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特開2022-177820心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177820
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/363 20210101AFI20221124BHJP
   A61B 5/287 20210101ALI20221124BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20221124BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20221124BHJP
【FI】
A61B5/363
A61B5/287 200
A61B18/12
A61B5/367 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022080714
(22)【出願日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】63/189,957
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/706,223
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピー・エム・ホウベン
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】ミラド・エル・ハッダド
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ガイアー・エバンス
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー・ピー・ブバー
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127EE08
4C127FF02
4C127GG05
4C127GG07
4C127GG13
4C127HH13
4C127LL08
4C160KK04
4C160KK17
4C160KK24
4C160KK39
4C160KK62
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置及び方法を提供すること。
【解決手段】コンピューティングデバイスは、場所上のカテーテル遠位端センサに対応するそれぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理する。調査領域内の場所に対応する複数の連続する心拍からの信号を含む単極ECGを分析して、それぞれの双極活性ウィンドウに対応する単極ECGの複合体を定義することによって、単極ECGの分画単極ECG信号複合体(FUESC)を識別する。治療のために識別された不整脈部位は、所定の数のFUESCを有する所定の数の単極ECGを含む。アブレーションによる治療のための心房不整脈部位は、心房組織調査領域の少なくとも10回の連続心拍からの信号を含む単極ECGのFUESCに関して識別することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置であって、
コンピューティングデバイスに結合された複数の選択的に配置可能な遠位端センサを有する少なくとも1つのカテーテルを含むカテーテル構成要素を備え、
前記センサが、前記対象の心臓内の(ECG)信号を感知するように構成されており、
前記コンピューティングデバイスが、プロセッサ及び関連付けられたメモリを有し、
前記コンピューティングデバイスが、それぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態の心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理するように構成されており、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される前記心臓組織調査領域に関して、前記プロセッサが、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義することと、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定することと、
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算することと、により、識別するように構成されており、
前記プロセッサが、所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定するように構成されている、医療装置。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスと結合されたディスプレイを更に備え、
前記プロセッサが、前記ディスプレイに、
前記遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、前記心臓組織調査領域に対する前記遠位端センサの相対的な場所と、
アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的指標と、
選択された基準に基づく前記心臓組織の色付けと、のうちの1つ又は2つ以上を含む、前記対象の心臓の前記心臓組織調査領域の視覚化を出力するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定することと、前記第1の活性ウィンドウ及び前記第2の活性ウィンドウを、それらが20パーセント以上重複する条件で、融合することと、によって、前記双極活性ウィンドウを判定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記単極ECGが、少なくとも10個の連続する心拍からの信号を含み、
前記心臓組織調査領域が、前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織であり、
前記プロセッサが判定するように構成されている、前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータが、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択され、
前記プロセッサが、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む、心房組織部位として、アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位を判定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、前記複数の複合体レベルレーティングを計算するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、前記QoAを計算するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして、前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプを判定するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、以下の式に基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関するQoAを計算するように構成されており、
【数1】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙された前記N個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じた前記i番目のパラメータの重み値である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する前記最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算するように構成されており、EVIが、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、前記第1の単極ECGのスロープの数、及び前記電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいて、パーセントとして判定され、Mが、以下の式に基づいてパーセント値として計算される、請求項7に記載の装置。
【数2】
【請求項10】
対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための方法であって、
カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理することと、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される前記心臓組織調査領域に関して、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義すること、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定すること、並びに
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算すること、により、識別することと、
所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、前記心臓組織調査領域に対する前記遠位端センサの相対的な場所と、
アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的指標と、
選択された基準に基づく前記心臓組織の色付けと、のうちの1つ又は2つ以上を含む、前記対象の心臓の前記心臓組織調査領域の視覚化を表示することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記双極活性ウィンドウを判定することが、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定することと、前記第1の活性ウィンドウ及び前記第2の活性ウィンドウを、それらが20パーセント以上重複する条件で、融合することと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関して行われ、
判定される前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータが、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、並びに最大スロープ(CV)からなる群から選択され、
アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位が、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の複合体レベルレーティングが、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、計算される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記QoAが、ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、計算される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプが、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして判定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の単極ECGの前記複合体に関するQoAが、以下の式に基づいて、計算されており、
【数3】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙された前記N個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じた前記i番目のパラメータの重み値である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する前記最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算するように構成されており、EVIが、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、前記第1の単極ECGのスロープの数、及び前記電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいて、パーセントとして判定され、Mが、以下の式に基づいてパーセント値として計算される、請求項17に記載の方法。
