(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177990
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20221125BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60R3/00
B60P1/43 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084458
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AD01
3D022AD06
3D022AD10
3D022AE07
3D022AE08
3D022AE15
(57)【要約】
【課題】摺動抵抗を低減する。
【解決手段】スロープ装置11は、ドア開口部の下端に展開されるスロープ板10と、このスロープ板10の展開及び格納方向に延びるガイドレール20と、を備える。また、スロープ装置11は、ガイドレール20の延伸方向に沿って移動する移動体21と、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結されるとともに移動体21に対して回動可能に連結される支持アーム22と、を備える。更に、スロープ装置11は、スロープ板10が展開された状態で支持アーム22を回動させることによりスロープ板10の後端部10rを持ち上げるリフト機構を備える。そして、支持アーム22には、移動体21と一体にスロープ板10が移動する状態において、ガイドレール20に摺接することによりスロープ板10の移動姿勢を保持するローラー57が設けられる。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールの延伸方向に沿って移動する移動体と、
前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結されるとともに前記移動体に対して回動可能に連結される支持アームと、
前記スロープ板が前記展開された状態で前記支持アームを回動させることにより前記スロープ板の後端部を持ち上げるリフト機構と、を備えるとともに、
前記支持アームには、前記移動体と一体に前記スロープ板が前記移動する状態において、前記ガイドレールに摺接することにより前記スロープ板の移動姿勢を保持するローラーが設けられた車両用スロープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スロープ装置において、
前記支持アームの回動により前記スロープ板の後端部が持ち上げられた状態で前記ローラーの上方を覆うローラーカバーを備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用スロープ装置において、
前記ローラーカバーは、前記支持アームに設けられて該支持アームと一体に回動することにより、前記ローラーの上方を覆う位置に配置されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記リフト機構は、
前記支持アームに対する連結軸を有して前記支持アームとともに前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動部材と、
展開方向に向かう前記従動部材に当接して該従動部材の移動を規制する展開ストッパと、を備え、
前記展開方向に向かう前記従動部材の移動が規制された状態で前記移動体が前記展開方向に移動することにより、前記従動部材との前記連結軸周りに前記支持アームが回動して前記スロープ板の後端部を上方に持ち上げるものであって、
前記従動部材が前記展開ストッパに当接する状態で前記従動部材に係合することにより前記格納方向に向かう前記従動部材の移動を規制する係合レバーを備え、
前記係合レバーは、
前記従動部材が前記展開ストッパに当接する位置に移動する際には、前記従動部材に押圧されて第1方向に回動することにより、前記展開方向に向かう前記従動部材の移動を許容し、
前記従動部材が前記展開ストッパに当接する状態で前記展開方向に移動する前記移動体と一体に設けられた押圧部に押圧されて第2方向に回動することにより前記従動部材に係合するとともに、前記第1方向に位置する前記押圧部により前記第1方向の回動が規制されること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用スロープ装置において、
前記従動部材は、前記展開ストッパに当接するとともに該展開ストッパと前記係合レバーとの間に挟み込まれる状態で該係合レバーが係合する係合片を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車両用スロープ装置において、
前記従動部材は、前記ガイドレールの幅方向において互いにずれた位置に配置される第1立板部及び第2立板部を備えた折曲板形状を有すること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項7】
請求項4~請求項6の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板に対して回動可能に連結された脱落防止部材と、
前記脱落防止部材を付勢して前記スロープ板の側端部に起立させる付勢部材と、
前記上方に持ち上げられた前記スロープ板の後端部を引き下げる前記支持アームの回動により前記スロープ板とともに下方移動する前記脱落防止部材に当接して該脱落防止部材を押圧することにより前記付勢部材の付勢力に抗して前記脱落防止部材を前記スロープ板の上面に傾倒させる押圧部材と、を備え、
前記押圧部材は、前記従動部材に設けられて前記スロープ板の前記側端部に形成されたスリット内に挿入されることにより前記脱落防止部材に当接する位置に配置されるとともに、
前記スロープ板の幅方向に湾曲して前記スリットの側壁面に当接する可撓性を有した当接片を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項8】
請求項4~請求項7の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
駆動ケーブルに固定された状態で前記移動体に連結されることにより前記駆動ケーブルを介して伝達される駆動力に基づき前記移動体と一体に移動する連結部材を備え、
前記移動体は、前記連結部材が連結される横板部と、前記支持アームが連結される縦壁部と、を有した折曲板形状をなすものであって、
前記連結部材は、前記係合レバーに対する前記押圧部を構成する立板形状部と、該立板形状部の下端に設けられて前記横板部を上下方向に挟み込む複数の嵌合片を有した嵌合部と、を有して前記移動体に連結されること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用スロープ装置において、
前記格納方向に移動する前記移動体に当接することにより予め定められた格納位置を超えて前記格納方向に向かう前記移動体の前記移動を規制する格納ストッパを備えるとともに、
前記格納ストッパは、該格納ストッパと前記連結部材の嵌合部とが、前記展開及び格納方向に並ぶ状態で、前記移動体に当接する位置に配置されること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア開口部の下端にスロープ板を展開する車両用のスロープ装置がある。例えば、特許文献1に記載のスロープ装置は、スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、このガイドレールの延伸方向に沿って移動する移動体と、を備えている。また、このスロープ装置は、スロープ板の後端部に対して回動可能に連結されるとともに駆動シューに対して回動可能に連結される支持アームと、この支持アームを回動させるリフト機構と、を備えている。更に、このスロープ装置は、リフト機構の動作に基づき支持アームが回動することにより、そのドア開口部の下端に展開されたスロープ板の後端部が上方に持ち上がる。そして、これにより、車両フロアに後端部を近づける態様で、そのスロープ板が傾斜路を形成する構成になっている。
【0003】
また、この従来例のスロープ装置は、移動体とともにスロープ板が移動する状態で、その支持アームがガイドレールに摺接する。そして、これにより、その支持アームの回動を規制することで、スロープ板の移動姿勢を安定的に保持する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構成では、ガイドレールに支持アームが摺接することで、摺動抵抗が大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、前記スロープ板の展開及び格納方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールの延伸方向に沿って移動する移動体と、前記スロープ板の後端部に対して回動可能に連結されるとともに前記移動体に対して回動可能に連結される支持アームと、前記スロープ板が前記展開された状態で前記支持アームを回動させることにより前記スロープ板の後端部を持ち上げるリフト機構と、を備えるとともに、前記支持アームには、前記移動体と一体に前記スロープ板が前記移動する状態において、前記ガイドレールに摺接することにより前記スロープ板の移動姿勢を保持するローラーが設けられる。
【0007】
