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  • 特開-汚水処理方法 図1
  • 特開-汚水処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177768
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】汚水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20221124BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20221124BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C02F3/12 M
C02F3/00 D
C02F3/00 G
C02F3/12 D
C02F1/24 B
C02F1/44 F
C02F3/12 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021106131
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】520218718
【氏名又は名称】有限会社シー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】230121452
【弁護士】
【氏名又は名称】十河 陽介
(72)【発明者】
【氏名】廣山 登
【テーマコード(参考)】
4D006
4D027
4D028
4D037
【Fターム(参考)】
4D006KA31
4D006KB22
4D006PC62
4D006PC67
4D027CA00
4D028BA00
4D028BC18
4D028BC19
4D028BC22
4D028BC24
4D028BD01
4D028BD06
4D028BD16
4D028BD17
4D037AA11
4D037BA01
4D037CA03
4D037CA07
(57)【要約】
【課題】化学薬剤の使用を抑制しつつ、汚水処理能力の改善が可能な汚水処理方法を提供する。
【解決手段】汚水処理方法は、汚水(W2)を第1曝気槽(20)に供給し、第1曝気槽において汚水(W2)に対して曝気を行う第1曝気工程(S2)と、第1曝気工程を経た後の汚水(W6)を第2曝気槽(40)に供給し、第2曝気槽において汚水に対して曝気を行う第2曝気工程(S4)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を第1曝気槽に供給し、前記第1曝気槽において前記汚水に対して曝気を行う第1曝気工程と、
前記第1曝気工程を経た後の前記汚水を第2曝気槽に供給し、前記第2曝気槽において前記汚水に対して曝気を行う第2曝気工程とを備える、汚水処理方法。
【請求項2】
前記第1曝気工程を経る前の前記汚水に対して、前記汚水中の異物をスクリーンにより除去する異物除去工程をさらに備える、請求項1に記載の汚水処理方法。
【請求項3】
前記第1曝気工程を経た後の前記汚水に対して前処理を行う前処理工程をさらに備え、
前記前処理工程は、前記汚水から第1汚泥を沈殿分離する第1工程、前記汚水から第2汚泥を浮上分離する第2工程及び前記汚水から第3汚泥を膜分離する第3工程の少なくともいずれかを有する、請求項2に記載の汚水処理方法。
【請求項4】
前記第2曝気工程を経た後の前記汚水に対して後処理を行う後処理工程をさらに備え、
前記後処理工程は、前記汚水から第4汚泥を沈殿分離する第4工程、前記汚水から第5汚泥を浮上分離する第5工程及び前記汚水から第6汚泥を膜分離する第6工程の少なくともいずれかを有する、請求項3に記載の汚水処理方法。
【請求項5】
前記第2曝気工程を経た前記汚水を沈殿槽に供給し、前記沈殿槽において前記汚水を上澄水と第7汚泥とに沈殿分離する分離工程をさらに備える、請求項4に記載の汚水処理方法。
【請求項6】
培養タンクにおいて培養液を培養する培養工程をさらに備え、
前記培養工程は、前記培養タンクに前記異物除去工程を経る前の前記汚水、前記第1曝気工程を経る前の前記汚水、前記第1曝気工程を経た後の前記汚水、前記第2曝気工程を経た後の前記汚水、前記第1汚泥、前記第2汚泥、前記第3汚泥、前記第4汚泥、前記第5汚泥、前記第6汚泥及び前記第7汚泥からなる群から選択された少なくとも1つを含む培養種に供給するとともに、前記培養タンクにおいて前記培養種を曝気することにより行われ、