【数4】
【請求項19】
有形の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって読み取られるときに、前記プロセッサに、
カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極心電図(ECG)の形態のECG信号を処理することと、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む前記心臓組織調査領域の単極ECGに関して、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義すること、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定すること、並びに
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算すること、により、識別することと、
所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定することと、を行わせるプログラム命令が格納されている、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記プログラム命令が、プロセッサによって読み取られるときに、前記プロセッサに、
少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関する前記記録された単極ECGの中からFUESCを識別することと、
複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択される前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、前記複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、前記QoAを計算することと、
前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプを、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして判定することと、
アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位を、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として判定することと、を行わせる、請求項19に記載の有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年5月18日に出願された米国仮特許出願第63/189,957号の利益を主張するものであり、これは、参照により完全に記載されるかのように組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心不整脈の診断及び治療に関する。より具体的には、本発明は、心室内の局所的電気的活動を示す情報を得ること、並びに不整脈原性領域の識別及び治療に関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動などの心不整脈は、心拍数が速すぎるか、遅すぎるか、又は不規則な調律を有する状態の群である。不整脈は、毎年世界中で約300,000人の死亡原因である。深刻な不整脈を有する一部の患者は、薬物療法で上手くいかなかったため、カテーテルアブレーションが推奨され得、症状を低減し、患者の生活の質を改善することが示されている。
【0004】
患者の心臓の電気マップは、心臓の電気活動の伝播を改変させ正常な心調律を回復させるために、組織のアブレーションなど、治療上の行動指針の判定を下すための基準となり得る。局所活性化時間などの心臓組織の電気的特性は、心臓内の正確な場所の関数として測定され得る。データは、心臓内に前進させられる遠位先端に電気及び場所センサを有する、1つ又は2つ以上のカテーテルを使用して取得され得る。心臓内のあるポイントにおける電気活動は通常、遠位先端にあるいはその近くに電気センサを備えるカテーテルを、心臓内のそのポイントへと前進させ、組織をセンサと接触させ、そのポイントにおけるデータを収集することによって測定される。心腔内の複数のポイントにおける電気活動を同時に測定するために、多電極カテーテルが開発された。データは、100個又はそれ以上の部位において蓄積されて、詳細な心臓マッピングを生成することができる。
【0005】
過去10年間にわたって、ヒト心房細動におけるいくつかのマッピング研究では、重要な観察を行った。持続的な心房細動中の心房電位図は、等電間隔又は低振幅ベースラインによって分離された拍動当たりの個別の偏向に基づいて、単一電位、二重電位、及び複合体分画心房電位図(complex fractionated atrial electrogram、CFAE)の3つの異なるパターンを有する。CFAE領域は、心房細動基質部位を表し、アブレーションなどの治療の標的部位であり得る。持続的CFAEを有する領域をアブレーションすることにより、心房細動を排除するか、又は更に非誘導性にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
標的アブレーション部位のより速くより信頼性の高い識別のための改善された分画検出システムを有することが有利であろう。現在、電圧及び基質マップは、現在、心房粗動に対応するチャネル又は峡部部位を識別するには不十分である。カボトリカスピッド峡部などの峡部部位は、心房粗動の治療のためのアブレーションのための標的であり得る。分画された信号の自動識別を提供し得るシステムを有することが有利であろう。システムは、分画された信号のどれが心房粗動に対応するチャネル又は峡部部位に関連するかを判定することも有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置及び方法が提供される。コンピューティングデバイスは、カテーテルの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(electrocardiogram、ECG)信号を受信、記録、及び処理する。心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続する心拍からの信号を含む記録された単極ECGを分析して、それぞれの双極活性ウィンドウに対応する単極ECGの複合体を定義することによって、単極ECGの中から分画単極ECG信号複合体(Fractionated Unipolar ECG Signal Complex、FUESC)を識別する。アブレーションによる治療のために識別された心不整脈部位は、所定の数のFUESCを有する所定の数の単極ECGを含む。
【0008】
アブレーションによる治療のための心房不整脈部位は、少なくとも10回の連続心拍からの信号を含む心房組織調査領域からの単極ECGのFUESCに関して識別することができる。
【0009】
一例では、対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置は、プロセッサ及び関連付けられたメモリを有するコンピューティングデバイスに結合された対象の心臓内の(ECG)信号を感知するように構成されている複数の選択的に配置可能な遠位端センサを有する少なくとも1つのカテーテルを含むカテーテル構成要素を有する。コンピューティングデバイスは、それぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理するように構成されている。
【0010】
プロセッサは、心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される心臓組織調査領域に関して、受信した単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を識別するように構成されている。FUESCは、第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、各々がそれぞれの双極活性ウィンドウに対応する、第1の単極ECGの一連の複合体を定義することと、複数の連続する双極活性ウィンドウに関する第1の単極ECGの複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定することと、複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算することと、複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、第1の単極ECGの複合体に関する注釈の質測定(quality of annotation、QoA)を計算することと、複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、第1の単極ECGの複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定することと、その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、複合体のQoA及びEVIに基づいて、第1の単極ECGの複合体に関する最終スコアを計算することと、により識別される。
【0011】
この例では、プロセッサは、所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定するように構成されている。
【0012】
例示的な装置はまた、対象の心臓の心臓組織検査領域の視覚化を表示に出力するように構成されているプロセッサとともに、コンピューティングデバイスと結合されたディスプレイを含み得る。そのような出力ディスプレイは、
●遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、心臓組織調査領域に対する遠位端センサの相対的な場所と、
●アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的指標と、
●選択された基準に基づいて、心臓組織の色分けと、を含み得る。
【0013】
プロセッサは、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定し、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを20パーセント以上重複する条件で融合することによって、双極活性ウィンドウを判定するように構成され得る。
【0014】
例示的な装置は、単極ECGが少なくとも10個の連続する心拍からの信号を含み、心臓組織調査領域が対象の心臓の心房室の少なくとも一部分の心房組織である場合に、アブレーションによる治療のための心臓不整脈部位を判定することができる。そのような場合、プロセッサが判定するように構成されている双極活性ウィンドウ内の複数の複合体レベルパラメータは、複合体認識性(complex discernibility、CDE)、複合体形態安定性(complex morphological stability、CMS)、複合体タイミング安定性(complex timing stability、CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択され得、プロセッサは、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む、心房組織部位として、アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位を判定するように構成されている。
【0015】
プロセッサは、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、複数の複合体レベルレーティングを計算し、かつ/又はASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(unipolar/bipolar slope overlap、UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、QoAを計算するように構成され得る。プロセッサはまた、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして、第1の単極電位図の複合体の電位タイプを判定し、以下の式に基づいて、第1の単極ECGの複合体に関するQoAを計算するように構成され得る:
【0016】
【数1】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙されたN個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じたi番目のパラメータの重み値である。
【0017】
