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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177989
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20221125BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60R3/00
B60P1/43 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084457
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本田 勲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AD01
3D022AD06
3D022AD10
3D022AE07
3D022AE08
3D022AE13
3D022AE15
(57)【要約】
【課題】スロープ板の位置を安定的に保持する。
【解決手段】スロープ装置11は、展開方向に移動することによりドア開口部の下端に展開されるとともに格納方向に移動することにより車体に設けられた格納部としての格納ボックスに格納されるスロープ板10を備える。そして、スロープ装置11は、外力に抗してスロープ板10の位置を保持する位置保持装置70を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開方向に移動することによりドア開口部の下端に展開されるとともに格納方向に移動することにより車体に設けられた格納部に格納されるスロープ板と、
外力に抗して前記スロープ板の位置を保持する位置保持装置と、
を備える車両用スロープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スロープ装置において、
前記位置保持装置は、前記スロープ板に設けられたスロープ側チェックと車体に設けられた車体側チェックとの係合力に基づいて、前記格納部に前記スロープ板が格納された位置に該スロープ板を保持するチェック機構を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用スロープ装置において、
前記車体側チェックは、前記スロープ板の展開及び格納方向に延在する状態で回動可能に並置された一対のレバー部材と、
前記各レバー部材を付勢して互いの係合部が近接する方向に前記各レバー部材を回動させる付勢部材と、を備えるとともに、
前記スロープ側チェックは、前記格納方向に向かう前記スロープ板の移動に基づき前記両係合部の間に挿入される係合突部を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用スロープ装置において、
前記係合突部は、先端から基端側に向かって徐々に幅広となる楔形状部と、該楔形状部に連続して徐々に幅狭となるくびれ部と、を有するとともに、
前記各レバー部材の係合部には、互いが近接する方向に突出して前記係合突部の前記くびれ部に係合する突起部が設けられること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
モータを駆動源として前記スロープ板を前記格納方向に移動させる駆動装置と、
前記モータの電流変化に基づいて、前記チェック機構が前記係合力を発生する係合状態に移行したことを検出する係合検出装置と、を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
モータを駆動源として前記スロープ板を展開及び格納方向に移動させる駆動装置を備え、
前記位置保持装置は、前記駆動装置が前記モータに制動力を発生させる電磁ブレーキ制御を実行することにより、前記スロープ板の位置を保持するように構成されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用スロープ装置において、
前記駆動装置は、前記電磁ブレーキ制御として、前記モータの通電相を固定した通電制御を実行すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の車両用スロープ装置において、
前記位置保持装置は、前記格納部に前記スロープ板が格納された位置において、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用スロープ装置において、
前記位置保持装置は、前記格納部に格納された前記スロープ板を前記展開方向に移動させる方向の前記外力が働く場合に、前記電磁ブレーキ制御を実行すること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項10】
請求項6~請求項9の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記位置保持装置は、前記スロープ板が前記展開された位置において、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板は、該スロープ板の後端部が車体に係合する状態で前記展開されるものであって、
前記位置保持装置は、前記スロープ板が前記展開された位置にある場合において、車両に車高の変化が生ずる場合に、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
モータを駆動源として前記スロープ板を展開及び格納方向に移動させる駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記スロープ板を駆動して該スロープ板を前記ドア開口部の下端に展開させる際、前記スロープ板の前端部が地面に接地する前に、前記スロープ板の移動速度を減速すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
駆動ケーブルを介して前記スロープ板に駆動力を付与するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは、前記駆動ケーブルに噛合する状態で回転駆動される駆動ギヤと、前記駆動ギヤを回転自在に収容する収容部と、を備えるとともに、
前記収容部には、排水孔と、該排水孔に排水を導く斜面と、が設けられること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア開口部の下端にスロープ板を展開する車両用スロープ装置がある。例えば、特許文献1に記載の車両においては、床下に設けられた格納ボックス内に、そのスロープ装置が設置されている。更に、この従来例のスロープ装置は、駆動源を有して、そのスロープ板を展開及び格納方向に移動させる。そして、これにより、車椅子やベビーカー、或いは大型のキャリーケース等を保持する乗員がいる場合であっても、速やかに、そのドア開口部に連続した傾斜路を形成することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-131784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両においては、そのスロープ板に付与する駆動力や利用者の荷重以外にも、このスロープ板に対して外力が働く場合がある。そして、この外力により、そのスロープ板が移動してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、展開方向に移動することによりドア開口部の下端に展開されるとともに格納方向に移動することにより車体に設けられた格納部に格納されるスロープ板と、外力に抗して前記スロープ板の位置を保持する位置保持装置と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、展開及び格納方向に移動可能に設けられたスロープ板の位置を安定的に保持することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記位置保持装置は、前記スロープ板に設けられたスロープ側チェックと車体に設けられた車体側チェックとの係合力に基づいて、前記格納部に前記スロープ板が格納された位置に該スロープ板を保持するチェック機構を備えることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、格納部に格納されたスロープ板が、外力によって展開方向に移動することを抑制することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記車体側チェックは、前記スロープ板の展開及び格納方向に延在する状態で回動可能に並置された一対のレバー部材と、前記各レバー部材を付勢して互いの係合部が近接する方向に前記各レバー部材を回動させる付勢部材と、を備えるとともに、前記スロープ側チェックは、前記格納方向に向かう前記スロープ板の移動に基づき前記両係合部の間に挿入される係合突部を備えることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、スロープ側チェックの係合突部が、付勢部材の付勢力に抗して、その各係合部の間隔を押し広げながら車体側チェックを構成する一対のレバー部材の間に挿入される。更に、これらの各レバー部材が、その付勢部材の付勢力に基づいて、互いの係合部の間に挿入されたスロープ側チェックの係合突部を挟み込むことにより係合力が発生する。そして、これにより、円滑且つ安定的に、そのスロープ側チェックと車体側チェックとを係合させることができる。
【0010】
