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特開2022-177803エアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177803
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】エアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/04 20060101AFI20221124BHJP
   B65D 83/36 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B05B9/04
B65D83/36
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075967
(22)【出願日】2022-05-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】110117936
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111109810
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】500271018
【氏名又は名称】競聯企業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳漢▲梁▼
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PB03
3E014PC02
3E014PD04
3E014PE02
3E014PE10
3E014PE11
3E014PF08
4F033RA02
4F033RB01
4F033RC01
4F033RC04
4F033RC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用者が移動しながら、エアゾール容器の噴射操作を行う場合であっても、液剤が断続的に噴出されたり、噴射剤が漏れ出されたりする虞はなく、正常に使用することができる、エアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構を提供する。
【解決手段】缶体10、バルブ機構30及び二つのボール33、34を備えるエアゾール容器であって、バルブ機構は、缶体の装着開口に密封固定される噴射バルブ組立体31と、噴射バルブ組立体に連通するように接続され、且つ二つの流路、それぞれが両流路のうちの一つに連通する正立用流入口及び倒立用流入口324を有する流路切替バルブ組立体32とを含み、両ボールはそれぞれ、対応する流路内に移動自在に収容されると共に、正立用流入口と倒立用流入口とを選択的に連通または遮断させることができることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通している内部空間と装着開口とを有する缶体に設置され、該缶体の内外を連通させる、エアゾール容器に用いるバルブ機構であって、
第1基準方向と、第2基準方向と、第3基準方向と、噴射バルブ組立体と、流路切替バルブ組立体とを備え、
前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の頂端に向かい、
前記第2基準方向は、前記第1基準方向と直交すると共に、前記缶体の径方向外側に向かい、
前記第3基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の底端に向かい、
前記噴射バルブ組立体は、前記缶体の装着開口に密封固定されると共に、該缶体の内部空間に配置される液剤入口と、該缶体の外部に配置される液剤出口とを有し、該液剤入口は該液剤出口に選択的に連通し、
前記流路切替バルブ組立体は、前記噴射バルブ組立体に連通するように、該噴射バルブ組立体の底端に接続されると共に、第1流路、第1流入口、第2流路、第2流入口、第1ボール及び第2ボールを有するバルブ本体部を含み、
該第1流路は、第1連通口と第1傾斜内壁面とを有し、
該第1連通口は、該第1流路における前記第1基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、
該第1傾斜内壁面は、該第1流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜して、該第1基準方向を向く一端から前記第3基準方向を向く一端にかけて、該第2基準方向に偏るように延在し、
該第1流入口は、前記第1流路に連通しており、該第1流路の第1連通口を通して前記液剤入口に連通し、
該第2流路は、第2連通口と第2傾斜内壁面とを有し、
該第2連通口は、該第2流路における前記第3基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、
該第2傾斜内壁面は、該第2流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜し、前記第3基準方向を向く一端から前記第1基準方向を向く一端にかけて該第2基準方向に偏るように延在し、
該第2流入口は、前記第2流路に連通しており、該第2流路の第2連通口を通して前記液剤入口に連通し、
前記第1ボールは、前記第1流路内に移動自在に収容されると共に、前記第1流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、
前記第2ボールは、前記第2流路内に移動自在に収容されると共に、前記第2流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、
前記缶体が正立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直上向きになり、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2連通口を塞ぎ、該第2流入口と液剤入口との連通を遮断し、
前記缶体が倒立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直下向きになり、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1連通口を塞ぎ、該第1流入口と液剤入口との連通を遮断し、
前記缶体が水平状態にある場合、前記第2基準方向が鉛直下向きになり、前記第1ボールは、前記第1傾斜内壁面に沿って、該第1傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第1流入口と前記液剤入口とが連通しており、前記第2ボールは、前記第2傾斜内壁面に沿って、該第2傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第2流入口と該液剤入口とが連通していることを特徴とする、
エアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項2】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項3】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1.5度であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1.5度であることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項4】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、正倒立共同流路と分流用隔壁とをさらに有し、該正倒立共同流路は前記液剤入口に連通し、前記第1連通口と第2連通口は、該正倒立共同流路を通して該液剤入口に連通し、該分流用隔壁は、前記第1連通口と第2連通口との間に位置するように、前記正倒立共同流路内に設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項5】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口、第2封止栓、第3開口、第3封止栓、第4開口及び第4封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口を着脱可能に閉塞し、前記第2開口は、前記第2流路における前記第一基準方向を向く一端に位置するように、該バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口を着脱可能に閉塞し、前記第3開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第1連通口に連通し、前記第3封止栓は、前記第3開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第1流入口と第1流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第3封止栓案内壁を有し、前記第4開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第2連通口に連通し、前記第4封止栓は、前記第4開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第2連通口と正倒立共同流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第4封止栓案内壁を有することを特徴とする請求項4に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項6】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第2基準方向に延在する、倒立噴射用延長管部をさらに有し、前記第2流入口が、該倒立噴射用延長管部の第2基準方向側の端部に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項7】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する、正立噴射用延長管部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項8】
前記第1傾斜内壁面上に、該第1傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第1流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第1リブ状ガイド部が形成され、前記第1ボールが該二つの第1リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第1ボールと該第1傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成され、前記第2傾斜内壁面上に、該第2傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第2流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第2リブ状ガイド部が形成され、前記第2ボールが該二つの第2リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第2ボールと該第2傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項9】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口及び第2封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口に着脱可能に取り付けられ、前記第1ボールが前記第1流路から抜けるのを阻止し、該第1封止栓上に、該第1ボールの外径よりも小さい内径を有する第1スルーホール部が形成され、前記第2開口は、前記第2流路における前記第一基準方向を向く一端に位置するように、該バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口に着脱可能に取り付けられ、前記第2ボールが前記第2流路から抜けるのを阻止し、該第2封止栓上に、該第2ボールの外形よりも小さい内径を有する第2スルーホール部が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項10】
