(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177846
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】体温報知システム、体温測定システム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20221125BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221125BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20221125BHJP
【FI】
A61B5/01 350
A61B5/00 102A
G01J5/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084238
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】北澤 田鶴子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 孝之
【テーマコード(参考)】
2G066
4C117
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA13
2G066BA14
4C117XB04
4C117XD04
4C117XE48
4C117XF03
4C117XJ13
4C117XJ45
4C117XP12
(57)【要約】
【課題】マスクを装着した人の体温に関する情報を適切に報知することができる体温報知システムを提供する。
【解決手段】体温報知システムは、赤外線カメラと、赤外線カメラから画像情報を受信する制御部と、画像情報に基づき、制御部に制御される報知部と、を備え、制御部は、画像情報に人がマスクを装着していることを特定可能な情報が含まれている場合、報知部に体温に関する情報を報知させ、画像情報に人がマスクを装着していないことを特定可能な情報が含まれている場合、報知部に前記体温に関する情報を報知させない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線カメラと、
前記赤外線カメラから画像情報を受信する制御部と、
前記画像情報に基づき、前記制御部に制御される報知部と、を備え、
前記制御部は、
前記画像情報に人がマスクを装着していることを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に体温に関する情報を報知させ、
前記画像情報に人がマスクを装着していないことを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に前記体温に関する情報を報知させない、体温報知システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記赤外線カメラから前記画像情報を受信したときから少なくとも6秒経過後に、前記報知部に、前記体温に関する情報を報知させる請求項1に記載の体温報知システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記赤外線カメラから前記画像情報を受信したときから少なくとも12秒経過後に、前記報知部に、前記体温に関する情報を報知させる、請求項1に記載の体温報知システム。
【請求項4】
前記制御部は、人がマスクを装着していない場合、前記報知部に、前記マスクの装着を促す装着指示情報を報知させる、請求項1に記載の体温報知システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記画像情報に、前記マスクから人の呼気が漏れていることを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に前記呼気が前記マスクから漏れていることを示す呼気漏れ情報を報知させ、
前記画像情報に、前記マスクから人の呼気が漏れていないことを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に前記呼気漏れ情報を報知させない、請求項1から3のいずれか1項に記載の体温報知システム。
【請求項6】
前記赤外線カメラは、検出対象から放射される赤外線を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記赤外線の検出量に基づいて前記検出対象の検出量分布を示す画像情報を生成する画像処理部と、を有しており、
前記制御部は、前記画像処理部で生成された前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて前記検出対象の体温測定値を取得し、前記体温測定値に基づき前記体温に関する情報を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の体温報知システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて、前記検出量の時間的変化における極大値または最大値を求め、求めた前記極大値または前記最大値から前記検出対象の前記体温測定値を取得する請求項6に記載の体温報知システム。
【請求項8】
検出対象から放射される赤外線を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記赤外線の検出量に基づいて前記検出対象の検出量分布を示す画像情報を生成する画像処理部と、
前記画像処理部で生成された前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて前記検出対象の体温測定値を取得する制御部と、を備える体温測定システム。
【請求項9】
前記検出量の時間的変化を、前記検出対象の体温測定値に変換する変換情報を記憶する記憶装置を備え、
前記制御部は、前記記憶装置に記憶された前記変換情報を用いて、前記検出対象の前記体温測定値を取得する請求項8に記載の体温測定システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて、前記検出量の時間的変化における極大値または最大値を求め、求めた前記極大値または前記最大値から前記検出対象の前記体温測定値を取得する請求項8または9に記載の体温測定システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記検出量の時間的変化における最初の極大値から前記体温測定値を取得する請求項10に記載の体温測定システム。
【請求項12】
前記検出量の時間的変化は、6秒間の時間的変化である請求項8から11のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項13】
前記検出量の時間的変化は、12秒間の時間的変化である請求項8から11のいずれか1項に記載の体温システム。
【請求項14】
第1報知部を備え、
前記制御部は、前記第1報知部に前記体温測定値および前記体温測定値に基づく情報を含む、体温に関する情報を報知させる、請求項8から13のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項15】
前記制御部は、前記画像情報に基づいて、前記検出対象に人が含まれるか否か判定する請求項8から14のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項16】
