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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177844
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】連結構造体、庇および建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20221124BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20221124BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20221124BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E04B1/58 505G
E04B7/02 501B
E04B1/24 Q
E04F10/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152774
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2018097119の分割
【原出願日】2018-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小原 泉
(72)【発明者】
【氏名】桂 大輔
(57)【要約】
【課題】連結されている構造体が温度変化によって長手方向に伸縮した場合において、連結部分への負荷を緩和すること
【解決手段】本発明の一実施形態における連結構造体は、第1方向に長手を有し、第1方向に垂直な方向の法線を有する第1面を含む第1板状部材と、第1板状部材とは離隔し、第1方向とは異なる第2方向に長手を有し、第2方向に垂直な方向の法線を有する第2面を含む第2板状部材と、第2板状部材とは離隔し、第1板状部材に結合され、第2面と平行な第3面を有する第3板状部材と、第2面および第3面に着脱可能に固定され、第2面に固定された部分と第3面に固定された部分との間に屈曲部を有する連結部材であって、屈曲部が第1面および第2面の双方に垂直な面で切断した断面において屈曲形状を有する連結部材を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長手を有し、前記第1方向に垂直な方向に沿った法線を有する第1面を含む第1板状部材と、
前記第1板状部材とは離隔し、前記第1方向とは異なる第2方向に長手を有し、前記第2方向に垂直な方向に沿った法線を有する第2面を含む第2板状部材と、
前記第2板状部材とは離隔し、前記第1板状部材に結合され、前記第2面と平行な第3面を有する第3板状部材と、
前記第2面および前記第3面に着脱可能に固定された連結部材であって、前記第2面に固定された部分と前記第3面に固定された部分との間に屈曲部を含み、前記屈曲部は第1板部と、第2板部と、前記第1板部と前記第2板部との境界の第1側稜とを含み、前記屈曲部が前記第1面および前記第2面の双方に垂直な面で切断した断面において前記第1側稜が頂点となる屈曲形状を有する、連結部材と、を有し、
前記屈曲部は、前記屈曲形状において少なくとも1つの頂点を有し、
前記少なくとも1つの頂点は、第1頂点を含み、
前記第1側稜は、前記第1頂点を通り、
前記連結部材が前記第2板状部材および前記第3板状部材に固定された状態で、前記屈曲部が変形することによって、前記第2板状部材と前記第3板状部材との距離を可変とする、連結構造体。
【請求項2】
前記第2面は、前記第1方向に沿った法線を有する、請求項1に記載の連結構造体。
【請求項3】
前記第2面と前記第3面とは、同一平面上に配置されている、請求項1または請求項2に記載の連結構造体。
【請求項4】
前記屈曲部は第3板部と、前記第2板部と前記第3板部との境界の第2側稜とをさらに含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項5】
前記第1側稜は、前記第1方向および前記第2方向の双方に対して垂直な第3方向に沿っている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項6】
前記屈曲部は、前記屈曲形状において少なくとも2つの頂点を有し、
前記少なくとも2つの頂点は、前記第1頂点および第2頂点を含み、
前記第2側稜は、前記第2頂点を通り、
前記第1側稜および前記第2側稜が前記第1方向および前記第2方向の双方に対して垂直な第3方向に沿っている、請求項4に記載の連結構造体。
