(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177832
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】液滴収集ユニット、液滴収集装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20221124BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221124BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221124BHJP
G01N 15/14 20060101ALI20221124BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01N35/08 B
C12M1/34 B
C12Q1/02
G01N15/14 C
G01N33/48 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081343
(22)【出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2021083682
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 健太
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045FB01
2G058DA07
2G058GA06
4B029AA07
4B029BB01
4B029CC01
4B029FA04
4B029FA09
4B029GB06
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QR58
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】液滴に封入された微生物の量が調製された液滴を収集すること。
【解決手段】実施形態に係る液滴収集ユニットは、生成部と、検出部と、分別部とを備える。生成部は、微生物と、微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成する。検出部は、液滴における酵素と基質との反応を検出する。分別部は、反応の検出結果に基づいて、液滴を分別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物と、前記微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成する生成部と、
前記液滴における前記酵素と前記基質との反応を検出する検出部と、
前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴を分別する分別部と、
を備える、液滴収集ユニット。
【請求項2】
前記分別部は、前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の量を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項1に記載の液滴収集ユニット。
【請求項3】
前記分別部は、前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項2に記載の液滴収集ユニット。
【請求項4】
前記検出部は、前記酵素と前記基質との反応に基づく蛍光を検出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の液滴収集ユニット。
【請求項5】
前記分別部は、前記酵素と前記基質との反応に基づく蛍光の強度に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項3に記載の液滴収集ユニット。
【請求項6】
前記分別部は、前記判別結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数ごとに、前記液滴を分別する、請求項5に記載の液滴収集ユニット。
【請求項7】
前記分別部は、マイクロ流路において生成された前記液滴を、誘電泳動によって分別する、請求項1~3のいずれか1つに記載の液滴収集ユニット。
【請求項8】
前記液滴の温度を調整する調温部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1つに記載の液滴収集ユニット。
【請求項9】
微生物と、前記微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成する生成部と、
前記液滴における前記酵素と前記基質との反応を検出する検出部と、
前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴を分別する分別部と、
分別された液滴に対する処理を実行する処理部と、
を備える、液滴収集装置。
【請求項10】
微生物と、前記微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成し、
前記液滴における前記酵素と前記基質との反応を検出し、
前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴を分別する、
ことを含む、液滴収集方法。
【請求項11】
前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の量を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項10に記載の液滴収集方法。
【請求項12】
前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項11に記載の液滴収集方法。
【請求項13】
前記酵素と前記基質との反応に基づく蛍光を検出する、請求項10~12のいずれか1つに記載の液滴収集方法。
【請求項14】
前記酵素と前記基質との反応に基づく蛍光の強度に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、前記液滴を分別する、請求項12に記載の液滴収集方法。
