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特開2022-177868包装された植物、及び植物の保存方法
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  • 特開-包装された植物、及び植物の保存方法 図1
  • 特開-包装された植物、及び植物の保存方法 図2
  • 特開-包装された植物、及び植物の保存方法 図3
  • 特開-包装された植物、及び植物の保存方法 図4
  • 特開-包装された植物、及び植物の保存方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177868
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】包装された植物、及び植物の保存方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 5/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A01G5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084269
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】506401820
【氏名又は名称】株式会社ジャパンプランツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 重司
(57)【要約】
【課題】鮮度の低下が抑制された包装された植物を提供する。
【解決手段】密封された容器内に収容された植物を含み、容器内の酸素濃度(体積%)は、大気中の酸素濃度(体積%)よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封された容器内に収容された植物を含み、
前記容器内の酸素濃度(体積%)は、大気中の酸素濃度(体積%)よりも低い、
包装された植物。
【請求項2】
前記容器内の二酸化炭素濃度(体積%)は、大気中の二酸化炭素濃度(体積%)よりも高い、
請求項1に記載の包装された植物。
【請求項3】
前記容器内の気体は、80体積%の窒素と、10体積%の酸素と、10体積%の二酸化炭素と、から成る、
請求項1又は2に記載の包装された植物。
【請求項4】
植物を容器内に入れ、前記容器内の酸素濃度(体積%)を大気中の酸素濃度(体積%)よりも低くした後、前記容器を密封するか、又は、
容器内の酸素濃度(体積%)を大気中の酸素濃度(体積%)よりも低くし、前記容器内に植物を入れた後、前記容器を密封する、
植物の保存方法。
【請求項5】
前記容器内の二酸化炭素濃度(体積%)を、大気中の二酸化炭素濃度(体積%)よりも高くする、
請求項4に記載の植物の保存方法。
【請求項6】
前記容器内の気体の構成比を、80体積%の窒素、10体積%の酸素、及び10体積%の二酸化炭素にする、
請求項4又は5に記載の植物の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された植物に関する。本発明は、植物の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
観賞用の花などの植物は、プラスチック製のスリーブに入れて販売されることが多い。植物は、販売時、及びスリーブを外して花瓶などに飾った際に、できる限り長期にわたって鮮度が維持されることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、鮮度の低下が抑制された包装された植物を提供することを目的とする。また、本発明は、鮮度の低下を抑制可能な植物の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、植物の周囲環境の酸素濃度を低下させることで、植物の鮮度を維持できることを発見し、本発明に至った。
【0005】
(項目1)
密封された容器内に収容された植物を含み、
前記容器内の酸素濃度(体積%)は、大気中の酸素濃度(体積%)よりも低い、
包装された植物。
【0006】
(項目2)
前記容器内の二酸化炭素濃度(体積%)は、大気中の二酸化炭素濃度(体積%)よりも高い、
項目1に記載の包装された植物。
【0007】
(項目3)
前記容器内の気体は、80体積%の窒素と、10体積%の酸素と、10体積%の二酸化炭素と、から成る、
項目1又は2に記載の包装された植物。
【0008】
(項目4)
植物を容器内に入れ、前記容器内の酸素濃度(体積%)を大気中の酸素濃度(体積%)よりも低くした後、前記容器を密封するか、又は、
容器内の酸素濃度(体積%)を大気中の酸素濃度(体積%)よりも低くし、前記容器内に植物を入れた後、前記容器を密封する、
植物の保存方法。
【0009】
(項目5)
前記容器内の二酸化炭素濃度(体積%)を、大気中の二酸化炭素濃度(体積%)よりも高くする、
項目4に記載の植物の保存方法。
【0010】
(項目6)
前記容器内の気体の構成比を、80体積%の窒素、10体積%の酸素、及び10体積%の二酸化炭素にする、
項目4又は5に記載の植物の保存方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装された植物は、容器から出した後であっても、鮮度の低下が抑えられ、新鮮なままである。また、本発明の保存方法を使用することにより、植物の鮮度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】包装された植物の正面図である。
図2】包装された植物の変形例の正面図である。
図3】(a)から(d)はそれぞれ、包装された植物の変形例で使用されるメッシュ体の平面図、正面図、底面図、及び貫通孔の拡大図である。
図4】包装された植物の別の変形例の正面図である。
図5】包装された植物の別の変形例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1 包装された植物及び植物の保存方法>
本発明の包装された植物P、及び植物Pの保存方法について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、植物Pは袋10(容器の一例)内に収容されている。袋10は、例えば気体非透過性材料から成り、柔軟性を有する。気体非透過性材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックが挙げられる。袋10は、好ましくは透明である。袋10は、少なくとも植物Pの花(花を咲かせる植物の場合)及び葉を収容できる大きさを有し、好ましくは植物P全体を収容できる大きさを有する。袋10は、その端部に、植物Pを内部に入れるための開口部を有する。
