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  • 特開-衝突エネルギー吸収構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177744
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】衝突エネルギー吸収構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
B62D25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084196
(22)【出願日】2021-05-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発」の「鋼板と樹脂材料の革新的接合技術及び信頼性評価技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】兵間 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】和田 花清
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB55
3D203CA02
3D203CA08
3D203CA22
3D203CA36
3D203CA52
3D203CB07
3D203CB39
(57)【要約】
【課題】衝突エネルギーの吸収性能を向上させつつ、過剰な重量増加を抑えることが可能な衝突エネルギー吸収構造を提供する。
【解決手段】衝突エネルギー吸収構造1は、荷重想定面11を含む外面12及び閉断面の空洞13を形成する内面14を有し、一方向に延伸するシェル部10と、シェル部10の延伸方向に延伸すると共に、シェル部10の内面14のうち荷重想定面11と対向する位置に取り付けられた補強部20とを備える。シェル部10は、空洞13を挟んで荷重想定面11と反対側に設けられた樹脂部22を含む。補強部20の曲げ剛性はシェル部10の曲げ剛性以下に設定されている。補強部20の破断モーメント、或いは、補強部20の破断モーメントと補強部20の全塑性モーメントの和は、シェル部10の全塑性モーメントとシェル部10の破断モーメントの和以下に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突エネルギー吸収構造であって、
荷重想定面を含む外面及び閉断面の空洞を画成する内面を有し、一方向に延伸するシェル部と、
前記シェル部の延伸方向に延伸すると共に、前記シェル部の前記内面のうち前記荷重想定面と対向する位置に取り付けられた補強部と
を備え、
前記シェル部は、前記空洞を挟んで前記荷重想定面と反対側に設けられた樹脂部を含み、
前記補強部の曲げ剛性は前記シェル部の曲げ剛性以下に設定され、
前記補強部の破断モーメント、或いは、前記補強部の破断モーメントと前記補強部の全塑性モーメントの和は、前記シェル部の全塑性モーメントと前記シェル部の破断モーメントの和以下に設定されている
衝突エネルギー吸収構造。
【請求項2】
前記シェル部は、
前記荷重想定面を含むと共に金属板によって構成された第1部分と、
前記空洞を介して前記荷重想定面と対向する位置に前記第1部分と別体に設けられ、前記第1部分に接合する第2部分とを含み、
前記第2部分は、
金属板またはFRP板によって構成されると共に、前記補強部が取り付けられる第1板部材と、
前記第1板部材よりも前記空洞から離れた位置に位置し、前記樹脂部としてFRPによって形成された第2板部材とを含む
請求項1に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項3】
前記補強部は、前記第1部分の前記荷重想定面から離隔している
請求項2に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項4】
前記補強部は、前記第1部分の前記荷重想定面に接触している
請求項2に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項5】
前記第1板部材と前記第2板部材は互いに離隔している
請求項2~4のうちの何れか一項に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項6】
前記シェル部は、前記荷重想定面と前記補強部との間に位置し、金属板によって形成された第3部分を更に含む
請求項1~5のうちの何れか一項に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項7】
前記補強部の長さは、前記シェル部の長さの1/10~1/2に設定されている
請求項1に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項8】
前記補強部は、発泡プラスチック又はスチールウールによって形成されている