【請求項15】
前記判別結果に基づいて、前記液滴に含まれる前記微生物の数ごとに、前記液滴を分別する、請求項14に記載の液滴収集方法。
【請求項16】
マイクロ流路において生成された前記液滴を、誘電泳動によって分別する、請求項10~12のいずれか1つに記載の液滴収集方法。
【請求項17】
前記液滴の温度を調整することをさらに含む、請求項10~12のいずれか1つに記載の液滴収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、液滴収集ユニット、液滴収集装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ流路中で液滴を生成し、細胞や細菌を封入する方法が知られている。例えば、確率論を利用して、液滴内に細胞や細菌を1細胞ずつ封入する技術が知られている。このような確率論的に細胞を封入する場合、液滴内の細胞を顕微鏡などで識別して分別することで、細胞が封入された液滴のみを分取することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、液滴に封入された微生物の量が調製された液滴を収集することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る液滴収集ユニットは、生成部と、検出部と、分別部とを備える。生成部は、微生物と、前記微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成する。検出部は、前記液滴における前記酵素と前記基質との反応を検出する。分別部は、前記反応の検出結果に基づいて、前記液滴を分別する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る液滴収集ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るマイクロ流路チップの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る液滴収集ユニットによる処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るシステムの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る細菌由来の酵素(β-ガラクトシダーゼ)に関する実験結果を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るウイルス由来の酵素(ノイラミニダーゼ)に関する実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、液滴収集ユニット、液滴収集装置及び方法の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係る液滴収集ユニット、液滴収集装置及び方法は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る液滴収集ユニットの構成の一例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1の構成の一例を示すブロック図である。液滴収集ユニット1は、処理回路11と、送液部12と、加温部13と、光源部14と、蛍光検出部15と、分別部16と、回収部17と、廃液部18と、マイクロ流路チップ20とを有し、ウイルスや細菌などの微生物を含む液滴を収集する。
【0009】
ここで、液滴収集ユニット1は、収集した液滴を利用するシステムに接合可能に形成することができる。具体的には、液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物を利用した種々の解析や試験のためのシステムに接合可能に形成することが可能である。例えば、液滴収集ユニット1は、液滴に封入したウイルスをベクターとして用いて種々の因子を細胞内に導入するためのシステムに接合可能に形成することができる。
【0010】
処理回路11は、液滴収集ユニット1における各種処理を制御する。例えば、処理回路11は、プロセッサによって実現される。ここで、処理回路11は、例えば、液滴収集ユニット1、或いは、上記したシステムに設けられた入力インターフェースを介した各種操作に応じて、液滴収集ユニット1における各種処理を制御する。
【0011】
処理回路11は、図示しない記憶回路によって記憶されたプログラムを読み出して実行することで、制御機能11a、検出機能11b、及び、分別機能11cを実行する。なお、制御機能11a及び加温部13は、調温部の一例である。また、検出機能11b、光源部14及び蛍光検出部15は、検出部の一例である。また、分別機能11c及び分別部16は、分別部の一例である。
【0012】
制御機能11aは、送液部12による液の送出を制御する。具体的には、制御機能11aは、送液部12に含まれるポンプなどを制御することで、マイクロ流路チップ20内に送出液を送出させる。例えば、制御機能11aは、送液部12を制御して、ウイルスや細菌などの微生物を含む液滴を生成するための種々の送出液をマイクロ流路チップ20内に送出させる。なお、制御機能11aによる送出液の送出の詳細については後述する。
【0013】
また、制御機能11aは、加温部13を制御することで、マイクロ流路チップ20内の流体の温度を調整する。具体的には、制御機能11aは、マイクロ流路チップ20内の液滴の温度を調整する。なお、制御機能11aによる温度の調整の詳細については後述する。
【0014】
検出機能11bは、光源部14及び蛍光検出部15を制御することで、液滴内の反応を検出する。具体的には、検出機能11bは、液滴における酵素と基質との反応を検出する。より具体的には、検出機能11bは、光源部14を制御することで発光させ、マイクロ流路チップ20内で生成された液滴に対して光を照射し、液滴内で生じた蛍光を蛍光検出部15によって検出することで、液滴内の反応を検出する。例えば、検出機能11bは、微生物に由来する酵素と基質との反応に基づく蛍光を検出し、検出した蛍光によって液滴内での酵素と基質との反応を検出する。なお、検出機能11bによる検出処理の詳細については後述する。
【0015】
