(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177889
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御プログラムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20221125BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20221125BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H04N1/32 609
H02M3/28 H
H04B1/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084317
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恒久
【テーマコード(参考)】
5H730
5K052
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE07
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG07
5H730FG12
5K052AA02
5K052BB15
5K052DD20
5K052FF26
(57)【要約】
【課題】 スイッチング周波数fsが可変のスイッチング電源を備える通信装置において、スイッチングノイズによるファクス通信への影響を抑制することができ、しかも、これを簡素かつ廉価な構成により実現することができる技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る通信装置の一例としての複合機(10)は、電源部(50)としてスイッチング周波数fsが可変のスイッチング電源装置を採用する。そして、ファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’以上となるように、当該スイッチング周波数fsが制御される。これにより、スイッチングノイズによるファクス通信への影響が抑制される。しかも、スイッチングノイズを減衰させるための減衰器などのノイズ除去手段が設けられないので、簡素かつ廉価な構成により当該スイッチングノイズによる影響を抑制することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して相手方装置と通信を行う通信手段、
前記通信手段を含む電気的負荷の電力供給源であり、当該電気的負荷の大きさに応じてスイッチング周波数を変化させるスイッチング電源装置、および、
前記通信が行われるときに、前記電気的負荷の大きさに拘らず、前記スイッチング周波数が前記通信に係る通信周波数帯域よりも高い所定周波数以上となるように当該スイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御手段を備える、通信装置。
【請求項2】
前記スイッチング周波数にスペクトラム拡散を施す拡散手段をさらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信手段は、前記通信にエラーが発生したときに改めて当該通信を行うリトライ機能を有し、
前記スイッチング周波数制御手段は、前記リトライ機能により改めて前記通信が行われる前には、前記電気的負荷の大きさに応じた前記スイッチング周波数を維持し、当該リトライ機能により改めて当該通信が行われるときに、当該電気的負荷の大きさに拘らず、当該スイッチング周波数が前記所定周波数以上となるように当該スイッチング周波数を制御する、請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記スイッチング周波数制御手段は、前記スイッチング周波数を当該スイッチング周波数の可変範囲の上限周波数に設定することで、当該スイッチング周波数が前記所定周波数以上となるように制御する、請求項1から3までのいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記スイッチング周波数制御手段は、前記リトライ機能により最初に前記通信が行われるときに、前記スイッチング周波数を前記所定周波数に設定し、当該リトライ機能により改めて当該通信が行われるたびに、当該スイッチング周波数を上げる、請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記通信にエラーが発生したときに当該通信に係る通信速度を下げた上で改めて当該通信を行うフォールバック機能を有し、
前記スイッチング周波数制御手段は、前記通信が最初に行われるときに、前記スイッチング周波数を前記所定周波数に設定し、前記フォールバック機能により前記通信速度が下げられるたびに、当該スイッチング周波数を上げる、請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信は、ファクス通信である、請求項1から6までのいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
通信網を介して相手方装置と通信を行う通信手段、および、当該通信手段を含む電気的負荷の電力供給源であり当該電気的負荷の大きさに応じてスイッチング周波数を変化させるスイッチング電源装置を備える通信装置の制御プログラムであって、
前記通信が行われるときに、前記電気的負荷の大きさに拘らず、前記スイッチング周波数が前記通信に係る通信周波数帯域よりも高い所定周波数以上となるように当該スイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御手順を、前記通信装置のコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【請求項9】
通信網を介して相手方装置と通信を行う通信手段、および、当該通信手段を含む電気的負荷の電力供給源であり当該電気的負荷の大きさに応じてスイッチング周波数を変化させるスイッチング電源装置を備える通信装置の制御方法であって、
前記通信が行われるときに、前記電気的負荷の大きさに拘らず、前記スイッチング周波数が前記通信に係る通信周波数帯域よりも高い所定周波数以上となるように当該スイッチング周波数を制御するスイッチング周波数制御ステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信装置の制御プログラムおよび制御方法に関し、特に、通信網を介して相手方装置と通信を行う、通信装置、通信装置の制御プログラムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、通信装置としてのファクス(ファクシミリ)装置において、いわゆるEMIノイズ(放射ノイズおよび伝導ノイズ)を除去する技術が、開示されている。この特許文献1に開示された技術によれば、サービストーン信号などのファクス通信に係る信号以外の信号、つまりノイズが、所定時間以上にわたって発生するなどの所定の条件が満足されたときに、当該ファクス通信に係る信号経路に減衰器などのノイズ除去手段が挿入される。これにより、ノイズが除去され、当該ノイズによるファクス通信への影響が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ファクス装置などの通信装置においては、その電力供給源として、スイッチング電源装置が採用されることが多い。スイッチング電源装置は、リニア電源装置と比較して、小型、軽量、高効率であるなどの優れた利点を有する。また最近では、スイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置が主流となりつつある。このスイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置によれば、軽負荷時にスイッチング周波数が下げられることで、当該軽負荷時のスイッチング損失が低減され、さらなる省エネルギ化が図られる。
【0005】
ただし、スイッチング電源装置は、スイッチングノイズを発する、という欠点を有する。このスイッチングノイズの周波数は、スイッチング周波数に従う。ゆえに、スイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置では、たとえばスイッチング周波数が低いほど、スイッチングノイズの周波数が低くなる。そして、このようなスイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置を採用するファクス装置においては、スイッチング周波数が低くなると、スイッチングノイズがファクス通信と干渉して、当該ファクス通信が影響を受けることがある。
【0006】
なお、ファクス通信に係る通信(伝送)周波数帯域は、可聴周波数帯域内の300Hz~3400Hzであるのに対して、スイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置の当該スイッチング周波数の可変範囲は、おおむね数十kHz~数百kHzであり、これら両者は、直接的には重複しない。そうであるにも拘らず、スイッチングノイズがファクス通信に影響するのは、スイッチング周波数にスペクトラム拡散が施されることが関係するものと、考えられる。すなわち、スイッチングノイズを低減するために、スイッチング周波数に数百Hz~数kHzほどの周波数で変調を掛けることにより、当該スイッチング周波数に変動(ゆらぎ)を与える、スペクトラム拡散が施されることが、常套的に行われる。このスペクトラム拡散が施されることが、前述の如くスイッチング周波数が低くなると、スイッチングノイズがファクス通信に影響することに関係するものと、考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、電力供給源としてスイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置を備える通信装置において、スイッチングノイズによる通信への影響を抑制することができ、しかも、これ簡素かつ廉価な構成により実現することができる、新規な技術を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、通信装置に係る第1発明、通信装置の制御プログラムに係る第2発明、および、通信装置の制御方法に係る第3発明を、含む。
