(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177881
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】移動機械、移動機械のハンドおよび移動機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20221125BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B25J15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084300
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中須 信昭
(72)【発明者】
【氏名】西垣戸 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】柏原 広茂
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS10
3C707DS02
3C707FS01
3C707FT17
3C707FU02
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT01
3C707KT06
3C707LV07
3C707NS02
3C707NS19
(57)【要約】
【課題】把持される部分の強度が低い物品に対し、把持部にかかる負荷を低減するように動作させることにより、把持している物品の落下および破損を防止する移動方法を提供することである。
【解決手段】物品を吸着して把持する把持部と、把持部による物品の把持及び把持部の移動を制御する制御部と、を有する移動機械であって、制御部は、物品の把持禁止領域を示す情報を含む物品情報を保持し、物品情報に基づいて、物品の把持禁止領域以外の領域を把持するように把持部を制御する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を吸着して把持する把持部と、前記把持部による前記物品の把持及び前記把持部の移動を制御する制御部と、を有する移動機械であって、
前記制御部は、
前記物品の把持禁止領域を示す情報を含む物品情報を保持し、
前記物品情報に基づいて、前記物品の把持禁止領域以外の領域を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項2】
請求項1に記載の移動機械であって、
前記物品は紙製の箱であり、
前記把持禁止領域は、前記箱を閉じるために前記箱を構成する紙を接着剤によって貼り合わせた領域を含むことを特徴とする移動機械。
【請求項3】
請求項1に記載の移動機械であって、
前記制御部は、前記物品の把持禁止領域以外の領域に、前記把持部の長手方向と前記把持禁止領域の長手方向とが略平行になるように前記把持部を配置するように前記把持部による把持位置を決定し、前記決定した把持位置を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項4】
請求項1に記載の移動機械であって、
前記把持部は、前記物品の天面を吸着して把持する天面把持部と、前記物品の側面を吸着して把持する側面把持部と、を含み、
前記制御部は、前記天面把持部が前記物品の天面の前記把持禁止領域以外の領域を把持し、前記側面把持部が前記物品の複数の側面のうち面積が広い側面を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項5】
請求項4に記載の移動機械であって、
前記天面把持部と前記側面把持部との距離が変更可能であることを特徴とする移動機械。
【請求項6】
請求項1に記載の移動機械であって、
前記物品情報は、前記物品を重量の不均衡によって落下させずに前記把持部が把持できる範囲である把持可能範囲を示す情報を含み、
前記制御部は、前記物品情報に基づいて、前記物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、前記把持可能範囲内の領域を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項7】
請求項6に記載の移動機械であって、
前記把持部は、前記物品の天面を吸着して把持する天面把持部を含み、
前記把持可能範囲は、前記物品の天面のうち前記物品を重量の不均衡によって落下させずに前記天面把持部が把持できる範囲であり、
前記制御部は、前記把持部が前記物品の側面を吸着して把持する側面把持部を含まない場合、前記物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、前記把持可能範囲内の領域のうち前記物品の重心位置の直上の位置に近い位置を前記天面把持部が把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項8】
請求項6に記載の移動機械であって、
前記把持部は、前記物品の天面を吸着して把持する天面把持部を含み、
前記把持可能範囲は、前記物品の天面のうち前記物品を重量の不均衡によって落下させずに前記天面把持部が把持できる範囲であり、
前記制御部は、前記把持部が前記物品の側面を吸着して把持する側面把持部をさらに含む場合、前記物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、前記把持可能範囲内の領域のうち、前記天面把持部と前記側面把持部との距離がとりうる範囲と前記物品のサイズとの関係に基づいて前記天面把持部が把持可能な範囲内で前記物品の重心位置の直上の位置に近い位置を前記天面把持部が把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械。
【請求項9】
請求項8に記載の移動機械であって、
前記制御部は、前記物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、前記把持可能範囲内の領域に、前記天面把持部と前記側面把持部との距離がとりうる範囲と前記物品のサイズとの関係に基づいて前記天面把持部が把持可能な範囲の少なくとも一部が含まれない場合、前記把持部が前記物品を把持できないと判定することを特徴とする移動機械。
【請求項10】
請求項1に記載の移動機械であって、
前記制御部は、前記物品を撮影した画像に基づいて前記物品の姿勢を認識し、
前記物品の姿勢と前記物品情報とに基づいて前記物品の把持禁止領域を特定することを特徴とする移動機械。
【請求項11】
前記把持部を有する請求項1に記載の移動機械のハンドであって、
前記把持部は、物品の天面を吸着して把持する天面把持部と、前記物品の側面を吸着して把持する側面把持部と、を有し、
前記移動機械のハンドは、前記側面把持部を前記天面把持部からの距離が変化する方向に移動させるアクチュエータをさらに有し、
前記天面把持部が前記物品の天面を吸着して把持した後に、前記アクチュエータが前記側面把持部を前記天面把持部に近づける方向に移動させ、
前記側面把持部が前記物品の側面に接触し、前記側面把持部が前記物品の側面に押し付けられる力が所定の値に達した後に、前記側面把持部が前記物品の側面を吸着保持し、
前記側面把持部が前記物品の側面を吸着保持した後に、前記アクチュエータが前記側面把持部を固定することを特徴とする移動機械のハンド。
【請求項12】
請求項11に記載の移動機械のハンドであって、
前記側面把持部は、前記物品の側面を吸着する吸着面を当該側面と平行になるように揺動させる揺動部を有することを特徴とする移動機械のハンド。
【請求項13】
請求項12に記載の移動機械のハンドであって、
前記吸着面は、第1の弾性体によって構成され、
前記揺動部は、前記吸着面が前記物品の側面に当接していない場合に前記吸着面を初期位置に戻す第2の弾性体と、前記側面把持部を前記天面把持部に近づけたときに前記吸着面より先に前記物品に当接するガイドと、前記ガイドを前記側面把持部に連結する第3の弾性体と、を有し、
前記第3の弾性体のばね定数が、前記第2の弾性体のばね定数及び前記第1の弾性体のばね定数より大きいことを特徴とする移動機械のハンド。
【請求項14】
物品を吸着して把持する把持部と、前記把持部による前記物品の把持及び前記把持部の移動を制御する制御部と、を有する移動機械の制御方法であって、
前記制御部は、
前記物品の把持禁止領域を示す情報を含む物品情報を保持し、
前記物品情報に基づいて、前記物品の把持禁止領域以外の領域を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする移動機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動機械、移動機械のハンドおよび移動機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