分別機能11cは、分別部16を制御することで、マイクロ流路チップ20内で生成された液滴を分別する。具体的には、分別機能11cは、検出機能11bによる検出結果に基づいて、液滴を分別する。より具体的には、分別機能11cは、検出結果に基づいて、液滴に含まれる微生物の量を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。例えば、分別機能11cは、検出結果に基づいて、液滴に含まれる微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。なお、分別機能11cによる液滴の分別処理の詳細については後述する。
【0016】
送液部12は、制御機能11aによる制御のもと、マイクロ流路チップ20内に送出液を送出する。具体的には、送液部12は、微生物が封入された液滴を生成するための種々の送出液をマイクロ流路チップ20内に送出する。例えば、送液部12は、ポンプなどを含み、種々の送出液をマイクロ流路チップ20内に送出する。なお、送液部12によってマイクロ流路チップ20内に送出される送出液の詳細については後述する。
【0017】
加温部13は、制御機能11aによる制御のもと、マイクロ流路チップ20における流路内の流体の温度を調整する。具体的には、加温部13は、マイクロ流路チップ20内の液滴の温度を調整する。例えば、加温部13は、マイクロ流路チップ20と接触或いは非接触に配置され、赤外線加熱や誘電加熱などにより、マイクロ流路チップ20内の液滴の温度を調整する。なお、加温部13は、流体の温度を直接調整しても、あるいはマイクロ流路チップ20の温度を調整することで結果として流体の温度を調整してもよい。容器の温度を調整することを液滴の温度を調整することとみなしてもよい。
【0018】
ここで、加温部13は、温度センサを有し、温度センサによって液滴の温度を測定するように構成することもできる。かかる場合には、制御機能11aは、加温部13における温度センサによって測定された温度に基づいて、加温部13による加温を調整する。すなわち、制御機能11aは、マイクロ流路チップ20内の液滴の温度を、設定された温度で維持するように制御することもできる。
【0019】
光源部14は、検出機能11bによる制御のもと、発光する。具体的には、光源部14は、マイクロ流路チップ20の流路を通流する液滴に対して光を照射する。ここで、光源部14は、液滴から蛍光を発生させることができる光を発することができるものであればどのようなものが用いられてもよく、例えば、レーザーや、LED(light emitting diode)等によって実現される。
【0020】
蛍光検出部15は、光源部14から発せられた光によって励起され、液滴から発生した蛍光を検出する。ここで、蛍光検出部15は、液滴から発せられた蛍光を検出することができるものであればどのようなものが用いられてもよく、例えば、イメージセンサや、蛍光顕微鏡、蛍光測定器等によって実現される。
【0021】
例えば、蛍光検出部15とは、マイクロ流路チップ20を挟んで、光源部14と対向する位置に配置され、光源部14から発せられた励起光によって発生した蛍光を検出し、検出結果を検出機能11bに送出する。
【0022】
分別部16は、分別機能11cによる制御のもと、マイクロ流路チップ20内を通流する液滴を分別する。具体的には、分別部16は、液滴に含まれる微生物の量に応じて液滴を分別する。例えば、分別部16は、所定の量以上の微生物が含まれる液滴を分別する。また、例えば、分別部16は、液滴に含まれる微生物の数ごとに、液滴を分別する。例えば、分別部16は、マイクロ流路チップ20の流路に対して電場を印加するための電極を含み、分別機能11cによる制御のもと、マイクロ流路チップ20の流路に対して電場を印加することで、誘電泳動により液滴を分別する。一例を挙げると、分別部16は、所望の数の微生物が封入された液滴と、その他の液滴(微生物が封入されていない液滴、及び、所望の数以外の数の微生物が封入された液滴)とを誘電泳動により分別する。
【0023】
回収部17は、分別部16によって分別された液滴を回収する。具体的には、回収部17は、所望の数の微生物が封入された液滴を回収する。廃液部18は、分別部16によって分別されたその他の液滴を回収する。
【0024】
マイクロ流路チップ20は、マイクロ流路を含み、液滴を生成する。具体的には、マイクロ流路チップ20は、微生物と、微生物に由来する酵素と反応する基質とを封入した液滴を生成する。なお、マイクロ流路チップ20の詳細については後述する。マイクロ流路チップ20は、生成部の一例である。
【0025】
以上、本実施形態に係る液滴収集ユニット1の構成について説明した。かかる構成のもと、液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の数が既知の液滴を収集する。上述したように、所定の数の細胞などを液滴に封入する場合、確率論的な手法が利用される。ここで、例えば、確率論的な手法により細胞を封入した液滴を生成する場合、所定の数の細胞が封入された液滴以外に、所定の数よりも多い数(或いは、所定の数未満の数)の細胞が封入された液滴や、細胞が封入されていない(封入された細胞が0)の液滴が生成される。したがって、確率論的な手法によって細胞などを液滴に封入する場合、液滴内の細胞を顕微鏡などで識別して分別することとなる。
【0026】
しかしながら、ウイルスなどのサイズが小さい微生物の場合、光学顕微鏡により観察することが困難であり、液滴内に微生物が封入されているか否か、そして、封入されている場合にその数、を識別することが容易ではない。
【0027】
そこで、本実施形態に係る液滴収集ユニット1は、微生物由来の酵素と基質との反応を利用して、液滴内に微生物が封入されているか否か、そして、封入されている場合にその数、を識別することで、液滴に封入された微生物の数が既知の液滴を収集する。具体的には、液滴収集ユニット1は、マイクロ流路チップ20において、確率論的に微生物を封入した液滴を生成し、生成した液滴ごとに酵素反応に基づく識別を行い、識別結果に応じた液滴の分別を行う。
【0028】