【請求項7】
前記連結部材のうち前記第2面に接触する部分および前記第3面に接触する部分は、前記屈曲部よりも厚い、請求項1から請求項6のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項8】
前記連結部材は、前記第2面および前記第3面に対して高力ボルトにより固定されている、請求項1から請求項7のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項9】
前記第2板状部材と前記第3板状部材との距離は、前記屈曲部の弾性変形により変化する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項10】
少なくとも1つの前記第1板状部材の両面に、前記第3板状部材が結合され、
前記第1板状部材の両面のそれぞれに結合された前記第3板状部材に対して、前記連結部材を介して前記第2板状部材が支持される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の連結構造体。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の連結構造体と、
複数の前記第1板状部材および複数の前記第2板状部材に支持される屋根材と、
を含む庇。
【請求項12】
請求項11に記載の庇と、
複数の前記第1板状部材が固定される建物躯体と、
を含み、
前記第1板状部材のそれぞれに結合された前記第3板状部材が、前記連結部材を介して、前記第2板状部材の長手方向の両端部のそれぞれを支持する、建築物。
【請求項13】
請求項5または6に記載の連結構造体と複数の前記第1板状部材および複数の前記第2板状部材に支持される屋根材とを含む庇と、
複数の前記第1板状部材が固定される建物躯体と、
を含み、
前記第1板状部材のそれぞれに結合された前記第3板状部材が、前記連結部材を介して、前記第2板状部材の長手方向の両端部のそれぞれを支持し、
前記第3方向は鉛直下方向であり、
前記第2板状部材は、鉛直下側から支持されない、建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体を連結する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの建築物には、荷物等の搬入および搬出を行うための開口部分が設けられている。この開口部分の上方には、庇が設けられている場合がある。建築物の一面側全体に開口部分が設けられている場合には、庇は、建築物の一面側に沿って配置されて非常に長い構造を有する。このような構造を有する庇は、長手方向に複数の梁が連結されることによって実現される。
【0003】
温度変化による梁の伸縮により庇が長手方向に大きく変形するため、負荷が集中しやすい梁の連結部分に損傷が生じる場合がある。このような損傷が生じないようにするため、梁を連結する部分の負荷を低減する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、小梁が長手方向に移動することを許容する構造が開示されている。これによって、温度変化により小梁の伸縮が生じても連結部分に負荷がかかりにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-69889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、小梁は、長手方向に対して一定範囲で自由に動くことが可能である。そのため、温度変化とは関係なく小梁が動いてしまう可能性がある。小梁の移動が規制される限界は規制ピンのみで規定されるため、その部分に負荷が集中する場合もある。また、大梁に接続された支持プレートによって両側から挟まれた小梁がスライド移動するように構成されているため、支持プレートと小梁との位置関係の精度が求められる。例えば、支持プレートに対して小梁が傾いたり、支持プレートが小梁に対して大梁の長手方向にずれたりした場合には、小梁は支持プレートと大きな摩擦を生じることになり移動が困難になる。そのため、結果的に支持プレート等の連結部分を変形させるような負荷が発生することがあった。
【0006】