前記第1スルーホール部の背面周縁に、第1ボール保持リングが形成され、該第1ボール保持リング上に前記第1ボールが接触保持されると、該第1スルーホール部が閉塞され、前記第1流路の頂端周縁に、第1ボール保持環部が形成され、該第1ボール保持環部上に前記第1ボールが接触保持されると、前記第1連通口が閉塞され、前記第2スルーホール部の背面周縁に、第2ボール保持リングが形成され、該第2ボール保持リング上に前記第2ボールが接触保持されると、該第2スルーホール部が閉塞され、前記第2流路の底端周縁に、第2ボール保持環部が形成され、該第2ボール保持環部上に前記第2ボールが接触保持されると、前記第2連通口が閉塞されることを特徴とする請求項9に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項11】
エアゾール容器であって、
互いに連通する内部空間及び装着開口を有する缶体と、
噴射口を有する噴射キャップと、
該缶体を上に設置され、該缶体の内外を連通させる請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構と、を備え、
前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行であり、
前記噴射バルブ組立体は、前記装着開口に密封固定されると共に前記噴射キャップに連結され、
該噴射バルブ組立体の液剤出口は、該噴射キャップの噴射口に連通することを特徴とする、
エアゾール容器。
【請求項12】
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられると共に、前記第1流入口に連通する正立噴射用ディップチューブをさらに含み、該正立噴射用ディップチューブの末端は、前記第3基準方向に向かって該缶体の底部まで延在するように、前記第2基準方向を向いていることを特徴とする請求項11に記載のエアゾール容器。
【請求項13】
前記正立噴射用ディップチューブは、前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上における前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する正立噴射用延長管部に接続されることを特徴とする請求項12に記載のエアゾール容器。
【請求項14】
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられ、かつ前記第2流入口に連通する倒立噴射用ディップチューブをさらに含み、該倒立噴射用ディップチューブは、前記第2基準方向に延びてから、前記第1基準方向に向かって延びるL字状を呈すると共に、その末端開口が、該第1基準方向に向かって該缶体の頂部まで延在し、該倒立噴射用ディップチューブは、倒立噴射用延長管部に連結するための連結端部と、該倒立噴射用延長管部の位置決めリブに係合するための位置決め部とをさらに有することを特徴とする請求項11に記載のエアゾール容器。
【請求項15】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第2基準方向に延在する、倒立噴射用延長管部をさらに有し、前記第2流入口が、該倒立噴射用延長管部の第2基準方向側の端部に形成され、該倒立噴射用延長管部の位置決めリブに係合するための位置決め部とをさらに有することを特徴とする請求項14に記載のエアゾール容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に関し、特に、缶体が正立状態、倒立状態及び水平状態においても、噴射剤が漏れることなく、液剤をスムーズに噴射することができるエアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費者のニーズに応えるため、関連業者は革新的なエアゾール容器の開発に取り組んでいる。枚挙にいとまがない程多くのエアゾール製品が様々な分野にまたがり、人々の日常生活で幅広く使用されている。例えば、個人・家庭用品分野のヘアスプレーや、キッチン&バスクリーナー、殺虫剤などや、自動車・産業用品分野のキャブレタークリーナーや、消臭スプレー、スプレーペイントなど、又は警察・警備員・女性が使う護身用品の催涙スプレー、防犯スプレーなどがある。
【0003】
従来技術のエアゾール容器は、缶体の頂端に装着開口を有し、缶体の装着開口に噴射バルブ組立体が密封固定され、缶体内に配置されたディップチューブの先端は噴射バルブ組立体に接続され、ディップチューブは、わずかに湾曲しており、その尾端の曲げ方向が一般的にエアゾール容器頂部の噴射キャップの噴射口と同じ方向に向けられ、その尾端の開口は、缶体の胴部と底部が接する角部に近接し、缶体内の液剤に浸かるように位置付けられる。
従来のエアゾール容器を使用する時は、まず、缶体内に液剤と噴射剤(通常は圧縮ガスであり、例えば、圧縮窒素ガスN)を充填しておき、噴射する時に、噴射剤にて生成された圧力を介して、液剤がディップチューブ内に押し込まれるように流入し、噴射バルブ組立体を通過した後に、噴射キャップの噴射口から噴出される。
【0004】
エアゾール容器の充填のポイントは、液剤と噴射剤の容積比であり、一般的には、噴射バルブ組立体及びディップチューブが装着されている缶体における利用可能な実際の容積のうち、液剤は約70%を占め、噴射剤(圧縮窒素ガスN)は約30%を占める。このような容積比で、当該エアゾール製品を最後まで使用すると、中身の液剤及び噴射剤の両方が完全に排出されるが、実際には、液剤が一方的に残ってしまうことがよくある。その原因は、従来のエアゾール容器の使い勝手が悪いことにある。詳しく説明すると、噴射剤としての不活性ガスの圧縮窒素ガスNは、缶体内に充填されている液剤と反応せずに、缶体内の上部空間に滞留しており、ディップチューブの尾端の開口が缶体内の下部空間に滞留する液剤内に浸かっており、使用者が噴射キャップを押すと、噴射剤からの圧力に押されている液剤が、ディップチューブの尾端の開口に流入して、噴射バルブ組立体を通って噴射キャップの噴射口から噴出されるのが一般的であるが、ディップチューブの尾端の開口が、液剤内に浸からずに、噴射剤の滞留空間にさらされている場合、使用者が噴射キャップを押すと、液剤と噴射剤とが一緒に噴出されることなく、噴射剤だけが噴出されてしまうことになり、結果、液剤が缶内に残っていて無駄になってしまう事態に陥る。実際の状況を例にとると、従来のエアゾール容器を逆さまにして使用する場合、噴射剤が地面に向かっている缶体の頂部に滞留し、ディップチューブの尾端の開口が液剤上方の空間に滞留する噴射剤にさらされており、使用者が噴射キャップを押すと、液剤が、上方にあるディップチューブの尾端の開口に流入することができず、噴射剤と一緒に噴出されることなく、噴射剤のみがディップチューブの尾端の開口を通って、噴射キャップの噴射口から噴出されることになる。従って、従来のエアゾール容器は、上述の問題があった。
【0005】
従来のエアゾール容器の、倒立噴射ができない問題を解決するため、倒立噴射を可能にするサイド式ボール弁装置を備えたエアゾール容器が既に開発されており、当該サイド式ボール弁装置は、噴射バルブ組立体911、流路切替バルブ組立体912、正立用流入口921を有するディップチューブ92、倒立用流入口93及びボール94を含む。
【0006】
図10に示すように、缶体を正立状態で使用する場合、ボール94は自然に下方に落下して倒立用流入口93を塞ぎ、ディップチューブ92は、正立用流入口921が缶体内の液剤Aに浸かっており、この状態下、使用者が噴射キャップ98を押すと、噴射バルブ組立体911のステムが開放状態となり、噴射剤Bからの圧力により、液剤Aが正立用流入口921に流入して、順に、正立噴射用流路922、正倒立共同流路923、液剤入口924、液剤出口925を通って、噴射キャップ98の噴射口981から噴出される
【0007】
図11に示すように、当該エアゾール容器を倒立状態で使用する場合、噴射キャップ98は地面に向かっており、液剤Aも同じ方向に流れて滞留し、この時、倒立用流入口93は液剤Aに浸かっており、ボール94は重力によって自然に地面方向に落下して倒立用流入口93を開き、この状態下、使用者が噴射キャップ98を押して、噴射バルブ組立体911を開放させると、噴射剤Bからの圧力によって、液剤Aが、倒立用流入口93に流入して、その後、倒立噴射用流路931を通ってから、正倒立共同流路923、液剤入口924、液剤出口925の順に噴射キャップ98の噴射口981から噴出される。
【0008】
要するに、上述したサイド式ボール弁装置の流路切替バルブ組立体912は、シングルボール弁とシングル流体通路を備える流路切替バルブ組立体である。既存のサイド式ボール弁装置は、このようなシングルボール弁&シングル流体通路での形式の流路切替バルブ組立体を使用することにより、倒立噴射をできるようにしたが、しかし、以下のような欠点がまだ残っている。
【0009】
状況その1、図10及び図11に示すように、当該エアゾール容器を正立状態で使用する場合、ボール94が重力によって自然に落下して倒立用流入口93を塞ぐことで、液剤Aは、液剤Aに浸かっているディップチューブ92の正立用流入口921を通して噴出されることができると共に、液剤A上方の噴射剤Bが倒立用流入口93に進入することが防止されている。しかし、当該エアゾール容器を倒立状態で使用する場合、ボール94が地面方向に落下して倒立用流入口93を開放することにより、液剤Aが、液剤Aに浸かっている倒立用流入口93を通って、噴射キャップ98の噴射口981から噴出される一方で、ディップチューブ92の正立用流入口921が、液剤Aに浸かっておらず、液剤Aの上方の噴射剤Bにさらされていることから、噴射剤Bは同時に、ディップチューブ92の正立用流入口921に進入して、正倒立共同流路923を通ってから噴出される。すなわち、既存のサイド式ボール弁装置では、倒立噴射を可能にする目的を達成するものの、倒立噴射時に、ディップチューブ92の正立用流入口921を塞ぐ要素が設けられていないため、液剤Aを噴出すると同時に噴射剤Bも大量に漏れ出し、結局、液剤Aが缶内に残留してしまう問題がまだ残されている。
【0010】
状況その2、図12に示すように、当該エアゾール容器を水平状態で使用する場合、ボール94が接触している壁面は水平であるため、ボール94の行方が、倒立用流入口93を開放するまたは閉鎖する位置のどちらに移動するかが定められておらず、重力の作用によって、左右に行ったり来たりして、倒立用流入口93を開放したり閉鎖したりすることになる。それに加え、缶内の液剤Aの残量が、ディップチューブ92の正立用流入口921及び倒立用流入口93を同時に水没させるのに十分でない時、使用者が噴射キャップ98を押して、噴射バルブ組立体911のステムを開放させると、缶体の胴部と底部が接する角部の近くに位置するディップチューブ92の正立用流入口921は、倒立用流入口93よりも低い位置にあって、液剤Aに浸かっていることから、液剤Aを噴出させることができるが、倒立用流入口93は、液剤Aに浸かっていない。また、ボール94が倒立用流入口93上を行ったり来たりすることで、噴射剤Bは、倒立用流入口93から正倒立共同流路923を通って断続的に噴出される。その結果、正倒立共同流路923で正立用流入口921から流入した液剤Aと衝突して乱流を起こして、液剤Aが断続的に噴出されることになると共に、噴射剤Bが倒立用流入口93から漏れ出されることになり、結局、液剤Aが再び缶内に残されていて無駄になる事態に陥った。
【0011】