以下、本実施形態に係る液滴収集ユニット1の詳細について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るマイクロ流路チップ20の一例を示す図である。例えば、マイクロ流路チップ20は、第1の注入口21と、第2の注入口22と、第3の注入口23と、液滴生成領域24と、酵素反応領域25と、検出領域26と、分別領域27と、回収口28と、廃液口29とを有する。なお、液滴収集ユニット1は、以下で説明する液滴収集方法を実行するごとに、マイクロ流路チップ20を取り換え可能に構成することができる。
【0029】
第1の注入口21は、液滴を生成するための第1の流体の供給部が接続され、送液部12による第1の流体の送出により、第1の流体が注入される。ここで、第1の流体は、液滴を生成するための連続相流体である。例えば、連続相流体は、オイルであり、液滴に封入する微生物に応じたオイルが適宜利用される。第1の注入口21と液滴生成領域24との間には流路21aが形成され、第1の注入口21から注入された連続相流体は、送液部12の送出によって液滴生成領域24の方向に通流する。
【0030】
第2の注入口22は、液滴を生成するための第2の流体の供給部が接続され、送液部12による第2の流体の送出により、第2の流体が注入される。ここで、第2の流体は、例えば、ウイルスなどの微生物の懸濁液であり、確率論に基づいて、所定の数の微生物が液滴に封入されるように濃度調製されたものである。
【0031】
なお、対象となる微生物は、微生物の表面又は内部に酵素を有し、当該酵素の反応によって光学的に検出することができる生成物を生成するものであればどのようなものでもよい。例えば、対象となる微生物としては、ウイルス表面にヘマグルチニンノイラミニダーゼ(hemagglutinin-neuraminidase)を有するパラミクソウイルス科のウイルスが挙げられる。ヘマグルチンノイラミニダーゼは、基質「MUNANA(4-Methylumbelliferyl-N-acetyl-α-D-neuraminic acid)」との反応により、蛍光物質である「4-メチルウンベリフェロン」を生成する。
【0032】
第2の注入口22と液滴生成領域24との間には流路22aが形成され、第2の注入口22から注入された第2の流体は、送液部12の送出によって液滴生成領域24の方向に通流する。
【0033】
第3の注入口23は、液滴を生成するための第3の流体の供給部が接続され、送液部12による第3の流体の送出により、第3の流体が注入される。ここで、第3の流体は、例えば、微生物の表面又は内部に有される酵素と反応する基質を含む試薬である。例えば、第3の流体は、基質「MUNANA」を含む試薬である。
【0034】
第3の注入口23と液滴生成領域24との間には流路23aが形成され、第3の注入口23から注入された第3の流体は、送液部12の送出によって液滴生成領域24の方向に通流する。
【0035】
ここで、マイクロ流路チップ20では、流路22aと流路23aとが液滴生成領域24よりも手前で合流することで、流路22aを通流する第2の流体と流路23aを通流する第3の流体とが液滴生成領域24よりも手前で混合され、液滴を生成するための分散相流体が形成される。すなわち、マイクロ流路チップ20では、流路22aと流路23aとの合流領域において、微生物と基質とが混合された分散相流体が形成される。
【0036】
なお、第2の流体における微生物の濃度及び第3の流体の基質濃度は、混合されて分散相流体となった際に最適な濃度となるようにそれぞれ調整される。また、分散相流体におけるPHなどの条件は、対象となる酵素に応じて適宜調整される。
【0037】
液滴生成領域24は、連続相流体が通流する流路21aと、分散相流体が通流する流路(流路22aと流路23aとの合流領域より後の流路)とが交差する領域であり、分散相流体が通流する流路に対して流路21aが対向する状態で接続されている。送液部12によって連続相流体及び分散相流体が液滴生成領域24に供給されると、連続相流体が分散相流体をせん断し、液滴が生成される。例えば、液滴生成領域24は、体積がフェムトリットル(fL)~ピコリットル(pL)の液滴を生成する。
【0038】
液滴生成領域24は、送液部12によって連続相流体及び分散相流体が順次送出されることにより、多数の液滴を連続的に生成する。液滴生成領域24において生成された液滴は、送液部12による第1~第3の流体の送出に応じて、連続相流体とともに酵素反応領域25に順次送出される。
【0039】
酵素反応領域25は、液滴に封入された酵素と基質とを反応させるための流路25aを有し、液滴生成領域24と接続されている。流路25aは、液滴生成領域24において生成された液滴が連続相流体とともに順次流入される。ここで、酵素反応領域25は、加温部13によって温度が調整される領域である。すなわち、制御機能11aは、加温部13を制御することで、酵素反応領域25の流路25aを通流する液滴の温度を酵素反応の最適温度に調温する。このとき、液滴内に微生物が封入されている場合、酵素が基質と反応することで蛍光物質が生成されることとなる。なお、流路25aは、酵素と基質との反応に要する時間と液滴の通流速度とに応じた長さで形成される。
【0040】
検出領域26は、光源部14から発光された光が照射される流路26aを有し、酵素反応領域25と接続されている。流路26aは、酵素反応領域25における流路25aを通流した液滴が連続相流体とともに順次流入される。ここで、流路26aは、光源部14から照射された光及び液滴において生じた蛍光を透過する材質で形成されており、光源部14と蛍光検出部15との間に配置される。
【0041】
検出領域26では、流路26aに対して光源部14から光が照射され、蛍光検出部15によって液滴内で生じた蛍光が検出される。すなわち、検出領域26では、流路26aを通流している液滴に対して光源部14から光が照射され、通流する液滴に微生物が封入され蛍光物質が生成されている場合に蛍光が検出される。検出機能11bは、光源部14を制御して流路26aに対して光を照射させるとともに、蛍光検出部15を制御して蛍光の検出情報を取得する。
【0042】