労働人口比率の低下や労働賃金の上昇に伴い、物流業での荷物の運搬や商品のピッキング、および製造ラインへのロボットの導入が進んでいる。従来、ロボットの導入においては、あらかじめロボット動作を決定し、実際にロボットを動かしながらロボットに動作を教示する。このとき、把持物を落下させず、かつロボットを駆動するモータの負荷が大きくならないよう、作業者が実機の動きを見ながら、ロボットの動作を調整する。しかし、これらの調整作業は、経験に基づく熟練作業であり、教示する作業者の能力に左右される。
【0003】
そこで、作業者の能力に左右されないロボット動作の調整方法として、特許文献1および特許文献2が開示されている。
【0004】
特開2020-93306(特許文献1)には、物品上面を吸着するだけでなく、下から支える爪を有するハンドが開示されている。
【0005】
特開2020-163479(特許文献2)には、搬送時の遠心力に対抗するために側面を支える構造物を有する搬送方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-93306号公報
【特許文献2】特開2020-163479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、物品を下から支える構造の爪を有するハンドであるが、爪を差し込む隙間が必要となり、用途が限られる。特許文献2は、吸着面が天面のみであり、天面の強度が低い場合には適用できない。
【0008】
本発明の目的は、把持される部分の強度が低い物品に対し、把持部にかかる負荷を低減するように動作させることにより、把持している物品の落下や破損を防止する移動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を以下に挙げる。物品を吸着して把持する把持部と、前記把持部による前記物品の把持及び前記把持部の移動を制御する制御部と、を有する移動機械であって、前記制御部は、前記物品の把持禁止領域を示す情報を含む物品情報を保持し、前記物品情報に基づいて、前記物品の把持禁止領域以外の領域を把持するように前記把持部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、物品を損傷することなく、高速に移動することができ、ロボットの稼働率向上と作業効率向上、把持物ダメージ低減を実現することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1におけるロボットを用いた自動移動機械の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】本発明の実施例1におけるL型ハンドを示す斜視図である。
【
図2B】本発明の実施例1におけるL型ハンドを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1における平面ハンドを示す斜視図である。
【
図4A】本発明の実施例1における物品の一例である、ラップラウンド式段ボール箱を示す斜視図である。
【
図4B】本発明の実施例1におけるラップラウンド式段ボール箱の、接着剤の位置における断面図を示す。
【
図5A】本発明の実施例1において段ボール箱の天面を吸着する天面吸着ユニットの把持位置を説明する斜視図である。
【
図5B】本発明の実施例1において段ボール箱の天面を吸着する天面吸着ユニットの把持位置を説明する斜視図である。
【
図5C】本発明の実施例1において段ボール箱の天面を吸着する天面吸着ユニットの把持位置を説明する斜視図である。
【
図5D】本発明の実施例1において段ボール箱の天面を吸着する天面吸着ユニットの把持位置を説明する斜視図である。
【
図6】本発明の実施例1における制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施例1における制御装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8A】本発明の実施例1におけるL型ハンドの吸着位置を示した斜視図である。
【
図8B】本発明の実施例1におけるL型ハンドの吸着位置を示した斜視図である。
【
図9A】本発明の実施例における式1、式3および式6の関係を表した模式図である。
【
図9B】本発明の実施例における式1、式3および式6の関係を表した模式図である。
【
図10】本発明の実施例1における天面吸着ユニットの配置距離を算出する処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例1における天面吸着ユニットの配置距離を算出する処理を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施例1における天面吸着ユニットの配置距離を算出する処理を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施例1においてロボットおよびハンドを動作させる処理を示すフローチャートである。
【
図14A】本発明の実施例1におけるL型ハンドの吸着動作を説明する上面図である。
【
図14B】本発明の実施例1におけるL型ハンドの吸着動作を説明する上面図である。
【
図14C】本発明の実施例1におけるL型ハンドの吸着動作を説明する上面図である。
【
図15】本発明の実施例1における移動装置情報記憶領域に格納されている移動装置情報管理テーブルの一例を示す説明図である。
【
図16】本発明の実施例1における物品情報記憶領域に格納されている物品情報管理テーブルの一例を示す説明図である。
【
図17】本発明の実施例1における表示部に表示される表示情報の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例0013】
図1~
図17を用いて、本発明の第一の実施例を説明する。
【0014】
<自動移動機械の構成例>
図1は、本発明の実施例1におけるロボット1を用いた自動移動機械100の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
本実施例では、複数の物品が積層されている物品群6から物品5を取り出し、コンベア(図示せず)上に移動させる動作、および、コンベア上から物品5を取り、物品群6上に積む動作を例に説明する。しかし、本発明は、例えば箱の中または棚に積まれた物品の取り出し、積み付けなど、種々の動作に適用することができ、上記の動作に限定されるものではない。
【0016】
本実施例では3軸制御のロボットを例に説明するが、制御軸数および装置構成はこれに限られるものではなく、直動機構またはリンク機構など、回転機構に限定されるものではない。また、本実施例では1本腕を有するロボットを想定したアルゴリズムを記述しているが、腕の本数は2本以上であってもよい。また、撮影装置の台数および設置位置についても実施例に記載したものに限られず、例えば物品群6の側方に撮影装置を設置してもよいし、複数台の撮影装置を設置してもよい。
【0017】
本実施例では、ハンド3の構成として、L型ハンド4と平面ハンド7を例に説明するが、吸着面数および駆動機構などが上記と異なる他の機構であってもよい。また、L型ハンド4と平面ハンド7の両方に共通となる説明ではハンド3と記述する。
【0018】
自動移動機械100は、移動装置12、制御装置10および撮影装置11で構成される。移動装置12は、ロボット1とハンド3で構成される。ロボット1には、ハンド3が取り付けられており、制御装置10からの動作指令に従って動作する。
【0019】
撮影装置11は、複数の物品5が積層されている物品群6の積層情報を取得するための画像を撮影するものである。認識した物品群6の積層情報は、物品群6から物品5を取り出す場合には、次に移動する物品5を特定するための情報取得に使用され、積まれている物品群6に対してさらに物品5を積む場合には、新たに積み付ける位置を特定する情報を取得するために使用される。撮影装置11は、ステレオカメラ、3Dスキャナまたは2Dカメラなどの、一般的なセンシングデバイスを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、撮影装置11は、ロボット1の手先に取り付けられてもよい。
【0020】
制御装置10は、ロボット1から取得したロボット関節角度、角速度、角加速度などのロボット情報と撮影装置11で取得した撮影情報を用いて物品群6の積層情報を抽出し、移動する物品5をハンド3で吸着して把持する位置と姿勢を特定する。さらに、ハンド3の動作およびロボット1で移動する動作を生成したのち、ロボット1およびハンド3の制御情報を生成し、ロボット1およびハンド3を制御する。
【0021】
<L型ハンド機構構成の一例>
L型ハンド4の構成例について
図2を用いて説明する。
【0022】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の実施例1におけるL型ハンド4を示す斜視図である。
【0023】
L型ハンド4は、本体部30と側面ハンド部20で構成される。本体部30は、本体フレーム31、天面吸着ユニット32、本体連結板33、ヨー回転機構部34、ヨー回転機構駆動モータ35、支柱36、フランジ37、シリンダ38、シリンダ連結部39、およびスライダレール27で構成される。
【0024】