本発明の目的の一つは、連結されている構造体が温度変化によって長手方向に伸縮した場合において、連結部分への負荷を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1方向に長手を有し、前記第1方向に垂直な方向に沿った法線を有する第1面を含む第1板状部材と、前記第1板状部材とは離隔し、前記第1方向とは異なる第2方向に長手を有し、前記第2方向に垂直な方向に沿った法線を有する第2面を含む第2板状部材と、前記第2板状部材とは離隔し、前記第1板状部材に結合され、前記第2面と平行な第3面を有する第3板状部材と、前記第2面および前記第3面に着脱可能に固定された連結部材であって、前記第2面に固定された部分と前記第3面に固定された部分との間に屈曲部を含み、前記屈曲部が前記第1面および前記第2面の双方に垂直な面で切断した断面において屈曲形状を有する、連結部材と、を備える連結構造体が提供される。
【0008】
前記第2面は、前記第1方向に沿った法線を有してもよい。
【0009】
前記第2面と前記第3面とは、同一平面上に配置されてもよい。
【0010】
前記屈曲部は、前記屈曲形状において曲線部分を含んでもよい。
【0011】
前記屈曲部は、前記屈曲形状において円弧に沿って屈曲した形状を含んでもよい。
【0012】
前記屈曲形状において屈曲した部分の曲率半径は、前記屈曲部の厚さの2倍以上であってもよい。
【0013】
前記屈曲部は、前記屈曲形状において少なくとも1つの頂点を有してもよい。
【0014】
前記屈曲部は、前記頂点を通る側稜を有し、当該側稜が前記第1方向および前記第2方向の双方に対して垂直な方向に沿ってもよい。
【0015】
前記連結部材のうち前記第2面に接触する部分および前記第3面に接触する部分は、前記屈曲部よりも厚くてもよい。
【0016】
前記連結部材は、亜鉛めっき鋼板を含み、前記連結部材のうち、前記第2面が接触する領域の少なくとも一部は、リン酸亜鉛を含む表面を有し、前記連結部材のうち、前記第3面が接触する領域の少なくとも一部は、リン酸亜鉛を含む表面を有してもよい。
【0017】
前記連結部材は、前記第2面および前記第3面に対して高力ボルトにより固定されてもよい。
【0018】
前記連結部材は、弾性変形により前記第2板状部材と前記第3板状部材との距離を可変としてもよい。
【0019】
少なくとも1つの前記第1板状部材の両面に、前記第3板状部材が結合され、前記第1板状部材の両面のそれぞれに結合された前記第3板状部材に対して、前記連結部材を介して前記第2板状部材が支持されてもよい。
【0020】
前記第1板状部材および前記第2板状部材は、H形鋼またはI形鋼のウェブであり、前記第3板状部材は、前記ウェブおよびフランジの双方と結合してもよい。
【0021】
また、本発明の一実施形態によれば、上記連結構造体と、前記第1板状部材および前記第2板状部材に支持される屋根材と、を含む庇が提供される。
【0022】
また、本発明の一実施形態によれば、上記庇と、複数の前記第1板状部材が固定される建物躯体と、を含み、前記第1板状部材のそれぞれに結合された前記第3板状部材が、前記連結部材を介して、前記第2板状部材の長手方向の両端部のそれぞれを支持する、建築物が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、連結されている構造体が温度変化によって長手方向に伸縮した場合において、連結部分への負荷を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態における庇を有する建築物を説明する図である。
図2】本発明の第1実施形態における庇に用いられる梁構造を説明する図である。
図3】本発明の第1実施形態における大梁と小梁とを連結する部分の構成を説明する図である。
図4図3におけるA1-A2切断線での断面を説明する模式図である。
図5】本発明の第1実施形態における連結部材を説明する図である。
図6】本発明の第1実施形態における連結部材が変形した状態(離間距離増加時)を説明する図である。
図7】本発明の第1実施形態における連結部材が変形した状態(離間距離減少時)を説明する図である。
図8】本発明の第2実施形態における連結部材を説明する図である。
図9】本発明の第3実施形態における連結部材を説明する図である。
図10】本発明の第4実施形態における連結部材を説明する図である。
図11】本発明の第5実施形態における連結部材を説明する図である。
図12】本発明の第6実施形態における連結部材を説明する図である。
図13】本発明の第7実施形態における庇に用いられる梁構造を説明する図である。
図14】本発明の第8実施形態における庇を有する建築物を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0026】
<第1実施形態>
[1.概要]
図1は、本発明の第1実施形態における庇を有する建築物を説明する図である。第1実施形態における庇1は、倉庫等の建築物1000の搬入出口の上部に設けられる。庇1は、梁構造および吊り材90によって支持された屋根材80を含む。梁構造は、大梁10-1、10-2、10-3、10-4(以下、それぞれを区別しない場合には、大梁10という)および小梁20-1、20-2、20-3(以下、それぞれを区別しない場合には、小梁20という)を含む。