前記培養液は、前記第2曝気槽に供給される、請求項5に記載の汚水処理方法。
【請求項7】
前記培養種には、前記上澄水が含まれる、請求項6に記載の汚水処理方法。
【請求項8】
前記培養種には、微生物活性剤が添加される、請求項6又は請求項7に記載の汚水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理方法に関する。より具体的には、本発明は、活性汚泥法を用いた汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されているように、一般的な活性汚泥法においては、第1に、曝気槽に汚水及び活性汚泥が供給される。第2に、曝気槽内において汚水及び活性汚泥の混合液が曝気される。これにより、活性汚泥に含まれる好気性微生物の作用により、汚水中の有機物が分解される。
【0003】
第3に、曝気後の混合液が、沈殿槽に供給される。第4に、沈殿槽において、混合液が静置される。これにより、混合液が、沈殿物と上澄水とに分離される。この上澄水は、処理水として排出される。この沈殿物のうちの一部は、活性汚泥として、曝気槽で再利用される(以下においては、沈殿槽から曝気槽に供給される沈殿物を「返送汚泥」とする)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】池上徹、「好気性微生物の働きを利用した活性汚泥法」、インターネット<URL:https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/016.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な活性汚泥法においては、汚水中の有機物成分の濃度が高い場合、汚水は、有機物成分の濃度を下げた上で曝気槽に供給される。この際、汚水中の有機物成分の分離・除去には、化学薬剤が用いられる。より具体的には、苛性ソーダ、希硫酸等のpH調整剤を用いて汚水中のpHを調整した上で、パック、アニオン、カチオン等の凝集剤を用いて汚水中の有機物を沈降させることにより、汚水中の有機物成分の濃度が下げられる。
【0006】
上記の化学薬剤は、汚水中の微生物の活性環境(酸素環境や化学的環境)を悪化させることになるため、曝気槽における処理能力の低下につながるおそれがある。また、汚水から有機物成分を分離・除去するために化学薬剤を用いると、沈殿槽において分離される沈殿物にも化学薬剤が含まれることになるため、当該沈殿物の再利用・処分が困難となる。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術のような問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、化学薬剤の使用を抑制しつつ、汚水処理能力の改善が可能な汚水処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の汚水処理方法は、汚水を第1曝気槽に供給し、第1曝気槽において汚水に対して曝気を行う第1曝気工程と、第1曝気工程を経た後の汚水を第2曝気槽に供給し、第2曝気槽において汚水に対して曝気を行う第2曝気工程とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の汚水処理方法では、第1曝気工程が行われることにより、汚水中の微生物が汚水中の有機物成分を分解する。その結果、汚水中の有機物成分の濃度が低下するため、化学薬剤を用いて汚水中の有機物成分の濃度を下げる必要がなくなる。このように、本発明の汚水処理方法によると、化学薬剤の使用を抑制しつつ、汚水処理能力を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】汚水処理システム100の模式図である。
図2】実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0012】
(実施形態に係る汚水処理システム)
以下に、実施形態に係る汚水処理システム(以下「汚水処理システム100」とする)の構成を説明する。
【0013】
図1は、汚水処理システム100の模式図である。汚水処理システム100は、図1に示されるように、異物分離槽10と、第1曝気槽20と、第1前処理槽31、第2前処理槽32及び第3前処理槽33と、第2曝気槽40と、第1後処理槽51、第2後処理槽52及び第3後処理槽53と、沈殿槽60と、培養タンク70とを有している。汚水処理システム100は、活性汚泥法により汚水処理を行うためのシステムである。