本体フレーム31に天面吸着ユニット32が下向きに取り付けられている。天面吸着ユニット32は、物品5の天面側を吸着して把持する機構部であり、複数の吸着パッドを整列配置した構造、または、スポンジ状の吸着部で吸着する構造等、一般的な構造の吸着デバイスを用いることができる。
【0025】
本体フレーム31の上側には、本体連結板33を介して、ヨー回転機構部34が取り付けられ、さらに、支柱36およびフランジ37を介して、ロボット1に取り付けられる。ヨー回転機構部34は、ヨー回転機構駆動モータ35で駆動され、Z軸まわりに本体フレーム31を回転させることができる。
【0026】
側面ハンド部20は、側面フレーム26、揺動機構連結部24、揺動機構稼働部22、連結軸23、揺動部ばね25、側面吸着ユニット21、吸着穴42を有する吸着部41、ガイド28、ガイドばね29、およびガイドピン43で構成される。
【0027】
揺動機構連結部24、揺動機構稼働部22、連結軸23、および揺動部ばね25は、揺動機構部を構成しており、連結軸23を中心軸として、揺動機構稼働部22がZ軸まわりに揺動する。揺動機構連結部24と揺動機構稼働部22の間には、揺動部ばね25が連結軸23に対して対称となる位置に2個取り付けられており、物品5を把持していないときには、揺動機構連結部24と揺動機構稼働部22とが平行になるよう調整されている。
【0028】
側面吸着ユニット21は、物品5の側面側を吸着把持する機構部であり、天面吸着ユニット32と同様に複数の吸着パッドを整列配置した構造またはスポンジで吸着する構造等、一般的な構造の吸着デバイスを用いることができる。
図2Aに例示する側面吸着ユニット21には、スポンジ状の吸着部41が取り付けられている。吸着部41には、側面吸着ユニット21の吸着穴(図示せず)と対応するように吸着穴42があけられており、側面吸着ユニット21が吸引して負圧を発生させると、物品5に吸着部41が吸い付き、所定の厚さまで圧縮される。
【0029】
ガイド28は、ガイドピン43を介して側面吸着ユニット21に取り付けられており、ガイドピン43の軸方向に沿って動くようになっている。また、ガイド28と側面吸着ユニット21の間にガイドばね29が配置され、ガイド28を側面吸着ユニット21から離れる方向に押している。ここで、ガイドばね29のばね係数は、揺動部ばね25のばね係数より大きい値であることが望ましい。この場合、側面ハンド部20を物品側面に押し当てるように動かすとき、ガイド28が物品側面に当たったときには動かない。
【0030】
さらに、側面ハンド部20を押し込んでいくと、物品表面をガイド28が滑りながら移動し、揺動部が回動して物品側面にならう(すなわち吸着部41の吸着面が物品側面と平行になる)。さらに押し込むと、ガイド28が沈み込み、吸着部41を物品側面に密着させることができる。一般的に、吸着部41は、摩擦係数が大きく滑りにくいが、それより摩擦係数が小さいガイド28を設けることで、揺動部が物品側面の傾きにならいやすくなるという効果がある。これは、吸着部41が、ベローズタイプの吸着パッドであっても同様に機能することはいうまでもない。
【0031】
側面ハンド部20は、スライダレール27を介して本体フレーム31に連結されており、X軸方向への平行移動が可能である。側面ハンド部20は、本体フレーム31に取り付けられたシリンダ38とシリンダ連結部39を介して連結されており、シリンダ38を伸縮することで、位置を変えることができる。シリンダ38には、エア駆動方式または電動方式等、一般的な方式のデバイスを用いることができる。エア駆動方式の場合、駆動するエアの圧力を調整することで、把持している物品5に側面ハンド部20を押し付ける力の調整が可能である。また、電動方式の場合は、駆動電流の調整および力覚センサを用いたフィードバック制御によって、押し付ける力の調整が可能である。また、シリンダ38は、ストッパを備えることで、L型ハンド4が傾いたときに、側面ハンド部20にかかる重力で、シリンダ38が引っ張られて位置がずれることを防止することができる。
【0032】
<平面ハンド構成の一例>
平面ハンド7の構成例について
図3を用いて説明する。
【0033】
図3は、本発明の実施例1の平面ハンド7を示す斜視図である。
【0034】
平面ハンド7は、本体フレーム31、天面吸着ユニット32、ヨー回転機構部34、ヨー回転機構駆動モータ35、支柱36、およびフランジ37で構成される。
【0035】
本体フレーム31に天面吸着ユニット32が下向きに取り付けられている。天面吸着ユニット32は、複数の吸着パッドを整列配置した構造またはスポンジ状の吸着部で吸着する構造等、一般的な構造の吸着デバイスを用いることができる。
【0036】
本体フレーム31の上側には、ヨー回転機構部34が取り付けられ、さらに、支柱36およびフランジ37を介して、ロボット1に取り付けられる。ヨー回転機構部34は、ヨー回転機構駆動モータ35で駆動され、Z軸まわりに本体フレームを回転させることができる。
【0037】
<物品の一例>
物品5の一例として段ボール箱の構造について説明するが、この形状に限定されるものではなく、片面開きの蓋を有する箱状物品であれば適用可能である。
【0038】
図4Aは、本発明の実施例1における物品5の一例である、ラップラウンド式段ボール箱を示す斜視図である。
【0039】
ラップラウンド式段ボール箱は、内容物を包み込んでフラップ201の端を接着剤202で固定することで、箱形状とするものである。したがって、接着剤202は、フラップの端に、ほぼ直線状に並んで配置されている。
【0040】
図4Bは、本発明の実施例1におけるラップラウンド式段ボール箱の、接着剤202の位置における断面図を示す。
【0041】
側面側段ボール203(すなわち段ボール箱を構成する段ボールのうち側面がわの段ボール)を折り曲げたのりしろ部分にフラップ201を重ね、接着剤202で固定されている。フラップ201が側面側段ボール203よりはみ出すと、隣に別の段ボール箱を密着して置いたときにフラップ201が引っ掛かり、剥がれる危険性があるため、一般的にフラップ201が側面側段ボール203からはみ出さないように、フラップ隙間204をもって重ねられている。したがって、撮影装置11が撮影した段ボール箱の画像からフラップ隙間204を認識することで、その段ボール箱において接着剤202が塗布されている一端を容易に特定することができる。
【0042】
図5Aから
図5Dは、本発明の実施例1において段ボール箱の天面を吸着する天面吸着ユニット32の把持位置を説明する斜視図である。
【0043】
図5Aは、天面吸着ユニット32を接着剤202に重ねるように配置した例を示す。
図5Bは、天面吸着ユニット32を
図5Aのように配置して、段ボール箱をハンド3で吸着して持ち上げたときのA断面図を示す。このとき、段ボール箱の中に入っている内容物の重さによって、側面側段ボール203が下向きに引っ張られるため、接着剤202から側面側段ボール203を引きはがすような力が発生する。段ボールはピールされる力に弱いため、側面側段ボール203が接着剤202から剥がれる。
【0044】
一方、
図5Cに示すように、天面吸着ユニット32が接着剤202に重ならないように配置して吸着すると、
図5Dに示すように、フラップ201は天面吸着ユニット32の端で折れ曲がり、接着剤202近傍ではせん断する方向にしか力がかかからない。段ボールはせん断力に強いため、この状態で剥がれることはない。したがって、接着剤202に重ならないように天面吸着ユニット32を配置するとよい。
【0045】
<制御装置構成の一例>
制御装置の構成例について、
図6を用いて説明する。
【0046】
図6は、本発明の実施例1における制御装置10の構成例を示すブロック図である。
【0047】
制御装置10は、物品認識部110、移動物品選択部111、物品位置姿勢認識部112、吸着位置姿勢決定部113、移動動作生成部114、移動動作実行部120、記憶部101、入力部191、表示部192および通信部193で構成される。また、記憶部101は、移動装置情報記憶領域102および物品情報記憶領域103で構成される。
【0048】
物品認識部110は、撮影装置11が取得した撮影情報から、物品5の形状特徴情報および模様特徴情報を抽出し、物品情報管理テーブル1030に格納されている形状特徴情報および模様特徴情報と比較することで、物品5の品種Noおよび品種名称を特定する。物品認識部110は、あらかじめ移動する品種が指定されている場合には、指定された品種の物品を抽出し、指定されていない場合は、物品情報管理テーブル1030に格納されている全ての品種について照合し、抽出する。このとき、物品認識部110は、物品群6に含まれる物品5を少なくとも一つ抽出する。
【0049】
移動物品選択部111は、物品認識部110が抽出した物品の中から、コンベア上に移動させる物品5を選択する。
【0050】
物品位置姿勢認識部112は、移動物品選択部111で選択した物品5の位置および姿勢を認識する。吸着位置姿勢決定部113は、物品位置姿勢認識部112で認識した物品の位置および姿勢、物品情報記憶領域103に格納されている把持位置情報、移動装置情報記憶領域102に格納されているハンド吸着部情報、並びにロボット機構情報から、物品5を把持するときのロボット姿勢を決定する。