更に、各レバー部材が独立して回動することにより、スロープ側チェックの係合突部が車体側チェックを構成する一対のレバー部材の間に挿入される際、位置ずれが生じた場合であっても、これを吸収することができる。そして、これにより、その円滑な動作を担保することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記係合突部は、先端から基端側に向かって徐々に幅広となる楔形状部と、該楔形状部に連続して徐々に幅狭となるくびれ部と、を有するとともに、前記各レバー部材の係合部には、互いが近接する方向に突出して前記係合突部の前記くびれ部に係合する突起部が設けられることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、そのくびれ部と各突起部との係合により高い係合力を発生させることができる。特に、各突起部が係合するくびれ部よりも係合突部の先端側に楔形状部の幅広部分が位置することで、その付勢部材の付勢力に抗して係合突部を展開方向に移動させるために必要な力が大きくなる。そして、これにより、そのスロープ側チェックと車体側チェックとの係合力に基づいて、より安定的に、その格納部にスロープ板が格納された位置に、このスロープ板を保持することができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、モータを駆動源として前記スロープ板を前記格納方向に移動させる駆動装置と、前記モータの電流変化に基づいて、前記チェック機構が前記係合力を発生する係合状態に移行したことを検出する係合検出装置と、を備えることが好ましい。
【0014】
即ち、スロープ側チェックと車体側チェックとの係合動作時には、その駆動装置に要求される駆動力が変化する。そして、これにより、その駆動源であるモータの電流値もまた変化することになる。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、チェック機構の係合力に基づいて、そのスロープ板の位置が保持された状態にあることを確認することができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、モータを駆動源として前記スロープ板を前記展開及び格納方向に移動させる駆動装置を備え、前記位置保持装置は、前記駆動装置が前記モータに制動力を発生させる電磁ブレーキ制御を実行することにより、前記スロープ板の位置を保持するように構成されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、スロープ板の位置を保持することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記駆動装置は、前記電磁ブレーキ制御として、前記モータの通電相を固定した通電制御を実行することが好ましい。
【0017】
即ち、所謂「相固定通電」或いは「一相通電」と呼称される通電制御を実行することにより、モータには、その通電相に対応した電気的な回転角を保持する力が発生する。そして、これにより、そのモータに生ずる制動力を利用することで、安定的に、スロープ板の位置を保持することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記位置保持装置は、前記格納部に前記スロープ板が格納された位置において、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、格納部に格納されたスロープ板が、外力によって展開方向に移動することを抑制することができる。そして、これにより、高い信頼性及び安全性を確保することができる。
【0020】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記位置保持装置は、前記格納部に格納された前記スロープ板を前記展開方向に移動させる方向の前記外力が働く場合に、前記電磁ブレーキ制御を実行することが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、モータの発熱を抑えつつ、効果的に、その格納部にスロープ板が格納された位置に、このスロープ板を保持することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記位置保持装置は、前記スロープ板が前記展開された位置において、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、ドア開口部の下端に展開されたスロープ板の位置を安定的に保持することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記スロープ板は、該スロープ板の後端部が車体に係合する状態で前記展開されるものであって、前記位置保持装置は、前記スロープ板が前記展開された位置にある場合において、車両に車高の変化が生ずる場合に、前記駆動装置が前記電磁ブレーキ制御を実行するように構成されることが好ましい。
【0023】
即ち、車両に車高の変化が生ずることにより、その車体に係合したスロープ板の後端部が外れてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、その電磁ブレーキ制御の実行によりモータが発生する制動力に基づいて、そのドア開口部の下端に展開されたスロープ板の位置を安定的に保持することができる。そして、これにより、高い信頼性及び安全性を確保することができる。
【0024】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、モータを駆動源として前記スロープ板を前記展開及び格納方向に移動させる駆動装置を備え、前記駆動装置は、前記スロープ板を駆動して該スロープ板を前記ドア開口部の下端に展開させる際、前記スロープ板の前端部が地面に接地する前に、前記スロープ板の移動速度を減速することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、スロープ板が地面に接地する際に発生する音や振動を小さく抑えることができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、駆動ケーブルを介して前記スロープ板に駆動力を付与するアクチュエータを備え、前記アクチュエータは、前記駆動ケーブルに噛合する状態で回転駆動される駆動ギヤと、前記駆動ギヤを回転自在に収容する収容部と、を備えるとともに、前記収容部には、排水孔と、該排水孔に排水を導く斜面と、が設けられることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、例えば、被水や結露等により生じた駆動ギヤの収容部内の排水を、その排水孔を介して外部に排出することができる。更に、斜面によって、その収容部内の排水を排水孔に集めることができる。そして、これにより、効果的に、その収容部内の排水を外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スロープ板の位置を安定的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】スロープ装置が搭載された車両の斜視図。
図2】スロープ装置が搭載された車両の斜視図。
図3】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
図4】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
図5】スロープ装置の概略構成図。
図6】スロープ装置の動作説明図。
図7】スロープ装置の動作説明図。
図8】スロープ装置の動作説明図。
図9】スロープ装置を備える車両の制御ブロック図。
図10】スロープ装置の平面図。
図11】スロープ装置の下面図。
図12】チェック機構の斜視図。
図13】チェック機構の側面図。
図14】チェック機構の平面図。
図15】チェック機構の平面図。
図16】チェック機構の平面図。
図17】チェック機構の係合動作により生ずるモータの電流変化を示すグラフ。
図18】モータの電流変化に基づいたチェック機構の係合確認制御の処理手順を示すフローチャート。
図19】スロープ板の位置保持制御の処理手順を示すフローチャート。
図20】ブラシレスモータの概略構成図。
図21】スロープ板が格納状態にある場合に実行する位置保持制御の処理手順を示すフローチャート。
図22】スロープ板が展開状態にある場合に実行する位置保持制御の処理手順を示すフローチャート。
図23】スロープ板の展開時に実行する接地前の減速制御の説明図。
図24】アクチュエータに設けられた駆動ギヤの収容部を示す平面図。
図25】収容部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、車両用のスロープ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体2を有している。また、車体2の側面2sには、乗員の乗降口となるドア開口部3が設けられている。そして、このドア開口部3には、車両前後方向、相反する方向に開閉動作する一対のスライドドア4f,4rが設けられている。
【0030】
即ち、車両前方側のスライドドア4fは、車両前方側に移動することにより開作動し、車両後方側に移動することにより閉作動する。一方、車両後方側のスライドドア4rは、車両後方側に移動することにより開作動し、車両前方側に移動することにより閉作動する。更に、これらの各スライドドア4f,4rは、それぞれ、図示しないアクチュエータの駆動力に基づき開閉動作するパワースライドドア装置としての構成を有している。そして、本実施形態の車両1は、これらの各スライドドア4f,4rが連動するかたちで、そのドア開口部3を開閉する構成になっている。
