(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017799
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ビニールハウス
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A01G9/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120566
(22)【出願日】2020-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】大森 道生
(72)【発明者】
【氏名】服部 将平
(72)【発明者】
【氏名】境 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 賢介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将介
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029AA01
2B029BB01
2B029BB03
2B029BB04
2B029BB09
2B029BB11
2B029BC16
2B029BC18
2B029FA04
2B029GA01
2B029HA01
2B029HA03
(57)【要約】
【課題】より利便性に優れるビニールハウスを提供すること。
【解決手段】骨組BとシートCを少なくとも具備してなるビニールハウスAであって、骨組Bの中に門型形状を呈する門型材10を含めて構成する。門型材10は骨組Bにおける側面部B1や控え部B2として機能し、構築作業の高速化や、剛性の向上に寄与する。また、門型材10として仮設構造物で使用される建枠を用いることで、既成品の流用に伴うコスト削減につながり、構築作業に専門性の高い熟練作業員を要しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨組とシートを少なくとも具備してなるビニールハウスであって、
前記骨組の中に、門型形状を呈する門型材が含まれていることを特徴とする、
ビニールハウス。
【請求項2】
前記門型材が、前記骨組における側面部を構成することを特徴とする、
請求項1に記載のビニールハウス。
【請求項3】
前記門型材が、前記骨組の側面部からハウス幅方向に伸びる控え部を構成することを特徴とする、
請求項1に記載のビニールハウス。
【請求項4】
前記骨組に、前記門型材が複数含まれており、
前記複数の門型材が、
前記骨組の側面部を構成する部材と、
前記骨組の側面部からハウス幅方向に伸びる控え部を構成する部材と、
に分かれていることを特徴とする、
請求項1に記載のビニールハウス。
【請求項5】
前記控え部が、上下に分離可能に構成した、上段部および下段部とからなり、
前記上段部は、前記門型材であり、
前記下段部は、前記門型材を構成する垂直材と接続する脚部と、を有していることを特徴とする、
請求項3または4に記載のビニールハウス。
【請求項6】
前記下段部が、前記垂直材の下部を切断した前記門型材であることを特徴とする、
請求項5に記載のビニールハウス。
【請求項7】
前記控え部が、前記ビニールハウス内に設置する高設栽培用の栽培ベッドを載置する架台として機能することを特徴とする、
請求項4乃至6のうち何れか1項に記載のビニールハウス。
【請求項8】
前記門型材が、仮設構造物に用いる建枠であることを特徴とする、
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載のビニールハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも利便性に優れるビニールハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用等に用いられるビニールハウスは、鋼製や樹脂製からなる単菅部材を組み立ててなる骨組と、骨組に沿って敷設したシートによって構成する。
この骨組用の単菅部材は、その殆どが使い捨てを想定した専用品であり、必然的にコストが高いものとなっている。
加えて、従来のビニールハウスは、骨組の構築に際して、危険な高所作業を行うことも多く、熟練した作業員を要する作業であることも、コスト削減の障害の一つとなっている。
また、近年では、大雨、台風、積雪などの異常気象によって、ビニールハウスの破損が多発しており、より強度の高いビニールハウスの開発が望まれている。
【0003】
これらの農業用ビニールハウスの従来技術として、以下の特許文献に記載の技術が知られている。
<1>骨組用部材の再利用性の観点