状況その3、図13に示すように、当該エアゾール容器を水平よりやや地面に向けて傾斜し、また、缶内の液剤Aの残量が半分以下しか残っていない状態で使用する場合、ボール94が重力によって自然に落下して倒立用流入口93を開放しているが、缶体内の液剤Aの残量が少ないため、倒立用流入口93及びディップチューブ92正立用流入口921のいずれも缶体内の液剤Aに浸かることができない。すなわち、倒立用流入口93及びディップチューブ92の正立用流入口921のいずれも同時に噴射剤Bにさらされていることになるので、使用者が噴射キャップ98を押して噴射バルブ組立体911を開放させると、噴射剤Bが倒立用流入口93及びディップチューブ92の正立用流入口921から流入して、正倒立共同流路923を通って噴出される一方で、残りの液剤Aは缶体内に残されたままとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開第2010―254359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、二つのボールを利用することにより、第1流入口と第2流入口の連通または遮断をそれぞれ制御すると共に、正立噴射または倒立噴射のいずれの状態においても、噴射剤の漏れ出しを抑制でき、また、二つのボールを収容するそれぞれの流路の内壁面が斜めに設計されることで、両ボールが状況に応じて適正な位置に素早く移動できるようにすることにより、缶体を水平状態で使用しても、噴射剤が無駄に漏れ出すことなく、さらに、エアゾール製品を使い切った時の液剤が缶体内に残留する問題を防止することができる、エアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、連通している内部空間と装着開口とを有する缶体に設置され、該缶体の内外を連通させるエアゾール容器に用いるバルブ機構であって、第1基準方向と、第2基準方向と、第3基準方向と、噴射バルブ組立体と、流路切替バルブ組立体とを備え、前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の頂端に向かい、前記第2基準方向は、前記第1基準方向と直交すると共に、前記缶体の径方向外側に向かい、前記第3基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の底端に向かい、前記噴射バルブ組立体は、前記缶体の装着開口に密封固定されると共に、該缶体の内部空間に配置される液剤入口と、該缶体の外部に配置される液剤出口とを有し、該液剤入口は該液剤出口に選択的に連通し、前記流路切替バルブ組立体は、前記噴射バルブ組立体に連通するように、該噴射バルブ組立体の底端に接続されると共に、第1流路、第1流入口、第2流路、第2流入口、第1ボール及び第2ボールを有するバルブ本体部を含み、該第1流路は、第1連通口と第1傾斜内壁面とを有し、該第1連通口は、該第1流路における前記第1基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、該第1傾斜内壁面は、該第1流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜して、該第1基準方向を向く一端から前記第3基準方向を向く一端にかけて、該第2基準方向に偏るように延在し、該第1流入口は、前記第1流路に連通しており、該第1流路の第1連通口を通して前記液剤入口に連通し、該第2流路は、第2連通口と第2傾斜内壁面とを有し、該第2連通口は、該第2流路における前記第3基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、該第2傾斜内壁面は、該第2流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜し、前記第3基準方向を向く一端から前記第1基準方向を向く一端にかけて該第2基準方向に偏るように延在し、該第2流入口は、前記第2流路に連通しており、該第2流路の第2連通口を通して前記液剤入口に連通し、前記第1ボールは、前記第1流路内に移動自在に収容されると共に、前記第1流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、前記第2ボールは、前記第2流路内に移動自在に収容されると共に、前記第2流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、前記缶体が正立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直上向きになり、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2連通口を塞ぎ、該第2流入口と液剤入口との連通を遮断し、前記缶体が倒立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直下向きになり、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1連通口を塞ぎ、該第1流入口と液剤入口との連通を遮断し、前記缶体が水平状態にある場合、前記第2基準方向が鉛直下向きになり、前記第1ボールは、前記第1傾斜内壁面に沿って、該第1傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第1流入口と前記液剤入口とが連通しており、一方で、前記第2ボールは、前記第2傾斜内壁面に沿って、該第2傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第2流入口と該液剤入口とが連通していることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、さらにエアゾール容器を提供し、該エアゾール容器は、互いに連通する内部空間及び装着開口を有する缶体と、噴射口を有する噴射キャップと、該缶体を上に設置され、該缶体の内外を連通させるバルブ機構とを備え、前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行であり、前記噴射バルブ組立体は、前記装着開口に密封固定されると共に前記噴射キャップに連結され、該噴射バルブ組立体の液剤出口は、該噴射キャップの噴射口に連通することを特徴とする。
【0016】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であることを特徴とする。
【0017】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1.5度であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1.5度であることを特徴とする。
【0018】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、正倒立共同流路と、分流用隔壁とをさらに有し、該正倒立共同流路は前記液剤入口に連通し、前記第1連通口と第2連通口は、該正倒立共同流路を通して該液剤入口に連通し、該分流用隔壁は、前記第1連通口と第2連通口との間に位置するように、前記正倒立共同流路内に設置されることを特徴とする。
【0019】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口、第2封止栓、第3開口、第3封止栓、第4開口及び第4封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口を着脱可能に閉塞し、前記第2開口は、前記第2流路における前記第一基準方向を向く一端に位置するように、該バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口を着脱可能に閉塞し、前記第3開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第1連通口に連通し、前記第3封止栓は、前記第3開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第1流入口と第1流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第3封止栓案内壁を有し、前記第4開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第2連通口に連通し、前記第4封止栓は、前記第4開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第2連通口と正倒立共同流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第4封止栓案内壁を有することを特徴とする。
【0020】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第2基準方向に延在する、倒立噴射用延長管部をさらに有し、前記第2流入口が、該倒立噴射用延長管部の第2基準方向側の端部に形成されることを特徴とする。
【0021】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する、正立噴射用延長管部をさらに有することを特徴とする。
【0022】
前記第1傾斜内壁面上に、該第1傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第1流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第1リブ状ガイド部が形成され、前記第1ボールが該二つの第1リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第1ボールと該第1傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成されることを特徴する。このような設計により、第1ボールが第1流路の内壁面上を移動する際に、第1ボールが第1流入口の開口部に食い込んで、移動に支障が生じるのを回避することができる。
前記第2傾斜内壁面上に、該第2傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第2流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第2リブ状ガイド部が形成され、前記第2ボールが該二つの第2リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第2ボールと該第2傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成されることを特徴する。このような設計により、第2ボールが第2流路の内壁面上を移動する際に、第2ボールが第2流入口の開口部に食い込んで、移動に支障が生じるのを回避することができる。
【0023】
前記第1リブ状ガイド部の第1基準方向に垂直な断面形状が、円弧状または多辺形状を成し、前記第2リブ状ガイド部の第1基準方向に垂直な断面形状が、円弧状または多辺形状を成すことを特徴とする。
【0024】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口及び第2封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口に着脱可能に取り付けられ、前記第1ボールが前記第1流路から抜けるのを阻止し、該第1封止栓上に、第1スルーホール部が形成されることを特徴とする。缶体内に第1スルーホール部が設けられることにより、第1流路内外の液剤が同じ内圧を受けていることから、第1流路内外をスムーズに流れることができる。
また、前記第1スルーホール部の内径は、前記第1ボールの外径よりも小さいであることを特徴とする。
前記第2開口は、前記第2流路における前記第1基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口に着脱可能に取り付けられ、前記第2ボールが前記第2流路から抜けるのを阻止し、該第2封止栓上に、第2スルーホール部が形成されることを特徴とする。
缶体内に第2スルーホール部が設けられることにより、第2流路内外の液剤が同じ内圧を受けていることから、第2流路内外をスムーズに流れることができる。
