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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177815
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電流検出方法、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221124BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080220
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021083716
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 伸起
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA02
5H770GA11
5H770HA02W
5H770JA10X
(57)【要約】
【課題】1パルスモードで制御されるインバータ回路における、電流検出方法を提供する。
【解決手段】第1キャリア周期(C1)と第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおけるタイミング(t1,t2)で検出した直流部(21)を流れる電流に基づいて、出力電流を検出する検出モードを含み得る。第2キャリア周期(C2)において、第1スイッチングパターンのタイミングで検出した直流部(21)を流れる電流(idc)と、第1キャリア周期(C1)および第3キャリア周期(C3)の内で、第1スイッチングパターンと異なるスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)におけるタイミングで検出した直流部(21)を流れる電流(idc)とに基づいて出力電流を検出する検出モードを含み得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ回路(20)の出力電流を検出する電流検出方法であって、
前記インバータ回路(20)は、直流部(21)を有し、
前記インバータ回路(20)のスイッチング制御は、第1キャリア周期(C1)、第2キャリア周期(C2)、第3キャリア周期(C3)の順で連続するそれぞれのキャリア周期において所定のスイッチングパターンでスイッチングを実施するスイッチングモードを有しており、
前記スイッチングモードにおいて、
前記第2キャリア周期(C2)は、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有する第1スイッチングパターンを含む2種類のスイッチングパターンを含み、
前記第1キャリア周期(C1)は、前記2種類のスイッチングパターンのうちの一方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含み、
前記第3キャリア周期(C3)は、前記2種類のスイッチングパターンのうちの他方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含む場合において、
前記電流検出方法は、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおけるタイミング(t1,t2)で検出した前記直流部(21)を流れる電流に基づいて、前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第1スイッチングパターンと異なるスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)におけるタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって、または前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第3キャリア周期(C3)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第1キャリア周期(C1)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード
の少なくとも一つの検出モードを含む電流検出方法。
【請求項2】
請求項1の電流検出方法において、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)のいずれか一方と、前記第2キャリア周期(C2)とにおいて前記直流部(21)に流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法。
【請求項3】
請求項1の電流検出方法において、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおいて前記直流部(21)を流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法。
【請求項4】
請求項2の電流検出方法において、
前記第2キャリア周期(C2)における前記第1スイッチングパターンにおいて、前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出するとともに、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第2キャリア周期(C2)で電流検出したスイッチングパターンと異なり且つ前記第2キャリア周期(C2)で電流検出したスイッチングパターンと最接近するスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)において、前記直流部(21)に流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法。
【請求項5】
直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ回路(20)と、
前記インバータ回路(20)におけるスイッチングを制御する制御部(30)と、
を備え、
前記インバータ回路(20)は、直流部(21)を有し、
前記制御部(30)は、第1キャリア周期(C1)、第2キャリア周期(C2)、第3キャリア周期(C3)の順で連続するそれぞれのキャリア周期において所定のスイッチングパターンでスイッチングを実施するスイッチングモードを有しており、
前記スイッチングモードにおいて、
前記第2キャリア周期(C2)は、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有する第1スイッチングパターンを含む2種類のスイッチングパターンを含み、
前記第1キャリア周期(C1)は、前記2種類のスイッチングパターンの内の一方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含み、
前記第3キャリア周期(C3)は、前記2種類のスイッチングパターンの内の他方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含む場合において、
前記制御部(30)は、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおけるタイミング(t1,t2)で検出した前記直流部(21)を流れる電流に基づいて、前記インバータ回路(20)の出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンのタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第1スイッチングパターンと異なるスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)におけるタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンのタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって、または前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第3キャリア周期(C3)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第1キャリア周期(C1)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード
の少なくとも一つの検出モードを実施する
