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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177778
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】積層型電子部品及び誘電体組成物
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185664
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064090
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、イン ホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョー ヒー
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】常温誘電率、dc-bias特性及び高温耐電圧特性を向上させ、X7R又はX7S容量温度特性を満たす積層型電子部品及び誘電体組成物を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、本体に配置され、内部電極と連結される外部電極と、を含む。誘電体層は、第1結晶粒11及び第2結晶粒12を含む。第1結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル11bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア11aを含むコア-シェル構造を有する。第2結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満である。第1結晶粒及び第2結晶粒の全体面積のうち、第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、第1及び第2結晶粒を含み、
前記第1結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェルと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコアを含むコア-シェル構造であり、前記第2結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、
前記第1及び第2結晶粒の全体面積のうち前記第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1結晶粒及び第2結晶粒において、SnまたはHfはBaTiOに固溶された形態である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1結晶粒は、コアの大きさが50nm以上250nm以下である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
常温誘電率が2500以上、
7V/μmでのDC-bias誘電率が1050以上、
150℃での耐電圧が65V/μm以上、
RC値が1000ΩF以上、
-55℃及び125℃でのTCCが-22%~22%を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層は、誘電体組成物を用いて形成され、
前記誘電体組成物は、BaTiOに基づいた第1及び第2主成分を含む主成分を含み、
前記第1主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェルと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコアを含むコア-シェル構造を有し、前記第2主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、
前記第1主成分のモル比をx、前記第2主成分のモル比を1-xと定義するとき、xは0.3~0.8である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタの元素の酸化物または炭酸塩のいずれかを含む第1副成分をさらに含み、
前記原子価可変アクセプタの元素はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのいずれか一つ以上を含み、
前記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタの元素の含有量が主成分100molに対して0.2mol~1.4molである、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体組成物は、Mg酸化物または炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、
前記第2副成分に含まれるMg元素の含有量が主成分100molに対して2.0mol以下である、請求項5または6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、
前記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、
前記第3副成分に含まれた希土類元素の含有量が主成分100molに対して0.6mol~3.0molである、請求項5から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体組成物は、Ba及びCaのいずれか一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、
前記第4副成分に含まれたBa及びCaのいずれか一つ以上の元素の含有量の総和は、主成分100molに対して0.19mol~4.8molである、請求項5から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体組成物は、Si酸化物、Si炭酸塩及びSiを含むガラスのいずれか一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、
前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molである、請求項5から9のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体組成物は、第4副成分及び第5副成分をさらに含み、
前記第4副成分は、Ba及びCaのいずれか一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含み、
前記第5副成分は、Si酸化物、Si炭酸塩及びSiを含むガラスのいずれか一つ以上を含み、
前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molであり、
前記第4副成分に含まれたBa及びCaのいずれか一つ以上の元素の含有量の総和を4s、前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量を5sとするとき、4s/5sは0.24~1.60である、請求項5から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
BaTiOに基づいた第1及び第2主成分を含む主成分を含み、
前記第1主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェルと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコアを含むコア-シェル構造を有し、前記第2主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、
前記第1主成分のモル比をx、前記第2主成分のモル比を1-xと定義するとき、xは0.3~0.8である、誘電体組成物。
【請求項13】
前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタの元素の酸化物または炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、