特許文献1には、ビニールハウスの肩部にジョイント部材を設けることで、部材の汎用性の低下に繋がる円形パイプの曲げ加工を省き、骨組部材の再利用性を高める技術が開示されている。
<2>強風対策の観点
特許文献2には、強風に対して倒壊し難い構造として、ビニールハウスの妻面を垂直方向から傾斜させることで、ビニールハウスを新幹線で採用するようないわゆるロングノーズ構造とすることにより、空力抵抗を低減させる技術が開示されている。
<3>降雨、降雪対策の観点
特許文献3には、ハウス側部に軒用アーチ材を設けて軒を形成することで、換気用開口部からハウス内への降雨の吹き込みを軽減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6596034号公報
【特許文献2】実用新案登録第3200439号公報
【特許文献3】特許第6692555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のビニールハウスには、依然として、コスト面、強度面、安全面等の種々の観点において改善の余地が残されていた。
【0006】
よって、本発明は、これらの課題のうち少なくとも何れか1つの課題を解決することで、より利便性に優れるビニールハウスを提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、骨組とシートを少なくとも具備してなるビニールハウスであって、前記骨組の中に、門型形状を呈する門型材が含まれていることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記門型材が、前記骨組における側面部を構成することを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明において、前記門型材が、前記骨組の側面部からハウス幅方向に伸びる控え部を構成することを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明において、前記骨組に、前記門型材が複数含まれており、前記複数の門型材が、前記骨組の側面部を構成する部材と、前記骨組の側面部からハウス幅方向に伸びる控え部を構成する部材と、に分かれていることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第3発明または第4発明において、前記控え部が、上下に分離可能に構成した、上段部および下段部とからなり、前記上段部は、前記門型材であり、前記下段部は、前記門型材を構成する垂直材と接続する脚部と、を有していることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、前記第5発明において、前記下段部が、前記垂直材の下部を切断した前記門型材であることを特徴とする。
また、本願の第7発明は、前記第4発明乃至第6発明のうち何れか1つの発明において、前記控え部が、前記ビニールハウス内に設置する高設栽培用の栽培ベッドを載置する架台として機能することを特徴とする、
請求項4乃至6のうち何れか1項に記載のビニールハウス。
また、本願の第8発明は、前記第1発明乃至第7発明のうち何れか1つの発明において、前記門型材が、仮設構造物に用いる建枠であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)ビニールハウスを構成する骨組に門型材を用いることにより、一本ずつ単菅を組み立てていく作業と比較して、構築作業を高速化できる。
(2)門型材を用いて側面部や控え部を構築することにより、骨組全体の剛性が向上する。
(3)控え部を、上段部と下段部とに分離することで、骨組の構築作業時に、先行して下段部を設置でき、この下段部が、上段部やその他の骨組用部材の設置の目印となるため、構築作業の効率性が向上する。
(4)下段部が高設栽培用の栽培ベッドの架台として機能することで、ビニールハウス内に用意する架台の数を減らすことができる。
(5)培地を収容した栽培ベッドを下段部に載置することにより、栽培ベッドが錘として働き、設置面に対するビニールハウスの定着性が向上する。
(6)建設業において使用されている仮設構造物用の建枠を流用する事で、専用品を用意することに起因するコストの増加を抑えることができる。
(7)建設業において使用されている仮設構造物用の建枠を流用する事で、当該建枠に馴染みのある一般的な鳶工による早期な構築作業を実現でき、専門性の高い熟練作業員を手配する必要が無くなる。
(8)建設業において使用されている仮設構造物用の建枠を流用する事で、建設分野では常に求められる耐風、耐荷重等の計算に基づいた設計手法を流用でき、ビニールハウスの強度設計に対する根拠が明解となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係るビニールハウスの全体構成を示す概略斜視図。