【0031】
また、本実施形態の車両1は、ドア開口部3が開状態にある場合において、このドア開口部3の下端にスロープ板10を展開するスロープ装置11を備えている。そして、本実施形態の車両1は、このスロープ板10が形成する傾斜路12を利用することで、その乗員が、例えば、車椅子やベビーカー、或いはキャリーケース等を保有している場合であっても、容易に、そのドア開口部3から乗降することが可能となっている。
【0032】
図3及び図4に示すように、本実施形態の車両1において、このスロープ装置11は、ドア開口部3の下方において、その車体2に設けられた格納部としての格納ボックス13内に設置されている。具体的には、この格納ボックス13は、そのドア開口部3と同一方向に臨む開口部13aを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この開口部13aを介することにより、その格納ボックス13に格納されたスロープ板10を車外に展開し、及び、その展開したスロープ板10を再び格納ボックス13内に格納する構成になっている。
【0033】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11は、その格納ボックス13からドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の展開及び格納方向、つまりは、その格納ボックス13内の奥行き方向に延びる一対のガイドレール20,20を備えている。
【0034】
図3図5に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各ガイドレール20,20は、格納ボックス13内のスロープ板10を幅方向両側から挟み込む態様で、略平行に配置されている。また、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って摺動可能に設けられた一対の移動体21,21を備えている。更に、このスロープ装置11は、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結されるとともに移動体21に対して回動可能に連結される一対の支持アーム22,22を備えている。即ち、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各支持アーム22,22が、そのスロープ板10と移動体21,21との間の連結機構23を形成する。そして、これにより、各移動体21,21に連動して、そのスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成になっている。
【0035】
また、本実施形態のスロープ装置11は、モータ24を駆動源として、そのスロープ板10に駆動力を付与するアクチュエータ25を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、このアクチュエータ25は、各ガイドレール20,20の後端部20rよりも奥側において、その格納ボックス13内に配置されている。更に、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20,20の延伸方向に沿って配索される一対の駆動ケーブル26,26を備えている。尚、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各駆動ケーブル26,26は、ケーシングパイプ26x,26x内に挿通されることにより、そのアクチュエータ25から各ガイドレール20,20の後端部20rに配索される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各駆動ケーブル26,26を介して伝達されるアクチュエータ25の駆動力に基づいて、その各移動体21,21が各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0036】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ25は、モータ24が発生する駆動力に基づき回転する駆動ギヤ27を有している。また、このアクチュエータ25は、その駆動ギヤ27を径方向に挟む二位置において各駆動ケーブル26,26が、それぞれ、この駆動ギヤ27に対して噛合するように構成されている。即ち、本実施形態のアクチュエータ25は、その駆動ギヤ27が回転することにより、これらの各駆動ケーブル26,26を各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って摺動させる。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、その各駆動ケーブル26,26の端末に各移動体21,21が連結されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その各駆動ケーブル26,26と一体に、これらの各移動体21,21が、各ガイドレール20,20に案内される状態で、そのスロープ板10の展開及び格納方向に摺動する構成になっている。
【0037】
詳述すると、図6及び図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10は、ガイドレール20に対する移動体21及び支持アーム22の係合力に基づいて、略水平な姿勢が保持された状態で格納ボックス13内に収容されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この略水平な姿勢を保持したまま、そのガイドレール20の延伸方向に沿って、移動体21及び支持アーム22と一体にスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成となっている。
【0038】
また、図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、格納ボックス13が設けられた車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出する態様で、そのスロープ板10を車外に展開する。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、この状態で、その移動体21とスロープ板10との間に介在された支持アーム22が回動することにより、スロープ板10の後端部10rが持ち上がる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、車両フロア28に後端部10rを近づける態様で、そのスロープ板10が傾斜路12を形成する構成になっている。
【0039】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10の後端部10rには、フロア係合部29が設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、このフロア係合部29が車両フロア28の縁部28eに係合することで、そのスロープ板10の荷重を車両フロア28が支える構成になっている。
【0040】
また、図9に示すように、本実施形態の車両1において、スロープ装置11のアクチュエータ25は、制御装置30によって、その作動が制御されている。そして、パワースライドドア装置としての構成を有するスライドドア4f,4rのアクチュエータ31もまた、この制御装置30によって、その作動が制御されている。
【0041】
具体的には、本実施形態の制御装置30には、例えば、図示しない運転席等、車両1に設けられた操作入力部32に対する操作入力信号Scrが入力される。即ち、本実施形態の車両1において、この制御装置30には、その操作入力信号Scrとして、車両1の乗務員によるスライドドア4f,4rの作動要求、及びスロープ装置11の作動要求が入力される。そして、本実施形態の制御装置30は、これらの作動要求に基づいて、そのスライドドア4f,4rの開閉動作を制御するドア制御部33と、スロープ板10の展開及び格納動作を制御するスロープ制御部34と、を備えている。
【0042】
尚、本実施形態の制御装置30には、アクチュエータ25の動作に同期したパルス信号Spが入力される。更に、制御装置30は、このパルス信号Spをカウントすることにより、そのスロープ板10の移動位置P及び移動速度Vを検出する。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、これらの移動位置P及び移動速度Vを取得することにより、そのスロープ板10の駆動制御を実行する構成になっている。
【0043】
また、図1図2、及び図9に示すように、本実施形態の制御装置30には、車両1に設けられたカメラ35が映す車外の撮影画像Vdが入力される。尚、本実施形態の車両1において、このカメラ35は、例えば、ドア開口部3の上方に設けられるとともに、その車室36内にも設けられている。更に、本実施形態の制御装置30は、これらのカメラ35の撮影画像Vdを解析する画像解析部37と、この画像解析の結果に基づいて、そのドア開口部3を利用する車両1の乗員を検出する乗員検出部38と、を備えている。そして、本実施形態の制御装置30は、この乗員検出の結果に基づいて、自動的に、そのスライドドア4f,4rを開閉動作させるとともに、これらのスライドドア4f,4rに連動して、そのスロープ装置11を展開及び格納動作させる機能を備えている。
【0044】