前記原子価可変アクセプタの元素はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのいずれか一つ以上を含み、
前記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタの元素の含有量が主成分100molに対して0.2mol~1.4molである、請求項12に記載の誘電体組成物。
【請求項14】
前記誘電体組成物は、Mg酸化物または炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、
前記第2副成分に含まれるMg元素の含有量が主成分100molに対して2.0mol以下である、請求項12または13に記載の誘電体組成物。
【請求項15】
前記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、
前記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、
前記第3副成分に含まれた希土類元素の含有量が主成分100molに対して0.6mol~3.0molである、請求項12から14のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項16】
前記誘電体組成物は、Ba及びCaのいずれか一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、
前記第4副成分に含まれたBa及びCaのいずれか一つ以上の元素の含有量の総和は、主成分100molに対して0.19mol~4.8molである、請求項12から15のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項17】
前記誘電体組成物は、Si酸化物、Si炭酸塩及びSiを含むガラスのいずれか一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、
前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molである、請求項12から16のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項18】
前記誘電体組成物は、第4副成分及び第5副成分をさらに含み、
前記第4副成分は、Ba及びCaのいずれか一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のいずれか一つ以上を含み、
前記第5副成分は、Si酸化物、Si炭酸塩及びSiを含むガラスのいずれか一つ以上を含み、
前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molであり、
前記第4副成分に含まれたBa及びCaのいずれか一つ以上の元素の含有量の総和を4s、前記第5副成分に含まれたSi元素の含有量を5sとするとき、4s/5sは0.24~1.60である、請求項12から15のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項19】
前記第1主成分のコアの大きさは40~200nmである、請求項12から17のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品及び誘電体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化し、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増加しつつある。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増やす必要がある。現在、誘電体層の厚さが約0.6μmレベルまで到達した状態であり、薄層化が進みつつある。
【0005】
しかし、誘電体層の厚さが薄くなるほど、信頼性、高温耐電圧特性だけでなく、dc-bias特性が問題となることがある。dc-bias特性は、MLCCに印加されるdc-bias fieldのサイズが増加するにつれ、容量や誘電率が減少する現象を意味する。電力管理集積回路(Power management integrated circuit)などのMLCCの様々な適用事例において、dc-biasが印加された状態でMLCCが使用される場合が多いため、高電界dc-biasが印加された条件で高い有効誘電率や容量を実現することができるMLCC及びこれを製造するための誘電体組成物への要求がますます増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2016-0073243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品及び誘電体組成物を提供することである。
【0008】
本発明のいくつかの目的の一つは、常温誘電率、dc-bias特性及び高温耐電圧特性に優れた積層型電子部品及び誘電体組成物を提供することである。
【0009】
本発明のいくつかの目的の一つは、X7RまたはX7S容量温度特性を満たすことができる積層型電子部品及び誘電体組成物を提供することである。
【0010】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、第1及び第2結晶粒を含み、上記第1結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェルと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコアを含むコア-シェル構造であり、上記第2結晶粒は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1及び第2結晶粒の全体面積のうち上記第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiOに基づいた第1及び第2主成分を含む主成分を含み、上記第1主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェルと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコアを含むコア-シェル構造を有し、上記第2主成分は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1主成分のモル比をx、上記第2主成分のモル比を1-xと定義するとき、xは0.3~0.8である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、シェルにSnまたはHfを含むコア-シェル構造の結晶粒の面積を制御することにより、常温誘電率、dc-bias特性及び高温耐電圧特性を向上させたことである。
【0014】
また、X7RまたはX7S容量温度特性を満たすことができる積層型電子部品及び誘電体組成物を提供することができる。
【0015】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図3図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図4】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
図5】本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
図6】第1結晶粒及び第2結晶粒において、STEM/EDS分析でSnまたはHfの含有量を分析する位置P1~P9を示したイメージである。
図7】第1結晶粒のP1~P9のSn含有量を測定したグラフである。
図8】第2結晶粒のP1~P9のSn含有量を測定したグラフである。
図9】第1主成分の断面図を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図3は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図4は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、図5は、本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
【0021】