【0051】
移動動作生成部114は、物品5をハンド3で吸着把持する動作と、コンベア上に移動させるためのロボット動作情報を生成する。移動動作実行部120は、移動動作生成部114で生成したロボット動作情報およびハンド動作情報を、ロボット1およびハンド3を制御する制御命令に変換し、出力する。
【0052】
入力部191は、移動装置情報や物品情報の入力、メニューの選択指示、あるいはその他の指示等を入力する入力部であり、入力した情報は記憶部101に格納する。表示部192は、入力情報の表示、処理結果の表示、処理途中の経緯の表示等を行う表示部である。通信部193は、制御装置10と、ロボット1、ハンド3、制御装置10および撮影装置11との間でデータを送受信する通信部である。
【0053】
制御装置10のハードウェア構成は、これに限定されるものではないが、例えば以下の通りである。制御装置10は、CPU(中央処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶装置を含んで構成される。記憶部101は、ハードディスク装置などの外部記憶装置によって構成される。入力部191は、例えばキーボード、マウスなどを用いる。その他、タッチパネル、専用のスイッチ、センサまたは音声認識装置を用いてもよい。表示部192は、例えばディスプレイ、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイなど画面やスクリーンに情報を表示する装置を用いる。さらに、表示部192に表示された情報を用紙に出力するプリンタ(図示しない)を制御装置10に接続してもよい。
【0054】
なお、これらのハードウェア構成は、専用装置である必要はなく、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムを利用することができる。これらの制御装置10に含まれる各機能部111~114および120は、制御装置10において、CPUによって記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって実現される。すなわち、これらの各機能部は、ソフトウェアによって構築される機能である。
【0055】
<制御装置における制御情報生成例>
図6に示した制御装置10における制御情報生成の手順について、
図7~
図14を用いて説明する。
【0056】
図7は、本発明の実施例1における制御装置10の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
物品認識(ステップS10)では、物品認識部110が、撮影装置11によって取得された撮影情報を用い、積層された物品群6の中から少なくとも一つの物品5を抽出する。移動物品選択(ステップS11)では、移動物品選択部111が、物品認識(ステップS10)で抽出された複数の物品5の中から、コンベアへ移動する物品5を選択する。次に、物品位置姿勢認識(ステップS12)で、物品位置姿勢認識部112が、撮影装置11によって取得された撮影情報から、移動する物品5の位置および姿勢を抽出する。
【0058】
次に、吸着位置姿勢決定(ステップS13)で、吸着位置姿勢決定部113が、物品5の位置姿勢、移動装置情報記憶領域102に格納されているハンド形状情報、および、物品情報記憶領域103に格納されている吸着オフセット情報を用いて、物品5を吸着把持するときのハンド3の位置および姿勢を求め、その位置および姿勢を実現するロボット1の各関節角度を移動装置情報記憶領域102に格納されているロボット機構情報を用いて算出する。
【0059】
次に、移動動作生成(ステップS14)で、移動動作生成部114が、ロボット1が物品5をハンド3で吸着把持する動作と、物品5をコンベアへ移動させるための移動動作とを生成する。最後に、移動動作実行(ステップS15)で、移動動作実行部120が、移動動作生成(ステップS14)で生成された動作を、ハンド3およびロボット1の制御信号に変換したのち、通信部193を介して、ロボット1に出力する。以上のステップS10からステップS15を、物品群6の全ての物品5に対して繰り返し実行する。
【0060】
以下、
図7に示したフローチャートの各ステップの詳細について説明する。
【0061】
物品認識(ステップS10)では、物品認識部110は、撮影装置11によって取得された撮影情報を用い、物品表面に描かれた模様またはマークを、パターンマッチングまたは特徴量抽出等の一般的な画像認識手法を用いて認識することで、物品5を抽出する。あるいは、物品5のエッジ情報などの形状特徴に着目して抽出する方法でもよく、その他の一般的な物品認識手法を用いることができる。
【0062】
物品5の上方または側方に積まれている他の物品5が物品認識の障害となり、一度に物品群6の全ての物品5を抽出できるとは限らない。しかし、抽出できた物品から順にコンベアへ移動することで物品認識処理上の障害が取り除かれるため、再度、物品認識したときには抽出可能となる。これを繰り返すことで、物品群6に含まれるすべての物品5を抽出することができる。
【0063】
移動物品選択(ステップS11)では、移動物品選択部111は、物品認識(ステップS10)によって抽出された複数の物品5の中から、コンベアに移動する物品5を一つ選択する。選択方法として、例えば、一番上の段にあるロボット1に近い列の中で、一番右に位置する物品5を選択するなどのルールを設けることができるが、この方法に限定されるものではない。
【0064】
物品位置姿勢認識(ステップS12)では、物品位置姿勢認識部112は、移動物品選択(ステップS11)で選択した物品5の位置および姿勢を、撮影装置11によって取得された撮影情報から抽出する。このとき、フラップ201と側面側段ボール203との間のフラップ隙間204を認識することで、物品5の姿勢および接着剤202の位置を推定することができる。一般的に、フラップ隙間204が存在する一端に接着剤202がほぼ直線状に(例えば、接着剤202が配置された領域の長手方向がフラップ隙間204の長手方向と略平行になるように)配置されており、その接着剤202が配置された領域の幅は、物品情報記憶領域103に配置禁止距離として格納されている。
【0065】
さらに、L型ハンド4で吸着把持する場合には、物品位置姿勢認識部112は、L型ハンド4で吸着把持する際に障害となる、隣接する物品情報も抽出する。具体的には、移動する物品5が有する面(
図4の段ボール箱の例では6面)ごとに、隣接する物品5が存在するかどうかを抽出し、移動する物品5の周囲にL型ハンド4を置く空間が存在するかを判定すればよい。
【0066】
吸着位置姿勢決定(ステップS13)では、吸着位置姿勢決定部113は、ハンド3の把持位置と姿勢を決定し、その姿勢をとるためのロボット位置姿勢を算出する。
【0067】
まず、L型ハンド4の把持位置と姿勢を決定する方法について
図8~
図14を用いて説明する。L型ハンド4を用いる場合、吸着面として天面と側面の2面が必要となるが、吸着位置姿勢決定部113は、まず、接着剤202が塗布されている天面側の制約条件に加え、側面ハンド部の可動範囲を考慮して天面吸着ユニット32の吸着位置を決定する。
【0068】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の実施例1におけるL型ハンド4の吸着位置を示した斜視図である。なお、
図8Aおよび
図8Bにおいて、L型ハンド4は天面吸着ユニット32と側面吸着ユニット21のみ記載し、その他の機構は省略した。
【0069】
図7の物品位置姿勢認識(ステップS12)で認識されたフラップ隙間204に隣接し、フラップ隙間204の長手方向と略平行な位置に、接着剤202がほぼ一直線上に並んでいることから、吸着位置姿勢決定部113は、フラップ隙間204を基準に天面吸着ユニットの配置位置を決定する。
図8Aおよび
図8Bに示すように、接着剤202と天面吸着ユニット32が重ならないようにするため、吸着位置姿勢決定部113は、フラップ隙間204から配置距離Ltだけ離れた位置に、フラップ隙間204の長手方向と天面吸着ユニット32の長手方向とが略平行となるように、天面吸着ユニット32を配置する。
【0070】
なお、上記のように、フラップ隙間204の長手方向と接着剤202が並ぶ方向(すなわち接着剤202が配置された領域の長手方向)とは略平行である。このため、フラップ隙間204の長手方向と天面吸着ユニット32の長手方向とが略平行となるように天面吸着ユニット32を配置すると、天面吸着ユニット32による把持が禁止された領域(後述する
図16の配置禁止距離L1によって規定された領域)の長手方向と天面吸着ユニット32の長手方向とが略平行となる。このように両者を略平行とすることによって、天面吸着ユニット32が物品5を破損することなく、安定して把持しやすくなる。略平行とは、天面吸着ユニット32が物品5を破損せずに安定して把持できる範囲であればよいが、一例をあげれば、両者のなす角度が30°以下となる範囲である。
【0071】
以下、
図8Aに示すように、接着剤202から遠い側面に側面吸着ユニット21を配置するときにおけるL型ハンド4の吸着位置算出方法の一例を説明する。
