IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社高見沢サイバネティックスの特許一覧

<>
  • 特開-硬貨処理装置 図1
  • 特開-硬貨処理装置 図2
  • 特開-硬貨処理装置 図3
  • 特開-硬貨処理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017780
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/00 20190101AFI20220119BHJP
   G07D 11/10 20190101ALI20220119BHJP
【FI】
G07D11/00 151
G07D11/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120530
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂原 勝之
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 清一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊樹
【テーマコード(参考)】
3E001
3E141
【Fターム(参考)】
3E001AA01
3E001AB05
3E001BA01
3E001CA06
3E001CA09
3E001DA10
3E001EA04
3E001EB07
3E001FA21
3E141AA08
3E141GA01
3E141GB05
3E141HA06
3E141HA09
3E141JA10
3E141KA04
3E141KB07
3E141LA21
(57)【要約】
【課題】小型化を図った硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置1は、複数の硬貨を一括して投入可能な投入部11と、投入部11に投入された硬貨を1枚ずつ繰り出す繰出部12と、繰出部12で繰り出された硬貨を搬送する第1の搬送部33、34と、繰出部12又は第1の搬送部33、34を移動している硬貨の種類を識別する識別部16と、識別部16で識別された後の第1の搬送部34で搬送されている硬貨のうち、第1の基準によって選択された硬貨を振り分けて第1の搬送部34から除外する第1の振分部21と、第1の振分部21で第1の搬送部34から除外されなかった硬貨を、第1の搬送部34が搬送する方向とは異なる方向に搬送する第2の搬送部36と、第2の搬送部36で搬送されている硬貨を第2の基準で振り分ける第2の振分部22と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硬貨を一括して投入可能な投入部と、
前記投入部に投入された前記硬貨を1枚ずつ繰り出す繰出部と、
前記繰出部で繰り出された前記硬貨を搬送する第1の搬送部と、
前記繰出部又は前記第1の搬送部を移動している前記硬貨の種類を識別する識別部と、
前記識別部で識別された後の前記第1の搬送部で搬送されている前記硬貨のうち、第1の基準によって選択された前記硬貨を振り分けて前記第1の搬送部から除外する第1の振分部と、
前記第1の振分部で前記第1の搬送部から除外されなかった前記硬貨を、前記第1の搬送部が搬送する方向とは異なる方向に搬送する第2の搬送部と、
前記第2の搬送部で搬送されている前記硬貨を第2の基準で振り分ける第2の振分部と、を備える、
硬貨処理装置。
【請求項2】
前記繰出部又は前記第1の搬送部を移動している前記硬貨の通過を検知する上流検知部と、
前記第2の振分部で振り分けられた前記硬貨を収納する収納部と、
前記第2の振分部で振り分けられて前記収納部に収納される前記硬貨を検知する下流検知部と、
前記下流検知部が前記硬貨を検知した結果に基づいて前記硬貨の計数を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記上流検知部が前記硬貨の通過を検知してからの経過時間に基づいてマスク時間を決定し、前記マスク時間の決定の対象となった前記硬貨を前記下流検知部が検知してから前記マスク時間が経過するまで前記下流検知部による検知結果の受け付けを停止する、
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記上流検知部がn番目(nは1以上の整数)の前記硬貨を検知してさらにn+1番目の前記硬貨を検知した後に前記下流検知部が前記n番目の前記硬貨を検知したときに、前記上流検知部が前記n番目の前記硬貨を検知してから前記n+1番目の前記硬貨を検知するまでの時間に対して所定の時間を差し引いて算出マスク時間を算出し、当該算出マスク時間を前記マスク時間として、前記下流検知部が前記n番目の前記硬貨を検知してから前記算出マスク時間が経過するまで前記下流検知部による検知結果の受け付けを停止する、
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記上流検知部がn番目(nは1以上の整数)の前記硬貨を検知してからn+1番目の前記硬貨を検知する前に前記下流検知部が前記n番目の前記硬貨を検知したときに、あらかじめ設定された予設定マスク時間を前記マスク時間として、前記下流検知部が前記n番目の前記硬貨を検知してから前記予設定マスク時間が経過するまで前記下流検知部による検知結果の受け付けを停止する、
請求項2又は請求項3に記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置に関し、特に小型化を図った硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駅務機器(自動券売機や自動精算機等)、あるいは金融端末機等には、硬貨の入金及び出金の処理を自動で行う硬貨処理装置が用いられている。このような硬貨処理装置には、入金された硬貨を、適宜分類し、収納又は保留し、循環させて出金する、循環式の硬貨処理装置が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-75852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬貨処理装置は、設置の自由度を向上させる観点から、小型化が望まれている。