(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177999
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ジブ係留装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20221125BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B66C23/26 E
B66C23/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084476
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】小泉 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 浩司
(72)【発明者】
【氏名】中司 健一
(72)【発明者】
【氏名】高岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 拓也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 景子
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋平
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205AC01
3F205CA01
3F205CA07
3F205CA09
3F205DA01
3F205KA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ジブのロックおよびロック解除を人力で行うことが可能であるとともに、ブームの質量を軽減し組立性を向上させることが可能なジブ係留装置を提供する。
【解決手段】タワー34に設けられた係止装置2と、ジブ35に設けられ、タワーに対してジブが折り畳まれた際に、係止装置によって係止される被係止部材3とを有する。係止装置は、被係止部材を係止する係止位置と、被係止部材の係止を解除する解除位置との間で移動可能なラッチ11と、ロック解除部材12と、ロック解除部材をロック位置の方に付勢する付勢部材13と、タワーの基部またはクレーン本体に設けられたウインチとロープ14とを有する。ウインチが一方向に作動されると、ロープがウインチに巻き取られて、ロック解除部材がロック解除位置に移動し、逆方向である他方向にウインチが作動されると、ロープがウインチから繰り出されて、ロック解除部材がロック位置に移動可能になる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置であって、
前記ブームに設けられた係止装置と、
前記ジブに設けられ、前記ブームに対して前記ジブが折り畳まれた際に、前記係止装置によって係止される被係止部材と、
を有し、
前記係止装置は、
前記被係止部材を係止する係止位置と、前記被係止部材の係止を解除する解除位置との間で移動可能な係止部材と、
前記係止部材に連結され、前記係止部材を前記係止位置に位置させるロック位置と、前記係止部材を前記解除位置に位置させるロック解除位置との間で移動可能なロック解除部材と、
前記ロック解除部材を前記ロック位置の方に付勢する付勢部材と、
前記ブームの基部またはクレーン本体に設けられたウインチと、
前記ウインチから繰り出されて前記ロック解除部材に連結されたロープと、
を有し、
前記ウインチが一方向に作動されると、前記ロープが前記ウインチに巻き取られて、前記ロック解除部材が前記ロック解除位置に移動し、
前記一方向とは逆方向である他方向に前記ウインチが作動されると、前記ロープが前記ウインチから繰り出されて、前記ロック解除部材が前記ロック位置に移動可能になることを特徴とするジブ係留装置。
【請求項2】
前記係止装置は、
前記ウインチを作動させるモータと、
前記ロープが前記ウインチから繰り出される方向に前記ロープを引っ張る引張部材と、
を有し、
前記ウインチは、前記モータから動力が供給されるときには、前記一方向に作動され、前記モータから動力が供給されないときには、前記引張部材の引張力によって前記他方向に作動されることを特徴とする請求項1に記載のジブ係留装置。
【請求項3】
前記被係止部材が前記係止部材に係止されているか否かを検出する検出装置と、
前記ウインチの前記一方向への作動と非作動とを切り換える切換装置と、
前記被係止部材が前記係止部材に係止されている場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させる一方、前記被係止部材が前記係止部材に係止されていない場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させないように、前記切換装置を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のジブ係留装置。
【請求項4】
作業者の操作で、前記係止部材と前記被係止部材との係止状態を解除する指令を出力する出力装置を有し、
前記コントローラは、前記被係止部材が前記係止部材に係止されている場合であって、前記指令を受け付けた場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させるように、前記切換装置を制御し、
前記コントローラは、前記被係止部材が前記係止部材に係止されている場合であって、前記指令を受け付けていない場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させる前記切換装置の制御を行わないことを特徴とする請求項3に記載のジブ係留装置。
【請求項5】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油で、前記ウインチを前記一方向に作動させる油圧モータと、
前記油圧ポンプからの作動油を前記油圧モータに供給する第1位置と、前記油圧ポンプからの作動油を前記油圧モータに供給しない第2位置との間で切り換え可能な方向切換弁と、
を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項6】
前記油圧モータと前記方向切換弁との間に設けられ、前記油圧モータに供給される作動油の圧力を調整する圧力調整弁を有することを特徴とする請求項5に記載のジブ係留装置。
【請求項7】
前記係止装置は、
前記ロック解除部材を前記ロック解除位置に位置させる作動位置と、前記ロック解除部材が前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動可能な待機位置との間で移動可能であって、前記ロック解除部材と前記ロープとを連結している連結部材と、
前記連結部材を前記待機位置の方に付勢する連結部材付勢部材と、
を有し、
前記ウインチが前記一方向に作動されると、前記ロープが前記ウインチに巻き取られて、前記連結部材が前記作動位置に移動し、
前記ウインチが前記他方向に作動されると、前記ロープが前記ウインチから繰り出されて、前記連結部材付勢部材の付勢力で前記連結部材が前記待機位置に移動することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項8】
前記ブームに対して折り畳まれた状態の前記ジブを前記ブームに係留する際に、前記ブームが鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされた状態で、垂下した前記ジブを前記ブームに引き寄せる一方、前記ブームに係留された前記ジブを前記ブームから解放する際に、前記ブームが鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされた状態で、前記ブームに引き寄せられている前記ジブを前記ブームから離隔させる駆動機構を有し、
前記駆動機構は、
前記ブームに設けられ、前記被係止部材に係合可能な係合部を有する係合部材と、
前記ブームの腹面側部分に設けられ、前記係合部を、前記ブームの前記腹面に近接した第1の位置と、前記ブームから離隔した第2の位置との間で移動させる移動手段と、
を有し、
前記移動手段は、
前記係合部材が回動自在かつ前記ブームの長手方向に移動自在に係合するガイド部材と、
前記係合部材の回動を制限する回動制限手段と、
前記ブームの長手方向に沿って前記係合部材を移動させることで、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記係合部を移動させる移動部材と、
を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項9】
前記被係止部材が前記係止部材に係止されているか否かを検出する検出装置と、
前記ウインチの前記一方向への作動と非作動とを切り換える切換装置と、
前記被係止部材が前記係止部材に係止されている場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させる一方、前記被係止部材が前記係止部材に係止されていない場合に、前記ウインチを前記一方向に作動させないように、前記切換装置を制御するコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、前記係止部材と前記被係止部材との係止状態が解除されると、前記係合部を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるように前記移動部材を制御することを特徴とする請求項8に記載のジブ係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワーの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2には、クレーンにおいて折り畳まれた状態のジブをタワーにロックするためのジブ係留装置が開示されている。特許文献1では、ラッチと一体的に設けられたレバープレートを回動させるシリンダ装置を設け、運転室内からシリンダ装置を遠隔操作することによって、ラッチがジブ側の係止軸を係止している状態が解除されるように構成されている。
【0003】
また、特許文献2では、タワー側に設けられたロック解除レバーの一端にロックピンが連結され、他端に連結体が連結されている。アクチュエータで連結体を引っ張ると、ロック解除レバーが支点を中心に回動し、ロックピンがジブ側の係止軸を係止している状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-231088号公報