前記制御部は、前記画像情報に基づきマスクの装着領域を特定し、特定した前記マスクの装着領域における前記検出量の時間的変化に基づき前記検出対象の体温測定値を取得する、請求項8から15のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項17】
前記制御部は、前記画像情報に対する画像解析の結果に基づき前記マスクの装着領域を特定する請求項16に記載の体温測定システム。
【請求項18】
前記制御部は、前記画像情報における前記検出量の時間的変化の極大値および極小値を求め、前記画像情報において、前記極大値と前記極小値との差が所定の温度差以上となる領域を前記マスクの装着領域と特定する請求項16に記載の体温測定システム。
【請求項19】
第2報知部を備え、
前記制御部は、前記マスクの装着領域を特定できなかった場合、前記第2報知部に、前記マスクの装着を促す装着指示情報を報知させる、請求項16から18のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項20】
前記制御部は、前記画像情報に基づきマスクの装着領域を特定し、特定した前記マスクの装着領域における前記検出量の時間的変化の極大値および極小値を求め、求めた前記極大値と前記極小値との差が閾値温度以下となる場合、前記マスクから呼気が漏れていると判定する請求項8から19のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項21】
前記閾値温度は、摂氏36度と前記画像情報における前記検出対象となる人の顔面領域内の最低温度との差を示す温度である、請求項20に記載の体温測定システム。
【請求項22】
前記閾値温度は、摂氏36度と前記画像情報における前記検出対象となる人の衣服領域の温度との差を示す温度である、請求項20に記載の体温測定システム。
【請求項23】
前記検出対象の周囲の温度である外気温度を計測する温度計測装置をさらに備え、
前記閾値温度は、摂氏36度と前記温度計測装置により計測された前記外気温度との差を示す温度である、請求項20に記載の体温測定システム。
【請求項24】
前記第3報知部を備え、
前記制御部が前記マスクから呼気が漏れていると判定した場合、前記第3報知部に、前記呼気が前記マスクから漏れていることを示す呼気漏れ情報を報知させる、請求項20から23のいずれか1項に記載の体温測定システム。
【請求項25】
コンピュータに
検出対象から放射される赤外線の検出量に基づいて前記検出対象の検出量分布を示す画像情報を生成するステップと、
前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて前記検出対象の体温測定値を取得するステップと、を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温報知システム、体温測定システム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスクを被験体に配置するステップと、サーモグラフィカメラがマスクを撮像して、複数のフレーム画像から構成された動画像を取得するステップと、画像処理装置が複数のフレーム画像にわたって生じた、マスクの領域における温度変化に基づいて、被験体(検出対象)の呼吸に起因する生体活動を計測する計測方法が開示されている。
【0003】
この計測方法によって、特許文献1では、検出対象の呼吸数を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように人の呼吸数を非接触で計測するだけではなく、人の体温測定値を非接触で測定することに対するニーズが高まっている。特に空港の検疫所などではマスクを装着した状態にある人の体温測定値を知らせることができるシステムが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、マスクを装着した人の体温に関する情報を適切に報知することができる体温報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る体温報知システムは、赤外線カメラと、前記赤外線カメラから画像情報を受信する制御部と、前記画像情報に基づき、前記制御部に制御される報知部と、を備え、前記制御部は、前記画像情報に人がマスクを装着していることを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に体温に関する情報を報知させ、前記画像情報に人がマスクを装着していないことを特定可能な情報が含まれている場合、前記報知部に前記体温に関する情報を報知させない。
【0008】
本開示の一態様に係る体温測定システムは、検出対象から放射される赤外線を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記赤外線の検出量に基づいて前記検出対象の検出量分布を示す画像情報を生成する画像処理部と、を有する赤外線カメラと、前記画像処理部で生成された前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて前記検出対象の体温測定値を取得する制御部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る記録媒体は、コンピュータに検出対象から放射される赤外線の検出量に基づいて前記検出対象の検出量分布を示す画像情報を生成するステップと、前記画像情報における前記検出量の時間的変化に基づいて前記検出対象の体温測定値を取得するステップと、を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る体温測定システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】マスクを装着した検出対象となる人(被験者)の顔を正面から見たときの模式図である。
【
図3】実施形態に係る体温測定システムが実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示す体温測定システムにおいて取得されるマスク装着領域の一定期間における温度の時間的変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図5】
図1に示す体温測定システムにおいて取得されるマスク装着領域の温度の時間的変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図6】実施形態に係る体温測定システムが実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る熱画像情報における、温度の時間的変化の最大値と最小値との差が一定の閾値以上となる画素の範囲を模式的に示す図である。
【
図8】実施形態の変形例に係る体温測定システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態の変形例に係る体温測定システムが実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態および変形例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下に説明する実施形態および変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態および変形例に限定されない。この実施形態および変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(実施形態)