【0027】
ここで、以下の説明で用いる第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3を定義する。第1方向D1は、建築物1000から庇1が延びる方向であり、大梁10の長手方向に対応する。第2方向D2は、建築物1000に沿って庇1が拡がる方向であり、小梁20の長手方向に対応する。第3方向D3は、鉛直下方に対応する。この例では、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3は、互いに垂直の関係にある。
【0028】
庇1において温度変化が生じると、大梁10および小梁20が、熱膨張係数に応じて伸縮する。大梁10および小梁20は、いずれも同じ材料である。そのため、長手方向となる第2方向D2において、庇1の変形が相対的に大きくなる。ここで、大梁10は、建築物1000側では柱などの建物躯体に結合され、その位置はほぼ固定される。したがって、大梁10は、建築物1000側では温度変化によって位置の変化がほとんど生じない。一方、小梁20が温度変化により第2方向D2に沿って伸縮する。
【0029】
なお、大梁10も、自身が固定された建築物1000側を基準として、温度変化により第1方向D1に沿って伸縮する。その結果、片持ち梁となる大梁10において、建築物1000とは反対側の端部は、第1方向D1に位置の変化を生じ、また、力が加われば反りによって第2方向D2に位置の変化が生じる場合もある。
【0030】
このように、庇1は、建築物1000に近い部分よりも建築物1000から遠い部分ほど、温度変化により変形しやすい。また、庇1は、建築物1000から遠い部分ほど、建築物1000の影に入りにくいため、日照に起因した温度変化が大きくなるため、さらに変形が大きくなる。庇1の変形が大きくなるほど、大梁10と小梁20との連結部分などに対し、局所的な負荷が生じる。
【0031】
本発明の第1実施形態においては、大梁10、小梁20、およびこれらを接続する連結部材50を含む連結構造体により、温度変化による庇1の変形が抑制される。その結果として局所的な負荷が低減される。以下、庇1の梁構造および連結構造体について、具体的に説明する。
【0032】
[2.庇の梁構造]
図2は、本発明の第1実施形態における庇に用いられる梁構造を説明する図である。複数の大梁10(10-1、10-2、10-3、10-4)は、それぞれ、建築物1000の建物躯体である柱95-1、95-2、95-3、95-4に固定され、第1方向D1に長手を有するように配置されている。複数の小梁20(20-1、20-2、20-3)は、それぞれ2つの大梁10に連結部材50を介して支持され、第2方向D2に長手を有するように配置されている。小梁20-1は、大梁10-1に対して連結部材50-1を介して連結され、大梁10-2に対して連結部材50-2を介して連結されている。小梁20-2は、大梁10-2に対して連結部材50-3を介して連結され、大梁10-3に対して連結部材50-4を介して連結されている。小梁20-3は、大梁10-2に対して連結部材50-5を介して連結され、大梁10-4に対して連結部材50-6を介して連結されている。この例は、連結部材50-1、50-2、・・・、50-6のそれぞれを区別しない場合には、以下、連結部材50という。
【0033】
[3.連結構造体]
続いて、図2に示す円CA部分の連結構造体を、矢印AXに沿って見たときの図に対応する図3を用いて、連結部材50を介して大梁10と小梁20とが連結される構造を説明する。また、この連結構造体を図3におけるA1-A2切断線での断面を示す図4を用いて説明する。
【0034】
図3は、本発明の第1実施形態における大梁と小梁とを連結する部分の構成を説明する図である。図4は、図3におけるA1-A2断面を説明する模式図である。図3、4に示すように、この例では、大梁10および小梁20は、この例では、いずれもH形鋼である。小梁20は、ウェブ21、上部フランジ23および下部フランジ25を含む。ウェブ21は、第2方向D2の長手を有し、第1方向D1に沿った法線を有する面を含む板状部材である。大梁10は、ウェブ11、上部フランジ13および下部フランジ15を含む。ウェブ11は、第1方向D1に長手を有し、第2方向D2に沿った法線を有する面を含む板状部材である。屋根材80は、上部フランジ13、23上に配置されている。そのため、上部フランジ13と上部フランジ23とは、上面が同じ高さになるように配置されている。この例では、下部フランジ15と下部フランジ25とは同じ高さではないが、同じ高さになっていてもよい。