更に、本実施形態の制御装置30は、車両1に設けられた車高調整装置39の作動を制御する車高制御装置40を備えている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのスライドドア4f,4rの開閉動作、及びスロープ装置11の展開及び格納動作に連動して、その車高を調整することが可能になっている。
【0045】
(スロープ板の位置保持装置)
次に、本実施形態のスロープ装置11に実装されたスロープ板10の位置保持装置について説明する。
【0046】
図10に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、車体2に設けられた格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置、つまりはスロープ板10の格納が完了した状態で(図3参照)、このスロープ板10を保持するチェック機構41を備えている。
【0047】
詳述すると、図10及び図11に示すように、本実施形態のチェック機構41は、スロープ板10に設けられたスロープ側チェック43と、車体2に設けられた車体側チェック44と、を備えている。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置において、これらのスロープ側チェック43と車体側チェック44とが係合する。そして、本実施形態のチェック機構41は、これらのスロープ側チェック43と車体側チェック44との係合力に基づいて、その格納ボックス13に格納された位置にスロープ板10を保持する構成になっている。
【0048】
本実施形態のスロープ装置11において、スロープ側チェック43は、スロープ板10の後端部10rに設けられている。また、車体側チェック44は、スロープ板10の幅方向に延在する状態でガイドレール20,20の後端部20r近傍を連結する連結フレーム45に設けられている。即ち、本実施形態のスロープ装置11は、これらの連結フレーム45及び各ガイドレール20,20を介して、その車体側チェック44を車体2に対して移動不能に固定する構成となっている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、そのアクチュエータ25もまた、この連結フレーム45に固定されている。
【0049】
さらに詳述すると、図11図14に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ側チェック43は、スロープ板10の後端部10rを構成するエンドパネル46の下面46bに対してチェック部材47を固定することにより形成されている。具体的には、本実施形態のチェック部材47は、略四角柱状の外形を有する基部48と、この基部48に直交する方向に延在する係合突部50と、を備えている。また、エンドパネル46の下面46bには、そのスロープ板10の幅方向(図11中、左右方向、図14中、上下方向)に延在する嵌合溝51が設けられている。更に、本実施形態のチェック部材47は、この嵌合溝51に対し、その基部48が嵌合する状態で、エンドパネル46の下面46bに固定される。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、スロープ板10の後端部10rに、その格納方向(図11中、下側、図13及び図14中、右側)に突出する係合突部50を備えたスロープ側チェック43が形成される構成となっている。
【0050】
また、図12図14に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、車体側チェック44は、スロープ板10の展開及び格納方向(図13及び図14中、左右方向)に延在する状態で回動可能に並置された一対のレバー部材53,53を備えている。具体的には、本実施形態の車体側チェック44は、略平板状の外形を有した連結フレーム45の上面45aに固定されるベースプレート54と、このベースプレート54上に立設された一対の支軸55,55と、を備えている。更に、本実施形態の車体側チェック44において、これらの各支軸55,55は、ベースプレート54が連結フレーム45に固定されることにより、この連結フレーム45の長手方向、つまりは、スロープ板10の幅方向に並んで配置される。そして、各レバー部材53,53は、これらの各支軸55,55に軸支されることにより、それぞれ、その各支軸55,55周りの独立した回動が許容されている。
【0051】
更に、本実施形態の車体側チェック44において、これらの各レバー部材53,53は、それぞれ、その第1端部53a,53aがスロープ板10の展開方向(図13及び図14中、左側)に配置される。そして、本実施形態の車体側チェック44は、各レバー部材53,53を付勢して、互いの第1端部53a,53aが近接する方向に各レバー部材53,53を回動させる付勢部材56を備えている。
【0052】
具体的には、本実施形態の車体側チェック44は、各レバー部材53,53の第2端部53b,53bの間に介在された圧縮コイルバネ57を備えている。即ち、本実施形態の車体側チェック44において、この圧縮コイルバネ57は、各レバー部材53,53の第2端部53b,53bを互いに離間させる方向の弾性力を発生する。更に、この圧縮コイルバネ57の弾性力に基づいて、各レバー部材53,53は、互いに相反する方向に回動する。そして、本実施形態の車体側チェック44は、これにより、この圧縮コイルバネ57を付勢部材56として、その第1端部53a,53aが互いに近接する方向に各レバー部材53,53を回動付勢する構成になっている。
【0053】
また、本実施形態のスロープ側チェック43は、このスロープ側チェック43を構成するチェック部材47の係合突部50が、スロープ板10の幅方向において、その車体側チェック44を構成する各レバー部材53,53の間の位置に配置される構成となっている。
【0054】
具体的には、図10及び図11に示すように、本実施形態のチェック部材47は、スロープ板10の幅方向略中央位置において、その後端部10rを構成するエンドパネル46に固定されている。そして、車体側チェック44のベースプレート54もまた、スロープ板10の幅方向略中央位置に位置する連結フレーム45の長手方向略中央部分に固定されている。
【0055】
更に、図13に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置において、そのエンドパネル46と連結フレーム45との間に高さ方向(図13中、上下方向)の隙間が形成される。また、このスロープ板10の格納が完了した状態で、そのエンドパネル46の下面46bに設けられたスロープ側チェック43と、連結フレーム45の上面45aに設けられた車体側チェック44とが、略等しい高さ位置に配置される。そして、本実施形態のチェック機構41は、これにより、その格納方向に向かうスロープ板10の移動に基づいて、このスロープ板10と一体に移動するスロープ側チェック43と、車体2に固定された車体側チェック44とが、互いに係合する構成になっている。
【0056】
即ち、図14図16に示すように、本実施形態のチェック機構41においては、車体側チェック44を構成する各レバー部材53,53の第1端部53a,53aの間に、スロープ側チェック43を構成するチェック部材47の係合突部50が挿入される。更に、付勢部材56を構成する圧縮コイルバネ57の付勢力に基づいて、その第1端部53a,53aの間に挿入された係合突部50を各レバー部材53,53が挟み込む。そして、本実施形態のチェック機構41は、これにより、その第1端部53a,53aを各レバー部材53,53の係合部58,58として、これらの各レバー部材53,53とチェック部材47の係合突部50とが互いに係合する構成になっている。
【0057】
さらに詳述すると、本実施形態のチェック機構41において、スロープ側チェック43を構成するチェック部材47は、その係合突部50の先端50aから基端50b側に向かって徐々に幅広となる楔形状部59を有している。更に、このチェック部材47には、その楔形状部59に連続して徐々に幅狭となるくびれ部60が設けられている。そして、本実施形態のチェック部材47は、その係合突部50の先端50aに設けられた楔形状部59の幅方向がスロープ板10の幅方向に一致する状態で、そのエンドパネル46の下面46bに固定されている。
【0058】
また、本実施形態の車体側チェック44は、各レバー部材53,53の係合部58,58を構成する第1端部53a,53aに設けられたカバー部材62,62を有している。本実施形態の車体側チェック44において、各レバー部材53,53は、金属を用いて形成されている。また、カバー部材62,62は、樹脂を用いて形成されている。そして、これらの各カバー部材62,62は、それぞれ、その第1端部53a,53aを被覆する状態で、各レバー部材53,53に固定されている。
【0059】
更に、これらの各カバー部材62,62は、各レバー部材53,53の係合部58,58を構成する第1端部53a,53aに対し、それぞれ、互いが近接する方向に突出する突起部63,63を形成する。そして、本実施形態の各レバー部材53,53は、これらの各突起部63,63に対して、そのスロープ板10とともに格納方向に移動するチェック部材47の係合突部50が当接するように構成されている。
【0060】
即ち、図15に示すように、本実施形態のチェック部材47は、各レバー部材53,53の係合部58,58を構成する第1端部53a,53aの間に挿入された係合突部50の楔形状部59が、その間隔を徐々に押し広げるように構成されている。そして、本実施形態のチェック機構41は、これにより、スロープ板10を格納方向に移動させる駆動力に基づいて、そのチェック部材47に押圧された各レバー部材53,53が、圧縮コイルバネ57の付勢力に抗して円滑に回動する構成になっている。