以下、図1図5を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層は、第1及び第2結晶粒11、12を含み、上記第1結晶粒11は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル11bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア11aを含むコア-シェル構造であり、上記第2結晶粒12は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1及び第2結晶粒の全体面積のうち上記第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%である。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は、六面体状やこれと類似した形状になることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、且つ第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0026】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化することができる。
【0027】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0028】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0029】
誘電体層111は、第1及び第2結晶粒11、12を含み、第1結晶粒11は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル11bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア11aを含むコア-シェル構造であり、第2結晶粒12は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1及び第2結晶粒の全体面積のうち上記第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%であることができる。これにより、本発明の目標特性である常温誘電率が2500以上、7V/μmでのDC-bias誘電率が1050以上、150℃での耐電圧が65V/μm以上、RC値が1000ΩF以上、及び-55℃及び125℃でのTCCが-22%~22%を満たすことができる。
【0030】
誘電体の主成分であるBaTiOを適用したシステムにおいて、誘電特性は添加剤まで固溶されたABO構造でA/B site ratioにより大きく変化するため、副成分Ba/Si含有量の調節を介したA/B ratioを調節して誘電特性を調節することができ、一般的に添加剤の副成分であるBa含有量を増加させてA/B ratioを大きくすると、公称誘電率が減少し、dc-bias特性を向上させることができると知られている。しかし、この場合、焼成温度が上昇して焼結体の緻密度が低下し、信頼性が悪くなり、常温誘電率が過度に低くなって公称容量を実現することが難しいという問題があった。
【0031】
本発明の一実施形態によると、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル11bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア11aを含むコア-シェル構造の第1結晶粒11を一定以上に確保することにより、焼結体の緻密度が良好でありながら適度な常温誘電率、優れたdc-bias特性、そして高い信頼性を同時に確保することができる。
【0032】
シェル11bの2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)値が1.0%未満の場合には、DC 7V/μmでの誘電率を1050以上、150℃での高温耐電圧を65V/μm以上、常温誘電率を2500以上に確保することが困難である。
【0033】
これに対し、シェル11bの2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)値が5.0%を超える場合には、SnまたはHfが偏析され、二次相を形成することにより、均一性が低下し、本発明の目標特性を実現することが困難である。
【0034】
また、第1結晶粒の面積が28.3%未満の場合には、DC 7V/μmでの誘電率を1050以上に確保することが困難であり、82.3%を超える場合には、常温誘電率を2500以上に確保することが困難である。
【0035】
一方、第1結晶粒のSnまたはHf含有量は、図5に示したように、一つの結晶粒において粒界の左から出発し、粒界の右で終わる線分を引き、等間隔に9つの点P1~P9を打って、P1~P9でのSnまたはHfの含有量をSTEM/EDSを用いて分析することができる。
【0036】
より具体的に説明すると、図2のP領域について図6のようにSTEMを用いてスキャンしてイメージを得た後、STEM/EDS分析で位置P1~P9でのSnまたはHfの含有量を分析することができる。図7のように粒界を除いた点P2~P8での原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%以上5.0%以下である地点と1.0%未満である点をすべて有している結晶粒を第1結晶粒と定義することができ、図8のように点P2~P8での原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)がいずれも1.0%未満である結晶粒を第2結晶粒と定義することができる。
【0037】
ここで、SnまたはHfは、BaTiOに固溶された形態であることができる。例えば、BaTiO 100molに対してSnが10mol固溶されるとすると、Ba(Ti0.9Sn0.1)Oとなることができ、この時の2*Sn/(Ba+Ti+Sn)値は、0.1%で表現すると、10%となる。
【0038】
また、隣接した30個の結晶粒についてSnまたはHf含有量を測定して第1結晶粒及び第2結晶粒を区分し、各面積を計算して第1結晶粒の面積割合を求めることができる。
【0039】
また、第1結晶粒のコアの大きさは、図7において、2*Sn/(Ba+Ti+Sn)がいずれも1.0%未満である領域の大きさを測定したものであることができ、第1結晶粒に分類されたコアの大きさの平均値であることができる。
【0040】
一実施形態において、第1結晶粒11及び第2結晶粒12において、SnまたはHfはBaTiOに固溶された形態であることができる。さらに、第1結晶粒11及び第2結晶粒12には、他の副成分の元素が固溶されていることができる。
【0041】
一実施形態において、第1結晶粒11は、コア11aの大きさが50nm以上250nm以下であることができる。
【0042】
コア11aの大きさが50nm未満である場合には、常温誘電率が低下することがあり、-55℃及び125℃のTCCが±22%の範囲から外れるおそれがある。
【0043】
これに対し、コア11aの大きさが250nmを超える場合には、dc-bias特性及び高温耐電圧特性が低下するおそれがある。
【0044】
一実施形態において、第1結晶粒11のシェル11bの厚さ(または大きさ)は、特に限定する必要はないが、10~250nmであることができる。ここで、シェル11bの厚さ(または大きさ)は、コアの表面からシェルの表面までの距離を意味することができる。
【0045】
一方、誘電体層111は、後述する本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を含むことができる。また、誘電体層111は、後述する本発明の一実施形態に係る誘電体組成物を焼結して形成されたものであることができる。
【0046】
誘電体組成物に含まれた副成分は、酸化物または炭酸塩の形で添加されることができるが、焼結した後には、酸化物または炭酸塩の形ではなく、BaTiOに固溶された形で存在することができる。但し、副成分の主要元素の含有量の割合は、ほぼ類似して維持されることができ、焼結前の誘電体組成物に含まれた主成分及び副成分の含有量を基に焼結後の誘電体層の各元素の含有量を計算することができる。
【0047】