【0035】
大梁10には、第1方向D1の法線を有する面を含むガゼットプレート30が結合されている。ガゼットプレート30は、亜鉛めっき鋼板であり、リブ部31と接合部33とを含む板状部材である。リブ部31は、ガゼットプレート30のうち、上部フランジ13と下部フランジ15とに挟まれた領域に配置された部分に対応し、ウェブ11、上部フランジ13および下部フランジ15に溶接等で結合されている。接合部33は、ガゼットプレート30のうち、上部フランジ13と下部フランジ15とに挟まれる領域よりも外側に配置された部分に対応する。接合部33は、小梁20のウェブ21の表面と平行な表面を有し、この例では、接合部33の表面は、ウェブ21の表面と同一平面上に配置されている。ウェブ21は、大梁10およびガゼットプレート30とは離隔して配置されている。図においてウェブ21と接合部33との離間距離はSLで示した。
【0036】
連結部材50は、亜鉛めっき鋼板であり、屈曲部51および接合部52、53を含む。接合部52は、ウェブ21と接触する部分であり、高力ボルト59を用いた摩擦接合によってウェブ21に固定されている。接合部53は、接合部33に接触する部分であり、高力ボルト59を用いた摩擦接合によって接合部33に固定されている。これによって、連結部材50は、ウェブ21および接合部33に対して着脱可能に固定されている。連結部材50のうち、ウェブ21および接合部33と接触する部分の少なくとも一部は、リン酸塩処理が施されて、表面にリン酸亜鉛の被膜が形成されている。なお、リン酸塩処理に代えて、粗面化処理が施されていてもよい。
【0037】
接合部52は、ウェブ21の上下方向(第3方向D3)に対して、中央に配置されることが望ましい。また、接合部53についても、ウェブ11の上下方向(第3方向D3)に対して、中央に配置されることが望ましい。一方、図3に示すように、ウェブ11とウェブ21との上限方向の中心位置がずれている場合、双方の条件を同時に満たすことができないことになるが、この場合でも、いずれか一方の条件を満たすことが望ましい。また、ウェブ11に対して両面側に配置される構成(ガゼットプレート30、連結部材50、およびウェブ21)は、それぞれウェブ11に対して面対称に配置されることが望ましい。
【0038】
屈曲部51は、接合部52と接合部53との間に配置されている。連結部材50の構造について、図5を用いて詳細に説明する。
【0039】
図5は、本発明の第1実施形態における連結部材を説明する図である。連結部材50は、この例では、一枚の板状部材が折り曲げられることによって、上述したように、屈曲部51および接合部52、53を含むように製造される。接合部52および接合部53には、高力ボルト59が挿入される貫通孔58が設けられている。屈曲部51は、板部511、512、513を含む。板部511は、接合部52、53と平行な面を有し、接合部52、53との間から第1方向D1(ここでは建築物1000から離れる方向)にずれた位置に配置されている。板部512は、板部511と接合部52とを接続する。板部513は、板部511と接合部53とを接続する。この例では、板部511と板部512との境界に相当する側稜Se1、および板部511と板部513との境界に相当する側稜Se2とが、いずれも第3方向D3に沿うように、板部511、512、513が配置されている。側稜Se1、Se2は、図4に示す断面形状では頂点に対応する。
【0040】
なお、側稜Se1、Se2は、板部511、512、513は折り曲げられた部分に対応するため、厳密には境界に相当する部分が曲面を有している場合がある、その場合には実質的に角となる部分(例えば、曲率が最も小さい部分)が側稜として解釈されればよい。
【0041】
このように配置された結果、屈曲部51は、接合部52、53から第1方向D1に屈曲した領域を含む。言い換えると、接合部52が接合されたウェブ21の表面と、接合部53が接合された接合部33と結合するウェブ11の表面との双方に垂直な面(すなわち、第1方向D1および第2方向D2を含む面)で切断した断面(図4に対応)において、屈曲部51は、屈曲形状を有している。この例では、上記の条件を満たすどの断面であっても、同じ屈曲形状を有している。
【0042】
屈曲部51は、このような屈曲形状を有することで、第2方向D2に沿った力に対して変形する。屈曲部51の変形により、接合部52(ウェブ21)と接合部53(接合部33)との距離を可変とする。この変形は、弾性変形によって実現されることが望ましいが、塑性変形が含まれていてもよい。
【0043】