また、前記第2スルーホール部の内径は、前記第2ボールの外径よりも小さいことを特徴とする。
【0025】
前記第1スルーホール部の背面周縁に、第1ボール保持リングが形成され、該第1ボール保持リング上に前記第1ボールが接触保持されると、該第1スルーホール部が閉塞され、前記第1流路の頂端周縁に、第1ボール保持環部が形成され、該第1ボール保持環部上に前記第1ボールが接触保持されると、前記第1連通口が閉塞され、前記第1ボールが前記第1ボール保持リングまたは第1ボール保持環部上に接触保持されている時、前記第1流路の該第1ボールを移動自在に収容するための内部空間には空隙が存在することを特徴とする。
このような構成により、第1ボールが第1ボール保持リングまたは第1ボール保持環部上に接触保持される際に、その周囲に隙間が存在することにより、第1ボールが第1流路の頂端または第1封止栓に移動して保持されたり、あるいは第1流路の頂端または第1封止栓から離脱したりする時、スムーズに動くことができる。
前記第2スルーホール部の背面周縁に、第2ボール保持リングが形成され、該第2ボール保持リング上に前記第2ボールが接触保持されると、該第2スルーホール部が閉塞され、前記第2流路の底端周縁に、第2ボール保持環部が形成され、該第2ボール保持環部上に前記第2ボールが接触保持されると、前記第2連通口が閉塞され、前記第2ボールが前記第2ボール保持リングまたは第2ボール保持環部上に接触保持されている時、前記第2流路の該第2ボールを移動自在に収容するための内部空間には空隙が存在することを特徴とする。
このような構成により、第2ボールが第2ボール保持リングまたは第2ボール保持環部上に接触保持される際に、その周囲に隙間が存在することにより、第2ボールが第2流路の底端または第2封止栓に移動して保持されたり、あるいは第2流路の底端または第2封止栓から離脱したりする時、スムーズに動くことができる。
【0026】
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられると共に、前記第1流入口に連通する正立噴射用ディップチューブをさらに含み、該正立噴射用ディップチューブの末端は、前記第3基準方向に向かって該缶体の底部まで延在するように、前記第2基準方向を向いていることを特徴とする。
【0027】
前記正立噴射用ディップチューブは、前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上における前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する正立噴射用延長管部に接続されることを特徴とする。
【0028】
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられ、かつ前記第2流入口に連通する倒立噴射用ディップチューブをさらに含み、該倒立噴射用ディップチューブは、前記第2基準方向に延びてから、前記第1基準方向に向かって延びるL字状を呈すると共に、その末端開口が、該第1基準方向に向かって該缶体の頂部まで延在し、該倒立噴射用ディップチューブは、前記倒立噴射用延長管部に連結するための連結端部と、該倒立噴射用延長管部の位置決めリブに係合するための位置決め部とをさらに有することを特徴とする。
【0029】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第2基準方向に延在する、倒立噴射用延長管部をさらに有し、前記第2流入口が、該倒立噴射用延長管部の第2基準方向側の端部に形成され、該倒立噴射用延長管部の位置決めリブに係合するための位置決め部とをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
前述した技術的特徴によれば、本発明の優れた点は、噴射バルブ組立体の底端に、第1流路及び第2流路を有する流路切替バルブ組立体が設置されることと、正立噴射用ディップチューブ及び倒立噴射用ディップチューブがそれぞれ第1流入口及び第2流入口に連結されることにより、正立噴射用ディップチューブの正立用流入口及び倒立噴射用ディップチューブの倒立用流入口がそれぞれ、第1流路及び第2流路を通して噴射バルブ組立体の液剤入口に連通されるようにし、それに加え、それぞれが第1流路及び第2流路内に移動自在に収容される第1ボール及び第2ボールを介して、正立用流入口及び倒立用流入口の連通または遮断をそれぞれ制御することが可能となる。このため、缶内の液剤が半分以下しか残っていない場合において、正立状態で使用する際に、第1ボールが重力によって自然に落下することで、液剤Aに浸かっている正立用流入口は第1連通口を通して液剤入口に連通するようになり、同時に、第2ボールが重力によって自然に落下して、第2連通口を塞いで倒立用流入口と液剤入口とを遮断することになり、一方で、倒立状態で使用する際に、第2ボールが重力によって自然に落下することで、液剤Aに浸かっている倒立用流入口は第2連通口を通して液剤入口に連通するようになり、同時に、第1ボールが重力によって自然に落下して、第1連通口を塞いで正立噴吸水口と液剤入口とを遮断することになる。このような設計により、本発明に係るエアゾール容器は、正立状態下または倒立状態で使用しても、正立用流入口または倒立用流入口は、液剤Aに浸かっているか、第1ボールまたは第2ボールによって塞がれているので、従来技術の噴射バルブ組立体またはバルブ機構に比べて、缶体が正立または倒立のいかなる状態にあっても、液剤をスムーズに噴射し、かつ、噴射剤の漏れ出しを防止することが可能にし、液剤の残留を低減して無駄を回避する効果を奏する。
【0031】
さらに、本発明は、缶体を水平状態で、かつ、缶内の液剤の残量が半分以下しか残っていない状態で使用する場合、第1傾斜内壁面及び第2傾斜内壁面が斜めに設計されることにより、第1ボールが第1傾斜内壁面に沿って缶体の底部方向に移動することで、正立用流入口と液剤入口とは連通するようになり、第2ボールが第2傾斜内壁面に沿って缶体の頂部方向に移動することで、倒立用流入口と液剤入口とは連通するようになる。つまり、缶体を水平噴射状態で使用する場合、両傾斜内壁面が下方に傾斜することにより、両ボールがそれに連れて、同時に下向きの方向に移動し、これにより、液剤に浸かっている両流入口を一斉に開放することになり、液剤が同時に両流入口に進入することを可能にするので、ボールが流路内を行ったり来たりして、液剤が断続的に噴出される問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の好適な実施例の分解斜視図である。
図2】本発明の第1の好適な実施例の側面視断面図である。
図3図2の丸枠で囲まれた部分を示す部分拡大図である。
図4】本発明の第1の好適な実施例において、正立噴射状態の側面視断面模式図である。
図5】本発明の第1の好適な実施例において、倒立噴射状態の側面視断面模式図である。
図6】本発明の第1の好適な実施例において、水平噴射状態の側面視断面模式図である。
図7】本発明の第1の好適な実施例において、略水平状態下で、噴射キャップがやや下向きに傾斜している様子を示す側面視断面模式図である。
図8】本発明の第1の好適な実施例において、略水平状態下で、噴射キャップがやや上向きに傾斜している様子を示す側面視断面模式図である。
図9A】本発明の第1の好適な実施例における流路切替バルブ組立体分解斜視図である。
図9B】本発明の第1の好適な実施例における流路切替バルブ組立体と倒立噴射用ディップチューブを組み合わせた模式図である。
図10】本発明の第2の好適な実施例の部分拡大図である。
図11A】本発明の第2の好適な実施例における第1流路を示す側面視断面図である。
図11B】本発明の第2の好適な実施例における第1流路を示す斜視断面図である。
図12A】本発明の第2の好適な実施例における第2流路を示す側面視断面図である。
図12B】本発明の第2の好適な実施例における第2流路を示す斜視断面図である。
図13A】本発明の第2の好適な実施例における流路切替バルブ組立体内においての第1ボールと第2ボールの位置状態を示す側面視断面模式図である。
図13B】本発明の第2の好適な実施例における流路切替バルブ組立体内においての第1ボールと第2ボールの位置状態を示す斜視断面模式図である。
図14】従来技術のエアゾール容器の正立噴射状態の側面視断面模式図である。
図15】従来技術のエアゾール容器の倒立噴射状態の側面視断面模式図である。
図16】従来技術のエアゾール容器の水平噴射状態の側面視断面模式図である。
図17】従来技術のエアゾール容器が略水平で、噴射キャップがやや下向きに傾斜している状態を示す側面視断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面及び本発明の好適な実施例を参照しながら、本発明が予め決められた発明の目的を達成するために講じた技術的手段をさらに詳述する。
【0034】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の好適な実施例においてのエアゾール容器は、缶体10、噴射キャップ20及びバルブ機構30を備える。該缶体10は、内部空間11を有する中空構造体であって、取付用の装着開口12と、底壁13とを含む。尚、第1の好適な実施例において、該缶体10の材質は金属であり、該装着開口12が該缶体10の頂端に形成されたことが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、第1の好適な実施例において、該缶体10の底壁13は、該缶体10の内部空間11に向かって凹んだ凸形状を呈し、該缶体10は、該底壁13の周縁を介して自立することができる。
【0035】
前記噴射キャップ20は、後記するバルブ機構30の噴射バルブ組立体31に流体連通するように、該噴射バルブ組立体31の頂端に取り付けられると共に、水平方向外方に向けた噴射口21を含む。
【0036】
さらに、図2及び図3に示すように、前記バルブ機構30は、前記缶体10の軸心と平行するように、該缶体10の頂端に向かう第1基準方向D1と、該第1基準方向D1と直交するように、該缶体10の径方向外側を向く第2基準方向D2と、該缶体10の軸心と平行するように、該缶体10の底端に向かう第3基準方向D3とを有すると共に、該缶体10の内外を連通させるように、該缶体10の装着開口12に密封固定される噴射バルブ組立体31と、該噴射バルブ組立体31に流体連通するように、該噴射バルブ組立体31の底端に接続される流路切替バルブ組立体32と、第1ボール33、第2ボール34、正立噴射用ディップチューブ35、倒立噴射用ディップチューブ36とを含む。
【0037】
図1図2及び図3に示すように、前記噴射バルブ組立体31は、前記缶体10の内部空間11内に配置される液剤入口315と、該缶体10の外部に配置される液剤出口316とを有し、該液剤入口315と液剤出口316とが選択的に連通して接続される。詳しく説明すると、該噴射バルブ組立体31は、マウンティングカップ311(具体的には、金属製の固定リング)と、弁座314と、ステム312とを含む。該マウンティングカップ311は、該缶体10の装着開口12上に密封固定される。該弁座314は、該マウンティングカップ311の底部に取り付けられ、前記液剤入口315が該弁座314の底端に形成される。該ステム312は、貫通孔3121を有する管体であって、その底端は該弁座314内に挿設され、その頂端は、該マウンティングカップ311の底部の中心孔を貫通するように挿設され、前記液剤出口316が該ステム312の頂端に形成される。さらに説明すると、液剤Aは、該噴射バルブ組立体31の正倒立共同流路325、液剤入口315、ステム312の貫通孔3121を通って、該液剤出口に流入する。