また、誘電体層111に含まれた各元素の含有量は、非破壊工法、破壊工法などを用いて測定することができる。
【0048】
例えば、非破壊工法の場合、TEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体グレイン内部の成分を分析することができる。具体的には、焼結が完了した本体の一断面のうち誘電体層を含む領域で集束イオンビーム(FIB)装備を用いて薄片化した分析試料を用意する。そして、薄片化した試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去した後、STEM-EDSを用いて得られたイメージから各成分のマッピング及び定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率で得られることができ、これをモル分率または原子分率に換算して示すことができる。
【0049】
また、破壊工法の場合、積層型電子部品を粉砕して内部電極を除去した後、誘電体部分を選別し、このように選別された誘電体を誘導結合プラズマ分光分析装置(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体の成分を分析することができる。
【0050】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0051】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的には物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0052】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同様の材料を含むことができる。
【0053】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0054】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにカバー部112、113の厚さは20μm以下であることができる。
【0055】
また、上記容量形成部Acの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0056】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114及び第6面6に配置されたマージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0057】
マージン部114、115は、図3に示したように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切り取った断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0058】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0059】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される部分を除いて導電性ペーストを塗布し、内部電極を形成することによって形成されたものであることができる。
【0060】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向(第3方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0061】
一実施形態において、上記本体の第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面において、上記Aaは、上記容量形成部の第1方向の1/2地点を中心に配置された5つの誘電体層が含まれた領域であり、上記Abは、上記容量形成部のうち上記カバー部に隣接した5つの誘電体層が含まれた領域であることができる。
【0062】
図5を参照して、より具体的に説明すると、本体110の第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面において、容量形成部Acの第1方向の1/2地点を中心に配置された5つの誘電体層が含まれた領域(Aa)及び容量形成部のうちカバー部に隣接した5つの誘電体層が含まれた領域(Ab)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンした後、各誘電体結晶粒の大きさを測定することができる。このとき、誘電体結晶粒の大きさは、各誘電体結晶粒の面積を測定し、上記面積を有する円相当直径に換算した値を誘電体結晶粒の大きさとすることができる。
【0063】
一実施形態において、上記Aaに含まれた複数の誘電体結晶粒の平均大きさは300nm以下であり、上記Abに含まれた複数の誘電体結晶粒の平均大きさは130nm以上であり、上記Aaに含まれた複数の誘電体結晶粒の平均大きさと上記Abに含まれた複数の誘電体結晶粒の平均大きさの差は、100nm以下であることができる。
【0064】
一方、誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0065】
但し、一般的に誘電体層を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に誘電体層の厚さが0.45μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがあった。
【0066】
上述したように、本発明の一実施形態によると、優れた常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを確保することができるため、誘電体層111の厚さが0.45μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0067】
したがって、誘電体層111の厚さが0.45μm以下である場合に、本発明に係る信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0068】
上記誘電体層111の厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0069】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0070】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0071】
上記等間隔である30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0072】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0073】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0074】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0075】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0076】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0077】
内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0078】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0079】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0080】
但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.45μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがある。
【0081】
上述したように、本発明の一実施形態によると、優れた常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを確保することができるため、内部電極121、122の厚さが0.45μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0082】