本開示の体温報知システムおよび体温測定システムの一例として、実施形態に係る体温測定システム100について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る体温測定システム100の概略構成を示すブロック図である。
図2は、マスク70を装着した検出対象となる人(被験者60)の顔を正面から見たときの模式図である。
【0013】
実施形態に係る体温測定システム100は、被験者60の体温測定値32を測定するシステムである。また、体温測定システム100は、測定した体温測定値32を外部に報知するシステムである。特に、体温測定システム100は、被験者60が装着するマスク70のマスク装着領域7の温度を測定し、マスク装着領域7の温度に基づき体温測定値32を取得する。
図1に示されるように、実施形態に係る体温測定システム100は、赤外線カメラ1、処理装置2(制御部)、記憶装置3、計時部4、および報知装置5(報知部、第1報知部、第2報知部)を備える。
【0014】
体温測定システム100では、処理装置2は、熱画像情報31に被験者60がマスク70を装着していることを特定可能な情報が含まれている場合、報知装置5に体温に関する情報を報知させ、熱画像情報31に被験者60がマスク70を装着していないことを特定可能な情報が含まれている場合、報知装置5に体温に関する情報を報知させないように構成されている。なお、熱画像情報は検出器により検出された情報に基づく値を2次元情報としたもののことを示しており、必ずしも温度情報である必要はなく、検出量そのものやそれに基づく様々な値の2次元情報も含む。
【0015】
ここで、体温に関する情報とは、例えば、マスク70を介して得られる呼気温度、該呼気温度と相関する腋の下の体温、深部体温といった体温を示す情報、体温が所定の温度(例えば、人の平熱状態と発熱状態との境界をなす温度)よりも高いか否かを示す情報、などが挙げられる。
【0016】
処理装置2は、赤外線カメラ1から受け付けた情報に基づき、体温に関する情報を報知させるように報知装置5を制御することができる。このため、被験者60に接触することなく、体温に関する情報を報知させることができる。
【0017】
また、処理装置2は、マスク70を装着している被験者60に対する体温に関する情報は報知させるが、マスク70を装着していない被験者60に対する体温に関する情報は報知させない。このため、例えば、空港の検疫所など、マスク70を装着し、かつ所定の範囲内の体温となる人だけを通過させるような状況下において、体温に関する情報を適切に報知することができる。
【0018】
さらに、報知装置5が報知する体温に関する情報が、マスク70を介して得られる深部体温と相関する呼気温度の場合、体表温度に比べて外気温度の影響を受けにくい。このため、体温測定システム100では、被験者60に対して、口を開けさせるなどの動作を要求することなく、より正確に被験者60の呼気温度に対応する体温測定値32を取得することができる。よって、より深部体温に近い体温測定値32を取得することができる。体温測定システム100は、具体的には以下の構成を有する。
【0019】
赤外線カメラ1は、検出対象から自然放射された赤外線に基づき、検出対象の温度分布を示す動画像である熱画像情報31を処理装置2に出力する。赤外線カメラ1は、例えば、30fpsのフレームレートで検出対象を撮像し、複数のフレーム画像から構成される動画像をリアルタイムで生成することができる。生成された動画像における各フレーム画像は物体の温度分布を示す情報を含む。赤外線カメラ1は、検出対象から放射される赤外線のエネルギー量を検出する検出部11と、検出部11によって検出されたエネルギー量に基づいて検出対象の温度分布を示す2次元情報である熱画像情報31を生成する画像処理部12とを有する。検出部11は、例えば、8.0μmから14.0μmまでの範囲にある遠赤外線波長領域に感度を有する検出素子から構成することができる。検出素子の画素数はQ-VGA以上であることが好ましい。なお、赤外線カメラ1が設置される空間の温度、換言すると被験者60を取り巻く周囲の温度(外気温度)は、例えば、一般的な室温となる27度とすることができる。なお、ここでは赤外線カメラ1が、検出部11と画像処理部12とを備えた構成で説明しているが、画像処理部12は赤外線カメラ1とは別に設けられてもよい。また、フレームレートは30fps限るものではなく、1fpsから60fpsが好ましい。
【0020】
処理装置2は、体温測定システム100における各種処理を実施する演算処理装置(例えば、CPU)である。処理装置2は、体温取得処理部21および検出対象判定部22を含む。
【0021】
体温取得処理部21は、赤外線カメラ1の画像処理部12によって生成された熱画像情報31における温度の時間的変化に基づいて、被験者60の体温測定値32を取得する。体温取得処理部21によって取得される体温測定値32は呼気の温度であり深部体温に対応近似する温度である。このため、体温測定値32は、被験者60の体表温度と比較して、被験者60の周囲の温度(外気温度)からの影響を抑制することができる。
【0022】
検出対象判定部22は、熱画像情報31に基づいて赤外線カメラ1による検出対象に人が含まれるか否か判定する。このため、体温測定システム100は、検出対象に人が含まれていないときに体温測定値32の取得を行ってしまうことによって生じる消費電力の無駄を省くことができる。検出対象判定部22によって検出対象に人が含まれると判定された場合、体温取得処理部21に対して体温測定値32の取得を開始するように指示する。このように検出対象判定部22が、検出対象に人が含まれると判定すると、体温取得処理部21は体温取得処理を自動的に実施することができる。
【0023】
なお、処理装置2が備える上記した各部は、例えば、演算処理装置である処理装置2が不図示のメモリからプログラムを読み出し、実行することで実現できる。
【0024】
記憶装置3は、読み書き可能な記録媒体であり、赤外線カメラ1において生成された熱画像情報31、処理装置2によって取得された体温測定値32、熱画像情報31に基づき体温測定値32を求めるために利用する変換情報33を含む。さらに、記憶装置3は、取得された体温測定値32が所定の基準を満たすか否か判断するための基準温度34も含む。
【0025】
計時部4は、時間経過を計測するタイマである。処理装置2からの制御指示に応じて、予め設定された時間までの時間経過を計測する。
【0026】
報知装置5は、処理装置2からの制御指示に応じて、処理装置2から受信した各種情報を報知する。報知装置5によって報知される各種情報としては、例えば、赤外線カメラ1において生成された熱画像情報31が挙げられる。さらには、報知される各種情報としては、後述するマスク装着指示情報、警告情報、および呼気漏れ情報などが挙げられる。情報を画像または動画像として報知する場合、報知装置5は表示装置とすることができる。また、情報を音として報知する場合、報知装置5はスピーカとすることができる。また、情報を印字して報知する場合、報知装置5は印刷装置とすることができる。報知装置5は、報知される情報の態様に応じて適宜、適正な装置が選択される。
【0027】
体温測定システム100が備える、赤外線カメラ1、処理装置2、記憶装置3、計時部4、および報知装置5は、それぞれ一体として設けられてもよい。あるいは、体温測定システム100では、赤外線カメラ1を、検出対象が存在する場所に設け、処理装置2、記憶装置3、計時部4、および報知装置5を、例えば、管理室など、赤外線カメラ1が設けられた場所とは別の場所に設ける構成としてもよい。
【0028】
(体温取得処理)
図3を参照して体温測定システム100における体温取得処理について説明する。
図3は、実施形態に係る体温測定システム100が実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【0029】