【0072】
接着剤202と天面吸着ユニット32とが重ならず、かつ天面吸着ユニット32の吸着面全面でフラップ201を吸着するための条件として、式1を満たすように天面吸着ユニット32を配置する。ここで、配置禁止距離L1とは、天面吸着ユニット32が接着剤202と重ならないように、フラップ隙間204から離して置く距離のことであり、物品情報記憶領域103に物品別に格納されている。また、Wは物品5の幅、Wtは天面吸着ユニット32の幅を表す。
【0073】
L1≦Lt≦W-Wt …(式1)
【0074】
さらに、物品5の重心位置の真上(例えば、物品5の重心を通る鉛直線と物品5の天面との交点を含む天面上の領域)に天面吸着ユニット32を配置すると物品5を傾けないで吸着把持できるため、より重い物品を持ち上げられることから、式2を満たす配置距離Ltを第一候補とするとよい。なお、式2は、物品5内に内容物が均等に配置され、寸法中心に重心がある場合の例を示しており、物品5内に内容物が偏って配置されている場合などでは、異なる式を用いてもよい。また、天面にミシン目がある場合または穴が開いている場合など、重心位置の真上の位置で吸着把持できない場合は、重心位置とは異なる把持位置を指定する式を用いてもよい。
【0075】
Lt=L0=(W-Wt)/2 …(式2)
【0076】
式1、式2を満たす配置距離Ltを天面吸着位置の第一候補とするが、L0<L1の場合は、天面吸着ユニット32が接着剤202と重なってしまうため、吸着位置を重心位置の真上からずらし、配置距離LtをL1に変更する。
【0077】
このとき、重心からずれた位置を吸着把持すると、把持位置に対する重量の不均衡によって物品5が傾くため、吸着できなくなって落下する危険性がある。そこで、物品5が落下しない吸着把持位置の範囲を式3で与え、L1がこの範囲内にあるかを判定する。L1が式3を満たさない場合は、物品5が落下する把持位置となるため、把持不可である。
【0078】
ここで、このような重量の不均衡による落下が生じない把持位置の範囲を規定する数値として、重心位置の真上の位置から接着剤側への最大オフセット量である接着剤側オフセット量Fgと、その反対方向への最大オフセット量である罫線側オフセット量Fkは、物品情報記憶領域103に格納されている。ハンド3の構造が異なると、これらオフセット量も異なる。例えば、平面ハンド7は、一面で吸着しているため、重心位置からずれて吸着把持すると、容易に物品5が傾いて落下する。一方、L型ハンド4の場合は、側面吸着ユニット21が物品5の傾きを抑える働きをするため、より大きなオフセット量でも落下しない。したがって、物品情報記憶領域103には、ハンド3の構造毎に接着剤側オフセット量Fgと罫線側オフセット量Fkが格納される。
【0079】
L0-Fg ≦ Lt ≦L0+Fk …(式3)
【0080】
以上より、天面吸着ユニット32のみを考慮した配置距離Ltの第一候補は、L1またはL0、把持不可のうちいずれかである。
【0081】
次に、側面ハンド部20の可動範囲を考慮した配置距離Ltの第二候補の算出方法について説明する。天面吸着ユニット32の中心軸と側面吸着ユニット21の吸着面との間の距離を吸着ユニット間距離Lsとしたとき、スライダレール27で動作可能な範囲は式4であらわされる。ここで、Lminは吸着ユニット間距離Lsの最小値であり、Lmaxは最大値である。
【0082】
Lmin ≦Ls≦Lmax …(式4)
【0083】
図8Aに示すように、接着剤202から遠い側面に側面吸着ユニット21を置く例では、式2、式5の関係を用いて、式4を式6に書き換えることができる。
【0084】
Ls+Wt/2+Lt=W …(式5)
【0085】
2L0+Wt/2-Lmax≦Lt≦2L0+Wt/2-Lmin …(式6)
【0086】
配置距離Ltの第一候補は、L1かL0であるが、L型ハンド4の場合、側面吸着ユニット21も吸着可能とするためには、同時に式6も満たす必要がある。
【0087】
図9Aおよび
図9Bは、本発明の実施例における式1、式3および式6の関係を表した模式図である。
【0088】
数直線上に式1および式3をいずれも満たす配置距離Ltの範囲を示す。これは、物品5を落下も破損もさせずに把持できる配置距離Ltの範囲である。一方、式6を満たす範囲をケースA1~ケースA10およびケースB1~ケースB6として図示した。各ケースに対応する線分の範囲は、L型ハンド4の天面吸着ユニット32および側面吸着ユニット21がそれぞれ物品5の天面および側面を把持しようとするときに、物品5のサイズとL型ハンド4の構造(具体的には吸着ユニット間距離Lsがとりうる範囲)との関係によって制約される、天面吸着ユニット32が把持できる配置距離Ltの範囲である。なお、
図9Aおよび
図9Bでは式6の境界条件である、2L0+Wt/2-LmaxをA、2L0+Wt/2-LminをBと簡略表記し、それぞれのケースで選択した配置距離Ltを四角で示した。以下、2つの条件下でのケースについて説明する。
【0089】
図9Aに、L1<L0の条件下で式1および式3が満たされる範囲および式6が満たされる範囲の例を示す。
【0090】
式1と式3の両方を満たす配置距離Ltの下限値LLは、L0-FgまたはL1の大きい方の値であり、上限値LUは、L0+FkまたはW-Wtの小さい方の値である。
【0091】
ケースA1は、式6を満たす配置距離Ltの範囲がLLより小さい場合である。この場合は、吸着ユニット間距離Lsを最も短くしても天面吸着ユニット32がフラップ201からはみ出すか、または接着剤202に重なるため、把持不可である。
【0092】
ケースA10は、式6を満たす配置距離Ltの範囲がLUより大きい場合である。この場合は、吸着ユニット間距離Lsを最も長くしても、天面吸着ユニット32がフラップ201からはみ出すか、または重量の不均衡によって物品5が落下する場合に相当するため、把持不可である。
【0093】
ケースA2およびケースA5は、式6を満たす範囲に重心位置の真上の位置であるL0が含まれないため、天面吸着ユニット32を重心位置の真上からオフセットする必要がある。オフセット量を必要最小限とするため、配置距離Ltを2L0+Wt/2-Lminとする。これは、吸着ユニット間距離Lsを最も短くし、天面吸着ユニット32を重心位置の真上より接着剤202側にオフセットして吸着把持している状態である。
【0094】
ケースA3、ケースA4、ケースA6およびケースA7は、式6を満たす範囲にL0が含まれることから、天面吸着ユニット32の配置距離LtをL0とし、側面吸着ユニット21は、可動範囲の中で位置を調整して吸着する。
【0095】
ケースA8およびケースA9は、式6を満たす範囲にL0が含まれないため、天面吸着ユニット32を重心位置の真上からオフセットする必要がある。オフセット量を必要最小限とするため、配置距離Ltを2L0+Wt/2-Lmaxとする。これは、吸着ユニット間距離Lsを最も長くし、天面吸着ユニット32を重心位置の真上より接着剤202の反対の罫線側にオフセットして吸着把持している状態である。
【0096】
図9Bに、L1≧L0の条件下で式1および式3が満たされる範囲および式6が満たされる範囲の例を示す。
【0097】
この例では、重心位置の真上に天面吸着ユニット32を置くと接着剤202と重なるため、罫線側にオフセットする必要がある。したがって、配置距離Ltが取りうる範囲の下限値LLはL1となる。また、上限値LUは、W-Wt、またはL0+Fkの小さい方の値をとる。
【0098】
ケースB1は、式6を満たす配置距離Ltの範囲がL1より小さい場合である。この場合は、吸着ユニット間距離Lsを最も短くしても天面吸着ユニット32がフラップ201からはみ出すか、または接着剤202に重なる場合に相当するため、把持不可である。
【0099】
ケースB6は、式6を満たす範囲がLUより大きい場合である。この場合、吸着ユニット間距離Lsを最も長くしても、天面吸着ユニット32がフラップ201の罫線側にはみ出すか、または重量の不均衡によって物品5が落下する場合に相当するため、把持不可である。
【0100】
ケースB2およびケースB3は、式6を満たす範囲にL1が含まれるため、天面吸着ユニット32の配置距離LtをL1とし、側面吸着ユニット21は、可動範囲の中で位置を調整して吸着する。
【0101】
ケースB4とケースB5は、式6を満たす範囲にL1が含まれないため、天面吸着ユニット32をさらにオフセットする必要がある。オフセット量を必要最小限とするため、配置距離Ltを2L0+Wt/2-Lmaxとする。これは、吸着ユニット間距離Lsを最も長くし、天面吸着ユニット32を重心位置より罫線側にオフセットして吸着把持している状態である。
【0102】
図10から
図12は、本発明の実施例1における天面吸着ユニット32の配置距離Ltを算出する処理を示すフローチャートである。具体的には、
図10は、天面吸着ユニット32のみを考慮した配置距離Ltの第一候補を算出する処理を示すフローチャートである。
図11は、側面吸着ユニット21の可動範囲を考慮した第二候補の算出において、L1<L0であるときの処理を示すフローチャートである。