したがって、内部電極121、122の厚さが0.45μm以下である場合に、本発明に係る効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0083】
上記内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0084】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0085】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0086】
上記等間隔である30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0087】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0088】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0089】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。
【0090】
本実施形態においては、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形やその他の目的に応じて変わることができる。
【0091】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、如何なる物質を用いても形成することができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0092】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0093】
電極層131a、132aに対するより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0094】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0095】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0096】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数層で形成されることができる。
【0097】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例として、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順に形成された形であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0098】
積層型電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0099】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明に係るDC-bias特性、高温耐電圧特性などの向上効果がより顕著になることができる。
【0100】
したがって、製造誤差、外部電極サイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下であり、幅が0.22mm以下である場合、本発明に係る信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【0101】
誘電体組成物
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiOに基づいた第1及び第2主成分を含む主成分を含み、上記第1主成分13は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル13bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア13aを含むコア-シェル構造を有し、上記第2主成分は、原子割合で2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1主成分のモル比をx、上記第2主成分のモル比を1-xと定義するとき、xは0.3~0.8であることができる。誘電体組成物は、焼結後に誘電体層111を形成することができ、誘電体層111は、第1及び第2結晶粒11、12を含み、第1結晶粒11は、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下を満たすシェル11bと、原子割合で2*Sn/(Ba+Ti+Sn)及び2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であるコア11aを含むコア-シェル構造であり、第2結晶粒12は、原子割合で2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%未満であり、上記第1及び第2結晶粒の全体面積のうち上記第1結晶粒が占める面積は28.3~82.3%であることができる。したがって、焼結後の本発明の目標特性である常温誘電率が2500以上、7V/μmでのDC-bias誘電率が1050以上、150℃での耐電圧が65V/μm以上、RC値が1000ΩF以上、及び-55℃及び125℃でのTCCが-22%~22%を満たすことができる。
【0102】
一実施形態において、第1主成分13のコア13aのサイズは、40~200nmであることができる。第1主成分13の断面図を概略的に示した図9を参照すると、コア13aのサイズは、コア13aの直径を意味することができる。
【0103】
第1主成分13のコア13aのサイズが40nm未満である場合には、焼結後に形成された第1結晶粒11のコア11aのサイズを50nm以上に確保することが困難であるため、常温誘電率が低下することがあり、-55℃及び125℃のTCCが±22%の範囲から外れるおそれがある。
【0104】
これに対し、第1主成分13のコア13aのサイズが200nmを超える場合には、焼結後に形成された第1結晶粒11のコア11aのサイズを250nm以下に確保することが困難であるため、dc-bias特性及び高温耐電圧特性が低下するおそれがある。
【0105】
また、第1主成分13及び第2主成分はパウダー状であることができる。
【0106】
第1主成分13を製作する方法は、特に限定する必要はなく、例えば、水熱合成法を利用することができる。具体的には、水熱合成過程中にBaTiO粒子を形成し、粒成長過程中にSnまたはHf元素を添加すると、パウダー中心部のコア13aは、純BaTiOであり、パウダーの端のシェル13bは、SnまたはHfが固溶されたコア-シェル(Core-Shell)状のパウダーを合成することができ、コア領域のサイズ及びパウダーのサイズを調節することができる。第2主成分は固相法または水熱合成法で製作することができる。
【0107】
以下、本発明の一実施形態に係る誘電体組成物に含まれることができる副成分について具体的に説明する。
【0108】
a)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタの元素の酸化物または炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、上記原子価可変アクセプタの元素はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのいずれか一つ以上を含み、上記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタの元素の含有量が主成分100molに対して0.2mol~1.4molであることができる。
【0109】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタの元素は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0110】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタの元素の含有量が0.2mol未満である場合には、高温耐電圧特性が劣化するおそれがあり、1.4molを超える場合には、RC値が劣化するおそれがある。