【0009】
このうちの通信装置に係る第1発明は、通信手段、スイッチング電源装置およびスイッチング周波数制御手段を備える。通信手段は、通信網を介して相手方装置と通信を行う。スイッチング電源装置は、通信手段を含む電気的負荷の電力供給源である。このスイッチング電源装置のスイッチング周波数は、電気的負荷の大きさに応じて変化し、つまり可変である。その上で、スイッチング周波数制御手段は、通信手段による通信が行われるときに、電気的負荷の大きさに拘らず、スイッチング周波数が当該通信に係る通信周波数よりも高い所定周波数以上となるように、換言すればスイッチング周波数が所定周波数を下回らないように、当該スイッチング周波数を制御する。
【0010】
なお、本第1発明においては、拡散手段が、さらに備えられてもよい。この拡散手段は、スイッチング周波数にスペクトラム拡散を施す。
【0011】
また、通信手段は、リトライ機能を有するものであってもよい。このリトライ機能によれば、通信にエラーが発生したときに、改めて当該通信が行われる。この場合、スイッチング周波数制御手段は、リトライ機能により改めて通信が行われる前には、スイッチング周波数を電気的負荷に応じた値とする。そして、スイッチング周波数制御手段は、リトライ機能により改めて通信が行われるときに、換言すれば当該リトライ機能による再度の通信が行われるときに、はじめて、スイッチング周波数が所定周波数以上となるように、当該スイッチング周波数を制御するのが、好ましい。
【0012】
スイッチング周波数制御手段は、たとえばスイッチング周波数を当該スイッチング周波数の可変範囲の上限周波数に設定(固定)することで、当該スイッチング周波数が所定周波数以上となるように制御してもよい。
【0013】
これに代えて、スイッチング周波数制御手段は、リトライ機能により最初に通信が行われるときに、換言すれば当該リトライ機能による再度の通信が最初に行われるときに、スイッチング周波数を所定周波数に設定してもよい。その上で、スイッチング周波数制御手段は、リトライ機能により改めて通信が行われるたびに、つまり当該リトライ機能による再度の通信が繰り返されるたびに、スイッチング周波数を上げることで、当該スイッチング周波数が所定周波数以上となるように制御してもよい。
【0014】
さらに、通信手段は、フォールバック機能を有するものであってもよい。このフォールバック機能によれば、通信にエラーが発生したときに、当該通信に係る通信速度が下げられた上で、改めて当該通信が行われる。この場合、スイッチング周波数制御手段は、通信が最初に行われるときに、つまり当該通信が開始されるときに、スイッチング周波数を所定周波数に設定する。そして、スイッチング周波数制御手段は、フォールバック機能が働いて、当該フォールバック機能により通信速度が下げられるたびに、スイッチング周波数を上げることで、当該スイッチング周波数が所定周波数以上となるように制御してもよい。
【0015】
本第1発明における通信は、たとえばファクス通信である。
【0016】
本発明のうちの第2発明に係る通信装置の制御プログラムは、当該通信装置のコンピュータにスイッチング周波数制御手順を実行させる。ここで、通信装置は、通信手段およびスイッチング電源装置を備える。通信手段は、通信網を介して相手方装置と通信を行う。スイッチング電源装置は、通信手段を含む電気的負荷の電力供給源である。このスイッチング電源装置のスイッチング周波数は、電気的負荷の大きさに応じて変化し、つまり可変である。その上で、スイッチング周波数制御手順では、通信手段による通信が行われるときに、電気的負荷の大きさに拘らず、スイッチング周波数が当該通信に係る通信周波数帯域よりも高い所定周波数以上となるように、当該スイッチング周波数を制御する。
【0017】
本発明のうちの第3発明に係る通信装置の制御方法は、スイッチング周波数制御ステップを含む。ここで、通信装置は、通信手段およびスイッチング電源装置を備える。通信手段は、通信網を介して相手方装置と通信を行う。スイッチング電源装置は、通信手段を含む電気的負荷の電力供給源である。このスイッチング電源装置のスイッチング周波数は、電気的負荷の大きさに応じて変化し、つまり可変である。その上で、スイッチング周波数制御ステップでは、通信手段による通信が行われるときに、スイッチング周波数が当該通信に係る通信周波数帯域よりも高い所定周波数以上となるように、当該スイッチング周波数を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング周波数が可変のスイッチング電源装置を備える通信装置において、スイッチングノイズによる通信への影響を抑制することができる。しかも、前述の特許文献1に開示された技術におけるような減衰器などのノイズ除去手段を必要としないので、スイッチングノイズによる通信への影響を簡素かつ廉価な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例に係る複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施例における電源部の詳細な構成を示す電気回路図である。
【
図3】
図3は、第1実施例におけるファクス通信部の詳細な構成を示す電気回路図である。
【
図4】
図4は、第1実施例における負荷電流とスイッチング周波数との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施例における主記憶部のRAM内の構成を概念的に示すメモリマップである。
【
図6】
図6は、第1実施例における非ファクス通信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図7】
図7は、第1実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図8】
図8は、第1実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図10】
図10は、第2実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図12】
図12は、第3実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図14】
図14は、第4実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクの流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について、
図1に示される複合機10を例に挙げて説明する。
【0021】
本第1実施例に係る複合機10は、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する。このため、複合機10は、画像読取部12、画像形成部14、ネットワーク通信部16、ファクス通信部18、補助記憶部20、表示部22および操作部24を備える。併せて、複合機10は、制御部30を備える。さらに、複合機10は、電源部50を備える。画像読取部12、画像形成部14、ネットワーク通信部16、ファクス通信部18、補助記憶部20、表示部22および操作部24は、制御部30に接続される。電源部50もまた、制御部30に接続される。
【0022】
画像読取部12は、画像読取手段の一例である。すなわち、画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このような画像読取部12は、不図示の原稿が載置される不図示の原稿台を備える。併せて、画像読取部12は、不図示の光源、複数のミラー、レンズ、ラインセンサなどを含む画像読取ユニットを備える。さらに、画像読取部12は、画像読取ユニットによる画像読取位置を移動させるための不図示の駆動機構を備える。また、画像読取部12は、オプション装置の1つである不図示の自動原稿送り装置(ADF)を備えることがある。
【0023】
画像形成部14は、画像形成手段の一例である。すなわち、画像形成部14は、画像読取部12から出力される読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を不図示の用紙などのシート状の画像記録媒体に形成する、画像形成処理を担う。この画像形成処理は、たとえば公知の電子写真方式により行われる。このため、画像形成部14は、不図示の感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置などを備える。なお、画像形成部14は、電子写真方式に限らず、たとえばインクジェット方式によって、画像形成処理を行うものであってもよい。
【0024】