図12は、側面吸着ユニット21の可動範囲を考慮した第二候補の算出において、L1≧L0であるときの処理を示すフローチャートである。
【0103】
まず、ステップS21で、吸着位置姿勢決定部113は、重心位置の真上の位置L0を初期値としてLtにセットする。次に、ステップS22で、吸着位置姿勢決定部113は、セットしたLtが式1を満足するかどうかを判定する。満足しない場合は、天面吸着ユニット32が接着剤202に重なる場合であるため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS23で配置距離LtをL1に変更し、ステップS24の条件式で再度式1を満たすか判定する。ステップS24の条件式(式1)を満たさない場合は、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS33でフラグを把持不可に設定して終了する。
【0104】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS25の条件式で式3を満たすかどうか判定し、条件式を満たさない場合は、ステップS33でフラグを把持不可に設定して終了する。
【0105】
次にステップS24でL型ハンド4を使用するのか平面ハンド7を使用するのかによって、処理を分岐する。平面ハンド7を使用する場合は、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS32でフラグを把持可に設定して終了する。L型ハンド4を使用する場合は、側面吸着ユニットの可動範囲を考慮するため、
図11(1)へ進む。
【0106】
図11(1)では、吸着位置姿勢決定部113は、まず、ステップS41の条件式L1<L0を判定し、条件を満たさない場合は、
図12(2)へ分岐し、満たす場合は、以下の処理を継続する。
【0107】
まず、吸着位置姿勢決定部113は、式1および式3をいずれも満たす配置距離Ltの範囲を算出する。吸着位置姿勢決定部113は、ステップS42の条件式L0-Fg≧L1を満たす場合は、ステップS43で下限値LLにL0-Fgを設定し、満たさない場合は、ステップS44で下限値LLにL1を設定する。次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS45の条件式L0+Fk≦W-Wtを満たす場合は、ステップS46で上限値LUにL0+Fkを設定し、満たさない場合は、ステップS47で上限値LUにW-Wtを設定する。
【0108】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS48の条件式2L0+Wt/2-Lmin<LLで、側面ハンド部20を最も縮めたときの配置距離Ltが下限値LLより小さいかを判定する。その結果、配置距離Ltが下限値LLより小さい場合はケースA1に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS33でフラグに把持不可を設定して終了する。
【0109】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS49の条件式2L0+Wt/2-Lmin<L0で、側面ハンド部20を最も縮めたときの配置距離Ltが重心位置の真上の位置L0より小さいかを判定する。その結果、LtがL0より小さい場合はケースA2またはケースA5に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS50で配置距離Ltに2L0+Wt/2-Lminを設定後、ステップS32でフラグを把持可に設定して終了する。
【0110】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS51の条件式2L0+Wt/2-Lmax>L0で、側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離Ltが重心位置の真上の位置L0より大きいかを判定する。その結果、LtがL0より大きい場合は、吸着位置姿勢決定部113は、さらにステップS53の条件式2L0+Wt/2-Lmax>LUで側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離Ltが上限値LUより大きいかを判定する。その結果、配置距離Ltが上限値LUより大きい場合はケースA10に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS33でフラグに把持不可を設定して終了する。ステップS53において配置距離Ltが上限値LUより小さい場合はケースA8またはケースA9に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS52で配置距離Ltに2L0+Wt/2-Lmaxを設定後、ステップS32でフラグに把持可を設定して終了する。
【0111】
ステップS51の条件式で、側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離Ltが上限値LU以下である場合はケースA3、A4、A6またはA7のいずれかに相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS32でフラグを把持可に設定して終了する。この場合、配置距離LtはステップS21で設定されたL0である。
【0112】
図12はL1≧L0の場合のフローチャートである。まず、吸着位置姿勢決定部113は、式1および式3をいずれも満たす配置距離Ltの範囲を算出する。ステップS60で、吸着位置姿勢決定部113は、配置距離Ltの下限値LLにL1を設定する。次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS61の条件式を満たす場合は、ステップS62で上限値LUにL0+Fkを設定し、満たさない場合は、ステップS63で上限値LUにW-Wtを設定する。
【0113】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS64の条件式2L0+Wt/2-Lmin<LLで、側面ハンド部20を最も縮めたときの配置距離Ltが下限値LLより小さいかを判定する。その結果、配置距離Ltが下限値LLより小さい場合はケースB1に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS33でフラグに把持不可を設定して終了する。
【0114】
次に、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS65の条件式2L0+Wt/2-Lmax>L1で、側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離LtがL1より大きいかを判定する。その結果、配置距離LtがL1より大きい場合は、吸着位置姿勢決定部113は、さらにステップS66の条件式2L0+Wt/2-Lmax>LUで側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離Ltが上限値LUより大きいかを判定する。その結果、配置距離Ltが上限値LUより大きい場合はケースB6に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS33でフラグに把持不可を設定して終了する。ステップS66において配置距離Ltが上限値LUより小さい場合はケースB4またはケースB5に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS67で配置距離Ltに2L0+Wt/2-Lmaxを設定後、ステップS32でフラグに把持可を設定して終了する。
【0115】
ステップS65の条件式で、側面ハンド部20を最も伸ばしたときの配置距離Ltが上限値LU以下である場合はケースB2またはB3に相当するため、吸着位置姿勢決定部113は、ステップS32でフラグを把持可に設定して終了する。この場合、配置距離LtはステップS23で設定されたL1である。
【0116】
図8Bに示すように、接着剤202から近い側面に側面吸着ユニット21を配置する場合におけるL型ハンド4の吸着位置も同様に決定することができる。
図8Aと
図8Bのどちらの吸着位置に決定するかは、物品位置姿勢認識(ステップS12)で抽出した隣接する物品情報等を用いて決定することができる。例えば、どちらか一方に隣接する物品が存在しない場合は、隣接物品と干渉しない把持姿勢を選択し、両方とも隣接する物品が存在しない場合は、適切な指標によってどちらを吸着するか選択する。指標例として、例えば、ロボット姿勢が特異点からより離れている姿勢を選択する方法、直前の位置から移動時間が短い姿勢を選択する方法、または、理想的な把持位置に近い位置で吸着可能な姿勢を選択する方法など、一般的な選択方法を適用することができる。吸着位置を
図8Aに示す位置と
図8Bに示す位置との間で変更するときには、ヨー回転機構部34を用いることで、ロボットの姿勢を変更することなく、L型ハンド4の向きを変更することができる。
