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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177842
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】燃焼設備
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20221124BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/00 S
F23N5/24 109
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022135532
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】作部屋 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】片山 智樹
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003FA04
3K003FB03
3K003FC00
3K003GA03
(57)【要約】
【課題】 炉内における酸素濃度が大きく変化する場合にも、バーナーに供給する燃料ガスと燃焼用空気との割合を適切に制御し、良好な燃焼状態が得られるようにする。
【解決手段】 空気比制御システム50により、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用
空気Airとの割合を調整して、燃料ガスと燃焼用空気とを炉10内で燃焼させるにあたり、
酸素濃度センサー51により検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置52により空気比制御システムに出力し、バーナーに供給する燃料ガスと燃焼用空気との割合を調整する一方、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく変化する場合、検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、空気比制御システムによりバーナーに供給する燃料ガスと燃焼用空気との割合を維持させる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、前記のバーナーから燃料と燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させる燃焼設備において、炉内の酸素濃度を検知する酸素濃度センサーを設け、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整する一方、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく変化する場合には、前記の炉内における酸素濃度を検知する酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させることを特徴とする燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼設備において、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させた状態で、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御することを特徴とする燃焼設備。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼設備において、前記の酸素濃度センサーによって検知される酸素濃度が大きく変化する場合が、炉に設けられた扉を開閉させる場合であることを特徴とする燃焼設備。
【請求項4】
請求項3に記載の燃焼設備において、炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させる一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御することを特徴とする燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給管を通して供給される気体や液体の燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、前記のバーナーから燃料と燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させるようにした燃焼設備に関するものである。特に、炉の扉を開閉させる場合のように、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に変化して、炉内における酸素濃度が大きく変化する場合においても、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を適切に制御して、良好な燃焼状態が安定して得られるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼設備においては、燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気とを所定の割合にしてバーナーに供給し、このバーナーから炉内に燃料と燃焼用空気とを噴出させて燃焼させるようにしている。
【0003】
ここで、炉内において燃料と燃焼用空気とが所定の空気比になるようにして燃焼させるにあたり、特許文献1に示されるものにおいては、リジェネバーナーを用いた炉において、圧力、弁開度を実測してバーナーの実流量係数を決定することにより、バーナーの流量係数を流体の状態変化に合わせた実測値として取り扱えるようにして、炉内における空気比を一定に保持したまま燃焼量を制御するようにしたものが示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に示されるものにおいては、圧力、弁開度を実測してバーナーの実流量係数を決定することにより、バーナーの流量係数を流体の状態変化に合わせた実測値として取り扱うため、例えば、炉の扉を開閉させた場合のように、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に変化して、炉内における酸素濃度が大きく変化する場合に、速やかに対応して炉内における空気比を一定化させることは非常に困難であり、例えば、炉の扉を開けて、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に増加した場合において、炉内における空気比を一定化させるように、バーナーに供給する燃焼用空気の割合を減少させて、バーナーにおける空気比を大幅に減少させると、バーナーから未燃ガスが噴出されて、煤や一酸化炭素が発生しやすくなり、操業時における安全性が低下したり、製品や環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
また、従来においては、特許文献2に示されるように、燃焼バーナーを有する複数の燃焼帯を備えた連続式加熱炉の操業方法において、一部の燃焼帯のバーナーが消火又は低負荷状態で操業しているときに、当該燃焼帯での少なくとも酸素濃度の目標値を求め、当該目標値に基づいて上流側の各燃焼帯の空気比を制御することが示されており、各燃焼帯の燃焼排ガス出側に酸素濃度計及びCO濃度計を設け、一部の燃焼帯のバーナーが消火又は低負荷状態で操業しているときに、当該燃焼帯での少なくとも酸素濃度の目標値を求め、当該目標値に基づいて上流側の各燃焼帯の空気比を求め、求めた空気比に応じてCO濃度目標値及び酸素濃度目標値の何れかを設定し、設定された目標値と前記酸素濃度計及びCO濃度計の計測値とに基づいて酸素濃度及びCO濃度の何れかを制御することが示されている。
【0006】