【0061】
また、図16に示すように、チェック部材47が更に格納方向に移動することにより、各レバー部材53,53の係合部58,58に設けられた突起部63,63が、その楔形状部59よりも係合突部50の基端50b側に設けられたくびれ部60に係合する。つまり、これらの各突起部63,63が係合するくびれ部60よりも係合突部50の先端50a側に楔形状部59の幅広部分が位置することで、その圧縮コイルバネ57に抗して係合突部50を展開方向に移動させるために必要な力が大きくなる。そして、本実施形態のチェック機構41は、これにより生ずるスロープ側チェック43と車体側チェック44との係合力に基づいて、その格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置に、このスロープ板10を保持する構成になっている。
【0062】
また、図12及び図14に示すように、本実施形態のチェック機構41において、各レバー部材53,53の第2端部53b,53bには、それぞれ、互いが対向する方向に突出した保持突部64,64が設けられている。そして、付勢部材56を構成する圧縮コイルバネ57は、その軸方向両端に、これらの各保持突部64,64が嵌挿された状態で、各レバー部材53,53の第2端部53b,53b間に介在されている。
【0063】
更に、本実施形態のベースプレート54には、各レバー部材53,53の第2端部53b,53b間に圧縮コイルバネ57が介在された状態において、この圧縮コイルバネ57を連結フレーム45との間に挟み込む保持片65が設けられている。具体的には、この保持片65は、その圧縮コイルバネ57の周方向に沿って延在する断面略コ字状の外形を有している。そして、本実施形態の車体側チェック44は、これにより、圧縮コイルバネ57が脱離することなく、安定的に、その各レバー部材53,53を付勢することのできる構成になっている。
【0064】
また、本実施形態のベースプレート54は、各レバー部材53,53の第2端部53b,53bに当接することにより、その圧縮コイルバネ57の付勢力に基づいた互いに離間する方向の移動を規制する一対のストッパ部66,66を備えている。そして、本実施形態の車体側チェック44は、これにより、その非係合状態における各レバー部材53,53の第1端部53a,53aの間隔を一定に保持する構成になっている。
【0065】
また、本実施形態の車体側チェック44においては、各レバー部材53,53が、その各支軸55,55周りに、それぞれ、独立して回動する。そして、これにより、チェック部材47の係合突部50が、各レバー部材53,53の第1端部53a,53aの間に挿入される際、そのスロープ板10の幅方向に位置ずれが生じた場合であっても、これを吸収することができる構成となっている。
【0066】
更に、このとき、圧縮コイルバネ57を間に挟んだ各レバー部材53,53の第2端部53b,53bの一方が、ベースプレート54に設けられたストッパ部66に当接する。そして、本実施形態のチェック機構41は、これにより、圧縮コイルバネ57の弾性力に基づいて、自律的に、そのスロープ側チェック43と車体側チェック44との間に生じた位置ずれを修正する機能を有している。
【0067】
また、図9に示すように、本実施形態の車両1において、制御装置30に設けられたスロープ制御部34は、アクチュエータ25の駆動源となるモータ24に対する駆動電力の供給を通じて、そのスロープ装置11の作動を制御する。更に、本実施形態のスロープ制御部34は、スロープ板10の格納制御時、そのモータ24の電流変化を監視する。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、上記のように構成されたチェック機構41が、その格納ボックス13に格納された位置にスロープ板10を保持するための係合力を発生する係合状態に移行したことが検出される構成になっている。
【0068】
即ち、図15図17に示すように、格納方向に向かうスロープ板10の移動によりスロープ側チェック43が車体側チェック44に係合する際には、その圧縮コイルバネ57の付勢力に抗して各レバー部材53,53が回動する。このため、アクチュエータ25には、このとき、無負荷状態でスロープ板10を駆動する場合よりも大きな駆動力が要求される。更に、これにより、そのアクチュエータ25の駆動源であるモータ24の電流値Iが増大する。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、このようなチェック機構41の係合動作により生ずるモータ24の電流変化を検出することで、その係合状態への移行を検出する構成になっている。
【0069】
具体的には、図18に示すように、本実施形態のスロープ制御部34は、格納制御時(ステップ101:YES)、先ず、スロープ板10の移動位置Pを取得する(ステップ102)。そして、スロープ制御部34は、このスロープ板10の移動位置Pが、チェック機構41の係合動作範囲α内にあるかを判定する(ステップ103)。
【0070】
更に、スロープ制御部34は、その移動位置Pが係合動作範囲α内にある場合(ステップ103:YES)、モータ24の電流値Iを取得して(ステップ104)、所定の第1閾値TH1と比較する(ステップ105)。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、そのステップ104で取得した電流値Iが第1閾値TH1以下である場合(I≦TH1、ステップ105:NO)には、再び、上記ステップ104、及び、このステップ105の処理を繰り返す。
【0071】
また、スロープ制御部34は、上記ステップ105において、その第1閾値TH1よりも大きい電流値Iの検出を確認した場合(I>TH1、ステップ105:YES)にも、新たにモータ24の電流値Iを取得する(ステップ106)。更に、スロープ制御部34は、このステップ106において取得したモータ24の電流値Iを第2閾値TH2と比較する(ステップ107)。そして、スロープ制御部34は、その電流値Iが第2閾値TH2以上である場合(I≧TH2、ステップ107:NO)には、再び、上記ステップ106、及び、このステップ107の処理を繰り返す。
【0072】
そして、本実施形態のスロープ制御部34は、ステップ107において、その第2閾値TH2よりも小さい電流値Iの検出を確認した場合(I<TH2、ステップ105:YES)に、チェック機構41が係合状態に移行したことを確認する(ステップ108)。
【0073】
即ち、図15図17に示すように、チェック機構41の係合動作時、アクチュエータ25に要求される駆動力は、係合突部50の楔形状部59が、各レバー部材53,53の第1端部53a,53aの間隔を最も押し広げる位置において最大となる。そして、本実施形態のスロープ制御部34においては、このとき、モータ24に生ずる電流値Iの増加に対応して、その第1閾値TH1が設定されている。
【0074】
更に、その後、格納方向に移動する係合突部50の楔形状部59が、各レバー部材53,53の第1端部53a,53aの間隔を押し広げる位置を通過することで、そのアクチュエータ25に要求される駆動力が低下する。そして、本実施形態のスロープ制御部34においては、このとき、モータ24に生ずる電流値Iの低下に対応して、その第2閾値TH2が設定されている。
【0075】
つまり、本実施形態のスロープ制御部34は、これらの第1閾値TH1及び第2閾値TH2との比較に基づいて、そのアクチュエータ25のモータ24に生ずるチェック機構41の係合動作時に特有な電流値Iの増減を検出する。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、簡素な構成にて、精度よく、そのチェック機構41が係合状態に移行したことを検出することのできる構成になっている。
【0076】
このように、本実施形態のスロープ装置11においては、上記のように構成されたチェック機構41によって、そのスロープ板10の位置保持装置70が形成されている。
また、図9に示すように、本実施形態の車両1においては、状況に応じて、その制御装置30に設けられたスロープ制御部34が、アクチュエータ25のモータ24に制動力を発生させる電磁ブレーキ制御を実行する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10の駆動装置71を構成するアクチュエータ25及びスロープ制御部34もまた、そのスロープ板10の位置保持装置70としての機能を有するものとなっている。
【0077】
詳述すると、図19に示すように、本実施形態のスロープ制御部34は、スロープ板10が、その格納ボックス13に格納された位置にあるか、即ち格納状態にあるかを判定する(ステップ201)。また、スロープ制御部34は、スロープ板10が、そのドア開口部3の下端に展開された位置にあるか、即ち展開状態にあるかを判定する(ステップ202)。更に、スロープ制御部34は、スロープ板10が格納状態にある場合(ステップ201:YES)、又は展開状態にある場合(ステップ202:YES)、それぞれ、外乱判定を実行する(ステップ203及びステップ204)。具体的には、本実施形態のスロープ制御部34は、これらステップ203及びステップ204の外乱判定において、それぞれ、そのスロープ板10の位置を移動させるような外力が働く状況が生じているか否かを判定する。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、これらの外乱判定の結果に基づいて、その外力に対抗する保持力が必要とされる場合(ステップ205:YES)に、モータ24の電磁ブレーキ制御を実行する(ステップ206)。
【0078】