【0111】
上記第1副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩などの添加形態を区分せず、第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのいずれか一つ以上の元素の含有量を基準とすることができる。原子価可変アクセプタの元素が2以上含まれた場合には、その総和の含有量を基準とすることができる。
【0112】
b)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、Mg酸化物または炭酸塩のいずれか一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、上記第2副成分に含まれるMg元素の含有量が主成分100molに対して2.0mol以下であることができる。
【0113】
第2副成分のMgはRC値を高める役割を果たすことができる。但し、Mg元素の含有量が2.5molを超える場合には、高温耐電圧特性が劣化することがある。
【0114】
c)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、上記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、上記第3副成分に含まれた希土類元素の含有量が主成分100molに対して0.6mol~3.0molであることができる。
【0115】
第3副成分に含まれた希土類元素は、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。希土類元素の含有量が0.6mol未満であるか、3.0molを超える場合には、高温耐電圧特性が劣化するおそれがある。
【0116】
上記第3副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩などの添加形態を区分せず、第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準とすることができる。希土類元素が2以上含まれた場合には、その総和の含有量を基準とすることができる。
【0117】
d)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、上記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含有量の総和は、主成分100molに対して0.19mol~4.8molであることができる。
【0118】
Ba及びCaのうち一つ以上の元素の含有量の総和が0.19mol未満である場合には、RC値が低下するおそれがあり、4.8molを超える場合には、常温誘電率及び高温耐電圧が低下するおそれがある。
【0119】
e)第5副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、Si酸化物、Si炭酸塩及びSiを含むガラスのいずれか一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、上記第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molであることができる。
【0120】
第5副成分に含まれたSi元素の含有量が0.8mol未満であるか、3.0molを超える場合には、焼成緻密度が低くて常温誘電率及び高温耐電圧が劣化するおそれがある。
【0121】
また、第4成分及び第5成分が同時に添加される場合には、第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含有量の総和を4s、上記第5副成分に含まれたSi元素の含有量を5sとするとき、4s/5sは0.24~1.60であることができる。
【0122】
上記4s/5sが0.24未満である場合には、RC値が低下するおそれがあり、1.60を超える場合には、常温誘電率及び高温耐電圧が低下するおそれがある。
【0123】
(実験例)
第1主成分であるパウダーの端にSnまたはHfがドーピングされたパウダーは、水熱合成法で製作した。第2主成分である純BaTiOパウダーは、固相法または水熱合成法で製作した。第1主成分パウダーの平均粒径は、100~400nmの範囲であり、第2主成分パウダーの平均粒径は、150nmレベルであった。
【0124】
表1、3、5、及び7に記載された組成を有する主成分及び副成分が含まれた原料粉末をジルコニアビーズ(beads)を混合/分散メディアとして用い、エタノール/トルエンと分散剤を混合して10時間ミリング(milling)し、バインダーを混合した後、10時間追加ミリング(milling)した。製造されたスラリーは、シート(sheet)製造用成形機を用いて、4μm厚さで形成シートを製造した。上記製造された成形シートにNi内部電極を印刷した。上下カバーはカバー用シート(10~13μm厚さ)を25層に積層して製作し、21層の印刷された活性シートを加圧して積層し、バー(bar)を製作した。上記バー(bar)を切断機を用いて3.2mm×1.6mmサイズのチップ(chip)に切断した。
【0125】
製作が完了した3216サイズのチップ(chip)は、可塑を行った後、還元雰囲気1.0%H/99.0%N(HO/H/N雰囲気)で1150~1200℃の温度で1時間焼成後、1000℃のN雰囲気で3時間の間熱処理して再酸化を行った。焼成されたチップに対してCuペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て、外部電極を形成した。
【0126】
このように完成されたプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(proto-type MLCC)の試験片について容量、DF(Dissipation factor)、絶縁抵抗、TCC(Temperature Coefficient of Capacitance)、高温150℃で電圧step増加に伴う抵抗劣化挙動などを評価した。
【0127】
MLCC Chipの常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを利用して、1kHz、AC 0.5V/μmの条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗(IR)は、10個ずつのサンプルをとり、DC 10V/μmを印加した状態で60秒経過した後測定した。温度による静電容量の変化は、-55℃~125℃の温度範囲で測定された。高温IR昇圧実験は、150℃で電圧段階を5V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定したが、各段階の時間は60分であり、10秒間隔で抵抗値を測定した。高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出したが、これは焼成後、約2.8μm厚さの20層の誘電体を有する3216サイズのチップにおいて、150℃で電圧ステップ(voltage step)dc 5V/μmを60分間印加し、この電圧stepを増加させつつ、測定したときのIRが10-5Ω以上に耐える電圧を意味する。
【0128】
RC値はAC 0.2V/μm、1kHzで測定した常温容量値とDC 10V/μmで測定した絶縁抵抗値の積である。
【0129】
第1及び第2結晶粒の面積割合は、本体の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面の中央部に位置した誘電体層をSTEM/EDSを用いて分析して求めた。
【0130】
具体的には、図2のP領域について図6のようにSTEMを用いてスキャンしてイメージを得た後、STEM/EDS分析により位置P1~P9でのSnまたはHfの含有量を分析した。一つの結晶粒において粒界の左側から出発し、粒界の右側で終わる線分を引き、等間隔に9つの点P1~P9を打ったとき、図7のように粒界を除いた点P2~P8での原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%以上5.0%以下である地点と、1.0未満である点をいずれも有している結晶粒を第1結晶粒とし、図8のように点P2~P8での原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が全て1.0未満である結晶粒を第2結晶粒とした。30個の結晶粒についてSnまたはHf含有量を測定して算出した。