しかし、特許文献2に示されるものにおいては、前記のように各燃焼帯の燃焼排ガス出側に酸素濃度計及びCO濃度計を設け、一部の燃焼帯のバーナーが消火又は低負荷状態で操業しているときに、当該燃焼帯での少なくとも酸素濃度の目標値を求めて、当該目標値に基づいて上流側の各燃焼帯の空気比を求めるため、前記の特許文献1に示される炉の扉を開閉させた場合と同様に、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に変化して、炉内におけ
る酸素濃度が大きく変化する場合に、速やかに対応して炉内における空気比を一定化させることは非常に困難であり、例えば、バーナーを複数設けた炉において、一部のバーナーの燃焼を停止し、燃料ノズルの熱変形を防止するための冷却用空気だけが炉内に流れ込むことによって、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に増加した場合において、炉内における空気比を一定化させるように、バーナーに供給する燃焼用空気の割合を減少させて、バーナーにおける空気比を大幅に減少させると、バーナーから未燃ガスが噴出されて、煤や一酸化炭素が発生しやすくなり、操業時における安全性が低下したり、製品や環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-103461号公報
【特許文献2】特開2001-26815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、このバーナーから炉内に燃料と燃焼用空気とを噴出させて、炉内において燃料と燃焼用空気とを適切な空気比にして燃焼させるようにした燃焼設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明は、前記のような燃焼設備において、炉の扉を開閉させる場合のように、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に変化して、炉内における酸素濃度が大きく変化する場合においても、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を適切に制御して、良好な燃焼状態が安定して得られるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、前記のバーナーから燃料と燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させる燃焼設備において、炉内の酸素濃度を検知する酸素濃度センサーを設け、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整する一方、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく変化する場合には、前記の炉内における酸素濃度を検知する酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させるようにした。
【0011】
そして、本発明の燃焼設備においては、前記のように炉内の酸素濃度を酸素濃度センサーによって検知し、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を前記の出力装置から前記の空気比制御システムに出力し、空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との量を調整するようにしたため、炉内における酸素濃度が変化しそうな場合等においても、前記の空気比制御システムにより、炉内における酸素濃度が変化しないように、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整することにより、炉内における空気比を所定の値にして安定した燃焼を行うことができる。
【0012】
一方、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく変化する場
合には、前記の炉内における酸素濃度を検知する酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させるようにしたたため、例えば、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合において、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃焼用空気の割合が大きく減少されるということがなく、燃料が完全燃焼されなくなって(つまり、不完全燃焼となり)、炉内から未燃ガスが外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするのが防止される。
【0013】
また、本発明の燃焼設備においては、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させた状態で、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御することができる。このように、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御させることにより、炉内における空気比を元通りの所定の値にして安定した燃焼を行うことができる。
【0014】
そして、本発明の燃焼設備において、前記の酸素濃度センサーによって検知される酸素濃度が大きく変化する場合としては、例えば、炉に設けられた扉を開閉させる場合がある。
【0015】
ここで、本発明の燃焼設備において、前記のように炉に設けられた扉を開閉させるにあたり、炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させる一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を元通りに制御させるようにする。このようにすると、炉に設けられた扉が開かれて、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合においても、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合が維持されるようになり、前記の空気比制御システムによりバーナーに供給する燃焼用空気の割合が大きく減少されるということがなく、燃料が完全燃焼されなくなって、バーナーから未燃ガスが噴出されて外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするのが防止される。一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御させることにより、炉内における空気比を扉を開ける前と同様の所定の値にして安定した燃焼を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における燃焼設備においては、前記のように炉内の酸素濃度を酸素濃度センサーによって検知し、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を前記の出
力装置から前記の空気比制御システムに出力して、空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との量を調整するようにしたため、炉内における酸素濃度が変化した場合等においても、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整することによって、炉内における空気比を所定の値にして安定した燃焼を行うことができる。一方、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく変化する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させるようにしたたため、例えば、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合に、バーナーに供給される燃焼用空気の割合が大きく減少されて、燃料が完全燃焼されなくなるということがなく、炉内から未燃ガスが外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするのが防止される。