【特許文献2】特開2017-30965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、レバープレートに連結されたロープも別途設けられているため、仮にロック状態(ラッチが係止軸を係止している状態)でシリンダが作動不能となった場合には、作業者がロープを引っ張ることによってロックを解除することができる。しかしながら、ロック解除状態(ラッチが係止軸から外れている状態)でシリンダが作動不能となった場合には、ラッチを係止位置に戻すことができず、ジブをロックできなくなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2では、アクチュエータが作動不能となった場合に、連結体をアクチュエータから取り外し、作業者が連結体を押し操作または引き操作することによって、ロックピンがジブ側の係止軸を係止する状態にすることも、その状態を解除することもできる。しかしながら、連結体は、ブームフットからロック解除レバーまでの数十メートルにわたって変形しない剛性を有する必要がある。そのため、連結体の質量が大きく、クレーンの能力に影響が生じる。また、連結体を組み立てる作業も煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、ジブのロックおよびロック解除を人力で行うことが可能であるとともに、ブームの質量を軽減し組立性を向上させることが可能なジブ係留装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置であって、前記ブームに設けられた係止装置と、前記ジブに設けられ、前記ブームに対して前記ジブが折り畳まれた際に、前記係止装置によって係止される被係止部材と、を有し、前記係止装置は、前記被係止部材を係止する係止位置と、前記被係止部材の係止を解除する解除位置との間で移動可能な係止部材と、前記係止部材に連結され、前記係止部材を前記係止位置に位置させるロック位置と、前記係止部材を前記解除位置に位置させるロック解除位置との間で移動可能なロック解除部材と、前記ロック解除部材を前記ロック位置の方に付勢する付勢部材と、前記ブームの基部またはクレーン本体に設けられたウインチと、前記ウインチから繰り出されて前記ロック解除部材に連結されたロープと、を有し、前記ウインチが一方向に作動されると、前記ロープが前記ウインチに巻き取られて、前記ロック解除部材が前記ロック解除位置に移動し、前記一方向とは逆方向である他方向に前記ウインチが作動されると、前記ロープが前記ウインチから繰り出されて、前記ロック解除部材が前記ロック位置に移動可能になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ウインチが一方向に作動されると、ロープがウインチに巻き取られて、ロック解除部材がロック解除位置に移動する。これにより、係止部材と被係止部材との係止状態が解除される。一方、ウインチが他方向に作動されると、ロープがウインチから繰り出されて、ロック解除部材がロック位置に移動可能になる。そして、付勢部材の付勢力によってロック解除部材がロック位置に移動すると、被係止部材が係止部材に係止される。ここで、ウインチが故障してロープの巻き取りができなくなった場合には、人力でロープを引っ張ることで、係止部材と被係止部材との係止状態を解除することができる。また、ウインチが故障してロープの繰り出しができなくなった場合には、ロープをウインチから取り外すかロープを切断するかして、人力でロープを繰り出すことで、ロック解除部材をロック位置に移動可能にし、ひいては、被係止部材を係止部材に係止させることができる。これにより、ジブのロックおよびロック解除を人力で行うことができる。また、ロープは、特許文献2の連結体よりも軽量であるため、ブームの質量を軽減することができる。また、ロープには、連結体のような組立は不要であるので、組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態におけるタワークレーンの側面図である。
【
図2】第1実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ラッチが係止位置に位置して被係止部材を係止した状態を示す図である。
【
図3】第1実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ラッチが解除位置に位置して被係止部材の係止を解除した状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ラッチが被係止部材を係止する前の状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態におけるジブ係留装置の油圧回路図である。
【
図7】第2実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ロックピンが係止位置に位置して被係止部材を係止した状態を示す図である。
【
図8】第2実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ロックピンが解除位置に位置して被係止部材の係止を解除した状態を示す図である。
【
図9】第2実施形態における
図1の要部Aの拡大図であり、ロックピンが被係止部材を係止する前の状態を示す図である。
【
図10】第2実施形態におけるジブ係留装置の拡大平面図である。
【
図11】第2実施形態におけるジブ係留装置の油圧回路図である。
【
図12】第3実施形態におけるタワークレーンの側面図である。
【
図13】第3実施形態における
図11の要部Cの拡大図であり、フックが係止位置に位置して被係止部材を係止した状態を示す図である。
【
図14】第3実施形態における
図11の要部Cの拡大図であり、フックが解除位置に位置して被係止部材の係止を解除した状態を示す図である。
【
図15】第3実施形態における
図11の要部Cの拡大図であり、係合部材の係合部が第2の位置に位置した状態を示す図である。
【
図16】第3実施形態における
図11の要部Cの拡大図であり、係合部材の係合部が第3の位置に位置した状態を示す図である。
【
図18】
図14の要部Eの拡大図であり、係合部材の係合部が第1の位置に位置した状態を示す図である。
【
図19】
図14の要部Eの拡大図であり、係合部材の係合部が第1の位置と第2の位置との間に位置した状態を示す図である。
【
図20】第3実施形態におけるジブ係留装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(タワークレーンの構成)
第1実施形態のジブ係留装置1は、タワークレーン30の側面図である
図1に示すように、タワークレーン30に設けられている。タワークレーン30は、クローラ式の下部走行体31に上部旋回体32が旋回可能に搭載された構成となっている。なお、タワークレーン30は、クローラ以外の移動手段(例えばホイール)を用いた移動式クレーンであってもよいし、移動手段を持たない固定式クレーンであってもよい。また、本発明の適用対象はタワークレーンに限定されず、例えば、ラッフィングクレーンに本発明を適用することも可能である。
【0013】
上部旋回体32は、運転室33と、タワー(ブーム)34と、ジブ35と、ガントリ36と、ストラット37と、下部スプレッダ38と、フック用ウインチ(図示せず)と、ジブ起伏用ウインチ(図示せず)と、ブーム起伏用ウインチ(図示せず)と、カウンタウエイト39と、バックストップ装置40と、を有している。以下、カウンタウエイト39から運転室33に向かう側を「前側」、運転室33からカウンタウエイト39に向かう側を「後側」という。
【0014】
運転室33は、上部旋回体32の前部に設けられている。タワー34は、上部旋回体32の前部に、上部旋回体32に対して起伏可能に連結されている。タワー34の先端には、ブームガイライン49の一端が接続されている。本実施形態のタワー34は、ラチス構造である。
【0015】
ジブ35は、タワー34の先端部に、タワー34に対して起伏可能に連結されている。ジブ35の先端には、ジブポイントシーブ41が設けられている。このジブポイントシーブ41からは巻上ロープ(図示せず)を介してフック装置(図示せず)が吊り下げられている。
図1では、ジブ35が斜め上前方に延びた作業状態と、ジブ35が折り畳まれてタワー34の前面部にロックされたロック状態とをともに記載している。本実施形態のジブ35は、ラチス構造である。
【0016】
ガントリ36は、上部旋回体32の後部に取り付けられている。ストラット37は、側方からの平面視で三角形状であって、タワー34の先端部に取り付けられている。ストラット37のフロントストラット37bの先端とジブ35の先端とは、ジブガイライン44により連結されている。
【0017】
タワー34の下部背面側に取り付けたジブ起伏用下部スプレッダ45と、ストラットガイライン46の一端に連結したジブ起伏用上部スプレッダ47との間には、ジブ起伏ロープ48が掛け渡されている。ストラットガイライン46の他端は、ストラット37のリアストラット37aの先端に接続されている。
【0018】
下部スプレッダ38は、ガントリ36の上端に取り付けられている。下部スプレッダ38と、ブームガイライン49の他端に連結した上部スプレッダ50との間には、ブーム起伏ロープ51が掛け渡されている。
【0019】
フック用ウインチ、ジブ起伏用ウインチ、および、ブーム起伏用ウインチは、上部旋回体32の中央部にそれぞれ配置されている。フック用ウインチは、巻上ロープを巻き取り又は繰り出してフック装置の巻き上げ又は巻き下げを行う。ジブ起伏用ウインチは、ジブ起伏ロープ48を巻き取り又は繰り出すことで、ストラット37を、タワー34の先端部との結合点を中心に起伏させる。その結果、ジブ35がタワー34との結合点を中心として起伏する。ブーム起伏用ウインチは、ブーム起伏ロープ51を巻き取り又は繰り出すことで、タワー34を、その支点であるブームフットピン52回りに起伏させる。
【0020】
カウンタウエイト39は、上部旋回体32の後部に搭載されている。バックストップ装置40は、タワー34の下部背面側に設けられている。バックストップ装置40は、上部旋回体32に設けられたバックストップ受け(図示せず)に受けられることで、タワー34の後側への回動を規制する。
【0021】
(ジブ係留装置の構成)
図1の要部Aの拡大図である
図2~
図4に示すように、ジブ係留装置1は、係止装置2と、被係止部材3と、を有している。係止装置2は、タワー34に設けられている。被係止部材3は、ジブ35に設けられている。被係止部材3は、タワー34に対してジブ35を折り畳んだ際に係止装置2に対向する位置に設けられている。
図2に示すように、被係止部材3は、タワー34に対してジブ35が折り畳まれた際に、係止装置2によって係止される。ジブ35が折り畳まれた状態で被係止部材3が係止装置2によって係止されることで、ジブ35をタワー34に係留することができる。
【0022】
被係止部材3は、パイプ状であり、ジブ側ブラケット25に溶接で固定されている。ジブ側ブラケット25は、Uボルト等でジブ35に取り付けられている。
【0023】