プロセッサはまた、第1の単極ECGの複合体に関する最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算するように構成され得、EVIは、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、第1の単極ECGのスロープの数及び電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいてパーセントとして判定され、Mは、以下の式に基づいてパーセント値として計算される:
【0018】
【数2】
【0019】
対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための例示的な方法は、カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を受信し、記録し、かつ処理することを含む。受信した単極ECGの中からの分画単極ECG信号複合体(FUESC)は、心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される心臓組織調査領域に関して、識別される。
【0020】
FUESCは、
●第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、各々がそれぞれの双極活性ウィンドウに対応する、第1の単極ECGの一連の複合体を定義することと、
●複数の連続する双極活性ウィンドウに関する第1の単極ECGの複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
●複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
●複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、第1の単極ECGの複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算することと、
●複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、第1の単極ECGの複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定することと、
●その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体のQoA及びEVIに基づいて、第1の単極ECGの複合体に関する最終スコアを計算することと、により識別され得る。
【0021】
所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位は、アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定される。
【0022】
この方法は、遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、心臓組織調査領域に対する遠位端センサの相対的な場所を含む視覚化等の、対象の心臓の心臓組織検査領域の視覚化、アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的視標、及び/又は選択された基準に基づく心臓組織の色付けを表示することを含み得る。
【0023】
この方法は、双極活性ウィンドウを判定することが、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定することと、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを20パーセント以上重複する条件で融合することと、を含み得る。
【0024】
この方法は、少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び対象の心臓の心房室の少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関して行われ得る。そのような場合、判定される双極活性ウィンドウ内の複数の複合体レベルパラメータは、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択され得る。次いで、アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位が、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として判定され得る。
【0025】
この方法は、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、複数の複合体レベルレーティングを計算し、ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、QoAを計算する場合に、実行され得る。
【0026】
この方法は更に、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして、第1の単極電位図の複合体の電位タイプを判定し、次いで、以下の式に基づいて、第1の単極ECGの複合体に関するQoAを計算することができる:
【0027】
【数3】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙されたN個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じたi番目のパラメータの重み値である。
【0028】
この方法はまた、第1の単極ECGの複合体に関する最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算することができ、EVIは、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、第1の単極ECGのスロープの数及び電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいてパーセントとして判定され、Mは、以下の式に基づいてパーセント値として計算される:
【0029】
【数4】
【0030】
FUESCの識別を実行するために、有形の非一時的コンピュータ可読媒体が提供され得る。例示的な有形の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって読み取られると、プロセッサに、
●カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を処理することと、
●心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む心臓組織調査領域の単極ECGに関する、記録された単極ECGの中からの分画単極ECG信号複合体(FUESC)を識別することであって、FUESCの識別が、
○第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、各々がそれぞれの双極活性ウィンドウに対応する、第1の単極ECGの一連の複合体を定義すること、
○複数の連続する双極活性ウィンドウに関する第1の単極ECGの複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定すること、
○複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算すること、
○複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、第1の単極ECGの複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算すること、
○複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、第1の単極ECGの複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定すること、及び
○その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体のQoA及びEVIに基づいて、第1の単極ECGの複合体に関する最終スコアを計算すること、による、識別することと、
●所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療に対して心不整脈部位を判定することと、を実行させることができるプログラム命令が格納される、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【0031】
有形非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサに、特に、
●少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び対象の心臓の心房室の少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関して、記録された単極ECGの中からFUESCを識別することと、
●複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択される双極活性ウィンドウ内の複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
●スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
●ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、QoAを計算することと、
●第1の単極電位図の複合体の電位タイプを、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして判定することと、
●心房心不整脈部位を、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として、アブレーションによる治療に対して判定することと、を実行させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の前述及び他の特徴と利点は、添付の図面に例解されるように、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。
図1】例示的な実施形態による、複数の分岐を有する心臓カテーテルを使用して、生体の心臓に対する処置を実行するための装置の絵図による例解図である。
図2】例示的な実施形態による、図1に示されるカテーテルの分岐のうちの1つの詳細図である。
図3】三次元心臓マッピングの例である。
図4】例示的なバスケット心室マッピングカテーテルの図である。
図5】例示的なスプラインカテーテルの図である。
図6A】例示的な実施形態による、双極活性ウィンドウを判定するためのプロセスのフロー図である。
図6B】例示的な実施形態による、プレフィルタプロセスのフロー図である。
図6C図6Bに記載のプレフィルタプロセス中の双極電位図の例を例解する。
図6D】例示的な実施形態による、デノッチフィルタを例解するフローチャートである。
図7】例示的な実施形態による、双極電位図の活性ウィンドウを判定するためのプロセスを例解する図である。
図8】例示的な実施形態による、双極活性ウィンドウを判定するためのプロセスを例解する図である。
図9】例示的な実施形態による、双極活ウィンドウを判定するために2つの双極活性ウィンドウを重複させるためのプロセスを例解するフロー図である。
図10図9に関して考察されるように、2つの双極活性ウィンドウを重複させるためのプロセスの視覚的表現の例である。
図11】例示的な実施形態による、スロープ心電図(slope cardiogram、SCG)を例解する図である。
図12A】例示的な実施形態による、負のスロープ持続時間対負のスロープの振幅のグラフである。
図12B】例示的な実施形態による、負のスロープ値対負のスロープの振幅のグラフである。
図13】下降スロープを一次、二次、又は遠距離場のいずれかに指定した、単極電位図の例である。
図14】判定された双極活性ウィンドウを有する単極電位図の例である。
図15】信号対雑音比(signal-to-noise-ratio、SNR)計算を例解する単極電位図の例である。
図16】判定された複合体レベルパラメータで注釈された単極電位図の例である。
図17A】同じ単極電位図におけるすべての双極活性ウィンドウ信号の複合体間のダウンストローク相互相関について分析されたスロープ心電図の例である。
図17B図17Aの例示的な単極電位図におけるあらゆる可能な複合体対間の相関関係を例解する相互相関マトリックスである。
図17C】例示的な実施形態による、複合体形態安定性(CMS)スコアを例解するグラフである。
図18】双極電位図の時間間隔が計算され、互いに比較される単極電位図の例である。
図19】複合体認識性推定値(CDE)計算を例解する単極電位図の例である。
図20】例示的な実施形態による、画分検出分析のフローチャート図である。