請求項1に記載の衝突エネルギー吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衝突エネルギー吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道車両等の車体を構成する構造部材には、環境負荷低減の観点による軽量化と、衝突安全性の観点による衝突エネルギー吸収性能の向上が求められている。これに関連する技術として、特許文献1は、車体のピラー等への適用を想定した衝撃吸収部材を開示している。特許文献1の衝撃吸収部材は、金属製の構造体と、金属製のカバーと、これらの間に挟まれたFRP(繊維強化樹脂)材とを備えており、FRP材が衝突等による曲げ応力によって広範囲に破壊されることを利用して、衝突エネルギーの吸収量の増加を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-284918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センターピラー(Bピラー)等の車体の構造部材には、衝突安全性の観点から高い衝突エネルギー吸収性能が求められる一方、環境負荷低減の観点から軽量化も求められる。しかしながら、これらの要求はトレードオフの関係にある。即ち、衝突エネルギーの吸収性能を向上させるには、荷重が掛かった際の反力を増加させる必要がある。ところが、反力を増加させようとすると、構造部材の重量が増加してしまう。
【0005】
本開示はこのような事情を鑑みて成されたものであり、衝突エネルギーの吸収性能を向上させつつ、過剰な重量増加を抑えることが可能な衝突エネルギー吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る衝突エネルギー吸収構造は、荷重想定面を含む外面及び閉断面の空洞を画成する内面を有し、一方向に延伸するシェル部と、前記シェル部の延伸方向に延伸すると共に、前記シェル部の前記内面のうち前記荷重想定面と対向する位置に取り付けられた補強部とを備え、前記シェル部は、前記空洞を挟んで前記荷重想定面と反対側に設けられた樹脂部を含み、前記補強部の曲げ剛性は前記シェル部の曲げ剛性以下に設定され、前記補強部の破断モーメント、或いは、前記補強部の破断モーメントと前記補強部の全塑性モーメントの和は、前記シェル部の全塑性モーメントと前記シェル部の破断モーメントの和以下に設定されている。
【0007】
前記シェル部は、前記荷重想定面を含むと共に金属板によって構成された第1部分と、前記空洞を介して前記荷重想定面と対向する位置に前記第1部分と別体に設けられ、前記第1部分に接合する第2部分とを含んでもよい。前記第2部分は、金属板またはFRP板によって構成されると共に、前記補強部が取り付けられる第1板部材と、前記第1板部材よりも前記空洞から離れた位置に位置し、前記樹脂部としてFRPによって形成された第2板部材とを含んでもよい。
【0008】
前記補強部は、前記第1部分の前記荷重想定面から離隔していてもよい。前記補強部は、前記第1部分の前記荷重想定面に接触していてもよい。前記第1板部材と前記第2板部材は互いに離隔していてもよい。前記シェル部は、前記荷重想定面と前記補強部との間に位置し、金属板によって形成された第3部分を更に含んでもよい。前記補強部の長さは、前記シェル部の長さの1/10~1/2に設定されてもよい。前記補強部は、発泡プラスチック又はスチールウールによって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、衝突エネルギーの吸収性能を向上させつつ、過剰な重量増加を抑えることが可能な衝突エネルギー吸収構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る衝突エネルギー吸収構造の一例を示す斜視図である。
図2】衝突エネルギー吸収構造の断面図であり、(a)はYZ平面上の断面図、(b)は(a)中のIIB-IIB断面図、(c)は(a)中のIIC-IIC断面図である。
図3】第1部分と第2部分の接合箇所における両者の形状の例を示す図である。
図4】衝突エネルギー吸収構造の変形例の断面図であり、(a)はYZ平面上の断面図、(b)は(a)中のIVB-IVB断面図、(c)は(a)中のIVC-IVC断面図である。
図5】衝突エネルギー吸収構造の変形例の断面図であり、(a)はYZ平面上の断面図、(b)は(a)中のVB-VB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について図1図5を用いて説明する。本実施形態に係る衝突エネルギー吸収構造は一方向に延伸する長尺の構造体であり、自動車や鉄道車両等の車体を構成する構造部材として使用される。例えば、自動車のセンターピラー(Bピラー)に適用可能である。以下、説明の便宜上、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向を定義する。X方向、Y方向及びZ方向はそれぞれ、衝突エネルギー吸収構造の幅方向、高さ方向及び延伸方向(長手方向)である。衝突エネルギー吸収構造が上述のセンターピラーとして使用される場合、X方向は車体の前後方向、Y方向は車幅方向外方、Z方向は車体の上下方向に相当する。衝突物の荷重は、荷重想定面11(図1参照)に加わることを想定している。
【0012】
図1は、本実施形態に係る衝突エネルギー吸収構造1の一例を示す斜視図である。図2は衝突エネルギー吸収構造1の断面図であり、図2(a)はYZ平面上の断面図、(b)は図2(a)中のIIB-IIB断面図、図2(c)は図2(a)中のIIC-IIC断面図である。
【0013】
図1に示すように、衝突エネルギー吸収構造1はシェル部10を備える。シェル部10は、荷重想定面11を含む外面12と、閉断面の空洞13を形成する内面14とを有し、Z方向に延伸している。シェル部10は、例えば、互いに別体として形成された第1部分15と第2部分16とを含んでいる。