一方、屈曲部51は、第3方向D3への力に対してほとんど変形しない。そのため、連結部材50は、第3方向D3への力、すなわち屋根材80等を含む庇1の荷重のような剪断力については、小梁20から大梁10に伝達することができる。特に、上述のように側稜Se1、Se2の向きを制御することで、第3方向D3への力に対する屈曲部51の変形を効果的に抑制することができる。
【0044】
ここで、図3、4においては、大梁10(10-3)の両側に小梁20(20-2、20-3)が配置されている。そのため、ウェブ11の両側にガゼットプレート30が配置され、ガゼットプレート30(接合部33)のそれぞれに、連結部材50(50-4、50-5)が接続されている。なお、庇1の長手方向の両端部に配置された大梁10-1、10-4については、片側にのみ小梁20が存在するため、ウェブ21の一方側のみにガゼットプレート30が配置されればよいが、両側に配置されていてもよい。以上が、連結構造体についての説明である。
【0045】
[4.連結構造体の作用]
続いて、図4に示す連結構造体の状態に対して、温度が低下して小梁20が収縮した場合、および温度が上昇して小梁20が伸張した場合の連結構造体の作用を説明する。
【0046】
図6は、本発明の第1実施形態における連結部材が変形した状態(離間距離増加時)を説明する図である。図6は、温度低下に伴って小梁20が第2方向D2に沿って収縮した場合の例であり、ウェブ21が接合部33から離れる方向に移動している。このとき、接合部33とウェブ21との離間距離がSLからSLeに増加し、屈曲部51は、第2方向D2の力を受けて屈曲した部分の角度の変化等により変形する。上記の屈曲した部分の角度とは、接合部52と板部512との角度、板部512と板部511との角度、板部511と板部513との角度、および板部513と接合部53との角度に対応する。この変形によって、連結構造体全体として受ける負荷が緩和される。
【0047】
図7は、本発明の第1実施形態における連結部材が変形した状態(離間距離減少時)を説明する図である。図7は、温度上昇に伴って小梁20が第2方向D2に沿って伸張した場合の例であり、ウェブ21が接合部33に近づく方向に移動している。このとき、接合部33とウェブ21との離間距離がSLからSLnに減少し、屈曲部51は、第2方向D2の力を受けて屈曲した部分の角度の変化等により変形する。この変形によって、連結構造体全体として受ける負荷が緩和される。
【0048】
このとき、大梁10についても温度変化により伸縮することになるが、庇1の長手方向の伸縮ではない。したがって、その影響は小さい。なお、隣接する大梁10(例えば、大梁10-1と大梁10-2)において温度の変化が異なり、それぞれの伸縮量が異なった場合には、ウェブ21に対して接合部33が第1方向D1に沿って移動することになる。この場合、接合部33とウェブ21とが平行な関係ではなくなることもあるが、屈曲部51の変形によって、連結構造体が受ける負荷は緩和される。
【0049】
このように、本発明の第1実施形態における連結部材50を用いた連結構造体によれば、庇1に温度変化が生じても屈曲部51の変形により、連結構造体全体が受ける負荷を緩和することができる。また、庇1における温度変化に偏りがあった場合でも、連結構造体全体が受ける負荷を緩和することもできる。
【0050】
<第2実施形態>
第1実施形態において屈曲部51は、側稜Se1、Se2を含む形状であったが、より少ない側稜を含む形状であってもよい。
【0051】
図8は、本発明の第2実施形態における連結部材を説明する図である。図8は、第1実施形態における図4に示す断面に対応して、第2実施形態に示す連結部材50Aを断面で示した図である。屈曲部51Aは、互いに接続された板部512Aおよび板部513Aを含み、第1実施形態の板部511に対応する構成を有していない。屈曲部51Aは、板部512Aと板部513Aの境界に相当する側稜Se3を含み、第1実施形態における屈曲部51よりも側稜の数が少ない。このような屈曲形状を有する連結部材50Aであっても、第1実施形態の連結部材50と同様な効果を有する。
【0052】
<第3実施形態>
第1実施形態において屈曲部51は、平面状の板部を組み合わせた屈曲形状であったが、曲面状の板部を用いた形状であってもよい。図4のような断面で考えた場合には、屈曲形状に曲線部分が含まれてもよい。なお、曲面状の板部と平面状の板部とが併用されてもよい。
【0053】