しかしながら、従前の硬貨処理装置は、一般に、複数種の硬貨を種別に収納する複数の収納部と、入金された硬貨を一時的に保留する保留部と、が一列に配列されており、少なくとも、これらの収納部及び保留部の幅を合計した寸法よりも大きくならざるを得なかった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、小型化を図ることができる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図2に示すように、複数の硬貨を一括して投入可能な投入部11と、投入部11に投入された硬貨を1枚ずつ繰り出す繰出部12と、繰出部12で繰り出された硬貨を搬送する第1の搬送部33、34と、繰出部12又は第1の搬送部33、34を移動している硬貨の種類を識別する識別部16と、識別部16で識別された後の第1の搬送部34で搬送されている硬貨のうち、第1の基準によって選択された硬貨を振り分けて第1の搬送部34から除外する第1の振分部21と、第1の振分部21で第1の搬送部34から除外されなかった硬貨を、第1の搬送部34が搬送する方向とは異なる方向に搬送する第2の搬送部36と、第2の搬送部36で搬送されている硬貨を第2の基準で振り分ける第2の振分部22と、を備える。
【0007】
このように構成すると、投入された硬貨を振り分けることを、第1の搬送部における第1の振分部と、第1の搬送部とは搬送方向が異なる第2の搬送部における第2の振分部とで行うので、第1の振分部と第2の振分部との配置の自由度を向上させることができ、硬貨処理装置の小型化を図ることが可能になる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図1及び図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係る硬貨処理装置1において、繰出部12又は第1の搬送部33、34を移動している硬貨の通過を検知する上流検知部16と、第2の振分部22で振り分けられた硬貨を収納する収納部25と、第2の振分部22で振り分けられて収納部25に収納される硬貨を検知する下流検知部26と、下流検知部26が硬貨を検知した結果に基づいて硬貨の計数を行う制御部60と、を備え、制御部60は、上流検知部16が硬貨の通過を検知してからの経過時間に基づいてマスク時間を決定し、マスク時間の決定の対象となった硬貨を下流検知部26が検知してからマスク時間が経過するまで下流検知部26による検知結果の受け付けを停止する。
【0009】
このように構成すると、下流検知部付近で硬貨が複雑な挙動をして停滞した場合に、マスク時間の間は下流検知部が同一硬貨を複数回にわたって検知した場合もこの重複する検知結果を除外することができ、計数の精度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図1及び図2並びに図4を参照して示すと、上記本発明の第2の態様に係る硬貨処理装置1において、制御部60は、上流検知部16がn番目(nは1以上の整数)の硬貨を検知して(S1でYES)さらにn+1番目の硬貨を検知した(S3でYES)後に下流検知部26が前記n番目の硬貨を検知したとき(S5でYES)に、上流検知部16がn番目の硬貨を検知してからn+1番目の硬貨を検知するまでの時間に対して所定の時間を差し引いて算出マスク時間を算出し(S7)、当該算出マスク時間をマスク時間として、下流検知部26がn番目の硬貨を検知してから算出マスク時間が経過するまで下流検知部26による検知結果の受け付けを停止(S8)する。
【0011】
このように構成すると、上流検知部が検知した連続する2つの硬貨の通過間隔に近いマスク時間を設定することができ、下流検知部がn番目の硬貨を検知した後にn+1番目の硬貨を検知する直前まで制御部が下流検知部の検知結果の受け付けを停止することで、下流検知部による重複した検知結果を極力除外して、計数の精度をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図1及び図2並びに図4を参照して示すと、上記本発明の第2の態様又は第3の態様に係る硬貨処理装置1において、制御部60は、上流検知部16がn番目(nは1以上の整数)の硬貨を検知して(S1でYES)からn+1番目の硬貨を検知する前に下流検知部26がn番目の硬貨を検知したときに(S14でYES)、あらかじめ設定された予設定マスク時間をマスク時間として、下流検知部26がn番目の硬貨を検知してから予設定マスク時間が経過するまで下流検知部26による検知結果の受け付けを停止(S15)する。
【0013】
このように構成すると、下流検知部による重複した検知結果を除外したうえで、n+1番目の硬貨の処理を待機することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投入された硬貨を振り分けることを、第1の搬送部における第1の振分部と、第1の搬送部とは搬送方向が異なる第2の搬送部における第2の振分部とで行うので、第1の振分部と第2の振分部との配置の自由度を向上させることができ、硬貨処理装置の小型化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る硬貨処理装置の概略構成を示す水平断面図である。
図2図1のII-II断面における縦断面図である。
図3図1のIII-III断面における縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る硬貨処理装置の硬貨計数時の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
まず図1図3を参照して、本発明の実施の形態に係る硬貨処理装置1を説明する。図1図3は、硬貨処理装置1の概略構成を示す断面図であり、図1は水平断面図、図2図1のII-II断面における縦断面図、図3図1のIII-III断面における縦断面図である。硬貨処理装置1は、主要な構成として、投入部11と、繰出部12と、搬送部13と、識別部16と、第1の振分部(以下、単に「第1振分部」という。)21と、第2の振分部(以下、単に「第2振分部」という。)22と、収納部25と、収納検知部26と、制御部60とを備えている。
【0018】
投入部11は、硬貨処理装置1への硬貨の入口となる部分である。投入部11には、硬貨処理装置1の外部から内部へ硬貨を通過させる投入口が形成されている。投入口は、典型的には、硬貨処理装置1の高さ方向Hの中間部付近に形成されている。また、投入口は、複数枚の硬貨を一括して投入することができる大きさに形成されている。多くの場合、投入部11に投入される複数の硬貨は多種にわたり、日本の通貨であれば100円硬貨、10円硬貨、50円硬貨(例えば大韓民国の通貨であれば100ウォン硬貨、10ウォン硬貨、50ウォン硬貨)等が混在して一括投入される。投入部11は、投入口周辺のカバーを開放することで、繰出部12へ直接硬貨の投入を可能とするように構成されていてもよい。