係止装置2は、ラッチ(係止部材)11と、ロック解除部材12と、付勢部材13と、ロープ14と、を有している。ラッチ11は、支持ブラケット15に、支点ピン15aを介して回動可能に連結されている。支持ブラケット15は、Uボルト等でタワー34に取り付けられている。ラッチ11は、支点ピン15aを中心に回動することで、被係止部材3を係止する係止位置(
図2に示す位置)と、被係止部材3の係止を解除する解除位置(
図3に示す位置)との間で移動可能である。
【0024】
支持ブラケット15には、係止側ストッパ15bと、解除側ストッパ15cとが設けられている。
図2に示すように、ラッチ11が係止位置に位置した際に、ラッチ11の側面が係止側ストッパ15bに当接することで、ラッチ11の回動が規制される。また、
図3に示すように、ラッチ11が解除位置に位置した際に、ラッチ11の側面が解除側ストッパ15cに当接することで、ラッチ11の回動が規制される。
【0025】
ラッチ11には、下方に突出した爪11aが形成されている。ラッチ11における爪11aよりも支持ブラケット15側には、被係止部材3が係合可能な係合溝11bが形成されている。ラッチ11における爪11aに対して係合溝11bとは反対側には、上方から下方に向かって支持ブラケット15側に傾斜した傾斜面11cが形成されている。
【0026】
ロック解除部材12は、棒状であり、ラッチ11の側面に取り付けられている(連結されている)。ロック解除部材12は、その前端部がラッチ11に固定されており、その後端部にロープ14が連結されている。ロープ14は、後述するウインチから繰り出されている。なお、ロープ14の代わりに、ワイヤ、チェーン等の紐状部材を用いてもよい。
【0027】
ロック解除部材12は、ラッチ11を係止位置に位置させるロック位置(
図2に示す位置)と、ラッチ11を解除位置に位置させるロック解除位置(
図3に示す位置)との間で移動可能である。
【0028】
付勢部材13は、ばねであり、ロック解除部材12と支持ブラケット15との間に配置されている。付勢部材13の一端部は、ロック解除部材12に取り付けられ、付勢部材13の他端部は、支持ブラケット15に取り付けられている。付勢部材13は、ロック解除部材12をロック位置の方に付勢している。
【0029】
また、
図1の要部Bの拡大図である
図5に示すように、係止装置2は、ウインチ16と、油圧モータ17と、を有している。ウインチ16は、タワー34の基部に設けられている。ロープ14は、ウインチ16に巻き取られており、ウインチ16から繰り出される。油圧モータ(モータ)17は、ウインチ16を一方向に回転(作動)させる。なお、ウインチ16は、上部旋回体32の前部など、クレーン本体に設けられていてもよい。
【0030】
ウインチ16が一方向に作動されると、ロープ14がウインチ16に巻き取られる。これにより、
図3に示すように、ロック解除部材12が、付勢部材13の付勢力に抗して、ロック解除位置に移動する。その結果、ラッチ11が解除位置に移動して、被係止部材3との係止状態が解除される。一方、一方向とは逆方向である他方向にウインチ16が作動されると、ロープ14がウインチ16から繰り出される。これにより、
図2に示すように、ロック解除部材12がロック位置に移動可能になる。そして、ロック解除部材12がロック位置に移動する結果、ラッチ11が係止位置に移動して、被係止部材3を係止することが可能になる。
【0031】
ここで、
図3に示すように、付勢部材(引張部材)13は、ロック解除部材12をロック位置の方に付勢することで、ロープ14がウインチ16から繰り出される方向にロープ14を引っ張る。ウインチ16は、油圧モータ17から動力が供給されるときには、油圧モータ17により一方向に作動される。これにより、ロープ14がウインチ16に巻き取られる。一方、ウインチ16は、油圧モータ17から動力が供給されないときには、付勢部材13の引張力によって他方向に作動される。これにより、ロープ14がウインチ16から繰り出される。このとき、油圧モータ17の管路抵抗等によって、徐々にロープ14が繰り出されることになる。
【0032】
このように、油圧モータ17からウインチ16に動力が供給されないときには、付勢部材13の引張力で、ウインチ16を他方向に作動させて、ロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。そして、ウインチ16が故障した場合など、油圧モータ17から動力が供給されないときには、ウインチ16は他方向に作動されるので、ロック解除部材12はロック解除位置の方に移動しない。よって、ラッチ11と被係止部材3との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0033】
また、
図2~
図4に示すように、ジブ係留装置1は、検出装置4を有している。検出装置4は、被係止部材3がラッチ11に係止されているか否かを検出する。検出装置4は、リミットスイッチ18と、回動レバー19と、ばね20と、を有している。
【0034】
リミットスイッチ18は、ラッチ11の側面に取り付けられている。リミットスイッチ18は、レバー18aを有している。リミットスイッチ18は、レバー18aが回動レバー19の後端部で押されるとONになり、レバー18aが回動レバー19の後端部で押されなくなるとOFFになる。
【0035】
回動レバー19は、ラッチ11に、支点ピン19aを介して回動可能に取り付けられている。回動レバー19は、ラッチ11の係合溝11bに重なることで、係合溝11bを塞ぐ待機位置(
図4に示す位置)と、係合溝11bから離れることで、係合溝11bを空ける作動位置(
図2に示す位置)との間で移動可能である。
【0036】
ばね20は、ラッチ11と回動レバー19との間に配置されている。ばね20の一端部は、ラッチ11に取り付けられ、ばね20の他端部は、回動レバー19の後端部に取り付けられている。ばね20は、回動レバー19を待機位置の方に付勢する。
図4に示す待機位置では、回動レバー19の前端部は、ラッチ11に設けられたストッパ11dに当接する。これにより、回動レバー19の回動が規制され、回動レバー19の前端部がラッチ11から外れないようにされている。
【0037】
図2に示すように、ラッチ11が係止位置に移動すると、回動レバー19が、ばね20の付勢力に抗して、作動位置に移動する。その結果、リミットスイッチ18のレバー18aが回動レバー19の後端部で押されて、リミットスイッチ18がONになる。一方、
図3に示すように、ラッチ11が解除位置に移動すると、回動レバー19が、ばね20の付勢力で、待機位置に移動する。その結果、リミットスイッチ18のレバー18aが回動レバー19の後端部で押されなくなり、リミットスイッチ18がOFFになる。
【0038】
また、ジブ係留装置1の油圧回路図である
図6に示すように、ジブ係留装置1は、油圧ポンプ5と、方向切換弁6と、コントローラ7と、圧力調整弁8と、を有している。油圧ポンプ5は、油圧モータ17の動力源であり、油圧モータ17に作動油を供給する。油圧モータ17は、油圧ポンプ5から供給される作動油で、ウインチ16を一方向に回転させる。
【0039】
方向切換弁(切換装置)6は、ウインチ16の一方向への作動と非作動とを切り換える。方向切換弁6は、第1位置6aと、第2位置6bとの間で切り換え可能である。第1位置6aでは、油圧ポンプ5からの作動油が油圧モータ17に供給される。第2位置6bでは、油圧ポンプ5からの作動油が油圧モータに供給されず、タンクに戻される。つまり、方向切換弁6が第1位置6aに切り換えられると、油圧モータ17に作動油が供給されることで、ウインチ16が一方向に作動される。これにより、ロック解除部材12をロック解除位置に移動させることができる。一方、方向切換弁6が第2位置6bに切り換えられると、油圧モータ17に作動油が供給されないことで、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、付勢部材13の付勢力でロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。
【0040】
コントローラ7は、方向切換弁6を制御する。コントローラ7には、リミットスイッチ18からの信号が入力される。コントローラ7は、リミットスイッチ18からの信号に基づいて、被係止部材3がラッチ11に係止されているか否かを判定する。コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合に、係止ランプ21を点灯させる。係止ランプ21は、例えば赤色に点灯する。一方、コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されていない場合に、非係止ランプ22を点灯させる。非係止ランプ22は、例えば緑色に点灯する。係止ランプ21および非係止ランプ22は、タワークレーン30を操縦するオペレータが視認できるように、運転室33にそれぞれ設けられている。
【0041】
コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合(
図2参照)に、方向切換弁6を第1位置6aに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させる。これにより、ロック解除部材12をロック解除位置に移動させて、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除することができる。一方、コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されていない場合(
図4参照)に、方向切換弁6を第2位置6bに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させない。これにより、付勢部材13の付勢力でロック解除部材12をロック位置に位置させ、ラッチ11を係止位置に位置させることができる。その結果、被係止部材3をラッチ11に係止させることができる。
【0042】
このように、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合にのみ、ロック解除部材12をロック解除位置に移動させて、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除することができる。また、被係止部材3がラッチ11に係止されていない場合に、付勢部材13の付勢力によってロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。
【0043】
圧力調整弁8は、油圧モータ17と方向切換弁6との間に設けられている。圧力調整弁8は、油圧モータ17に供給される作動油の圧力を調整する。例えば、ウインチ16の駆動力が、ラッチ11が解除位置に移動可能な、できるだけ小さい(例えば最小の)大きさとなるように、作動油の圧力を調整することで、係止装置2、特に、ロック解除部材12を好適に軽量化することができる。