図9は、本発明の第3実施形態における連結部材を説明する図である。図9は、第1実施形態における図4に示す断面に対応して、第3実施形態に示す連結部材50Bを断面で示した図である。屈曲部51Bは、曲面状の板部が用いられ、ここではCを中心とした円弧に沿って屈曲した形状を有する。この円弧は、曲率半径rを有する。この曲率半径rは、屈曲部51Bにおける厚さtcの2倍以上であることが望ましい。このような屈曲形状を有する連結部材50Bであっても、第1実施形態の連結部材50と同様な効果を有する。なお、この曲率半径rが適用される対象は、円弧に沿って屈曲した部分のみに限らず、その他の形状に沿って屈曲した部分において適用されてもよい。すなわち、屈曲部の位置によって曲率半径rが異なる場合もある。この場合において、屈曲部は、全ての位置においても厚さtcの2倍以上の曲率半径rを有する屈曲形状を有してもよい。
【0054】
<第4実施形態>
第2実施形態の屈曲部51Aは、第1実施形態の屈曲部51よりも少ない側稜を有していたが、さらに多くの側稜を有していてもよい。さらに、屈曲部の一部がウェブ21と接合部33との間に存在してもよい。
【0055】
図10は、本発明の第4実施形態における連結部材を説明する図である。図10は、第1実施形態における図4に示す断面に対応して、第4実施形態に示す連結部材50Cを断面で示した図である。図10に示すように、屈曲部51Cは、3つの側稜Se4、Se5、Se6を含む。ウェブ21と接合部33とを結ぶ領域に対して、側稜Se4、Se5と側稜Se6とは反対側に配置されている。すなわち、屈曲部51Cが、ウェブ21と接合部33とを結ぶ領域と交差している。このような屈曲形状を有する連結部材50Cであっても、第1実施形態の連結部材50と同様な効果を有する。
【0056】
<第5実施形態>
第1実施形態の連結部材50は、屈曲部51および接合部52、53の厚さがいずれも同じであったが、一部の厚さが異なっていてもよい。
【0057】
図11は、本発明の第5実施形態における連結部材を説明する図である。図11は、第1実施形態における図4に示す断面に対応して、第5実施形態に示す連結部材50Dを断面で示した図である。図11に示すように、屈曲部51Dは、板部511D、512D、513Dを含む。屈曲部51D(板部511D、512D、513D)の厚さt1は、ウェブ21および接合部33に接触する部分に対応する接合部52、53の厚さt2よりも薄い。この構成により、連結部材50Dとウェブ21との接合強度、および連結部材50Dと接合部33との接合強度を保ちつつ、屈曲部51Dが変形しやすい構造を実現することもできる。なお、t1の厚さを有する部分は、屈曲部51Dの一部のみであってもよい。例えば、側稜を含む一部の領域のみが薄くなっていてもよいし、板部の一部の領域が薄くなっていてもよい。
【0058】
<第6実施形態>
第1実施形態の連結部材50では、屈曲部51は、ウェブ21および接合部33に対して、接合部52、53と同じ側に配置されていたが、異なる側に配置されてもよい。
【0059】
図12は、本発明の第6実施形態における連結部材を説明する図である。図12は、第1実施形態における図4に示す断面に対応して、第6実施形態に示す連結部材50Eを断面で示した図である。連結部材50Eは、屈曲部51Eおよび接合部52E、53Eを含む。接合部52E、53Eは、それぞれ第1実施形態とは反対側の面でウェブ21および接合部33に接触する。すなわち、接合部52E、53Eは、ウェブ21および接合部33のうち建築物1000側の面に接触している。一方、屈曲部51Eは、第1実施形態と同様に、建築物1000から離れる方向に屈曲する。結果的には、第4実施形態と同様に、屈曲部51Eが、ウェブ21と接合部33とを結ぶ領域と交差している。このような屈曲形状を有する連結部材50Eであっても、第1実施形態の連結部材50と同様な効果を有する。
【0060】
なお、接合部52E、53Eのうち、いずれか一方が、第1実施形態と同様な形態であってもよい。例えば、第6実施形態のように接合部52Eとウェブ21とが固定され、第1実施形態のように接合部53と接合部33とが接合されてもよい。この場合、接合部52Eと接合部53とが同一平面上に配置されなくてもよい。また、接合部52Eと接合部53とが同一平面上に配置され、ウェブ21と接合部33とが同一平面上に配置されなくてもよい。
【0061】
<第7実施形態>
第1実施形態における庇1の梁構造では、小梁20が大梁10の略先端部分に1列に配置されていたが、2列以上に配置されていてもよい。
【0062】
図13は、本発明の第6実施形態における庇に用いられる梁構造を説明する図である。図13は、第1実施形態における図2に示す図に対応して、第6実施形態に示す庇1Fの梁構造を示した図である。庇1Fでは、大梁10(10F-1、10F-2、10F-3、10F-4)の略中央部分において、さらに小梁20(20-1m、20-2m、20-3m)および連結部材50(50-1m、50-2m、・・・、50-6m)が配置されている。そのため、大梁10の略中央部分においても、ガゼットプレート30に相当する構成が結合されている。