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出方法、および電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる1パルスモードで動作する電力変換装置の中には、出力電圧のアンバランスを低減するものがある。アンバランスの補正では、例えば、電圧指令値(矩形波)が補正される(例えば特許文献1を参照)。特許文献1の電力変換装置は、電圧指令値(矩形波)のパルス幅を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4911241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置では、出力電流の検出が行われる。電圧指令値(矩形波)のパルス幅が変更された期間は、電流検出(電圧検出)のための期間を十分に確保できるとは限らない。
【0005】
本開示の目的は、1パルスモードで制御されるインバータ回路における、電流検出方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ回路(20)の出力電流を検出する電流検出方法であって、
前記インバータ回路(20)は、直流部(21)を有し、
前記インバータ回路(20)のスイッチング制御は、第1キャリア周期(C1)、第2キャリア周期(C2)、第3キャリア周期(C3)の順で連続するそれぞれのキャリア周期において所定のスイッチングパターンでスイッチングを実施するスイッチングモードを有しており、
前記スイッチングモードにおいて、
前記第2キャリア周期(C2)は、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有する第1スイッチングパターンを含む2種類のスイッチングパターンを含み、
前記第1キャリア周期(C1)は、前記2種類のスイッチングパターンのうちの一方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含み、
前記第3キャリア周期(C3)は、前記2種類のスイッチングパターンのうちの他方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含む場合において、
前記電流検出方法は、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおけるタイミング(t1,t2)で検出した前記直流部(21)を流れる電流に基づいて、前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第1スイッチングパターンと異なるスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)におけるタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって、または前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第3キャリア周期(C3)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第1キャリア周期(C1)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード
の少なくとも一つの検出モードを含む電流検出方法である。
【0007】
第1の態様では、連続する3つのキャリア周期(C1,C2,C3)の中から、2つの基本電圧ベクトルが選択される。これらの基本電圧ベクトルは、電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有している。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様の電流検出方法において、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)のいずれか一方と、前記第2キャリア周期(C2)とにおいて前記直流部(21)に流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法である。
【0009】
第2の態様では、第1キャリア周期(C1)および第3キャリア周期(C3)のいずれか一方において、直流部(21)に流れる電流を検出される。第2の態様では、第2キャリア周期(C2)において直流部(21)に流れる電流が検出される。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様の電流検出方法において、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおいて前記直流部(21)を流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法である。
【0011】
第3の態様では、第1キャリア周期(C1)と第3キャリア周期(C3)において、直流部(21)に流れる電流が検出される。
【0012】
本開示の第4の態様は、第2の態様の電流検出方法において、
前記第2キャリア周期(C2)における前記第1スイッチングパターンにおいて、前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出するとともに、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第2キャリア周期(C2)で電流検出したスイッチングパターンと異なり且つ前記第2キャリア周期(C2)で電流検出したスイッチングパターンと最接近するスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)において、前記直流部(21)に流れる電流を検出し、
検出した電流に基づいて前記出力電流を求める
電流検出方法である。
【0013】
第4の態様では、第2キャリア周期(C2)において、直流部(21)を流れる電流(idc)が検出される。第4の態様では、第2キャリア周期(C2)で電流検出したスイッチングパターンと最接近するスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)において、直流部(21)を流れる電流(idc)が検出される。
【0014】
本開示の第5の態様は、
直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ回路(20)と、
前記インバータ回路(20)におけるスイッチングを制御する制御部(30)と、
を備え、
前記インバータ回路(20)は、直流部(21)を有し、
前記制御部(30)は、第1キャリア周期(C1)、第2キャリア周期(C2)、第3キャリア周期(C3)の順で連続するそれぞれのキャリア周期において所定のスイッチングパターンでスイッチングを実施するスイッチングモードを有しており、
前記スイッチングモードにおいて、
前記第2キャリア周期(C2)は、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有する第1スイッチングパターンを含む2種類のスイッチングパターンを含み、
前記第1キャリア周期(C1)は、前記2種類のスイッチングパターンの内の一方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含み、
前記第3キャリア周期(C3)は、前記2種類のスイッチングパターンの内の他方のスイッチングパターンであって、前記直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターンのみを含む場合において、
前記制御部(30)は、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第3キャリア周期(C3)のそれぞれにおけるタイミング(t1,t2)で検出した前記直流部(21)を流れる電流に基づいて、前記インバータ回路(20)の出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンのタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)および前記第3キャリア周期(C3)の内で、前記第1スイッチングパターンと異なるスイッチングパターンをもつキャリア周期(C)におけるタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第2キャリア周期(C2)において、前記第1スイッチングパターンのタイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって、または前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第3キャリア周期(C3)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第1キャリア周期(C1)と前記第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード、
前記第1キャリア周期(C1)において検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)と、