ネットワーク通信部16は、ネットワーク通信手段の一例である。このネットワーク通信部16は、不図示のIP回線と接続される。そして、ネットワーク通信部16は、IP回線を介しての双方向通信を担い、つまり不図示の外部装置との間でのIP通信を担う。ここで言うIP回線としては、LANやインターネットなどがある。また、LANには、無線LAN、とりわけWi-Fi(登録商標)が、含まれる。そして、外部装置には、たとえばサービスサポート用のサーバが含まれる。
【0025】
ファクス通信部18は、ファクス通信手段の一例である。このファクス通信部18は、不図示の電話回線(公衆交換電話網)と接続される。そして、ファクス通信部18は、電話回線を介しての双方向通信を担い、つまり不図示の相手方装置との間でのファクス通信を担う。なお、ファクス通信部18は、たとえばスーパG3規格(V.34)に対応する。また、ファクス通信部18と相手方装置との間でのファクス通信は、不図示の交換機を介して行われることは、言うまでもない。
【0026】
補助記憶部20は、補助記憶手段の一例である。この補助記憶部20には、画像読取部12から出力される読取画像データなどの種々のデータが適宜に記憶される。このような補助記憶部20は、たとえば不図示のハードディスクドライブを含む。また、補助記憶部20は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性の半導体メモリを含む場合がある。
【0027】
表示部22は、表示手段の一例であり、とりわけ画像表示手段としての不図示のディスプレイを有する。このディスプレイは、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)であるが、これに限らず、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどであってもよい。また、表示部22は、ディスプレイの他に、不図示の発光ダイオード(LED)などの適宜の発光手段を有する。
【0028】
操作部24は、不図示のユーザによる操作を受け付けるための操作受付手段の一例であり、とりわけタッチ操作受付手段としての不図示のタッチパネルを有する。このタッチパネルは、前述のディスプレイの表示面上に重なるように設けられることで、当該ディスプレイと協働してタッチパネル付きディスプレイを構成する。このようなタッチパネルは、たとえば静電容量方式のパネルであるが、これに限らず、電磁誘導方式、抵抗膜方式、赤外線方式などの他の方式のパネルであってもよい。また、操作部24は、タッチパネル以外に、不図示の押しボタンスイッチなどの適宜のハードウェアスイッチ手段を有する。
【0029】
制御部30は、複合機10の全体的な制御を司る、制御手段の一例である。このため、制御部30は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU32を、有する。併せて、制御部30は、CPU32が直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部34を有する。主記憶部34は、不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU32の動作を制御するための制御プログラム(ファームウェア)が記憶される。RAMは、CPU32が制御プログラムに基づく処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。また、主記憶部34は、不図示のフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。この不揮発性メモリには、たとえば制御プログラムが更新(アップデート)されたときに、この更新された制御プログラムまたはパッチが記憶される。
【0030】
電源部50は、複合機10を構成するファクス通信部18や制御部30などの各電気的負荷(電力の供給を受けて駆動する手段)の電力供給源であり、詳しくはスイッチング電源装置である。すなわち、電源部50は、商用電源から供給される電圧が100Vの交流電力ACVを後述する如く直流電力DCVに変換し、さらに、当該直流電力DCVを複数の適宜の電圧の直流電力V1,V2,…に変換する。これらの直流電力V1,V2,…は、各電気的負荷の電源電力として、当該各電気的負荷へ適宜に供給される。
【0031】
また、電源部50は、負荷電流検出回路52を有する。この負荷電流検出回路52は、直流電力DCVの電流成分を検出し、いわゆる負荷電流Iaを検出する。そして、負荷電流検出回路52は、負荷電流Iaの大きさを表す負荷電流検出信号Saを出力する。この負荷電流検出信号Saは、制御部30に入力される。制御部30は、負荷電流検出信号Saに基づいて、後述する如く電源部50を制御し、厳密には当該電源部50を制御するための電源制御信号Sbを出力する。この電源制御信号Sbは、電源部50に入力される。
【0032】
電源部50について、さらに詳しく説明すると、当該電源部50は、たとえば
図2に示されるように、PWM制御回路502を有する他励式のスイッチング電源装置である。すなわち、電源部50は、交流電力ACVの供給受付口である一対の電源入力端子504を有する。この一対の電源入力端子504に供給された交流電力ACVは、ダイオードブリッジ回路(全波整流回路)506により整流され、さらに、平滑コンデンサ508により平滑化された後、つまり直流電力に変換された後、スイッチング回路510と高周波トランス512の1次側巻線512aとの直列回路に入力される。なお、一対の電源入力端子504の一方であるホット(H)端子は、換言すれば当該ホット端子側のラインは、Yコンデンサ514を介して複合機10の不図示の筐体に接続され、いわゆるフレームグランドに接続される。そして、一対の電源入力端子504の他方であるコールド(C)端子は、換言すれば当該コールド端子側のラインは、別のYコンデンサ516を介してフレームグランドに接続される。
【0033】
スイッチング回路510は、PWM制御回路502から与えられるPWM制御信号Scに従ってON/OFFし、つまりスイッチング動作する。これにより、高周波トランス512の1次側巻線512a(の両端)に矩形波状の交流電力が入力される。なお、スイッチング回路510は、スイッチング素子を含み、たとえばMOSFET、IGBTまたはバイポーラトランジスタを含む。
【0034】
そして、高周波トランス512の2次側巻線512b(の両端)に、当該2次側巻線512bと1次側巻線512aとの相互の巻き数比に応じた電圧の交流電力が現れる。この交流電力は、ダイオード518(半波整流回路)により整流され、さらに、平滑コンデンサ520により平滑化された後、つまり直流電力DCVに変換された後、前述の複数の直流電力V1,V2,…を生成するための不図示のDC/DC変換回路に入力される。このDC/DC変換回路によって生成された各直流電力V1,V2,…は、各電気的負荷の電源電力として、当該各電気的負荷に供給される。
【0035】
さらに、直流電力DCVのプラス(+)側のラインに、前述の負荷電流検出回路52が設けられる。負荷電流検出回路52は、直流電力DCVの電流成分を検出し、つまり負荷電流Iaを検出する。そして、負荷電流検出回路52は、負荷電流Iaの大きさを表す負荷電流検出信号Saを出力する。この負荷電流検出信号Saは、制御部30に入力される。なお、図示を含む詳しい説明は省略するが、負荷電流検出回路52は、たとえばプラス側のラインに直列に設けられた抵抗器を有し、この抵抗器の両端間の電圧に基づいて、負荷電流Iaを検出する。勿論、これ以外の構成であってもよい。また、直流電力DCVのマイナス(-)側のラインは、2次側のグラントである信号グランドに接続される。この信号グランドは、1次側のグランドであるフレームグランドに接続されてもよく、つまり当該フレームグランドと共通であってもよい。
【0036】
前述したように、電源部50には、制御部30から電源制御信号Sbが入力されるが、当該電源制御信号Sbは、PWM制御回路502に入力される。PWM制御回路502は、電源制御信号Sbに従ってスイッチング回路510のスイッチング動作を制御し、厳密には当該スイッチング動作を制御するためのPWM制御信号Scを出力する。すなわち、PWM制御信号Scは、スイッチング回路510に与えられ、スイッチング回路510は、当該PWM制御信号Scに従ってスイッチング動作する。
【0037】
加えて、ファクス通信部18に注目すると、当該ファクス通信部18は、
図3に示されるように、電話回線の接続口である一対の電話回線端子182を有する。この一対の電話回線端子182は、1次側DAA184および絶縁結合回路186を介してモデム188に接続される。そして、モデム188は、制御部30に接続される。なお、モデム188は、2次側DAA190を内蔵するが、当該2次側DAA190は、モデム180の外部に設けられてもよい。また、一対の電話回線端子182の一方である第1(L1)端子は、換言すれば当該第1端子側のラインは、Yコンデンサ192を介してフレームグランドに接続される。そして、一対の電話回線端子182の他方である第2(L2)端子は、換言すれば当該第2端子側のラインは、別のYコンデンサ194を介してフレームグランドに接続される。このようなファクス通信部18の構成は、公知(一般的)であるので、ここでは、当該ファクス通信部18についてのこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0038】
さて、制御部30は、前述の直流電力DCVの電圧値が一定となるように電源部50を制御し、厳密には電源制御信号Sbを出力する。併せて、制御部30は、負荷電流Iaの大きさに応じて、スイッチング回路510のスイッチング動作の繰り返し周波数、いわゆるスイッチング周波数fsを、制御し、つまりはそうするための電源制御信号Sbを出力する。
【0039】
具体的には、制御部30は、