【0019】
繰出部12は、投入部11に投入された硬貨を1枚ずつ繰り出す部位である。繰出部12は、投入部11から見て、下方及び/又は奥側に配置されている。繰出部12は、投入部11から投入された硬貨を収納し、その収納した硬貨を所定間隔で1枚ずつ分離して搬送部13へ繰出すように構成されている。繰出部12は、硬貨を繰り出す速度に適合した量の硬貨を収納できる大きさに形成されている。また、繰出部12は、典型的には下部が解放する傾斜型が用いられる。傾斜型の場合、硬貨が複数枚一括投入された際に異物が混入したとしても、下部を開放することで、その異物を除去する等の対応がしやすくなる。繰出部12は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。
【0020】
搬送部13は、繰出部12から1枚ずつ繰り出されてきた硬貨を搬送する部位である。搬送部13は、本実施の形態では、上昇搬送部33と、送り搬送部34と、折り返し搬送部35と、戻り搬送部36とを有している。上昇搬送部33は、繰出部12から繰り出された硬貨を受け取り、硬貨処理装置1の高さ方向Hの上部まで、受け取った硬貨を斜め上方に上昇搬送する部位である。送り搬送部34は、上昇搬送部33によって上部まで搬送されてきた硬貨を、典型的には水平に、奥側に向けて搬送する部位である。なお、ここでいう奥側は、投入部11が設けられた側とは反対側である。本実施の形態では、上昇搬送部33と送り搬送部34とが、第1の搬送部に相当する。折り返し搬送部35は、送り搬送部34の下流側で、硬貨を下方に搬送する部位である。折り返し搬送部35は、硬貨処理装置1内の奥側に配置されている。折り返し搬送部35は、プーリに掛けられた搬送ベルト2本で硬貨を挟みながら、挟んだ硬貨を下方に搬送するように構成されている。戻り搬送部36は、折り返し搬送部35から受け取った硬貨を、典型的には水平に、手前側に向けて搬送する部位である。ここでいう手前側は、投入部11が設けられた側であり、奥側の反対側である。戻り搬送部36は、送り搬送部34における搬送方向と逆方向に硬貨を搬送するように構成されており、第2の搬送部に相当する。戻り搬送部36は、本実施の形態では、送り搬送部34の鉛直下方に配置されている。換言すれば、送り搬送部34と戻り搬送部36とは、平面視において重なる位置に配置されている。したがって、図1の平面図には、戻り搬送部36が表れていない。このような構成により、送り搬送部34と戻り搬送部36とが同じ幅で上下に配置され、両者は折り返し搬送部で接続されている。戻り搬送部36は、送り搬送部34よりも下方であるが、典型的には、硬貨処理装置1の高さ方向Hで概ね上部1/3の空間内に収容されている。したがって、戻り搬送部36の下方には、収納部25等を配置できる空間が確保されている。このように構成された搬送部13では、繰出部12から受け取った硬貨が、上昇搬送部33で上昇し、送り搬送部34で奥側に移動し、折り返し搬送部35で下方に移動しながら折り返され、戻り搬送部36で手前側に移動するようになっている。搬送部13は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。
【0021】
識別部16は、硬貨の種類を識別する部位である。識別部16は、本実施の形態では、送り搬送部34に設けられており、送り搬送部34を移動している硬貨の種類を識別するように構成されている。識別部16は、送り搬送部34における硬貨の移動方向で見て、送り搬送部34の中間よりも上流側(上流側の1/2の範囲内)に設けられていることが好ましく、上流側の1/3の範囲内に設けられていることがさらに好ましい。識別部16は、搬送されてきた硬貨が、正規の硬貨か否か(真正か否か)を識別することができると共に、正規の硬貨の種類(例えば額面が、10、50、100、500(日本円/大韓民国ウォン)等)を識別することができるように構成されている。識別部16は、硬貨の種類を識別する前提として、硬貨の存在(通過)を検知している。本実施の形態では、識別部16が、送り搬送部34を移動している硬貨の通過を検知する上流検知部を兼ねている。上流検知部は、硬貨の通過を検知する通過センサとして機能する。識別部16は、硬貨が通過したこと及び通過した硬貨の種類についての情報を、信号として制御部60に送信するように構成されている。
【0022】
第1振分部21は、送り搬送部34で搬送されている硬貨を第1の基準で振り分ける部位である。第1振分部21は、硬貨の搬送方向で見て識別部16の下流側の送り搬送部34に設けられている。したがって、第1振分部21は、識別部16で識別された後の硬貨を第1の基準で振り分けることになる。本実施の形態における第1の基準は、振り分ける硬貨が真正であるか否かと、循環硬貨であるか否かとしている。循環硬貨とは、正規な硬貨であって、硬貨処理装置1に入金された硬貨が釣銭として硬貨処理装置1から出金されるように循環利用される硬貨である。循環硬貨ではない非循環硬貨は、正規な硬貨であって、釣銭として出金されずに硬貨処理装置1内に保留される硬貨である。第1振分部21は、典型的には、振分爪と、この振分爪を駆動する振分爪駆動手段とを有しており、真正でない硬貨と、非循環硬貨とを、送り搬送部34から除外するように構成されている。したがって、第1振分部21よりも下流側の送り搬送部34、折り返し搬送部35、及び戻り搬送部36には、第1振分部21で送り搬送部34から除外されなかった硬貨が搬送されることとなる。振分爪を駆動する振分爪駆動手段は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。
【0023】