前記第2キャリア周期(C2)と前記第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで検出した前記直流部(21)を流れる直流部電流(idc)とに基づいて前記出力電流を検出する検出モード
の少なくとも一つの検出モードを実施する
電力変換装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、基本電圧ベクトルを示す。
図3図3は、基本電圧ベクトルと、検出できる相電流との関係を示す。
図4図4は、電力変換装置において実施される電流検出方法のフローチャートである。
図5A図5Aは、スイッチング状態の一例である。
図5B図5Bは、スイッチング状態の一例である。
図5C図5Cは、スイッチング状態の一例である。
図5D図5Dは、スイッチング状態の一例である。
図6A図6Aは、スイッチング状態の一例である。
図6B図6Bは、スイッチング状態の一例である。
図6C図6Cは、スイッチング状態の一例である。
図6D図6Dは、スイッチング状態の一例である。
図7A図7Aは、スイッチング状態の一例である。
図7B図7Bは、スイッチング状態の一例である。
図7C図7Cは、スイッチング状態の一例である。
図7D図7Dは、スイッチング状態の一例である。
図8A図8Aは、スイッチング状態の一例である。
図8B図8Bは、スイッチング状態の一例である。
図8C図8Cは、スイッチング状態の一例である。
図8D図8Dは、スイッチング状態の一例である。
図9図9は、実施形態2における電流検出方法のフローチャートである。
図10図10は、基本電圧ベクトルと選択すべきキャリア周期との対応関係を示すテーブルである。
図11図11は、実施形態3における電流検出方法のフローチャートである。
図12図12は、実施形態4において実施される電流検出方法のフローチャートである。
図13図13は、基本電圧ベクトルと、選択すべきキャリア周期との対応関係を示すテーブルである。
図14図14は、実施形態5における、直流部電流の検出タイミングを示す。
図15図15は、実施形態5における、直流部電流の検出タイミングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《実施形態1》
以下では、実施形態1に係る電流検出方法を電力変換装置(1)において実施する例を説明する。図1は、電力変換装置(1)の構成を示すブロック図である。電力変換装置(1)は、負荷に電力を供給する。この例では、負荷は、モータ(40)である。モータ(40)は、例えば、IPM(interior permanent magnet)モータである。モータ(40)は、例えば、空気調和装置(図示は省略)の圧縮機に用いられる。
【0017】
図1に示すように、電力変換装置(1)は、直流電源(10)、インバータ回路(20)、制御部(30)、およびシャント抵抗(R)を備えている。
【0018】
直流電源(10)は、直流電圧を出力する。直流電源(10)は、例えば、ダイオードのブリッジ回路(図示を省略)によって構成できる。ブリッジ回路は、単相、あるいは3相の交流電源から直流電圧を生成する。勿論、直流電源(10)は、他の構成でもかまわない。直流電源(10)は、バッテリー(二次電池)で構成してもよい。
【0019】
インバータ回路(20)には、正負1対の直流母線(P,N)が設けられている。これらの直流母線(P,N)には、直流電源(10)が出力した直流電圧が供給されている。これらの直流母線(P,N)において、インバータ回路(20)の直流部(21)が構成されている。
【0020】
インバータ回路(20)は、直流電源(10)が出力した直流電圧を三相交流電圧に変換する。インバータ回路(20)の出力は、モータ(40)に供給される。
【0021】
インバータ回路(20)は、6つのスイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)、6つのダイオード(D1,D2,D3,D4,D5,D6)を備えている。本実施形態のスイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)は、SiC MOSFET(SiC:Silicon Carbide,炭化ケイ素)である。
【0022】
勿論、スイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)は、SiC MOSFETには限定されない。スイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)として、Si(ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)、あるいはダイヤモンド(炭素)を主材料とした半導体で形成されたスイッチング素子等を用いてもよい。
【0023】
6つのスイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)は、ブリッジ結線されている。それぞれのスイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)は、ダイオード(D1,D2,D3,D4,D5,D6)がひとつずつ逆並列に接続されている。これらのダイオード(D1,D2,D3,D4,D5,D6)は、いわゆる還流ダイオードとして機能する。
【0024】
制御部(30)は、6つのスイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)のスイッチング(オンオフ)を制御する。制御部(30)は、オンに制御するスイッチング素子に直列接続されているスイッチング素子をオフに制御する。
【0025】
制御部(30)は、スイッチング制御をキャリア信号(CS)に同期して行う。キャリア信号(CS)は、例えば三角波である。キャリア信号(CS)の周波数は、固定値である。換言すると、キャリア信号(CS)は、インバータ回路(20)の出力周波数に非同期である。
【0026】
制御部(30)は、キャリア信号(CS)に同期したスイッチングパターン(後述)によって、所定タイミングにおける出力波形が1パルスモードとなる制御モードを実施する。この制御モードの実施中に、制御部(30)は、インバータ回路(20)の出力電流の検出(算出)も行う。
【0027】
制御部(30)は、CPU(Central Processing Unit)、メモリディバイス、A/D変換器(何れも図示を省略)を備えている。メモリディバイスには、CPUを動作させるためのプログラム(以下、制御プログラムという)が格納される。
【0028】
シャント抵抗(R)は、直流部(21)に設けられている。具体的にシャント抵抗(R)は、負側の直流母線(N)の途中に設けられている(図1参照)。シャント抵抗(R)は、直流部(21)(直流母線(N))における電流の検出に使用される。シャント抵抗(R)の両端に生じた電圧は、制御部(30)(正確には前記A/D変換器)に入力される。
【0029】
〈制御部の詳細〉
制御部(30)のCPUは、ハードウェア(A/Dコンバータなど)と共働しつつ、前記制御プログラムを実行する。それによって制御部(30)は、直流電流検出部(31)、3相電流検出部(32)、電圧指令生成部(33)、電圧指令補正部(34)、ゲート信号生成部(35)、電圧指令比較部(36)、ベクトル情報読込部(37)、およびタイミング設定部(38)として機能する。
【0030】
直流電流検出部(31)は、直流母線(N)における電流(直流部電流(idc))を検出する。直流部電流(idc)の検出タイミングは、タイミング設定部(38)によって指示されたタイミング(t1,t2)である。
【0031】
直流電流検出部(31)は、タイミング(t1,t2)において、前記A/Dコンバータの出力(電圧)を直流部電流(idc)の値に変換する。直流電流検出部(31)は、直流部電流(idc)の値を3相電流検出部(32)に出力する。
【0032】
3相電流検出部(32)は、タイミング(t1)、およびタイミング(t2)のそれぞれにおいて直流部電流(idc)を検出する。3相電流検出部(32)は、検出した2つの直流部電流(idc)の値を用いて相電流(iu,iv,iw)を算出する。
【0033】
例えば、タイミング(t1)の直流部電流(idc)がu相の相電流(iu)に対応し、タイミング(t2)の直流部電流(idc)がw相の相電流(iw)に対応していると仮定する。3相電流検出部(32)は、3相の相電流(iu,iv,iw)にiu+iv+iw=0という関係があることを利用して、測定されていないv相の相電流(iv)を算出する。3相電流検出部(32)は、算出した3相の相電流(iu,iv,iw)の値を電圧指令生成部(33)に出力する。
【0034】
電圧指令生成部(33)は、3相の相電流(iu,iv,iw)の値に基づいて、相毎に電圧指令(V*)を生成する。電圧指令(V*)は、対応する相(u,v,w)における電圧値を規定する信号である。
【0035】