【0017】
この結果、本発明における燃焼設備においては、炉の扉を開閉させる場合のように、炉内に侵入する侵入空気の量が大幅に変化して、炉内における酸素濃度が大きく変化する場合においても、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を適切に制御して、良好な燃焼状態が安定して得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る燃焼設備において、炉内の酸素濃度を酸素濃度センサーによって検知し、検知された炉内の酸素濃度を出力制御装置により空気比制御システムに出力し、空気比制御システムによりバーナーに供給する燃料である燃料ガスと燃焼用空気との割合を調整し、バーナーから燃料ガスと燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させる状態を示した概略説明図である。
図2】前記の実施形態における燃焼設備において、(A)は、炉に設けられた扉を開けて、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合に、酸素濃度センサーによって検知された酸素濃度を、出力制御装置により空気比制御システムに出力しないようにして、空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料ガスと燃焼用空気との割合を維持させて燃焼させる状態を示した概略説明図、(B)は、前記のように開いた状態にある扉を閉じて、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻るまでは、酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により空気比制御システムに出力しないようにして、空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料ガスと燃焼用空気との割合を維持させて燃焼させる状態を示した概略説明図である。
図3】前記の実施形態における燃焼設備において、炉に設けられた扉を開閉させるタイミングと、出力制御装置による空気比制御システムへの出力のON/OFFのタイミングと、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度の変化状態と、バーナーにおける空気比の状態を示したタイミング図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る燃焼設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る燃焼設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
この実施形態における燃焼設備においては、図1に示すように、開口部11の開閉を行なう扉12が設けられた炉10にバーナー20を設け、前記のバーナー20に、燃料供給管30を通して燃料である都市ガス等の燃料ガスGを供給すると共に、空気供給管40を通して燃焼用空気Airを供給し、このバーナー20から燃焼用空気Airと燃料ガスGとを炉10内に噴出させて燃焼させるようにしている。
【0021】
そして、この実施形態における燃焼設備においては、前記のようにバーナー20に、燃料供給管30を通して燃料ガスGを供給すると共に、空気供給管40を通して燃焼用空気Airを供給するにあたり、前記の燃料供給管30に設けた流量調整弁31と空気供給管40に設けた流量調整弁41とを空気比制御システム50により調整して、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を制御し、バーナー20における空気比を所定の値に調整して、バーナー20から燃料ガスGと燃焼用空気Airとを炉10内に噴出させて燃焼させるようにしている。
【0022】
また、この実施形態における燃焼設備においては、炉10内の酸素濃度を検知する酸素濃度センサー51を設け、この酸素濃度センサー51によって検知された炉10内の酸素濃度を、出力制御装置52により前記の空気比制御システム50に出力させるようにし、出力された炉10内の酸素濃度に基づいて、前記の空気比制御システム50により、燃料供給管30に設けた流量調整弁31と空気供給管40に設けた流量調整弁41とを調整して、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を制御し、バーナー20における空気比を所定の値に調整するようにしている。なお、図1においては、出力制御装置52を空気比制御システム50に接続させている状態を示している。
【0023】
そして、この実施形態における燃焼設備において、図2(A)に示すように、炉10の扉12が開かれると、炉10の開口部11を通して炉10外の外部空気Air’が大量に炉10内に流れ込んで、前記の酸素濃度センサー51によって検知される炉10内の酸素濃度が大幅に増加することになる。
【0024】
ここで、このように炉10内の酸素濃度が大幅に増加した場合には、前記のように炉10内の酸素濃度を出力制御装置52により空気比制御システム50に出力し、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を空気比制御システム50により制御して、炉10内における空気比が所定の値になるようにバーナー20に供給する燃焼用空気Airの量を大幅に減少させる結果となり、バーナー20に供給された燃料ガスGが完全燃焼されなくなって、炉10内に未燃ガスが残って外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするという問題が生じる。
【0025】
このため、この実施形態における燃焼設備において、炉10の扉12が開かれて、炉10の開口部11を通して炉10外の外部空気Air’が大量に炉10内に流れ込み、酸素濃度センサー51によって検知される炉10内の酸素濃度が大幅に増加する場合には、図2(A)及び図3に示すように、前記の出力制御装置52をOFFにして、酸素濃度センサー51によって検知された炉10内の酸素濃度を、空気比制御システム50に出力させないようにし、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を空気比制御システム50によって変更させないようにし、バーナー20における空気比を一定に固定するようにしている。このようにすると、炉10内の酸素濃度が大幅に増加した場合に、前記のようにバーナー20に供給する燃焼用空気Airの量が大幅に減少されるということがなく、バーナー20に供給された燃料ガスGが完全燃焼されなくなるのが防止される。なお、図2(A)及び後述する図2(B)においては、出力制御装置52と空気比制御システム50とが切断状態にあることを示している。
【0026】
また、図2(B)及び図3に示すように、前記のように開かれた炉10の扉12が閉じられて、炉10外の外部空気Air’が炉10内に流れ込むのが停止された状態であっても、前記の酸素濃度センサー51によって検知された炉10内の酸素濃度が高い状態にある場合には、前記の出力制御装置52をOFFにした状態で維持させ、酸素濃度センサー51によって検知された炉10内の酸素濃度を、空気比制御システム50に出力させないようにする。なお、このとき、酸素濃度センサー51は炉10内の酸素濃度の監視を続けている。
【0027】