第1振分部21で振り分けられた真正でない硬貨は、振分爪によって放出シュート18に入れられる。第1振分部21で振り分けられた非循環硬貨は、保留シュート19に入れられる。放出シュート18及び保留シュート19は、平面視において硬貨が搬送部13によって移動する方向(以下「奥行き方向D」という。)に直交する方向(以下「幅方向W」という。)の、第1振分部21の隣に配置されている。このような配置により、硬貨処理装置1が奥行き方向Dに大きくなることを抑制することができ、硬貨処理装置1の小型化が図られている。なお、図3では、放出シュート18及び保留シュート19に対する識別部16、第1振分部21、送り搬送部34の位置関係を示すために、参考として、実際には表れない識別部16、第1振分部21、送り搬送部34を破線で示している。放出シュート18の先(硬貨の移動方向下流側)には、放出シュート18に入った硬貨を出金口に導く放出経路28が設けられている。なお、図1の平面図では、送り搬送部34に対して幅方向W隣の部分の下方の構成を示すため、放出経路28を省略している。放出経路28の断面積は、識別部16により識別可能な複数種類の硬貨のうち、最大径及び最大厚の硬貨が通過できる大きさに形成されている。保留シュート19に入った硬貨は、保留部40に導かれるようになっている。保留部40については後述する。第1振分部21は、1つの振分爪で放出シュート18と保留シュート19とに区別して振り分けることとしてもよく、放出シュート18に振り分ける振分爪と保留シュート19に振り分ける振分爪とを個別に有していてもよい。
【0024】
第2振分部22は、戻り搬送部36に設けられており、戻り搬送部36で搬送されている硬貨(循環硬貨)を第2の基準で振り分ける部位である。本実施の形態における第2の基準は、金種としている。つまり、第2振分部22では、循環硬貨が金種ごとに振り分けられるようになっている。第2振分部22は、典型的には、硬貨を外形で振り分けることができるように、対象とする硬貨を通すがその硬貨よりも一回り以上大きい硬貨は通さない振分孔が複数形成された振分板を有している。振分板に形成された複数の振分孔は、対象とする硬貨の径の小さいものから順に、硬貨が搬送される方向の上流から下流に向けて一列に(直線状に)配列されている。このように構成された第2振分部22は、戻り搬送部36のほぼ全体にわたって設けられている。戻り搬送部36に設けられた第2振分部22は、第1振分部21の鉛直下方(平面視において第1振分部21と重なる位置)に配置されていることとなる。硬貨処理装置1は、識別部16で識別された硬貨を振り分ける部位を第1振分部21と第2振分部22とに分け、これらを鉛直上下に配置したので、奥行き方向Dの大きさの増大を抑制することができ、この配置が硬貨処理装置1の小型化に寄与している。
【0025】
収納部25は、第2振分部22で振り分けられた硬貨を収納する部位である。収納部25は、収納される硬貨が循環硬貨であり、収納された硬貨が必要に応じて放出されることから、収納放出部と呼ばれることもある。収納部25は、第2振分部22で振り分けられた複数種類の硬貨を種類ごとに収納できるように、複数が設けられている。本実施の形態では、硬貨が日本円の場合、50円硬貨を収納する収納部25Aと、100円硬貨を収納する収納部25Bと、10円硬貨を収納する収納部25Cと、500円硬貨を収納する収納部25Dとが、設けられている。本明細書では、各収納部25A、25B、25C、25Dに共通する事項を説明するときは「収納部25」と総称することとしている。各収納部25A、25B、25C、25Dは、戻り搬送部36における硬貨の搬送方向で上流から下流に向けてこの順で配置されている。また、各収納部25A、25B、25C、25Dは、第2振分部22の各振分孔の下方に配置されており、振分孔を通過して落下した硬貨を受け入れることができるように構成されている。収納部25は、収納されている硬貨を1枚ずつ放出することができる放出機構(不図示)が、下部に設けられている。収納部25の下部側面には、放出機構(不図示)によって収納部から放出される硬貨の出口となる開閉可能な放出口(不図示)が設けられている。放出口(不図示)は、本実施の形態では、幅方向Wに硬貨を放出するように、収納部25の下部側面に形成されている。放出口(不図示)には、放出される硬貨を計数する放出検知部(不図示)が設けられている。放出機構(不図示)は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。また、収納部25は、出金するための硬貨を金種ごとに上部から補給することができるように、上部に開閉可能な上蓋が設けられていてもよい。
【0026】
収納検知部26は、収納部25に収納される硬貨を検知する部位であり、下流検知部に相当する。収納検知部26は、第2振分部22の振分孔を通過した後で、収納部25に入る硬貨の通過を検知するように構成されており、典型的にはフォトインタラプタを用いた光学式センサが用いられる。収納検知部26は、各収納部25A、25B、25C、25Dにそれぞれ設けられている。すなわち、収納検知部26は、本実施の形態では、収納部25Aに設けられた収納検知部26A、収納部25Bに設けられた収納検知部26B、収納部25Cに設けられた収納検知部26C、及び収納部25Dに設けられた収納検知部26Dを有している。本明細書では、各収納検知部26A、26B、26C、26Dに共通する事項を説明するときは「収納検知部26」と総称することとしている。収納検知部26は、収納部25の上部に設けられている。収納検知部26は、硬貨を検知したことを、信号として制御部60に送信するように構成されている。
【0027】
保留部40は、前述のように、第1振分部21で振り分けられた非循環硬貨を保留する部位である。保留部40は、保留シュート19の下方、かつ、幅方向Wで収納部25の隣に配置されている。保留部40は、保留筒41と、シャッタ42とを含んでいる。保留筒41は、複数の硬貨(本実施の形態では非循環硬貨)を収容して一時的に保留することができるように構成された筒状の部材である。保留筒41は、筒状の両端面が開口になっている。保留筒41の大きさ及び形状は、収容する可能性がある硬貨の種類及び一時的に保留する硬貨の枚数を勘案して決定するとよい。保留筒41は、断面形状が、円形でもよく、四角形や他の多角形であってもよい。保留筒41は、典型的には、筒状の軸線が鉛直上下に延びる向きで配置されている。保留筒41は、鉛直方向最上部の入口から最下部の出口に向けて、末広がりに形成されている。この構成により、保留筒41の内部で硬貨がブリッジして(連なって)詰まってしまうことを抑制することができる。シャッタ42は、保留筒41の下部の出口を開閉する部材である。シャッタ42は、硬貨載置位置において保留筒41の下部の出口を天面42aが塞ぐことができるように、保留筒41に近接して、保留筒41の鉛直下方に配置されている。シャッタ42の天面42aは、保留筒41の底面(出口)を包含する大きさに形成されている。シャッタ42は、支持軸43によって支持されていると共に、支持軸43周りに正逆両方向に回転することができるようになっている。このような構成により、シャッタ42は、保留筒41の底面を塞いだ状態(硬貨載置位置)から、支持軸43周りに一方向に回転することにより保留筒41の底面を開放できると共に、他方向に回転することによっても保留筒41の底面を開放できるようになっている。シャッタ42が一方向に回転して保管位置になったときは、保留筒41の底面が、硬貨を保管する金庫部49に通じるようになっている。シャッタ42が逆方向に回転して返却位置になったときは、保留筒41の底面が、後述する出金搬送部50に通じるようになっている。シャッタ42は、ステッピングモータ等の電動モータ(不図示)によって駆動されるように構成されている。シャッタ42の周囲には、複数の位置検知センサが配置されており、シャッタ42が、硬貨載置位置、保管位置、返却位置のいずれの位置にあるかを検知することができるように構成されている。シャッタ42は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。