【0044】
また、ジブ係留装置1は、係止解除スイッチ(出力装置)9を有している。係止解除スイッチ9は、運転室33に設けられており、タワークレーン30を操縦するオペレータ(作業者)により操作される。係止解除スイッチ9は、オペレータの操作で、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除する指令を出力する。
【0045】
コントローラ7は、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けて、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。これにより、係止状態が解除される。
【0046】
ここで、コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合であって、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けた場合に、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。そして、コントローラ7は、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合であって、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けていない場合に、ウインチ16を一方向に作動させる方向切換弁6の制御を行わない。よって、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合であっても、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けていない場合には、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、ラッチ11と被係止部材3との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0047】
上記の構成において、折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する際には、
図1に示すように、タワー34が鉛直方向に起立した姿勢にされる。この状態で、ジブ35が垂下される。ジブ35が垂下されると、
図4に示すように、被係止部材3がラッチ11の傾斜面11cに当接し、傾斜面11cに沿って摺動することで、付勢部材13の付勢力に抗してラッチ11を解除位置の方向に回動させる。そして、被係止部材3が爪11aを乗り越えると、
図2に示すように、被係止部材3が係合溝11bに係合し、ジブ35がタワー34に係留される。
【0048】
一方、タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する際には、
図2に示すように、被係止部材3にラッチ11が係止された状態で、タワー34が鉛直方向に起立した姿勢にされる。この状態で、ウインチ16が一方向に回転される。すると、
図3に示すように、ラッチ11が解除位置に移動し、被係止部材3の係止状態が解除される。このとき、ジブ35をタワー34から前方に振り出すように起伏操作することで、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔する。
【0049】
なお、タワー34およびジブ35の長さを変更した際に取り付け位置を変更する必要性や、輸送性を考慮して、支持ブラケット15をタワー34のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。ジブ側ブラケット25も同様に、ジブ35のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。
【0050】
(ジブ係留装置の動作)
次に、ジブ係留装置1の動作について、
図1~
図6を参照しつつ説明する。
【0051】
(係留ステップ)
折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する場合、まず、
図1に示すように、ブーム起伏ロープ51を巻き取ることで、タワー34を鉛直方向に起立した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は90度であるが、これに限定されない。
【0052】
次に、ジブ起伏ロープ48を繰り出して、ジブ35を鉛直方向に垂下した状態にする。このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられている(
図6参照)。また、ラッチ11は係止位置に位置し、ロック解除部材12はロック位置に位置し、回動レバー19は待機位置に位置している(
図4参照)。運転室33内では、係止ランプ21が消灯し、非係止ランプ22が点灯している。
【0053】
被係止部材3が係止装置2に十分に近接すると、
図4に示すように、被係止部材3がラッチ11の傾斜面11cに当接し、傾斜面11cに沿って摺動する。これにより、ラッチ11が、付勢部材13の付勢力に抗して解除位置の方向に回動する。そして、被係止部材3が爪11aを乗り越えると、
図2に示すように、被係止部材3が係合溝11bに係合する。これにより、ジブ35がタワー34に係留される。
【0054】
被係止部材3が係合溝11bに係合すると、回動レバー19が作動位置に移動し、リミットスイッチ18がONになる。その結果、非係止ランプ22が消灯し、係止ランプ21が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材3がラッチ11に係止されていることを認識することができる。
【0055】
次に、ブーム起伏ロープ51を繰り出すことで、ストラット37が着地するまでタワー34を倒伏させる。このとき、ジブ35がタワー34に係留されているので、ジブ35がふらついて不安定になることがない。
【0056】
なお、ジブ35をタワー34に係留する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、ロープ14をウインチ16から取り外すかロープ14を切断するかして、人力でロープ14を繰り出すことで、ロック解除部材12をロック位置に移動可能にし、ひいては、被係止部材3をラッチ11に係止させることができる。
【0057】
(解放ステップ)
タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する場合、被係止部材3をラッチ11で係止した状態で、
図1に示すように、ブーム起伏ロープ51を巻き取ることで、タワー34を鉛直方向に起立した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は90度であるが、これに限定されない。
【0058】
このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられている(
図6参照)。また、ラッチ11は係止位置に位置し、ロック解除部材12はロック位置に位置し、回動レバー19は作動位置に位置している(
図2参照)。運転室33内では、非係止ランプ22が消灯し、係止ランプ21が点灯している。
【0059】
次に、係止解除スイッチ9が操作されると、コントローラ7により方向切換弁6が第1位置6aに切り換えられる。その結果、ウインチ16が一方向に回転される。すると、
図3に示すように、ロック解除部材12がロック解除位置に移動するとともに、ラッチ11が解除位置に移動し、被係止部材3の係止状態が解除される。
【0060】
被係止部材3の係止状態が解除されると、回動レバー19が待機位置に移動し、リミットスイッチ18がOFFになる。その結果、係止ランプ21が消灯し、非係止ランプ22が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材3がラッチ11に係止されていないことを認識することができる。
【0061】
その後、ジブ35をタワー34から前方に振り出すように起伏操作する。これにより、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔する。
【0062】
その後、コントローラ7により方向切換弁6が第2位置6bに切り換えられる。その結果、
図4に示すように、付勢部材13の引張力によってウインチ16が他方向に作動され、ロック解除部材12がロック位置に移動するとともに、ラッチ11が係止位置に移動する。そして、ジブ起伏ロープ48を巻き取ることで、ジブ35を水平かそれ以上に起こした後に、タワー34を起伏させて作業姿勢にする。
【0063】
なお、ジブ35をタワー34から解放する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、人力でロープ14を引っ張ることで、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除することができる。
【0064】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るジブ係留装置1によると、ウインチ16が一方向に作動されると、ロープ14がウインチ16に巻き取られて、ロック解除部材12がロック解除位置に移動する。これにより、ラッチ11と被係止部材3との係止状態が解除される。一方、ウインチ16が他方向に作動されると、ロープ14がウインチ16から繰り出されて、ロック解除部材12がロック位置に移動可能になる。そして、付勢部材13の付勢力によってロック解除部材12がロック位置に移動すると、被係止部材3がラッチ11に係止される。ここで、ウインチ16が故障してロープ14の巻き取りができなくなった場合には、人力でロープ14を引っ張ることで、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除することができる。また、ウインチ16が故障してロープ14の繰り出しができなくなった場合には、ロープ14をウインチ16から取り外すかロープ14を切断するかして、人力でロープ14を繰り出すことで、ロック解除部材12をロック位置に移動可能にし、ひいては、被係止部材3をラッチ11に係止させることができる。これにより、ジブ35のロックおよびロック解除を人力で行うことができる。また、ロープ14は、特許文献2の連結体よりも軽量であるため、タワー34の質量を軽減することができる。また、ロープ14には、連結体のような組立は不要であるので、組立性を向上させることができる。
【0065】