まず、処理装置2は、検出対象が人の顔面か否か判定する(ステップS1)。すなわち、処理装置2は赤外線カメラ1から熱画像情報31を取得し、記憶装置3に記憶する。そして検出対象判定部22がこの記憶装置3に記憶された熱画像情報31に対してエッジ検出などの画像解析を実施し、検出対象が人の顔面か否か判定する。例えば、検出対象判定部22は、赤外線カメラ1から出力された熱画像情報31に含まれる各画素の濃度値を数値化し、隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所を特定する。そして、検出対象判定部22は、特定した、隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所に基づき物体の輪郭に関する情報を抽出し、抽出した輪郭に関する情報と予め保持している人の顔面の輪郭に関する情報とを比較して検出対象が人の顔面か否か判定する。なお、検出対象判定部22による判定は、上記したような熱画像情報31に基づく画像解析に限定されるものではない。例えば、検出対象に対して入力ボタンの押下を促すように構成されているシステムでは、この入力ボタンの押下を受け付けると、検出対象判定部22が、検出対象が人の顔面であると判定する構成であってもよい。
【0030】
検出対象判定部22が、検出対象が人の顔面ではないと判定した場合(ステップS1において「No」)、体温取得処理を終了する。一方、検出対象判定部22が、検出対象が人の顔面であると判定した場合(ステップS1において「Yes」)、体温取得処理部21は、体温取得処理を開始する。
【0031】
まず、体温取得処理部21は、熱画像情報31に基づきマスク装着領域7が特定できたか否か判定する(ステップS2)。体温取得処理部21は、熱画像情報31に対してエッジ検出などの画像解析を実施し、顔面領域8におけるマスク装着領域7の特定を行う。例えば、体温取得処理部21は、赤外線カメラ1から出力された熱画像情報31に含まれる各画素の濃度値を数値化し、隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所を特定する。そして、体温取得処理部21は、特定した隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所に基づき物体の輪郭に関する情報を抽出し、抽出した輪郭に関する情報と予め保持しているマスク70の輪郭に関する情報とを比較してマスク装着領域7の特定を行う。このように、体温取得処理部21は、マスク装着領域7を特定することができるため、適切にマスク装着領域7における体温測定値32を取得することができる。
【0032】
なお、体温取得処理部21によるマスク装着領域7の特定は、上記した画像解析に限定されるものではない。例えば、体温取得処理部21は、取得した熱画像情報31における温度の時間的変化に基づきマスク装着領域7の特定を行ってもよい。
【0033】
すなわち、熱画像情報31においてマスク装着領域7が存在する場合、その領域の温度は、被験者60の呼気時および吸気時で変動する。つまり、呼気は人の体内から吐き出されたものであるためマスク装着領域7の温度は呼気の温度に対応するものとなる。また、この呼気の温度は、人の体表温度よりも高くなるため、呼気時ではマスク装着領域7は、それ以外の顔面領域8よりも温度が高くなる。一方、吸気は、外気が人の体内に取り込まれたものである。このため吸気時におけるマスク装着領域7の温度は外気温度に応じたものとなる。
【0034】
このようにマスク装着領域7における温度の時間的変化は、呼気時の温度と吸気時の温度とが周期的に表れたものとなる。一方、顔面領域8においてマスク装着領域7以外となる領域の温度は、外気温度が大きく変化しない限り所定期間ではほぼ一定の温度となる。そこで、体温取得処理部21は、一定期間で極大値と極小値とが周期的に表れるような温度変化を示す領域を、マスク装着領域7であると特定することができる。より具体的には、体温取得処理部21は、熱画像情報31の温度の時間的変化における極大値および極小値を求める。そして、体温取得処理部21は、極大値と極小値との差が所定の温度差以上となる、熱画像情報31における画素領域を、マスク装着領域7と特定する。なお、所定の温度差は、例えば、摂氏1度としてもよい。この所定の温度差は、外気温度に応じて変動することとなる。
【0035】
このように、熱画像情報31における温度の時間的変化に基づきマスク装着領域7を特定することができる構成の場合、体温取得処理部21は、マスク装着領域7を特定するために、熱画像情報31に対する画像解析を行う必要がない。
【0036】
体温取得処理部21が、マスク装着領域7を特定できなかった場合(ステップS2において「No」)、体温取得処理部21は、マスク70の装着を促すマスク装着指示情報を報知するように報知装置5に指示する。体温取得処理部21からの指示に応じて報知装置5は、マスク装着指示情報を報知する(ステップS17)。その後、ステップS2に戻り、体温取得処理部21は、再び、マスク装着領域7が特定できたか否かについて判定を行う。このように、報知装置5がマスクの装着を促す装着指示情報を報知することができるため、人にマスク70を装着させた状態で、人の体温に関する情報、すなわち、呼気温度としてみなすことができるマスク装着領域の温度を確実に取得できる。
【0037】
一方、体温取得処理部21は、マスク装着領域7を特定することができた場合(ステップS2において「Yes」)、マスク装着領域7の温度を一定期間取得する(ステップS3)。すなわち、体温取得処理部21は、計時部4に一定期間に達するまでの時間経過を計測するように指示するとともに、この一定期間、赤外線カメラ1の画像処理部12によって生成された熱画像情報31を取得し、記憶装置3に記憶させる。そして、体温取得処理部21は、この一定期間において記憶装置3に記憶された熱画像情報31の履歴に基づき、一定期間におけるマスク装着領域7の温度変化を示す時系列データを取得する。なお、計時部4による一定期間の計測は、赤外線カメラ1から熱画像情報31を処理装置2が受信したタイミングを起点とする。あるいは、体温測定システム100がユーザ等からの入力を受け付ける入力部をさらに備え、入力部がユーザ等から体温取得に関する指示を受け付けたタイミングを起点としてもよい。
【0038】
このときマスク装着領域7の一定期間における温度変化は、例えば、
図4に示すように、周期的に極大値(P1,P2,P3)が現れるようになる。
図4は、
図1に示す体温測定システム100において取得されるマスク装着領域7の一定期間における温度変化の一例を模式的に示すグラフである。
図4において、横軸は経過した時刻(T)を、縦軸はマスク装着領域7の温度を示す。
【0039】
なお、マスク装着領域7の温度とは、マスク装着領域7の中で最も温度が高くなる地点の温度としてもよい。あるいは、マスク装着領域7における任意の複数の地点の温度の平均温度としてもよい。
【0040】
また、計時部4により計測する一定期間は、人の呼吸周期以上となる期間である。人の呼吸周期以上となる一定期間とは、6秒以上であってもよい。通常、成人の呼吸数は1分間で12回から18回となることが知られている。このため、呼吸周期は約3秒から5秒となる。そこで、呼吸周期よりもやや長い6秒以上とすることで、1回の呼吸を行う間における、マスク装着領域7の温度変化を得ることができる。なお、呼吸に伴って生じる、マスク装着領域7の温度変化を確実に得るため2以上の呼吸周期を含めるように、一定期間を12秒以上としてもよい。
【0041】