具体的に、電圧指令生成部(33)は、電流の目標値と、電流との差分に基づいて、各相の電圧指令(V*)を決定する。これらの電圧指令(V*)は、矩形波状の信号である。電圧指令生成部(33)は、電圧指令(V*)を電圧指令補正部(34)と電圧指令比較部(36)に出力する。
【0036】
インバータ回路(20)の出力周波数とキャリア信号(CS)の周波数とが非同期である場合は、インバータ回路(20)の出力電圧が最大値を採る期間と最小値を採る期間とに差を生ずる場合がある。以下では、この「差」をアンバランスと呼ぶ。
【0037】
電圧指令補正部(34)は、前記アンバランスが低減するように、電圧指令(V*)を補正した補正値(補正電圧指令(V**))を生成する。補正電圧指令(V**)を生成する方法は公知の技術である。ここでは、補正電圧指令(V**)の生成方法の説明を割愛する。
【0038】
電圧指令補正部(34)は、補正電圧指令(V**)をゲート信号生成部(35)、電圧指令比較部(36)、ベクトル情報読込部(37)に出力する。
【0039】
ゲート信号生成部(35)は、補正電圧指令(V**)に基づいて、ゲート信号を生成する。ゲート信号は、スイッチング素子(S1,S2,S3,S4,S6,S6)を駆動するための信号である。より具体的に、ゲート信号は、キャリア信号(CS)に同期して3相分のスイッチング素子(S1,S2,S3)のスイッチング状態(オンオフの組み合わせ)を示す信号である。以下では、スイッチング素子(S1,S2,S3)のオンオフの組み合わせをスイッチングパターンとよぶ。
【0040】
例えば、ゲート信号生成部(35)は、u相のゲート信号を生成する場合には、u相の補正電圧指令(V**)とキャリア信号(CS)とを比較する。ゲート信号生成部(35)は、比較結果に応じて、スイッチング素子(S1,S2,S3)をオン状態にする期間を定める。
【0041】
例えば、ゲート信号生成部(35)は、キャリア信号(CS)のレベルの方が補正電圧指令(V**)よりも大きい期間を、u相に対応したスイッチング素子(S1)をオン状態にする期間に定める。同様に、ゲート信号生成部(35)は、v相、w相のそれぞれについてもスイッチング素子(S2,S3)をオンにする期間を定めることができる。
【0042】
ゲート信号生成部(35)は、基本電圧ベクトルに基づくゲート信号を生成しているとも言える。図2は、基本電圧ベクトルを示す。基本電圧ベクトルの要素は、上アームのスイッチング素子(S1,S2,S3)のスイッチング状態を示している。具体的に、基本電圧ベクトルの要素には、左から順に、u相のスイッチング素子(S1)の状態、v相のスイッチング素子(S2)の状態、w相のスイッチング素子(S3)の状態がそれぞれ対応している。
【0043】
基本電圧ベクトルにおいて値が1の要素は、対応したスイッチング素子(S1,S2,S3)がオン状態であることを示している。例えば、V1(0,0,1)でスイッチングが行われている場合は、スイッチング素子(S3)がオン状態であり、スイッチング素子(S1,S2)がオフ状態である。下アーム側のスイッチング素子(S4,S6,S6)は、直列接続されたスイッチング素子(S1,S2,S3)とは相補的にオンオフが切り替わる。
【0044】
基本電圧ベクトルがV1(0,0,1)の場合には、w相の相電流(iw)が直流部電流(idc)として流れる。換言すると、基本電圧ベクトルがV1(0,0,1)の場合は、直流部電流(idc)をw相の相電流(iw)の検出に利用できる。図3に、基本電圧ベクトルと、検出できる相電流との関係を表で示す。
【0045】
電圧指令比較部(36)は、電圧指令(V*)の補正の有無を検出する。何れかの相において電圧指令(V*)の補正があった場合には、電圧指令比較部(36)は、「補正あり」を意味する信号をタイミング設定部(38)に出力する。それ以外の場合、電圧指令比較部(36)は、「補正無し」を意味する信号をタイミング設定部(38)に出力する。
【0046】
電圧指令比較部(36)は、補正の有無を検出する際には、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)とを相毎に比較する。何れかの相において電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)とが相異していた場合、電圧指令比較部(36)は、「補正あり」を意味する信号をタイミング設定部(38)に出力する。
【0047】
ベクトル情報読込部(37)は、3つのキャリア周期(C)のそれぞれにおける、基本電圧ベクトルの種類の情報、およびそれらの基本電圧ベクトルが出力される期間の情報を取得する。以下では、基本電圧ベクトルの種類の情報、およびそれらのベクトルが出力される期間の情報をベクトル情報とよぶ。
【0048】
前記ベクトル情報を検出する3つのキャリア周期(C)は、現在(今回)のキャリア周期(C)、次回のキャリア周期(C)、および次々回のキャリア周期(C)である。今回のキャリア周期(C)は、後述の第1キャリア周期(C1)に対応する。次回のキャリア周期(C)は、後述の第2キャリア周期(C2)に対応する。次々回のキャリア周期(C)は、後述の第3キャリア周期(C3)に対応する。
【0049】
ベクトル情報読込部(37)は、前記ベクトル情報を補正電圧指令(V**)から求める。ベクトル情報読込部(37)は、求めたベクトル情報をタイミング設定部(38)に出力する。
【0050】
タイミング設定部(38)は、電流検出を行うタイミング(t1,t2)を設定(決定)する。タイミング設定部(38)は、設定結果を直流電流検出部(31)に出力する。
【0051】
まず、タイミング設定部(38)は、電圧指令比較部(36)の出力を確認する。電圧指令比較部(36)の出力が「補正あり」の場合には、タイミング設定部(38)は、3つのキャリア周期(C1,C2,C3)の中から、互いに異なる2種類の基本電圧ベクトルを選択する。選択する2つの基本電圧ベクトルは、電流検出可能な期間を有していることが要件である。
【0052】
タイミング設定部(38)は、選択した2つの基本電圧ベクトルの一方に対応した期間にタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対応した期間にタイミング(t2)を設定する。
【0053】
これらのタイミング(t1,t2)は、基本電圧ベクトルが出力されてからある程度時間が経過したタイミングである。「ある程度時間」は、例えば、直流部電流(idc)の波形の安定に要する時間である。「ある程度時間」は、A/D変換器の動作に必要な時間を下回らないように設定する。
【0054】
〈動作例〉
制御部(30)は、インバータ回路(20)におけるスイッチングを制御する。スイッチングの制御には、3つの連続したキャリア周期(C)において以下のスイッチングが実行されるモード(説明の便宜のため補正モードという)がある。以下では、補正モードにおける3つのキャリア周期(C)を、連続の順に、第1キャリア周期(C1)、第2キャリア周期(C2)、第3キャリア周期(C3)とよぶ。
【0055】
-補正モードにおけるスイッチングパターン-
第2キャリア周期(C2):
第2キャリア周期(C2)では、2種類のスイッチングパターンでスイッチングが行われる。前記2種類のスイッチングパターンには、直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターン(第1スイッチングパターン)が必ず含まれている。
【0056】
第1キャリア周期(C1):
第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンは、ひとつのみである。具体的に第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンは、前記2種類のスイッチングパターンのうちの一方である。第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンは、直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有している。
【0057】
第3キャリア周期(C3):
第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンは、ひとつのみである。具体的に第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンは、前記2種類のスイッチングパターンのうちの他方である。換言すると、第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンは、第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なる。第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンは、直流部(21)を流れる電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有している。
【0058】