【0014】
汚水W1は、例えば、有機物成分を含んでいる工場排水である。汚水W1は、異物分離槽10に供給される。異物分離槽10では、汚水W1中の異物がスクリーンにより除去される。このスクリーンは、バー式のスクリーン、掻き上げ式のスクリーン、傾斜ワイヤ式のスクリーン、回転ドラム式のスクリーン等である。異物分離槽10での処理を経た汚水W1を、汚水W2とする。
【0015】
汚水W2は、第1曝気槽20に供給される。第1曝気槽20は、槽本体21と、空気供給部22とを有している。槽本体21には、汚水W2が貯留される。空気供給部22は、散気管23と、ポンプ24とを有している。散気管23は、槽本体21の内部に配置されている。ポンプ24は、散気管23に接続されている。ポンプ24は、散気管23を介して槽本体21の内部に空気を供給する。第1曝気槽20での処理を経た汚水W2を、汚水W3とする。
【0016】
汚水W3は、第1前処理槽31に供給される。第1前処理槽31では、汚水W3から第1汚泥SL1が分離される。第1前処理槽31での処理を経た汚水W3を、汚水W4とする。汚水W4は、第2前処理槽32に供給される。第2前処理槽32では、汚水W4から第2汚泥SL2が分離される。第2前処理槽32での処理を経た汚水W4を、汚水W5とする。汚水W5は、第3前処理槽33に供給される。第3前処理槽33では、汚水W5から第3汚泥SL3が分離される。第3前処理槽33での処理を経た汚水W5を、汚水W6とする。なお、汚水処理システム100は、第1前処理槽31、第2前処理槽32及び第3前処理槽33の一部又は全部を有していなくてもよい。
【0017】
汚水W6は、第2曝気槽40に供給される。汚水W6には、培養液Lが加えられる。第2曝気槽40は、槽本体41と、空気供給部42とを有している。槽本体41には、培養液Lが加えられた汚水W6が貯留される。空気供給部42は、散気管43と、ポンプ44とを有している。散気管43は、槽本体41の内部に配置されている。ポンプ44は、散気管23に接続されている。ポンプ44は、散気管43を介して槽本体41の内部に空気を供給する。第2曝気槽40での処理を経た汚水W6を、汚水W7とする。
【0018】
汚水W7は、第1後処理槽51に供給される。第1後処理槽51では、汚水W7から第4汚泥SL4が分離される。第1後処理槽51での処理を経た汚水W7を、汚水W8とする。汚水W8は、第2後処理槽52に供給される。第2後処理槽52では、汚水W8から第5汚泥SL5が分離される。第2後処理槽52での処理を経た汚水W8を、汚水W9とする。汚水W9は、第3後処理槽53に供給される。第3後処理槽53では、汚水W9から第6汚泥SL6が分離される。第3後処理槽53での処理を経た汚水W9を、汚水W10とする。なお、汚水処理システム100は、第1後処理槽51、第2後処理槽52及び第3後処理槽53の一部又は全部を有していなくてもよい。
【0019】
沈殿槽60には、汚水W10が供給される。沈殿槽60では、汚水W10が上澄水W11と第7汚泥SL7とに分離される。上澄水W11の全部又は一部は、処理済みの水として放流される。
【0020】
培養タンク70は、タンク本体71と、空気供給部72とを有している。タンク本体71には、培養種Sが貯留されている。培養種Sは、汚水W1、汚水W2、汚水W3、汚水W7、第1汚泥SL1、第2汚泥SL2、第3汚泥SL3、第4汚泥SL4、第5汚泥SL5、第6汚泥SL6及び第7汚泥SL7からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含んでいる。培養種Sは、上澄水W11をさらに含んでいてもよい。培養種Sには、微生物活性剤が添加されてもよい。
【0021】
空気供給部72は、散気管73と、ポンプ74とを有している。散気管73は、タンク本体71の内部に配置されている。ポンプ74は、散気管73に接続されている。ポンプ74は、散気管73を介してタンク本体71の内部に空気を供給する。
【0022】
汚水処理システム100は、さらに、第3曝気槽80を有していてもよい。第3曝気槽80は、槽本体81と、空気供給部82とを有している。槽本体81には、第1曝気槽20での処理を経た汚水W2が貯留される。空気供給部82は、散気管83と、ポンプ84とを有している。散気管83は、槽本体81の内部に配置されている。ポンプ84は、散気管83に接続されている。ポンプ84は、散気管83を介して槽本体81の内部に空気を供給する。