上記構成によれば、摺動抵抗の増加を抑えつつ、スロープ板の移動姿勢を安定的に保持することができる。そして、これにより、円滑な動作と高い信頼性を確保することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記支持アームの回動により前記スロープ板の後端部が持ち上げられた状態で前記ローラーの上方を覆うローラーカバーを備えることが好ましい。
【0009】
即ち、支持アームは、ガイドレールの外部に露出した状態で回動することにより、そのスロープ板の後端部を上下動作させる。このため、この支持アームに設けられたローラーもまた、例えば、スロープ板の利用者が誤って踏み付けてしまう等、外力が印加されやすい位置に配置されることになる。しかしながら、上記構成によれば、ローラーカバーにより、ローラーを保護することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記ローラーカバーは、前記支持アームに設けられて該支持アームと一体に回動することにより、前記ローラーの上方を覆う位置に配置されることが好ましい。
【0011】
即ち、ローラーカバーを支持アームに設けることで、この支持アームと一体にローラーカバーを格納することができる。そして、これにより、構成の簡素化及び小型化を図ることができる。更に、支持アームと一体にローラーカバーを回動させることにより、このローラーカバーがローラーを覆う方向を変化させることができる。そして、これにより、支持アームが展開及び移動方向に移動する際、そのローラーがガイドレールに摺接する領域を確保することができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記リフト機構は、前記支持アームに対する連結軸を有して前記支持アームとともに前記ガイドレールの延伸方向に移動する従動部材と、展開方向に向かう前記従動部材に当接して該従動部材の移動を規制する展開ストッパと、を備え、前記展開方向に向かう前記従動部材の移動が規制された状態で前記移動体が前記展開方向に移動することにより、前記従動部材との前記連結軸周りに前記支持アームが回動して前記スロープ板の後端部を上方に持ち上げるものであって、前記従動部材が前記展開ストッパに当接する状態で前記従動部材に係合することにより前記格納方向に向かう前記従動部材の移動を規制する係合レバーを備え、前記係合レバーは、前記従動部材が前記展開ストッパに当接する位置に移動する際には、前記従動部材に押圧されて第1方向に回動することにより、前記展開方向に向かう前記従動部材の移動を許容し、前記従動部材が前記展開ストッパに当接する状態で前記展開方向に移動する前記移動体と一体に設けられた押圧部に押圧されて第2方向に回動することにより前記従動部材に係合するとともに、前記第1方向に位置する前記押圧部により前記第1方向の回動が規制されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、ガイドレールに沿って展開及び格納方向に移動する移動体に連動して、その支持アームが回動する。そして、これにより、この支持アームに連結されたスロープ板の後端部を上下動作させることができる。
【0014】
更に、スロープ板の後端部が上方に持ち上げられたリフトアップ状態において、その従動部材の移動位置を固定することができる。これにより、安定的に、そのリフトアップ状態を維持することができる。更に、展開及び格納方向に移動する移動体に連動して、その従動部材に係合レバーを係脱させることができる。そして、これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記従動部材は、前記展開ストッパに当接するとともに該展開ストッパと前記係合レバーとの間に挟み込まれる状態で該係合レバーが係合する係合片を備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、展開及び格納の両方向において、その従動部材の移動を規制することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記従動部材は、前記ガイドレールの幅方向において互いにずれた位置に配置される第1立板部及び第2立板部を備えた折曲板形状を有することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、簡素な構成にて、形成容易に、省スペースで移動体及び支持アームとともに展開及び格納方向に移動する従動部材を形成することができる。更に、その折曲板形状に基づいて、従動部材の傾倒を抑制することができる。そして、これにより、安定的な動作を確保することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板に対して回動可能に連結された脱落防止部材と、前記脱落防止部材を付勢して前記スロープ板の側端部に起立させる付勢部材と、前記上方に持ち上げられた前記スロープ板の後端部を引き下げる前記支持アームの回動により前記スロープ板とともに下方移動する前記脱落防止部材に当接して該脱落防止部材を押圧することにより前記付勢部材の付勢力に抗して前記脱落防止部材を前記スロープ板の上面に傾倒させる押圧部材と、を備え、前記押圧部材は、前記従動部材に設けられて前記スロープ板の前記側端部に形成されたスリット内に挿入されることにより前記脱落防止部材に当接する位置に配置されるとともに、前記スロープ板の幅方向に湾曲して前記スリットの側壁面に当接する可撓性を有した当接片を備えることが好ましい。
【0019】
即ち、従動部材は、スロープ板の後端部に連結された支持アームが回動する状態において、その移動位置が固定される。従って、この従動部材に押圧部材を設けることで、安定的に、その支持アームの回動によるスロープ板の上下動作に連動して、スロープ板の側端部に脱落防止部材を起立させ、及びスロープ板の上面に傾倒させることができる。更に、押圧部材の当接片がスリットの側壁面に当接することで、このスリットに臨む脱落防止部材に対し、その押圧部材を位置決めすることができる。そして、当接片に付与された可撓性に基づく弾性力によって、スロープ板の幅方向変位により生ずる位置ずれを抑制することができる。
【0020】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、駆動ケーブルに固定された状態で前記移動体に連結されることにより前記駆動ケーブルを介して伝達される駆動力に基づき前記移動体と一体に移動する連結部材を備え、前記移動体は、前記連結部材が連結される横板部と、前記支持アームが連結される縦壁部と、を有した折曲板形状をなすものであって、前記連結部材は、前記係合レバーに対する前記押圧部を構成する立板形状部と、該立板形状部の下端に設けられて前記横板部を上下方向に挟み込む複数の嵌合片を有した嵌合部と、を有して前記移動体に連結されることが好ましい。
【0021】
即ち、移動体と一体に移動する連結部材に係合レバーに対する押圧部を設けることで、精度よく、その展開及び格納方向に移動する移動体に連動して、従動部材に対する係合レバーの係脱を制御することができる。そして、これにより、安定的な動作を担保することができる。
【0022】
また、嵌合により連結部材を移動体に連結する構成を採用することで、組付け作業を容易化することができる。更に、複数の嵌合片で移動体の横板部を上下方向に挟み込むことにより、その連結部材に設けられた立板形状部の傾倒を抑制することができる。そして、これにより、その連結部材及び移動体の移動姿勢が変化することによる摺動抵抗の増加を回避することができる。
【0023】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記格納方向に移動する前記移動体に当接することにより予め定められた格納位置を超えて前記格納方向に向かう前記移動体の前記移動を規制する格納ストッパを備えるとともに、前記格納ストッパは、該格納ストッパと前記連結部材の嵌合部とが、前記展開及び格納方向に並ぶ状態で、前記移動体に当接する位置に配置されることが好ましい。
【0024】
即ち、移動体は、駆動ケーブルを介して伝達される駆動力に基づいて、その連結部材と一体に移動する。従って、上記構成を採用することで、効率よく、その移動体の荷重を格納ストッパが受け止めることができる。そして、これにより、その格納ストッパに当接した移動体の姿勢を安定的に保持することができる。その結果、過度な強度マージンの設定を廃して、移動体の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、摺動抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
【
図4】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
【
図9】リフト機構近傍におけるスロープ装置の斜視図。
【
図10】リフト機構近傍におけるスロープ装置の斜視図。
【
図11】リフト機構近傍におけるスロープ装置の斜視図。
【
図12】リフト機構近傍におけるスロープ装置の斜視図。
【
図13】スロープ板の幅方向端部を構成するサイドプレート、支持アームを構成するリンク部材、移動体、ローラー及びローラーカバーの斜視図。
【
図14】サイドプレート、リンク部材、移動体、ローラー及びローラーカバーの斜視図。
【
図22】サイドプレート、リンク部材、移動体、ローラー及びローラーカバーの側面図。
【
図23】サイドプレート、リンク部材、移動体、ローラー及びローラーカバー、並びにガイドレールの側面図。
【
図24】スロープ板の後端部が持ち上げられたリフトアップ状態におけるローラー及びローラーカバー近傍の側面図。