【0028】
出金搬送部50は、収納部25から放出された硬貨、あるいは保留部40のシャッタ42が返却位置になったときに保留筒41から放出された硬貨を、状況に応じて出金口58又は回収口59に導く部位である。出金口58は、返却硬貨や釣銭硬貨が放出される開口である。回収口59は、硬貨処理装置1から自動で放出しないことになった硬貨を金庫部49に向けて通過させる開口である。出金搬送部50は、平面視において、送り搬送部34に対して、奥行き方向Dが概ね同じ長さで、幅方向Wの隣に設けられている。また、出金搬送部50は、収納部25から放出された硬貨及び保留部40から落下してきた硬貨を受けることができるように、収納部25の放出口(不図示)よりも下方かつ保留部40の下方に設けられている。出金搬送部50は、搬送ベルト51と、出金シャッタ52と、回収シャッタ53とを有している。搬送ベルト51は、収納部25から放出された硬貨及び保留部40から落下してきた硬貨を受けて、受けた硬貨を奥行き方向Dに搬送するものである。搬送ベルト51は、搬送モータ(不図示)によって、正逆両方向に、必要な距離を、移動することができるように構成されている。出金シャッタ52は、搬送ベルト51の出金口58側の端部に設けられている。出金シャッタ52は、搬送ベルト51から出金口58への硬貨の移動を、閉じているときに阻止し、開いているときに許可するものである。回収シャッタ53は、搬送ベルト51の回収口59側の端部に設けられている。回収シャッタ53は、搬送ベルト51から回収口59への硬貨の移動を、閉じているときに阻止し、開いているときに許可するものである。出金シャッタ52及び回収シャッタ53は、シャッタ駆動機構(不図示)によって、それぞれ独立して、開閉動作をすることができるように構成されている。また、出金搬送部50は、本実施の形態では、搬送ベルト51の従動軸に設けられた回転片55と、回転片55の回転状態を検知する状態検知センサ56とを有している。状態検知センサ56は、回転片55が近接したり離れたりする状態を検知することができる近接スイッチなどが用いられ、例えば光の反射を用いるものや、回転片55の近接を磁性や渦電流を用いて検出するものがある。出金搬送部50は、制御部60からの信号によって作動するように構成されている。
【0029】
制御部60は、硬貨処理装置1の動作を司るものである。制御部60は、動作制御部61と、計時部62と、記憶部63と、演算部64と、計数部65とを有している。これらの各部は、本実施の形態では説明の便宜上機能で区別して表しているが、典型的には制御部60内に渾然一体に構成されており、あるいはこれらの各部のうちの1つ又は複数の部分が物理的に分かれて構成されていてもよい。動作制御部61は、硬貨処理装置1の各部の動作を制御する部位である。動作制御部61は、繰出部12、搬送部13、識別部16、第1振分部21、収納部25、収納検知部26、保留部40、出金搬送部50のそれぞれに対して電気的に接続されており、制御信号を受信及び/又は送信することができるように構成されている。動作制御部61と電気的に接続された上述の各部は、動作制御部61との間の制御信号の授受によって所定の動作を行うことができるように構成されている。より詳細には、動作制御部61は、投入部11から投入された硬貨が繰出部12に入ったときに、繰出部12を動作させ、入ってきた硬貨を1枚ずつ搬送部13に送るように構成されている。また、動作制御部61は、搬送部13の発停を制御して、搬送部13を作動させたときに、繰出部12から受け取った硬貨を収納部25に向けて搬送するように構成されている。また、動作制御部61は、識別部16から、硬貨の通過を検知したこと及び識別した硬貨の種類の情報を受信することができるように構成されている。また、動作制御部61は、識別部16から受信した情報に基づいて、第1振分部21の振分爪を適宜作動させるように構成されている。また、動作制御部61は、収納部25からの放出硬貨の放出量を制御することができるように構成されている。また、動作制御部61は、収納検知部26から、硬貨の通過を検知したことの情報を受信することができるように構成されている。また、動作制御部61は、保留部40のシャッタ42を作動させて、シャッタ42を、硬貨載置位置、保管位置、返却位置のいずれの位置に適宜移動させるように構成されている。また、動作制御部61は、出金搬送部50の搬送ベルト51並びに出金シャッタ52及び回収シャッタ53を適宜作動させて、必要に応じて硬貨を出金口58又は回収口59に導くように構成されている。
【0030】
計時部62は、識別部16が、ある硬貨(n番目の硬貨)を検知してから次の硬貨(n+1番目の硬貨)を検知するまでの時間(以下「通過間隔」という。)を算出する根拠となる時間を計測する部位である。計時部62は、本実施の形態では、硬貨処理装置1が起動したときを起点として、識別部16が硬貨を検知するまでの時間を計測し、計測した時間を演算部64に伝達するように構成されている。本実施の形態では、時間計測の開始(硬貨処理装置1の起動)からある硬貨(n番目の硬貨)を識別部16が検知するまでの時間と、時間計測の開始から次の硬貨(n+1番目の硬貨)を識別部16が検知するまでの時間との差を求めて、通過間隔としている。しかしながら、計時部62が複数の時間を計測する機能を持ち、識別部16がある硬貨(n番目の硬貨)を検知したときに計時を開始し、識別部16が次の硬貨(n+1番目の硬貨)を検知したときに計時を終了することで、通過間隔を計測してもよい。
【0031】