エアゾール容器の付属品である噴射キャップ20は一般的に、該ステム312上の液剤出口316に連通するように取り付けられており、使用者が該噴射キャップ20を押すと、ステムラバー313の内孔が、該ステム312の貫通孔3121から外れ、該噴射バルブ組立体31は開放状態となり、液剤Aが該噴射キャップ20の噴射口21から噴出される。通常、水平方向外方に向けた前記噴射口21の向き方向と、わずかに湾曲する正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322の向き方向とは一致するように配設されている。ここで噴射バルブ組立体31は既存製品であるので、その内部構造についての説明は省略する。尚、第1の好適な実施例においての噴射バルブ組立体31は、寸法1インチの既存製品を使用し、図1に示すように、公知標準仕様品の噴射バルブ組立体31は、ステム312、ステムラバー313、マウンティングカップ311、キャップシールリング3111、弁座314、スプリング3112及び正立噴射用ディップチューブ35など、七つの部品によって構成される。
【0038】
図1図3及び図9Aに示すように、前記流路切替バルブ組立体32は、バルブ本体部32Aを含み、該バルブ本体部32Aは、第1流路321、第1流入口322B、第2流路323、第2流入口324B、正倒立共同流路325、分流用隔壁326、第1開口327、第1封止栓328、第2開口329、第2封止栓330、第3開口32B、第3封止栓32C、第4開口32D、第4封止栓32E、倒立噴射用延長管部36A及び正立噴射用延長管部35Aを有する。
尚、上記第1流路321、第1流入口322B、第2流路323、第2流入口324B、正倒立共同流路325、分流用隔壁326、第1開口327、第2開口329、第3開口32B、第4開口32D及び倒立噴射用延長管部36Aは、該バルブ本体部32A上に形成される。上記第1封止栓328、第2封止栓330、第3封止栓32C、第4封止栓32E及び正立噴射用延長管部35Aと、該バルブ本体部32Aとはそれぞれ独立した単体部品である。
【0039】
図3に示すように、前記流路切替バルブ組立体32の頂端は、前記噴射バルブ組立体31の底端に接続される。
【0040】
図2及び図3に示すように、前記バルブ本体部32Aの第1流路321は、第1連通口3211及び第1傾斜内壁面3212を有し、該第1連通口3211は、該第1流路321における前記第1基準方向D1に向かう一端に形成されると共に、前記液剤入口315に連通し、該第1傾斜内壁面3212は、該第1流路321における前記第2基準方向D2側に形成されると共に、前記缶体10の軸心に対して傾斜し、該第1基準方向D1に向かう一端(この端部を起点とし、すなわち該第1流路321における缶体10の頂端寄り端部である)から前記第3基準方向D3に向かう一端(この端部を終点とし、すなわち該第1流路321における缶体10の底端寄り端部である)にかけて、該第2基準方D2向に偏るように延在する。
つまり、図中、該第1傾斜内壁面3212は、該第1流路321の左側に位置し、かつ、該缶体10の軸心に対して、上から下に向かって左に傾斜している。言い換えれば、図6に示すように、該第1傾斜内壁面3212は、該第1流路321の第2基準方向D2側に形成されているので、缶体10が水平状態において、缶体底部方向に傾斜角度をもって傾斜している。具体的には、本実施例においての第1傾斜内壁面3212と第1基準方向D1とのなす交角θが1~3度の範囲であり、好ましくは1.5度であるが、他の実施例においては、上記に限定されるものではない。
【0041】
図3に示すように、前記第1流入口322Bは、前記第1流路321に連通するように、前記バルブ本体部32Aの底部に形成され、該第1流路321の第1連通口3211を通して前記液剤入口315に連通する。
【0042】
図3に示すように、前記正立噴射用延長管部35Aは、前記バルブ本体部32Aに連結され、前記第1流入口322Bに連通して、前記第3基準方向D3に延在する。前記正立噴射用ディップチューブ35は、該正立噴射用延長管部35Aに接続される。
【0043】
図2及び図3に示すように、前記バルブ本体部32Aの第2流路323は、第2連通口3231及び第2傾斜内壁面3232を有し、該第2連通口3231は、該第2流路323における前記第3基準方向D3に向かう一端に形成されると共に、前記液剤入口315に連通し、該第2傾斜内壁面3232は、該第2流路323における前記第2基準方向D2側に形成されると共に、前記缶体10の軸心に対して傾斜し、該第3基準方向D3に向かう一端(この端部を起点とし、すなわち該第2流路323における缶体10の底端寄り端部である)から前記第1基準方向D1に向かう一端(この端部を終点とし、すなわち該第2流路323における缶体10の頂端寄り端部である)にかけて、該第2基準方向D2に偏るように延在する。
つまり、図中、該第2傾斜内壁面3232は、該第2流路323の左側に位置し、かつ、該缶体10の軸心に対して、上から下に向かって左に傾斜している。言い換えれば、図6に示すように、該第2傾斜内壁面3232は、該第2流路323の第2基準方向D2側に形成されていることから、缶体10が水平状態にある時、缶体頂端方向に傾斜角度をもって傾斜している。具体的には、本実施例においての第2傾斜内壁面3232と第3基準方向D3とのなす交角θが1~3度の範囲であり、好ましくは1.5度であるが、他の実施例においては、上記に限定されるものではない。また、第2傾斜内壁面3232の傾斜角度は、第1傾斜内壁面3212の傾斜角度と異なっていてもよい。
【0044】
図9Aに示すように、第1の好適な実施例において、前記流路切替バルブ組立体32のバルブ本体部32A上に形成された前記倒立噴射用延長管部36Aは、前記缶体10の内壁面に近接するように、前記第2基準方向D2に延在する。ここで、前記第2流入口324Bは、前記第2流路323に連通するように、該倒立噴射用延長管部36Aの第2基準方向側の端部に形成される。つまり、該第2流入口324Bは、該倒立噴射用延長管部36Aの先端開口である。該第2流入口324Bは、該第2流路323を通して、該第2流路323の第2連通口3231を通して前記液剤入口315に連通する。本実施例において、該倒立噴射用延長管部36A上に位置決めリブ363が形成される。
【0045】
図1図3図9A及び図9Bに示すように、前記倒立噴射用ディップチューブ36上に、位置決め部361及び連結端部362を有し、該位置決め部361は、前記倒立噴射用延長管部36Aの位置決めリブ363と係合して位置決めするために用いられ、該連結端部362は、前記第2流入口324Bと第2連通口3231とを連通接続させるために用いられる。具体的に述べると、該倒立噴射用ディップチューブ36は、該倒立噴射用延長管部36Aに連結される時、該連結端部362を介して、該倒立噴射用延長管部36A内に挿入して接続されるが、該連結端部362と倒立噴射用延長管部36Aはいずれも円形管体であることから、L字状を呈する倒立噴射用ディップチューブ36の末端開口を第1基準方向に向けて位置決めするために、該倒立噴射用ディップチューブ36と倒立噴射用延長管部36Aとの連結時に、該位置決め部361を該位置決めリブ363に係合することにより、該倒立噴射用ディップチューブ36の位置決め目的が達成される。
【0046】
図3に示すように、前記バルブ本体部32A上の正倒立共同流路325は、前記液剤入口315に連通しており、前記第1連通口3211及び第2連通口3231は、該正倒立共同流路325を通して、該液剤入口315と連通する。前記分流用隔壁326は、該第1連通口3211と第2連通口3231との間に位置するように、該正倒立共同流路325内に設置される。
該分流用隔壁326及び正倒立共同流路325は、液剤Aが前記第1流入口322B及び第2流入口324Bから同時に進入する際に、安定した合流効果を生じさせ、異なる流入口からの液剤Aが衝突して、通常の噴射に影響を及ぼすような乱流を抑制することができるが、これに限定されるものではなく、他の実勢例においては、正倒立共同流路325及び分流用隔壁326を有しなくてもよい。
【0047】
図2及び図3に示すように、前記バルブ本体部32A上の第1開口327は、前記第1流路321における前記第3基準方向D3に向かう一端に形成され、前記第1ボール33は、該第1開口327を通って、該第1流路321を出入りすることができる。前記第1封止栓328は、該第1開口327を着脱可能に閉塞することができ、これにより、該第1ボール33が該第1流路321から離脱しないように収容される。前記第2開口329は、前記第2流路323における前記第1基準方向D1に向かう一端に形成され、前記第2ボール34は、該第2開口329を通って、該第2流路323を出入りすることができる。前記第2封止栓330は、該第2開口329を着脱可能に閉塞することができ、これにより、該第2ボール34は、該第2流路323から離脱しないように収容される。尚、ここで第1、第2ボールは、スチールボールであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0048】
図3及び図9Aに示すように、前記の第3開口32Bは、前記バルブ本体部32A上における第2基準方向側に形成されると共に、前記第1連通口3211に連通している。前記第3封止栓32Cは、該第3開口32Bを着脱可能に閉塞することができると共に、第3封止栓案内壁32C1を有する。
該第3封止栓32Cが、該第3開口32Bを閉塞している時、該第3封止栓案内壁32C1とバルブ本体部32Aとは、前記第1流入口322Bと第1流路321との間に、湾曲連通流路が形成される。前記第4開口32Dは、該バルブ本体部32A上における第2基準方向側に形成されると共に、前記第2連通口3231に連通している。前記第4封止栓32Eは、該第4開口32Dを着脱可能に閉塞することができると共に、第4封止栓案内壁32E1を有する。該第4封止栓32Eが、該第4開口32Dを閉塞している時、該第4封止栓案内壁32E1とバルブ本体部32Aとは、前記第2連通口3231と正倒立共同流路325との間に、湾曲連通流路が形成される。
【0049】
図1を参照する。第1の好適な実施例において、前記正立噴射用延長管部35Aと第1封止栓328とは間隔をおいて結合されているが、これに限定されるものではない。
【0050】
さらに説明すると、図1図3及び図4に示すように、前記バルブ本体部32Aは、前記流路切替バルブ組立体32の一つの構成要素として利用され(段落[0038]に記載の如く)、当該バルブ本体部32Aが、前記正立噴射用ディップチューブ35と倒立噴射用ディップチューブ36と連結されていない時、当該バルブ本体部32A上の二つの流入口がそれぞれ、第1流入口322B及び第2流入口324Bとして定義される。実際に使用する場合、すなわち、バルブ本体部32Aが、正立噴射用ディップチューブ35と倒立噴射用ディップチューブ36と連結されている時、当該正立噴射用ディップチューブ35の末端開口が正立用流入口322として定義され、L字状を呈する倒立噴射用ディップチューブ36の末端開口が倒立用流入口324として定義される。
【0051】
図3に示すように、第1の好適な実施例において、前記第1ボール33は、前記第1流路321内に移動自在に収容され、前記正立用流入口322と液剤入口315とを選択的に連通または遮断させるために用いられる。前記第2ボール34は、前記第2流路323内に移動自在に収容され、前記倒立用流入口324と液剤入口315とを選択的に連通または遮断させるために用いられる。具体的に述べると、図4に示すように、本発明に係るエアゾール容器を正立状態で使用する場合、該第1ボール33が、重力の作用によって、前記第1封止栓328上に自然に落下し、液剤Aに浸かっている前記正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322が、前記第1連通口3211を通って、前記液剤入口315と連通するようになり、一方で、該第2ボール34が、重力の作用によって自然に落下して、前記第2連通口3231を塞ぎ、該倒立用流入口324と液剤入口315とを遮断する。
また、図5に示すように、本発明に係るエアゾール容器を倒立状態で使用する場合、該第2ボール34が、重力の作用によって、前記第2封止栓330上に自然に落下し、液剤Aに浸かっている前記倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324が、該第2連通口3231を通って、該液剤入口315と連通するようになり、一方で、該第1ボール33が、重力の作用によって自然に落下して、該第1連通口3211を塞ぎ、該正立用流入口322と液剤入口315との連通を遮断する。