【
図25】リフトアップ状態におけるローラー及びローラーカバー近傍の斜視図。
【
図26】(a)(b)は、リンク部材、ローラー及びローラーカバーの側面図。
【
図27】展開状態のスロープ板及び起立状態の脱落防止部材の斜視図。
【
図28】格納状態のスロープ板及び傾倒状態の脱落防止部材の斜視図。
【
図29】脱落防止部材が起立した状態におけるスロープ板の背面図。
【
図30】脱落防止部材が傾倒した状態におけるスロープ板の背面図。
【
図31】スロープ板に設けられたヒンジ部、及びヒンジ部を介してスロープ板の側端部に連結された脱落防止部材を付勢する捩じりコイルバネの斜視図。
【
図32】スロープ板の後端部近傍におけるスロープ装置の平面図。
【
図34】スロープ板の後端部に設けられたスリット近傍におけるスロープ装置の平面図。
【
図39】格納位置近傍に移動した移動体及び連結部材、並びに格納ストッパの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、車両用スロープ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体2を有している。また、車体2の側面2sには、乗員の乗降口となるドア開口部3が設けられている。そして、このドア開口部3には、車両前後方向、相反する方向に開閉動作する一対のスライドドア4f,4rが設けられている。
【0028】
即ち、車両前方側のスライドドア4fは、車両前方側に移動することにより開作動し、車両後方側に移動することにより閉作動する。一方、車両後方側のスライドドア4rは、車両後方側に移動することにより開作動し、車両前方側に移動することにより閉作動する。更に、これらの各スライドドア4f,4rは、それぞれ、図示しないアクチュエータの駆動力に基づき開閉動作するパワースライドドア装置としての構成を有している。そして、本実施形態の車両1は、これらの各スライドドア4f,4rが連動するかたちで、そのドア開口部3を開閉する構成になっている。
【0029】
また、本実施形態の車両1は、ドア開口部3が開状態にある場合において、このドア開口部3の下端にスロープ板10を展開するスロープ装置11を備えている。そして、本実施形態の車両1は、このスロープ板10が形成する傾斜路12を利用することで、その乗員が、例えば、車椅子やベビーカー、或いはキャリーケース等を保有している場合であっても、容易に、そのドア開口部3から乗降することが可能となっている。
【0030】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の車両1において、このスロープ装置11は、ドア開口部3の下方において、その車体2に設けられた格納部としての格納ボックス13内に設置されている。具体的には、この格納ボックス13は、そのドア開口部3と同一方向に臨む開口部13aを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この開口部13aを介することにより、その格納ボックス13に格納されたスロープ板10を車外に展開し、及び、その展開したスロープ板10を再び格納ボックス13内に格納する構成になっている。
【0031】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11は、その格納ボックス13からドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の展開及び格納方向、つまりは、その格納ボックス13内の奥行き方向に延びる一対のガイドレール20,20を備えている。
【0032】
図3~
図5に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各ガイドレール20,20は、格納ボックス13内のスロープ板10を幅方向両側から挟み込む態様で、略平行に配置されている。また、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って摺動可能に設けられた一対の移動体21,21を備えている。更に、このスロープ装置11は、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結されるとともに移動体21に対して回動可能に連結される一対の支持アーム22,22を備えている。即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、これらの各支持アーム22,22を介して、そのスロープ板10と移動体21,21とが連結されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、各移動体21,21に連動して、そのスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成になっている。
【0033】
また、本実施形態のスロープ装置11は、モータ24を駆動源として、そのスロープ板10に駆動力を付与するアクチュエータ25を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、このアクチュエータ25は、各ガイドレール20,20の後端部20rよりも奥側において、その格納ボックス13内に配置されている。更に、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20,20の延伸方向に沿って配索される一対の駆動ケーブル26,26を備えている。尚、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各駆動ケーブル26,26は、ケーシングパイプ26x,26x内に挿通されることにより、そのアクチュエータ25から各ガイドレール20,20の後端部20rに配索される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各駆動ケーブル26,26を介して伝達されるアクチュエータ25の駆動力に基づいて、その各移動体21,21が各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0034】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ25は、モータ24が発生する駆動力に基づき回転する駆動ギヤ27を有している。また、このアクチュエータ25は、その駆動ギヤ27を径方向に挟む二位置において各駆動ケーブル26,26が、それぞれ、この駆動ギヤ27に対して噛合するように構成されている。即ち、本実施形態のアクチュエータ25は、その駆動ギヤ27が回転することにより、これらの各駆動ケーブル26,26を各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って摺動させる。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、その各駆動ケーブル26,26の端末に各移動体21,21が連結されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その各駆動ケーブル26,26と一体に、これらの各移動体21,21が、各ガイドレール20,20に案内される状態で、そのスロープ板10の展開及び格納方向に摺動する構成になっている。
【0035】
詳述すると、
図6及び
図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10は、ガイドレール20に対する移動体21及び支持アーム22の係合力に基づいて、略水平な姿勢が保持された状態で格納ボックス13内に収容されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この略水平な姿勢を保持したまま、そのガイドレール20の延伸方向に沿って、移動体21及び支持アーム22と一体にスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成となっている。
【0036】
また、
図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、格納ボックス13が設けられた車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出する態様で、そのスロープ板10を車外に展開する。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、この状態で、その移動体21とスロープ板10との間に介在された支持アーム22が回動することにより、スロープ板10の後端部10rが持ち上がる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、車両フロア28に後端部10rを近づける態様で、そのスロープ板10が傾斜路12を形成する構成になっている。
【0037】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10の後端部10rには、フロア係合部29が設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、このフロア係合部29が車両フロア28の縁部28eに係合することで、そのスロープ板10の荷重を車両フロア28が支える構成になっている。
【0038】
(リフト機構)
次に、本実施形態のスロープ装置11におけるスロープ板10と移動体21との連結構造及びリフト機構について説明する。