図4は、電力変換装置(1)において実施される電流検出方法のフローチャートである。まず、制御部(30)では、電圧指令比較部(36)が、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を読み込む(ステップSt11)。
【0059】
電圧指令比較部(36)は、第2キャリア周期(C2)における電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を比較する(ステップSt12)。電圧指令比較部(36)は、比較結果をタイミング設定部(38)に出力する(ステップSt12)。
【0060】
電圧指令比較部(36)の出力が「補正あり」の場合には、タイミング設定部(38)は、ベクトル情報読込部(37)からベクトル情報を取得する(ステップSt13)。
【0061】
タイミング設定部(38)は、ベクトル情報に基づいて、2種類の基本電圧ベクトルを選択する(ステップSt14)。以下、種々のスイッチング状態について、基本電圧ベクトルの選択例を示す。
【0062】
-基本電圧ベクトルの選択例-
図5Aは、スイッチング状態の一例である。図5Aには、キャリア信号(CS)、電圧指令(V*)、補正電圧指令(V**)、および基本電圧ベクトルを示してある(以下、他の同類の図も同様)。図5Aでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)では、基本電圧ベクトルはV6である。
【0063】
図5Aでは、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)とが一致している。換言すると、図5Aの例では、アンバランスの補正は、行われていない。図5Aでは、第1キャリア周期(C1)、および第2キャリア周期(C2)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0064】
図5Aの例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)におけるV4、および第2キャリア周期(C2)におけるV6を選択する。図5Aの例では、タイミング設定部(38)は、選択したV4に関してタイミング(t1)を設定し、V6に関してタイミング(t2)を設定する。
【0065】
図5Bは、スイッチング状態の一例である。図5Bでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)では、V4,V6,V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図5Bのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0066】
第2キャリア周期(C2)におけるV4の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0067】
図5Bの例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)のV4を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、選択した2種類の基本電圧ベクトルの一方(例えば先行する方)に対してタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対してタイミング(t2)を設定する。
【0068】
図5Cは、スイッチング状態の一例である。図5Cでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)では、V4,V6,V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図5Cのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0069】
図5Cでは、第2キャリア周期(C2)におけるV4の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0070】
図5Cの例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV4を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV6を選択する。
【0071】
タイミング設定部(38)は、選択した基本電圧ベクトルの一方に対してタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対してタイミング(t2)を設定する。
【0072】
図5Dは、スイッチング状態の一例である。図5Dにおける基本電圧ベクトルの状態は、図5Cと同様である。図5Dのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。タイミング設定部(38)は、図5Cの例と同様のタイミング設定を行う。
【0073】
図6Aは、スイッチング状態の一例である。図6Aにおける基本電圧ベクトルの状態は、図5Cと同様である。図6Aのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。タイミング設定部(38)は、図5Cの例と同様のタイミング設定を行う。
【0074】
図6Bは、スイッチング状態の一例である。図6Bでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)では、V4,V6,V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図6Bのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0075】
図6Bでは、第2キャリア周期(C2)のV6の期間のみが、最小値(Tlim)よりも短い。図6Bの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV4を選択する。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)のV6を選択する。
【0076】
タイミング設定部(38)は、選択した基本電圧ベクトルの一方に対してタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対してタイミング(t2)を設定する。
【0077】
図6Cは、スイッチング状態の一例である。図6Cの例では、キャリア信号(CS)は、いわゆるのこぎり波である。図6Cでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)においては、V6、V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図6Cのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0078】
図6Cでは、第2キャリア周期(C2)のV4の期間のみが、最小値(Tlim)よりも短い。図6Cの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)のV4を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV6を選択する。
【0079】
タイミング設定部(38)は、選択した基本電圧ベクトルの一方に対してタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対してタイミング(t2)を設定する。
【0080】
図6Dは、スイッチング状態の一例である。図6Dの例では、キャリア信号(CS)は、いわゆるのこぎり波である。図6Dでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)においては、V6、V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図6Dのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0081】
図6Dでは、第2キャリア周期(C2)のV6の期間のみが、最小値(Tlim)よりも短い。図6Dの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV4を選択する。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)のV6を選択する。
【0082】
タイミング設定部(38)は、選択した基本電圧ベクトルの一方に対してタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、他方の基本電圧ベクトルに対してタイミング(t2)を設定する。
【0083】
図7Aは、スイッチング状態の一例である。図7Aの例では、キャリア信号(CS)は、いわゆる三角波である。図7Aでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。
【0084】