次に、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値または最大値を求める(ステップS4)。例えば、
図4に示すように極大値が複数存在する場合(極大値P1,P2,P3)、体温取得処理部21は、最初に現れた極大値P1をマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値としてもよい。あるいは、体温取得処理部21は、複数の極大値の平均値をマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値としてもよい。また、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における複数の極大値の中で最も値が大きな極大値、すなわち最大値を求める構成としてもよい。
【0042】
体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値または最大値を求めると、この極大値または最大値に基づき、検出対象の体温測定値32を取得する(ステップS5)。
【0043】
体温取得処理部21による体温測定値32の取得は以下のように実施される。すなわち、記憶装置3がマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値または最大値を体温測定値32に変換する変換情報33を記憶している。そして、体温取得処理部21は、変換情報33に基づき、求めた極大値または最大値から体温測定値32を取得する。そして、体温取得処理部21は、取得した体温測定値32を記憶装置3に記憶させる。
【0044】
なお、ステップS5で体温取得処理部21によって取得される体温測定値32は、被験者60の呼気の温度である。呼気により温度上昇したマスク装着領域7の温度と呼気の温度とは高い相関性が得られる。このため、変換情報33は、実際の呼気の温度と、上記した極大値または最大値の温度とを変換する変換式とすることができる。あるいは、変換情報33は、上記した極大値または最大値と、実際の呼気の温度との対応関係を示した変換テーブルとしてもよい。
【0045】
なお、実施形態に係る体温測定システム100では、体温測定値32として呼気の温度を取得するように構成されているが、体温測定値32は呼気の温度と相関する他の体内温度であってもよい。他の体内温度としては、例えば、呼気と高い相関性が得られる深部体温または口腔温度としてもよい。体温測定値32として深部体温または口腔温度を取得する構成の場合、変換情報33は、深部体温または口腔温度と、取得された極大値または最大値の温度とを変換する変換式とすることができる。あるいは、変換情報33は、上記した極大値または最大値と、深部体温または口腔温度との対応関係を示す変換テーブルとしてもよい。
【0046】
このように、記憶装置3が変換情報33を記憶しているため、体温取得処理部21は、この変換情報33を用いて体温測定値32を取得することができる。そして、体温取得処理部21は、この変換情報33を用いて体温測定値32を取得するため、正確かつ多様な状況(検出対象が室内にいるのか屋外にいるのかなど)に対応させた変換情報を記憶しておくことができるので、正確かつ多様な体温測定値32を取得することができる。
【0047】
また、体温取得処理部21が、マスク装着領域7における温度の時間的変化から体温測定値32を取得するため、検出対象となる人に口を開けさせるなどの動作を要求することなく、正確に人の呼気温度に対応する体温測定値32を取得することができる。
【0048】
特に、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値または最大値から体温測定値32を取得するため、正確に検出対象の呼気温度に対応する値を取得することができる。また、極大値から体温測定値32を取得する場合は短時間で体温測定値を取得することが可能となる。
【0049】
また、体温取得処理部21が求めた極大値または最大値を、そのまま体温測定値32として利用できる場合は、記憶装置3は変換情報33を必ずしも記憶する必要はない。この場合は、ステップS5において体温取得処理部21は、求めた極大値または最大値をそのまま体温測定値32とし、記憶装置3に記憶させる。
【0050】
次に、体温取得処理部21は、記憶装置3に記憶させた体温測定値32と基準温度34とを比較し、体温測定値32が基準温度34以下か否か判定する(ステップS6)。ここで、体温取得処理部21が、体温測定値32が基準温度34以下であると判定した場合、体温取得処理を終了させる。
【0051】
一方、体温取得処理部21が、体温測定値32が基準温度34を超えると判定した場合(ステップS6において「No」)、報知装置5に対して警告を示す情報(警告情報)を報知するように指示する。報知装置5は、体温取得処理部21からの指示に応じて、警告情報を報知する(ステップS8)。このとき、報知される警告情報は、体温測定値32が基準温度34を超えていることを示す情報であってもよいし、会場または室内等への入場を禁止する情報であってもよい。警告情報は体温測定システム100の設置場所および設置目的に応じて適宜選択される。
【0052】
また、体温測定システム100が被験者60の体温測定値32のみを提示する構成の場合、体温取得処理部21がステップS5で体温測定値32を取得した後、報知装置5が体温測定値32の情報を報知して体温取得処理を終了する構成としてもよい。
【0053】
体温測定システム100は、赤外線カメラ1から熱画像情報31を処理装置2が受信したときから少なくとも6秒経過後に、あるいは、少なくとも12秒経過後に報知装置5によって体温に関する情報を報知させる構成であってもよい。または、ユーザから入力部が体温取得に関する指示を受け付けたときから少なくとも6秒経過後に、あるいは、少なくとも12秒経過後に報知装置5によって体温に関する情報を報知させる構成であってもよい。
【0054】
このように、体温測定システム100では、体温取得処理部21は、一般的な人の呼吸周期以上の期間における熱画像情報31を赤外線カメラ1から受信し、報知装置5に体温に関する情報を報知させることができる。
【0055】
なお、実施形態に係る体温測定システム100では、ステップS7でマスク装着指示を報知する報知装置と、ステップS8で警告情報を報知する報知装置とは同じ報知装置5としているが、両者はそれぞれ個別に設けられた報知装置であってもよい。
【0056】
また、基準温度34は、被験者60が体調不良であるか否かを識別することができる体温測定値(呼気の温度)である。基準温度34は、発熱者の発見を目的とする場合は、例えば、37度、37.5度、あるいは38度とすることができる。また、基準温度34は、取得した体温測定値を熱中症の判定に用いる場合は、通常基準とされる40度、あるいは安全性を考慮した38度としてもよいし、呼気の温度が腋下温度よりも0.5程度低くなることを考慮し、37.5度としてもよい。以上のようにして体温測定システム100は、体温取得処理を実行することができる。
【0057】
なお、上記した体温測定システム100では、一定期間におけるマスク装着領域7の温度の時間的変化から、極大値または最大値を求め、求めた極大値または最大値に基づき体温測定値32を取得する構成であった。しかしながら、一定期間を設けず、温度の時間的変化において極大値を迎えたらマスク装着領域7の温度の取得を停止し、この極大値に基づき体温測定値32を求める構成としてもよい。換言すると、体温測定システム100では、温度の時間的変化における最初の極大値から体温測定値32を求める構成としてもよい。
【0058】