【0015】
袋10は、内部に植物P及び所定の構成比を有する気体が入れられた状態で密封されている。袋10内の気体の酸素濃度(体積%)は、大気中の酸素濃度(体積%)よりも低い。具体的には、大気中の酸素濃度は、約20.9476体積%であるため、袋10内の気体の酸素濃度は、20.9476体積%よりも低い。袋10内の酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも低くすることにより、植物Pの鮮度を長期にわたって維持できる。袋10内の気体の二酸化炭素濃度(体積%)は、大気中の二酸化炭素濃度(体積%)よりも高いことが好ましい。具体的には、大気中の二酸化炭素濃度は、約0.040体積%であるため、袋10内の気体の二酸化炭素濃度は、0.040体積%よりも高いことが好ましい。袋10内の二酸化炭素濃度を大気中の二酸化炭素濃度よりも高くすることにより、植物Pの鮮度を長期にわたって維持できる。一実施形態において、袋10内の気体の構成比は、80体積%の窒素、10体積%の酸素、及び10体積%の二酸化炭素である。
【0016】
袋10内の気体の酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも低くする方法としては、例えば、あらかじめ酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも低くした混合気体を袋10内に入れる方法が挙げられる。あるいは、袋10内に大気を入れ、その後、袋10内に窒素や二酸化炭素を入れることにより、袋10内の気体の酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも低くする方法が挙げられる。また、袋10内の気体の二酸化炭素濃度を大気中の二酸化炭素濃度よりも高くする方法としては、例えば、あらかじめ二酸化炭素濃度を大気中の二酸化炭素濃度よりも高くした混合気体を袋10内に入れる方法が挙げられる。あるいは、袋10内に大気を入れ、その後、袋10内に二酸化炭素を入れることにより、袋10内の気体の二酸化炭素濃度を大気中の二酸化炭素濃度よりも高くする方法が挙げられる。
【0017】
なお、袋10内に植物P及び気体を入れる際には、まず植物Pを袋10内に入れ、その後、袋10内の気体を所定の構成比となるようにしてもよい。あるいは、逆に、袋10内の気体を所定の構成比とした後、袋10内に植物Pを入れるようにしてもよい。
【0018】
袋10の密封方法としては、例えば、袋10の開口部付近を、ゴムや紐などの固定部材20で縛る方法や、袋10の開口部を接着する方法(例えば、熱圧着)が挙げられる。なお、植物Pは袋10内に完全に収容されていることが好ましいが、植物Pの茎が袋10内からはみ出ていたとしても問題ない。
【0019】
<2 実施例>
以下に示す方法により、気体の構成比の違いによる植物の鮮度の差を確認した。
【0020】
(1)実施例では、市販のポリプロピレン製の袋内に、菊及びカーネーションと共に、構成比が、80体積%の窒素、10体積%の酸素、及び10体積%の二酸化炭素から成る気体を入れ、袋を菊の茎及びカーネーションの茎と共にゴムで縛ることにより、袋を密封した。菊及びカーネーションの茎の部分を水の入った花瓶に入れ、菊及びカーネーションに水分を供給した。菊及びカーネーションを、袋に密封した状態で5日間保管し、その後、袋を開封して7日間保管した。目視により、菊及びカーネーションの状態を観察した。
(2)比較例では、袋内の気体を、大気(窒素:約78.084体積%、酸素:約20.9476体積%、二酸化炭素:約0.040体積%)に変更した以外、実施例と同じ方法によって試験した。
【0021】
比較例の菊及びカーネーションは、開封後2日目には、下葉が垂れ下がり、葉の黄化も進行していた。一方、実施例の菊及びカーネーションは、開封後7日目でも葉の劣化は見られなかった。このように、実施例の菊及びカーネーションは、比較例の菊及びカーネーションに比べて、鮮度が維持できていることが分かった。
【0022】
<3 変形例>
上記実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、例えば以下の変形例を採用することができる。以下に示す変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0023】
(3-1)容器は、袋10に限定されず、例えば段ボールであってもよい。
【0024】
(3-2)図2及び図3に示すように、袋10内には、メッシュ体30が収容されていてもよい。メッシュ体30には、複数の貫通孔31が設けられている。メッシュ体30は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック製のメッシュ素材から成り、好ましくは透明である。メッシュ体30は、複数枚重ねられていてもよい。一実施形態では、メッシュ体30は、袋10の半分程度の大きさであり、上端及び下端が開口すると共に、植物Pの花及び葉の周囲を覆っている。貫通孔31は、気体(主には、酸素、二酸化炭素、水蒸気)が通過可能な大きさを有する。
【0025】
図3(d)に示すように、貫通孔31の周縁からは、貫通孔31を設ける際の穴開け加工によって形成された複数の繊維部が延出している。この繊維部は、毛細管現象により袋10内の湿気を吸収する。これにより、袋10内を適切な湿度に維持でき、植物Pの鮮度を維持できる。また、繊維部によって袋10内の湿気を吸収できることにより、袋10の内面が湿気によって曇ることを防止できる。これにより、袋10内の植物Pの、外部からの視認性を維持できる。
【0026】
(3-3)図4に示すように、袋10内に、調湿材40が収容されていてもよい。調湿材40は、例えば吸湿性の不織布から成る。包装体100が調湿材40を備えていることにより、袋10内の湿度の調整をより効果的に行うことができる。
【0027】
(3-4)図5に示すように、包装された植物Pは、植物Pに水分を供給するための水分供給材50をさらに備えていてもよい。これにより、植物Pの鮮度をさらに長時間にわたって維持できる。水分供給材50は、植物Pの茎又は根と接触するように配置される。水分供給材50としては、水で湿らせたシート、ゼリー状の水、又は水が入った袋などを利用することができる。水分供給材50は、植物Pに栄養を与える栄養素を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 袋(容器)
20 固定部材
30 メッシュ体
31 貫通孔
40 調湿材
50 水分供給材
P 植物
図1
図2
図3
図4
図5