また、ウインチ16は、油圧モータ17から動力が供給されるときには、一方向に作動される一方、油圧モータ17から動力が供給されないときには、付勢部材13の引張力によって他方向に作動される。よって、油圧モータ17からウインチ16に動力が供給されないときには、付勢部材13の引張力で、ウインチ16を他方向に作動させて、ロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。そして、ウインチ16が故障した場合など、油圧モータ17から動力が供給されないときには、ウインチ16は他方向に作動されるので、ラッチ11と被係止部材3との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0066】
また、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合に、ウインチ16が一方向に作動される一方、被係止部材3がラッチ11に係止されていない場合に、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合にのみ、ロック解除部材12をロック解除位置に移動させて、ラッチ11と被係止部材3との係止状態を解除することができる。また、被係止部材3がラッチ11に係止されていない場合に、付勢部材13の付勢力によってロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。
【0067】
また、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合であって、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けた場合に、ウインチ16が一方向に作動される。そして、被係止部材3がラッチ11に係止されている場合であっても、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けていない場合には、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、ラッチ11と被係止部材3との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0068】
また、方向切換弁6が、油圧ポンプ5からの作動油を油圧モータ17に供給する第1位置6aと、油圧ポンプ5からの作動油を油圧モータ17に供給しない第2位置6bとの間で切り換えられる。方向切換弁6が第1位置6aに切り換えられると、ウインチ16が一方向に作動される。これにより、ロック解除部材12をロック解除位置に移動させることができる。一方、方向切換弁6が第2位置6bに切り換えられると、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、付勢部材13の付勢力でロック解除部材12をロック位置に移動可能にすることができる。
【0069】
また、油圧モータ17に供給される作動油の圧力が調整される。例えば、ウインチ16の駆動力が、ラッチ11が解除位置に移動可能な、できるだけ小さい(例えば最小の)大きさとなるように、作動油の圧力を調整することで、係止装置2、特に、ロック解除部材12を好適に軽量化することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のジブ係留装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0071】
(ジブ係留装置の構成)
図1の要部Aの拡大図である
図7~
図9に示すように、本実施形態のジブ係留装置101は、係止装置102と、被係止部材103と、を有している。係止装置102は、タワー34の前面部に設けられている。被係止部材103は、ジブ35に設けられている。被係止部材103は、タワー34に対してジブ35を折り畳んだ際に係止装置102に対向する位置に設けられている。
図7に示すように、被係止部材103は、タワー34に対してジブ35が折り畳まれた際に、係止装置102によって係止される。ジブ35が折り畳まれた状態で被係止部材103が係止装置102によって係止されることで、ジブ35をタワー34に係留することができる。
【0072】
ジブ係留装置の拡大平面図である
図10に示すように、被係止部材103は、パイプ状であり、左右一対の軸支持ブラケット75で支持されている。軸支持ブラケット75は、Uボルト等でジブ35に取り付けられたジブ側ブラケット76から突設されている。軸支持ブラケット75の先端にはベアリング75aが設けられている。被係止部材103は、左右一対のベアリング75aによって支持されている。
【0073】
図7~
図9に示すように、係止装置102は、ロックピン(係止部材)61と、ロック解除部材62と、付勢部材63と、を有している。ロックピン61は、棒状であり、ロック解除部材62の前端部に連結されている。ロックピン61は、ロック解除部材62の回動によって、被係止部材103を係止する係止位置(
図7に示す位置)と、被係止部材103の係止を解除する解除位置(
図8に示す位置)との間で移動可能である。
【0074】
ロック解除部材62は、支持ブラケット65に、支点ピン65aを介して回動可能に連結されている。支持ブラケット65は、Uボルト等でタワー34に取り付けられたタワー側ブラケット66から上方に突設されている。ロック解除部材62の後端部には、後述する連結部材69が連結されている。
【0075】
ロック解除部材62は、ロックピン61を係止位置に位置させるロック位置(
図7に示す位置)と、ロックピン61を解除位置に位置させるロック解除位置(
図8に示す位置)との間で移動可能である。
【0076】
タワー側ブラケット66には、ロックフレーム67が取り付けられている。ロックフレーム67には、ガイド筒67aが形成されるとともに、ガイド筒67aに相対する位置にロック穴67bが形成されている。ロックピン61は、ガイド筒67a内を上下に移動することによって、ロックピン61がロック穴67bに嵌合する係止位置と、ロックピン61がロック穴67bから外れた解除位置との間で移動可能となっている。
【0077】
付勢部材63は、ばねであり、タワー側ブラケット66とロック解除部材62との間に配置されている。付勢部材63の一端部は、タワー側ブラケット66に取り付けられ、付勢部材63の他端部は、ロック解除部材62における支点ピン65aよりも前側(ジブ35側)の部分に取り付けられている。付勢部材63は、ロック解除部材62をロック位置の方に付勢している。
【0078】
ロックフレーム67内には、ピンブロック部材68が設けられている。ピンブロック部材68は、ロックフレーム67内を前後方向に移動可能であり、スプリング68aによって前方に付勢されている。
図8、
図9に示すように、ロックピン61が解除位置にあるときには、ピンブロック部材68がガイド筒67aの一部を閉塞する位置まで付勢される。これによって、ロックピン61がピンブロック部材68によってブロックされ、係止位置に移動できないようになっている。
【0079】
また、係止装置102は、連結部材69と、ばね70と、ロープ14と、を有している。連結部材69は、第1連結部材69aと、第2連結部材69bと、を有している。第1連結部材69aと第2連結部材69bとは連結されている。第1連結部材69aは、その前端部が連結部材支持ブラケット71にピン71aで回動可能に取り付けられており、その後端部が第2連結部材69bの下端部に連結されている。連結部材支持ブラケット71は、タワー側ブラケット66から下方に突設されている。
【0080】
第2連結部材69bは、ロック解除部材62の後端部と第1連結部材69aの後端部とを連結している。第2連結部材69bの上部(ロック解除部材62との連結部)には、軸方向に沿って長穴69cが形成されている。長穴69cには、連結ピン72が係合している。この連結ピン72を介して、ロック解除部材62と連結部材69とが連結されている。
【0081】
ロープ14は、第1連結部材69aの中央部に連結されている。ロープ14は、ウインチ16から繰り出されている(
図5参照)。連結部材69は、ロック解除部材62とロープ14とを連結している。
【0082】
連結部材69は、ロック解除部材62をロック解除位置に位置させる作動位置(
図8に示す位置)と、ロック解除部材62をロック位置とロック解除位置との間で移動可能にする待機位置(
図7、
図9に示す位置)との間で移動可能である。長穴69cは、連結部材69が待機位置にあるときに、ロック解除部材62がロック位置とロック解除位置との間で移動可能な範囲に形成されている。
【0083】
ばね(連結部材付勢部材)70は、タワー側ブラケット66と第1連結部材69aとの間に配置されている。ばね70の一端部は、タワー側ブラケット66に取り付けられ、ばね70の他端部は、第1連結部材69aにおけるロープ14が連結された部分よりも前側(ジブ35側)の部分に取り付けられている。ばね70は、連結部材69を待機位置の方に付勢している。
【0084】
ウインチ16が一方向に作動されると、ロープ14がウインチ16に巻き取られて、連結部材69が作動位置に移動する。これにより、ロック解除部材62がロック解除位置に移動するので、ロックピン61と被係止部材103との係止状態を解除することができる。一方、ウインチ16が他方向に作動されると、ロープ14がウインチ16から繰り出されて、ばね70の付勢力で連結部材69が待機位置に移動する。これにより、ロック解除部材62がロック位置とロック解除位置との間で移動可能なるので、被係止部材103をロックピン61に係止することができる。
【0085】
また、
図8に示すように、ばね(引張部材)70は、連結部材69を待機位置の方に付勢することで、ロープ14がウインチ16から繰り出される方向にロープ14を引っ張る。ウインチ16は、油圧モータ17から動力が供給されないときには、ばね70の引張力によって他方向に作動される。これにより、ロープ14がウインチ16から繰り出される。このとき、油圧モータ17の管路抵抗等によって、徐々にロープ14が繰り出されることになる。
【0086】
このように、油圧モータ17からウインチ16に動力が供給されないときには、ばね70の引張力で、ウインチ16を他方向に作動させて、連結部材69を待機位置に移動させることで、ロック解除部材62をロック位置に移動可能にすることができる。そして、ウインチ16が故障した場合など、油圧モータ17から動力が供給されないときには、ウインチ16は他方向に作動されるので、ロックピン61と被係止部材103との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0087】
また、ジブ係留装置1は、検出装置104を有している。検出装置104は、被係止部材103がロックピン61に係止されているか否かを検出する。検出装置104は、第1リミットスイッチ77と、第2リミットスイッチ78と、を有している。
【0088】
