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  • 特開-原子力電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177891
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】原子力電池
(51)【国際特許分類】
   G21H 1/10 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G21H1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084319
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】中込 宇宙
(72)【発明者】
【氏名】木村 礼
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】浅野 和仁
(57)【要約】
【課題】熱の利用効率を向上させることのできる原子力電池を得ることにある。
【解決手段】筐体1内に配置された緩衝材2と、この緩衝材2内に配置されアルファ線源
の崩壊熱を発する燃料3を収容する被覆管4と、このアルファ線源の崩壊熱を発する燃料
3を収容する被覆管4を複数配置して構成される熱源集合体6と、この熱源集合体6で発
生する熱を熱電素子7を介して系外に放熱する徐熱部8と、前記筐体1に隣接した前記緩
衝材2と前記熱源集合体6との間、および前記徐熱部8と前記緩衝材2との間に配置され
る断熱材9,10と、から成ることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置された緩衝材と、
この緩衝材内に配置されアルファ線源の崩壊熱を発する燃料を収容する被覆管と、
このアルファ線源の崩壊熱を発する燃料を収容する被覆管を複数配置して構成される熱
源集合体と、
この熱源集合体で発生する熱を熱電素子を介して系外に放熱する徐熱部と、
前記筐体に隣接した前記緩衝材と前記熱源集合体との間、および前記徐熱部と前記緩衝
材との間に配置される断熱材と、
から成ることを特徴とする原子力電池。
【請求項2】
前記アルファ線源の崩壊熱を発する燃料は、Am241を含むAm酸化物燃料であること
を特徴とする請求項1記載の原子力電池。
【請求項3】
前記アルファ崩壊熱を発する燃料は、Am241を含むAm金属燃料であることを特徴とす
る請求項1記載の原子力電池。
【請求項4】
前記徐熱部は、ヒートパイプから構成されるフィンを有することを特徴とする請求項1
から請求項3の何れか1項記載の原子力電池。
【請求項5】
前記徐熱部は、圧延材の金属から構成されるフィンを有することを特徴とする請求項1
から請求項3の何れか1項記載の原子力電池。
【請求項6】
前記緩衝材を、前記熱源集合体と前記徐熱部および前記熱電素子が設置されている部分
と設置されていない部分に分割し、前記緩衝材の分割対向面に断熱材を配置したことを特
徴とする請求項1から請求項5の何れか1項記載の原子力電池。
【請求項7】
前記徐熱部と前記緩衝材との間に配置される前記断熱材の代わりに前記徐熱部と前記緩
衝材との対向面には空隙部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何
れか1項記載の原子力電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱電変換方式に基づく原子力電池に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙探査において各機器の電源確保は重要であり、特に電源寿命は探査可能な範囲に影
響する要素と考えられている。
【0003】
宇宙探査用電源には、化学電池、太陽電池、原子力電池が候補として挙げられるが、寿
命の観点から太陽電池、原子力電池が有力である。化学電池は出力が高い一方、寿命が数
カ月オーダーと短い。また、太陽電池は太陽光が到達する範囲で使用可能であるが、太陽
光の到達しない外惑星探査においては、出力が制限されてしまう。一方、原子力電池は外
部環境によらず、燃料寿命がそのまま電源寿命となり数十年オーダーと長い利点がある。
【0004】
これまで、NASAはPu238のアルファ線源の崩壊熱を熱電素子により電気に変換す
る原子力電池を開発し、実際の宇宙探査機に使用してきた。Pu238の半減期は約87年
となり、1977年にPu238の原子力電池を搭載したボイジャー一号・二号はいまだ航行中
である。しかしながら、日本国内の使用において、Pu238は核燃料該当物質であるため
取り扱いが難しかった。
【0005】
そこで、Pu238の代替え燃料としてAm241が注目を浴びている。Am241は半減期が
約432年とPu238と比較して長いため、出力が小さいが核燃料物質非該当であること
から取り扱いやすく、近年、欧州ではAm241を使用した原子力電池の開発が行われてい
る。今後、日本国内の宇宙開発事業においてもAm241を宇宙用機器の電源としての利用
が想定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gary L. Bennett, Richard J. Hemler, Alfred Schock, Development and Use of the Galileo and Ulysses Power Sources IAF-94-R.1.362
【非特許文献2】Richard M. Ambrosi et al. European Radioisotope Thermoelectric Generators (RTGs) and Radioisotope Heater Units (RHUs) for Space Science and Exploration Space Sci Rev (2019) 215:55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した原子力電池は、アルファ線源の崩壊熱を熱電素子により電気に変換しているが