例えば、検出機能11bは、蛍光検出部15によって検出された蛍光強度に基づいて、液滴に封入された微生物の数を検出する。一例を挙げると、検出機能11bは、蛍光検出部15によって蛍光が検出されていない場合に、液滴に封入された微生物の数が「0」であることを検出する。また、検出機能11bは、液滴に封入された微生物の数と蛍光強度との関係を示す参照情報と、蛍光検出部15によって検出された蛍光強度とを比較することで、液滴に封入された微生物の数を検出する。なお、液滴に封入された微生物の数と蛍光強度との関係を示す参照情報は、予め取得され、図示しない記憶回路に記憶される。
【0043】
分別領域27は、液滴を分別するための分岐した流路27aを有し、検出領域26と接続されている。流路27aは、検出領域26における流路26aを通流した液滴が連続相流体とともに順次流入される。ここで、分別領域27では、分別部16による液滴の分別が実行される。すなわち、分別領域27では、分別機能11cの制御による分別部16の動作により、所定の数の微生物が封入された液滴と、それ以外の液滴とが分別される。
【0044】
具体的には、分別機能11cは、酵素と基質との反応に基づく蛍光の強度に基づいて、液滴に含まれる微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。より具体的には、分別機能11cは、検出機能11bによって検出された検出結果に基づいて分別部16を制御することで、所定の数の微生物が封入された液滴と、それ以外の液滴とを分別する。例えば、分別機能11cは、液滴の通流速度(送液部12による送液速度)と、検出領域26と分別領域27との距離とに基づいて、液滴に封入された微生物の数が所定の数に対応する蛍光が検出された液滴の分別領域27における通過タイミングを特定する。一例を挙げると、分別機能11cは、液滴に封入された微生物の数が「1」であることを示す蛍光強度が検出された液滴の分別領域27における通過タイミングを特定する。
【0045】
そして、分別機能11cは、特定した通過タイミングに分別部16から電場を印加させることで、液滴に封入された微生物の数が所定の数である液滴を回収口28側に移動させ、回収口28と接続された流路に液滴を通流させる。例えば、分別機能11cは、液滴に封入された微生物の数が「1」である液滴を回収口28側に移動させ、回収口28へ通流させる。なお、分別領域27は、分別部16による電場の印加がない状態では、液滴が廃液口29と接続された流路に通流されるように構成されている。
【0046】
回収口28は、回収部17と接続され、液滴に封入された微生物の数が所定の数である液滴を回収部17に通流させる。廃液口29は、廃液部18と接続され、液滴に封入された微生物の数が所定の数以外である液滴を廃液部18に通流させる。
【0047】
以下、
図3を用いて、液滴収集ユニット1による処理の一例を説明する。
図3は、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1による処理の一例を説明するための図である。なお、
図3においては、マイクロ流路チップ20における液滴生成及び液滴の分別について示す。また、
図3においては、微生物としてウイルスを対象とした場合を示す。
【0048】
例えば、
図3に示すように、流路22aを介してウイルスを含む第2の流体が供給され、流路23aを介して基質を含む第3の流体が供給される。そして、流路22aと流路23aとの合流領域において、第2の流体と第3の流体とが混合されて、分散相流体が形成される。分散相流体は、流路21aと交差する液滴生成領域24に到達すると、流路21aを介して供給される連続相流体によってせん断されて、液滴となる。
【0049】
ここで、ウイルスを封入した液滴を確率論的に生成すると、所定の数のウイルスが封入された液滴以外に、ウイルスが封入されていない液滴や所定の数以外のウイルスが封入された液滴が生成される。
【0050】
本実施形態に係る液滴収集ユニット1では、ウイルスに由来する酵素と基質とを反応させ、反応の結果得られる蛍光の情報に基づいて、所定の数のウイルスが封入された液滴を検出し、液滴に封入された微生物の数が所定の数である液滴と、それ以外の液滴とを分別する。すなわち、液滴収集ユニット1は、所定の数のウイルスが封入され、対応する強度の蛍光を示す(シグナル有)液滴を回収し、それ以外の(シグナル無)液滴(蛍光なし、及び、対応する強度以外の蛍光を示す液滴)と分別する。これにより、液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の数が既知の液滴を収集することができる。
【0051】
上述したように、本実施形態に係る液滴収集ユニット1は、マイクロ流路チップ20において、微生物を含む液滴を生成して、微生物に由来する酵素と基質との反応に基づいて液滴に封入された微生物の数を識別し、所定の数の微生物が封入された液滴を選択的に収集する。
【0052】
ここで、液滴収集ユニット1におけるマイクロ流路チップ20は、
図2に示す形状に限られず、液滴生成や、酵素反応などの条件に応じて適宜変更することができる。また、マイクロ流路チップ20における各流路の流路幅、流路長も液滴生成や、酵素反応などの条件に応じて適宜変更することができる。
【0053】
上述した構成を有する液滴収集ユニット1は、収集した液滴を利用するシステムに接合可能に形成することができる。
図4は、第1の実施形態に係るシステムの一例を説明するための図である。ここで、
図4においては、既知の数のウイルスを封入した液滴を収集する液滴収集ユニット1と、細胞を封入した液滴を収集する液滴収集ユニット2とを含むシステムを示す。
【0054】
かかるシステムでは、液滴に封入したウイルスをベクターとして用いて種々の因子を細胞内に導入するために、ウイルスを封入した液滴と、細胞を封入した液滴とを融合させる。例えば、
図4に示すように、上記システムは、液滴収集ユニット1によって収集した液滴(1個のウイルスが封入された液滴)と、液滴収集ユニット2によって収集した液滴(1個の細胞が封入された液滴)とを融合させる。
【0055】
本実施形態に係る液滴収集ユニット1は、ウイルスを封入した液滴の生成に確率論的な手法を用いるが、既知の数(例えば、1個)のウイルスが封入された液滴を選択的に分別することができる。したがって、液滴収集ユニット1を用いることにより、上記システムは、細胞が封入された液滴に対して、確実にウイルスが封入された液滴を融合させることができ、液滴の融合を効率良く行うことができる。また、液滴収集ユニット1は、既知の数のウイルスが封入された液滴を選択的に分別することができることから、細胞に対するウイルスの感染量を容易にコントロールすることが可能となる。