第1リミットスイッチ77は、タワー側ブラケット66に取り付けられている。第1リミットスイッチ77は、前方に延びるレバー77aを有している。ロック解除部材62の前端部には、ストライカ62aが取り付けられている。第1リミットスイッチ77は、レバー77aがストライカ62aで押されるとONになり、レバー77aからストライカ62aが離れるとOFFになる。これにより、第1リミットスイッチ77は、ロックピン61が係止位置に位置しているか否かを検出する。
【0089】
第2リミットスイッチ78は、タワー側ブラケット66に取り付けられている。第2リミットスイッチ78は、
図7の紙面に直交する方向に延びるレバー78aを有している(
図10参照)。第2リミットスイッチ78は、レバー78aがロック解除部材62で押されるとONになり、レバー78aからロック解除部材62が離れるとOFFになる。これにより、第2リミットスイッチ78は、ロック解除部材62がロック解除位置に位置しているか否かを検出する。
【0090】
第2リミットスイッチ78の近傍には、ストッパ79が設けられている。ストッパ79は、タワー側ブラケット66に取り付けられている。
図8に示すように、ロック解除部材62がロック解除位置に位置すると、ロック解除部材62がストッパ79に当接することで、ロック解除部材62の回動が規制される。これにより、第2リミットスイッチ78がロック解除部材62で破壊されるのが防止されている。
【0091】
ジブ係留装置101の油圧回路図である
図11に示すように、コントローラ7には、第1リミットスイッチ77からの信号と、第2リミットスイッチ78からの信号とが入力される。コントローラ7は、第1リミットスイッチ77および第2リミットスイッチ78からの信号に基づいて、被係止部材103がロックピン61に係止されているか否かを判定する。
【0092】
コントローラ7は、被係止部材103がロックピン61に係止されている場合(
図7参照)に、方向切換弁6を第1位置6aに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させる。これにより、ロック解除部材62がロック解除位置に移動する。一方、コントローラ7は、被係止部材103がロックピン61に係止されていない場合(
図9参照)に、方向切換弁6を第2位置6bに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させない。これにより、ロック解除部材62は、ロック解除位置に位置して、付勢部材63の付勢力でロック位置に移動可能になる。
【0093】
このように、被係止部材103がロックピン61に係止されている場合にのみ、ロック解除部材62をロック解除位置に移動させて、ロックピン61と被係止部材103との係止状態を解除することができる。また、被係止部材103がロックピン61に係止されていない場合に、付勢部材63の付勢力によってロック解除部材62をロック位置に移動可能にすることができる。
【0094】
コントローラ7は、被係止部材103がロックピン61に係止されている場合であって、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けた場合に、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。そして、コントローラ7は、被係止部材103がロックピン61に係止されている場合であって、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けていない場合に、ウインチ16を一方向に作動させる方向切換弁6の制御を行わない。よって、被係止部材103がロックピン61に係止されている場合であっても、係止解除スイッチ9からの指令を受け付けていない場合には、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、ロックピン61と被係止部材103との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0095】
上記の構成において、折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する際には、
図1に示すように、タワー34が鉛直方向に起立した姿勢にされる。この状態で、ジブ35が垂下される。ジブ35が垂下されると、
図9に示すように、被係止部材103がピンブロック部材68に当接し、スプリング68aの付勢力に抗してピンブロック部材68をタワー34側に押し込む。その結果、ピンブロック部材68によるロックピン61のブロックが解除され、
図7に示すように、付勢部材63の付勢力によりロック解除部材62がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン61が係止位置に移動し、ジブ35がタワー34に係留される。
【0096】
一方、タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する際には、
図7に示すように、被係止部材103にロックピン61が係止された状態で、タワー34が鉛直方向に起立した姿勢にされる。この状態で、ウインチ16が一方向に回転される。すると、ロープ14が巻き取られ、連結部材69が作動位置に移動する。その結果、
図8に示すように、ロック解除部材62がロック解除位置に移動するのと同時に、ロックピン61が解除位置に移動する。すると、スプリング68aの付勢力で被係止部材103がピンブロック部材68に押されて、被係止部材103の係止状態が解除される。このとき、ジブ35をタワー34から前方に振り出すように起伏操作することで、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔する。このとき、ロックピン61はピンブロック部材68によってブロックされ、ロックピン61が係止位置に戻ることはない。
【0097】
なお、タワー34およびジブ35の長さを変更した際に取り付け位置を変更する必要性や、輸送性を考慮して、タワー側ブラケット66をタワー34のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。ジブ側ブラケット76も同様に、ジブ35のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。
【0098】
(ジブ係留装置の動作)
次に、ジブ係留装置101の動作について、
図1、
図7~
図11を参照しつつ説明する。
【0099】
(係留ステップ)
折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する場合、まず、
図1に示すように、ブーム起伏ロープ51を巻き取ることで、タワー34を鉛直方向に起立した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は90度であるが、これに限定されない。
【0100】
次に、ジブ起伏ロープ48を繰り出して、ジブ35を鉛直方向に垂下した状態にする。このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられている(
図11参照)。また、ロックピン61は解除位置に位置し、ロック解除部材62はロック解除位置に位置し、連結部材69は待機位置に位置している(
図9参照)。第2リミットスイッチ78は、レバー78aがロック解除部材62で押されることで、ONになっている。そのため、運転室33内では、非係止ランプ22が点灯し、係止ランプ21が消灯している。
【0101】
被係止部材103が係止装置102に十分に近接すると、
図9に示すように、被係止部材103がピンブロック部材68に当接し、スプリング68aの付勢力に抗してピンブロック部材68をタワー34側に押し込む。これにより、
図7に示すように、ロック解除部材62がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン61が係止位置に移動し、被係止部材103がロックピン61に係止される。これにより、ジブ35がタワー34に係留される。なお、連結部材69は待機位置に位置したままである。
【0102】
被係止部材103がロックピン61に係止されると、第2リミットスイッチ78がOFFになる。また、第1リミットスイッチ77のレバー77aがストライカ62aで押されて、第1リミットスイッチ77がONになる。その結果、非係止ランプ22が消灯し、係止ランプ21が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材103がロックピン61に係止されていることを認識することができる。
【0103】
次に、ブーム起伏ロープ51を繰り出すことで、ストラット37が着地するまでタワー34を倒伏させる。このとき、ジブ35がタワー34に係留されているので、ジブ35がふらついて不安定になることがない。
【0104】
なお、ジブ35をタワー34に係留する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、ロープ14をウインチ16から取り外すかロープ14を切断するかして、人力でロープ14を繰り出すことで、ロック解除部材62をロック位置に移動可能にし、ひいては、被係止部材103をロックピン61に係止させることができる。
【0105】
(解放ステップ)
タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する場合、被係止部材103をロックピン61で係止した状態で、
図1に示すように、ブーム起伏ロープ51を巻き取ることで、タワー34を鉛直方向に起立した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は90度であるが、これに限定されない。
【0106】
このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられている(
図11参照)。また、ロックピン61は係止位置に位置し、ロック解除部材62はロック位置に位置し、連結部材69は待機位置に位置している(
図7参照)。第1リミットスイッチ77は、レバー77aがストライカ62aで押されることで、ONになっている。そのため、運転室33内では、係止ランプ21が点灯し、非係止ランプ22が消灯している。
【0107】
次に、係止解除スイッチ9が操作されると、コントローラ7により方向切換弁6が第1位置6aに切り換えられる。その結果、ウインチ16が一方向に回転される。すると、ロープ14が巻き取られ、連結部材69が作動位置に移動する。その結果、
図8に示すように、ロック解除部材62がロック解除位置に移動すると同時に、ロックピン61が解除位置に移動する。すると、スプリング68aの付勢力で被係止部材103がピンブロック部材68に押されて、被係止部材103の係止状態が解除される。
【0108】