例えば、体温取得処理部21が体温取得処理を開始すると、処理装置2は赤外線カメラ1から逐次、熱画像情報31を受け付ける。体温取得処理部21は、この熱画像情報31に基づき各時刻でのマスク装着領域7の温度を取得する。このとき、マスク装着領域7の温度の時間的変化は、例えば、
図5に示すようになる。
図5は、
図1に示す体温測定システム100において取得されるマスク装着領域7の温度の時間的変化の一例を模式的に示すグラフである。
図5において、横軸は経過した時刻(t)を、縦軸はマスク装着領域7の温度を示す。
【0059】
体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化を取得し最初の極大値を得たときに、マスク装着領域7の温度の取得を停止する構成としてもよく、次のように極大値を判定することができる。マスク装着領域7の温度を取得した際、今回取得したマスク装着領域7の温度と前回取得したマスク装着領域7の温度とを比較する。そして、測定開始時に、今回取得したマスク装着領域7の温度の方が前回取得したマスク装着領域7の温度より低いと判定した場合、すなわち
図5のグラフ上で測定開始時から極小値を取るまでの範囲(
図5における時刻t0からt1までの範囲)の場合、今回取得したマスク装着領域7の温度の方が前回取得したマスク装着領域7の温度より初めて高くなる(極小値)まで測定を継続する。さらに、体温取得処理部21は、今回取得したマスク装着領域7の温度の方が前回取得したマスク装着領域7の温度より高いと判定した場合(
図5における時刻t2の場合)、引き続きマスク装着領域7の温度の取得を継続する。つまり、
図5を参照すると、前回の時刻がt2であり、今回の時刻がt3であるとしたとき、t1で得たマスク装着領域7の温度よりもt2で得たマスク装着領域7の温度の方が高くなる。このため、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の取得を、t2以降も継続する。
【0060】
一方、体温取得処理部21が、今回取得したマスク装着領域7の温度の方が前回取得したマスク装着領域7の温度より低いと判定した場合、すなわち、初めて高いとの判定から低いとの判定に変わる場合、マスク装着領域7の温度の取得を停止させて、前回取得したマスク装着領域7の温度を極大値とする。そして、体温取得処理部21は、この極大値に基づき、体温測定値32を取得する。つまり、
図5を参照すると、前回の時刻がt3であり、今回の時刻がt4であるとしたとき、t3で得たマスク装着領域7の温度よりもt4で得たマスク装着領域7の温度の方が低くなる。すなわちt4で初めて今回のマスク装着領域7の温度から前回のマスク装着領域7の温度を引いた差が正から負に変わるので、そこが極大値であると判断できる。このため、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の取得をt4で停止し、t3で得たマスク装着領域7の温度を、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値とする。
【0061】
このように、体温測定システム100は、マスク装着領域7の温度の時間的変化を取得し、最初の極大値を得たときに、マスク装着領域7の温度の取得を停止する構成としてもよい。体温測定システム100がこのように構成された場合、短時間で体温測定値32を取得することができるとともに、体温測定システム100が体温取得処理を実施するにあたり消費される電力を低減させることができる。
【0062】
逆により精度よく被験者60の体温測定値32を取得することを目的とする場合は、マスク装着領域7の温度の時間的変化を取得する期間が長くなるように設定し、体温取得処理部21によってより多くの極大値を得る構成としてもよい。
【0063】
なお、上記では、体温取得処理部21が画像解析によりマスク装着領域7の特定を行う構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、検出対象判定部22が画像解析によりマスク装着領域7の特定を行う構成としてもよい。そして、体温取得処理部21が、マスク装着領域7の温度の時間的変化から検出対象の体温測定値32を取得する構成としてもよい。
【0064】
上記した体温取得処理では、体温測定システム100は、マスク装着領域7を特定し、特定したマスク装着領域7の温度の時間的変化から検出対象の体温測定値32を取得した。ここで、検出対象がマスクを装着した人の顔面であることが前提となっている場合、
図6に示されるように、体温測定システム100は、マスク装着領域7を特定せず、一定期間における温度差が最も大きい領域の極大値または最大値から体温測定値32を取得してもよい。
図6は、実施形態に係る体温測定システム100が実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【0065】
より具体的には、
図6に示されるように、体温取得処理部21は、温度を一定期間取得する(ステップS11)。すなわち、体温取得処理部21は、計時部4に一定期間に達するまでの時間経過を計測するように指示するとともに、この一定期間、赤外線カメラ1の画像処理部12によって生成された熱画像情報31を取得し、記憶装置3に記憶させる。そして、体温取得処理部21は、この一定期間において記憶装置3に記憶された熱画像情報31の履歴に基づき、一定期間における温度変化を示す時系列データを取得する。
【0066】
次に、体温取得処理部21は、一定期間の温度変化において、温度差が最も大きい領域の温度の時間的変化における極大値または最大値を求める(ステップS12)。
【0067】
体温取得処理部21は、温度差が最も大きい領域の温度の時間的変化における極大値または最大値を求めると、この極大値または最大値に基づき、検出対象の体温測定値32を取得する(ステップS13)。
【0068】
次に、体温取得処理部21は、記憶装置3に記憶させた体温測定値32と基準温度34とを比較し、体温測定値32が基準温度34以下か否か判定する(ステップS14)。ここで、体温取得処理部21が、体温測定値32が基準温度34以下であると判定した場合、体温取得処理を終了させる。
【0069】
一方、体温取得処理部21が、体温測定値32が基準温度34を超えると判定した場合(ステップS14において「No」)、報知装置5に対して警告を示す情報(警告情報)を報知するように指示する。報知装置5は、体温取得処理部21からの指示に応じて、警告情報を報知する(ステップS15)。
【0070】
なお、上記では、検出対象判定部22が熱画像情報31に対してエッジ検出などの画像解析を実施し、検出対象に人が含まれるか否か、特に検出対象が人の顔面か否か判定する構成であった。そして、検出対象が人の顔面である場合、体温取得処理部21が、顔面領域8におけるマスク装着領域7の特定を行う構成であった。また、上記ではこのマスク装着領域7の特定は、検出対象となる被験者60が1人である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、熱画像情報31において、複数の被験者60が含まれる場合であっても、上記した構成により複数の被験者60のそれぞれのマスク装着領域7を特定することができる。そして、マスク装着領域7の一定期間における温度変化に基づき、複数の被験者60それぞれの体温測定値32を取得する構成としてもよい。
【0071】