【0117】
次に、平面ハンド7の把持位置と姿勢を決定する方法について
図10を用いて説明する。平面ハンド7を用いる場合、吸着面として天面と側面のどちらかを吸着把持することができるが、本実施例では、天面吸着について説明する。側面吸着の場合は、接着剤202へ負荷がかからないため、従来方式を用いればよい。
【0118】
平面ハンド7で天面を吸着把持する場合、L型ハンド4の天面吸着と同様に決定することができる。
図10のステップS21からステップS25までは、L型ハンド4と同じ処理を実施する。ステップS24でL型ハンドではないと判定され、ステップS32でフラグに把持可を設定して終了する。
【0119】
図9A~
図12を参照して説明したように、平面ハンド7を使用する場合、物品5の天面のうち、接着剤202と重ならず、かつ、重量の不均衡によって物品5を落下させない範囲内のいずれかの位置が天面吸着ユニット32の吸着位置として特定される。このとき、当該範囲内で重心の直上に近い位置を把持することが望ましい。最も望ましいのは、当該範囲内で重心の直上に最も近い位置を把持することである。
【0120】
一方、L型ハンド4を使用する場合、接着剤202と重ならず、かつ、重量の不均衡によって物品5を落下させない範囲(すなわち
図9A及び
図9Bの数直線上に表示されたLtがとりうる範囲)のうち、物品5のサイズとL型ハンド4の構造(具体的には吸着ユニット間距離Lsがとりうる範囲)との関係に応じて天面吸着ユニット32が把持できる範囲(すなわち
図9AのケースA2~A9及びB2~B5の線分が示す範囲)内のいずれかの位置が天面吸着ユニット32の吸着位置として特定される。このとき、当該範囲内で重心の直上に近い位置を把持することが望ましい。最も望ましいのは、当該範囲内で重心の直上に最も近い位置を把持することである。
【0121】
移動動作生成(
図7のステップS14)では、移動動作生成部114は、物品群6からコンベアへ物品5を移動するためのロボット1とハンド3の動作を生成する。
【0122】
まず、L型ハンド4を用いて物品5を移動する場合に生成される動作例について
図13と
図14を用いて説明する。ここでは、移動動作生成部114が生成した動作を移動動作実行部120が実行する例を説明する。
【0123】
図13は、本発明の実施例1においてロボット1およびハンド3を動作させる処理を示すフローチャートである。
【0124】
ハンド配置(ステップS71)では、移動動作実行部120は、待機位置から移動する物品5の吸着位置へL型ハンド4を移動する。次に、移動動作実行部120は、天面吸着ON(ステップS72)で天面吸着ユニット32の吸着を開始し、所定時間あるいは所定の真空吸着圧力に到達するまで静止することで、吸着部41が真空吸着圧力で圧縮され、確実な吸着を実現することができる。次に、側面ハンド移動(ステップS73)で、移動動作実行部120は、側面ハンド部20を物品5に向かって移動させ、側面吸着ユニット21を物品5に密着させる。次に、側面吸着ON(ステップS74)で、移動動作実行部120は、側面吸着ユニット21の吸引を開始し、所定時間あるいは所定の真空吸着圧力に到達するまで静止する。次に、側面ハンド部固定(ステップS75)で、移動動作実行部120は、L型ハンド4を傾けたときに側面ハンド部20が動かないよう固定する。固定方法として、側面ハンド部20を動かすシリンダ38に搭載されているブレーキを駆動する方法、または、固定治具(図示せず)を使う方法など、一般的な方法を用いることができる。次に、プレイス位置移動(ステップS76)で、移動動作実行部120は、吸着した物品5をプレイス位置まで移動し、そこで吸着をOFF(ステップS77)する。最後に、移動動作実行部120は、待機位置へL型ハンド4を移動させる。
【0125】
図14Aから
図14Cは、本発明の実施例1におけるL型ハンド4の吸着動作を説明する上面図である。
【0126】
図14Aは、吸着位置姿勢決定(ステップS13)で生成した吸着位置座標に天面吸着ユニット32を配置して吸着した状態を示す。物品5は、物品位置姿勢認識(ステップS12)で位置と姿勢を認識されるが、認識結果には誤差が含まれるため、物品5と側面吸着ユニット21が平行とならない場合がある。ここから、シリンダ38を縮めることで、側面ハンド部20を物品5に近づけていく。
【0127】
シリンダ38を縮めると、
図14Bに示すように、側面吸着ユニット21に取り付けられているガイド28が物品5に接触する。さらにシリンダ38を縮めると、ガイド28が物品5の表面を滑り、側面吸着ユニット21が回転することで、側面吸着ユニット21が物品側面の角度にならっていく。このとき、連結軸23とガイド28との間の距離が短いほど、滑る量が小さくなり、側面吸着ユニット21がならいやすくなる。
【0128】
図14Cに示すように、側面吸着ユニット21が物品側面と平行になったのち、さらにシリンダ38を縮めると、ガイド28が沈み込みながら、吸着部41が物品5に密着する。この後、側面吸着をONして吸着したのち、側面ハンド部20が動かないように、シリンダ38のブレーキなどの手段で側面ハンド部20を固定する。
【0129】
次に、平面ハンド7を用いて物品5を移動する場合に生成される動作例について
図13を用いて説明する。まず、移動動作実行部120は、ハンド配置(ステップS71)と天面吸着ON(ステップS72)を実行後、プレイス位置移動(ステップS76)、吸着OFF(ステップS77)、待機位置移動(ステップS78)を順次実行する。各ステップで実行する内容は、L型ハンド4の場合と同様である。
【0130】
移動動作実行(
図7のステップS15)では、移動動作実行部120が、移動動作生成(
図7のステップS14)で生成したロボット1とL型ハンド4の動作を、制御可能な命令に変換して出力する。
【0131】
以後、ステップS10からステップS15を必要回数繰り返す。
【0132】
<記憶部構成の一例>
記憶部101に格納されている情報について
図15および
図16を用いて説明する。
【0133】
図15は、本発明の実施例1における移動装置情報記憶領域102に格納されている移動装置情報管理テーブル1020の一例を示す説明図である。
【0134】
移動装置情報管理テーブル1020には、ハンド情報として、平面ハンドまたはL型ハンドなどのハンド構成、吸着面寸法、および吸着面座標などが格納されている。L型ハンドの場合、ハンド情報は吸着ユニット間距離Lsを含む。Lsの値は、一般的には、最小値から最大値までの幅を持った値である。また、ロボット情報として、リンク数、各リンクの長さ、関節の方向、可動範囲、最大角速度、および最大角加速度などが格納されている。また、周辺環境情報として、物品群6が置かれているピッキング位置の座標、物品5を置くコンベア上の座標、障害物の大きさ、および障害物の座標などが格納されている。
【0135】
図16は、本発明の実施例1における物品情報記憶領域103に格納されている物品情報管理テーブル1030の一例を示す説明図である。
【0136】
物品情報管理テーブル1030には、物品の寸法および重心位置のほか、接着剤202を回避するための吸着オフセット量が格納されている。
【0137】
具体的には、
図16の例において、配置禁止距離L1は、天面吸着ユニット32が接着剤202の領域と重なることによる物品5の破損を防ぐために、天面吸着ユニット32による把持を禁止する領域を規定するものである。一方、最大オフセット値FgおよびFkは、天面吸着ユニット32が物品5の重心から外れた位置を把持した結果、重量の不均衡によって物品5が落下することを防ぐために許容される把持位置のオフセット値の最大値を示す。一般的に、L型ハンドを用いた場合には側面吸着ユニット21を用いることで物品5が安定しやすいため、平面ハンドの場合より最大オフセット値が大きくなる。
【0138】
<画面表示の一例>
図17は、本発明の実施例1における表示部192に表示される表示情報1120の一例を示す説明図である。
【0139】
物品情報表示部1121には物品5の品種および寸法が表示される。物品5の品種情報欄には、作業者が選択ボタン1143を操作し、物品情報管理テーブル1030に登録されている物品情報に基づき表示されたリストから選択する方法、または、撮影装置11が撮影した画像から、物品認識部110が品種を特定する方法などを用いて抽出した品種情報を表示する。なお、移動対象物品は、複数種類指定してもよい。
【0140】
寸法情報欄には、物品情報管理テーブル1030に品種情報と関連付けて格納されている寸法情報、または撮影装置11で撮影した画像から物品認識部110が特定した形状寸法情報などから抽出した形状寸法情報を表示する。
【0141】
隣接物品情報表示部1122には、移動対象物品の位置姿勢を図示するとともに、移動対象物品の周辺に積層されている物品の位置姿勢も図示する。周辺に積層された物品などによって物品認識部110が物品を特定できなかった場合には、撮影装置11で取得した撮影情報として得られる三次元点群、または三次元的面情報などを、吸着把持に影響する障害物1161として図示する。また、複数品種の物品が混載されている場合には、品種毎に異なる色またはテクスチャ等で区別して表示してもよい。また、フラップ隙間204などに基づいて特定した接着剤202の位置を示すため、物品の向きがわかるよう接着剤位置マーク1162などを図示してもよい。