被係止部材103の係止状態が解除されると、第1リミットスイッチ77がOFFになる。また、第2リミットスイッチ78のレバー78aがロック解除部材62で押されて、第2リミットスイッチ78がONになる。その結果、係止ランプ21が消灯し、非係止ランプ22が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材3がロックピン61に係止されていないことを認識することができる。
【0109】
第2リミットスイッチ78がONになると、コントローラ7により方向切換弁6が第2位置6bに切り換えられる。その結果、
図9に示すように、ばね70の引張力によってウインチ16が他方向に作動され、連結部材69が待機位置に移動する。ロック解除部材62はロック解除位置に位置したままであり、ロックピン61は解除位置に位置したままである。
【0110】
その後、ジブ35をタワー34から前方に振り出すように起伏操作する。これにより、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔する。そして、ジブ起伏ロープ48を巻き取ることで、ジブ35を水平かそれ以上に起こした後に、タワー34を起伏させて作業姿勢にする。
【0111】
なお、ジブ35をタワー34から解放する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、人力でロープ14を引っ張ることで、ロックピン61と被係止部材103との係止状態を解除することができる。
【0112】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るジブ係留装置101によると、ウインチ16が一方向に作動されると、ロープ14がウインチ16に巻き取られて、連結部材69が作動位置に移動する。これにより、ロック解除部材62がロック解除位置に移動するので、ロックピン61と被係止部材103との係止状態を解除することができる。一方、ウインチ16が他方向に作動されると、ロープ14がウインチ16から繰り出されて、ばね70の付勢力で連結部材69が待機位置に移動する。これにより、ロック解除部材62がロック位置とロック解除位置との間で移動可能になるので、被係止部材103をロックピン61に係止することができる。
【0113】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のジブ係留装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0114】
(タワークレーンの構成)
第3実施形態におけるタワークレーン30の側面図を
図12に示す。本実施形態のタワークレーン30の構成は、第1実施形態および第2実施形態のタワークレーン30の構成と同じである。
【0115】
第1実施形態および第2実施形態では、
図1に示すように、タワー34を鉛直方向に起立した姿勢にして、ジブ35の係留および解放を行っていた。これに対して、本実施形態では、
図12に示すように、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ジブ35の係留および解放を行う。そのため、見た目が安定しており、強風でタワー34が後方に転倒する恐れもない。
【0116】
(ジブ係留装置の構成)
図12の要部Cの拡大図である
図13~
図16に示すように、本実施形態のジブ係留装置201は、係止装置202と、被係止部材203と、を有している。係止装置202は、タワー34の前面部に設けられている。被係止部材203は、ジブ35に設けられている。被係止部材203は、タワー34に対してジブ35を折り畳んだ際に係止装置202に対向する位置に設けられている。
図13に示すように、被係止部材203は、タワー34に対してジブ35が折り畳まれた際に、係止装置202によって係止される。ジブ35が折り畳まれた状態で被係止部材203が係止装置202によって係止されることで、ジブ35をタワー34に係留することができる。
【0117】
被係止部材203は、棒状であり、Uボルト等でジブ35のメインパイプに取り付けられている。
【0118】
図13の要部Dの拡大図である
図17、
図14の要部Eの拡大図である
図18および
図19に示すように、係止装置202は、フック(係止部材)81と、ロック解除部材82と、付勢部材83と、ロープ14と、を有している。フック81は、鉤状である。フック81は、タワー34の腹面側部分に設けられたブラケット84に支点ピン84aで回動自在に連結されている。
【0119】
フック81は、被係止部材203が嵌る嵌合部81aと、被係止部材203を嵌合部81aに案内するガイド部81bと、を有している。ガイド部81bは、フック81の先端から嵌合部81aにかけて傾斜した傾斜面となっている。
【0120】
フック81は、支点ピン84aを中心に回動することで、被係止部材203を係止する係止位置(
図17に示す位置)と、被係止部材203の係止を解除する解除位置(
図18に示す位置)との間で移動可能である。
【0121】
ブラケット84には、係止側ストッパ84bと、解除側ストッパ84cとが設けられている。
図17に示すように、フック81が係止位置に位置した際に、フック81の側面が係止側ストッパ84bに当接することで、フック81の回動が規制される。また、
図18に示すように、フック81が解除位置に位置した際に、フック81の側面が解除側ストッパ84cに当接することで、フック81の回動が規制される。
【0122】
ロック解除部材82の前端部は、フック81の基端部に連結されている。ロック解除部材82の後端部には、ロープ14が連結されている。
【0123】
ロック解除部材82は、フック81の回動によって、フック81を係止位置に位置させるロック位置(
図13に示す位置)と、フック81を解除位置に位置させるロック解除位置(
図14に示す位置)との間で移動可能である。
【0124】
付勢部材83は、ばねであり、フック81とブラケット84との間に配置されている。付勢部材83の一端部は、フック81における嵌合部81aよりも後側(タワー34側)の部分に取り付けられ、付勢部材63の他端部は、ブラケット84の下端部に取り付けられている。付勢部材83は、フック81を係止位置の方に付勢している。つまり、付勢部材83は、ロック解除部材82をロック位置の方に付勢している。
【0125】
また、
図18に示すように、付勢部材(引張部材)83は、ロック解除部材82をロック位置の方に付勢することで、ロープ14がウインチ16から繰り出される方向にロープ14を引っ張る。ウインチ16は、油圧モータ17から動力が供給されないときには、付勢部材83の引張力によって他方向に作動される。これにより、ロープ14がウインチ16から繰り出される。このとき、油圧モータ17の管路抵抗等によって、徐々にロープ14が繰り出されることになる。
【0126】
このように、油圧モータ17からウインチ16に動力が供給されないときには、付勢部材83の引張力で、ウインチ16を他方向に作動させて、ロック解除部材82をロック位置に移動可能にすることができる。そして、ウインチ16が故障した場合など、油圧モータ17から動力が供給されないときには、ウインチ16は他方向に作動されるので、フック81と被係止部材203との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0127】
また、ジブ係留装置201は、検出装置204を有している。検出装置204は、被係止部材203がフック81に係止されているか否かを検出する。検出装置204は、角度検出器85と、回動レバー86と、ばね87と、を有している。
【0128】
角度検出器85は、回動レバー86の支点ピン86aに設けられている。角度検出器85は、回動レバー86の回転角度を検出する。回動レバー86の回転角度から、回動レバー86が、後述する待機位置または係止位置に位置したことが検出される。
【0129】
回動レバー86は、フック81に、支点ピン86aを介して回動可能に取り付けられている。回動レバー86は、フック81の嵌合部81aに重なることで、嵌合部81aを塞ぐ待機位置(
図18に示す位置)と、嵌合部81aから離れることで、嵌合部81aを空ける作動位置(
図17に示す位置)との間で移動可能である。
【0130】
ばね87は、フック81と回動レバー86との間に配置されている。ばね87の一端部は、フック81から上方に突設された突出部81cに取り付けられ、ばね87の他端部は、回動レバー86の後端部に取り付けられている。ばね87は、回動レバー86を待機位置の方に付勢する。
図18に示す待機位置では、回動レバー86の前端部は、フック81に設けられたストッパ81dに当接する。これにより、回動レバー86の回動が規制され、回動レバー86の前端部がフック81から外れないようにされている。
【0131】
図17に示すように、フック81が係止位置に移動すると、回動レバー86が、ばね87の付勢力に抗して、作動位置に移動する。回動レバー86が作動位置に位置したことは、角度検出器85により検出される。一方、
図18に示すように、フック81が解除位置に移動すると、回動レバー86が、ばね20の付勢力で、待機位置に移動する。回動レバー86が待機位置に位置したことは、角度検出器85により検出される。
【0132】
また、ジブ係留装置201は、駆動機構210を有している。駆動機構210は、折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する際に、タワー34が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされた状態で、垂下したジブ35をタワー34に引き寄せるものである。また、駆動機構210は、タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する際に、タワー34が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされた状態で、タワー34に引き寄せられているジブ35をタワー34から離隔させるものである。
【0133】
駆動機構210は、係合部材88と、移動手段89と、を有している。係合部材88は、タワー34に設けられている。係合部材88は、長尺であって、被係止部材203に係合可能な係合部(フック)88aを先端部に有している。係合部88aは、被係止部材203の下方から被係止部材203に係合可能である。なお、係合部材88において係合部88aが設けられる部分は、先端部に限定されない。
【0134】
移動手段89は、タワー34の腹面側部分に設けられている。移動手段89は、係合部材88の係合部88aを、タワー34の腹面に近接した第1の位置(
図13、
図14参照)と、タワー34から離隔した第2の位置(
図15参照)との間で移動させる。また、移動手段89は、係合部材88の係合部88aを、第2の位置(
図15参照)と、第3の位置(
図16参照)との間で移動させる。ここで、第3の位置は、タワー34から離隔し、且つ、第2の位置(
図15参照)に対して第1の位置(
図14参照)とは反対側に位置している。