あるいは、上記した画像解析を実施し、検出対象に人が含まれるか否か判定することなく、かつマスク装着領域7を特定することなく体温測定値32を取得する構成としてもよい。すなわち、熱画像情報31における一定期間の温度の時間的変化を取得することで複数の被験者60それぞれの体温測定値32を次のように取得することができる。熱画像情報31における一定期間の温度の時間的変化から、例えば、温度の時間的変化の最大値と最小値との差が所定の温度差(一定の閾値)以上となる画素について抽出する。または、温度の時間的変化の極大値と極小値との差が一定の閾値以上となる画素について抽出する。あるいは、温度の時間的変化の最大値または極大値が一定の閾値以上となる画素について抽出することもできる。測定環境に応じて適宜選択すればよい。
【0072】
以上のように抽出した画素は、例えば、
図7に示すように、適切に上記した一定の閾値を設定することにより複数の画素の集まりとして区別することができる。その複数の画素点の集まりの情報は、複数の人のそれぞれのマスク装着領域7の情報とほぼ等しい情報が得られることとなる。なお、
図7は、実施形態に係る熱画像情報31における、温度の時間的変化の最大値と最小値との差が一定の閾値以上となる画素の範囲を模式的に示す図である。
【0073】
従って、本実施形態では、複数の被験者60それぞれのマスク装着領域7におけるそれぞれの体温測定値32を取得する際、上記した画像解析を実施することなく、複数の被験者60それぞれの体温測定値32を取得することができる。なお、例えば、抽出した画素が固まって存在するマスク装着領域7において、最大値となる温度を体温測定値32として取得してもよく、または極大値が最も高い点となる温度を体温測定値32として取得してもよい。さらには、最大値と最小値との差または極小値と極大値の差が最大となる温度のみを体温測定値32を取得してもよく、または、マスク装着領域7の中心点の温度を、体温測定値32として取得してもよい。
【0074】
また、赤外線カメラ1の画像処理部12において、検出部11によって検出されたエネルギー量を温度情報に変換し、温度情報に基づく熱画像情報31を用いて体温測定値32を取得しているが、赤外線カメラ1では検出されたエネルギー量そのものを示す熱画像情報31を出力し、その検出されたエネルギー量を処理装置2が記憶装置3の情報を用いて温度情報に変換することで体温測定値32を取得してもよい。すなわち、この構成の場合、変換情報33として、記憶装置3には、検出部11によって検出されたエネルギー量を温度情報に変換する変換式または変換テーブルを記憶していてもよい。この構成により、一度に処理装置2でエネルギー量から温度情報への変換を行うことができ、また変換情報33を記憶装置3の一か所で記憶しておけば良いので、システムの効率化を図ることができる。
【0075】
[変形例]
次に、
図8を参照して実施形態の変形例に係る体温測定システム100について説明する。
図8は、実施形態の変形例に係る体温測定システム100の概略構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、実施形態の体温測定システム100の構成において、温度計測装置6をさらに備えた構成となっている。温度計測装置6は、被験者60の周囲の温度(外気温度)を測定する装置である。実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、この温度計測装置6をさらに備える点を除けば、上記した実施形態に係る体温測定システム100と同様な構成となる。
【0076】
また、実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、実施形態に係る体温測定システム100と比較して、体温取得処理で実施するステップの一部が異なっている。具体的には、実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、実施形態に係る体温測定システム100が実施する体温取得処理において、マスク70からの呼気漏れの有無をさらに判定するステップを含んでいる。
【0077】
以下、
図9を参照して、本開示の実施形態の変形例に係る体温測定システム100が実施する体温取得処理について説明する。
図9は、本開示の実施形態の変形例に係る体温測定システム100が実施する体温取得処理の一例を示すフローチャートである。
【0078】
なお、
図9に示されるステップS21からステップS23およびステップS28は、
図3に示されるステップS1からステップS3およびステップS7と同様の処理となるため説明は省略する。
【0079】
ステップS23において、体温取得処理部21がマスク装着領域7の温度を一定期間、取得した後、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値および極小値を求める(ステップS24)。
【0080】
例えば、一定期間における、マスク装着領域7の温度の時間的変化において極大値および極小値がそれぞれ複数存在する場合がある。このような場合、体温取得処理部21は、最初に現れた極大値をマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値とし、最初に現れた極小値をマスク装着領域7の温度の時間的変化における極小値としてもよい。あるいは、体温取得処理部21は、複数の極大値の平均値をマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値とし、複数の極小値の平均値を、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極小値としてもよい。また、体温取得処理部21は、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値の中で最も大きな極大値(最大値)、ならびに極小値の中で最も小さい極小値(最小値)それぞれを、一定期間における、マスク装着領域7の温度の時間的変化の極大値および極小値としてもよい。
【0081】
ステップS24において、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値および極小値を求めると、体温取得処理部21は両者の差が閾値温度より大きいか否か判定する(ステップS25)。
【0082】
ここで、体温取得処理部21が両者の差が閾値温度以下と判定した場合(ステップS25において「No」)、マスク70からの呼気漏れを示す呼気漏れ情報を報知するように報知装置5に指示する。体温取得処理部21からの指示に応じて報知装置5は、呼気漏れ情報を報知する(ステップS29)。
【0083】
このように、体温取得処理部21は、熱画像情報31において、マスク70から人の呼気が漏れていることを特定可能とする情報が含まれている場合、報知装置5に呼気漏れ情報を報知させる。一方、熱画像情報31において、マスク70から人の呼気が漏れていないことを特定可能とする情報が含まれている場合、報知装置5に呼気漏れ情報を報知させないように構成することができる。このため、体温測定システム100は、人に対して呼気漏れのない状態でマスクを装着させるように促すことができる。それゆえ、体温取得処理部21は、検出対象の呼気温度を正確に取得することができる。
【0084】
その後、ステップS24に戻り、体温取得処理部21は、再び、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値および極小値を求める。
【0085】
一方、体温取得処理部21が両者の差が閾値温度より大きいと判定した場合(ステップS25において「Yes」)、極大値に基づき体温測定値32を取得する(ステップS26)。
【0086】