【0039】
図9~
図14に示すように、本実施形態の移動体21は、略平板状の横板部30と、この横板部30の一端に立設された縦壁部31と、を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、この移動体21は、金属板を塑性加工することにより形成されている。そして、本実施形態の移動体21は、これにより、略L字形の折曲板形状を有するものとなっている。
【0040】
また、本実施形態の移動体21において、その縦壁部31の前端部31fには、支軸33が設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この支軸33により回動可能に軸支されたリンク部材34を備えている。
【0041】
本実施形態のスロープ装置11において、このリンク部材34は、略平板状の外形を有している。また、本実施形態のスロープ装置11は、その支軸33に対する連結位置から離間した位置において、このリンク部材34に対して回動可能に連結された長尺略平板状のサイドプレート35を備えている。更に、本実施形態のスロープ装置11において、このサイドプレート35は、スロープ板10の後端部10rに対して一体的に固定される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのリンク部材34が、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結されるとともに移動体21に対して回動可能に連結される支持アーム22として機能する構成になっている。
【0042】
具体的には、本実施形態のスロープ板10は、このスロープ板10がドア開口部3の下端に形成する傾斜路12において、そのスロープ面12sを構成するパネル部材36を備えている。また、スロープ板10は、このパネル部材36の幅方向両側を挟み込む状態でスロープ板10の前後方向に延在する一対のサイドフレーム37,37を備えている。更に、上記サイドプレート35は、その長尺平板形状がサイドフレーム37の延伸方向に延在する状態で、サイドフレーム37の側端面に固定されている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、このサイドプレート35及びサイドフレーム37によって、その後端部10rにおけるスロープ板10の幅方向端部が形成されている。
【0043】
また、
図9~
図12、及び
図15~
図18に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20の延伸方向に沿ってリンク部材34とともに移動する従動部材40を備えている。
【0044】
詳述すると、この従動部材40は、ガイドレール20の幅方向において、互いにずれた位置に配置される第1立板部40f及び第2立板部40rを備えた長尺の折曲板形状を有している。尚、ガイドレール20の幅方向は、スロープ板10の幅方向と言い換えることもできる。また、本実施形態のスロープ装置11において、この従動部材40は、その縦壁部31に沿う状態で、移動体21の側方に配置されている。更に、この従動部材40は、その第1立板部40fに設けられたリンク部材34に対する連結軸38を有している。即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、移動体21に付与された駆動力が、リンク部材34及び連結軸38を介して従動部材40に伝達される。そして、本実施形態の従動部材40は、これにより、そのガイドレール20の延伸方向に沿ってリンク部材34とともに移動する構成になっている。
【0045】
さらに詳述すると、本実施形態の従動部材40は、第1立板部40fに設けられた長孔41及び第2立板部40rに設けられた長孔42を有している。具体的には、これらの各長孔41,42は、それぞれ、その移動体21の縦壁部31に沿う状態で配置される従動部材40の長手方向に延設されている。また、本実施形態の移動体21は、その縦壁部31の後端部31r近傍に突設された係合軸43を備えている。そして、本実施形態の従動部材40は、この係合軸43が第2立板部40rの長孔42に対して挿入されるとともに、その第1立板部40fの長孔41に縦壁部31の前端部31fに設けられた支軸33が挿入された状態で、移動体21の側方に配置されている。
【0046】
また、本実施形態のリンク部材34は、その長手方向の一端側がサイドプレート35に設けられた支軸44に対して回動可能に連結されるとともに、その長手方向の他端側が移動体21の縦壁部31に設けられた支軸33に対して回動可能に連結される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10と支持アーム22との間の第1回動連結点X1、及び、その支持アーム22と移動体21との間の第2回動連結点X2が形成される構成になっている。
【0047】
更に、本実施形態のリンク部材34は、これらの第1回動連結点X1及び第2回動連結点X2の間の位置において、その長手方向に延在する長孔45を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この長孔45に対して従動部材40の第1立板部40fに設けられた連結軸38が挿入される構成となっている。
【0048】
尚、上記各支軸33,44、連結軸38、係合軸43は、それぞれ、その軸方向両端にフランジ形状を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、その移動体21の縦壁部31、リンク部材34、サイドプレート35、及び従動部材40が、それぞれ、安定的に連結される構成となっている。
【0049】
また、
図11及び
図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、支持アーム22を構成するリンク部材34とともに展開方向に向かう従動部材40に当接することにより、この従動部材40の移動を規制する展開ストッパ46を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、この展開ストッパ46は、ガイドレール20の前端部20f近傍に設けられている(
図3~
図8参照)。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10がドア開口部3の下端に展開された状態において、その展開方向、つまりはガイドレール20の後端部20rから前端部20fに向かう従動部材40の移動位置が固定される構成になっている。
【0050】
詳述すると、
図9~
図12、及び
図18に示すように、本実施形態の従動部材40は、第2立板部40rの上端部分から、その横板部30に対向する状態で移動体21の上方に延出する略平板状の係合片47を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10の展開方向に向かって、その従動部材40がガイドレール20の前端部20fに移動することにより、この係合片47が展開ストッパ46に当接する構成になっている。
【0051】
また、
図15~
図17に示すように、本実施形態のスロープ装置11においては、この展開方向に向かう従動部材40の移動が規制された状態から、更に、その移動体21が展開方向に向かって移動する。
【0052】
即ち、本実施形態の移動体21は、従動部材40の各長孔41,42に挿入された支軸33及び係合軸43が、これらの各長孔41,42内を移動することにより、そのガイドレール20の延伸方向に沿った従動部材40に対する相対移動が許容される。また、この従動部材40に対する移動体21の相対移動によって、そのリンク部材34の長孔45に挿入された連結軸38の配置が変化する。具体的には、その長孔45内に配置された連結軸38の位置が、見かけ上、長孔45の長手方向、第1回動連結点X1側から第2回動連結点X2側に移動する(
図15~
図17中、左側から右側)。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、その支持アーム22を構成するリンク部材34が、従動部材40の連結軸38周りに回動することで、そのスロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げるリフト機構50が形成されている。
【0053】
更に、本実施形態のスロープ装置11は、展開ストッパ46により展開方向の移動が規制された従動部材40の連結軸38を超えて、その移動体21に設けられた第2回動連結点X2を構成するリンク部材34の支軸33が展開方向に移動する。尚、このとき、長孔45内に配置された連結軸38の位置は、見かけ上、再び、長孔45の長手方向、第2回動連結点X2側から第1回動連結点X1側に移動する。そして、これにより、そのリンク部材34に大きな回動量を確保することで、このリンク部材34の回動により上方に持ち上げられたスロープ板10の後端部10rを、その車両フロア28の縁部28eに近づけることのできる構成となっている。
【0054】
また、
図11及び
図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、このような展開ストッパ46に従動部材40の係合片47が当接する状態で、その係合片47に係合する係合レバー51を備えている。具体的には、この係合レバー51は、その展開ストッパ46との間に係合片47を挟み込む態様で、この係合片47に係合する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、この係合レバー51によって、その格納方向に向かう従動部材40の移動が規制される構成になっている。