図4に示されるように、負荷電流Iaの大きさが第1閾値Ib以上かつ第2閾値Ic以下(Ib≦Ia≦Ic)である場合に、当該負荷電流Iaの大きさに応じて、換言すれば電気的負荷の大きさに応じて、スイッチング周波数fsを制御する。より具体的には、制御部30は、たとえば負荷電流Iaが大きいほど、スイッチング周波数fsを上げる。言い換えれば、制御部30は、負荷電流Iaが小さいほど、スイッチング周波数fsを下げる。このように、負荷電流Iaが小さいほど、つまり負荷が軽いほど、スイッチング周波数fsが下げられることで、当該負荷が軽いときのスイッチング損失が低減され、複合機10全体としての省エネルギ化が図られる。
【0040】
なお、第1閾値Ibは、第2閾値Icよりも小さく(Ib<Ic)、たとえば複合機10が節電状態(節電モード)にあるときの負荷電流Iaの最小値または当該最小値に近い値である。そして、第1閾値Ibに対応するスイッチング周波数fsである言わば下限周波数fminは、たとえば負荷電流Iaの大きさを当該第1閾値Ibに維持するのに必要な、換言すれば直流電力DCVを安定して生成するのに必要な、スイッチング周波数fsの下限値または当該下限値よりも少し高い値であり、詳しくは25kHzである。
【0041】
一方、第2閾値Icは、たとえば負荷電流Iaの最大値よりも少し小さい値である。そして、第2閾値Icに対応するスイッチング周波数fsである言わば上限周波数fmaxは、スイッチング回路510(スイッチング素子)の特性に応じて定められ、たとえば当該スイッチング回路510が十分に(無理なく)スイッチング動作し得るスイッチング周波数fsの上限値または当該上限値よりも少し低い値であり、詳しくは100kHzである。
【0042】
また、制御部30は、負荷電流Iaの大きさが第1閾値Ibを下回ると、つまり当該負荷電流Iaの大きさが第1閾値Ib未満(Ia<Ib)となると、スイッチング周波数fsを下限周波数fminよりも低いバースト周波数fb(<fmax)とする。そして、制御部30は、スイッチング回路510を間欠的にスイッチング動作させ、つまりはそうするための電源制御信号Sbを出力する。なお、バースト周波数fbは、たとえば2kHz~3kHzである。
【0043】
さらに、制御部30は、負荷電流Iaの大きさが第2閾値Icを上回る場合は、つまり当該負荷電流Iaの大きさが第2閾値Icを超える(Ia>Ic)場合は、スイッチング周波数fsを上限周波数fmaxとする。すなわち、スイッチング周波数fsは、上限周波数fmaxを超えることはない。
【0044】
加えて、制御部30は、スイッチング回路510がスイッチング動作することに起因するスイッチングノイズを低減するために、スイッチング周波数fsにスペクトラム拡散を施し、つまりはそうするための電源制御信号Sbを出力する。すなわち、制御部30は、スイッチング周波数fsに数百Hz~数kHzほどの周波数で、たとえば3kHzの周波数で、変調を掛けることにより、当該スイッチング周波数fsに変動を与える。このようなスペクトラム拡散が施されることで、スイッチングノイズの周波数分布が拡散して、当該スイッチングノイズのピーク値が低減され、ひいてはスイッチングノイズが全体的に低減される。
【0045】
ところで、本第1実施例においては、スイッチング周波数fsが可変のスイッチング電源装置が電源部50として採用されることから、当該スイッチング周波数fsが低いと、スイッチングノイズがファクス通信と干渉して、当該ファクス通信が影響を受けることが懸念される。前述したように、ファクス通信に係る通信周波数帯域は、300Hz~3400Hzである。これに対して、本第1実施例に係る複合機10が(節電状態ではなく)動作中であるときのスイッチング周波数fsの可変範囲は、下限周波数fmin~上限周波数fmaxであり、つまり25kHz~100kHzである。要するに、ファクス通信に係る通信周波数帯域と、スイッチング周波数fsの可変範囲とは、直接的には重複しない。そうであるにも拘らず、スイッチングノイズがファクス通信に影響するのは、スイッチング周波数fsに前述のスペクトラム拡散が施されることが関係するものと、考えられる。
【0046】
そこで、本第1実施例においては、ファクス通信が行われるときには、負荷電流Iaの大きさに拘らず、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’以上となるように、当該スイッチング周波数fsが制御される。ここで言うファクス通信時用の下限周波数fmin’とは、たとえばファクス通信がスイッチングノイズの影響を受け難いと予想されるスイッチング周波数fsの下限値であり、詳しくは50kHzである。
【0047】
より詳しく説明すると、ファクス通信が行われるときには、負荷電流Iaの大きさに拘らず、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxに設定される。これにより、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’以上となり、スイッチングノイズによるファクス通信への影響が抑制される。なお、ファクス通信が行われるときとは、ファクス送信が行われるとき、または、ファクス受信が行われるときを言う。たとえば、ファクス送信が行われるときは、当該ファクス送信の開始を指示するためのユーザ操作が操作部24により受け付けられたことをもって、認識される。そして、ファクス受信が開始されるときは、相手方装置からの当該ファクス通信の開始を要求する要求信号、たとえば呼び出し信号が、ファクス通信部18により受信されたことをもって、認識される。
【0048】
図5に、主記憶部34のRAM内の構成を概念的に表すメモリマップ700を示す。
【0049】
このメモリマップ700に示されるように、RAMは、プログラム記憶領域710およびデータ記憶領域750を有する。このうちのプログラム記憶領域710には、前述の制御プログラムが記憶される。具体的には、制御プログラムは、表示制御プログラム712、操作検出プログラム714、画像読取制御プログラム716、画像形成制御プログラム718、補助記憶制御プログラム720、ネットワーク通信制御プログラム722、ファクス通信制御プログラム724、電源制御プログラム726などを含む。
【0050】
表示制御プログラム712は、表示部22のディスプレイに不図示の操作用画面などの各種の画面を表示させるのに必要な表示画面データを生成するためのプログラムである。操作検出プログラム714は、操作部24のタッチパネルへの操作状態を検出するためのプログラムである。画像読取制御プログラム716は、画像読取部12を制御するためのプログラムである。画像形成制御プログラム718は、画像形成部14を制御するためのプログラムである。補助記憶制御プログラム720は、補助記憶部20を制御するためのプログラムである。ネットワーク通信制御プログラム722は、ネットワーク通信部16を制御するためのプログラムである。ファクス通信制御プログラム724は、ファクス通信部18を制御するためのプログラムである。そして、電源制御プログラム726は、CPU32に後述する電源制御タスクを実行させるためのプログラムである。
【0051】
一方、データ記憶領域750には、各種のデータが記憶される。この各種のデータとしては、表示画像生成データ752、操作データ754、制御用データ756などがある。
【0052】
表示画像生成データ752は、前述の表示制御プログラム712に基づく表示画面データの生成に用いられるポリゴンデータやテクスチャデータなどのデータである。操作データ754は、操作部24のタッチパネルに対する操作状態を表すデータであり、詳しくは当該タッチパネルに対するユーザのタッチ位置(座標)を表す時系列のデータである。そして、制御用データ756は、
図4に示される負荷電流Iaとスイッチング周波数fsとの関係を表すデータを含み、たとえばルックアップテーブルを含む。
【0053】
その上で、複合機10が少なくともファクス通信を行っていない言わば非ファクス通信状態にあるときに、CPU32は、電源制御プログラム426に従って、非ファクス通信時用の電源制御タスクを実行する。この非ファクス通信時用の電源制御タスクの流れを、
図6に示す。この非ファクス通信時用の電源制御タスクは、一定の時間間隔で(たとえば数秒間おきに)繰り返し実行される。
【0054】
この非ファクス通信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS1において、負荷電流検出信号Saに基づいて、負荷電流Iaの大きさを確認する。そして、CPU32は、処理をステップS3へ進める。
【0055】
ステップS3において、CPU32は、制御用データ756を参照して、とりわけ前述のルックアップテーブルを参照して、ステップS1で確認された負荷電流Iaの大きさに対応するスイッチング周波数fsを適正周波数faとして導出する。そして、CPU32は、処理をステップS5へ進める。
【0056】
ステップS5において、CPU32は、ステップS3で導出された適正周波数faを目標値としてスイッチング周波数fsを制御し、つまりはそうするための電源制御信号Sbを生成する。これにより、スイッチング周波数fsが適正周波数faと等価となる。このステップS5の実行をもって、CPU32は、非ファクス通信時用の電源制御タスクを終了する。なお、ステップS5においては、たとえば制御前のスイッチング周波数fsと適正周波数faとの相互差(の絶対値)が所定の閾値以上であるときにのみ、当該スイッチング周波数fsが制御されてもよい。
【0057】
これに対して、複合機10がファクス送信を行うときには、CPU32は、電源制御プログラム426に従って、ファクス送信時用の電源制御タスクを実行する。このファクス送信時用の電源制御タスクの流れを、