詳述すると、本実施形態のスロープ制御部34は、その電磁ブレーキ制御として、アクチュエータ25のモータ24に対して通電相を固定した電力供給を行う所謂「相固定通電」或いは「一相通電」と呼称される通電制御を実行する。
【0079】
即ち、図20に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、アクチュエータ25のモータ24には、U,V,Wの各相に対応する三相のモータコイル24u,24v,24wを有したブラシレスモータが用いられている。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、電気的な回転角に応じて、これらの各モータコイル24u,24v,24wに対する通電パターンを順次切り替えて三相の駆動電力を生成することにより、そのモータ24を回転させる構成になっている。
【0080】
また、本実施形態のスロープ制御部34は、電磁ブレーキ制御の実行時には、その通電パターンを固定する。即ち、ブラシレスモータにおいては、例えば、「U相→W相」の通電パターンを保持する等、通電相を固定した電力供給を行うことにより、その通電パターンに対応した電気的な回転角を保持する力が発生する。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、これにより、そのモータ24に制動力を発生させる構成になっている。
【0081】
さらに詳述すると、図21に示すように、本実施形態のスロープ制御部34は、スロープ板10が格納状態にある場合の外乱判定においては(ステップ301:YES)、先ず、車両1が走行中であるかを判定する(ステップ302)。更に、スロープ制御部34は、車両1が走行中である場合(ステップ302:YES)、車両1の横方向加速度を取得する(ステップ303)。次に、スロープ制御部34は、その横方向加速度に基づく慣性力、即ち遠心力によって、その格納ボックス13に格納されたスロープ板10が展開方向に移動する可能性があるか否かを判定する(ステップ304)。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、上記ステップ304において、そのスロープ板10が展開方向に移動する可能性があると判定した場合(ステップ304:YES)に、このスロープ板10に働く外力としての遠心力に対抗する保持力が必要と判定する。つまりは、電磁ブレーキ制御の実行により、アクチュエータ25のモータ24に制動力を発生させるべき旨を決定する(ステップ305)。
【0082】
尚、本実施形態のスロープ制御部34は、所定速度以上の車速がある場合に「走行中」と判定する。また、横方向加速度の方向を判定し、及び、その値を所定の閾値と比較することにより、格納ボックス13に格納されたスロープ板10が「展開方向に移動する可能性」を判定する。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、この「展開方向に移動する可能性」が否定される場合(ステップ304:NO)には、その電磁ブレーキ制御を実行しない。
【0083】
また、図22に示すように、スロープ板10が展開状態にある場合の外乱判定においては(ステップ401:YES)、その車両1における車高の変化が判定される(ステップ402)。具体的には、本実施形態の車両1においては、制御装置30に設けられた車高制御装置40により、そのバランスを含め、車高調整装置39により調整される複数位置の車高が監視されている(図9参照)。そして、本実施形態のスロープ制御部34は、これにより、その車両1に車高の変化が生ずる状況にあると判定された場合(ステップ403:YES)に、その車高の変化に基づきスロープ板10に働く外力に対抗する保持力が必要と判定する。つまりは、電磁ブレーキ制御の実行により、アクチュエータ25のモータ24に制動力を発生させるべき旨を決定する構成になっている(ステップ404)。
【0084】
即ち、本実施形態のスロープ装置11において、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10は、その後端部10rが車体2に係合する状態で傾斜路12を形成する。このため、車両1に車高の変化が生じた場合には、その車体2に係合したスロープ板10の後端部10rが外れてしまう可能性がある。
【0085】
この点を踏まえ、本実施形態のスロープ装置11においては、上記のように、そのアクチュエータ25の駆動源であるモータ24の電磁ブレーキ制御が実行される。また、これにより生ずるモータ24の制動力に基づいて、その駆動ケーブル26を介してアクチュエータ25に連結された移動体21の移動が規制される。更に、これにより、この移動体21とスロープ板10との間に介在された連結機構23が、その支持アーム22の回動により後端部10rが持ち上げられたスロープ板10の位置を保持する(図8参照)。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この電磁ブレーキ制御の実行により生ずる保持力に基づいて、そのドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の位置を安定的に保持する構成になっている。
【0086】
(スロープ板展開時の減速制御)
次に、本実施形態のスロープ装置に実装されたスロープ板展開時の減速制御機能について説明する。
【0087】
図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、そのスロープ板10が略水平な姿勢を保持したまま、アクチュエータ25の駆動力に基づいて、そのガイドレール20,20の延伸方向に沿って展開及び格納方向に移動する構成になっている。更に、スロープ板10の展開時には、展開方向に移動するスロープ板10の後端部10rがガイドレール20,20の前端部20f,20fから離脱することにより、その支持アーム22との第1連結点X1周りにスロープ板10の傾動が許容される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その自重によって、スロープ板10の前端部10fが地面に接地する構成になっている(図4参照)。
【0088】
尚、図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、このスロープ板10の接地後、更に、その支持アーム22を介してスロープ板10に連結された移動体21が展開方向に移動する。更に、本実施形態のスロープ装置11は、この展開方向に向かう移動体21の移動によって、その第1連結点X1周りに更なるスロープ板10の傾動を伴いつつ、その移動体21に対する第2連結点X2周りに支持アーム22が回動する。即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、この支持アーム22の回動に基づいて、そのスロープ板10と移動体21との間の連結機構23が、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の後端部10rを持ち上げるリフト機構して機能する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10の後端部10rが車体2に係合、詳しくは車両フロア28の縁部28eに係合する状態で、そのドア開口部3に連続する傾斜路12を形成する構成になっている。
【0089】
また、スロープ板10が地面に接地する際には、音や振動が発生する。この点を踏まえ、本実施形態のスロープ制御部34は、アクチュエータ25によりスロープ板10を駆動してドア開口部3の下端に展開させる際、そのスロープ板10の前端部10fが地面に接地する前に、このスロープ板10の移動速度Vを減速する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10が地面に接地する際に発生する音や振動を小さく抑える構成になっている。
【0090】
具体的には、図9及び図23に示すように、アクチュエータ25とともに駆動装置71を構成するスロープ制御部34は、スロープ板10の展開制御時、その移動体21とともに展開方向に移動するスロープ板10の移動速度Vを所定の第1速度V1に制御する。更に、スロープ制御部34は、スロープ板10が、予め設定された所定の減速開始位置P1に到達することにより、そのスロープ板10の移動速度Vを徐々に低減する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10が地面に接地する接地位置P2においては、そのスロープ板10の移動速度Vが、上記第1速度V1よりも遅い所定の第2速度V2に減速される構成になっている(V2<V1)。
【0091】
(アクチュエータの排水構造)
次に、本実施形態のスロープ装置11に実装されたアクチュエータ25の排水構造について説明する。
【0092】
図24及び図25に示すように、本実施形態のアクチュエータ25は、そのケース72(図10参照)の内側に設けられた駆動ギヤ27の収容部73を備えている。具体的には、本実施形態のアクチュエータ25において、この駆動ギヤ27の収容部73は、略平板状の外形を有したハウジング部材74の上面74aに凹設された上方に開口する略円形の凹部形状をなしている。そして、本実施形態のアクチュエータ25は、この収容部73の内側に配置された駆動ギヤ27が、その駆動源であるモータ24に回転駆動される構成になっている。
【0093】
更に、この収容部73内には、駆動ギヤ27の回転中心27xを挟む二位置において、そのアクチュエータ25のケース72内に導入された二本の駆動ケーブル26,26が略平行に挿通されている。そして、本実施形態のアクチュエータ25は、これにより、その収容部73内に配置された駆動ギヤ27が、これらの各駆動ケーブル26,26に噛合する構成になっている。
