(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177743
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電子式電力量計
(51)【国際特許分類】
G01R 22/06 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
G01R22/06 130Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084195
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】倉田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】渡部 哲平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直矢
(57)【要約】
【課題】 内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その開閉が制御不能となっても、電子式電力量計に負荷として接続される誘導電動機に焼損を生じさせることのない電子式電力量計を提供する。
【解決手段】 スマートメータ1は、三相誘導電動機3の各相に流れる相電流Iu,Iv,Iwを断続する複数の単極開閉器13a,13b,13cを内蔵する。これら単極開閉器13a,13b,13cのそれぞれの開閉は、開閉器制御部を構成する開閉器制御回路14によって制御される。この開閉器制御回路14は、複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉が制御不能となって残りの単極開閉器の開閉が制御できる場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を、制御不能となった単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家に供給される各相の相電流を断続する複数の単極開閉器と、各前記単極開閉器の開閉を制御する開閉器制御部とを備える電子式電力量計において、
前記開閉器制御部は、複数の前記単極開閉器のうちの少なくとも1つの前記単極開閉器の開閉が制御不能となって残りの前記単極開閉器の開閉が制御できる場合に、制御できる残りの全ての前記単極開閉器の開閉状態を制御不能となった前記単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御することを特徴とする電子式電力量計。
【請求項2】
前記開閉器制御部は、複数の前記単極開閉器のうちの少なくとも1つの前記単極開閉器の開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての前記単極開閉器の開閉状態を開状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の電子式電力量計。
【請求項3】
前記開閉器制御部は、複数の前記単極開閉器のうちの少なくとも1つの前記単極開閉器の開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての前記単極開閉器の開閉状態を閉状態に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子式電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に供給される各相の相電流を断続する複数の単極開閉器を備える電子式電力量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子式電力量計としては、例えば、特許文献1に開示された電力量計がある。この電力量計は、電路を開閉する複数の開閉器と、電流検出部と、演算部と、開閉器制御部とを備える。開閉器制御部は、各開閉器の劣化度に基づいて、複数の開閉器のうち最初に閉状態から開状態へ駆動する開閉器を決定し、決定結果に基づいて複数の開閉器を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のような複数の開閉器を備える電力量計において、負荷として誘導電動機が接続されている場合に、複数の開閉器のうちのいずれかが故障して、その開閉制御ができなくなると、誘導電動機のいずれかの相に電流が供給されなくなることがある。このような場合、誘導電動機に欠相が生じ、欠相が生じると、誘導電動機が焼損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
需要家に供給される各相の相電流を断続する複数の単極開閉器と、各単極開閉器の開閉を制御する開閉器制御部とを備える電子式電力量計において、
開閉器制御部が、複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉が制御不能となって残りの単極開閉器の開閉が制御できる場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を制御不能となった単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御することを特徴とする。
【0006】
本構成によれば、電子式電力量計に内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その開閉が制御不能となっても、開閉器制御部により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が制御不能となった単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御されることで、複数の単極開閉器の開閉状態は全て同じ状態になる。したがって、電子式電力量計に負荷として誘導電動機が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障しても、開閉器制御部によって、複数の単極開閉器の開閉状態が全て同じ状態に制御されることで、誘導電動機の全ての相に電流が供給されなくなるか、全ての相に電流が供給されるようになる。このため、誘導電動機のいずれかの相に電流が供給されなくなる不平衡状態が生じて、誘導電動機が欠相状態になる事態が回避され、誘導電動機が焼損するのを防ぐことができる。
【0007】
また、本発明は、開閉器制御部が、複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を開状態に制御することを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、電子式電力量計に内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その単極開閉器の開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなっても、開閉器制御部により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が開状態に制御されることで、複数の単極開閉器の開閉状態は全て同じ開状態になる。したがって、電子式電力量計に負荷として誘導電動機が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して閉制御できなくなっても、開閉器制御部によって、複数の単極開閉器の開閉状態が全て同じ開状態に制御されることで、誘導電動機の全ての相に電流が供給されなくなる。このため、誘導電動機が停止して、誘導電動機が焼損するのを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明は、開閉器制御部が、複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を閉状態に制御することを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、電子式電力量計に内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その単極開閉器の開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなっても、開閉器制御部により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が閉状態に制御されることで、複数の単極開閉器の開閉状態は全て同じ閉状態になる。したがって、電子式電力量計に負荷として誘導電動機が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して開制御できなくなっても、開閉器制御部によって、複数の単極開閉器の開閉状態が全て同じ閉状態に制御されることで、誘導電動機の全ての相に電流が供給される。このため、誘導電動機に欠相が生じなくなって、誘導電動機が焼損するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内蔵される複数の単極開閉器のうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その開閉が制御不能となっても、電子式電力量計に負荷として接続される誘導電動機に焼損を生じさせることのない電子式電力量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による電子式電力量計のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による電子式電力量計を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による電子式電力量計(以下、スマートメータと記す)1のブロック構成図である。
