8(b)に示すように、移動体1によれば、DWAによる多段階の経路探索を行うことで、隘路Nにも対応可能な柔軟性を有しスムースに移動体1が走行できる経路を得ることができる。移動体1は、障害物すり抜けや障害物すれ違いもスムースに実現できる経路を得ることが可能である。
【0105】
また、移動体1によれば、現在位置における移動体1の並進速度vcと第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v1との差分が第一並進速度閾値vmax1未満となるように第一区間を決定することで、並進速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体1がスムースに移動できる第一区間を選択することができる。
【0106】
同様に、移動体1によれば、現在位置における移動体1の回転速度wcと第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w1との差分が第一回転速度閾値wmax1未満となるように第一区間を決定することで、回転速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第一区間を選択することができる。
【0107】
また、移動体1によれば、第一区間候補PAにおける移動体1の並進速度である第一並進速度v1と第二区間候補PBにおける移動体1の並進速度である第二並進速度v2との差分が第二並進速度閾値vmax2未満となるように第二区間を決定することで、第一区間及び第二区間の並進速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体1がスムースに移動できる第二区間を選択することができる。
【0108】
同様に、移動体1によれば、第一区間候補PAにおける移動体1の回転速度である第一回転速度w1と第二区間候補PBにおける移動体1の回転速度である第二回転速度w2との差分が第二回転速度閾値wmax2未満となるように第二区間を決定することで、第一区間及び第二区間の回転速度の変化を考慮しない場合と比べて、移動体がスムースに移動できる第二区間を選択することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0110】
移動体1は、第二区間候補PBの終点Ebを起点として移動体1が予め設定された第三設定時間内に走行可能な第三区間候補を複数探索する第三区間候補探索部を更に有していてもよい。この場合、経路決定部16は、第二区間候補PBと同様に複数の第三区間候補の評価値を算出して、移動体1の走行する経路としての第三区間を決定する。移動体1は、更に第四区間候補探索部、第五区間候補探索部を有していてもよい。
【0111】
経路決定部16は、移動体制御部17が前回演算した移動体1の駆動量(例えば車輪駆動量)を用いて、第一区間候補PA及び第二区間候補PBの評価値を算出してもよい。経路決定部16は、例えば並進速度や回転速度と同様に、前回演算した移動体1の駆動量と第一区間候補PAにおける並進速度の実現に必要な移動体1の駆動量の差が閾値未満となるように第一区間を決定する。
【0112】
経路決定部16は、並進速度や回転速度の変化を考慮した評価を行う場合に、必ずしも並進速度の変化が大きい第一区間候補PAの評価値を-∞にする必要はない。経路決定部16は、現在位置における移動体1の並進速度vcと第一並進速度v1との差分が第一並進速度閾値vmax1以上の第一区間候補PAを評価対象から除外するだけでもよい。回転速度についても同様である。また第二区間候補PBについても同様である。
【0113】
経路決定部16は、第二区間候補PBを評価するときの目標方向を第二区間候補PBの起点Sb(第一区間候補PAの終点Ea)から見た目標位置の存在する方向としてもよい。経路決定部16は、第一区間候補PAの場合の目標方向(移動体1の現在位置から見た目標位置の存在する方向)をそのまま第二区間候補PBの評価に用いるのではなく、第二区間候補PBの起点Sbから見た目標位置の存在する方向である目標方向を用いて目標方向の有効距離が長いほど第二区間候補PBの評価値を高く算出する。これにより、経路決定部16は、移動体の現在位置Saと第二区間候補PBの起点Sbの位置ずれの影響を受けることなく、最終的に目標位置により近づく第二区間候補PBの評価値を高く算出することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…移動体、2…GNSS受信部、3…レーダセンサ、4…カメラ、5…速度センサ、6…加速度センサ、7…回転速度センサ、8…移動体駆動部、10…制御装置、11…走行状態認識部、12…目標方向認識部、13…第一区間候補探索部、14…第二区間候補探索部、15…障害物位置認識部、16…経路決定部、17…移動体制御部。