、線源を緩衝材により覆い、その外壁に熱電素子を張り付ける構造をしているため、線源
の熱を効率よく利用できていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、熱の利用効率を向
上させることのできる原子力電池を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記実施形態に係る原子力電池は、筐体内に配置された緩衝材と、この緩衝材内に配置
されアルファ線源の崩壊熱を発する燃料を収容する被覆管と、このアルファ線源の崩壊熱
を発する燃料を収容する被覆管を複数配置して構成される熱源集合体と、この熱源集合体
で発生する熱を熱電素子を介して系外に放熱する徐熱部と、前記筐体に隣接した前記緩衝
材と前記熱源集合体との間、および前記徐熱部と前記緩衝材との間に配置される断熱材と

から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態に係る原子力電池は、上述した課題を解決するためになされたもので
あり、熱源集合体による熱分布に指向性を持たせ、熱の利用効率を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における原子力電池の概略断面図。
図2】実施例2における原子力電池の概略断面図。
図3】実施例3における原子力電池の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る原子力電池の実施例について、図を参照して説明する。
【0013】
(実施例1)
図1を参照して実施例1に係る原子力電池について説明する。なお、図1は実施例1に
おける原子力電池の概略断面図である。
【0014】
図1において本実施例1は、図面における手前・奥側先端も含めて外部が筐体1で構成
され、この筐体1内には緩衝材2が配置されている。この緩衝材2内にはアルファ線源の
崩壊熱を発する燃料としてAm241を含むAm燃料3を収容する被覆管4が配置され、こ
の被覆管4は図面における手前・奥側先端も含めてその周囲が断熱材5によって覆われ、
Am燃料3が収容された被覆管4が複数本配置されて熱源集合体6を構成している。この
Am燃料3はAm241を含むAm酸化物燃料またはAm241を含むAm金属燃料とすること
ができる。
【0015】
この熱源集合体6には熱電素子7を介して徐熱部8が設置され、熱源集合体6で発生し
断熱材5を介して漏れ出た熱は、熱電素子7を介して徐熱部8から外部に放熱される構成
と成っている。この筐体1から突出している徐熱部8にはヒートパイプから構成されるフ
ィン、または圧延材の金属から構成されるフィンを使用することができる。そして、熱源
集合体6と筐体1に隣接した緩衝材2との間、および徐熱部8の周囲である緩衝材2との
間には断熱材9,10が配置されている。そして、熱源集合体6と断熱材9との間、各A
m燃料3の間隙には緩衝材2が配置されている。
【0016】
上述したように断熱材9,10及び徐熱部8を含む熱電素子7を緩衝材2の内部にそれ
ぞれ設け、緩衝材2の外部を筐体1にて覆う構成としたので、実施例1によれば、熱源集
合体6から発生する熱は断熱材9によって遮られ、筐体1から外部への放熱が減少し徐熱
部8方向に流れるので、熱源集合体6による熱分布に指向性を持たせるとともに、熱源集
合体6による熱源と熱電素子7の距離を短くすることで熱損失を低減し、熱の利用効率を
向上させることができ、Pu238より発熱量が少ないAm241を含むAm燃料3であっても
、原子力電池として活用することができる。
【0017】
(実施例2)
図2は実施例2における原子力電池の概略断面図である。以下、図2を参照して実施例
2に係る原子力電池について説明する。なお、図2において図1と同一部分には同一符号
を付し、その部分の構成の説明は省略する。
【0018】
図2において、本実施例2は、緩衝材2を、緩衝材12a,12b,12c,12dと4分割
し、緩衝材12a,12b,12cと緩衝材12dとの分割対向面に断熱材11を配置した構成
をしている。
【0019】
本実施の形態によれば、緩衝材12a,12b,12c,12dと4分割したことによって、
緩衝材12a,12b,12cと緩衝材12dとの接触熱抵抗と断熱材11によって熱源集合体
6から発生する熱の筐体1から系外への放熱が抑制されて断熱能力が向上し、熱源集合体
6から発生する熱が熱電素子7から確実に徐熱部8から放熱され、熱源集合体6から発生
する熱が緩衝材12a,12b,12cを介して徐熱部8へ伝達されるのを抑制できるので、
より徐熱部8の徐熱能力が向上し、熱の利用効率を向上させることができる。
【0020】
(実施例3)
図3は実施例3における原子力電池の概略断面図である。以下、図3を参照して実施例
3に係る原子力電池について説明する。なお、図3において図1と同一部分には同一符号
を付し、その部分の構成の説明は省略する。
【0021】
図3において、本実施例3は、実施例1における熱電素子7及び徐熱部8の近傍の緩衝
材2を取り除き、空隙部13を形成した構成としている。
【0022】
本実施の形態によれば、徐熱部8と緩衝材2が接する伝熱面積が低減するため、熱源集
合体6から発生する熱が緩衝材2を介して徐熱部8へ伝達される伝熱量が低減し、より徐
熱部8の徐熱能力が向上し、熱の利用効率を向上させることができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0024】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を
逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
【0025】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲
に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1…筐体、2…緩衝材、3…Am燃料、4…被覆管、5…断熱材、6…熱源集合体、7…
熱電素子、8…徐熱部、9…断熱材、10…断熱材、11…断熱材、12a,12b,12c,
12d…緩衝材、13…空隙部。
図1
図2
図3