【0055】
図11、
図12、及び
図18に示すように、本実施形態の係合レバー51は、展開ストッパ46とともにガイドレール20の前端部20fに立設された支軸52によって、その基端が回動可能に軸支されている。また、この係合レバー51は、その先端部分をガイドレール20の後端部20r側、即ちスロープ板10の格納方向(
図18中、右側)に向けた状態で配置されている。更に、この係合レバー51は、その先端部分にガイドレール20の幅方向、従動部材40が位置する方向(
図18中、上側)に突出する鉤状の係合部53を有している。そして、本実施形態の係合レバー51は、これにより、支軸52周りの回動によって、その係合部53と展開ストッパ46との間に従動部材40の係合片47を挟み込むことのできる構成となっている。
【0056】
詳述すると、
図18及び
図19に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、展開方向に移動する従動部材40の係合片47が、係合レバー51の係合部53に接触するように構成されている。具体的には、本実施形態のスロープ装置11において、係合レバー51の係合部53には、ガイドレール20の幅方向(各図中、上下方向)、その従動部材40が位置する方向に臨む第1のテーパ面53aが設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この係合レバー51の係合部53に設けられた第1のテーパ面53aに対して、その従動部材40の第2立板部40rから移動体21の上方に突出した係合片47の先端47aが接触する構成になっている。
【0057】
更に、本実施形態の係合レバー51は、この接触により、その係合部53が係合片47の先端47aに押し退けられる態様で、各図中、時計回り方向に回動する。即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、このとき、この係合レバー51が従動部材40の係合片47に押圧されて回動する方向が第1方向となっている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、展開方向に向かう従動部材40の移動を許容することで、その係合片47が展開ストッパ46に当接する位置に配置される構成となっている。
【0058】
また、
図9~
図12、並びに
図18及び
図19に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、駆動ケーブル26に固定された状態で移動体21に連結される連結部材54を備えている。即ち、この連結部材54は、駆動ケーブル26を介して伝達される駆動力に基づいて、その移動体21と一体に移動する。また、この連結部材54は、縦壁部31が立設された位置とは反対側の端部において、その移動体21の横板部30に嵌合する。尚、本実施形態のスロープ装置11において、この連結部材54は、樹脂を用いて形成されている。更に、この連結部材54は、その横板部30に対する嵌合により、移動体21の縦壁部31に対向する状態で立設される略平板状の立板形状部55を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、展開方向に向かう移動体21及び連結部材54の移動によって、この立板形状部55が、その従動部材40の係合片47との接触により第1方向に回動した係合レバー51の係合部53に接触する構成になっている。
【0059】
詳述すると、
図20及び
図21に示すように、本実施形態の係合レバー51は、その係合部53に、ガイドレール20の幅方向、上記第1のテーパ面53aとは反対側(各図中、下側)に臨む第2のテーパ面53bを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、この第2のテーパ面53bに対して、その展開方向に移動する連結部材54の立板形状部55が接触する。
【0060】
具体的には、本実施形態のスロープ装置11は、展開方向に移動する従動部材40の係合片47が通過した後に、この立板形状部55の先端部55fが、その係合レバー51の係合部53に設けられた第2のテーパ面53bに接触するように構成されている。尚、本実施形態のスロープ装置11においては、その立板形状部55の先端部55fにも、この第2のテーパ面53bに対応するテーパ形状が設定されている。そして、本実施形態の係合レバー51は、この接触により、その係合部53が連結部材54の立板形状部55に押し退けられる態様で、各図中、反時計回り方向に回動する。
【0061】
即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、この連結部材54の立板形状部55が、その移動体21と一体に移動する押圧部56を構成する。更に、このとき、その係合レバー51が連結部材54の立板形状部55に押圧されて回動する方向が第2方向となっている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、この係合レバー51の係合部53が、スロープ板10の展開及び格納方向において、その展開ストッパ46との間に従動部材40の係合片47を挟み込む構成となっている。
【0062】
また、本実施形態のスロープ装置11においては、この状態から移動体21及び連結部材54が展開方向に移動することで、係合レバー51の第1方向側(各図中、下側)に、その連結部材54の立板形状部55が配置される。更に、この立板形状部55の配置に基づいて、その第1方向における係合レバー51の回動が規制される。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、その展開ストッパ46と係合レバー51の係合部53との間に従動部材40の係合片47が挟み込まれた状態が保持される。
【0063】
即ち、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10がドア開口部3の下端に展開された状態においては、その従動部材40が、展開方向及び格納方向の何れにも移動できない、つまりは、その移動位置が固定される構成になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、そのリフト機構50の動作に基づき上方に後端部10rが持ち上げられたスロープ板10の姿勢を安定的に保持することが可能になっている。
【0064】
尚、
図19に示すように、スロープ板10の格納時には、その格納方向に移動体21及び連結部材54が移動することで、再び、その第1方向における係合レバー51の回動が許容される。そして、これにより、この係合レバー51の係合部53を係合片47が押し退ける態様で、移動体21に連結されたリンク部材34とともに、その従動部材40が格納方向に移動する構成になっている。
【0065】
(スロープ板の移動姿勢保持構造)
次に、本実施形態のスロープ装置11におけるスロープ板10の移動姿勢保持構造について説明する。
【0066】
図9、
図10、
図22及び
図23に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、支持アーム22を構成するリンク部材34に設けられたローラー57を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、このローラー57は、リンク部材34に固定された支軸58によって回転自在に軸支されている。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、スロープ板10の展開及び格納動作時、このローラー57が、そのガイドレール20の上壁面59に対して下側から当接する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、このローラー57がガイドレール20の上壁面59を摺動する状態で、そのスロープ板10が、移動体21及びリンク部材34と一体に、その展開及び格納方向に移動する構成になっている。
【0067】
即ち、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20の延伸方向に沿って展開方向に移動する移動体21が、そのリンク部材34を介して連結されたスロープ板10を格納ボックス13から押し出すかたちで車外に展開する。そして、ガイドレール20の延伸方向に沿って格納方向に移動する移動体21が、そのリンク部材34を介して連結されたスロープ板10を引き戻すかたちで格納ボックス13内に格納する。
【0068】
図15に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、このとき、リンク部材34の長孔45内に配置された従動部材40の連結軸38が、その長孔45における長手方向前端部分に配置されるように構成されている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、スロープ板10の後端部10rが引き下げられる方向において、そのリンク部材34の回動が規制されている。
【0069】
更に、
図22及び
図23に示すように、リンク部材34に設けられたローラー57がガイドレール20の上壁面59に当接することにより、そのスロープ板10の後端部10rが持ち上がる方向におけるリンク部材34の回動が規制されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、略水平なスロープ板10の移動姿勢を安定的に保持するとともに、ローラー57の回転によって、その展開及び格納動作時の摺動抵抗を低減することのできる構成になっている。