図21】例示的な実施形態による、注釈の質(QoA)測定のためのパラメータ及び重みを例解する図である。
図22】それぞれのスロープの数及び電位タイプに関して検出された活性化を有する双極活性ウィンドウの尤度を示す証拠注釈測定(EVI)の分類表である。
図23】例示的な実施形態による、単一電位、二重電位、分画された電位(3つの偏向)、及び高度に分画された電位(>3つの偏向)についての組み合わせた証拠注釈測定及び品質係数パーセンテージを例解するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同一の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、選択された実施形態を描写しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。詳細な説明は、限定ではなく例として本発明の原理を例解する。この説明は、当業者が本発明を製造及び使用することを明らかに可能にし、また本発明を実施するための最良の態様であると現在考えられているものを含めて、本発明のいくつかの実施形態、適応例、変形例、代替物及び使用を説明する。
【0034】
図1は、実施形態による、生体の心臓12に対して処置を実行するための例示的な医療装置10の概略的な絵図による例解図である。装置10は、カテーテル14及び制御コンソール24などの1つ又は2つ以上のカテーテルを含む。
【0035】
カテーテル14は、対象の心臓12の腔の解剖学的マッピングなど、任意の好適な治療及び/又は診断目的に使用され得る。カテーテル14は、それぞれがマッピング及び位置感知機能を有する複数の分岐37を有する細長い本体を有する多電極カテーテルであってもよい。カテーテル14は、ハンドル20を更に含み得、これは、典型的には医師である操作者16が、必要に応じて、カテーテル14の遠位端18及び分岐37の場所及び配向を操縦し、位置決め及び配向することを可能にする制御部を有する。米国特許第6,961,602号に記載された5つの分岐を有するカテーテルは、カテーテル14として使用するのに好適である。このカテーテルは、Biosense WebsterからPentaray(商標)カテーテル又はプローブとして入手可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、例示的なカテーテル14は、近位端、遠位端18、及び長手方向に中を通って延在する少なくとも1つの管腔を有する細長い本体と、カテーテル本体の遠位端に装着され、少なくとも2つの分岐37を含むマッピングアセンブリと、を含む。各分岐37は、カテーテル本体の遠位端に取り付けられた近位端と、自由遠位端とを有する。各分岐37は、形状記憶を有する支持アームと、支持アームを取り囲む非導電性カバーと、分岐37の遠位端に装着された少なくとも1つの位置センサ41(図2)と、分岐37の遠位端に装着され、支持アームから電気的に絶縁された1つ又は2つ以上の電極と、非導電性カバー内に延在する1つ又は2つ以上の電極リード線とを含み、各電極線は、対応する電極に取り付けられている。いくつかの実施形態では、追加の位置センサ(図示せず)を、分岐37の近位にあるカテーテル14のシャフト上に配置され得る。
【0037】
カテーテル14は、操作者16によって、患者の脈管系を通して心臓12の腔又は脈管構造に経皮的に挿入され得る。操作者16は、カテーテルの遠位先端18を所望のマッピング部位で心臓壁と接触させ得る。次いで、カテーテル14の遠位端18は、プロセッサ及び関連付けられたデータ記憶メモリを含むコンピュータ又は他のコンピューティングデバイス22によって格納及び処理される測定値を収集し得る。収集された測定値は、「ポイント」と称され得る。各ポイントは、腔の組織上の三次元座標と、この座標で測定されるいくつかの生理学的特性のそれぞれの測定値と、を含む。感知データはまた、心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続する心拍からの信号を含む、単極又は双極性の心電図(ECG)の形態を採り得る。コンピューティングデバイスのデータ記憶は、リモート記録デバイス(図示せず)を含み、かつ又はそれと関連付けられ得る。
【0038】
追加的に又は代替的に、アブレーションエネルギー及び電気信号は、遠位先端18に、又はその近くに配置された1つ又は2つ以上の任意選択的なアブレーション電極を通じて、コンソール24へのケーブルを介して、心臓12との間で伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24からケーブル38及び1つ又は2つ以上のアブレーション電極を介して心臓12に伝達され得る。
【0039】
結線35は、コンソール24を体表面電極30及び位置決めサブシステムの他の構成要素と接続し得る。熱電対又はサーミスタなどの温度センサ43(図2)は、遠位先端18上に、又はその近くに装着され得る。
【0040】
コンソール24は、1つ又は2つ以上のアブレーション発電機25を含み得。カテーテル14は、高周波エネルギー、超音波エネルギー及びレーザ生成光エネルギーを含むがこれらに限定されない任意の既知のアブレーション技術を用いて、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合され得る。このような方法は、同一出願人による米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号及び同第7,156,816号に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
コンピューティングデバイス22は、カテーテル14の場所及び配向の座標を測定する装置10の位置決めシステム26の要素であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、位置決めシステム26は、近傍の所定の作業体積内に磁場を生成し、磁場生成コイル28を使用してカテーテルでこれらの磁場を感知することによってカテーテル14の位置及び配向を判定する磁気位置追跡装置を含むことができ、また、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号に教示されているように、インピーダンス測定値を含み得る。位置決めシステム26は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,536,218号に記載されたインピーダンス測定値を使用する位置測定によって、強化され得る。
【0043】
上記のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16はカテーテル14の機能を観察及び調整することを可能にする。コンソール24は、コンピューティングデバイス22を含む。プロセッサ22は、ディスプレイ29に結合され得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ29は、グラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)29を備え得る。信号処理回路は、上記のセンサ及びカテーテル14上に配置された複数の位置感知電極(図示せず)によって生成された信号を含めて、カテーテル14からの信号を受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化し得る。デジタル化された信号を、コンソール24及び位置決めシステム26によって受信及び使用して、カテーテル14の位置及び配向を計算し、電極からの電気信号を分析し得る。
【0044】
例示的なコンピューティングデバイス22は、好ましくは、対象の心臓12の選択された所望の視覚化を、そこに展開されている1つ又は2つ以上のカテーテルの遠位端の相対的な場所と、医師が心臓組織の異なる部分内の特徴差を見ることができる心臓組織の種々の特徴の色表現とを伴ってディスプレイに出力するように構成されている。そのような視覚化は、図3に例解されるような(色を省略)、心電図(ECG)信号などのグラフィック表現を伴い得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス22は、コンピュータであってもよく、また、本明細書に記載された機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス22は、中央処理装置(central processing unit、CPU)、グラフィック処理装置(graphics processing unit、GPU)、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)、ハードドライブ又はCD ROMドライブなどの不揮発性二次記憶装置、ネットワークインターフェース、及び/又は周辺機器を含むプログラムされたデジタルコンピューティングデバイスである。当技術分野で知られているように、ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPU及び/又はGPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信、又は記憶のために結果が生成される。ソフトウェアコードは、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされ得るか、又は磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は記憶され得る。
【0046】
装置10などの多数の要素を具現化する1つの市販製品は、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能であり、これは、Biosense Webster,Inc.、3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,California 91765から入手可能である。既存のそのようなシステムは、医師に、1つ又は2つ以上のカテーテルの遠位端の相対的な場所がその中に展開されている、患者の心臓の選択的三次元視覚化、並びに心臓組織の様々な特徴の色表現を提供する。CARTO(登録商標)3システムを用いて実行されるそのようなマッピングの例は、Three-Dimensional Mapping of Cardiac Arrhythmias-What Do the Colors Really Mean?,Munoz et al.,Circulation:Arrhythmia and Electrophysiology,2010,Volume 3,Issue 6:e6-e11当初は2010年12月1日に発表、https://doi.org/10.1161/CIRCEP.110.960161において例解及び考察されており、この出版物は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
図2は、実施形態による、電極構成を例解する、図1に示す例示的なカテーテル14の遠位端18の分岐37のうちの1つの詳細図である。この例示的な電極構成は、先端電極39、2つのリング電極41及び温度センサ43を備え得る。先端電極39は、感知及びアブレーションの両方のために構成され得る。温度センサ43は、カテーテル14がアブレーションモードにあるときに使用され得る。2つのリング電極41は、心臓における電気生理学的信号を検出するための感知電極として構成され得る。しかしながら、当業者には理解されるように、感知電極及びアブレーション電極は、多くの組み合わせにおいて、数、構成、及び分布が様々であってもよい。1つ又は2つ以上のケーブル45は、電極、センサ、及びコンソール24の間で信号を伝達することができる。複数の電極がいくつかの分岐37に分布しているため、多数の位置から同時に信号を収集することが可能である。
【0048】
現在のシステムでは、上述のカテーテル14などのカテーテルは、心室内又は隣接する血管内で移動され、カテーテル14の場所が連続的に記録される。コンピューティングデバイス22は、心室内の複数の場所のそれぞれの座標を受信することができる。例えば、図1に関して上述したように、CPUは、位置確認ルーチンから座標を受信することができ、位置確認ルーチンは、遠位端が腔内で移動するときに、カテーテル14の遠位端の位置を確認する。各座標は、「ポイント」と称され得、座標の集合は、「ポイントクラウド」と称され得る。ポイントクラウドには、ポイントが存在しないギャップとともに、数百、数千、又は数万のポイントが含まれる場合がある。
【0049】