【0056】
なお、単に確率論的な手法により液滴を生成しただけの場合、所望する数(例えば、1個)のウイルスが封入された液滴以外にも、ウイルスが封入されていない液滴、及び、所望する数以外の数のウイルスが封入された液滴が混在することとなり、上記システムにおける液滴の融合を効率よく行うことができない。
【0057】
なお、上述した実施形態では、微生物として、ヘマグルチニンノイラミニダーゼを有するパラミクソウイルス科のウイルスを対象とする場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、表面又は内部に酵素を有し、当該酵素の反応によって光学的に検出することができる生成物を生成するものであればどのようなものでもよい。例えば、対象となる微生物としては、ヘマグルチニンエステラーゼを有するコロナウイルス科のウイルス、逆転写酵素を有するHIV(human immunodeficiency virus)などのウイルス、RNA依存RNAポリメラーゼを有するエボラウイルスなどのウイルスが挙げられる。また、対象となる微生物としては、大腸菌群や腸炎ビブリオ菌、カンピロバクター、エンテロバクター、バチルス属細菌などの細菌が挙げられる。
【0058】
ここで、液滴における酵素反応の検出実験の結果について、
図5及び
図6を用いて説明する。なお、
図5は、第1の実施形態に係る細菌由来の酵素(β-ガラクトシダーゼ)に関する実験結果を示す図である。また、
図6は、第1の実施形態に係るウイルス由来の酵素(ノイラミニダーゼ)に関する実験結果を示す図である。
【0059】
(実験例1:細菌由来の酵素に関する実験)
(使用試薬)
Phosphate Buffered Saline(PBS)(-):ナカライテスク社製
Fluorescein Di-β-D-galactopyranoside(FDG)(フルオレセイン):富士フイルム和光純薬社製
β-galactosidase(β-ガラクトシダーゼ):富士フイルム和光純薬社製
【0060】
(実験手順)
FDGを、濃度が100μMになるようにPBS(-)に添加して調製した。β-ガラクトシダーゼを、濃度が10pMになるようにPBS(-)に添加して調製した。フッ素系界面活性剤dSURF(Fluigent社製)をフッ素オイルHFE7500(3M)で希釈して0.5%dSURFを調整した。液滴生成マイクロ流路(Chipshop社製)の分散相2つのインレット(注入口)からFDG溶液と10pM β-ガラクトシダーゼをそれぞれ2μL/minで送液し、連続相のインレットから0.5%dSURFを20μL/minで送液することで液滴を生成した。なお、コントロール実験として、分散相の2つのインレットからFDG溶液とPBS(-)のみをそれぞれ2μL/minで送液し、連続相のインレットから0.5%dSURFを20μL/minで送液することで液滴を生成した。
【0061】
上記した手順により液滴を生成後、37℃、1時間インキュベーションし、蛍光顕微鏡で観察を行った結果を
図5に示す。なお、
図5では、上段にコントロール実験の結果を示し、下段にβ-ガラクトシダーゼに関する実験の結果を示す。また、
図5では、左側に各実験におけるインキュベーション後の液滴を明視野で観察した画像を示す。また、左側に各実験におけるインキュベーション後の液滴の蛍光を観察した画像を示す。
【0062】
図5の左側の明視野での画像に示すように、各実験において液滴が生成されていることが確認された。また、
図5の右側の下段の画像に示すように、β-ガラクトシダーゼ存在下では、液滴内の蛍光が確認された。一方、コントロール実験では、
図5の右側の上段の画像に示すように、液滴内に蛍光は確認されなかった。このように、β-ガラクトシダーゼによる酵素反応を利用することで、液滴内に細菌(例えば、大腸菌など)が封入されているか否かを判定することができる。
【0063】
(実験例2:ウイルス由来の酵素に関する実験)
(使用試薬)
1M Tris-HCl pH9.0:Nippon gene社製
4-MUNANA:sigma社製
Neuraminidase, Influenza A Virus, H1N1, Recombinant, Carrier-free(ノイラミニダーゼ):R&D systems社製
【0064】
(実験手順)
4-MUNANAを、濃度が1mMになるようにpH9.0 1M Tris-HClに添加して調製した。ノイラミニダーゼを、濃度が21μMになるようにpH9.0 1M Tris-HClに添加して調製した。フッ素系界面活性剤dSURF(Fluigent社製)をフッ素オイルHFE7500(3M)で希釈して0.5%dSURFを調整した。液滴生成マイクロ流路(Chipshop社製)の分散相2つのインレットから4-MUNANA溶液と21μMノイラミニダーゼをそれぞれ2μL/minで送液し、連続相のインレットから0.5%dSURFを30μL/minで送液することで液滴を生成した。なお、コントロール実験として、分散相の2つのインレットから4-MUNANA溶液と1M Tris-HClのみをそれぞれ2μL/minで送液し、連続相のインレットから0.5%dSURFを30μL/minで送液することで液滴を生成した。
【0065】
上記した手順により液滴を生成後、37℃、3時間インキュベーションし、蛍光顕微鏡で観察を行った結果を
図6に示す。なお、
図6では、上段にコントロール実験の結果を示し、下段にノイラミニダーゼに関する実験の結果を示す。また、
図6では、左側に各実験におけるインキュベーション後の液滴を明視野で観察した画像を示す。また、左側に各実験におけるインキュベーション後の液滴の蛍光を観察した画像を示す。
【0066】
図6の左側の明視野での画像に示すように、各実験において液滴が生成されていることが確認された。また、
図6の右側の下段の画像に示すように、ノイラミニダーゼ存在下では、液滴内の蛍光が確認された。一方、コントロール実験では、
図6の右側の上段の画像に示すように、液滴内に蛍光は確認されなかった。このように、ノイラミニダーゼによる酵素反応を利用することで、液滴内にウイルスが封入されているか否かを判定することができる。
【0067】