【0070】
また、
図11~
図14、
図24及び
図25に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、リンク部材34の回動によりスロープ板10の後端部10rが持ち上げられた状態で、そのローラー57の上方を覆うローラーカバー60を備えている。
【0071】
具体的には、
図24、
図25、及び
図26(a)(b)に示すように、本実施形態のローラーカバー60は、リンク部材34との間にローラー57を挟む位置において、そのローラー57の支軸58に固定された略平板状の固定部60aを備えている。また、このローラーカバー60は、これにより、そのローラー57の軸方向端部を覆う固定部60aの一端から、支軸58の軸線方向に延設されることにより、ローラー57の径方向外側を部分的に覆う位置に配置された湾曲板状のカバー部60bを備えている。そして、本実施形態のローラーカバー60は、これにより、リンク部材34の回動時、ローラー57の支軸58周りに回動することなく、このリンク部材34と一体に回動する構成になっている。
【0072】
即ち、
図9~
図14、及び
図22~
図26に示すように、本実施形態のローラーカバー60は、スロープ板10の後端部10rを持ち上げる前、つまりはリフトアップ前の状態では、そのカバー部60bがローラー57の展開方向側を覆う位置に配置されている。更に、このローラーカバー60は、スロープ板10の後端部10rを持ち上げるリンク部材34の回動によって、そのカバー部60bがローラー57の上方を覆う位置に配置される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10の展開時、その支持アーム22を構成するリンク部材34とともにガイドレール20の外部に露出する位置に配置されたローラー57を保護する構成になっている。
【0073】
更に、
図9~
図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、その移動体21に設けられた複数のローラー61を備えている。即ち、これらの各ローラー61もまた、それぞれ、そのガイドレール20が形成する壁面に摺接する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのガイドレール20の延伸方向に沿って移動する移動体21の摺動抵抗を低減する構成になっている。
【0074】
また、
図11、
図12、
図24、及び
図25に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20の前端部20fに対応する位置において、そのスロープ板10の幅方向に延在する状態で車体2に固定される保護プレート63を備えている。更に、この保護プレート63には、その格納ボックス13から車外に延出する態様でドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の下面に摺接する複数のローラー64が設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その円滑なスロープ板10の展開及び格納動作を担保する構成になっている。
【0075】
(脱落防止部材)
次に、本実施形態のスロープ板10に設けられた脱落防止部材について説明する。
図27~
図30に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10の側端部を構成するサイドフレーム37,37に設けられた左右一対の脱落防止部材70,70を備えている。
【0076】
具体的には、本実施形態のスロープ装置11において、これらの脱落防止部材70,70は、スロープ板10の長手方向に延在する略平板状の外形を有している。また、本実施形態のスロープ装置11は、そのスロープ板10の側端部を構成するサイドフレーム37,37に設けられた複数のヒンジ部71を備えている。尚、本実施形態の各サイドフレーム37,37は、それぞれ、その長手方向に離間した二箇所に設けられた一対のヒンジ部71,71を備えている。そして、本実施形態の脱落防止部材70,70は、それぞれ、これらの各ヒンジ部71を介することにより、そのスロープ板10の側端部に対して回動可能に連結されている。
【0077】
即ち、本実施形態のスロープ装置11は、ドア開口部3の下端に展開されたスロープ板10が傾斜路12を形成する状態にある場合には、これらの各脱落防止部材70,70を起立させる。そして、そのスロープ板10が格納状態にある場合、又は、展開及び格納方向に移動する場合には、これらの各脱落防止部材70,70を傾倒させることのできる構成になっている。
【0078】
詳述すると、
図31及び
図32に示すように、本実施形態のヒンジ部71は、サイドフレーム37に対する固定部材72と、脱落防止部材70に対する固定部材73と、を備えている。尚、本実施形態のスロープ装置11においては、スロープ板10の後端部10r近傍における脱落防止部材70の高さが低く設定されている(
図27及び
図28参照)。また、このヒンジ部71は、これらの固定部材72,73を回動可能に連結する連結軸74を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、各ヒンジ部71の連結軸74が形成する回動軸L周りに、そのスロープ板10の側端部を構成するサイドフレーム37に連結された脱落防止部材70が回動する構成になっている。
【0079】
更に、本実施形態のスロープ装置11は、このヒンジ部71の連結軸74に嵌挿された捩じりコイルバネ75を備えている。そして、本実施形態の脱落防止部材70は、この捩じりコイルバネ75に付勢されることにより、そのスロープ板10の側端部に起立する構成になっている。
【0080】
また、
図29及び
図30に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10の格納動作時、その脱落防止部材70の基端部70bに設けられたチェックブロック76と、このチェックブロック76を押圧する押圧部材77と、を備えている。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、この押圧部材77の押圧力に基づいて、脱落防止部材70が、その回動軸Lを構成するヒンジ部71の連結軸74周りに、
図29及び
図30中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その捩じりコイルバネ75の付勢力に抗して脱落防止部材70がスロープ板10の上面10sに傾倒する構成になっている。
【0081】
尚、本実施形態のチェックブロック76は、その押圧部材77に押圧される位置にテーパ面76sを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その傾倒方向に、脱落防止部材70が円滑に回動する構成なっている。
【0082】
図33及び
図34に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、この押圧部材77は、従動部材40の第1立板部40fにおける前端部分に固定されている。更に、本実施形態のスロープ板10においては、そのスロープ板10と支持アーム22との第1回動連結点X1を形成するサイドプレート35が、スロープ板10の後端部10rにおいて、そのサイドフレーム37との間にスリット78を形成する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、このスリット78を介して、その従動部材40に設けられた押圧部材77が、脱落防止部材70のチェックブロック76を押圧する構成になっている。
【0083】
即ち、スロープ板10の格納動作時には、スロープ板10の後端部10rを引き下げる支持アーム22の回動によって、そのスロープ板10とともに、脱落防止部材70もまた下方に移動する。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、このとき、その脱落防止部材70の基端部70bに設けられたチェックブロック76の下方に、その従動部材40に設けられた押圧部材77が配置されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10の格納動作に基づいて、その脱落防止部材70がスロープ板10の上面10sに傾倒する構成になっている。
【0084】
更に、本実施形態のスロープ装置11においては、スロープ板10の移動時には、このスロープ板10とともに、その押圧部材77が設けられた従動部材40もまた移動する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その押圧部材77が脱落防止部材70のチェックブロック76を押圧し続けることで、その脱落防止部材70の傾倒状態が保持される構成になっている。
【0085】
また、
図29及び
図30に示すように、スロープ板10の展開動作時には、支持アーム22の回動によりスロープ板10の後端部10rが持ち上がることで、その押圧部材77がチェックブロック76を上方に押し上げる方向の押圧力が弱くなる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その捩じりコイルバネ75の付勢力に基づき、
図29及び