【0014】
第1部分15は金属板によって構成され、空洞13を形成するように第2部分16に向けて折り曲げられ又は湾曲している。第1部分15を構成する金属板は、例えば高張力鋼板又は超高張力鋼板であり、その板厚は例えば1mm以下である。
【0015】
第1部分15が形成するシェル部10のうち、空洞13を介して第2部分16と対向する部分には荷重想定面11が設定されている。荷重想定面11は、車両等の物体の衝突が想定される領域である。例えば、衝突エネルギー吸収構造1の特性の1つである曲げ剛性を評価する3点曲げ試験を実施する場合、曲げ荷重は荷重想定面11内の所定の位置に印加される。なお、荷重想定面11は衝突物が衝突する可能性が高い領域を規定しているに過ぎず、その周囲の面との物性的な差異は無い。
【0016】
第2部分16は、空洞13を介して荷重想定面11と対向する位置に位置する。第2部分16は、第1部分15の折り曲げ又は湾曲によって形成された空洞13を閉塞するように第1部分15に接合される。従って、空洞13に面する第1部分15の表面及び第2部分16の表面は、閉断面の空洞13を画成するシェル部10の内面14を兼ねている。
【0017】
図1及び図2に示すように、第2部分16は、第1板部材17と、第2板部材18とを含んでいる。第1板部材17は金属板またはFRP(繊維強化樹脂)板によって構成され、例えばXZ平面と平行である。
【0018】
第2板部材18はY方向に沿って第1板部材17よりも空洞13から離れた位置に位置する。第2板部材18はFRP板によって構成され、例えばXZ平面と平行である。なお、FRPは例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)でもよい。
【0019】
このように、第2板部材18のみ、或いは、第1板部材17と第2板部材18の何れもがFRP板によって構成されている。つまり、シェル部10は、空洞13を挟んで荷重想定面11と反対側に設けられた樹脂部22を含む。少なくとも第2板部材18にFRP板を採用することによって、同等の曲げ剛性が得られる金属板を用いた場合よりも軽量化を図ることができる。
【0020】
Y方向に沿った第1板部材17と第2板部材18の間隔は任意である。即ち、図3(ab)及び図3(b)に示すように、第2板部材18は、接着剤等によって第1板部材17に密着されてもよく、図3(b)及び図3(d)に示すように、Y方向に所定の間隔を置きつつ、接着剤等によって第1部分15に接着されてもよい。後者の場合、衝突エネルギー吸収構造1の曲げが進む方向に第1板部材17と第2板部材18が互いに離隔しているので、衝突エネルギー吸収構造1全体の軽量化が可能となると共に、第2板部材18の圧潰を抑制することができる。
【0021】
第1部分15と第2部分16の接合箇所における両者の形状は図2に示すものに限られない。例えば、図3(a)に示すように、第2部分16の幅は、第1部分15の幅よりも大きく設定され、第2部分16の第1板部材17は、溶接等によって第1部分15を構成する金属板の端部15aに接合されてもよい。この場合、第2板部材18は接着剤等によって第1板部材17に密着する。
【0022】
また、図3(b)に示すように、第1板部材17の幅が第1部分15の幅以下に設定され、第2板部材18の幅は、第1部分15の幅よりも大きく設定されてもよい。この場合、第1板部材17は、溶接等によってシェル部10(第1部分15)の内面14に接合され、第2板部材18は、接着剤等によって第1部分15を構成する金属板の端部15aに接着する。
【0023】
また、図3(c)及び図3(d)に示すように、第2部分16を構成する第1板部材17及び第2板部材18の各幅は、第1部分15の幅以下に設定されてもよい。この場合、第1板部材17は、溶接等によってシェル部10(第1部分15)の内面14に接合される。第2板部材18は、図3(c)に示すように接着剤等によって第1板部材17に密着してもよく、図3(d)に示すように、接着剤等によってシェル部10(第1部分15)の内面14に接着してもよい。
【0024】
衝突エネルギー吸収構造1は補強部20を備える。補強部20は、空洞13内において第1板部材17に取り付けられ、Z方向に延伸する。換言すれば、補強部20は、シェル部10の内面14のうち荷重想定面11と対向する位置に取り付けられる。なお、補強部20の断面形状は任意であり、図2(c)に示す矩形に限られない。
【0025】
補強部20は、合成樹脂、硬質ウレタンフォーム又は発泡スチロール等の発泡プラスチック、又はスチールウールによって形成され、Z方向に沿ったシェル部10の長さの1/10~1/2の長さを有している。これにより、衝突エネルギー吸収構造1を軽量化することができる。また、補強部20の幅は任意であり、例えば、シェル部10の幅に略等しい。更に補強部20の高さも任意である。即ち、補強部20は、荷重想定面11から離隔する高さを有してもよく、荷重想定面11に接触する高さを有してもよい。前者の場合、補強部20が第1部分15の荷重想定面11から離隔する。従って、衝突の際はこの部分が優先的に圧潰されやすくなり、曲げ(破壊)が進行する領域の不測の変動を抑制できる。一方、後者の場合、補強部20が第1部分15の荷重想定面11に接触する。従って、シェル部10の荷重点(衝突点)近傍に限定される局所的な曲げによる圧潰を抑制することができる。