上述したように、酵素反応に基づいて発生する蛍光を検出することで、液滴に微生物が封入されているか否かを判定することができる。すなわち、液滴収集ユニット1は、微生物が封入された液滴と、微生物が封入されていない液滴とを分別することができる。そして、液滴収集ユニット1は、検出した蛍光の強度に基づいて、液滴に封入された微生物の数を分別する。
【0068】
ここで、1個の微生物が封入された液滴を分別する場合、蛍光が弱く通常の検出システムでは検出が難しくなる可能性がある。そこで、液滴収集ユニット1は、蛍光検出部15として、高感度カメラを適用することもできる。また、液滴収集ユニット1は、注入口からの送出液の流速を遅くし、イメージセンサにおける露光時間を長くすることで、検出感度をあげることができる。かかる場合には、例えば、制御機能11aは、液滴を生成するために必要な送出液の送出速度であり、かつ、最も遅い送出速度で送出液を送出するように、送液部12を制御する。また、検出機能11bは、蛍光検出部15におけるイメージセンサの露光時間が許容される範囲でできるだけ長くなるように、蛍光検出部15におけるシャッターを制御する。
【0069】
上述したように、第1の実施形態によれば、マイクロ流路チップ20は、微生物と、微生物に由来する酵素と反応する基質とを含む液滴を生成する。検出機能11bは、液滴における酵素と基質との反応を検出する。分別機能11cは、反応の検出結果に基づいて、液滴を分別する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の量が調製された液滴を収集することを可能にする。
【0070】
例えば、1ウイルスを検出する方法として、蛍光標識した抗体を使用したウイルス直接蛍光法が知られている。しかしながら、ウイルス直接蛍光法では、抗体を利用してウイルスを標識するため、ウイルスを利用した種々の解析や試験に対して標識物質による影響が生じてしまう。一方、本実施形態に係る方法では、ウイルスを標識することなく、ウイルスの数を検出することができ、ウイルスを利用した種々の解析や試験(例えば、1ウイルスゲノム解析や、薬剤耐性試験など)に対して影響を及ぼすことがない。
【0071】
また、例えば、ウイルスに由来する酵素によりウイルスの有無を検出する方法として、マイクロウェルを使用する方法が知られている。しかしながら、マイクロウェルを使用する方法では、ウイルスをオイルで封入するため、ウイルスの回収が難しく、ウイルス検出後に、検出したウイルスを種々の解析や試験に利用することが困難である。一方、本実施形態に係る方法では、マイクロ流路を用いた液滴によりウイルスを単離することができ、種々の解析や試験に対して容易に利用することができる。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、分別機能11cは、反応の検出結果に基づいて、液滴に含まれる微生物の量を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の量に応じた分別を行うことを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、分別機能11cは、反応の検出結果に基づいて、液滴に含まれる微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の数を定量することを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、検出機能11bは、酵素と基質との反応に基づく蛍光を検出する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、液滴内の微生物の有無を容易に検出することを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、分別機能11cは、酵素と基質との反応に基づく蛍光の強度に基づいて、液滴に含まれる微生物の数を判別し、判別結果に基づいて、液滴を分別する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、液滴内の微生物の数を容易に定量することを可能にする。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、分別機能11cは、マイクロ流路チップ20において生成された液滴を、誘電泳動によって分別する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、マイクロ流路内の液滴を容易に分別することを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、制御機能11aは、液滴の温度を調整する。したがって、第1の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、酵素と基質との反応を最適温度で実施することを可能にする。
【0078】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、単一種類の微生物の有無を検出して、微生物が封入された液滴を分別する場合について説明した。第2の実施形態では、複数種類の微生物を対象として、微生物が封入された液滴を分別する場合について説明する。
【0079】
第2の実施形態において、第2の注入口22から注入される第2の流体は、複数種の微生物を含む。ここで、第2の流体に含まれる複数の微生物は、有する酵素がそれぞれ異なる。また、各酵素は、反応する基質がそれぞれ異なる。なお、第2の流体における微生物の濃度は、第3の流体と混合されて分散相流体となった際に、微生物の種類を問わず、確率論的に所定の数(例えば、1個)の微生物が液滴に封入されるように濃度調製されたものである。
【0080】
また、第2の実施形態において、第3の注入口23から注入される第3の流体は、第2の流体に含まれる微生物が有する各酵素と反応する複数種類の基質を含む。なお、第3の流体における各基質の濃度は、第2の流体と混合されて分散相流体となった際に、それぞれ最適な濃度となるようにそれぞれ調整される。
【0081】