図7に示す。このファクス送信時用の電源制御タスクは、ファクス送信の開始を指示するためのユーザ操作が操作部24により受け付けられたときに、これに応答して実行される。
【0058】
このファクス送信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS101において、ファクス送信のリトライ回数をカウントするためのカウンタのカウント値nに『0』を設定し、つまり当該カウント値をリセットする。すなわち、複合機10は、ファクス送信にエラーが発生したときに、改めて当該ファクス送信を行うリトライ機能を有する。そして、ステップS101においては、このリトライ機能によるファクス送信のリトライ回数をカウントするためのカウント値nがリセットされる。このステップS101の実行後、CPU32は、処理をステップS103へ進める。
【0059】
ステップS103において、CPU32は、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxと等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS105へ進める。
【0060】
ステップS105において、CPU32は、ファクス送信を行うためのファクス送信タスクの実行を開始する。なお、ファクス送信タスクは、電源制御タスクとは別に、かつ、当該電源制御タスクと並行して、いわゆるマルチタスクにより、実行される。これにより、ファクス送信が開始される。ここでは、ファクス送信タスクについての詳しい説明を省略する。そして、CPU32は、処理をステップS107へ進める。
【0061】
ステップS107において、CPU32は、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了するのを待つ(S107:NO)。そして、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了すると(S107:YES)、CPU32は、処理をステップS109へ進める。
【0062】
ステップS109において、CPU32は、相手方装置とのファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S109:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまりエラーが発生した場合は(S109:NO)、CPU32は、処理をステップS109からステップS111へ進める。
【0063】
ステップS111において、CPU32は、リトライ機能によるリトライ回数をカウントするためのカウント値nをインクリメントする。そして、CPU32は、処理をステップS113へ進める。
【0064】
ステップS113において、CPU32は、ステップS111でインクリメントされたカウント値nが予め定められた上限値Nを超えたかどうかを判定する。ここでたとえば、カウント値nが上限値Nを超えていない場合、つまり当該カウント値nが上限値N以下である場合(S113:NO)、CPU32は、改めてファクス送信タスクの実行を開始するべく、処理をステップS105へ戻す。一方、カウント値nが上限値Nを超えた場合は(S113:YES)、CPU32は、処理をステップS115へ進める。なお、上限値Nは、たとえば『3』であるが、任意に設定(変更)可能である。
【0065】
ステップS115において、CPU32は、ファクス送信が正常に行われなかったことをユーザへ通知するための異常通知処理を実行する。図示を含む詳しい説明は省略するが、この異常通知処理におけるユーザへの通知は、たとえば所定の異常通知メッセージを含む異常通知画面が表示部22のディスプレイに表示されることにより、行われてもよい。これに代えて、または、これに加えて、異常通知メッセージが音声で出力されることにより、ユーザへの通知が行われてもよい。さらに、前述のサービスサポート用のサーバへ、適宜の通知情報が送られてもよい。この場合、サービスマンの派遣を含め、適宜の対策が講ぜられる。このステップS115の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。
【0066】
さらに、複合機10がファクス受信を行うときには、CPU32は、電源制御プログラム426に従って、ファクス受信時用の電源制御タスクを実行する。このファクス受信時用の電源制御タスクの流れを、
図8に示す。このファクス受信時用の電源制御タスクは、ファクス通信部18により相手方装置からの呼び出し信号が受信されたときに、これに応答して実行される。
【0067】
このファクス受信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS201において、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxと等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS203へ進める。
【0068】
ステップS203において、CPU32は、ファクス受信を行うためのファクス受信タスクの実行を開始する。なお、ファクス受信タスクは、電源制御タスクとは別に、かつ、当該電源制御タスクと並行して、つまりマルチタスクにより、実行される。これにより、ファクス受信が開始される。ここでは、ファクス受信タスクについての詳しい説明を省略する。そして、CPU32は、処理をステップS205へ進める。
【0069】
ステップS205において、CPU32は、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了するのを待つ(S205:NO)。そして、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了すると(S205:YES)、CPU32は、処理をステップS207へ進める。
【0070】
ステップS207において、CPU32は、相手方装置とのファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S207:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまりエラーが発生した場合は(S207:NO)、CPU32は、処理をステップS207からステップS209へ進める。
【0071】
ステップS209において、CPU32は、相手方装置から改めてファクス通信を開始することを要求するリトライ開始信号が送られてきたかどうかを判定する。ここでたとえば、相手方装置からリトライ開始信号が送られてきた場合、つまり当該リトライ開始信号がファクス通信部18により受信された場合(S209:YES)、CPU32は、改めてファクス受信タスクの実行を開始するべく、処理をステップS203へ戻す。一方、相手方装置からリトライ開始信号が送られてこない場合、つまり当該リトライ開始信号がファクス通信部18により受信されない場合(S209:NO)、CPU32は、処理をステップS211へ進める。
【0072】
ステップS211において、CPU32は、相手方装置からファクス通信を強制的に終了することを通知する強制終了信号が送られてきたかどうかを判定する。ここでたとえば、相手方装置から強制終了信号が送られてこない場合、つまり当該強制終了信号がファクス通信部18により受信されない場合(S211:NO)、CPU32は、処理をステップS209へ戻す。一方、相手方装置から強制終了信号が送られてきた場合、つまり当該強制終了信号がファクス通信部18により受信された場合(S211:YES)、CPU32は、処理をステップS213へ進める。
【0073】
ステップS213において、CPU32は、ファクス受信が正常に行われなかったことをユーザへ通知するための異常通知処理を実行する。図示を含む詳しい説明は省略するが、このステップS213の異常通知処理においても、前述のファクス送信時用の電源制御タスクにおけるステップS115と同様、所定の異常通知メッセージを含む異常通知画面が表示部22のディスプレイに表示されることにより、ユーザへの通知が行われてもよい。これに代えて、または、これに加えて、異常通知メッセージが音声で出力されることにより、ユーザへの通知が行われてもよい。さらに、前述のサービスサポート用のサーバへ、適宜の通知情報が送られてもよい。このステップS213の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。
【0074】
このように、本第1実施例によれば、ファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxに設定される。これにより、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’以上となり、スイッチングノイズによるファクス通信への影響が抑制される。しかも、前述の特許文献1に開示された技術におけるような減衰器などのノイズ除去手段を必要としないので、スイッチングノイズによるファクス通信への影響を簡素かつ廉価な構成で抑制することができる。
【0075】
なお、本第1実施例におけるファクス通信部18は、厳密には当該ファクス通信部18とこれを制御する制御部30とは、本発明に係る通信手段の一例である。そして、本第1実施例における電話回線は、本発明に係る通信網の一例である。また、本第1実施例におけるファクス通信時用の下限周波数fmin’は、本発明に係る所定周波数の一例である。
【0076】