記憶部63は、硬貨処理装置1の作動に必要な各種の情報を記憶する部位である。記憶部63は、識別部16で識別された硬貨の識別結果の情報を識別部16から受けて記憶するように構成されている。また、記憶部63は、マスク時間の一種である予設定マスク時間が記憶されている。ここで、マスク時間は、収納検知部26が硬貨の存在を検知するか否かにかかわらず、制御部60が収納検知部26の検知結果の受け付けを停止する時間である。つまり、マスク時間は、収納検知部26が硬貨の存在を検知した場合であっても、硬貨を検知していないとみなす時間である。マスク時間は、後述するように、対象となる硬貨が上流検知部(本実施の形態では識別部16)で検知されてからの経過時間に基づいて決定される。収納検知部26が硬貨を検知していないとみなす時間の始期は、対象となる硬貨が収納検知部26で検知された直後である。このようにすることで、対象となる硬貨が、仮に収納検知部26付近に停滞したとしても、収納検知部26が当該硬貨を検知するのが1度になる確率が高くなる。記憶部63に記憶されている予設定マスク時間は、あらかじめ設定されている(あらかじめ決められている)マスク時間である。予設定マスク時間は、硬貨が識別部16から収納検知部26までの移動に要する時間又はこの移動時間よりもわずかに短い時間としてもよく、典型的には実測により求められる。
【0032】
演算部64は、硬貨処理装置1の制御に必要な各種の数値を演算する部位である。演算部64は、計時部62で計測された、時間計測の開始(硬貨処理装置1の起動)から識別部16が硬貨を検知するまでの時間を適宜受け取って通過間隔を演算するように構成されている。また、演算部64は、演算された通過間隔から、算出マスク時間を算出するように構成されている。算出マスク時間は、マスク時間の一種であり、本実施の形態では、通過間隔から所定の時間を差し引くことで求められる。ここでの所定の時間は、極力短い時間とするのが好ましい。つまり、算出マスク時間が、通過間隔に極力近い、通過間隔よりも短い時間となるのが好ましい。ただし、収納検知部26がある硬貨(n番目の硬貨)を検知してから次の硬貨(n+1番目の硬貨)を検知するまでの時間よりも、算出マスク時間の方が短くなる範囲で、所定の時間を決定することとする。なお、本実施の形態では、収納検知部26が複数存在するが、最も上流側(最も折り返し搬送部35の近い側)の収納検知部26を基準とするとよい。このような観点から、所定の時間は、典型的には実測によってあらかじめ確認した時間とするとよい。
【0033】
計数部65は、収納検知部26が硬貨を検知した結果に基づいて、硬貨の計数を行う部位である。計数部65は、マスク時間(予設定マスク時間又は算出マスク時間)以外で収納検知部26が硬貨を検知した数を数えることで、当該収納検知部26が設けられた収納部25に収納される硬貨を計数するように構成されている。つまり、計数部65は、収納検知部26が硬貨を検知してから、設定されたマスク時間が経過するまでは、収納検知部26が硬貨を検出した場合でも、収納検知部26からの検知信号を無視して計数しないように構成されている。また、計数部65は、入金された硬貨を計数した結果と、利用者が操作した取り引きの金額とを比較して、その後の動作の内容を動作制御部61に伝えるように構成されている。なお、利用者による取引操作は、典型的には、投入部11の近辺に設置された取引操作盤(不図示)を介して行われる。
【0034】
硬貨処理装置1は、これまで説明してきたように、各構成部材を適正に配置することで、奥行き方向Dへの小型化を図ることを可能にしている。この適正な配置として、搬送部13を、折り返し搬送部35で折り返して、送り搬送部34と戻り搬送部36とを上下に配置したことが挙げられる。また、硬貨を振り分ける部位を第1振分部21と第2振分部22とに分けて上下に配置したことが挙げられる。また、配置に自由度が有る保留部40、放出経路28、制御部60等を適正に配置したことが挙げられる。
【0035】
引き続き図1図3を参照して、硬貨処理装置1の作用を説明する。硬貨処理装置1が起動すると、動作制御部61が必要に応じて各部を作動させると共に、計時部62が時間計測を開始する。硬貨処理装置1は、作動中、投入部11からの硬貨の投入を待機している。投入部11から硬貨処理装置1内に複数の硬貨が一括して投入されると、投入された硬貨は、繰出部12に収納される。繰出部12に収納された硬貨は、1枚ずつ分離され、上昇搬送部33へ1枚ずつ搬送される。なお、投入部11に一括投入された硬貨の中に異物(変形硬貨などを含む)が含まれていた場合、当該異物は搬送部13に搬送されずに繰出部12に残留する。繰出部12に残留した異物は、例えば下部の開閉機構を適時に開放することにより、繰出部12から取り出すことができる。
【0036】
繰出部12から上昇搬送部33に搬送された硬貨は、送り搬送部34に搬送される。送り搬送部34に搬送された硬貨は、折り返し搬送部35に向けて移動している最中に、識別部16を通過する。硬貨が識別部16を通過すると、識別部16は、硬貨の通過を検知すると共に検知した硬貨の種類を識別し、硬貨を検知したこと及び識別した結果を動作制御部61に送信する。動作制御部61は、識別部16から情報を受信したら、硬貨を識別した結果を記憶部63に記憶すると共に、時間計測の開始から識別部16が硬貨を検知するまでの時間を演算部64に送る。そのうえで、識別部16で識別された硬貨が真正であるとみなされなかった場合、動作制御部61は、第1振分部21を作動させ、当該硬貨を放出シュート18に振り分ける。放出シュート18に入れられた硬貨は、放出経路28を経由して出金口58に直接放出され、出金口58を通して利用者にそのまま返却される。他方、識別部16で識別された硬貨が真正であって非循環である金種の場合、動作制御部61は、第1振分部21を作動させ、当該硬貨を保留シュート19に振り分ける。保留シュート19に入れられた硬貨は、保留部40に至り、そこで一時的に保留される。
【0037】
識別部16で識別された硬貨が、第1振分部21における振り分けの対象とならないものである場合、動作制御部61は第1振分部21を作動させない。この場合、その硬貨は、送り搬送部34から除外されずに第1振分部21を通過して、折り返し搬送部35に至る。折り返し搬送部35に到達した硬貨は、下方に移動しながら折り返されて、戻り搬送部36に搬送される。戻り搬送部36に搬送された硬貨は、送り搬送部34の搬送方向とは逆向きの方向に搬送される。戻り搬送部36で搬送されている硬貨は、折り返し搬送部35から離れる方向に移動して、第2振分部22に至る。第2振分部22に到達した硬貨は、種類に応じて各収納部25A、25B、25C、25Dに振り分けられる。第2振分部22における硬貨の振り分けは、本実施の形態では、前述のように、硬貨の外径を用いて径の小さい硬貨から振分孔により逐次分類するものである。第2振分部22で振り分けられた硬貨は、収納部25に入る際に収納検知部26によって検知されてから、収納部25に収納される。収納検知部26は、収納部25に入る硬貨を検知すると、動作制御部61に信号を送信する。動作制御部61は、収納検知部26から信号を受信したことで硬貨が収納部25に入ったことを把握し、その状態を計数部65に伝達する。計数部65は、動作制御部61から受け取った情報に基づいて硬貨の計数を行う。