本発明の態様を具体化するソフトウェアプログラミングコードは、典型的には、コンピュータ可読媒体などの永久記憶装置に維持される。クライアント-サーバ環境では、かかるソフトウェアプログラミングコードは、クライアント又はサーバに記憶させることができる。ソフトウェアプログラミングコードは、データ処理システムで使用するための様々な既知の媒体のうちのいずれかで具体化され得る。これには、ディスクドライブ、磁気テープ、コンパクトディスク(compact disc、CD)、デジタルビデオディスク(compact disc、DVD)などの磁気及び光学記憶デバイス、及び信号が変調される搬送波の有無にかかわらず、伝送媒体に具現化されたコンピュータ命令信号が含まれるが、これらに限定されない。例えば、伝送媒体は、インターネットなどの通信ネットワークを含み得る。加えて、本発明は、コンピュータソフトウェアで具体化され得るが、本発明を実施するために必要な機能は、代替的に、特定用途向け集積回路又は他のハードウェアなどのハードウェアコンポーネント、又はハードウェアコンポーネントとソフトウェアのいくつかの組み合わせを使用して、一部又は全体的に具体化され得る。
【0050】
図3は、実施形態による、三次元心臓マッピング300aの第1の図、及び三次元心臓マッピング300bの第2の図である(色省略)。三次元心臓マッピング300a、300bは、低電圧領域301を含み、これは陰影が付けられている。心臓マッピングの色分けにおいて、表示された心臓画像に対する異なる電圧の程度を示すために異なる色を使用することができ、操作者の便宜のために勾配スケール303を表示することができる。心房室マッピングの一例では、0.1mV以下の電圧測定値を有する領域は、低電圧領域を示す赤色で表示され、0.5mV以上の電圧測定値を有する領域は、その電圧に対応する勾配スケール上の色で表示された低電圧閾値と高電圧閾値との間に電圧を有する領域を有する高電圧領域を示すピンク色で表示される。
【0051】
典型的には、心臓マッピングの低電圧領域は、病変組織又は罹患組織に関連付けられている。現在、医師などの操作者は、そのような低電圧領域を正確に評価する能力を欠いている。多くの場合、操作者は、低電圧領域で起こるものを知らない。領域内で発生しているもの及びアブレーションが領域において実行されるべきかどうかを判定するために、低電圧領域内の分画信号を識別することが有利であろう。
【0052】
例えば、低電圧部位に関連する、分画された信号の自動識別による標的アブレーション部位のより迅速かつより信頼性の高い識別のためのシステム、デバイス、及び方法が開示される。以下で詳細に説明するように、選択された心臓組織領域に関連付けられた単極電極対の単極電位図を分析して、スコアリングし、それらが分画された信号を表すかどうかを判定する。選択された調査領域は、例えば、心房室全体、又は心房室内の低電圧領域を包含する領域であり得る。
【0053】
ここで、一実施形態による、バスケット心室マッピングカテーテル40の図である図4を参照する。バスケット心室マッピングカテーテル40は、上記のカテーテル14として使用され得る。カテーテル40は、Fuimaonoらに対する米国特許第6,748,255号に記載されたバスケットカテーテルに設計上類似しており、これは本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる。カテーテル40は複数のリブを有し、各リブは複数の電極を有する。一実施形態では、カテーテル40は64個の単極電極を有し、リブ当たり最大7個の双極対で構成され得る。例えば、リブ42は、双極構成B1~B7を有する単極電極M1~M8を有する。この例では、電極間距離は4mmであり得る。
【0054】
ここで、上記のカテーテル14として使用され得るスプラインカテーテル46の例の図である図5を参照する。カテーテル46は、複数の遠位端分岐を有し、各分岐は、いくつかの電極を有する。図4の例示的なカテーテル14は、20個の単極電極を有し、これは、分岐当たり2つ又は3つの双極対のいずれかとして構成され得る。例えば、分岐47は、第1の対の単極電極48、50、及び第2の対の単極電極52、54(M1-M4)を有する。単極電極対間のそれぞれの違いは、ブロック56、58で計算される。ブロック56、58の出力(B1、B2)は、ハイブリッド双極電極構成、本明細書では「二重双極構成」と称される配置を構成するために互いに関連付けることができる。この例では、電極間距離は、4-4-4又は2-6-6mmであり得る。
【0055】
図6Aは、実施形態による、双極活性ウィンドウ600を判定するためのプロセスを例解するフロー図である。602では、プレフィルタが2つの単極電位図601a及び601bに適用される。単極電位図601a及び601bは、典型的には、隣接する電極の対から生成される。心房室調査を実施する際に、プレフィルタは、心室遠距離場(ventricular far field、VFF)効果を除去するように構成され得る。遠距離場の低減は、Hybrid Bipolar/Unipolar Detection of Activation Wavefrontと題する、同一出願人による特許出願第14/166,982号の教示を使用していて達成することが可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
603において、プレフィルタブロック602a及び602bの出力は、双極電位図604を判定するために減算される。605において、1つ又は2つ以上のプレフィルタが、双極電位図604に適用される。606において、デノッチフィルタが、第1の双極特徴信号635a及び第2の双極特徴信号635bに適用され得る。607において、関心ウィンドウ(以下、「双極活性ウィンドウ」と称される)を含む時間間隔は、第1の双極特徴電位図635a及び第2の双極特徴電位図635bについて判定され得る。図7及び図8に関してより詳細に考察されるように、双極活性ウィンドウを判定するために、異なる方法が使用され得る。
【0057】
図6Bは、実施形態による、プレフィルタプロセス605のフロー図630a及び630bを例解する。631a、631bにおいて、合計が計算され得る。632a、632bにおいて、メジアンフィルタが、双極電位図602aに適用され得る。中央値フィルタリングされた信号が判定され得、かつ電位図信号からベースライン活動が除去されるように、電位図信号を補正するために使用され得る。633a、633bにおいて、621a、631bの出力が絶対値に変換される。634aにおいて、第1の移動平均フィルタが、631aの出力に適用され得る。移動平均フィルタは、一度に一定数の入力サンプルを取り、それらの平均を取ることで、特徴信号と称される平滑化された出力信号を生成し得る。フィルタの長さが増加するにつれて、出力信号の平滑性が増加し、データの急な変調はますます平滑化される。
【0058】
634bにおいて、第2の移動平均フィルタが633bの出力に適用され得る。いくつかの実施形態では、第1の移動平均フィルタは、40msであり得、第2の移動平均フィルタは、10msであり得る。プロセス630aの出力は、第1の双極特徴635aであり得、プロセス630bの出力は、第2の双極特徴635bであり得る。
【0059】
図6Cは、図6Bに記載のプレフィルタリングプロセス中の双極電位図の例を例解する。グラフ651は、測定された双極電位図を例解する。グラフ652は、中央値を使用するベースライン補正後の双極電位図を例解する(図6Bにおける632a、632b)。グラフ653は、絶対値に変換された後の双極電位図を例解する(図6Bの633a、633b)。グラフ654は、移動平均フィルタが適用された後の、得られた第1の双極特徴635a及び第2の双極特徴635bを例解する(図6Bにおける634a、634b)。
【0060】
図6Dは、図6Aの606において使用される、実施形態による出ノッチフィルタ640のフローチャートである。641において、最小の正の振れ幅(swingpMin)又は負の振れ幅(swingpMin)との正/負の振れ幅結合が判定される。642において、swingpMinが所定の閾値(swingnThr)未満であるか、又はswingnMinが所定の閾値(swingnThr)未満である場合、プロセスは643に移行する。swingpMinがswingnThr以上であるか、又はswingnMinがswingnThr以上である場合、プロセスは644に移動し、プロセスが終了する。643において、以前の振れ幅を次の振れ幅と比較する。以前の負の振れ幅が次の負の振れ幅未満の場合、又は以前の正の振れ幅が次の正の振れ幅未満の場合、それぞれ、谷は、645において除去されるか、又はピークは、646において除去される。
【0061】
図7は、実施形態による、双極特徴700の活性ウィンドウを判定するための例示的なプロセスを例解する図である。プロセス700は、相対的にあまりフィルタリングされていない双極特徴信号に使用され得る。例えば、プロセス700は、10msの移動平均フィルタが適用された第1の双極特徴信号635a上で使用され得る。外部ポイント701及び702において始まり、ピーク703に向かって移動すると、このスロープは、電位図が比較的平坦であるかどうかを判定するために計算され得る(すなわち、スロープは、特定の閾値下にある)。電位図が相対的に平坦でなくなったときを示すそれぞれのポイントが、判定され得る(ポイント704及び705)。これらのポイント704及び705は、それぞれ、活性ウィンドウの開始及び終了として指定され得る。活性ウィンドウ704、705の開始時間及び終了時間は、第1の双極特徴ウィンドウを定義することができる。
【0062】
図8は、実施形態による、双極特徴800の活性ウィンドウを判定するための例示的なプロセスを例解する図である。プロセス800は、相対的によりフィルタリングされている双極特徴に使用され得る。例えば、プロセス800は、40msの移動平均フィルタが適用された双極特徴635b上で使用され得る。ピーク803において始まり、下方に移動すると、電流平均801及び次の平均802が計算される。電流平均801が次の平均802より大きく、電位図がまだ下降していることを示す場合、プロセスは、電流平均801が図800のポイント804及び805として示される次の平均802以下となるまで、電位図を下降させることを続ける。ポイント804及び805は、それぞれ、活性ウィンドウの開始及び終了として指定され得る。活性ウィンドウ804、805の開始時間及び終了時間は、第2の双極特徴ウィンドウを定義し得る。
【0063】
図9は、実施形態による、双極活性ウィンドウを判定するために、双極特徴900の以前に判定された活性ウィンドウを融合するフロー図である。第1の双極特徴ウィンドウ901a(例えば、図7の704及び705)の開始時間及び終了時間、並びに第2の双極特徴ウィンドウ901bの開始時間及び終了時間(例えば、図8の804及び805)を使用して、902において重複を計算する。そのようなウィンドウの間の重複が20パーセント以上であれば、第1の双極特徴ウィンドウ901a及び第2の双極特徴ウィンドウ902bが融合される。
【0064】
図10は、図9に関して考察されるように、2つの双極活性ウィンドウを重複させるためのプロセスの例示的な視覚的表現である。図10は、指定された活性ウィンドウを備えた第1の双極特徴電位図1000、指定された活性ウィンドウを有する第2の双極特徴1010、及び融合された双極活性ウィンドウを有する組み合わされた電位図1020を含む。図10に例解される例では、第1の電位図1000の第1の双極特徴ウィンドウ1001及び第2の電位図の第2の双極特徴活性ウィンドウ1011は、融合閾値よりも大きい重複を有すると判定された。したがって、第1の活性ウィンドウ1001及び第2の活性ウィンドウ1011を組み合わせて、組み合わされた双極電位図1020に融合された双極活性ウィンドウ1021を作成し得る。
【0065】
双極活性ウィンドウが定義された後、ウィンドウ内の単極信号は、以下に記載される方法に従って分析され得る。
【0066】
図11は、例示的なスロープ心電図(SCG)1100を例解する図である。対応する電位図1101も例解される。SCG1100は、下向き(負)スロープ振幅及び持続時間を示す。図11に例解される例では、負のスロープは、長方形として定められている。長方形1110の幅は、スロープの振幅を表し、長方形1111の長さは、スロープの持続時間を表す。負のスロープの持続時間及び振幅は、特定のスロープが一次スロープ、二次スロープ、遠距離場、又はノイズであるかどうかを判定するために使用され得る。同様に、負のスロープのスロープ値及び振幅は、特定のスロープが一次スロープ、二次スロープ、遠距離場、又はノイズであるかどうかを判定するために使用され得る。
【0067】
図12Aは、実施形態による、負のスロープの持続時間1211対負のスロープの振幅1212のグラフ1210である。負のスロープの持続時間及び振幅を表すポイントがグラフ上で低下する場所に応じて、負のスロープが一次スロープ1213、二次スロープ1214、フェアフィールド1215、又はノイズ1216であるかどうかが判定され得る。例えば、図12Aに例解される実施形態では、負のスロープの振幅が0.15mV未満である場合、負のスロープは、その持続時間に関係なくノイズとして識別される。負のスロープの振幅が0.3mV超であり、その持続時間が35ms超である場合、負のスロープは遠距離場として識別され得る。負のスロープがノイズ又は遠距離場として識別される場合、以下でより詳細に考察される更なる分析におけるスロープとしてカウントされない場合がある。負のスロープの振幅が0.3mV超であり、その持続時間が35ms未満である場合、それは一次スロープとして識別され得る。負のスロープ振幅が0.3mV未満であり、その持続時間が35ms未満である場合、それは二次スロープとして識別され得る。しかしながら、上記に提供される閾値は、単なる例であり、他の閾値を利用することができる。