【0026】
図4に示すように、シェル部10は、荷重想定面11と補強部20との間に位置し、金属板によって構成された第3部分19を更に含んでもよい。第3部分19は、例えばXZ平面に平行な金属板またはFRP板である。第3部分19は、その材質に応じた手法によってシェル部10(第1部分15)の内面14に接続している。即ち、第3部分19が金属製であれば、第3部分19は溶接等によってシェル部10に接合している。また、第3部分19がFRP製であれば、第3部分19は接着剤によってシェル部10に接着している。何れの場合も、第1部分15に補強部20を固定し、かつ、補強部20を補強することができる。
【0027】
また、図5に示すように、補強部20は補助板21を含んでもよい。補助板21は、荷重想定面11に面した補強部20の表面20aに接着される。補助板21の材質は任意であり、例えば金属、合成樹脂又はFRPである。補助板21の幅は第1部分15の幅よりも小さく設定され、補助板21と第1部分15の間には間隙が形成される。また、Z方向沿った補助板21の長さは、補強部20の長さ以下に設定される。
【0028】
本実施形態に係る衝突エネルギー吸収構造1は次の条件を満たしている。
(1)補強部20の曲げ剛性は、シェル部10の曲げ剛性以下に設定される。
(2)補強部20の破断モーメント、或いは、補強部20の破断モーメントと補強部20の全塑性モーメントの和は、シェル部10の全塑性モーメントとシェル部10の破断モーメントの和以下に設定される。
ここで曲げ剛性は、断面二次モーメント(I)とヤング率(E)の積であり、全塑性モーメントは塑性断面係数(Zp)と降伏応力(σy)の積である。但し、断面が複数材料で構成される場合の曲げ剛性は、中立軸に対する各材料の断面二次モーメントとヤング率の積の総和とする。
【0029】
条件(1)における各曲げ剛性は、周知の三点曲げ試験法によって評価できる。例えば、三点曲げ試験は、日本産業規格の金属材料曲げ試験方法(JIS Z 2248)に準拠した試験を適用できる。即ち、衝突エネルギー吸収構造1に対してY方向に移動する圧子のクロスヘッドと、Z方向に所定の間隔を置いた2つの支持子とを備える試験機(図示せず)を使用する。曲げ剛性の試験体は2つの支持子上に載置され、これら支持子の中間の位置において圧子により押圧される。試験機は、圧子に印加される荷重とその変位とを測定し、任意の変位を与えた時点で試験を終了する。なお、圧子はZ方向に間隔を置く2つに分かれていてもよい。この場合、2つの圧子は、2つの支持子の中間点からZ方向に等間隔だけ互いに離れている。なお、試験片、支持子(下治具)及び圧子(上治具)の各寸法、並びに支持子間のスパン等はJIS Z 2248に規定されたものに限られない。
【0030】
条件(2)について、「補強部20の破断モーメント」のみを選択するか、或いは、「補強部20の破断モーメントと補強部20の全塑性モーメントの和」を選択するかは、補強部20の構成材料に依存する。例えば、補強部20が降伏点の無い合成樹脂等によって形成されている場合、「補強部20の破断モーメント」のみが選択される。一方、補強部20が降伏点の無い合成樹脂等と降伏点の有る金属によって形成された複合部材の場合、「補強部20の破断モーメントと補強部20の全塑性モーメントの和」が選択される。
【0031】
衝突エネルギー吸収構造1は上記2つの条件を満たすため、荷重想定面11に物体の衝突等による過剰な荷重が掛けられたとき、降伏に至った部位の過剰な変形が補強部20からの反力によって抑制され、その部位における応力が二次元的に分散する。よって、降伏が発生する箇所を二次元的に(例えばX方向とZ方向に)拡大させることができ、荷重点(衝突点)近傍に限定される局所的な曲げによる圧潰を抑制することができる。即ち、荷重想定面11における塑性変形を二次元的に拡大させることができ、少なくとも上記2つの条件を満たさない場合と比べて、衝突エネルギーの吸収量を増加させることできる。また、少なくとも、曲げ剛性を高める第2板部材が樹脂製であるため、衝突エネルギー吸収構造1の軽量化も図ることができる。つまり、衝突エネルギー吸収構造1の単位重量当たりの衝突エネルギーの吸収率を向上させることができる。
【0032】
なお、衝突エネルギー吸収構造1の外形及びその内部の空洞13の断面形状等は、上述の曲げ剛性に関する条件及び全塑性モーメント等に関する条件を満たす限り、適用される車体等の形状に応じて、適宜変形可能である。例えば、空洞13の断面形状は閉曲線で定義される形状であればよく、その形状もZ方向に沿って変化していてもよい。
【0033】
また、シェル部10の第1部分15と第2部分16の第1板部材17は、単一の母材から一体に形成されてもよい。この場合、例えば、シェル部10は一枚の金属板によって構成される中空の構造体となり、その構造体の内部に補強部20が設けられ、その構造体の外面に第2部材が接着されることになる。
【0034】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0035】
1…衝突エネルギー吸収構造、10…シェル部、11…荷重想定面、12…外面、13…空洞、14…内面、15…第1部分、15a…端部、16…第2部分、17…第1板部材、18…第2板部材、19…第3部分、20…補強部、20a…表面、21…補助板、22…樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5