【0015】
スマートメータ1は、本実施形態では三相3線式の計器であり、三相交流電源2が接続される電源端子1S,2S,3S、および、三相誘導電動機3が負荷として接続される負荷端子1L,2L,3Lを備える。
【0016】
交流電源3から電源端子1S,2S,3Sに印加されて、需要家の三相誘導電動機3に供給される三相交流電圧Vu,Vv,Vwは、保護回路4および降圧回路5を介して、中央制御回路6における電圧測定部7に入力される。保護回路4はサージ電圧等から中央制御回路6を保護し、降圧回路5は、交流電源3から出力される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを電圧測定部7における電圧測定に適した大きさに降圧する。電圧測定部7は、降圧された電圧から、需要家の三相誘導電動機3等の負荷に印加される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを測定する。
【0017】
また、スマートメータ1から需要家の三相誘導電動機3等の負荷に供給される三相交流負荷電流Iu,Iv,Iwは電流センサ8によって検出される。電流センサ8によって検出される負荷電流Iu,Iv,Iwは、中央制御回路6における電流測定部9に入力されて、電流測定部9で測定される。
【0018】
中央制御回路6では、AD変換部10により、電圧測定部7で測定される電圧および電流測定部9で測定される負荷電流がそれぞれAD変換されて、アナログ信号からデジタル信号に変換される。演算部11は、AD変換部11でAD変換されたデジタル値の電圧および負荷電流から、需要家の三相誘導電動機3等の負荷で消費される電力を各相毎に演算する。演算部12において算出された需要家の消費電力は表示部12に表示される。
【0019】
本実施形態では、スマートメータ1は、三相誘導電動機3の各相に流れる相電流Iu,Iv,Iwを断続する複数の単極開閉器13a,13b,13cを内蔵する。これら単極開閉器13a,13b,13cのそれぞれの開閉は、中央制御回路6の制御の下で動作する、開閉器制御部を構成する開閉器制御回路14によって制御される。この開閉器制御回路14は、複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉が制御不能となって残りの単極開閉器の開閉が制御できる場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を、制御不能となった単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御する。
【0020】
すなわち、開閉器制御回路14は、複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を開状態に制御する。例えば、開閉器制御回路14は、3つの単極開閉器13a,13b,13cのうちの1つの単極開閉器13cの開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器13a,13bの開閉状態を開状態に制御する。また、3つの単極開閉器13a,13b,13cのうちの2つの単極開閉器13b,13cの各開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなった場合に、制御できる残りの単極開閉器13aの開閉状態を開状態に制御する。
【0021】
このため、本実施形態によるスマートメータ1によれば、スマートメータ1に内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その単極開閉器の開閉を開状態から閉状態に閉制御できなくなっても、開閉器制御回路14により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が開状態に制御されることで、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態は全て同じ開状態になる。したがって、スマートメータ1に負荷として三相誘導電動機3が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して閉制御できなくなっても、開閉器制御回路14によって、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態が全て同じ開状態に制御されることで、三相誘導電動機3の全ての相に電流Iu,Iv,Iwが供給されなくなる。このため、三相誘導電動機3が停止して、三相誘導電動機3が焼損するのを防ぐことができる。
【0022】
また、開閉器制御回路14は、複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器の開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態を閉状態に制御する。例えば、開閉器制御回路14は、3つの単極開閉器13a,13b,13cのうちの1つの単極開閉器13cの開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなった場合に、制御できる残りの全ての単極開閉器13a,13bの開閉状態を閉状態に制御する。また、3つの単極開閉器13a,13b,13cのうちの2つの単極開閉器13b,13cの各開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなった場合に、制御できる残りの単極開閉器13aの開閉状態を閉状態に制御する。
【0023】
このため、本実施形態によるスマートメータ1によれば、スマートメータ1に内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その単極開閉器の開閉を閉状態から開状態に開制御できなくなっても、開閉器制御回路14により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が閉状態に制御されることで、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態は全て同じ閉状態になる。したがって、スマートメータ1に負荷として三相誘導電動機3が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して開制御できなくなっても、開閉器制御回路14によって、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態が全て同じ閉状態に制御されることで、三相誘導電動機3の全ての相に電流Iu,Iv,Iwが供給される。このため、三相誘導電動機3に欠相が生じなくなって、三相誘導電動機3が焼損するのを防ぐことができる。
【0024】
この結果、スマートメータ1に内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障して、その開閉が制御不能となっても、開閉器制御回路14により、制御できる残りの全ての単極開閉器の開閉状態が制御不能となった単極開閉器の開閉状態と同じ開閉状態に制御されることで、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態は全て同じ状態になる。したがって、スマートメータ1に負荷として三相誘導電動機3が接続される場合に、内蔵される複数の単極開閉器13a,13b,13cのうちの少なくとも1つの単極開閉器が故障しても、開閉器制御回路14によって、複数の単極開閉器13a,13b,13cの開閉状態が全て同じ状態に制御されることで、三相誘導電動機3の全ての相に電流Iu,Iv,Iwが供給されなくなるか、全ての相に電流Iu,Iv,Iwが供給されるようになる。このため、三相誘導電動機3のいずれかの相に電流Iu,Iv,Iwが供給されなくなる不平衡状態が生じて、三相誘導電動機3が欠相状態になる事態が回避され、三相誘導電動機3が焼損するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0025】
1…電子式電力量計(スマートメータ)
2…三相交流電源
3…三相誘導電動機(負荷)
6…中央制御回路
7…電圧測定部
8…電流センサ
9…電流測定部
13a,13b,13c…単極開閉器
14…開閉器制御回路(開閉器制御部)