【0023】
第3曝気槽80には、汚水W12が供給されてもよい。汚水W12は、例えば汚水W1よりも有機物成分の濃度が低い工場排水である。汚水W12が第3曝気槽80に供給される前に、汚水W12中からスクリーンにより異物が除去されてもよい。汚水処理システム100が第3曝気槽80を有している場合、第3曝気槽80での処理を経た汚水W2が、汚水W3となる。
【0024】
第1曝気槽20に貯留されている汚水W2には、汚水W1、汚水W3、汚水W7、第1汚泥SL1、第2汚泥SL2、第3汚泥SL3、第4汚泥SL4、第5汚泥SL5、第6汚泥SL6及び第7汚泥SL7からなる群から選択される少なくとも1つ以上が供給されてもよい。また、第1曝気槽20に貯留されている汚水W2には、上澄水W11がさらに供給されてもよい。この場合には、第1曝気槽20での処理を経た汚水W2が、培養液Lとなる。すなわち、この場合には、第1曝気槽20が培養タンク70としても機能するため、第1曝気槽20とは別に培養タンク70を設けることを省略することができる。
【0025】
(実施形態に係る汚水処理方法)
以下に、実施形態に係る汚水処理方法を説明する。
【0026】
図2は、実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。実施形態に係る汚水処理方法は、図2に示されるように、異物除去工程S1と、第1曝気工程S2と、前処理工程S3と、第2曝気工程S4と、後処理工程S5と、分離工程S6と、培養工程S7と、供給工程S8とを有している。なお、前処理工程S3は、第1工程S31と、第2工程S32と、第3工程S33とを有している。後処理工程S5は、第4工程S51と、第5工程S52と、第6工程S53とを有している。
【0027】
異物除去工程S1では、汚水W1中の異物がスクリーンにより除去される。第1曝気工程S2では、空気供給部22(ポンプ24)が駆動されることにより、汚水W2に対する曝気が行われる。汚水W2には、好気性の微生物が含まれている。汚水W2に含まれている有機物は、上記の微生物により酸化分解され、上記の微生物とともに塊状のフロックになる。なお、汚水処理システム100が第3曝気槽80を有している場合、第1曝気工程S2を経た汚水W2は、第3曝気槽80に供給されるとともに汚水W12と混合され、第3曝気槽80において再度曝気される。
【0028】
第1工程S31では、汚水W3から第1汚泥SL1が沈殿分離される。第1汚泥SL1の沈殿分離は、汚水W3を静置することにより行われる。汚水W3中のフロックは、汚水W3を静置することにより、第1前処理槽31の底部に沈殿し、第1汚泥SL1として分離される。第2工程S32では、汚水W4から第2汚泥SL2が浮上分離される。第2汚泥SL2の浮上分離は、汚水W4に気泡を供給し、当該気泡の浮力により汚水W4中のフロックを浮上させることにより行われる。第3工程S33では、汚水W5から第3汚泥SL3が膜分離される。第3汚泥SL3の膜分離は、汚水W5中のフロックを捕捉可能なフィルタに汚水W5を通すことにより行われる。
【0029】
第2曝気工程S4では、空気供給部42(ポンプ44)が駆動されることにより、培養液Lが加えられた汚水W6に対する曝気が行われる。培養液Lが加えられた汚水W6及び培養液Lには、好気性の微生物が含まれている。培養液Lが加えられた汚水W6に含まれている有機物は、上記の微生物により酸化分解され、上記の微生物とともに塊状のフロックになる。
【0030】
第4工程S51、第5工程S52及び第6工程S53では、それぞれ第1工程S31、第2工程S32及び第3工程S33と同様の処理が行われる。これにより、第4工程S51では汚水W7から第4汚泥SL4が沈殿分離され、第5工程S52では汚水W8から第5汚泥SL5が浮上分離され、第6工程S53では第6汚泥SL6が膜分離される。
【0031】
分離工程S6では、汚水W10が上澄水W11と第7汚泥SL7とに沈殿分離される。第7汚泥SL7の沈殿分離は、汚水W10を静置することにより行われる。汚水W10中のフロックは、汚水W10を静置することにより、沈殿槽60の底部に沈殿し、第7汚泥SL7として分離される。
【0032】