【0068】
図12Bは、実施形態による、負のスロープ値1221対負のスロープの振幅1222のグラフ1220である。負のスロープの値及び振幅を表すポイントがグラフ上で低下する場所に応じて、負のスロープが一次スロープ1223、二次スロープ1224、フェアフィールド1225、又はノイズ1226であるかどうかを判定することができる。例えば、図12Bに例解される実施形態では、負のスロープの振幅が0.15mV未満である場合、負のスロープは、そのスロープ値に関係なくノイズとして識別される。負のスロープの振幅が0.15mV超であり、そのスロープ値が0.2mV/ms超である場合、負のスロープは遠距離場として識別され得る。負のスロープがノイズ又は遠距離場として識別される場合、以下でより詳細に考察される更なる分析においてスロープとしてカウントされない場合がある。負のスロープの振幅が0.3mV超であり、そのスロープ値が0.2mV/ms未満である場合、それは一次スロープとして識別され得る。負のスロープ振幅が0.3mV以上であるが、0.015mV未満であり、そのスロープ値が0.2mV/ms未満である場合、それは二次スロープとして識別され得る。しかしながら、上記に提供される閾値は、単なる例であり、他の閾値を利用することができる。
【0069】
図13は、一次、二次、又は遠距離場のいずれかとして指定された下向きのスロープを有する例示的な単極電位図1300である。下向きのスロープのタイプは、上記の方法を使用して判定することができる。一次下向きスロープ1301、二次下向きスロープ1302、及び遠距離場下向きスロープは、図面のキーに示されるように、それぞれのタイプの破線によって指定される。
【0070】
いくつかの実施形態では、アーチファクトのスロープは、単極電位図から除去され得る。いくつかの実施形態では、ノイズに関連する小さな下向きノッチを除去することができる。ノイズに関連する小さな下向きノッチは、いくつかの実施形態では0.02mV未満の振幅を有するスロープとして定義され得る。追加的又は代替的に、遠距離場電位に関連する低速下向きスロープを除去することができる。いくつかの実施形態では、遠距離場電位に関連する低速下向きスロープは、0.03mV/ms未満のスロープと25ms超の持続時間として定義され得る。追加的又は代替的に、大きな下向きスロープに埋め込まれた小さな上向きスロープを除去することができる。0.05mV未満の振幅及び5ms未満の持続時間を有する大きな下向きスロープ内の上方スロープは、いくつかの実施形態では、大きな下向きスロープに埋め込まれた小さな上向きスロープとして定義され得る。しかしながら、上記に提供される閾値は、単なる例であり、他の閾値を利用することができる。
【0071】
双極活性ウィンドウ内の著しい単極スロープを検出することができる。いくつかの実施形態では、双極活性ウィンドウ内にピーク又は谷を有する下向きスロープは、検出に適格である。下向きスロープは、著しい単極スロープとして定義される特定の基準を満たす必要があり得る。例えば、著しいスロープは、0.05mV超の振幅、50ms未満の持続時間、0.005mV/ms超のスロープ、及び30%超の重複を有し100msを超える双極活性ウィンドウとして定義され得る。
【0072】
図14は、判定された双極活性ウィンドウを有する例示的な単極電位図1400である。振幅及びピーク間間隔が特定の基準を満たす、双極活性ウィンドウ内の単極電位図1400の複合体の数が判定される。双極活性ウィンドウのいくつかでは、双極活性ウィンドウ内に複数の活性化が存在する。図14に例解される例では、双極活性ウィンドウは、ウィンドウ内の下向きスロープの数に応じた陰影の量で網掛けされている。例えば、図14では、双極活性ウィンドウ1401内の複合体は、3つのスロープを含む。双極活性ウィンドウ内のスロープの数は、以下により詳細に記載されるように、分画分析で利用される。
【0073】
図15は、信号対雑音比(SNR)計算を例解する例示的な単極電位図1500である。単極電位図1500の双極活性ウィンドウ内の単極複合体1501は信号と見なされ、双極活性ウィンドウの外側の電位図の部分はノイズ1502として指定される。二乗平均平方根(Root-mean-square、RMS)振幅は、信号及びノイズとして指定された電位図のそれぞれの部分について計算される。次に、SNRは、信号電力の尺度として計算され得る。SNRは、以下により詳細に記載されるように、分画分析で使用され得る。
【0074】
図16は、判定された複合体レベルパラメータで注釈された単極電位図の例示的な複合体1600である。図16に例解される例では、単極電位図複合体1600には、複合体の開始(complex start、CS)1610(双極活性ウィンドウの開始)、複合体の修了(complex end、CE)1611(双極活性ウィンドウの終了)、及び複雑な持続時間(complex duration、CD)1612で注釈される。スロープの数(CN)1620及びそれぞれのスロープの振幅(CA)及びスロープ値(CV)が判定され得る。これらのパラメータは、複合体振幅比(complex amplitude ratio、CAR)及び複合体スロープ比(complex slope ratio、CSR)を計算するために使用され得る。例えば、CARは、以下の式1を使用して計算することができ、ここで、min(CA)は最小振幅、及びmax(CA)は最大振幅である。同様に、CSRは、以下の式2を使用して計算され得、ここで、min(CV)は最小スロープ値であり、max(CV)は、活性ウィンドウ内のスロープの最大スロープ値である。分画分析は、以下でより詳細に考察されるように、複合体レベルパラメータを考慮に入れることができる。
【0075】
【数5】
【0076】
図17Aを参照すると、同じ単極電位図1700内のすべての複合体C1~C11間の下向きスロープ相互相関について、例示的なスロープ心電図が分析される。i番目の複合体1701とj番目の複合体1702の相関をCijと表記され得、Cijの値は1~0である。Cijの値が1であれば、2つの複合体が同一であることを示し、Cijの値が0であれば、2つの複合体の間に相関がないことを示す。他の複合体に対する相関値が0を超える場合、本信号が単なるノイズではないことを示す指標が提供される。相関は、2つの複合体の形態を使用して判定され得る。他の実施形態では、相関は、複合体内のスロープのタイミングを使用して判定される。スロープのタイミングは、複合体の形態に影響を与え得る呼吸、血流などの影響を受けない。
【0077】
図17Bは、図17Aの例示的な単極電位図1700における11個の複合体対C1~C11のあらゆる可能な対間の複合体の相関関係をグラフ的に例解する相互相関マトリックス1710である。図17Bでは、対の間の相関値が高いほど、対を表すボックスがより暗く網掛けされる。例えば、相関値0.85~1を有する対を表すボックスは、最も暗く網掛けされる。相関マトリックス1710で分かるように、例示的な単極電位図1700の複合体は、非常に相関している。
【0078】
相関が形態を使用して判定される実施形態では、複合体形態安定性(CMS)が計算され得る。CMSは、以下の式3を使用して計算され得、式中、XTCは、閾値相関値である。一例では、閾値相関値は0.8であり、複合体の半分が高い相関を示す場合、CMSスコアは、図17Cに例解されるように100である。
【0079】
【数6】
式中、nは、判定が行われる複合体の数である。図17Aの例では、その数は、11である。分画分析は、以下でより詳細に考察されるように、単極電位図信号のCMS値を考慮し得る。
【0080】
更に、著しい単極スロープの局所活性化時間(local activation time、LAT)が計算され得る。所望の位置での電気的活動のLATは、所定の条件を満たす電気的活動に関して定義され得る。例えば、所定の条件は、その場所における電位図の最大の急速な偏向の発生時間を含み得、また、LATは、基準事例から、その場所の電位図の最大の急速な偏向が次に発現するまでの時間であると想定される。明確な最大の急速な偏向がない場合、中間振幅又は中間時点が、LATとして使用され得る。
【0081】
LATは、正又は負であってもよい。電位図の最大の急速な偏向の発生時間を判定するための方法、並びにLATを判定するための他の定義及び条件は、当業者にはよく知られているものであり、そのようなすべての方法、定義、及び条件は、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0082】
図18は、実施形態による、双極活性ウィンドウ内の単極複合体の時間間隔(網掛けで示す)が計算され、互いに比較される単極電位図1800の例である。例えば、それぞれの双極活性ウィンドウ内の連続する単極電位図複合体のLAT間の時間間隔(I)1801は、計算され、時間間隔1801に続く次の時間間隔(In+1)1802と比較され得る。時間間隔(I)1801と時間間隔(In+1)1802を包含する所定数の間隔にわたる単極電位図の時間間隔の平均時間間隔(Imean)1803を計算して、複合体タイミング安定性(CTS)値を判定することもできる。
【0083】
例えば、式4が満たされる場合、CTS値は0である。式5aが満たされる場合、式5bを使用して、CTS値を計算することができる。
【0084】
【数7】
【0085】
分画分析は、以下でより詳細に考察されるように、CTS値を考慮に入れることができる。
【0086】
図19は、複合体認識性推定値(CDE)計算を例解する単極電位図1900の例である。双極活性ウィンドウ内の単極電位図の上部の括弧で示されている部分は、複合体1901などの複合体であり、双極活性ウィンドウの外側の電位図の部分は、等電間隔として下部の括弧で指定される。等電間隔Iso1902は、次の等電間隔Iso1903と比較され得る。複合体1901の周囲の等電ポイント1902、1903が複合体1901の信号に高度に同等である場合、複合体1901のCDEは低く、望ましくない。CDEは、式6ごとに電位図部分の二乗平均平方根(RMS)振幅を使用している。分画分析は、以下でより詳細に考察されるように、CDE値を考慮に入れることができる。
CDE=100RMS(複合体の信号)/RMS(複合体+Iso1+Iso2の信号) 式6
【0087】
コンピューティングデバイス22のプロセッサは、受信及び/又は場所信号を使用して、信号の収集中にカテーテル14の場所の測定変化を計算するように構成され得る。測定計算は、カテーテル14のセンサの場所の変化を測定するときに、呼吸運動を考慮することができる。位置安定性とは、信号の収集中のカテーテル14の遠位端の場所の変化の測定を指す。いくつかの実施形態では、分画分析は、定義された時間ウィンドウにわたるカテーテルの場所の変動が事前定義された最大距離以下であり得ることを必要とし得る。この変動は、定義された時間ウィンドウ中の平均位置を中心とする標準偏差に関して測定され得る。
【0088】
組織近接インジケータ(Tissue Proximity Indicator、TPI)値は、信号が記録されたときに、カテーテルが関心組織に近接しているかどうかを示すことができる。TPIは、正又は負であり得、カテーテルが組織に近接しているかどうか、組織に近接していないか、又はそれが不明であるかどうかを示し得る。一般に、精度のために、カテーテルが組織と接触しているか、又は組織に近接しているときに取られる信号が好ましい。更に、カテーテル14の遠位端が組織に接触している場合、信号は、組織の特性を示し得る。分画分析は、信号のTPI値を考慮に入れる場合がある、又は入れない場合がある。例えば、TPIが特定の近接範囲内で記録されなかったことを示す場合、分析では、分画分析におけるその信号を使用しない場合がある。
【0089】
また、スロープアンサンブル統計は、電位タイプごとに、複合体当たりのスロープ特性から計算され得る。例えば、単極電位図の双極活性ウィンドウ内に単一電位が存在する場合、振幅及びスロープが判定され得る。双極活性ウィンドウ内の二重電位、分画された電位(3つの偏向)、又は高度に分画された電位(長くかつ3つを超える偏向)が存在する場合、平均振幅及びスロープが判定され得る。いくつかの複合体では、電位タイプを判定する際にカウントされないように、複合体内の最小振幅又は他の特性を満たさないスロープが存在し得る。例えば、1つのスロープが所定の最小振幅ではない、3つのスロープを有する複合体であり、その複合体は、二重電位を有すると見なすことができる。
【0090】
スロープ振幅及び値のアンサンブル統計を最小から最大にソートして、スケールARESTとVRESTを作成することができる。最大振幅AREST(CA)及びスロープVREST(CV)のレーティングは、電位タイプごとにリスト内のエントリ数で除算したインデックス>REST(AREST、VREST)を求めることにより、ソートされたリスト内の複合体ごとに判定することができる。
【0091】