ここで、マスク70から呼気漏れが生じている場合、呼気漏れが生じていない場合と比較すると、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値と極小値との差が小さくなる。呼気がマスク70から漏れると、マスク装着領域7が呼気によって十分に温められないからである。そこで、実施形態の変形例に係る体温測定システム100では、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値と極小値との差が、所定の閾値温度以下となる場合、体温取得処理部21は、マスク70から呼気漏れが生じていると判断し、呼気漏れを伝える呼気漏れ情報を報知するように構成されている。
【0087】
所定の閾値温度とは、被験者60の体表面の温度と、被験者60の周囲の温度(外気温度)との差を示す温度である。このため、マスク装着領域7における極大値と極小値との差がこの閾値温度以下となる場合は、マスク70から呼気が漏れており、呼気によって上昇するマスク70の温度を適切な状態で計測していないこととなる。
【0088】
なお、上記した所定の閾値温度は、人の標準的な呼気温度である摂氏36度と、温度計測装置6により計測された外気温度との差により求めることができる。また、温度計測装置6によって計測された外気温度の代わりに、熱画像情報31における被験者60の顔面領域8内の最低温度を用いてもよい。顔面領域8で最低温度となる領域は、血液が流通していない頭髪部分などが挙げられる。頭髪部分などの温度は、被験者60を取り巻く外気温度とみなすことができる。あるいは、温度計測装置6によって計測された外気温度の代わりに、熱画像情報31における被験者60の衣服領域9(
図2参照)の温度を用いてもよい。衣服領域9の温度は被験者60を取り巻く外気温度とみなすことができる。
【0089】
このように、閾値温度を呼気と吸気(外気温)との間の温度差に対応する値として設定することができるため、マスク70からの呼気漏れの有無を確度よく判定することができる。
【0090】
すなわち、体温取得処理部21が、記憶装置3に記憶された熱画像情報31に対してエッジ検出などの画像解析を実施し、衣服領域9を特定する。例えば、体温取得処理部21は、赤外線カメラ1から出力された熱画像情報31に含まれる各画素の濃度値を数値化し、隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所を特定する。そして、体温取得処理部21は、特定した、隣り合う画素の濃度値との差が一定以上となる箇所に基づき物体の輪郭に関する情報を抽出し、抽出した輪郭に関する情報と予め保持している衣服領域9の輪郭に関する情報とを比較して衣服領域9を特定する。あるいは、体温取得処理部21は、抽出した輪郭に関する情報と、予め保持している人の輪郭に関する情報または人の顔面の輪郭に関する情報とを比較して、被験者60および被験者60の顔面領域8を特定する。そして特定した被験者60から被験者60の顔面領域8を除いた領域を衣服領域9として特定してもよい。そして、体温取得処理部21は、熱画像情報31において衣服領域9として特定された領域の温度を取得する。なお、外気温度の代わりに、被験者60の顔面領域8内の最低温度、または被験者60の衣服領域9の温度など外気温度とみなすことができる温度を利用する場合は、温度計測装置6を必ずしも備える必要はない。
【0091】
上記のように、体温取得処理部21が極大値と極小値との差が閾値温度より大きいと判定すると(ステップS25において「Yes」)、極大値に基づき体温測定値32を取得する(ステップS26)。そして、ステップS27に進み、取得した体温測定値32が基準温度34以下か否か判断する。ここで、体温取得処理部21が、体温測定値32が基準温度34以下であると判定した場合(ステップS27において「Yes」)、体温取得処理を終了させる。
【0092】
一方、体温取得処理部21は、体温測定値32が基準温度34よりも大きいと判断した場合(ステップS27において「No」)、警告情報の報知を報知装置5に指示する。この体温取得処理部21からの指示に応じて報知装置5は、警告情報を報知する(ステップS30)。
【0093】
以上のようにして、実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、マスク70からの呼気漏れを考慮し、被験者60の体温測定値32を取得することができる。また、この取得した体温測定値32が基準温度34よりも大きい場合は警告情報を報知することができる。
【0094】
実施形態の変形例に係る体温測定システム100では、ステップS25において体温取得処理部21がマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値と極小値との差が閾値温度より大きいか否か判定する構成であった。しかしながら、体温取得処理部21は、極大値が所定温度より大きいか否か判定する構成としてもよい。なお、所定温度として摂氏35度とすることができる。そして、体温取得処理部21は、極大値が摂氏35度以下となると判定した場合、呼気漏れ情報を報知装置5に報知させる構成としてもよい。
【0095】
なお、上記した実施形態および実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、マスク装着領域7を特定し、特定されたマスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値から体温測定値32を取得する構成であった。
【0096】
ところで、室温が摂氏27度の環境下では、熱画像情報31において、マスク装着領域7の温度は、マスク装着領域7以外の、被験者60の顔面領域8の温度よりも高くなるものと考えられる。そこで、実施形態および実施形態の変形例に係る体温測定システム100では、マスク70の装着が義務付けられており、被験者60に対してマスク70の装着指示を促す必要がない場合、体温取得処理部21が、熱画像情報31の顔面領域8において最も温度が高くなる位置の温度の時間的変化における極大値から体温測定値32を取得する構成としてもよい。
【0097】
また、実施形態および実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、一定期間の間、赤外線カメラ1の画像処理部12によって生成された熱画像情報31を取得し、この熱画像情報31に基づき、マスク装着領域7の温度の時間的変化における極大値を求める構成であった。そこで、実施形態および実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、この求めた極大値の結果を記憶装置3に蓄積させておき、極大値の特定精度を高めるために利用する構成であってもよい。
【0098】
また、実施形態および実施形態の変形例に係る体温測定システム100は、体温取得処理部21が、極大値を求める際に外気温度もさらに求め、この外気温度と極大値とを対応付けて記憶装置3に記憶させる構成としてもよい。そして、体温取得処理部21は、記憶装置3に蓄積された外気温度と極大値とを対応づけた情報に基づき、記憶装置3にあらかじめ記憶されている基準温度34を変更させる構成としてもよい。このように外気温度を考慮して基準温度34の変更が可能な構成とすることで、体温測定システム100は、体温測定値32と基準温度34との比較を外気温度の影響を考慮して行うことができる。
【0099】
なお、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 赤外線カメラ
2 処理装置
3 記憶装置
4 計時部
5 報知装置
6 温度計測装置
7 マスク装着領域
8 顔面領域
9 衣服領域
11 検出部
12 画像処理部
21 体温取得処理部
22 検出対象判定部
31 熱画像情報
32 体温測定値
33 変換情報
34 基準温度
60 被験者
70 マスク
100 体温測定システム