【0131】
また、第1結晶粒のコアの大きさは、図7のようなグラフで2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%未満である領域の大きさを測定したものである。
【0132】
表1、3、5、及び7において、第1主成分及び第2主成分の含有量は、主成分において占めるそれぞれのモル比率を意味し、第1~第5副成分の含有量は、主成分100molに対して各副成分のmol含有量を意味する。
【0133】
表2、4、6及び8は、それぞれ表1、3、5、及び7に明示された実施例に該当するプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(Proto-type chip)の特性を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
表1及び表2は、第1主成分のシェルに含まれたSnまたはHfの含有量、第1主成分及び第2主成分の割合を変化させながら、その特性の変化を観察したものである。
【0137】
表1の実施例1-1は、主成分が第2主成分であるBaTiOが100%であり、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の合計が0.4mol、第2副成分のMg含有量が1.0mol、第3副成分の希土類元素の含有量の合計が1.0mol、第4副成分(Ba、Ca)の合計が2.4mol、第5副成分のSi含有量が1.65molであり、第4副成分及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが1.45のときの実施例を示し、表2の1-1は、この実施例に該当する試料の特性を示す。DC 7V/μmでの誘電率が1095と本発明の目標である1050以上を実現できるが、常温誘電率は2458と目標誘電率である2500以上より小さく、焼結緻密度が低くて高温耐電圧も50V/μmであるため、本発明の目標値65V/μm以上を達成することができない。
【0138】
表1の実施例1-2~1-6は、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の合計が0.4mol、第2副成分のMg含有量が1.0mol、第3副成分の希土類元素の含有量の合計が1.0mol、第4副成分の元素(Ba、Ca)の合計が0.8mol、第5副成分のSi含有量が1.65molであり、第4副成分と第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.48であり、第1主成分が原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が0.5%であるシェルを有するSn 0.5%-Shell BTのとき、第1主成分の割合増加に伴う実施例を示す。表2の実施例1-2~1-6は、これらの特性を示す。第1主成分の割合が増加するにつれ、DC 7V/μmでの誘電率が増加するが、第1主成分100%である条件でも、本発明の目標値1050以上の実現は不可能である。
【0139】
また、第1主成分がSn 0.5%-Shell BTの場合には、第1主成分の割合を増加させても、本発明の第1結晶粒の条件を満たす結晶粒を確保することができないことが確認できる。
【0140】
これに対し、第1主成分が原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%であるシェルを有するSn 1.0%-Shell BTの場合には、本発明の目標特性の実現が可能な条件を見出すことができる。
【0141】
実施例2-1~2-5は、第1主成分のShell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%に増加したSn 1.0%-Shell BTの割合の変化に伴う実施例である。
【0142】
第1主成分の割合が20%と少ない場合(実施例2-1)には、DC 7V/μm誘電率が972と低いが、その割合が30~80%に増加(実施例2-2~2-4)すると、常温誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができることが確認できる。第1主成分の含有量が100%にさらに増加すると、DC 7V/μmでの誘電率はさらに増加するが、常温誘電率が2500以下と低くなって、本発明の目標特性を満たすことができなくなる。本発明の目標特性が実現される実施例2-2~2-4の場合、第1結晶粒の面積割合は、28.3%~80.3%の範囲に属することが確認できる。
【0143】
実施例3-1~3-5は、第1主成分のShell領域の原子割合2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%であるHf 1.0%-Shell BTの割合の変化に伴う実施例を示す。
【0144】
Snが適用された実施例2-1~2-5の場合と同様に、第1主成分の割合が30~80%の範囲(実施例3-2~3-4)のとき、誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができることが確認できる。この時、第1結晶粒の面積割合は、31.3%~80.3%の範囲に属することが確認できる。したがって、第1主成分または第1結晶粒に固溶されたSn及びHfは、本発明で同様の効果を実現することができることが確認できる。
【0145】
実施例4-1~4-5は、第1主成分のShell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が5.0%に増加したSn 5.0%-Shell BTの割合の変化に伴う実施例を示す。
【0146】
第1主成分Shell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)を5.0%まで増加した場合にも、第1主成分Shell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%である実施例2-1~2-5と同一の傾向を確認することができる。第1主成分の割合が20%と少ない場合(実施例4-1)には、DC 7V/μm誘電率が988と低いが、その割合が30~80%に増加(実施例4-2~4-4)すると、常温誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができることが確認できる。第1主成分の含有量が100%にさらに増加すると、DC 7V/μmでの誘電率はさらに増加するが、常温誘電率が2500以下と低くなって、本発明の目標特性を満たすことができなくなる。本発明の目標特性が実現される実施例4-2~4-4の場合、第1結晶粒の面積割合は、29.5%~82.3%の範囲に属することが確認できる。
【0147】
したがって、第1結晶粒の面積割合が28.3%~82.3%を満たす場合、本発明の目標特性が実現されることが確認できる。
【0148】
また、第1主成分のShell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)が1.0%以上5.0%以下であり、第1主成分の割合が30~80%である場合に、本発明の目標特性が実現されることが確認できる。
【0149】
一方、本発明において、第1主成分のShell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)を5.0%を超えて高い割合でパウダーを合成する場合、SnまたはHf成分が合わせられた二次相の生成などによって均一性が低下して、サンプル評価が不可能であった。したがって、第1主成分Shell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)または2*Hf/(Ba+Ti+Hf)は、1.0%以上5.0%以下であることが好ましい。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
実施例5-1~5-5は、第1主成分及び第1結晶粒のコアの大きさによる特性の変化を確認するための実施例である。