培養工程S7では、空気供給部72(ポンプ74)が駆動されることにより、培養種Sに対する曝気が行われる。これにより、培養種Sの培養が行われ、培養液Lとなる。供給工程S8では、培養液Lが第2曝気槽40に供給される。なお、培養工程S7は、培養タンク70ではなく、第1曝気槽20において行われてもよい。すなわち、第1曝気工程S2が培養工程S7を兼ねていてもよい。
【0033】
(実施形態に係る汚水処理方法の効果)
以下に、実施形態に係る汚水処理方法の効果を説明する。
【0034】
一般的な活性汚泥法では、汚水W2中の有機物成分の濃度が高い場合、汚水W2は、有機物成分の濃度を下げた上で第2曝気槽40に供給される。この際、汚水W2中の有機物成分の濃度を下げるために、化学薬剤が用いられる。汚水W2中の有機物成分の濃度を下げるために化学薬剤を用いると、沈殿槽60において分離される第7汚泥SL7にも化学薬剤が含まれることになるため、汚泥の再利用・処分が困難となる。また、汚水W2中の有機物成分の濃度を下げるために化学薬剤を用いると、第2曝気工程S4における微生物の活性が低下するおそれがある。
【0035】
実施形態に係る汚水処理方法では、第1曝気工程S2が行われることにより、汚水W2中の微生物が汚水W2中の有機物成分を分解するため、汚水W2中の有機物成分の濃度が低下される。分解された有機物成分は、塊状のフロックになるため、化学薬剤を用いることなく前処理工程S3により除去できる。そのため、実施形態に係る汚水処理方法においては、化学薬剤の使用を抑制しながら汚水W2中の有機物成分の濃度を低下させることができる。そして、化学薬剤の使用が抑制される結果、第2曝気工程S4における微生物の活性も高まる。このように、実施形態に係る汚水処理方法によると、化学薬剤の使用を抑制しつつ、汚水処理能力の改善が可能である。
【0036】
一般的な活性汚泥法においては、沈殿槽60において分離される第7汚泥SL7がそのまま第2曝気槽40に戻されることになる。第7汚泥SL7には、BAP(Biomass Associated Products、微生物の死滅に伴って放出された有機物)及びUAP(Utilizing Associated Products、微生物の代謝により放出された有機物)が含まれている。BAP及びUAPも汚水中の有機物とともに汚泥化されることになるため、一般的な活性汚泥法においては、余剰汚泥が大量に発生する。また、一般的な活性汚泥法においては、第2曝気槽40にBAP及びUAPが戻される結果、汚泥の沈降性が低下する。
【0037】
本発明者が見出した知見によると、BAP及びUAPは、そのBAP及びUAPを発生させた微生物によってのみ分解されるため、実施形態に係る汚水処理方法では、培養工程S7において培養種Sが曝気される際に、培養種S中のBAP及びUAPを分解可能な微生物に選択圧が加わり、培養種S中のBAP及びUAPを分解可能な微生物が、優先的に増殖されることになる。
【0038】
その結果、実施形態に係る汚水処理方法によると、BAP及びUAPを分解可能な微生物を多く含む培養液Lが第2曝気槽40に戻されることになり、BAP及びUAPに起因した余剰汚泥の発生及び沈降性悪化が抑制される。
【0039】
上記のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記の各実施形態は、有機物を含む排水の処理に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0041】
10 異物分離槽、20 第1曝気槽、21 槽本体、22 空気供給部、23 散気管、24 ポンプ、31 第1前処理槽、32 第2前処理槽、33 第3前処理槽、40 第2曝気槽、41 槽本体、42 空気供給部、43 散気管、44 ポンプ、51 第1後処理槽、52 第2後処理槽、53 第3後処理槽、60 沈殿槽、70 培養タンク、71 タンク本体、72 空気供給部、73 散気管、74 ポンプ、80 第3曝気槽、81 槽本体、82 空気供給部、83 散気管、84 ポンプ、100 汚水処理システム、L 培養液、S 培養種、S1 異物除去工程、S2 第1曝気工程、S3 前処理工程、S4 第2曝気工程、S5 後処理工程、S6 分離工程、S7 培養工程、S8 供給工程、S31 第1工程、S32 第2工程、S33 第3工程、S51 第4工程、S52 第5工程、S53 第6工程、SL1 第1汚泥、SL2 第2汚泥、SL3 第3汚泥、SL4 第4汚泥、SL5 第5汚泥、SL6 第6汚泥、SL7 第7汚泥、W1,W2,W3,W4,W5,W6,W7,W8,W9,W10,W12 汚水、W11 上澄水。
図1
図2