そして、前記のように炉10の扉12が閉じられて、酸素濃度センサー51によって検知される炉10内の酸素濃度が所定の値に戻った場合には、図1及び図3に示すように、前記の出力制御装置52をONにして、前記の酸素濃度センサー51によって検知された炉10内の酸素濃度を、出力制御装置52により前記の空気比制御システム50に出力し、空気比の固定を解除して、この空気比制御システム50により、燃料供給管30に設けた流量調整弁31と空気供給管40に設けた流量調整弁41とを調整して、バーナー20に供給する燃料ガスGと燃焼用空気Airとの割合を制御し、バーナー20における空気比を所定の値に調整させるようにする。
【0028】
ここで、この実施形態における燃焼設備においては、前記の出力制御装置52をOFFにするタイミングが、図3に示すように、炉10の扉12を開けるタイミングと同時になるようにしたが、出力制御装置52をOFFにするタイミングを、炉10の扉12を開く直前や、炉10の扉12を開いた直後にすることも可能である。
【0029】
また、この実施形態における燃焼設備においては、酸素濃度センサー51によって検知される酸素濃度が大きく変化する場合として、炉10に設けられた扉12を開閉させる場合を示したが、酸素濃度センサー51によって検知される酸素濃度が大きく変化する場合はこれに限定されない。
【0030】
例えば、図示していないが、バーナーの燃料ノズルの外周に熱変形防止用の冷却空気供給管が設けられたバーナーを炉に複数設け、各バーナーにより燃焼を行うようになった燃焼設備において、各バーナーにおいて燃焼を行っている状態から、1本以上のバーナーにおける燃焼が停止されて、停止された各バーナーにおける燃料ノズルの外周における冷却空気供給管を通して大量の冷却用空気が炉内に供給されて、酸素濃度センサーによって検知される酸素濃度が大きく増加するような場合においても、前記の実施形態の場合と同様にして制御することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 :炉
11 :開口部
12 :扉
20 :バーナー
30 :燃料供給管
31 :流量調整弁
40 :空気供給管
41 :流量調整弁
50 :空気比制御システム
51 :酸素濃度センサー
52 :出力制御装置
Air :燃焼用空気
Air’ :外部空気
G :燃料ガス
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、前記のバーナーから燃料と燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させる燃焼設備において、炉内の酸素濃度を検知する酸素濃度センサーを設け、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整する一方、前記の炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との合を維持させる一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御することを特徴とする燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼設備において、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力させないようにするタイミングを、前記の扉を開く直前にしたことを特徴とする燃焼設備。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明に係る燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、燃料供給管を通して供給される燃料と、空気供給管を通して供給される燃焼用空気との割合を、空気比制御システムにより調整してバーナーに供給し、前記のバーナーから燃料と燃焼用空気とを炉内に噴出させて燃焼させる燃焼設備において、炉内の酸素濃度を検知する酸素濃度センサーを設け、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整する一方、前記の炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させる一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御するようにした。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
一方、前記の炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させるようにしたため、炉に設けられた扉が開かれて、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合においても、前記の空気比制御システムによって、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合が維持されるようになり、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃焼用空気の割合が大きく減少されるということがなく、燃料が完全燃焼されなくなって(つまり、不完全燃焼となり)、炉内から未燃ガスが外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするのが防止される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を元通りに制御させるようにしたため、炉内における空気比を元通りの所定の値にして安定した燃焼を行うことができる
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明における燃焼設備においては、前記のように炉内の酸素濃度を酸素濃度センサーによって検知し、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を前記の出力装置から前記の空気比制御システムに出力して、空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との量を調整するようにしたため、炉内における酸素濃度が変化した場合等においても、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を調整することによって、炉内における空気比を所定の値にして安定した燃焼を行うことができる。一方、前記の炉に設けられた扉を開けることにより、炉内に侵入する侵入空気の量が大きくなって、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加する場合には、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力せずに、前記の空気比制御システムにより、バーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を維持させる一方、前記の扉が閉じられて、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合に、前記の酸素濃度センサーによって検知された炉内の酸素濃度を、前記の出力制御装置により前記の空気比制御システムに出力して、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を制御するようにしたため、炉に設けられた扉が開けられて、酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が大きく増加した場合に、バーナーに供給される燃焼用空気の割合が大きく減少されて、燃料が完全燃焼されなくなるということがなく、炉内から未燃ガスが外部に排出されたり、煤や一酸化炭素が発生したりするのが防止されると共に、前記の酸素濃度センサーによって検知される炉内の酸素濃度が所定の値に戻った場合には、前記の空気比制御システムにより、前記のバーナーに供給する燃料と燃焼用空気との割合を元通りに制御させるようにしたため、炉内における空気比を元通りの所定の値にして安定した燃焼を行うことができる