図7Aでは、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)とが一致している。第1および第2キャリア周期(C1,C2)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0085】
図7Aの例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)におけるV6、および第2キャリア周期(C2)におけるV2を選択する。図7Aの例では、タイミング設定部(38)は、選択したV6に関してタイミング(t1)を設定し、V2に関してタイミング(t2)を設定する。
【0086】
図7Bは、スイッチング状態の一例である。図7Bでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)では、V2,V6,V2の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。
【0087】
図7Bでは、第2キャリア周期(C2)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルは、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。図7Bのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0088】
図7Bの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)のV2を選択する。
【0089】
図7Cは、スイッチング状態の一例である。図7Cでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)では、V2,V6,V2の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。図7Cのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0090】
図7Cでは、第2キャリア周期(C2)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0091】
図7Cの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV2を選択する。
【0092】
図7Dは、スイッチング状態の一例である。図7Dにおけるスイッチング状態は、図7Cのスイッチング状態と同様である。図7Dのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0093】
図7Dでは、それぞれの基本電圧ベクトルの長さも図7Cの例と同様である。図7Dの状態においても、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV2を選択する。
【0094】
図8Aは、スイッチング状態の一例である。図8Aにおけるスイッチング状態は、図7Cのスイッチング状態と同様である。図8Aのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0095】
図8Aでは、それぞれの基本電圧ベクトルの長さも図7Cの例と同様である。図8Aの状態においても、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV2を選択する。
【0096】
図8Bは、スイッチング状態の一例である。図8Bでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)では、V2,V6,V2の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。図8Bのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0097】
図8Bでは、第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0098】
図8Bの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)のV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV2を選択する。
【0099】
図8Cは、スイッチング状態の一例である。図8Cの例では、キャリア信号(CS)は、いわゆるのこぎり波である。図8Cの例では、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)では、V2,V6の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。図8Cのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0100】
図8Cでは、第1キャリア周期(C1)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第2キャリア周期(C2)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第3キャリア周期(C3)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0101】
図8Cの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)の中からひとつのV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)におけるV2を選択する。
【0102】
図8Dは、スイッチング状態の一例である。図8Dの例も、キャリア信号(CS)は、いわゆるのこぎり波である。図8Dの例では、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV6である。第2キャリア周期(C2)では、V2,V6の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV2である。図8Dのスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0103】
図8Dでは、第1キャリア周期(C1)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第3キャリア周期(C3)におけるV2の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0104】
図8Dの状態では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)からV6を選択する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)および第3キャリア周期(C3)の中からひとつのV2を選択する。
【0105】
基本電圧ベクトルを選択した後、タイミング設定部(38)は、タイミング(t1,t2)を設定する(ステップSt15)。これらのタイミング(t1,t2)は、既述の通り、基本電圧ベクトルが出力されてからある程度時間が経過したタイミングである。タイミング設定部(38)は、2つのタイミング(t1,t2)の情報を直流電流検出部(31)に出力する。
【0106】
直流電流検出部(31)は、2つのタイミング(t1,t2)のそれぞれにおいて、直流部電流(idc)を検出する。直流電流検出部(31)は、それぞれの直流部電流(idc)の値を3相電流検出部(32)に出力する。3相電流検出部(32)は、2つの直流部電流(idc)に基づいて、3相(u,v,w)の相電流(iu,iv,iw)を求める。
【0107】
〈本実施形態における効果〉
電力変換装置(1)では、電圧のアンバランスが低減するように、電圧指令(V*)が補正される。電力変換装置(1)では、補正モードにおいては、最小値(Tlim)よりも長いパルス幅の基本電圧ベクトルの出力中に電流検出が行われる。電力変換装置(1)では、アンバランスの補正が行われた場合において、相電流(iu,iv,iw)の値を適切に検出できる。
【0108】
《実施形態2》
電力変換装置(1)においては、他の手順でも相電流値の検出が可能である。図9は、実施形態2における電流検出方法のフローチャートである。
【0109】
制御部(30)において電流検出が開始されると、電圧指令比較部(36)は、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を読み込む(ステップSt21)。
【0110】
電圧指令比較部(36)は、第2キャリア周期(C2)における電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を比較する(ステップSt22)。電圧指令比較部(36)は、比較結果をタイミング設定部(38)に出力する(ステップSt22)。
【0111】