図30中、反時計回り方向に脱落防止部材70が回動することで、この脱落防止部材70が、スロープ板10の側端部に起立する構成になっている。
【0086】
更に、
図33及び
図34に示すように、本実施形態の押圧部材77は、スロープ板10の幅方向に湾曲してスリット78の側壁面78sを構成するサイドプレート35に当接する当接片79を備えている。具体的には、本実施形態の押圧部材77において、この当接片79は、上記のように脱落防止部材70のチェックブロック76を押圧する押上部80とともに、樹脂を用いて一体に形成されている。そして、本実施形態の押圧部材77は、これにより、その当接片79が可撓性を有するものとなっている。
【0087】
また、
図29及び
図30に示すように、本実施形態の押圧部材77は、スロープ板10の後端部10rが上方に持ち上げられた状態においても、その当接片79がスリット78の側壁面78sに当接する状態を維持する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スリット78に臨む脱落防止部材70のチェックブロック76に対し、その押圧部材77を位置決めする構成になっている。
【0088】
(連結部材の嵌合構造)
次に、本実施形態のスロープ装置11における移動体21に対する連結部材54の嵌合構造について説明する。
【0089】
図13、
図14、及び
図35~
図38に示すように、本実施形態の移動体21は、その横板部30の一端を切り欠く態様で設けられた嵌合凹部81を備えている。具体的には、本実施形態の移動体21において、この嵌合凹部81は、その横板部30における縦壁部31が立設された位置とは反対側の端部に設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この嵌合凹部81に対して、その駆動ケーブル26の連結部材54が嵌着される構成となっている。
【0090】
詳述すると、
図35~
図38に示すように、本実施形態の連結部材54は、上記のように従動部材40の係合片47に対する押圧部56としての機能を有した立板形状部55を備えている。更に、この連結部材54は、その立板形状部55の下端に設けられた嵌合部82を有している。そして、本実施形態の連結部材54は、この嵌合部82が上記嵌合凹部81に嵌合することにより、その立板形状部55が移動体21の縦壁部31に正対する立設状態で、この移動体21の横板部30に連結される構成になっている。
【0091】
さらに詳述すると、本実施形態の嵌合部82は、嵌合凹部81の内側に配置されることで、移動体21の横板部30に対し、そのガイドレール20の延伸方向(各図中、左右方向)の相対移動が規制される嵌合部本体83を備えている。具体的には、この嵌合部本体83は、嵌合凹部81に嵌着されることにより、ガイドレール20の延伸方向両側において、その嵌合凹部81が横板部30に形成する前方係合片84fと後方係合片84rとの間に挟持される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、駆動ケーブル26を介して伝達される駆動力に基づいて、これらの連結部材54及び移動体21が、そのガイドレール20の延伸方向に沿って一体に移動する構成になっている。
【0092】
また、本実施形態の嵌合部82は、移動体21の横板部30を上下方向に挟み込む複数の嵌合片85を有している。具体的には、本実施形態の嵌合部82は、ガイドレール20の延伸方向に離間した二位置において、その横板部30の下面30bに当接する略平板状の外形を有した一対の嵌合片85a,85bを備えている。更に、これらの両嵌合片85a,85bの間の位置において、横板部30の上面30aに当接する略平板状の外形を有した嵌合片85cを備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、連結部材54と移動体21との安定的な嵌合状態を確保して、その立板形状部55の傾倒を抑制する構成になっている。
【0093】
(格納ストッパ構造)
次に、本実施形態のスロープ装置11における格納ストッパ構造について説明する。
図39に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、ガイドレール20の後端部20rに固定された格納ストッパ86を備えている。即ち、この格納ストッパ86は、格納方向(
図39中、右側)に移動する移動体21に当接することにより、予め定められた格納位置P0を超えて格納方向に向かう移動体21の移動を規制する。尚、本実施形態のスロープ装置11は、縦壁部31の後端部31rに接触することにより、その移動体21が格納位置P0に到達したことを検出する確認スイッチ87を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11において、格納ストッパ86は、この格納ストッパ86と、その移動体21に対する連結部材54の嵌合部82とが、移動体21の移動方向に並ぶ状態で、この移動体21に当接する位置に配置されている。
【0094】
具体的には、本実施形態の格納ストッパ86は、この格納ストッパ86に対して移動体21が当接した際、連結部材54の嵌合部82との間に、移動体21の横板部30に設けられた後方係合片84rを挟み込む位置に配置されている。即ち、移動体21は、駆動ケーブル26を介して伝達される駆動力に基づいて、その連結部材54と一体に移動する。このため、上記のように、移動体21に対する連結部材54の嵌合部82と格納ストッパ86とを移動体21の移動方向に並んで配置することで、効率よく、その移動体21の荷重を格納ストッパ86が受け止めることができる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その格納ストッパ86に当接した移動体21の姿勢を安定的に保持することのできる構成となっている。
【0095】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のスロープ装置11においては、スロープ板10の展開及び格納動作時、支持アーム22を構成するリンク部材34に設けられたローラー57が、ガイドレール20の上壁面59に対して下側から当接する。そして、これにより、スロープ板10の後端部10rが持ち上がる方向におけるリンク部材34の回動が規制されることで、そのスロープ板10の移動姿勢が安定的に保持される。
【0096】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11は、ドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10と、このスロープ板10の展開及び格納方向に延びるガイドレール20と、を備える。また、スロープ装置11は、ガイドレール20の延伸方向に沿って移動する移動体21と、スロープ板10の後端部10rに対して回動可能に連結されるとともに移動体21に対して回動可能に連結される支持アーム22と、を備える。更に、スロープ装置11は、スロープ板10が展開された状態で支持アーム22を回動させることによりスロープ板10の後端部10rを持ち上げるリフト機構50を備える。そして、支持アーム22には、移動体21と一体にスロープ板10が移動する状態において、ガイドレール20に摺接することによりスロープ板10の移動姿勢を保持するローラー57が設けられる。
【0097】
上記構成によれば、摺動抵抗の増加を抑えつつ、スロープ板10の移動姿勢を安定的に保持することができる。そして、これにより、円滑な動作と高い信頼性を確保することができる。
【0098】
(2)スロープ装置11は、支持アーム22の回動によりスロープ板10の後端部10rが持ち上げられた状態で、ローラー57の上方を覆うローラーカバー60を備える。
即ち、支持アーム22は、ガイドレール20の外部に露出した状態で回動することにより、そのスロープ板10の後端部10rを上下動作させる。このため、この支持アーム22に設けられたローラー57もまた、例えば、スロープ板10の利用者が誤って踏み付けてしまう等、外力が印加されやすい位置に配置されることになる。しかしながら、上記構成によれば、そのローラーカバー60によって、ローラー57を保護することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0099】
(3)ローラーカバー60は、支持アーム22に設けられる。そして、支持アーム22と一体に回動することにより、そのローラー57の上方を覆う位置に配置される。
即ち、ローラーカバー60を支持アーム22に設けることで、この支持アーム22と一体にローラーカバー60を格納することができる。そして、これにより、構成の簡素化及び小型化を図ることができる。更に、支持アーム22と一体にローラーカバー60を回動させることにより、このローラーカバー60がローラー57を覆う方向を変化させることができる。そして、これにより、支持アーム22が展開及び移動方向に移動する際、そのローラー57がガイドレール20に摺接する領域を確保することができる。
【0100】