【0038】
その後、利用者による取引操作が行われると、計数部65は、計数することで把握された入金金額と、利用者が操作した取引金額とを比較する。比較の結果、釣銭がない場合には、次の取り引きによる入金を待機する。次の入金が行われたら、動作制御部61は、保留部40のシャッタ42を保管位置に移動させ、保留筒41に一時的に収容されていた硬貨を金庫部49に移動させる。他方、釣銭がある場合には、出金動作に移行する。出金動作が行われることになったら、動作制御部61は、該当する収納部25の放出機構(不図示)及び放出口(不図示)を作動させ、釣銭の金額に該当する硬貨を収納部25から出金搬送部50へ放出する。このとき、出金搬送部50は、搬送ベルト51が停止しており、出金シャッタ52及び回収シャッタ53が閉じられている。出金搬送部50は、収納部25から硬貨が放出される際、釣銭放出に異常が発生しているか監視している。異常が発生していない場合は、収納部25から出金搬送部50へ差額分の釣銭硬貨がすべて放出された後に、出金シャッタ52を開放する。その後、硬貨が出金口58の側に移動するように搬送ベルト51を動かして(この方向への搬送ベルト51の移動を「正転」ということとする。)、搬送ベルト51に載置されている硬貨を出金口58に移動させる。このとき回収シャッタ53は閉じられたままとなっており、金庫部49への放出が防止されている。搬送ベルト51上の硬貨がすべて出金口58に移動することで、出金動作が終了する。仮に、収納部25による釣銭放出に異常が発生した場合は、出金搬送部50の回収シャッタ53を開放し、搬送ベルト51を逆転して、搬送ベルト51上の硬貨を金庫部49に収納する。その後、回収シャッタ53が閉じられ、上述の放出作動に戻り、釣銭放出からの動作を再び試みる。なお、取引操作の前に利用者により返却操作がなされた場合は、保留部40及び収納部25を作動させ、当該取引者が入金した金額が返却される。返却操作が行われる場合、動作制御部61は、保留部40のシャッタ42を返却位置に移動させて、保留筒41に一時的に収容されていた硬貨を出金搬送部50に移動させる。併せて、収納部25を作動させて、当該取引者が入金した金額の硬貨を、上述の出金動作の要領で、出金搬送部50に移動させる。返却する硬貨が出金搬送部50に移動したら、上述の出金動作の要領で、搬送ベルト51に載置されている硬貨を出金口58に移動させて利用者に返却する。
【0039】
上述のように動作する硬貨処理装置1は、小型化のために、前述のように、搬送部13を、折り返し搬送部35において硬貨の搬送方向を逆転させる折り返し構造とし、硬貨の振り分けを第1振分部21と第2振分部22との2箇所に分割することとしている。搬送部13を折り返し構造としたことで、折り返し搬送部35から戻り搬送部36に移動した硬貨が、折り返し搬送部35に最も近い部分の第2振分部22において、硬貨の挙動が複雑となってまるで浮遊しているかのように停滞してしまう場合があることが分かった。硬貨が収納部25の入口付近で停滞すると、収納検知部26が1つの硬貨を何度も検知してしまい(誤検知)、正確に計数できなくなる場合が発生し得る。正確に計数できなかった場合は、装置停止や特殊な処理が必要となる場合がある。そこで、本実施の形態では、以下の制御を行うことにより、誤検知の影響を緩和することとしている。
【0040】
図4は、硬貨計数時の制御を説明するフローチャートである。以下に説明する制御は、既に説明した硬貨処理装置1の作用における動作も含んでいる。硬貨処理装置1が作動を開始すると、前述のように、計時部62が時間計測を開始する。引き続き、動作制御部61は、n番目の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する(S1)。ここで、「n」は1以上の整数である。ここでの説明では、理解の容易のために、「n」が「1」であることとする。つまり、ここでは、n番目の硬貨は、1番目の硬貨であり、硬貨処理装置1を起動して最初に識別部16に到達する硬貨であることとして説明する。1番目(n番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する工程(S1)において、到達していない場合は再び同じ工程(S1)に戻る。他方、到達した場合、演算部64は、計時部62から1番目(n番目)の硬貨が識別部16に到達した時間を取得する(S2)。1番目硬貨が識別部16に到達した時間を取得したら、動作制御部61は、2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する(S3)。到達しなかった場合については、一旦保留する。到達した場合、演算部64は、計時部62から2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達した時間を取得する(S4)。
【0041】
2番目硬貨が識別部16に到達した時間を取得したら、動作制御部61は、1番目(n番目)の硬貨が収納検知部26に到達したか否かを判断する(S5)。到達していない場合は再び同じ工程(S5)に戻る。他方、到達した場合、演算部64は、1番目(n番目)の硬貨と2番目(n+1番目)の硬貨との通過間隔(識別部16が検知した間隔)を算出する(S6)。その後、演算部64は、算出マスク時間を算出する(S7)。演算部64が算出マスク時間を算出したら、計数部65は、収納検知部26からの検知結果の受け付けを停止する(S8)。これにより、仮に収納検知部26付近で硬貨の停滞が生じてしまい、収納検知部26が同じ硬貨を複数回検知したとしても、計数部65は算出マスク時間が経過するまでは収納検知部26の検知結果を計数しないので、誤検知による計数を回避することができる。また、前述のように、算出マスク時間は、通過間隔より短いけれども通過間隔に近いので、硬貨の停滞が解消していないうちに収納検知部26からの検知結果の受け付けを再開してしまうことを抑制することができ、誤検知による計数を抑制することができる。
【0042】