さらに、本第1実施例における制御部30は、スイッチング周波数fsの制御を担うが、当該スイッチング周波数fsの制御を担う制御部30は、本発明に係るスイッチング周波数制御手段の一例である。加えて、本第1実施例における制御部30は、スイッチング周波数fsのスペクトラム拡散をも担うが、当該スペクトラム拡散を担う制御部30は、本発明に係る拡散手段の一例でもある。
【0077】
加えて、本第1実施例においては、ファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxに設定されたが、これに限らない。たとえば、上限周波数fmaxに代えて、ファクス通信時用の下限周波数fmin’以上かつ上限周波数fmax未満の適当な周波数である特定周波数が採用されてもよい。すなわち、ファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsが特定周波数に設定されてもよい。これにより、スイッチング周波数fsが必要以上に上げられることによるスイッチング損失の不必要な増大が抑制される。
【0078】
具体的に説明すると、本第1実施例においては、負荷電流Iaの大きさに応じてスイッチング周波数fsが制御されることで、とりわけ負荷電流Iaが小さいほどスイッチング周波数fsが下げられることで、スイッチング損失の低減が図られ、ひいては複合機10全体としての省エネルギ化が図られる。その一方で、ファクス通信が行われるときには、負荷電流Iaの大きさに拘らず、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxにまで言わば強制的に上げられる。これは要するに、ファクス通信の安定化を図るために、省エネルギ化を犠牲にすることを意味する。この省エネルギ化の犠牲を抑えるために、前述の如く上限周波数fmaxに代えて、ファクス通信時用の下限周波数fmin’以上かつ上限周波数fmax未満の特定周波数が採用されてもよい。すなわち、ファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxにまで上げられるのではなく、当該上限周波数fmaxよりも低い(もののファクス通信の安定化を図ることのできる)特定周波数に設定されてもよい。
【0079】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について、説明する。
【0080】
本第2実施例においては、ファクス通信が行われるときに、まず、当該ファクス通信が開始される時点でのスイッチング周波数fsが(適正周波数faに)維持された状態で、当該ファクス通信が行われる。そして、ファクス通信にエラーが発生したときに、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxに設定され、その上で、改めてファクス通信が行われる。
【0081】
そのために、本第2実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクは、
図9に示されるような流れで実行される。
【0082】
すなわち、本第2実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS301において、前述のファクス送信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS303へ進める。
【0083】
ステップS303において、CPU32は、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了するのを待つ(S303:NO)。そして、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了すると(S303:YES)、CPU32は、処理をステップS305へ進める。
【0084】
ステップS305において、CPU32は、相手方装置とのファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S305:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまりエラーが発生した場合は(S305:NO)、CPU32は、処理をステップS305からステップS307へ進める。
【0085】
ステップS307において、CPU32は、リトライ機能によるリトライ回数をカウントするためのカウント値nに『1』を設定する。そして、CPU32は、処理をステップS309へ進める。
【0086】
ステップS309において、CPU32は、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxと等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS311へ進める。
【0087】
ステップS311において、CPU32は、改めてファクス送信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS313へ進める。
【0088】
ステップS313において、CPU32は、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了するのを待つ(S313:NO)。そして、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了すると(S313:YES)、CPU32は、処理をステップS315へ進める。
【0089】
ステップS315において、CPU32は、相手方装置との再度のファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、再度のファクス通信が正常に終了した場合(S315:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。一方、再度のファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまり改めてエラーが発生した場合は(S315:NO)、CPU32は、処理をステップS315からステップS317へ進める。
【0090】
ステップS317において、CPU32は、リトライ機能によるリトライ回数をカウントするためのカウント値nをインクリメントする。そして、CPU32は、処理をステップS319へ進める。
【0091】
ステップS319において、CPU32は、ステップS317でインクリメントされたカウント値nが予め定められた上限値Nを超えたかどうかを判定する。ここでたとえば、カウント値nが上限値Nを超えていない場合、つまり当該カウント値nが上限値N以下である場合(S319:NO)、CPU32は、改めてファクス送信タスクの実行を開始するべく、処理をステップS311へ戻す。一方、カウント値nが上限値Nを超えた場合は(S319:YES)、CPU32は、処理をステップS321へ進める。
【0092】
ステップS321において、CPU32は、第1実施例におけるステップS115と同様の異常通知処理を実行する。このステップS321の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。
【0093】
また、本第2実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクは、
図10に示されるような流れで実行される。
【0094】
すなわち、本第2実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS401において、前述のファクス受信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS403へ進める。
【0095】
ステップS403において、CPU32は、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了するのを待つ(S403:NO)。そして、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了すると(S403:YES)、CPU32は、処理をステップS405へ進める。
【0096】
ステップS405において、CPU32は、相手方装置とのファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S405:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまりエラーが発生した場合は(S405:NO)、CPU32は、処理をステップS405からステップS407へ進める。
【0097】
ステップS407において、CPU32は、スイッチング周波数fsが上限周波数fmaxと等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS409へ進める。
【0098】
ステップS409において、CPU32は、相手方装置から改めてファクス通信を開始することを要求するリトライ開始信号が送られてきたかどうかを判定する。ここでたとえば、相手方装置からリトライ開始信号が送られてこない場合(S409:NO)、CPU32は、処理をステップS411へ進める。一方、相手方装置からリトライ開始信号が送られてきた場合(S409:YES)、CPU32は、処理を後述するステップS415へ進める。
【0099】
ステップS411において、CPU32は、相手方装置からファクス通信を強制的に終了することを通知する強制終了信号が送られてきたかどうかを判定する。ここでたとえば、相手方装置から強制終了信号が送られてこない場合(S411:NO)、CPU32は、処理をステップS409へ戻す。一方、相手方装置から強制終了信号が送られてきた場合(S411:YES)、CPU32は、処理をステップS413へ進める。