(4)リフト機構50は、支持アーム22を構成するリンク部材34に対する連結軸38を有してリンク部材34と一体にガイドレール20の延伸方向に移動する従動部材40を備える。更に、リフト機構50は、展開方向に向かう従動部材40に当接して、この従動部材40の移動を規制する展開ストッパ46を備える。そして、リフト機構50は、展開方向に向かう従動部材40の移動が規制された状態で移動体21が展開方向に移動することにより、その従動部材40との連結軸38周りにリンク部材34が回動して、スロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げる。更に、リフト機構50は、従動部材40が展開ストッパ46に当接する状態で、この従動部材40に係合することにより、その格納方向に向かう従動部材40の移動を規制する係合レバー51を備える。この係合レバー51は、従動部材40が展開ストッパ46に当接する位置に移動する際には、従動部材40に押圧されて第1方向に回動することにより、展開方向に向かう従動部材40の移動を許容する。また、係合レバー51は、従動部材40が展開ストッパ46に当接する状態で展開方向に移動する移動体21と一体に設けられた押圧部56に押圧されて第2方向に回動することにより従動部材40に係合する。そして、係合レバー51は、この状態で、その第1方向に位置する押圧部56によって、その第1方向の回動が規制される。
【0101】
上記構成によれば、ガイドレール20に沿って展開及び格納方向に移動する移動体21に連動して、その支持アーム22を構成するリンク部材34が回動する。そして、これにより、このリンク部材34に連結されたスロープ板10の後端部10rを上下動作させることができる。
【0102】
更に、スロープ板10の後端部10rが上方に持ち上げられたリフトアップ状態において、その従動部材40の移動位置を固定することができる。これにより、安定的に、そのリフトアップ状態を維持することができる。更に、展開及び格納方向に移動する移動体21に連動して、その従動部材40に係合レバー51を係脱させることができる。そして、これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0103】
(5)従動部材40は、展開ストッパ46に当接するとともに、この展開ストッパ46と係合レバー51との間に挟み込まれる状態で、その係合レバー51が係合する係合片47を備える。これにより、簡素な構成にて、安定的に、展開及び格納の両方向において、その従動部材40の移動を規制することができる。
【0104】
(6)従動部材40は、ガイドレール20の幅方向において互いにずれた位置に配置される第1立板部40f及び第2立板部40rを備えた折曲板形状を有する。
上記構成によれば、簡素な構成にて、形成容易に、省スペースで移動体21及び支持アーム22とともに展開及び格納方向に移動する従動部材40を形成することができる。更に、その折曲板形状に基づいて、従動部材40の傾倒を抑制することができる。そして、これにより、安定的な動作を確保することができる。
【0105】
(7)スロープ装置11は、スロープ板10に対して回動可能に連結された脱落防止部材70と、この脱落防止部材70を付勢してスロープ板10の側端部に起立させる付勢部材としての捩じりコイルバネ75と、を備える。また、スロープ装置11は、脱落防止部材70を押圧することにより捩じりコイルバネ75の付勢力に抗して脱落防止部材70をスロープ板10の上面10sに傾倒させる押圧部材77を備える。この押圧部材77は、スロープ板10の後端部10rを引き下げる支持アーム22の回動によってスロープ板10に形成されたスリット78内に挿入されることにより、そのスロープ板10とともに下方移動する脱落防止部材70を押圧する。更に、この押圧部材77は、従動部材40に設けられることにより、その脱落防止部材70に当接して押圧することのできる位置に配置される。そして、押圧部材77は、スロープ板10の幅方向に湾曲してスリット78の側壁面78sに当接する可撓性を有した当接片79を備える。
【0106】
即ち、従動部材40は、スロープ板10の後端部10rに連結された支持アーム22が回動する状態において、その移動が規制される。従って、この従動部材40に押圧部材77を設けることで、安定的に、その支持アーム22の回動によるスロープ板10の上下動作に連動して、スロープ板10の側端部に脱落防止部材70を起立させ、及びスロープ板10の上面10sに傾倒させることができる。更に、押圧部材77の当接片79がスリット78の側壁面78sに当接することで、このスリット78に臨む脱落防止部材70に対し、その押圧部材77を位置決めすることができる。そして、その当接片79に付与された可撓性に基づく弾性力によって、スロープ板10の幅方向変位により生ずる位置ずれを抑制することができる。
【0107】
(8)スロープ装置11は、駆動ケーブル26に固定された状態で移動体21に連結されることにより駆動ケーブル26を介して伝達される駆動力に基づき移動体21と一体に移動する連結部材54を備える。また、移動体21は、連結部材54が連結される横板部30と、支持アーム22が連結される縦壁部31と、を備えた折曲板形状を有する。更に、連結部材54は、係合レバー51に対する押圧部56を構成する立板形状部55を備えるとともに、この立板形状部55の下端に、その移動体21の横板部30に対する嵌合部82を備える。そして、この嵌合部82は、その移動体21の横板部30を上下方向に挟み込む複数の嵌合片85を備える。
【0108】
即ち、移動体21と一体に移動する連結部材54に係合レバー51に対する押圧部56を設けることで、精度よく、その展開及び格納方向に移動する移動体21に連動して、従動部材40に対する係合レバー51の係脱を制御することができる。そして、これにより、安定的な動作を担保することができる。
【0109】
また、嵌合により連結部材54を移動体21に連結する構成を採用することで、組付け作業を容易化することができる。更に、複数の嵌合片85で移動体21の横板部30を上下方向に挟み込むことにより、その連結部材54に設けられた立板形状部55の傾倒を抑制することができる。そして、これにより、その連結部材54及び移動体21の移動姿勢が変化することによる摺動抵抗の増加を回避することができる。
【0110】
(9)スロープ装置11は、格納方向に移動する移動体21に当接することにより予め定められた格納位置P0を超えて格納方向に向かう移動体21の移動を規制する格納ストッパ86を備える。そして、格納ストッパ86は、この格納ストッパ86と連結部材54の嵌合部82とが、展開及び格納方向に並ぶ状態で、その移動体21に当接する位置に配置される。
【0111】
即ち、移動体21は、駆動ケーブル26を介して伝達される駆動力に基づいて、その連結部材54と一体に移動する。従って、上記構成を採用することで、効率よく、その移動体21の荷重を格納ストッパ86が受け止めることができる。そして、これにより、その格納ストッパ86に当接した移動体21の姿勢を安定的に保持することができる。その結果、過度な強度マージンの設定を廃して、移動体21の軽量化を図ることができる。
【0112】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0113】
・上記実施形態では、ローラーカバー60は、ローラー57の支軸58に固定されることとしたが、支持アーム22に対するローラーカバー60の固定位置は、任意に変更してもよい。そして、ローラーカバー60の形状についてもまた、任意に変更してもよい。
【0114】
・また、支持アーム22の回動によりスロープ板10の後端部10rが持ち上げられた状態で、そのローラー57の上方を覆うことが可能であれば、支持アーム22以外の部位にローラーカバー60を配置してもよい。例えば、ガイドレール20の前端部20fから延出する態様でローラーカバー60を設けてもよい。そして、そのローラーカバー60を可動式としてもよい。
【0115】
・展開ストッパ46の形状や材質、支持構造等は、任意に変更してもよい。そして、格納ストッパ86についても同様に、その構成は、任意に変更してもよい。
・また、係合片47や係合レバー51の形状や材質も、任意に変更してもよい。更に、従動部材40の形状についてもまた、任意に変更してもよい。例えば、展開ストッパ46に対する当接位置や係合レバー51の係合位置は、必ずしも係合片47でなくともよい。そして、移動体21に設けられる係合レバー51に対する押圧部56の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
【0116】
・上記実施形態では、捩じりコイルバネ75の弾性力に基づいて脱落防止部材70を付勢することとした。しかし、これに限らず、例えば、圧縮バネや板バネ、或いはその他の弾性部材を用いる等、付勢部材の構成については、任意に変更してもよい。
【0117】
・また、上記実施形態では、サイドプレート35及びサイドフレーム37によって、その後端部10rにおけるスロープ板10の幅方向端部、つまりは側端部が形成される。そして、サイドプレート35が、サイドフレーム37との間にスリット78を形成するとともに、その側壁面78sを構成することとした。しかし、これに限らず、スロープ板10の側端部は、どのような構成であってもよい。また、スリット78、及び、その側壁面78sの構成部材についてもまた、任意に変更してもよい。そして、その押圧部材77の当接片79が、スリット78の側壁面78sに当接する方向もまた、任意に変更してもよい。
【0118】
・リフト機構50の構成は、任意に変更してもよい。例えば、独立した駆動源を有する等、必ずしも展開及び格納方向に移動する移動体21に連動していなくともよい。そして、モータ24以外の駆動源によって、そのスロープ板10を展開及び格納方向に移動させる構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
3…ドア開口部
10…スロープ板
10r…後端部
11…スロープ装置
20…ガイドレール
21…移動体
22…支持アーム
50…リフト機構
57…ローラー