【0153】
第1主成分がShell領域の原子割合2*Sn/(Ba+Ti+Sn)が1.0%であるSn 1.0%-Shell BTであり、第1主成分の割合は50%と同一であり、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の合計が0.4mol、第2副成分のMg含有量が1.0mol、第3副成分の希土類元素の含有量の合計が1.0mol、第4副成分の元素(Ba、Ca)の合計が0.8mol、第5副成分のSi含有量が1.65molであり、第4副成分及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.48である。実施例5-1~5-5の第1結晶粒の面積割合は48.1%~52.5%の範囲と互いに類似する。第1結晶粒のコア領域の大きさが30nmと非常に小さい場合(実施例5-1)には、常温誘電率が2500未満であり、TCC(125℃)が±22%の範囲から外れて本発明の目標特性が実現されない。
【0154】
第1結晶粒のコアの大きさが50~250nmの範囲に属する場合(実施例5-2~5-4)には、誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができることが確認できる。
【0155】
第1結晶粒のコアの大きさが300nmと非常に大きい場合(実施例5-5)には、DC 7V/μmでの誘電率が1050未満であり、150℃での高温耐電圧も65V/μm未満と低くなって、本発明の目標特性が実現されない。
【0156】
したがって、本発明の目標特性を実現するためには、第1結晶粒のコアの大きさが50~250nmであることが好ましい。また、本発明の目標特性を実現するためには、第1主成分のコアの大きさが40~200nmであることが好ましい。
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
【0159】
実施例6-1~6-5は、第3副成分の含有量に応じた特性の変化を確認するための実施例である。
【0160】
第3副成分のDy含有量が0.2mol(Dy元素の含有量で0.4mol)と少ない場合(実施例6-1)には、高温耐電圧特性が本発明の目標値65V/μm未満と低くなって、本発明の目標特性が実現されない。
【0161】
また、Dy含有量が2.0mol(Dy元素の含有量で4.0mol)と過度に多い場合(実施例6-5)にも高温耐電圧特性が65V/μm未満と本発明の目標特性が実現されない。
【0162】
Dy含有量が0.3~1.5mol(Dy元素の含有量で0.6~3.0mol)の範囲である場合(実施例6-2~6-4)には、常温誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができることが確認できる。
【0163】
実施例7-1~7-4は、第2副成分の含有量に応じた特性の変化を確認するための実施例である。
【0164】
第2副成分のMgは、RC値を高める役割を果たすことができる。しかし、MgCO含有量が2.5mol(Mg元素の含有量で2.5mol)と過多の場合(実施例7-4)には、高温耐電圧特性が65V/μm未満であり、本発明の目標特性が実現されない。MgCO含有量が0~2.0mol(Mg元素の含有量で0~2.0mol)の範囲である場合(実施例7-1~7-3)、本発明のすべての特性実現が可能である。
【0165】
実施例8-1~8-6は、第1副成分の含有量に応じた特性の変化を確認するための実施例である。
【0166】
原子価可変アクセプタの元素であるMn元素及びV元素の含有量の合計が0.1molと少なすぎる場合(実施例8-1)には、高温耐電圧特性が65V/μm未満と低く、本発明の目標特性が実現されない。
【0167】
また、Mn元素及びV元素の含有量の合計が2.0mol%と、あまりにも過量である場合(実施例8-4)には、RC値が1000未満であるため、本発明の目標特性を満たすことができない。実施例8-5はMn元素の含有量が0.5molであり、実施例8-6はV元素の含有量が0.5molである場合であって、両方のいずれの場合にも本発明のすべての特性実現が可能である。したがって、本発明の目標特性の実現のためには、第1副成分の含有量は、原子価可変アクセプタの元素の含有量の総和が0.2mol~1.4molであることが好ましい。
【0168】
【表7】
【0169】
【表8】
【0170】
実施例9-1~13-2は、第4副成分、第5副成分及びその割合に応じた特性の変化を確認するための実施例である。
【0171】
第5副成分のSiO含有量が0.5molと少ない場合(実施例9-1~9-3)、第4副成分の含有量に関係なく、焼成緻密度が低くて常温誘電率及び高温耐電圧が本発明の目標値の未満であるため、本発明の目標特性の実現が不可能である。
【0172】
実施例10-1~10-5は、第5副成分のSiO含有量が0.8molのとき、第4副成分のBaCO含有量の変化に伴う実施例である。Ba元素の含有量が0.1molと少なすぎる場合(実施例10-1)には、RC値が本発明の目標値1000未満であるという問題があり、1.5molとあまりにも過量である場合(実施例10-5)には、常温誘電率及び高温耐電圧が本発明の目標値である2500及び65V/μmよりも低いという問題がある。
【0173】
実施例10-2~10-4は、誘電率≧2500、DC 7V/μmでの誘電率≧1050、150℃での高温耐電圧≧65V/μm、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%であるすべての特性を満たすことができるが、この時、第4及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.24~1.60の範囲に属することが確認できる。
【0174】
実施例11-1~11-7は、第5副成分のSiO含有量が1.65mol(Si元素の含有量が1.65mol)であるとき、第4副成分のBaCO含有量の変化に伴う実施例である。第4副成分のBa含有量が少なすぎる場合(実施例11-1)、またはあまりにも過量である場合(実施例11-5)には、本発明の目標特性が実現されず、第4及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.24~1.60の範囲に属する場合(実施例11-2~11-4)、本発明のすべての目標特性の実現が可能であることが分かる。実施例11-6及び11-7は、Baの一部または全部をCaに変更したときの特性を示すが、同一の特性が実現されたことが分かる。
【0175】
実施例12-1~12-5は、第5副成分のSiO含有量が3.0mol(Si元素の含有量が3.0mol)であるとき、第4副成分のBaCO含有量の変化に伴う実施例を示す。実施例11-1~11-7の場合と同様に、第4及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.24~1.60の範囲に属する場合(実施例12-2~12-4)、本発明のすべての目標特性の実現が可能であることが分かる。
【0176】
実施例13-1~13-2は、第5副成分のSiO含有量が4.0molである場合にBaCO含有量の変化に伴う実施例を示すが、この場合には、第4及び第5副成分の割合(Ba+Ca)/Siが0.24~1.60の範囲に属するとしても常温誘電率、DC 7V/μmでの誘電率、高温耐電圧が本発明の目標値よりも低くて目標特性の実現が不可能であることが確認できる。
【0177】
第4副成分、第5副成分及びその割合に応じた特性の変化を要約すると、本発明のすべての特性を実現するためには、第4副成分に含まれたBa及びCaのいずれか一つ以上の元素の含有量の総和は、0.19mol~4.8molであることが好ましく、第5副成分に含まれたSi元素の含有量が主成分100molに対して0.8mol~3.0molであることが好ましく、(Ba+Ca)/Si割合が0.24~1.60の範囲であることが好ましい。
【0178】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0179】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a 電極層
132b めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9