さらに、図6に示すように、本発明に係るエアゾール容器を水平状態で使用する場合、該第1ボールが、重力の作用によって、前記第1傾斜内壁面3212に沿って、缶体底部方向に向かって転落し、最終的に、該第1傾斜内壁面3212の低い一端に留め置かれ、液剤Aに浸かっている該正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322が、該第1連通口3211を通って、該液剤入口315と連通するようになり、一方で、該第2ボール34が、重力の作用によって、前記第2傾斜内壁面3232に沿って、缶体頂部方向に向かって転落し、最終的に、該第2傾斜内壁面3232の低い一端に留め置かれ、液剤Aに浸かっている該倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324が、該第2連通口3231を通って、該液剤入口315と連通するようになる。
【0052】
図3図4及び図9Aに示すように、第1の好適な実施例において、正立噴射用ディップチューブ35は、その先端が、正立噴射用延長管部35Aを介して、バルブ本体部32Aの第1流入口322Bに接続され、正立噴射用ディップチューブ35と第1連通口3211に連通する。わずかに湾曲している正立噴射用ディップチューブ35は、その尾端の曲げ方向が、噴射キャップ20の噴射口21と同じ方向に設定され、また、正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322は、第3基準方向D3に延伸するように、缶体の胴部と底部が接する角部に近接している。このような設計により、本発明は正立状態で噴射操作を行う場合においては、正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322は、常に、缶底内の液剤Aに浸かっている。
図1図3図5及び図9Aに示すように、本実施例においての倒立噴射用ディップチューブ36は、断面L字状を呈し、その連結端部362が、バルブ本体部32Aの第2流入口324Bに接続されて、第2連通口に連通する。具体的に述べると、倒立噴射用ディップチューブ36は、その倒立用流入口324が、第2基準方向D2に延びた後、第1基準方向D1に向かって、缶体10内の頂部まで延在する構造体であり、このような設計により、本発明は倒立状態で噴射操作を行う場合においては、倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324は、常に、缶体頂部に滞留する液剤Aに浸かっている。ただし、本発明に係る両ディップチューブは、上記に限定されるものではなく、該正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322が、第3基準方向D3に真っ直ぐに向かってもよく、該倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324が、缶体10の頂部に向かずに、第2基準方向D2に向かってもよい。
【0053】
さらに具体的に述べると、以下に説明するように、本発明の使用時には大きく五つの使用状態に分けられる。
【0054】
その1、正立噴射状態。
図4に示すように、缶体10を正立状態で使用する場合、第1ボール33が、第1流路321の底端に留め置かれていることから、正立用流入口322が、第1連通口3211を通して、液剤入口315に連通し、第2ボール34が、第2流路323の底端に留め置かれて第2連通口3231を塞いでいることから、倒立用流入口324と液剤入口315との連通を遮断する。この時、正立用流入口322が、液剤Aに浸かっており、倒立用流入口324が、噴射剤Bにさらされており、その結果、使用者が噴射キャップ20を押すと、液剤Aが、正立用流入口322に流入し、その後、第1流路321、第1連通口3211及び正倒立共同流路325を順に通ってから、液剤入口315に進入して、噴射口21から噴出される。一方で、第2ボール34が、倒立用流入口324と液剤入口315との連通を遮断しているため、倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324が、噴射剤Bにさらされていても、噴射剤Bが漏れ出されることはない。
【0055】
その2、倒立噴射状態。
図5に示すように、缶体10を倒立状態で使用する場合、第2ボール34が、第2流路323の缶体頂部寄り端部に留め置かれていることから、倒立用流入口324が、第2連通口3231を通して、液剤入口315に連通し、第1ボール33が、第1流路321の缶体頂部寄り端部に留め置かれて、第1連通口3211を塞いでいることから、正立用流入口322と液剤入口315との連通を遮断する。この時、倒立用流入口324が、液剤Aに浸かっており、正立用流入口322が、噴射剤Bにさらされており、その結果、使用者が噴射キャップ20を押すと、液剤Aが、倒立用流入口324に流入し、その後、第2流路323、第2連通口3231及び正倒立共同流路325を順に通ってから、液剤入口315に進入して、噴射口21から噴出される。一方で、第1ボール33が、正立用流入口322と液剤入口315との連通を遮断しているため、正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322が、噴射剤Bにさらされていても、噴射剤Bが漏れ出されることはない。
【0056】
その3、水平噴射状態。
図6に示すように、缶体10を水平状態で使用する場合、第1傾斜内壁面3212は、缶体底部方向に向かって、傾斜角度1.5度の交角θをもって下向きに傾斜しており、これに対して、第2傾斜内壁面3232は、缶体頂部方向に向かって、傾斜角度1.5度の交角θをもって下向きに傾斜している。缶内の液剤Aが半分以下しか残っていない場合において、缶体10を完全に水平になる状態で使用する際に、第1傾斜内壁面3212及び第2傾斜内壁面3232が斜め下に傾斜するように構成されているため、第1ボール33が、第1傾斜内壁面3212に沿って、缶体底部方向に転がって、低い端部に留め置かれることにより、正立用流入口322と液剤入口315とは連通するようになり、同時に、第2ボール34が、第2傾斜内壁面3232に沿って、缶体頂部方向に転がって、低い端部に留め置かれることにより、倒立用流入口324と液剤入口315とは連通するようになる。つまり、完全に水平になる状態で噴射操作を行う時、第1傾斜内壁面3212及び第2傾斜内壁面3232の設計により、第1ボール33及び第2ボール34がそれに連れて、同時に斜め下方向に転がって、対応する傾斜内壁面の低い端部に留め置かれることにより、正立用流入口322と倒立用流入口324とは同時に開放状態になることから、液剤Aが、両流入口に流入し、両流路、両連通口を順に通ってから噴出されることが可能となり、これにより、本発明に係るエアゾール製品を最後まで使い切ると、缶内の液剤Aと噴射剤Bの両方を無駄なく使い切ることができる。
【0057】
その4、缶体10が略水平で、噴射キャップ20がやや下向きに傾斜した状態。
図7に示すように、第2傾斜内壁面3232が、缶体頂部方向に向かって、傾斜角度1.5の交角θをもって下向きに傾斜していることにより、この時の第2ボール34が、第2傾斜内壁面3232に沿って、缶体頂部方向に向かって、迅速に転がり落ちて留め置かれ、これにより、液剤Aに浸かっている倒立用流入口324が、液剤入口315と連通するようになる。一方で、第1ボール33も連動して、缶体頂部方向に向かって、転がり落ちて留め置かれ、これにより、第1連通口3211を塞いで、正立用流入口322と液剤入口315との連通を遮断する。この時、(缶内の液剤Aが半分以下しか残っていない状況であれば、)倒立用流入口324が、液剤Aに浸かっており、正立用流入口322が、噴射剤Bにさらされており、その結果、使用者が噴射キャップ20を押すと、液剤Aが、倒立用流入口324に流入し、その後、第2流路323、第2連通口3231及び正倒立共同流路325を順に通ってから、液剤入口315に進入して、噴射口21から噴出される。一方で、第1ボール33が、正立用流入口322と液剤入口315との連通を遮断しているため、正立用流入口322が、噴射剤Bにさらされていても関わらず、噴射剤Bが漏れ出されることはない。
【0058】
その5、缶体10が略水平で、噴射キャップ20がやや上向きに傾斜した状態。
図8に示すように、第1傾斜内壁面3212が缶体底方向に向かって、傾斜角度1.5の交角θをもって下向きに傾斜していることにより、この時の第1ボール33は、第1傾斜内壁面3212に沿って、缶体底部方向に向かって、迅速に転がり落ちて留め置かれ、これにより、液剤Aに浸かっている正立用流入口322が、液剤入口315と連通するようになる。一方で、第2ボール34も連動して、缶体底部方向に向かって、転がり落ちて留め置かれ、これにより、第2連通口3231を塞いで、倒立用流入口324と液剤入口315との連通を遮断する。この時、缶内の液剤Aが半分以下しか残っていない状況であれば、正立用流入口322が、液剤Aに浸かっており、倒立用流入口324が、噴射剤Bにさらされており、その結果、使用者が噴射キャップ20を押すと、液剤Aが、正立用流入口322に流入、その後、第1流路321、第1連通口3211及び正倒立共同流路325を順に通ってから、液剤入口315に進入して、噴射口21から噴出される。一方で、第2ボール34が、倒立用流入口324と液剤入口315との連通を遮断しているため、倒立用流入口324が、噴射剤Bにさらされていても関わらず、噴射剤Bが漏れ出されることはない。
【0059】
上述したように、缶体10の姿勢によって、五つの使用状態を有するが、実際には、第1ボール33と第2ボール34の作動パターンは三つしか有していない。それは、正立噴射状態下のパターン1、第1ボール33が正立用流入口322を開放させると共に、第2ボール34が倒立用流入口324を閉塞させ、倒立噴射状態下のパターン2、第1ボール33が正立用流入口322を閉塞させると共に、第2ボール34が倒立用流入口324を開放させ、及び水平噴射状態下のパターン3、第1ボール33及び第2ボール34がそれぞれ、正立用流入口322及び倒立用流入口324を開放させる、である。また、これらの三つの作動パターンは、缶体10が略水平で、噴射キャップ20がやや下向きに傾斜した状態(図7を参照)と、缶体10が略水平で、噴射キャップ20がやや上向きに傾斜した状態(図8を参照)とにおいて、微妙な角度変化に応じて、速やかに切り替えることができる。従って、本発明によれば、異なる使用状態の間を迅速に切り替えることができ、使用者が移動しながら、エアゾール容器の噴射操作を行う場合であっても、液剤Aが断続的に噴出されたり、噴射剤Bが漏れ出されたりする虞はなく、正常に使用することができる。
【0060】
図10図13に示すように、本発明の第2の好適な実施例の構成は、第1の好適な実施例とほぼ同じであり、同様に、第1流路321F内の第1傾斜内壁面3212Fと第1ボール33Fとの組み合わせ、及び第2流路323F内の第2傾斜内壁面3232Fと第2ボール34Fとの組み合わせにより、上述した正立噴射状態、倒立噴射状態または水平噴射状態を迅速かつ正確に切り替え、かつ、各種使用状態の切り替え時、及び各種傾斜状態の切り替え時に、噴射剤Bの漏れ出しを確実に防止する効果を奏することができる。尚、第2の好適な実施例と第1の好適な実施例との違いについては、以下のとおり詳細に説明する。
【0061】
本発明の第2の好適な実施例において、前記第1傾斜内壁面3212F上に一対の第1リブ状ガイド部3213Fが形成され、前記第2傾斜内壁面3232F上に一対の第2リブ状ガイド部3233Fが形成される。該両第1リブ状ガイド部3213Fは、第1傾斜内壁面3212Fに沿って、間隔を置いて延在すると共に、前記第1流入口322Bの孔周縁の両側に近接しており、前記第1ボール33Fは、該両第1リブ状ガイド部3213F上に転動可能に接触支持される。これにより、該第1ボール33Fと第1傾斜内壁面3212Fとの間に離間距離を有して高低差が形成される。該両第2リブ状ガイド部3233Fは、第2傾斜内壁面3232Fに沿って、間隔を置いて延在すると共に、前記第2流入口324Bの孔周縁の両側に近接しており、前記第2ボール34Fは、該両第2リブ状ガイド部3233F上に転動可能に接触支持される。これにより、該第2ボール34Fと第2傾斜内壁面3232Fとの間に離間距離を有して高低差が形成される。