計数部65は、収納検知部26からの検知結果の受け付けを停止したら(S8)、1番目(n番目)の硬貨を収納検知部26が検知してから算出マスク時間が経過したか否かを判断する(S9)。算出マスク時間が経過していない場合は、再び同じ工程(S9)に戻る。他方、算出マスク時間が経過した場合、1番目(n番目)の硬貨の計数を終了する(S10)。その後、n+1番目としていた硬貨(これまでの説明では2番目としていた硬貨)を、n番目の硬貨と読み替えて(S11)、n+1番目(この段階では3番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する工程(S3)に戻る。
【0043】
他方、遡って、n番目の硬貨を1番目の硬貨として扱っているときの、2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する工程(S3)において、一旦保留していた、到達しなかった場合を説明する。到達しなかった場合、動作制御部61は、1番目(n番目)の硬貨が収納検知部26に到達したか否かを判断する(S14)。到達していない場合は、2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する工程(S3)に戻る。他方、到達した場合、計数部65は、収納検知部26からの検知結果の受け付けを停止する(S15)。これにより、仮に収納検知部26付近で硬貨の停滞が生じてしまい、収納検知部26が同じ硬貨を複数回検知したとしても、収納検知部26の検知結果を計数しないので、誤検知による計数を回避することができる。計数部65は、収納検知部26からの検知結果の受け付けを停止したら(S15)、1番目(n番目)の硬貨を収納検知部26が検知してから予設定マスク時間が経過したか否かを判断する(S16)。ここで、マスク時間を予設定マスク時間としているのは、識別部16の検知状況から、2番目(n+1番目)の硬貨がしばらく収納検知部26に到達しないと推定できるので、実測に基づいてあらかじめ決められているマスク時間を採用したためである。
【0044】
1番目(n番目)の硬貨を収納検知部26が検知してから予設定マスク時間が経過したか否かを判断する工程(S16)において、予設定マスク時間が経過していない場合は、再び同じ工程(S16)に戻る。他方、予設定マスク時間が経過した場合、1番目(n番目)の硬貨の計数を終了する(S17)。その後、動作制御部61は、2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する(S18)。2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達した場合、n+1番目としていた硬貨(これまでの説明では2番目としていた硬貨)を、n番目の硬貨と読み替えて(S19)、n番目(この段階では2番目)の硬貨が識別部16に到達した時間を取得する工程(S2)に戻る。他方、2番目(n+1番目)の硬貨が識別部16に到達したか否かを判断する工程(S18)において、到達していない場合、制御部60は、入金が終了したか否かを判断する(S20)。入金が終了していない場合は、再び同じ工程(S18)に戻る。他方、入金が終了した場合、硬貨処理装置1の動作を終了する。以上が、硬貨計数時の誤検知の影響を緩和する制御である。
【0045】
次に、念のため、硬貨処理装置1に対して硬貨を補充・回収する際の作用を説明する。硬貨処理装置1の運用中に、収納部25に収納されている硬貨が少なくなった場合は、釣銭不足となることを回避するために、硬貨を補充する。硬貨の補充は、利用者が取引操作をする場合と同様に、上述した硬貨処理装置1の通常の動作によって行うことができる。この場合、補充者は、投入部11から硬貨を投入するだけで、硬貨は、各収納部25に自動で振り分けられて補充される。あるいは、補充者が、補充する金種の収納部25の上部の蓋を開放し、蓋を開放した開口から硬貨を投入することとしてもよい。補充者は、補充する硬貨の収納部25への投入が完了したら、蓋を閉める。これで、補充が完了する。他方、硬貨処理装置1内の硬貨を回収する場合、収納部25内の硬貨を出金搬送部50に放出し、金庫部49に収容して、金庫部49を取り出して回収すればよい。このとき、動作制御部61は、上述の出金動作の要領で、収納部25内の硬貨を出金搬送部50の搬送ベルト51上に放出する。その後、回収シャッタ53を開けると共に搬送ベルト51を逆転させて、搬送ベルト51上の硬貨を金庫部49へ導けばよい。この一連の動作を1回行うだけで収納部25内のすべての硬貨を金庫部49へ導くことができない場合は、何回かに分けて行えばよい。
【0046】
以上で説明したように、本実施の形態に係る硬貨処理装置1によれば、搬送部13を、硬貨の搬送方向を逆転させる折り返し構造とし、硬貨の振り分けを第1振分部21と第2振分部22との2箇所に分割して適切に配置したので、小型化を図ることができる。また、小型化に伴って計数の誤検知が生じる可能性が発生しても、適切に決定したマスク時間の間は収納検知部26の検知結果の受け付けを停止するので、誤検知の影響を抑制することができる。
【0047】
以上の説明では、識別部16が送り搬送部34に設けられているとしたが、上昇搬送部33に設けられていてもよく、硬貨が1枚ずつ分離された後の部分の繰出部12に設けられていてもよい。
【0048】
以上の説明では、識別部16が上流検知部を兼ねることとしたが、上流検知部を、識別部16とは別に、送り搬送部34、上昇搬送部33、及び繰出部12中の硬貨が1枚ずつ分離された後の部分のいずれかに設けることとしてもよい。
【0049】
以上の説明では、第2振分部22が、第1振分部21とは異なり、硬貨の外径を用いて径の小さい硬貨から逐次分類する方式を採用することとしたが、第1振分部21と同様に振分爪駆動手段で駆動される振分爪によって振り分けるように構成されていてもよい。第2振分部22に振分爪等を用いる方式を採用すれば、金種毎に配置された複数の収納部25のうち、例えば2つの収納部25に同一金種を収納するようにして、循環硬貨の容量を増やすことが可能となる。
【0050】
以上で説明した保留部40について、収納される枚数を計数するように構成されているとよい。なお、本実施の形態のように、識別部16の近傍で振り分けが行われるのものでは、保留部40において計数する構成を省略してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 硬貨処理装置
11 投入部
12 繰出部
16 識別部
21 第1振分部
22 第2振分部
26 収納検知部
33 上昇搬送部
34 送り搬送部
36 戻り搬送部
60 制御部
図1
図2
図3
図4