【0094】
また、この収容部73は、その底面73bを貫通する一対の排水孔75,75が設けられている。そして、本実施形態のアクチュエータ25は、これにより、例えば、被水や結露等により生じた駆動ギヤ27の収容部73内の排水が、これらの各排水孔75,75を介して、そのケース72の外部に排出される構成になっている。
【0095】
具体的には、これらの各排水孔75,75は、駆動ギヤ27の回転中心27xを挟む二位置において、それぞれ、その収容部73の周壁73sに沿って、略円弧状に延びる長孔形状を有している。更に、本実施形態の車両1において、これらの各排水孔75,75は、そのスロープ装置11が格納ボックス13にされることにより、車両前後方向に配置される。そして、本実施形態のアクチュエータ25は、これにより、車両1の加速及び減速によって、効率よく、その排水を各排水孔75,75から排出することのできる構成になっている。
【0096】
更に、この駆動ギヤ27の収容部73には、これらの各排水孔75,75に排水を導く斜面76が設けられている。具体的には、本実施形態のアクチュエータ25において、収容部73の底面73bは、各排水孔75,75が設けられた二位置を「谷」とし、これらの「谷」から周方向に略90°ずれた二位置を「山」とする凹凸形状を有している。そして、本実施形態の収容部73は、これにより、その各排水孔75,75を囲む態様で、それぞれ、これらの排水孔75,75に排水を導く斜面76が設けられた構成となっている。
【0097】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、スロープ装置11においては、スロープ板10が、車体2に設けられた格納部としての格納ボックス13に格納された位置、又は、ドア開口部3の下端に展開された位置ある場合に、その位置保持装置70が作動する。そして、これにより、そのスロープ板10に働く外力に抗して、このスロープ板10の位置が保持される。
【0098】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11は、展開方向に移動することによりドア開口部3の下端に展開されるとともに格納方向に移動することにより車体2に設けられた格納部としての格納ボックス13に格納されるスロープ板10を備える。そして、スロープ装置11は、外力に抗してスロープ板10の位置を保持する位置保持装置70を備える。これにより、展開及び格納方向に移動可能に設けられたスロープ板10の位置を安定的に保持することができる。
【0099】
(2)スロープ装置11は、その位置保持装置70として、スロープ板10に設けられたスロープ側チェック43と車体2に設けられた車体側チェック44とが係合することにより、そのスロープ板10の位置を保持するチェック機構41を備える。そして、スロープ装置11は、このチェック機構41の係合力に基づいて、その格納ボックス13に格納された位置にスロープ板10を保持する。
【0100】
上記構成によれば、格納ボックス13に格納されたスロープ板10が、外力によって展開方向に移動することを抑制することができる。そして、これにより、高い信頼性及び安全性を確保することができる。
【0101】
(3)車体側チェック44は、スロープ板10の展開及び格納方向に延在する状態で回動可能に並置された一対のレバー部材53,53を備える。更に、車体側チェック44は、これらの各レバー部材53,53を付勢して互いの係合部58,58が近接する方向に各レバー部材53,53を回動させる付勢部材56としての圧縮コイルバネ57を備える。そして、スロープ側チェック43は、格納方向に向かうスロープ板10の移動に基づき両レバー部材53,53の係合部58,58の間に挿入される係合突部50を備える。
【0102】
上記構成によれば、スロープ側チェック43の係合突部50が、圧縮コイルバネ57の付勢力に抗して、その係合部58,58の間隔を押し広げながら車体側チェック44を構成する一対のレバー部材53,53の間に挿入される。更に、これらの各レバー部材53,53が、その圧縮コイルバネ57の付勢力に基づいて、その係合部58,58の間に挿入されたスロープ側チェック43の係合突部50を挟み込むことにより係合力が発生する。そして、これにより、円滑且つ安定的に、そのスロープ側チェック43と車体側チェック44とを係合させることができる。
【0103】
更に、各レバー部材53,53が独立して回動することにより、スロープ側チェック43の係合突部50が、車体側チェック44を構成する一対のレバー部材53,53の間に挿入される際、位置ずれが生じた場合であっても、これを吸収することができる。そして、これにより、その円滑な動作を担保することができる。
【0104】
(4)係合突部50は、先端50aから基端50b側に向かって徐々に幅広となる楔形状部59と、この楔形状部59に連続して徐々に幅狭となるくびれ部60と、を有する。そして、各レバー部材53,53の係合部58,58には、互いが近接する方向に突出して、その係合突部50のくびれ部60に係合する突起部63,63が設けられる。
【0105】
上記構成によれば、そのくびれ部60と突起部63,63との係合により高い係合力を発生させることができる。特に、各突起部63,63が係合するくびれ部60よりも係合突部50の先端50a側に楔形状部59の幅広部分が位置することで、その圧縮コイルバネ57に抗して係合突部50を展開方向に移動させるために必要な力が大きくなる。そして、これにより、そのスロープ側チェック43と車体側チェック44との係合力に基づいて、より安定的に、格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置に、このスロープ板10を保持することができる。
【0106】
(5)スロープ装置11は、モータ24を駆動源としてスロープ板10を展開及び格納方向に移動させるアクチュエータ25を備える。また、このアクチュエータ25は、制御装置30に設けられたスロープ制御部34により、その作動が制御される。更に、スロープ制御部34は、スロープ板10の格納制御時、そのモータ24の電流変化を監視する。そして、係合検出装置80としてのスロープ制御部34は、そのモータ24の電流変化に基づいて、チェック機構41が係合力を発生する係合状態に移行したことを検出する。
【0107】
即ち、スロープ側チェック43と車体側チェック44との係合動作時には、その駆動装置71を構成するアクチュエータ25に要求される駆動力が変化する。そして、これにより、その駆動源であるモータ24の電流値Iもまた変化することになる。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、チェック機構41の係合力に基づいて、そのスロープ板10の位置が保持された状態にあることを確認することができる。
【0108】
(6)アクチュエータ25とともにスロープ板10の駆動装置71を構成するスロープ制御部34は、モータ24に制動力を発生させる電磁ブレーキ制御を実行することにより、位置保持装置70として機能する。これにより、簡素な構成にて、安定的に、スロープ板10の位置を保持することができる。
【0109】
(7)モータ24は、三相のモータコイル24u,24v,24wを有したブラシレスモータとしての構成を有する。そして、スロープ制御部34は、その電磁ブレーキ制御として、モータ24の通電相を固定した通電制御を実行する。
【0110】
即ち、所謂「相固定通電」或いは「一相通電」と呼称される通電制御を実行することにより、モータ24には、その通電相に対応した電気的な回転角を保持する力が発生する。そして、これにより、そのモータ24に生ずる制動力を利用することで、安定的に、スロープ板10の位置を保持することができる。
【0111】
(8)スロープ制御部34は、格納ボックス13にスロープ板10が格納された位置において、その電磁ブレーキ制御を実行する。
上記構成によれば、格納ボックス13に格納されたスロープ板10が、外力によって展開方向に移動することを抑制することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0112】
(9)スロープ制御部34は、車両1の横方向加速度を取得し、この横方向加速度に基づく遠心力によって、その格納ボックス13に格納されたスロープ板10が展開方向に移動する可能性があるかを判定する。そして、このスロープ板10に働く外力としての遠心力に対抗する保持力が必要と判定した場合、つまりは、スロープ板10を展開方向に移動させる方向の外力が働く場合に、その電磁ブレーキ制御を実行する。これにより、モータ24の発熱を抑えつつ、効果的に、スロープ板10の位置を保持することができる。
【0113】
(10)スロープ制御部34は、スロープ板10がドア開口部3の下端に展開された位置において、その電磁ブレーキ制御を実行する。これにより、そのドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の位置を安定的に保持することができる。
【0114】
(11)スロープ板10は、その後端部10rが車体2に係合、詳しくは車両フロア28の縁部28eに係合する状態で、そのドア開口部3に連続する傾斜路12を形成する。そして、スロープ制御部34は、このようなスロープ板10が展開された位置にある場合において、車両1に車高の変化が生ずる場合に、その電磁ブレーキ制御を実行する。
【0115】