【0062】
前記第1流路321Fの内径は、前記第1ボール33Fの直径よりも大きく設定され、前記第2流路323Fの内径は、前記第2ボール34Fの直径よりも大きく設定されることで、該第1ボール33F、第2ボール34Fがそれぞれ、該第1流路321F、第2流路323F内を転動移動する時、該両ボール33F、34Fの球体と該両流路321F、323Fの内壁面の間に空隙が形成される。これにより、第1ボール33F、第2ボール34Fが第1流路321F、第2流路323F内を転動移動する際に、第1ボール33F、第2ボール34Fに付着している液剤による転動抵抗を回避することができる。液剤Aが当該第1ボール33F、第2ボール34Fの表面上に付着することによって生じた転動抵抗を解消することにより、両ボール33F、34Fは、異なる噴射状態間をより迅速かつ正確に切り替えることができる。
【0063】
尚、前記第1リブ状ガイド部3213F及び第2リブ状ガイド部3233Fの第1基準方向D1に垂直な断面形状は、円弧状または多辺形状であることが好ましい。具体的に述べると、第2の好適な実施例における第1リブ状ガイド部3213F及び第2リブ状ガイド部3233Fの外形は、円形または楕円形のような円弧状を呈してもよく、他の実施例においては、三角形または矩形を呈してもよい。
【0064】
図10図13に示すように、第2の好適な実施例において、前記流路切替バルブ組立体32のバルブ本体部32Fの第1封止栓328Fは、前記第1開口327Fに着脱可能に取り付けられて、前記第1ボール33Fが前記第1流路321Fから抜けるのを阻止するために用いられるものである。また、該第1封止栓328F上には、該第1ボール33Fの外径よりも小さい内径を有する第1スルーホール部3281Fが設けられる。一方、第2封止栓330Fは、前記第2開口329Fに着脱可能に取り付けられて、前記第2ボール34Fが前記第2流路323Fから抜けるのを阻止するために用いられるものであり、また、該第2封止栓330F上には、該第2ボール34Fの外径よりも小さい内径を有する第2スルーホール部3301Fが設けられる。つまり、第2の好適な実施例における第1封止栓328F及び第2封止栓330Fは、第1開口327F及び第2開口329Fを閉じるためのものではなく、第1ボール33F及び第2ボール34Fの離脱を防止するために第1開口327F及び第2開口329Fに取り付けられているものである。また、前記第1スルーホール部3281F及び第2スルーホール部3301Fの設置により、液剤Aの両流路321F、323F内外への流れを促進することができる。
特に、缶体10が水平状態で両流路321F、323Fの開口が液剤Aに沈んでいる場合、両封止栓328F、330Fにスルーホールがないと、両ボール33F、34Fは、両封止栓328F、330Fの背面に接触した際に、若干の液剤付着力が発生することで、両封止栓328F、330Fの裏側に吸着されて自由に転動移動できない可能性があるので、缶体10が水平状態で、噴射キャップ20がわずかに上下に傾く際に、両ボール33F、34Fが両封止栓328F、330Fの背面に吸着されて、適切かつ即時に転動したり落下したりすることができなくなる。従って、両スルーホール部3281F、3301Fの設置により、両ボール33F、34Fは、異なる噴射状態間で、さらなる迅速かつ正確に切り替えることが可能となる。
【0065】
さらに、第2の好適な実施例において、前記第1スルーホール部3281Fの背面周縁に、第1ボール保持リング3282Fが形成されている。このような構成により、前記第1ボール33Fが該第1ボール保持リング3282Fに移動して接触保持されると、該第1スルーホール部3281Fが閉塞される。また、前記第1流路321Fの頂端周縁に、第1ボール保持環部3214Fが形成されている。このような構成により、前記第1ボール33Fが該第1ボール保持環部3214Fに移動して接触保持されると、前記第1連通口3211Fが閉塞される。特に、該第1ボール33Fが該第1ボール保持リング3282Fまたは第1ボール保持環部3214F上に接触保持される際に、その周囲に隙間が存在し、これにより、該第1ボール33Fが該第1流路321Fの頂端または第1封止栓328Fに移動して保持されたり、あるいは第1流路321Fの頂端または第1封止栓328Fから離脱したりする時、スムーズに動くことができる。同じく、前記第2スルーホール部3301Fの背面周縁に、第2ボール保持リング3302Fが形成されており、このような構成により、前記第2ボール34Fが該第2ボール保持リング3302Fに移動して接触保持されると、該第2スルーホール部3301Fが閉塞される。
また、前記第2流路323Fの底端周縁に、第2ボール保持環部3234Fが形成されており、このような構成により、前記第2ボール34Fが該第2ボール保持環部3234Fに移動して接触保持されると、前記第2連通口3231Fが閉塞される。特に、該第2ボール34Fが該第2ボール保持リング3302Fまたは第2ボール保持環部3234F上に接触保持される際に、その周囲に隙間が存在し、これにより、該第2ボール34Fが該第2流路323Fの底端または第2封止栓330Fに移動して保持されたり、あるいは該第2流路323Fの底端または第2封止栓330Fから離脱する時、スムーズに動くことができる。
【0066】
本発明の優れた点は、図4及び図5に示すように、噴射バルブ組立体31の底端に、第1流路321及び第2流路323を有する流路切替バルブ組立体32が設置されることと、正立噴射用ディップチューブ35及び倒立噴射用ディップチューブ36がそれぞれ第1流入口322B及び第2流入口324Bに連結されることにより、正立噴射用ディップチューブ35の正立用流入口322及び倒立噴射用ディップチューブ36の倒立用流入口324がそれぞれ、第1流路321及び第2流路323を通して噴射バルブ組立体31の液剤入口315に連通されるようにし、それに加え、それぞれが第1流路321及び第2流路323内に移動自在に収容される第1ボール33及び第2ボール34を介して、正立用流入口322及び倒立用流入口324の連通または遮断をそれぞれ制御することが可能となる、このため、正立状態で使用する際に、第1ボール33が重力によって自然に落下することで、液剤Aに浸かっている正立用流入口322は第1連通口3211を通して液剤入口315に連通するようになり、同時に、第2ボール34が重力によって自然に落下して、第2連通口3231を塞いで倒立用流入口324と液剤入口315とを遮断することになる。一方で、倒立状態で使用する際に、第2ボール34が重力によって自然に落下することで、液剤Aに浸かっている倒立用流入口324は第2連通口3231を通して液剤入口315に連通するようになり、同時に、第1ボール33が重力によって自然に落下して、第1連通口3211を塞いで正立用流入口322と液剤入口315とを遮断することになる。
このような設計により、本発明に係るエアゾール容器は、正立状態または倒立状態で使用しても、液剤に浸かっていない吸水口を塞ぐボールを有するので、従来技術の噴射バルブ組立体またはバルブ機構に比べて、正立または倒立のいかなる状態にあっても、液剤Aをスムーズに噴射し、かつ、噴射剤Bの漏れ出しを防止することが可能にし、液剤の残留を低減して無駄を回避する効果を奏する。
【0067】
さらに、図6に示すように、本発明は、缶体10を水平状態で使用する場合、第1傾斜内壁面3212及び第2傾斜内壁面3232が斜めに設計されることにより、第1ボール33が第1傾斜内壁面3212に沿って缶体10の底部方向に移動することで、正立用流入口322と液剤入口315とは連通するようになり、第2ボール34が第2傾斜内壁面3232に沿って缶体10の頂部方向に移動することで、倒立用流入口324と液剤入口315とは連通するようになる。つまり、缶体10を水平噴射状態で使用する場合、両傾斜内壁面が下方に傾斜することにより、両ボールがそれに連れて、同時に下向きの方向に移動し、これにより、液剤Aに浸かっている両流入口を一斉に開放することになり、液剤Aが同時に両流入口に進入することを可能にするので、ボールが流路内を行ったり来たりして、液剤Aが断続的に噴出される問題を解消することができる。
【0068】
要するに、本発明に係るエアゾール容器及びそれに用いるバルブ機構は、流路切替バルブ組立体、両流路、両連通口、両傾斜内壁面及び両ボールが設置されることにより、正立噴射状態、倒立噴射状態または水平噴射状態を迅速かつ正確に切り替えることができ、かつ、各種使用状態の切り替え時、及び各種傾斜状態の切り替え時に、噴射剤の漏れ出しを確実に防止することが可能となり、従来技術の欠点を解決することができる。
【0069】
以上の説明は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明に対して何ら限定を行うものではない。本発明について、比較的好適な実施形態をもって上記のとおり開示したが、これは本発明を限定するものではなく、すべての当業者が、本発明の技術構想を逸脱しない範囲において、本発明の技術の本質に基づいて上記の実施形態に対して行ういかなる簡単な修正、変更及び修飾も、依然としてすべて本発明の技術構想の範囲内にある。
【符号の説明】
【0070】
A 液剤
B 噴射剤
D1 第1基準方向
D2 第2基準方向
D3 第3基準方向
θ 交角
10 缶体
11 内部空間
12 装着開口
13 底壁
20 噴射キャップ
21 噴射口
30 バルブ機構
31 噴射バルブ組立体
311 マウンティングカップ
3111 キャップシールリング
3112 スプリング
312 ステム
3121 貫通孔
313 ステムラバー
314 弁座
315 液剤入口
316 液剤出口
32 流路切替バルブ組立体
321 第1流路
3211 第1連通口
3212 第1傾斜内壁面
322 正立用流入口
322B 第1流入口
323 第2流路
3231 第2連通口
3232 第2傾斜内壁面
324 倒立用流入口
324B 第2流入口
325 正倒立共同流路
326 分流用隔壁
327 第1開口
328 第1封止栓
329 第2開口
330 第2封止栓
32A バルブ本体部
32B 第3開口
32C 第3封止栓
32C1 第3封止栓案内壁
32D 第4開口
32E 第4封止栓
32E1 第4封止栓案内壁
32F バルブ本体部
321F 第1流路
3211F 第1連通口
3212F 第1傾斜内壁面
3213F 第1リブ状ガイド部
3214F 第1ボール保持環部
323F 第2流路
3231F 第2連通口
3232F 第2傾斜内壁面
3233F 第2リブ状ガイド部
3234F 第2ボール保持環部
327F 第1開口
328F 第1封止栓
3281F 第1スルーホール部
3282F 第1ボール保持リング
329F 第2開口
330F 第2封止栓
3301F 第2スルーホール部
3302F 第2ボール保持リング
33F 第1ボール
34F 第2ボール
33 第1ボール
34 第2ボール
35 正立噴射用ディップチューブ
35A 正立噴射用延長管部
36 倒立噴射用ディップチューブ
36A 倒立噴射用延長管部
361 位置決め部
362 連結端部
363 位置決めリブ
911 噴射バルブ組立体
912 流路切替バルブ組立体
92 ディップチューブ
921 正立用流入口
922 正立噴射用流路
923 正倒立共同流路
924 液剤入口
925 液剤出口
93 倒立用流入口
931 倒立噴射用流路
94 ボール
98 噴射キャップ
981 噴射口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通している内部空間と装着開口とを有する缶体に設置され、該缶体の内外を連通させる、エアゾール容器に用いるバルブ機構であって、
第1基準方向と、第2基準方向と、第3基準方向と、噴射バルブ組立体と、流路切替バルブ組立体とを備え、
前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の頂端に向かい、
前記第2基準方向は、前記第1基準方向と直交すると共に、前記缶体の径方向外側に向かい、