【0142】
吸着把持位置情報表示部1123には、使用するハンド名称、移動装置情報記憶領域102に格納されている吸着ユニット間距離Ls、物品情報管理テーブル1030に格納されている配置禁止領域L1、重心位置1163、最大オフセット量Fk、およびFg、天面吸着ユニット幅Wtから算出される把持可能領域1165、ならびに、吸着位置姿勢決定部13が決定した側面吸着ユニット21の位置、配置位置Lt、およびオフセット量1164などの吸着把持位置情報が図示される。
【0143】
登録・変更ボタン1142を操作することによって、記憶部101に格納されている情報の登録と修正が可能である。実行ボタン1141を操作することによって、移動動作が自動実行される。
【0144】
以上説明した実施例によれば、物品を損傷することなく、高速に移動することができ、ロボットの稼働率向上、作業効率向上、および把持物ダメージ低減を実現することができる。
【0145】
なお、上記の実施例はロボット1を用いた自動移動機械100のハンド3の制御を例として説明したが、その制御の少なくとも一部を人が手動で行うロボットに、本実施例のハンド3及びその制御を適用してもよい。
【0146】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0147】
(1)物品(例えば物品5)を吸着して把持する把持部(例えば少なくとも天面吸着ユニット32、又は、天面吸着ユニット32及び側面吸着ユニット21)と、把持部による物品の把持及び把持部の移動を制御する制御部(例えば制御装置10)と、を有する移動機械(例えばハンド3及びそれを制御する制御装置10)であって、制御部は、物品の把持禁止領域を示す情報を含む物品情報(例えば物品情報記憶領域103に格納される物品情報管理テーブル1030)を保持し、物品情報に基づいて、物品の把持禁止領域(例えば物品情報管理テーブル1030の配置禁止距離によって規定される領域)以外の領域を把持するように把持部を制御する。
【0148】
これによって、物品を損傷することなく、高速に移動することができ、ロボットの稼働率向上と作業効率向上、把持物ダメージ低減を実現することができる。
【0149】
(2)上記(1)において、物品は紙製の箱(例えば段ボール箱)であり、把持禁止領域は、箱を閉じるために箱を構成する紙を接着剤(例えば接着剤202)によって貼り合わせた領域を含む。
【0150】
これによって、箱の接着部分の損傷を防ぐことができる。
【0151】
(3)上記(1)において、制御部は、物品の把持禁止領域以外の領域に、把持部の長手方向と把持禁止領域の長手方向とが略平行になるように把持部を配置するように把持部による把持位置を決定し、決定した把持位置を把持するように把持部を制御する。
【0152】
これによって、箱の接着部分の損傷を防ぎながら、安定した把持をすることができる。
【0153】
(4)上記(1)において、把持部は、物品の天面を吸着して把持する天面把持部(例えば天面吸着ユニット32)と、物品の側面を吸着して把持する側面把持部(例えば側面吸着ユニット21)と、を含み、制御部は、天面把持部が物品の天面の把持禁止領域以外の領域を把持し、側面把持部が物品の複数の側面のうち面積が広い側面を把持するように把持部を制御する。
【0154】
これによって、安定した把持をすることができる。
【0155】
(5)上記(4)において、天面把持部と側面把持部との距離が変更可能である。
【0156】
これによって、物品のサイズ等に合わせて安定した把持をすることができる。
【0157】
(6)上記(1)において、物品情報は、物品を重量の不均衡によって落下させずに把持部が把持できる範囲である把持可能範囲を示す情報(例えば物品情報管理テーブル1030の最大オフセット値)を含み、制御部は、物品情報に基づいて、物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、把持可能範囲内の領域を把持するように把持部を制御する。
【0158】
これによって、物品を落下させることなく安定した把持をすることができる。
【0159】
(7)上記(6)において、把持部は、物品の天面を吸着して把持する天面把持部を含み、把持可能範囲は、物品の天面のうち物品を重量の不均衡によって落下させずに天面把持部が把持できる範囲であり、制御部は、把持部が物品の側面を吸着して把持する側面把持部を含まない場合、物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、把持可能範囲内の領域のうち物品の重心位置の直上の位置に近い位置を天面把持部が把持するように把持部を制御する(例えば
図10のステップS24でNoの場合)。
【0160】
これによって、破損及び落下をさせることなく物品を把持することができる。
【0161】
(8)上記(6)において、把持部は、物品の天面を吸着して把持する天面把持部を含み、把持可能範囲は、物品の天面のうち物品を重量の不均衡によって落下させずに天面把持部が把持できる範囲であり、制御部は、把持部が物品の側面を吸着して把持する側面把持部をさらに含む場合、物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、把持可能範囲内の領域のうち、天面把持部と側面把持部との距離がとりうる範囲と物品のサイズとの関係に基づいて天面把持部が把持可能な範囲内で物品の重心位置の直上の位置に近い位置を天面把持部が把持するように把持部を制御する(例えば
図9AのケースA2からケースA9または
図9BのケースB2からケースB5における制御)。
【0162】
これによって、破損及び落下をさせることなく物品を把持することができる。
【0163】
(9)上記(8)において、制御部は、物品の把持禁止領域以外の領域であって、かつ、把持可能範囲内の領域に、天面把持部と側面把持部との距離がとりうる範囲と物品のサイズとの関係に基づいて天面把持部が把持可能な範囲の少なくとも一部が含まれない場合(例えば
図9AのケースA1、ケースA10、
図9BのケースB1またはケースB6)、把持部が物品を把持できないと判定する。
【0164】
これによって、物品の破損及び落下を防止することができる。
【0165】
(10)上記(1)において、制御部は、物品を撮影した画像に基づいて物品の姿勢を認識し(例えば
図7のステップS12)、物品の姿勢と物品情報とに基づいて物品の把持禁止領域を特定する(例えば
図7のステップS13)。
【0166】
これによって、適切に把持禁止領域を特定し、物品の破損を防ぐことができる。
【0167】
(11)把持部を有する上記(1)に記載の移動機械のハンド(例えばL型ハンド4)であって、把持部は、物品の天面を吸着して把持する天面把持部(例えば天面吸着ユニット32)と、物品の側面を吸着して把持する側面把持部(例えば側面吸着ユニット21)と、を有し、移動機械のハンドは、側面把持部を天面把持部からの距離が変化する方向に移動させるアクチュエータ(例えばシリンダ38)をさらに有し、天面把持部が物品の天面を吸着して把持した後に、アクチュエータが側面把持部を天面把持部に近づける方向に移動させ(例えば
図14Aの動作)、側面把持部が物品の側面に接触し、側面把持部が物品の側面に押し付けられる力が所定の値に達した後に、側面把持部が物品の側面を吸着保持し(例えば
図14B及び
図14Cの動作)、側面把持部が物品の側面を吸着保持した後に、アクチュエータが側面把持部を固定する(例えば
図14Cの動作)。
【0168】
これによって、物品のサイズ等に合わせて確実に物品を把持することができる。
【0169】
(12)上記(11)において、側面把持部は、物品の側面を吸着する吸着面を当該側面と平行になるように揺動させる揺動部(例えば揺動機構連結部24及び揺動機構稼働部22等を含む揺動機構部)を有する。
【0170】
これによって、天面の把持位置に誤差があった場合にも、確実に物品を把持することができる。
【0171】
(13)上記(12)において、吸着面は、第1の弾性体(例えばスポンジ状の吸着部41)によって構成され、揺動部は、吸着面が物品の側面に当接していない場合に吸着面を初期位置に戻す第2の弾性体(例えばばね25)と、側面把持部を天面把持部に近づけたときに吸着面より先に物品に当接するガイド(例えばガイド28)と、ガイドを側面把持部に連結する第3の弾性体(例えばガイドばね29)と、を有し、第3の弾性体のばね定数が、第2の弾性体のばね定数及び第1の弾性体のばね定数より大きい。
【0172】
これによって、天面の把持位置に誤差があった場合にも、確実に物品を把持することができる。
【0173】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0174】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0175】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。