電圧指令比較部(36)の出力が「補正あり」の場合には、タイミング設定部(38)は、ベクトル情報読込部(37)からベクトル情報を取得する(ステップSt23)。
【0112】
タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)において異なる2相の電流を検出が可能か否かを判断する(ステップSt24)。タイミング設定部(38)は、前記ベクトル情報に基づいてこの判断を行う。
【0113】
第2キャリア周期(C2)において異なる2相の電流値検出が不可能な場合、タイミング設定部(38)は、ステップSt25の処理を行う。具体的に、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)の基本電圧ベクトルの情報、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの情報を読み込む(ステップSt25)。ここでは、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルを基本電圧ベクトルa、第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルを基本電圧ベクトルcとする。
【0114】
タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)において電流値の検出可能な基本電圧ベクトル(基本電圧ベクトルbとする)の情報を読み込む(ステップSt26)。
【0115】
図10は、基本電圧ベクトル(a,b,c)と選択すべきキャリア周期(C1,C2,C3)との対応関係を示すテーブル(以下、Table1)である。Table1は、選択すべきキャリア周期(C1,C2,C3)において電流検出に使用する基本電圧ベクトルの情報も含んでいる。換言すると、Table1は、電流値を検出できる相(u,v,w)の情報も含んでいる。
【0116】
タイミング設定部(38)は、Table1を保持している。タイミング設定部(38)は、Table1を参照して、電流検出のタイミング(t1,t2)を設定する(ステップSt27)。
【0117】
一方、ステップSt24において、異なる2相の電流値検出が第2キャリア周期(C2)において可能であると判断された場合、タイミング設定部(38)は、ステップSt28の処理を行う。具体的にタイミング設定部(38)は、前記ベクトル情報に基づいて、3つのキャリア周期(C1,C2,C3)の中から、電流を検出する2種類の基本電圧ベクトルを選択する。
【0118】
タイミング設定部(38)は、選択した2種類の基本電圧ベクトルに基づいて、2つのタイミング(t1,t2)の情報を直流電流検出部(31)に出力する(ステップSt29)。
【0119】
直流電流検出部(31)は、2つのタイミング(t1,t2)のそれぞれにおいて、直流部電流(idc)を検出する。直流電流検出部(31)は、検出した直流部電流(idc)の値を3相電流検出部(32)に出力する。
【0120】
以上の通り、本実施形態においても、アンバランスの補正が行われた場合において、相電流(iu,iv,iw)の値を適切に検出できる。
【0121】
《実施形態3》
電力変換装置(1)においては、他の手順でも相電流値の検出が可能である。図11は、実施形態3における電流検出方法のフローチャートである。
【0122】
制御部(30)において電流検出が開始されると、電圧指令比較部(36)は、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を読み込む(ステップSt31)。
【0123】
電圧指令比較部(36)は、第2キャリア周期(C2)における電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を比較する(ステップSt32)。電圧指令比較部(36)は、比較結果をタイミング設定部(38)に出力する(ステップSt32)。
【0124】
電圧指令比較部(36)の出力が「補正あり」の場合には、タイミング設定部(38)は、ベクトル情報読込部(37)からベクトル情報を取得する(ステップSt33)。
【0125】
タイミング設定部(38)は、前記ベクトル情報に基づいて、第1キャリア周期(C1)および第3キャリア周期(C3)を電流検出用のキャリア信号(CS)として選択する(ステップSt34)。
【0126】
タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)の基本電圧ベクトルに対応した期間にタイミング(t1)を設定する(ステップSt35)。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルに対応した期間にタイミング(t2)を設定する(ステップSt35)。
【0127】
直流電流検出部(31)は、2つのタイミング(t1,t2)のそれぞれにおいて、直流部電流(idc)を検出する。直流電流検出部(31)は、検出した直流部電流(idc)の値を3相電流検出部(32)に出力する。
【0128】
以上の通り、本実施形態においても、アンバランスの補正が行われた場合において、相電流(iu,iv,iw)の値を適切に検出できる。
【0129】
《実施形態4》
電力変換装置(1)においては、他の手順でも相電流値の検出が可能である。図12は、実施形態4において実施される電流検出方法のフローチャートである。
【0130】
制御部(30)において電流検出が開始されると、電圧指令比較部(36)は、電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を読み込む(ステップSt41)。
【0131】
電圧指令比較部(36)は、第2キャリア周期(C2)における電圧指令(V*)と補正電圧指令(V**)を比較する(ステップSt42)。電圧指令比較部(36)は、比較結果をタイミング設定部(38)に出力する(ステップSt42)。
【0132】
電圧指令比較部(36)の出力が「補正あり」の場合には、タイミング設定部(38)は、ベクトル情報読込部(37)からベクトル情報を取得する(ステップSt43)。
【0133】
タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)において異なる2相の電流を検出が可能か否かを判断する(ステップSt44)。タイミング設定部(38)は、前記ベクトル情報に基づいてこの判断を行う。
【0134】
第2キャリア周期(C2)において異なる2相の電流値検出が不可能な場合、タイミング設定部(38)は、ステップSt45の処理を行う。具体的にタイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)の基本電圧ベクトルの情報、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの情報を読み込む(ステップSt45)。ここでも、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルは、基本電圧ベクトルaとする。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルは、基本電圧ベクトルcとする。
【0135】
タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)において電流値の検出可能な基本電圧ベクトル(基本電圧ベクトルbとする)の情報を読み込む(ステップSt46)。
【0136】
図13は、基本電圧ベクトル(a,b,c)と、選択すべきキャリア周期(C1,C2,C3)との対応関係を示すテーブル(以下、Table2という)である。Table2は、選択すべきキャリア周期(C1,C2,C3)において電流検出を行うタイミングの情報も含んでいる。Table2は、選択すべきキャリア周期(C1,C2,C3)において電流検出に使用する基本電圧ベクトルの情報も含んでいる。換言すると、Table2は、電流値を検出できる相(u,v,w)の情報も含んでいる。
【0137】
タイミング設定部(38)は、Table2を保持している。タイミング設定部(38)は、Table2を参照して、電流検出のタイミング(t1,t2)を設定する(ステップSt47)。
【0138】
一方、ステップSt44において、第2キャリア周期(C2)において異なる2相の電流値検出が可能であると判断された場合には、タイミング設定部(38)は、ステップSt48の処理を行う。具体的にタイミング設定部(38)は、ベクトル情報読込部(37)から得たベクトル情報に基づいて、3つのキャリア周期(C1,C2,C3)の中から、連続する2種類の基本電圧ベクトルを選択する。
【0139】
タイミング設定部(38)は、選択した2つの基本電圧ベクトルの切替タイミングにおける直前と直後に電流検出のタイミング(t1,t2)を設定する(ステップSt49)。タイミング設定部(38)は、これらのタイミング(t1,t2)の情報を直流電流検出部(31)に出力する。
【0140】