スロープ振幅及びスロープ値は、電位専用スケールに基づいてレーティングすることができる。振幅のスコアは、電位タイプごとリスト内のエントリ数で除算したインデックスを求めることにより、専用スケール内でASCALE(CA)及びVSCALE(CV)の複合体ごとに判定することができる。
【0092】
図20は、例示的な分画分析2000のフローチャート図である。分析2000は、注釈の質(QoA)測定及び証拠値(EVI)測定を行う。QoAは、注釈ごとに提供される信頼度のレベルである。QoAは、記録内の複合体パラメータに基づき、複合体タイプごとに提供され得る。EVIは、複合体ごとに提供される注釈証拠(双極活性ウィンドウ)である。この例では、証拠注釈値は、複合体内のスロープパラメータに基づき、複合体タイプごとに提供される。
【0093】
2010において、単極電位図の1つ又は2つ以上の信号レベルパラメータが判定される。1つ又は2つ以上の信号レベルパラメータは、SNR推定値を含み得るが、これらに限定されない。SNR推定値は、上記の方法に従って実行され得る。
【0094】
2020において、双極電位図の双極活性ウィンドウが判定される。双極活性ウィンドウは、上記の方法を使用して判定され得る。
【0095】
2030において、双極活性ウィンドウに基づいて、1つ又は2つ以上の複合体レベルパラメータが判定される。図20に例解されるように、1つ又は2つ以上の複合体パラメータは、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)を含み得る。単極/双極スロープ重複(UBO)パラメータも判定され得る。複合体レベルパラメータは、上記の方法を使用して判定され得る。
【0096】
2040において、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)は、1つ又は2つ以上の複合体レベル範囲レーティング統計を判定するために使用され得る。1つ又は2つ以上の複合体レベル範囲レーティング統計は、相対スロープ振幅範囲(AREST)及びスロープ値範囲(VREST)を含み得るが、これらに限定されない。相対スロープ振幅範囲(AREST)及びスロープ値範囲(VREST)は、上記の方法を使用して判定され得る。追加的に、又は代替的に、2050において、AREST及びVRESTに対する絶対スロープ振幅範囲(ASCALE)及びスロープ値範囲(VSCALE)を判定することができる。図20に例解される実施形態では、単一電位、二重電位、及び分画された電位に対するスロープ振幅及びスロープ値のための例示的な電位専用スケールは、分画された電位のリストに含まれる高度に分画された電位で示されている。例示的な専用スケールも以下の表1に提供されている。
【0097】
【表1】
【0098】
2060において、複合体レベルレーティングスコアを判定することができる。複合体レベルレーティングスコアは、上記の方法を使用して判定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、最大振幅AREST(CA)及びスロープSREST(CV)のレーティングは、電位タイプごとにリスト内のエントリ数で除算したインデックス>REST(AREST、VREST)を求めることにより、ソートされたリスト内の複合体ごとに判定することができる。
【0099】
2070において、次いで、QoAは、図21に関してより詳細に考察されるように、2060における1つ又は2つ以上の複合体レベルパラメータ及び/又は複合体レベルレーティングに基づいて判定される。2080において、証拠注釈測定EVIは、図22に関してより詳細に考察されるように、証拠表2081を使用して判定される。
【0100】
図21は、実施形態による、QoA測定のためのパラメータ2101及び重み2102を例解する図2100である。いくつかの実施形態では、QoA測定は、2つ又は3つ以上の以下のパラメータの加重和であり得る:(1)ASCALE2101a、(2)VSCALE2101b、(3)AREST2101c、(4)VREST2101d、(5)複合体振幅比(CAR)2101e、(6)複合体スロープ比(CVR)2101f、(7)単極/双極スロープ重複(UBO)2101g、(8)複合体形態安定性(CMS)2101h、(9)複合体タイミング安定性(CTS)2101i、及び(10)複合体認識性推定値(CDE)2101j。しかしながら、このパラメータリストは網羅的ではなく、他のパラメータをQoA測定で使用することができる。
【0101】
QoA測定で使用される重みは、電位タイプごとに定義することができる。例えば、重みは、電位タイプが単一2110、二重2120、又は分画2130であるかどうかに応じて定義することができる。この例では、分画された値も、高度に分画されたタイプに使用される。
【0102】
一例では、QoA測定は、上記の10個のパラメータ(N=10)を使用して、以下の式7を使用したパーセンテージとして計算される。しかしながら、より多くの又は少ないパラメータをQoA測定で利用することができる。
【0103】
【数8】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙されたN個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、図21の表からの電位タイプ(p)に応じたi番目のパラメータの重み値である。
【0104】
図22は、実施形態による、証拠注釈測定EVIのパーセンテージ値としての例示的な証拠表2200である。証拠テーブルは、1つ又は2つ以上のECG複合体パラメータに基づく複数の分類2110を含み得る。図22に例解される例では、分類2110は、信号のECG複合体振幅スケール、複合体幅、及び振幅比に基づく。例えば、20以下の振幅スケール、60超の複合体幅、及び10超の振幅比を有する複合体は、グループ19(2110a)として分類され得る。次いで、証拠スコアは、分類、スロープの数(1つの2120a、2つの2120b、3つの2120c、又は3つ以上の2120d)、及び電位タイプ(すなわち、単一2130a、二重2130b、分画2130c、又は高度な分画(分画+)2130d)に基づいて、表内でコード化され得る。例えば、グループ19として分類された複合体が3つを超える勾配を有し、高度に分画された電位として識別された場合、複合体は、90(2140)の証拠スコアを有する(分画された電位として識別された場合、複合体は、80の証拠スコアを有する)。
【0105】
QoA及びEVI測定を使用して、複合体の最終スコアを判定することができる。一例では、変調係数Mは、まずQoA及びEVIに基づいて計算される。この例では、変調係数(M)は、式8を使用して判定される。
【0106】
【数9】
【0107】
次いで、式9で実証されるように、最終スコアSは、証拠スコアEVIと変調係数Mとの合計として計算される。
S=EVI+M 式9
【0108】
図23は、実施形態による、単一電位2310、二重電位2320、分画された電位(3つの偏向)2330、及び高度に分画された電位(長くかつ3つを超える偏向)2340について、組み合わせた証拠注釈測定値(EVI)及び変調係数Mを例解するグラフ2300である。図23に示すように、最終スコアはパーセンテージとして表すことができ、100パーセントは最も高い可能なスコアである。最終スコアを使用して、複合体が分画された複合体であるかどうかを判定し得る。
【0109】
90%以上の最終スコアを有する所定数の連続した複合体を有する単極電位図は、分画された信号として識別され得る。例えば、図22の表からのEVI値が90%で、QoA値が少なくとも50%の単極電位図複合体、並びに図22の表からのEVI値が80%で、QoA値が少なくとも75%の単極電位図複合体は、90%以上のこの最終スコアを満たしている。
【0110】
分画された電位の検出は、LATと組み合わせて、心房粗動のような不整脈中の波動伝播のビューを作成することに関連している。分画された電位は、健康な組織での単純な素早い伝播に比べ、不規則な(例えば、ジグザグ)タイプの活性化遅延を示し得る病変組織の領域にわたって移動する、活性化波の遅い伝播の結果として生じることがある(構造的分画)。
【0111】
加えて、複合体活性化パターン及び関連する分画された電位(機能的分画)ももたらすブロックの機能ラインによって分離された複数の解離波の結果として、二重及び分画された電位が発生し得る。後者は一般にあまり長くは続かないため、持続的な分画(例えば少なくとも数拍以上)は分画の構造的性質に注意を向けている。
【0112】
したがって、単一及び二重電位から導出された局所活性化時間(LAT)と組み合わせた、持続的な分画された電位の検出により、分画された電位によって指定される電位アブレーション部位の境界を含む活性化マップの作成が可能になる。
【0113】
分画された信号と高度に相関する心臓組織領域は、カテーテルアブレーションを介した治療のための催不整脈部位として装置10によって判定され得る。例えば、左心房の全体などの調査領域を表す単極電位図は、カテーテル47から取得され、上記に基づいてコンピューティングデバイス22によってスコアリングされ得る。分画された信号としてスコアリングされた単極電位図は、少なくともいくつかの(例えば、≧3)複製された分画された単極電位によって表される心房組織領域が存在するかどうかを判定するために評価される。そのような基準を満たす所定の数の単極電位図を有する心房組織領域の寄せ合わせ、例えば、少なくとも3つを、コンピューティングデバイス22のプロセッサによって、電位アブレーション治療のための心房性催不整脈部位であると判定する。次いで、判定された心房催不整脈部位を用いた調査領域をディスプレイ29上に表示して、操作者16がアブレーション治療を行うことを支援することができる。
【0114】
計算量を減らすために、より焦点を絞った調査が行われ得る。例えば、心室の全体を表す単極電位図を評価する代わりに、低電圧領域の周囲又はその中の心臓領域を表す単極電位図を取得し、スコアリングして、電位アブレーション治療のための催不整脈部位であると判定されるべき上記基準を満たす心臓調査領域内の心臓組織領域の存在を判定することができる。
【0115】
本明細書に記載の方法はまた、コンピュータシステム(例えば、汎用コンピュータ又はCartoシステムなどの専用コンピュータ)における全体的な方法の実装に必要な段階的なコンピュータコードを生成するために、熟練したソフトウェアエンジニアによって利用され得るアルゴリズムを含み得る。対応する電位図、計算、及び結果は、グラフィカルユーザインターフェースなどのディスプレイ上に表示され得る。
【0116】
本明細書の開示に基づいて、多くの変形が可能であることを理解されたい。特徴及び要素は、特定の組み合わせで上述されているが、各特徴又は要素は、他の特徴及び要素なしで単独で、又は他の特徴及び要素を伴う若しくは伴わない様々な組み合わせで使用することができる。
【0117】
〔実施の態様〕
(1) 対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための医療装置であって、
コンピューティングデバイスに結合された複数の選択的に配置可能な遠位端センサを有する少なくとも1つのカテーテルを含むカテーテル構成要素を備え、
前記センサが、前記対象の心臓内の(ECG)信号を感知するように構成されており、
前記コンピューティングデバイスが、プロセッサ及び関連付けられたメモリを有し、
前記コンピューティングデバイスが、それぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態の心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理するように構成されており、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される前記心臓組織調査領域に関して、前記プロセッサが、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義することと、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算することと、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定することと、
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算することと、により、識別するように構成されており、
前記プロセッサが、所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定するように構成されている、医療装置。
(2) 前記コンピューティングデバイスと結合されたディスプレイを更に備え、
前記プロセッサが、前記ディスプレイに、
前記遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、前記心臓組織調査領域に対する前記遠位端センサの相対的な場所と、
アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的指標と、