送液部12は、第1の実施形態と同様に、上記した第2の流体及び第3の流体をマイクロ流路チップ20に送出する。マイクロ流路チップ20に送出されたた第2の流体及び第3の流体は、混合されて分散相流体となり、液滴生成領域24において連続相流体によってせん断されることで液滴となる。
【0082】
ここで、第2の実施形態において生成される液滴は、微生物を含まずに複数の基質のみを含むもの、複数の微生物のうちいずれかの微生物と複数の基質とを含むもの、複数の微生物と複数の基質とを含むものとなる。
【0083】
第2の実施形態に係る検出機能11bは、蛍光検出部15による蛍光の検出の有無、及び、蛍光検出部15によって検出された蛍光の波長(或いは、スペクトル)と強度を検出する。すなわち、検出機能11bは、蛍光の検出の有無に基づいて液滴内の微生物の有無を検出する。また、検出機能11bは、蛍光の波長(或いは、スペクトル)と強度に基づいて、液滴内に封入された微生物の種類と数を検出する。
【0084】
第2の実施形態に係る分別機能11cは、検出機能11bによる検出結果に基づいて、液滴を分別する。具体的には、分別機能11cは、微生物の種類ごとに、所定の数(例えば、1個)の微生物が封入されている液滴を分別する。例えば、分別機能11cは、蛍光の波長(或いは、スペクトル)ごとに、所定の蛍光強度(例えば、1個の微生物が封入された場合に生じる蛍光強度)を示す液滴を回収するように、分別部16を制御する。
【0085】
ここで、第2の実施形態に係るマイクロ流路チップ20は、複数の回収口28を有し、複数の回収部17が各回収口28にそれぞれ接続される。また、第2の実施形態に係る分別部16は、微生物の種類ごとの液滴が、対応する回収口28の方向に選択的に移動可能となるように、電場の印加を変化可能に形成される。そして、分別機能11cは、微生物の種類ごとの液滴がそれぞれ異なる回収部17によって回収されるように、分別部16を制御する。
【0086】
上述したように、第2の実施形態によれば、蛍光の検出結果に応じて、複数の液滴を別々に分別する。したがって、第2の実施形態に係る液滴収集ユニット1は、同時に複数種類の微生物を検出して、分別することを可能にする。
【0087】
(その他の実施形態)
これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0088】
上述した実施形態では、1個の微生物(ウイルス)が封入された液滴を分別する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、2個以上の所望の数の微生物が封入された液滴を分別する場合でもよい。かかる場合には、第2の流体における微生物の濃度が調整される。そして、分別機能11cは、検出機能11bによる検出結果に基づいて、2個以上の所望の数に対応する蛍光強度を示す液滴が回収口28側に通流するように、分別部16を制御する。
【0089】
また、液滴収集ユニット1は、液滴に封入された微生物の数ごとに、液滴を分別することもできる。すなわち、分別機能11cは、判別結果に基づいて、液滴に含まれる微生物の数ごとに、液滴を分別する。かかる場合には、第2の実施形態と同様に、マイクロ流路チップ20が複数の回収口28を有し、複数の回収部17が各回収口28にそれぞれ接続される。そして、分別部16は、微生物の種類ごとの液滴が、対応する回収口28の方向に選択的に移動可能となるように、電場の印加を変化可能に形成される。そして、分別機能11cは、蛍光強度の違いに基づいて、封入された微生物の数が異なる液滴がそれぞれ異なる回収部17によって回収されるように、分別部16を制御する。
【0090】
また、上述した実施形態では、酵素反応によって生じた蛍光物質に基づく蛍光を検出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、酵素反応によって生じた蛍光物質に基づく発光を検出する場合でもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、誘電泳動によって液滴を分別する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、液滴を分別することが可能な手法であれば、どのような手法が用いられる場合でもよい。
【0092】
また、上述した実施形態では、収集した液滴を利用するシステムに接合可能に形成される液滴収集ユニットの例について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、収集した液滴を利用するシステムに接合可能に形成されていない液滴収集装置によって、上記した液滴収集方法が実行される場合でもよい。また、液滴収集装置は、例えば、上記した液滴収集方法を実行する構成以外に、収集した液滴を利用する構成を含む場合でもよい。例えば、液滴収集装置は、液滴に封入された微生物を利用した種々の解析や試験を行う構成を備えてもよい。かかる場合には、液滴収集装置に含まれる処理回路は、上述した制御機能11a、検出機能11b、分別機能11cのほか、分別機能11cによって分別された液滴に対する処理を実行する処理機能を実行する。すなわち、処理機能は、分別された液滴に封入された微生物を利用した解析や試験を制御する。なお、処理機能は、処理部の一例である。
【0093】
なお、
図1では、単一の処理回路11によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路11は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路11が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0094】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0095】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、液滴に封入された微生物の量が調製された液滴を収集することができる。
【0096】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
1 液滴収集ユニット
11a 制御機能
11b 検出機能
11c 分別機能
13 加温部
14 光源部
15 蛍光検出部
16 分別部
20 マイクロ流路チップ