【0100】
ステップS413において、CPU32は、第1実施例におけるステップS213と同様の異常通知処理を実行する。このステップS413の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。
【0101】
これに対して、前述のステップS409からステップS415へ処理を進めた場合、CPU32は、当該ステップS415において、改めてファクス受信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS417へ進める。
【0102】
ステップS417において、CPU32は、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了するのを待つ(S417:NO)。そして、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了すると(S417:YES)、CPU32は、処理をステップS419へ進める。
【0103】
ステップS419において、CPU32は、相手方装置との再度のファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、再度のファクス通信が正常に終了した場合(S419:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。一方、再度のファクス通信が正常に終了しなかった場合は、つまり改めてエラーが発生した場合は(S419:NO)、CPU32は、相手方装置から改めてリトライ開始信号が送られてくるかどうかを判定するべく、処理をステップS409へ戻す。
【0104】
このように、本第2実施例によれば、ファクス通信が行われるときに、まず、当該ファクス通信が開始される時点でのスイッチング周波数fsが維持された状態で、当該ファクス通信が行われる。そして、ファクス通信にエラーが発生したときに、はじめて、スイッチング周波数fsが特定周波数としての上限周波数fmaxに設定され、その上で、改めてファクス通信が行われる。すなわち、ファクス通信にエラーが発生しない場合には、つまりスイッチングノイズによるファクス通信への影響がない場合には、スイッチング周波数fsは、上限周波数fmaxにまで上げられることはない。これにより、スイッチング周波数fsが必要以上に上げられることによるスイッチング損失の増大が抑制され、たとえば第1実施例に比べて、省エネルギ化が図られる。
【0105】
なお、本第2実施例においても、特定周波数は、上限周波数fmaxに限らず、ファクス通信時用の下限周波数fmin’以上かつ上限周波数fmax未満の適当な周波数であってもよい。
【0106】
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例について、説明する。
【0107】
本第3実施例においても、第2実施例と同様、ファクス通信が行われるときに、まず、当該ファクス通信が開始される時点でのスイッチング周波数fsが維持された状態で、当該ファクス通信が行われる。そして、ファクス通信にエラーが発生して、前述のリトライ機能により最初にファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’に設定され、その上で、改めて当該リトライ機能による再度のファクス通信が行われる。さらに、再度のファクス通信においても、エラーが発生する場合には、リトライ機能により当該ファクス通信が繰り返されるたびに、スイッチング周波数fsが段階的に上げられる。
【0108】
そのために、本第3実施例においては、スイッチング周波数fsをリトライ回数(n)に応じた周波数f[n]に設定するためのデータが、前述の制御用データ756の一部として記憶される。ここで言うリトライ回数に応じた周波数f[n]は、当該リトライ回数の値が大きいほど、高い値となる。また、リトライ回数の値が『1』であるときの周波数f[1]は、ファクス通信時用の下限周波数fmin’と等価である。その上で、本第3実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクは、
図11に示されるような流れで実行される。
【0109】
この
図11に示されるように、本第3実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクによれば、
図9に示される第2実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクのステップS309に代えて、ステップS501が設けられる。併せて、ステップS319において、リトライ回数をカウントするためのカウント値nが上限値Nを超えていない場合に(S319:NO)、処理がステップS501へ進められる。
【0110】
すなわち、CPU32は、ステップS501において、スイッチング周波数fsが今現在のカウント値nに応じた周波数f[n]と等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS311へ進める。
【0111】
また、本第2実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクは、
図12に示されるような流れで実行される。この
図12に示されるように、本第3実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクによれば、
図10に示される第2実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクのステップS407に代えて、ステップS601およびステップS603が設けられる。併せて、ステップS419において、相手方装置との再度のファクス通信が正常に終了しなかった場合、つまり改めてエラーが発生した場合は(S419:NO)、処理がステップS605へ進められる。そして、ステップS605の実行後、処理がステップS603へ戻される。
【0112】
すなわち、CPU32は、ステップS601において、リトライ機能によるリトライ回数をカウントするためのカウント値nに『1』を設定する。そして、CPU32は、処理をステップS603へ進める。
【0113】
ステップS603において、CPU32は、スイッチング周波数fsが今現在のカウント値nに応じた周波数f[n]と等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS409へ進める。
【0114】
さらに、CPU32は、ステップS605において、リトライ機能によるリトライ回数をカウントするためのカウント値nをインクリメントする。そして、CPU32は、このステップS605におけるインクリメント後のカウント値nに応じて改めてスイッチング周波数fsを制御するべく、処理をステップS603へ戻す。
【0115】
このように、本第3実施例によれば、ファクス通信が行われるときに、まず、当該ファクス通信が開始される時点でのスイッチング周波数fsが維持された状態で、当該ファクス通信が行われる。そして、ファクス通信にエラーが発生して、リトライ機能により最初にファクス通信が行われるときに、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’に設定され、その上で、改めて当該リトライ機能による再度のファクス通信が行われる。さらに、再度のファクス通信においても、エラーが発生する場合には、リトライ機能により当該ファクス通信が繰り返されるたびに、スイッチング周波数fsが段階的に上げられる。
【0116】
すなわち、本第3実施例によれば、ファクス通信にエラーが発生したときに、スイッチング周波数fsが一気に上限周波数fmaxにまで上げられる第2実施例とは異なり、当該スイッチング周波数fsが段階的に上げられる。ゆえに、本第3実施例によれば、第2実施例に比べて、スイッチング周波数fsが必要以上に上げられることによるスイッチング損失の増大がさらに抑制され、より一層の省エネルギ化が図られる。
【0117】
なお、本第3実施例において、リトライ回数の値が『1』であるときの周波数f[1]は、ファクス通信時用の下限周波数fmin’と等価である必要はなく、たとえば当該下限周波数fmin’よりも少し高い値であってもよい。
【0118】
[第4実施例]
次に、本発明の第4実施例について、説明する。
【0119】
本第4実施例においては、ファクス通信におけるフォールバック機能と連動して、スイッチング周波数fsが制御される。すなわち、本第4実施例に係る複合機10は、ファクス機能の補助的(サブ)機能としてのフォールバック機能を有する。このフォールバック機能によれば、ファクス通信が行われるときに、まず、33.6kbpsという通信速度で当該ファクス通信が行われる。そして、エラーが発生するたびに、通信速度が段階的に下げられ、最終的に当該通信速度が2.4kbpsにまで下げられる。この2.4kbpsという最低の通信速度になっても、エラーが発生する場合には、通信異常とされる。
【0120】
このフォールバック機能と併せて、本第4実施例においては、ファクス通信が行われるときに、まず、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’に設定される。そして、フォールバック機能により通信速度が段階的に下げられるたびに、スイッチング周波数fsが段階的に上げられる。
【0121】