【0063】
連結部材50-1m、50-2m、・・・、50-6mは、連結部材50-1、50-2、・・・、50-6に対して同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。異なる構成である場合には、例えば、屈曲部51の形状が異なっていてもよい。これによって、それぞれの屈曲部51は、同一の力が加えられても変形する量が異なるように構成されてもよい。
【0064】
<第8実施形態>
上記の実施形態の梁構造は、庇とは異なる構造物にも適用することができる。特に、日照を受ける構造体に適用されることが望ましい。第8実施形態では、この梁構造を建築物の屋根に適用した場合について例示する。
【0065】
図14は、本発明の第8実施形態における庇を有する建築物を説明する図である。第8実施形態における建築物1000Gは、大梁10Gおよび小梁20Gを含む梁構造によって支持された屋根材80Gを含む。この大梁10Gと小梁20Gとの連結関係は、上記実施形態における大梁10と小梁20との連結関係と同様である。すなわち、上記実施形態と同様に、大梁10Gは建築物1000Gの建物躯体に固定され、小梁20Gは大梁10Gに連結部材50(図示略)を介して支持される。
【0066】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一実施形態は、以下のように様々な形態に変形することもできる。また、上述した実施形態および以下に説明する変形例は、それぞれ互いに組み合わせて適用することもできる。
【0067】
(1)上述した実施形態では、連結部材50は、ウェブ21および接合部33に対して、建築物1000に対して反対側に配置されていたが、建築物1000側に配置されてもよい。また、2つの連結部材50が、ウェブ21および接合部33に対して両面側から挟み込むように配置されてもよい。このとき、ウェブ11を介して隣り合って配置される連結部材50は、同じ形態で配置されてもよいし、異なる形態(一方が建築物1000側、他方が建築物1000に対して反対側)で配置されてもよい。
【0068】
(2)上述した実施形態では、ガゼットプレート30は、リブ部31と接合部33とを含んでいたが、リブ部31と接合部33とが共通に構成されてもよい。この場合には、ガゼットプレート30は、上部フランジ13と下部フランジ15とに挟まれた領域のみに存在するため、連結部材50の接合部53は、上部フランジ13と下部フランジ15とに挟まれた領域において、ガゼットプレート30に固定される。
【0069】
(3)上述した実施形態では、大梁10および小梁20は、ウェブに対して上下にフランジが結合されたH形鋼であったが、I形鋼、T形鋼、Z形鋼、溝形鋼、山形鋼、平鋼など、ウェブに相当する平面を有していれば、他の形状の鋼材であってもよい。
【0070】
(4)上述した実施形態では、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3は、互いに垂直な関係であったが、それぞれが異なる方向であれば、必ずしも垂直な関係でなくてもよい。
【0071】
(5)上述した実施形態では、連結部材50は、ウェブ21および接合部33に対して、高力ボルト59を用いた摩擦接合によって、着脱可能に固定されていたが、支圧接合など別の接合方法によって固定されていてもよい。
【0072】
(6)上述した実施形態では、ガゼットプレート30は、大梁10のウェブ11、上部フランジ13および下部フランジ15に結合していたが、少なくともいずれか1つと結合していればよい。例えば、ガゼットプレート30は、ウェブ11に対してのみ溶接により結合し、上部フランジ13および下部フランジ15とは離隔してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1、1F…庇、10,10G…大梁、11…ウェブ、13…上部フランジ、15…下部フランジ、20,20G…小梁、21…ウェブ、23…上部フランジ、25…下部フランジ、30…ガゼットプレート、31…リブ部、33…接合部、50…連結部材、51、51A、51B、51C、51D、51E、52、52E…接合部、53、53E…接合部、58…貫通孔、59…高力ボルト、80,80G…屋根材、90…吊り材、95…柱、511、511D、512、512A、512D、513、513A、513D…板部、1000,1000G…建築物
図1
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図14