即ち、車両1に車高の変化が生ずることにより、その車体2に係合したスロープ板10の後端部10rが外れてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、その電磁ブレーキ制御の実行によりモータ24が発生する制動力に基づいて、そのドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の位置を安定的に保持することができる。そして、これにより、高い信頼性及び安全性を確保することができる。
【0116】
(12)スロープ制御部34は、スロープ板10を駆動してドア開口部3の下端に展開させる展開制御時、このスロープ板10の前端部10fが地面に接地する前に、このスロープ板10の移動速度Vを減速させる。これにより、スロープ板10が地面に接地する際に発生する音や振動を小さく抑えることができる。
【0117】
(13)アクチュエータ25は、駆動ケーブル26に噛合する状態でモータ24に回転駆動される駆動ギヤ27と、この駆動ギヤ27を回転自在に収容する収容部73と、を備える。そして、収容部73には、排水孔75と、この排水孔75に排水を導く斜面76と、が設けられる。
【0118】
上記構成によれば、例えば、被水や結露等により生じた駆動ギヤ27の収容部73内の排水を、その排水孔75を介して外部に排出することができる。更に、斜面76によって、その収容部73内の排水を排水孔75に集めることができる。そして、これにより、効果的に、その収容部73内の排水を外部に排出することができる。
【0119】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0120】
・上記実施形態では、スロープ装置11は、スロープ板10の位置保持装置70として、このスロープ板10を格納ボックス13に格納された位置に保持するチェック機構41を備えることとした。しかし、これに限らず、例えば、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10を保持する位置等、チェック機構41を設ける位置は、任意に設定してもよい。
【0121】
・チェック機構41の構成は、任意に変更してもよい。例えば、スロープ側チェック43を構成するチェック部材47の係合突部50についても、その形状は任意に変更してもよい。また、例えば、車体側チェック44を構成する各レバー部材53,53についても、その形状は任意に変更してもよい。更に、これらの各レバー部材53,53の付勢部材56についてもまた、圧縮コイルバネ57に限らず任意に変更してよい。また、このような係合突部50を有するチェック部材47や二本のレバー部材53,53とは異なる係合部材を用いたチェック機構41を採用してもよい。そして、ラッチ機構を、その位置保持装置70として備える構成としてもよい。
【0122】
・上記実施形態では、所定の第1閾値TH1よりも大きいモータ24の電流値Iを検出した後、所定の第2閾値TH2よりも小さい電流値Iの検出が検出されることで、チェック機構41が係合状態に移行したことを確認することとした。しかし、これに限らず、モータ24の電流変化に基づいて、チェック機構41が係合状態に移行したことを検出する方法については、任意に変更してもよい。例えば、第1閾値TH1との比較のみを行う構成であってもよい。また、モータ24の電流値Iが第1閾値TH1を超えた後、複数回、連続で低下した、或いは、最初に第1閾値TH1を超えた時点から電流値Iが所定の割合まで低下したことを、その係合状態の確認条件としてもよい。そして、スロープ板10の移動位置Pが係合動作範囲αに入った後、モータ24の電流値Iが、複数回、連続で増加することを、その係合状態の確認条件としてもよい。
【0123】
・上記実施形態では、車両1が走行中である場合において、横方向加速度の検出により、このスロープ板10に働く外力としての遠心力に対抗する保持力が必要と判定した場合に、その電磁ブレーキ制御を実行することとした。しかし、これに限らず、車両1が停車中である場合にも、その格納ボックス13に格納された位置にスロープ板10を保持するための電磁ブレーキ制御を実行する構成を採用してもよい。例えば、車両1の傾きを検出することにより、そのスロープ板10の自重による展開方向の移動を抑えるために電磁ブレーキ制御を実行する構成を採用してもよい。そして、例えば、他の車両1が衝突した場合に、その衝突により生じた加速度によって、スロープ板10が展開方向に移動しないように、その電磁ブレーキ制御を実行する構成としてもよい。
【0124】
・上記実施形態では、スロープ板10が展開された位置にある場合において、車両1に車高の変化が生ずる場合に、その電磁ブレーキ制御を実行する。そして、そのバランスを含め、車両1に設けられた車高調整装置39により調整される複数位置の車高を監視することで、その車両1に車高の変化が生ずる状況を検知することとした。しかし、これに限らず、例えば、カメラ35の撮影画像Vdを解析する等により、そのスロープ板10が設けられたドア開口部3を利用する乗員の人数や移動速度等の乗降状態を検出する。そして、これにより、車両1に車高の変化が生ずる状況を予測して、その電磁ブレーキ制御を実行する構成としてもよい。
【0125】
・上記実施形態では、スロープ板10が格納状態にある場合、又は展開状態にある場合に、それぞれ、外乱判定の実行により、そのスロープ板10の位置を移動させるような外力が働く状況が生じているか否かを判定する。そして、その外力に対抗する保持力が必要とされる場合に、電磁ブレーキ制御を実行することとした。しかし、これに限らず、このような外乱判定を実行することなく、スロープ板10が格納状態にあること、又は、展開状態にあることをもって、その電磁ブレーキ制御を実行する構成としてもよい。
【0126】
・また、スロープ板10が格納状態にある場合又は展開状態にある場合の何れか一方において、その電磁ブレーキ制御を実行する構成を採用してもよい。そして、ドア開口部3の下端に傾斜路12を形成する前のスロープ板10をステップとして利用することのできる構成においては、このステップとして機能するスロープ板10の位置を保持するための電磁ブレーキ制御を実行する構成としてもよい。
【0127】
・上記実施形態では、電磁ブレーキ制御として、所謂相固定通電又は一相通電と呼称されるモータ24の通電相を固定した通電制御を実行することとした。しかし、これに限らず、その電磁ブレーキ制御として回生ブレーキ制御を実行する構成としてもよい。尚、この場合における回生ブレーキ制御の態様は、モータコイルに生じた回生電流をバッテリーに回生させる構成であってもよく、モータコイルを短絡して内部消費させる所謂ショートブレーキ制御であってもよい。そして、このような回生ブレーキ制御を採用することで、モータ24の発熱を抑えることができる。
【0128】
・上記実施形態では、スロープ板10の展開制御時、その前端部10fが地面に接地する前に、このスロープ板10の移動速度Vを所定の第2速度V2に減速することとした。しかし、これに限らず、展開制御時の車高に応じて、その前端部10fが地面に接地する前の減速した移動速度Vを設定する構成を採用してもよい。即ち、車高が高いほど、スロープ板10の前端部10fが地面に接地する際に生ずる音や振動が大きくなる。従って、例えば、展開制御時の車高が高い場合ほど、より大きく、その前端部10fが地面に接地する前に、スロープ板10の移動速度Vを減速する構成としてもよい。また、例えば、展開制御時の車高が低いほど、その減速開始タイミングを遅らせてもよい。このような構成を採用することで、その静粛性を含めた質感の向上と速やかなスロープ板10の展開との両立を図ることができる。
【0129】
・上記実施形態では、移動体21に対する第2連結点X2周りに支持アーム22が回動することにより、そのドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の後端部10rが持ち上がる。そして、これにより、その後端部10rが車体2に係合する状態で、スロープ板10がドア開口部3に連続する傾斜路12を形成することとした。しかし、これに限らず、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10が傾斜路12を形成する構成については、任意に変更してもよい。例えば、単純に、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10の前端部10fが自重により地面に接地することで、そのスロープ板10が傾斜路12を形成する構成に適用してもよい。
【0130】
・また、モータ24を駆動源としてスロープ板10を展開及び格納方向に移動させる駆動装置71の構成は、任意に変更してもよい。但し、電磁ブレーキ制御の実行により、そのスロープ板10の位置が保持される構成であることが望まれる。そして、格納ボックス13に格納された位置にスロープ板10を保持するチェック機構41については、モータ24を駆動源としない構成、例えば、手動により、そのスロープ板10を展開及び格納方向に移動させる構成に適用してもよい。
【0131】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記駆動装置は、前記電磁ブレーキ制御として、前記モータの回生ブレーキ制御を行うこと、を特徴とする車両用スロープ装置。これにより、モータの発熱を抑えつつ、その電磁ブレーキ制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0132】
2…車体
3…ドア開口部
10…スロープ板
11…スロープ装置
13…格納ボックス
70…位置保持装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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