前記第3基準方向は、前記缶体の軸心と平行すると共に、該缶体の底端に向かい、
前記噴射バルブ組立体は、前記缶体の装着開口に密封固定されると共に、該缶体の内部空間に配置される液剤入口と、該缶体の外部に配置される液剤出口とを有し、該液剤入口は該液剤出口に選択的に連通し、
前記流路切替バルブ組立体は、前記噴射バルブ組立体に連通するように、該噴射バルブ組立体の底端に接続されると共に、第1流路、第1流入口、第2流路、第2流入口、第1ボール及び第2ボールを有するバルブ本体部を含み、
該第1流路は、第1連通口と第1傾斜内壁面とを有し、
該第1連通口は、該第1流路における前記第1基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、
該第1傾斜内壁面は、該第1流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜して、該第1基準方向を向く一端から前記第3基準方向を向く一端にかけて、該第2基準方向に偏るように延在し、
該第1流入口は、前記第1流路に連通しており、該第1流路の第1連通口を通して前記液剤入口に連通し、
該第2流路は、第2連通口と第2傾斜内壁面とを有し、
該第2連通口は、該第2流路における前記第3基準方向を向く一端に形成されると共に、前記液剤入口に連通し、
該第2傾斜内壁面は、該第2流路における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記缶体の軸心に対して傾斜し、前記第3基準方向を向く一端から前記第1基準方向を向く一端にかけて該第2基準方向に偏るように延在し、
該第2流入口は、前記第2流路に連通しており、該第2流路の第2連通口を通して前記液剤入口に連通し、
前記第1ボールは、前記第1流路内に移動自在に収容されると共に、前記第1流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、
前記第2ボールは、前記第2流路内に移動自在に収容されると共に、前記第2流入口と液剤入口とを選択的に連通または遮断させ、
前記缶体が正立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直上向きになり、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2連通口を塞ぎ、該第2流入口と液剤入口との連通を遮断し、
前記缶体が倒立状態にある場合、前記第1基準方向が鉛直下向きになり、前記第2ボールが自然に転がり落ちて、前記第2流入口と液剤入口とが連通するようになり、一方で、前記第1ボールが自然に転がり落ちて、前記第1連通口を塞ぎ、該第1流入口と液剤入口との連通を遮断し、
前記缶体が水平状態にある場合、前記第2基準方向が鉛直下向きになり、前記第1ボールは、前記第1傾斜内壁面に沿って、該第1傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第1流入口と前記液剤入口とが連通しており、前記第2ボールは、前記第2傾斜内壁面に沿って、該第2傾斜内壁面の低い一端に転がり落ちて留め置かれていることで、前記第2流入口と該液剤入口とが連通しており、
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、正倒立共同流路と分流用隔壁とをさらに有し、
該正倒立共同流路は前記液剤入口に連通し、
前記第1連通口と第2連通口は、該正倒立共同流路を通して該液剤入口に連通し、
該分流用隔壁は、前記第1連通口と第2連通口との間に位置するように、前記正倒立共同流路内に設置されることを特徴とする、
エアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項2】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1~3度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項3】
前記第1傾斜内壁面と前記第1基準方向とのなす角度が1.5度であり、前記第2傾斜内壁面と前記第3基準方向とのなす角度が1.5度であることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項4】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口、第2封止栓、第3開口、第3封止栓、第4開口及び第4封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口を着脱可能に閉塞し、前記第2開口は、前記第2流路における前記第基準方向を向く一端に位置するように、該バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口を着脱可能に閉塞し、前記第3開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第1連通口に連通し、前記第3封止栓は、前記第3開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第1流入口と第1流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第3封止栓案内壁を有し、前記第4開口は、前記バルブ本体部上における前記第2基準方向側に形成されると共に、前記第2連通口に連通し、前記第4封止栓は、前記第4開口を着脱可能に閉塞すると共に、前記バルブ本体部との間に、前記第2連通口と正倒立共同流路とを連通する湾曲連通流路を形成する第4封止栓案内壁を有することを特徴とする請求項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項5】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第2基準方向に延在する、倒立噴射用延長管部をさらに有し、前記第2流入口が、該倒立噴射用延長管部の第2基準方向側の端部に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項6】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上に、前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する、正立噴射用延長管部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項7】
前記第1傾斜内壁面上に、該第1傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第1流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第1リブ状ガイド部が形成され、前記第1ボールが該二つの第1リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第1ボールと該第1傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成され、前記第2傾斜内壁面上に、該第2傾斜内壁面に沿って、互いに間隔を置いて延在すると共に、前記第2流入口の孔周縁の両側に近接する二つの第2リブ状ガイド部が形成され、前記第2ボールが該二つの第2リブ状ガイド部上に転動可能に接触支持され、これにより、当該第2ボールと該第2傾斜内壁面との間に離間距離を有して、高低差が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項8】
前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部は、第1開口、第1封止栓、第2開口及び第2封止栓をさらに含み、前記第1開口は、前記第1流路における前記第3基準方向を向く一端に位置するように、前記バルブ本体部上に形成され、前記第1ボールは、該第1開口を通過して該第1流路に出入りすることができ、前記第1封止栓は、前記第1開口に着脱可能に取り付けられ、前記第1ボールが前記第1流路から抜けるのを阻止し、該第1封止栓上に、該第1ボールの外径よりも小さい内径を有する第1スルーホール部が形成され、前記第2開口は、前記第2流路における前記第基準方向を向く一端に位置するように、該バルブ本体部上に形成され、前記第2ボールは、該第2開口を通過して該第2流路に出入りすることができ、前記第2封止栓は、前記第2開口に着脱可能に取り付けられ、前記第2ボールが前記第2流路から抜けるのを阻止し、該第2封止栓上に、該第2ボールの外形よりも小さい内径を有する第2スルーホール部が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項9】
前記第1スルーホール部の背面周縁に、第1ボール保持リングが形成され、該第1ボール保持リング上に前記第1ボールが接触保持されると、該第1スルーホール部が閉塞され、前記第1流路の頂端周縁に、第1ボール保持環部が形成され、該第1ボール保持環部上に前記第1ボールが接触保持されると、前記第1連通口が閉塞され、前記第2スルーホール部の背面周縁に、第2ボール保持リングが形成され、該第2ボール保持リング上に前記第2ボールが接触保持されると、該第2スルーホール部が閉塞され、前記第2流路の底端周縁に、第2ボール保持環部が形成され、該第2ボール保持環部上に前記第2ボールが接触保持されると、前記第2連通口が閉塞されることを特徴とする請求項に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構。
【請求項10】
エアゾール容器であって、
互いに連通する内部空間及び装着開口を有する缶体と、
噴射口を有する噴射キャップと、
該缶体を上に設置され、該缶体の内外を連通させる請求項1に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構と、を備え、
前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行であり、
前記噴射バルブ組立体は、前記装着開口に密封固定されると共に前記噴射キャップに連結され、
該噴射バルブ組立体の液剤出口は、該噴射キャップの噴射口に連通することを特徴とする、
エアゾール容器。
【請求項11】
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられると共に、前記第1流入口に連通する正立噴射用ディップチューブをさらに含み、該正立噴射用ディップチューブの末端は、前記第3基準方向に向かって該缶体の底部まで延在するように、前記第2基準方向を向いていることを特徴とする請求項10に記載のエアゾール容器。
【請求項12】
前記正立噴射用ディップチューブは、前記流路切替バルブ組立体のバルブ本体部上における前記第1流入口に連通し、前記第3基準方向に延在する正立噴射用延長管部に接続されることを特徴とする請求項11に記載のエアゾール容器。
【請求項13】
エアゾール容器であって、
互いに連通する内部空間及び装着開口を有する缶体と、
噴射口を有する噴射キャップと、
該缶体を上に設置され、該缶体の内外を連通させる請求項5に記載のエアゾール容器に用いるバルブ機構とを備え、
前記第1基準方向は、前記缶体の軸心と平行であり、
前記噴射バルブ組立体は、前記装着開口に密封固定されると共に前記噴射キャップに連結され、
該噴射バルブ組立体の液剤出口は、該噴射キャップの噴射口に連通し、
前記エアゾール容器に用いるバルブ機構は、前記流路切替バルブ組立体上に取り付けられ、かつ前記第2流入口に連通する倒立噴射用ディップチューブをさらに含み、
該倒立噴射用ディップチューブは、前記第2基準方向に延びてから、前記第1基準方向に向かって延びるL字状を呈すると共に、その末端開口が、該第1基準方向に向かって該缶体の頂部まで延在し、
該倒立噴射用ディップチューブは、倒立噴射用延長管部に連結するための連結端部と、該倒立噴射用延長管部の位置決めリブに係合するための位置決め部とをさらに有することを特徴とするエアゾール容器。