【
図2】実施例1に係る門型材の構成を示す概略正面図。
【
図3】実施例1に係る門型材の配置態様を示す概略斜視図。
【
図4】実施例2に係るビニールハウスの全体構成を示す概略斜視図。
【
図5】実施例2に係る二段枠の構成を示す概略正面図。
【
図6】実施例2に係る二段枠の配置態様を示す概略斜視図。
【
図7】実施例2に係る下段部の兼用状態を示す概略斜視図。
【
図8】実施例3に係る二段枠のその他の配置例を示す概略側面図。
【
図9】実施例4に係る門型材のその他の配置例を示す概略斜視図。
【
図10】実施例5に係る下段部の変形例を示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(
図1)
図1~3を参照しながら、本発明の第1実施例について説明する。
図1に示すように、本発明に係るビニールハウスAは、ビニールハウスAの形状を規定する骨組Bと、骨組Bに沿って取り付けたシートCを少なくとも具備して構成する。
本発明は、この骨組Bを構成する部材として、門型形状を呈する部材(門型材10)を含めたことを特徴とする。
なお、骨組Bを構成する部材中、タイバー、横架材、根がらみその他の部材など、本発明に係る特徴以外の箇所については、説明の便宜上、図示を省略している。
以下、門型材10の詳細および配置例について説明する。
【0012】
<2>門型材(
図2)
門型材10は、ビニールハウスAの骨組Bの一部を構成する部材である。
門型材10は、2本の垂直材11と、両垂直材11の上端近傍を繋ぐ水平材12とを少なくとも有することで、幅長Wおよび高さHを呈する、略門型形状を呈する。
図2では、垂直材11と水平材12との隅部に、部材全体の剛性を高めるための補剛材13を設けているが、本発明において必須の要素ではない。
門型材10は、ビニールハウスAの側面部B1や、ビニールハウスAの側面部B1からハウス内部に延びる控え部B2の骨組Bとして用いることができる。
図2に示す構成では、ビニールハウスAの奥行き方向に向かって、側面部B1と、控え部B2と、を交互に構成するように、門型材10を配置している。
【0013】
<2.1>垂直材(
図2)
垂直材は、ビニールハウスAの骨組Bにおいて支柱に相当する部材である。
垂直材11の下端には、ベースプレートや、不陸調整用のジャッキベースなどからなるベース20を取り付けておく。
また、垂直材11の上端には、ビニールハウスAの骨組Bを構成するためのその他の部材である単菅やジョイントなどを取り付けるための連結ピン30などを設けることができる。
【0014】
<3>門型材の提供方法(
図2)
本発明において、門型材10は新規に製作した製品であっても、他用途の既存製品を流用したものであってもよい。
特に、本発明に係る門型材10として好適な既存製品として、仮設足場や仮設支保工などの仮設構造物として使用される建枠が好ましい。
建枠は、鋼管を略門型に溶接したものであり、鳥居型建枠とも呼ばれる。
仮設構造物として使用される建枠には、形状、サイズ、強度などが異なる多様な製品が存在し、その強度計算手法も確立されているため、求められるビニールハウスAの仕様に応じて、最適な建枠を選択することができるだけでなく、既存製品の流用に伴うコスト削減にもつながる。
また、建枠は、建設業において馴染みのある部材であるため、一般的な鳶工による早期な構築作業を実現できる。
【0015】
<4>側面部への適用(
図3)
門型材10を、骨組Bの側面部B1に適用する際には、門型材10の幅方向がビニールハウスAの奥行き方向となるように、門型材10を配置する。
門型材10を構成する垂直材11の上端には、ビニールハウスAの天井部分を構成するアーチ材が取り付けてある。
なお、側面部B1を構成する門型材10は、門型材10の幅長Wと略等長の間隔を空けて配置していけば、門型材10を構成する各垂直材11間の離隔距離を一定に保持した態様とすることができる。
その他、側面部B1を構成する各門型材10は、図示しないクランプや単菅などを介して適宜連結すればよい。
【0016】
<5>控え部への適用(
図3)
門型材10を、骨組Bの控え部B2に適用する際には、門型材10の幅方向がビニールハウスAの幅方向となるように、門型材10を配置する。
門型材10の垂直材11のうち、ハウス外側に位置する垂直材11は、側面部B1を構成する骨組Bの一部として、ビニールハウスAの天井を構成する単菅やジョイントが取り付けられる。また、ハウス内側に位置する垂直材11は、ハウス外側からの強風等による荷重に対して抵抗する控えとして機能する。
控え部B2を構成する各門型材10は、図示しないクランプや単菅などを介して適宜連結することもできる。