そのために、本第4実施例においては、スイッチング周波数fsを段階的に上げるためのデータが、たとえば後述するΔfという周波数増大分のデータが、制御用データ756の一部として記憶される。その上で、本第4実施例におけるファクス送信時の電源制御タスクは、
図13に示されるような流れで実行される。
【0122】
この
図13に示されるように、本第4実施例におけるファクス送信時の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS701において、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’と等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS703へ進める。
【0123】
ステップS703において、CPU32は、ファクス送信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS705へ進める。
【0124】
ステップS705において、CPU32は、フォールバック機能により通信速度が下げられたかどうかを、言わばフォールバックが発生したかどうかを、判定する。ここでたとえば、フォールバックが発生した場合(S705:YES)、CPU32は、処理をステップS707へ進める。一方、フォールバックが発生しない場合は(S705:NO)、CPU32は、処理を後述するステップS711へ進める。
【0125】
ステップS707において、CPU32は、今現在のスイッチング周波数fsと上限周波数fmaxとを比較する。ここでたとえば、今現在のスイッチング周波数fsが上限周波数fmaxよりも低い場合(S707:YES)、CPU32は、処理をステップS709へ進める。一方、今現在のスイッチング周波数fsが上限周波数fmax以上である場合は(S707:NO)、CPU32は、処理をステップS705へ戻す。
【0126】
ステップS709において、CPU32は、今現在のスイッチング周波数fsを周波数増大分Δfだけ上げる。そして、CPU32は、処理をステップS705へ戻す。なお、周波数増大分Δfは、一定の値であってもよいし、その時々のスイッチング周波数fsに応じた値であってもよいし、たとえば当該スイッチング周波数fsが高いほど大きい値とされてもよい。また、ステップS709において、周波数増大分Δfだけ上げられたスイッチング周波数fsが上限周波数fmax以上である場合には、当該スイッチング周波数fsは、上限周波数fmaxと等価となるように制御される。
【0127】
さらに、CPU32は、ステップS705からステップS711へ処理を進めた場合、当該ステップS711において、ファクス送信タスクによるファクス送信が終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス送信が終了していない場合は(S711:NO)は、CPU32は、処理をステップS705へ戻す。一方、ファクス送信が終了した場合は(S711:YES)、CPU32は、処理をステップS713へ進める。
【0128】
ステップS713において、CPU32は、ファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S713:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は(S713:NO)、CPU32は、処理をステップS715へ進める。
【0129】
ステップS715において、CPU32は、第1実施例におけるステップS115などと同様の異常通知処理を実行する。このステップS715の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス送信時用の電源制御タスクを終了する。
【0130】
また、本第4実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクは、
図14に示されるような流れで実行される。
【0131】
すなわち、本第4実施例におけるファクス受信時用の電源制御タスクによれば、CPU32は、まず、ステップS801において、スイッチング周波数fsがファクス通信時用の下限周波数fmin’と等価になるように、当該スイッチング周波数fsを制御する。そして、CPU32は、処理をステップS803へ進める。
【0132】
ステップS803において、CPU32は、ファクス受信タスクの実行を開始する。そして、CPU32は、処理をステップS805へ進める。
【0133】
ステップS805において、CPU32は、相手方装置のフォールバック機能により通信速度が下げられたかどうかを、つまりフォールバックが発生したかどうかを、判定する。ここでたとえば、フォールバックが発生した場合(S805:YES)、CPU32は、処理をステップS807へ進める。一方、フォールバックが発生しない場合は(S805:NO)、CPU32は、処理を後述するステップS811へ進める。
【0134】
ステップS807において、CPU32は、今現在のスイッチング周波数fsと上限周波数fmaxとを比較する。ここでたとえば、今現在のスイッチング周波数fsが上限周波数fmaxよりも低い場合(S807:YES)、CPU32は、処理をステップS809へ進める。一方、今現在のスイッチング周波数fsが上限周波数fmax以上である場合は(S807:NO)、CPU32は、処理をステップS805へ戻す。
【0135】
ステップS809において、CPU32は、今現在のスイッチング周波数fsを周波数増大分Δfだけ上げる。そして、CPU32は、処理をステップS805へ戻す。なお、周波数増大分Δfは、前述の如く一定の値であってもよいし、その時々のスイッチング周波数fsに応じた値であってもよい。また、ステップS809において、周波数増大分Δfだけ上げられたスイッチング周波数fsが上限周波数fmax以上である場合には、当該スイッチング周波数fsは、上限周波数fmaxと等価となるように制御される。
【0136】
さらに、CPU32は、ステップS805からステップS811へ処理を進めた場合、当該ステップS811において、ファクス受信タスクによるファクス受信が終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス受信が終了していない場合は(S811:NO)は、CPU32は、処理をステップS805へ戻す。一方、ファクス受信が終了した場合は(S811:YES)、CPU32は、処理をステップS813へ進める。
【0137】
ステップS813において、CPU32は、ファクス通信が正常に終了したかどうかを判定する。ここでたとえば、ファクス通信が正常に終了した場合(S813:YES)、これをもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。一方、ファクス通信が正常に終了しなかった場合は(S813:NO)、CPU32は、処理をステップS815へ進める。
【0138】
ステップS815において、CPU32は、第1実施例におけるステップS213などと同様の異常通知処理を実行する。このステップS815の異常通知処理の実行をもって、CPU32は、ファクス受信時用の電源制御タスクを終了する。
【0139】
このように、本第4実施例によれば、フォールバック機能と連動して、スイッチング周波数fsが制御される。このような本第4実施例によっても、スイッチング周波数fsが必要以上に上げられることによるスイッチング損失の増大が抑制され、さらなる省エネルギ化が図られる。
【0140】
なお、本第4実施例におけるファクス送信時用の電源制御タスクにおいては、ステップS701が設けられなくてもよい。すなわち、ファクス通信が開始される時点でのスイッチング周波数fsが維持された状態で、当該ファクス通信が行われてもよい。本第4実施例におけるファクス受信時の電源制御タスクにおいても、同様に、ステップS801が設けられなくてもよい。
【0141】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本発明の具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
【0142】
たとえば、電源部50については、
図2に示される構成に限らない。また、電源部50は、いわゆるPWM制御方式のスイッチング電源装置であるが、PFM制御方式のスイッチング電源装置であってもよい。そして、負荷電流検出回路52については、電源部50の外部に設けられてもよい。
【0143】
さらに、本発明は、複合機10に限らず、ファクス装置にも適用することができる。極端に言えば、本発明は、ファクスモデムを備えるパーソナルコンピュータなどの通信装置にも適用することができる。
【0144】
加えて、本発明は、通信装置という装置の形態に限らず、通信装置の制御プログラムというプログラムの形態、あるいは、通信装置の制御方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【0145】
併せて、本発明は、通信装置の制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体という形態によっても、提供することができる。ここで言う記録媒体としては、たとえばSDメモリカードやUSBメモリなどの半導体メディア、あるいは、CDやDVDなどのディスクメディアがある。これらの可搬型の記憶媒体に限らず、ROMやハードディスクドライブなどのような装置組込み型(内蔵型)の記憶媒体もまた、ここで言う記録媒体として適用可能である。
【符号の説明】
【0146】
10 … 複合機
18 … ファクス通信部
30 … 制御部
32 … CPU
34 … 主記憶部
50 … 電源部
52 … 負荷電流検出回路