選択された基準に基づく前記心臓組織の色付けと、のうちの1つ又は2つ以上を含む、前記対象の心臓の前記心臓組織調査領域の視覚化を出力するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プロセッサが、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定することと、前記第1の活性ウィンドウ及び前記第2の活性ウィンドウを、それらが20パーセント以上重複する条件で、融合することと、によって、前記双極活性ウィンドウを判定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記単極ECGが、少なくとも10個の連続する心拍からの信号を含み、
前記心臓組織調査領域が、前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織であり、
前記プロセッサが判定するように構成されている、前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータが、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択され、
前記プロセッサが、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む、心房組織部位として、アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位を判定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記プロセッサが、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、前記複数の複合体レベルレーティングを計算するように構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0118】
(6) 前記プロセッサが、ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、前記QoAを計算するように構成されている、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記プロセッサが、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして、前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプを判定するように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記プロセッサが、以下の式に基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関するQoAを計算するように構成されており、
【0119】
【数10】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙された前記N個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じた前記i番目のパラメータの重み値である、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記プロセッサが、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する前記最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算するように構成されており、EVIが、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、前記第1の単極ECGのスロープの数、及び前記電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいて、パーセントとして判定され、Mが、以下の式に基づいてパーセント値として計算される、実施態様7に記載の装置。
【0120】
【数11】
(10) 対象の心臓内の心不整脈の診断及び部位判定のための方法であって、
カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極ECGの形態で心電図(ECG)信号を受信、記録、及び処理することと、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む単極ECGが記録される前記心臓組織調査領域に関して、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義すること、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定すること、並びに
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算すること、により、識別することと、
所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定することと、を含む、方法。
【0121】
(11) 前記遠位端センサのうちの少なくとも1つによって受信された、選択された感知されたECGとともに、前記心臓組織調査領域に対する前記遠位端センサの相対的な場所と、
アブレーションによる治療のための心不整脈部位であると判定された心臓組織の視覚的指標と、
選択された基準に基づく前記心臓組織の色付けと、のうちの1つ又は2つ以上を含む、前記対象の心臓の前記心臓組織調査領域の視覚化を表示することを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記双極活性ウィンドウを判定することが、第1の活性ウィンドウ及び第2の活性ウィンドウを判定することと、前記第1の活性ウィンドウ及び前記第2の活性ウィンドウを、それらが20パーセント以上重複する条件で、融合することと、を含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関して行われ、
判定される前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータが、複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、並びに最大スロープ(CV)からなる群から選択され、
アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位が、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として判定される、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記複数の複合体レベルレーティングが、スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、計算される、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記QoAが、ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、計算される、実施態様14に記載の方法。
【0122】
(16) 前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプが、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして判定される、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記第1の単極ECGの前記複合体に関するQoAが、以下の式に基づいて、計算されており、
【0123】
【数12】
式中、Nは、パラメータの数であり、Pは、上に列挙された前記N個のパラメータのi番目の値であり、wp,iは、電位タイプpに応じた前記i番目のパラメータの重み値である、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記プロセッサが、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する前記最終スコアを、EVI+Mの合計のパーセントとして計算するように構成されており、EVIが、振幅スケール、複合体幅、及び振幅比の分類、前記第1の単極ECGのスロープの数、及び前記電位タイプに対応するテーブルエントリに基づいて、パーセントとして判定され、Mが、以下の式に基づいてパーセント値として計算される、実施態様17に記載の方法。
【0124】
【数13】
(19) 有形の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって読み取られるときに、前記プロセッサに、
カテーテルのそれぞれの遠位端センサの感知場所に基づいて、それぞれの心臓組織の場所に関連付けられた双極及び単極心電図(ECG)の形態のECG信号を処理することと、
心臓組織調査領域内の場所に対応する複数の連続した心拍からの信号を含む前記心臓組織調査領域の単極ECGに関して、前記単極ECGの中から、分画単極ECG信号複合体(FUESC)を、
第1の単極ECG及び第2の単極ECGを含む双極ECGから双極活性ウィンドウを判定し、それぞれの双極活性ウィンドウに各々対応する、前記第1の単極ECGの一連の複合体を定義すること、
複数の連続する双極活性ウィンドウに関する前記第1の単極ECGの前記複合体に関する、複数の複合体レベルパラメータを判定すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の複合体レベルレーティングを計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを含む、複数のパラメータを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する注釈の質測定(QoA)を計算すること、
前記複数の複合体レベルパラメータのうちの少なくとも1つ及び前記複数の複合体レベルレーティングのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の単極ECGの前記複合体に関して証拠注釈測定(EVI)を判定すること、並びに
その最終スコアが少なくとも所定の閾値であることを条件に、前記第1の単極ECGの複合体が、FUESCであると判定されるように、各複合体の前記QoA及び前記EVIに基づいて、前記第1の単極ECGの前記複合体に関する最終スコアを計算すること、により、識別することと、
所定の数のFUESCを含む所定の数の単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心臓組織部位として、アブレーションによる治療のための心不整脈部位を判定することと、を行わせるプログラム命令が格納されている、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(20) 前記プログラム命令が、プロセッサによって読み取られるときに、前記プロセッサに、
少なくとも10個の連続する心拍からの信号、及び前記対象の心臓の心房室のうちの少なくとも一部分の心房組織である心臓組織調査領域を含む、単極ECGに関する前記記録された単極ECGの中からFUESCを識別することと、
複合体認識性(CDE)、複合体形態安定性(CMS)、複合体タイミング安定性(CTS)、双極活性ウィンドウ開始(CS)、双極活性ウィンドウ終了(CE)、及び双極活性ウィンドウ持続(CD)、最小/最大振幅比(CAR)、最小/最大スロープ比(CVR)、スロープの数(CN)、最大スロープ振幅(CA)、及び最大スロープ(CV)からなる群から選択される前記双極活性ウィンドウ内の前記複数の複合体レベルパラメータを判定することと、
スロープの数(CN)、最大振幅(CA)、最大スロープ(CV)、相対振幅範囲(AREST)、相対スロープ範囲(VREST)、絶対振幅範囲(ASCALE)、及び絶対スロープ範囲(VSCALE)からなる群から選択されるパラメータを使用して、前記複数の複合体レベルレーティングを計算することと、
ASCALE、VSCALE、AREST、VREST、CAR、CVR、単極/双極スロープの重複(UBO)、CMS、CTS、及びCDEからなる群の少なくとも2つのパラメータに基づいて、前記QoAを計算することと、
前記第1の単極電位図の前記複合体の電位タイプを、単一電位、二重電位、分画された電位、又は高度に分画された電位のいずれかとして判定することと、
アブレーションによる治療のための心房心不整脈部位を、少なくとも3つの連続するFUESCを含む少なくとも3つの単極ECGに対応するそれぞれの場所を含む心房組織部位として判定することと、を行わせる、実施態様19に記載の有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【外国語明細書】