直流電流検出部(31)は、2つのタイミング(t1,t2)のそれぞれにおいて、直流部電流(idc)を検出する。直流電流検出部(31)は、検出した直流部電流(idc)の値を3相電流検出部(32)に出力する。
【0141】
本実施形態においても、アンバランスの補正が行われた場合において、相電流(iu,iv,iw)の値を適切に検出できる。
【0142】
《実施形態5》
実施形態5では、直流部電流(idc)の検出タイミングの一例を示す。図14は、実施形態5における直流部電流の検出タイミングを示す図である。
【0143】
図14では、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトルはV4である。第2キャリア周期(C2)では、V4,V6,V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図14のスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0144】
第2キャリア周期(C2)におけるV4の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0145】
図14の例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)と第2キャリア周期(C2)に跨がってV4を選択する。換言すると、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)と第2キャリア周期(C2)とに跨がってタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)における基本電圧ベクトル(V6)に対してタイミング(t2)を設定する。
【0146】
このようにして、実施形態5における検出モードでは、3相電流検出部(32)は、第2キャリア周期(C2)において、電流の検出に必要な時間以上の継続時間を有するスイッチングパターン(第1スイッチングパターン)の実施タイミングで、直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。更に、3相電流検出部(32)は、第1キャリア周期(C1)と第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。3相電流検出部(32)は、これらの直流部電流(idc)に基づいて出力電流を検出する。
【0147】
《実施形態5の変形例》
電力変換装置(1)では、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)に跨がって出力される基本電圧ベクトル(スイッチングパターン)であって、第2キャリア周期(C2)に含まれる基本電圧ベクトルの期間が、電流検出可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い場合もあり得る。
【0148】
この場合において、タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)に含まれる基本電圧ベクトルの期間が、電流検出可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い第1スイッチングパターンを対象としてタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンを対象としてタイミング(t2)を設定する。
【0149】
実施形態5の変形例における検出モードでは、3相電流検出部(32)は、前記第1スイッチングパターンの実施タイミングで直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。更に、3相電流検出部(32)は、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、前記第1スイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで、直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。3相電流検出部(32)は、これらの直流部電流(idc)に基づいて出力電流を検出する。
【0150】
《実施形態6》
実施形態6でも、直流部電流(idc)を検出タイミングの一例を示す。図15は、実施形態6における直流部電流の検出タイミングを示す図である。
【0151】
図15では、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトル(スイッチングパターン)はV4である。第2キャリア周期(C2)では、V4,V6,V4の順に基本電圧ベクトルが切り替わっている。第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトルはV6である。図15のスイッチング状態は、前記補正モードの一例である。
【0152】
第2キャリア周期(C2)におけるV4の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも短い。第2キャリア周期(C2)におけるV6の期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。第1キャリア周期(C1)、および第3キャリア周期(C3)の基本電圧ベクトルの期間は、電流検出が可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い。
【0153】
図14の例では、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)および第2キャリア周期(C2)に跨がってV4を選択する。換言すると、タイミング設定部(38)は、第1キャリア周期(C1)と第2キャリア周期(C2)とに跨がってタイミング(t1)を設定する。タイミング設定部(38)は、第3キャリア周期(C3)における基本電圧ベクトル(V6)に対してタイミング(t2)を設定する。
【0154】
このようにして、実施形態6における検出モードでは、3相電流検出部(32)は、第3キャリア周期(C3)において、直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。更に、3相電流検出部(32)は、第1キャリア周期(C1)と第2キャリア周期(C2)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、第3キャリア周期(C3)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。3相電流検出部(32)は、これらの直流部電流(idc)に基づいて出力電流を検出する。
【0155】
《実施形態6の変形例》
電力変換装置(1)では、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)に跨がって出力される基本電圧ベクトルであって、第1キャリア周期(C1)における基本電圧ベクトル(スイッチングパターン)とは異なる基本電圧ベクトルが出力される場合もあり得る。
【0156】
この場合において、第1キャリア周期(C1)に含まれる基本電圧ベクトルの期間が、電流検出可能な期間の最小値(Tlim)よりも長い場合には、タイミング設定部(38)は、その基本電圧ベクトルを対象としてタイミング(t1)を設定する。
【0157】
更に、タイミング設定部(38)は、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)とに跨がって出力される基本電圧ベクトルを対象として、タイミング(t2)を設定する。
【0158】
実施形態6の変形例における検出モードでは、3相電流検出部(32)は、第1キャリア周期(C1)において直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。更に、3相電流検出部(32)は、第2キャリア周期(C2)と第3キャリア周期(C3)とに跨がって実施されるスイッチングパターンであって、第1キャリア周期(C1)におけるスイッチングパターンとは異なるスイッチングパターンの実施タイミングで、直流部(21)を流れる直流部電流(idc)を検出する。3相電流検出部(32)は、これらの直流部電流(idc)に基づいて出力電流を検出する。
【0159】
《その他の実施形態》
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上説明したように、本開示は、電流検出方法、および電力変換装置について有用である。
【符号の説明】
【0161】
1 電力変換装置
20 インバータ回路
21 直流部
30 制御部
C1 第1キャリア周期
C2 第2キャリア周期
C3 第3キャリア周期
idc 直流部電流(電流)
t1 タイミング
t2 タイミング
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15