【0135】
係合部材88および移動手段89は、
図17~
図19の紙面に直交する方向におけるタワー34の両端部にそれぞれ設けられている。被係止部材203は、
図17~
図19の紙面に直交する方向に延びており、両端部がジブ35の両側面から突出している。なお、係合部材88および移動手段89は、
図17~
図19の紙面に直交する方向におけるタワー34の中央部に1組だけ設けられていてもよい。
【0136】
移動手段89は、ガイド部材91と、リンク部材92と、移動部材93(
図13~
図16参照)と、を有する。ガイド部材91は、タワー34の腹面に沿った長尺の部材である。ガイド部材91には、係合部材88が回動自在かつタワー34の長手方向に移動自在に係合している。
【0137】
ガイド部材91には、ガイド溝91aと、延長溝91bとが形成されている。延長溝91bは、ガイド溝91aに連続している。ガイド溝91aと延長溝91bのどちらかには、係合部材88の基端部が回動自在に係合している。ガイド溝91aは、タワー34の長手方向に移動自在に係合部材88をガイドする。
【0138】
延長溝91bは、ガイド溝91a側の端よりもガイド溝91aとは反対側の端の方がタワー34の背面側に配置されるように形成されている。
【0139】
なお、係合部材88においてガイド溝91aや延長溝91bに係合する部分は、基端部に限定されない。また、ガイド溝91aおよび延長溝91bの代わりに、レール等で係合部材88をガイドしてもよい。
【0140】
リンク部材(回動制限手段)92は、係合部材88の回動を制限する。リンク部材92の一端部は、タワー34の腹面側部分に設けられたブラケット84に支点ピン84aで回動自在に連結されている。なお、上述したフック81も、ブラケット84に支点ピン84aで回動自在に連結されている。リンク部材92の他端部は、係合部材88の中間部にピン88bで回動自在に連結されている。なお、係合部材88においてリンク部材92の他端部が連結される部分は、中間部に限定されない。また、ブラケット84はガイド部材91と一体になっていてもよい。
【0141】
図13~
図16に示すように、移動部材93は、タワー34の長手方向に沿って配置されたシリンダである。本実施形態において、移動部材93は油圧シリンダであるが、電動シリンダであってもよい。移動部材93のシリンダロッドの先端クレビスは、ガイド溝91aを貫通するピン94によって係合部材88の基端部に連結されている(
図17~
図19参照)。
図13~
図16の紙面手前側に配置された移動部材93と、
図13~
図16の紙面奥側に配置された移動部材93とは、同期して駆動される。
【0142】
本実施形態では、
図13、
図14に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを最も収縮させると、係合部材88の係合部88aが第1の位置に位置する。また、
図15に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを設定長さまで伸長させると、係合部材88の基端部が延長溝91bのガイド溝91a側の端に位置し、係合部材88の係合部88aが第2の位置に位置する。
【0143】
また、
図16に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを最も伸長させると、係合部材88の基端部が延長溝91bのガイド溝91aとは反対側の端に位置し、係合部材88の係合部88aが第3の位置に位置する。
【0144】
タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、係合部材88の係合部88aを第2の位置から第1の位置に移動させることで、垂下したジブ35をタワー34に引き寄せることができる。また、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させることで、タワー34に引き寄せられているジブ35をタワー34から離隔させることができる。
【0145】
なお、移動部材93には、シリンダロッドの伸長作動を制御する保持弁(図示せず)が取り付けられている。よって、例えば移動部材93の駆動用配管(図示せず)が損傷した場合には、シリンダロッドの伸長作動が阻止される。これにより、非常時にシリンダロッドが不要に伸長するのが防止される。
【0146】
ジブ係留装置201の油圧回路図である
図20に示すように、コントローラ7には、角度検出器85からの信号が入力される。コントローラ7は、角度検出器85からの信号に基づいて、被係止部材203がフック81に係止されているか否かを判定する。
【0147】
コントローラ7は、被係止部材203がフック81に係止されている場合(
図17参照)に、方向切換弁6を第1位置6aに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させる。これにより、ロック解除部材82がロック解除位置に移動する。一方、コントローラ7は、被係止部材203がフック81に係止されていない場合(
図18参照)に、方向切換弁6を第2位置6bに切り換えることで、ウインチ16を一方向に作動させない。これにより、ロック解除部材82は、付勢部材83の付勢力でロック位置に移動可能になる。
【0148】
このように、被係止部材203がフック81に係止されている場合にのみ、ロック解除部材82をロック解除位置に移動させて、フック81と被係止部材203との係止状態を解除することができる。また、被係止部材203がフック81に係止されていない場合に、付勢部材83の付勢力によってロック解除部材82をロック位置に移動可能にすることができる。
【0149】
また、ジブ係留装置201は、方向切換弁211を有している。方向切換弁211は、油圧ポンプ5と方向切換弁6との間に配置されている。方向切換弁211は、移動部材93の動作を切り換える。
【0150】
方向切換弁211は、収縮位置211aと、中立位置211bと、伸長位置211cとの間で切り換え可能である。収縮位置211aでは、油圧ポンプ5からの作動油が移動部材93のロッド側に供給される。これにより、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが収縮される。中立位置211bでは、油圧ポンプ5からの作動油が移動部材93に供給されず、油圧モータ17に供給される。伸長位置211cでは、油圧ポンプ5からの作動油が移動部材93のボトム側に供給される。これにより、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが伸長される。
【0151】
また、ジブ係留装置201は、ジブ引寄スイッチ212と、ジブ振出スイッチ213と、を有している。ジブ引寄スイッチ212およびジブ振出スイッチ213は、運転室33に設けられており、タワークレーン30を操縦するオペレータ(作業者)により操作される。
【0152】
ジブ引寄スイッチ212は、オペレータの操作で、被係止部材203にフック81を係止させる指令を出力する。コントローラ7は、ジブ引寄スイッチ212からの指令を受け付けて、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを収縮させるように、方向切換弁211を制御する。これにより、ジブ35がタワー34の方に引き寄せられる。詳細は後述する。
【0153】
ジブ振出スイッチ(出力装置)213は、オペレータの操作で、フック81と被係止部材203との係止状態を解除する指令を出力する。コントローラ7は、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けて、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを伸長させるように、方向切換弁211を制御する。これにより、ジブ35がタワー34から離隔される。詳細は後述する。また、コントローラ7は、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けて、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。これにより、フック81と被係止部材203との係止状態が解除される。
【0154】
ここで、コントローラ7は、被係止部材203がフック81に係止されている場合であって、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けた場合に、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。そして、コントローラ7は、被係止部材203がフック81に係止されている場合であって、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けていない場合に、ウインチ16を一方向に作動させる方向切換弁6の制御を行わない。よって、被係止部材203がフック81に係止されている場合であっても、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けていない場合には、ウインチ16が一方向に作動されない。これにより、フック81と被係止部材203との係止状態が意図せずに解除されないようにすることができる。
【0155】
ここで、コントローラ7は、角度検出器85からの信号に基づいて、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を制御し、フック81と被係止部材203との係止状態が解除されると、係合部材88の係合部88aを、第1の位置から第2の位置に移動させるように移動部材93を制御する。その後、ウインチ16を他方向に作動させるように、方向切換弁6を制御する。つまり、コントローラ7は、ジブ振出スイッチ213からの指令を受け付けて、まず、ウインチ16を一方向に作動させるように、方向切換弁6を第1位置6aに切り換える。そして、フック81と被係止部材3との係止状態が解除された後に、方向切換弁6を第2位置6bに切り換えるとともに、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを伸長させるように、方向切換弁211を中立位置211bから伸長位置211cに切り換える。そして、係合部材88の係合部88aが第2の位置に移動した後に、方向切換弁211を中立位置211bに切り換える。これにより、ウインチ16は他方向に作動する。
【0156】
タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、タワー34に引き寄せられているジブ35をタワー34から離隔させる際に、フック81と被係止部材203との係止状態を解除する前に、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させると、係合部88aが被係止部材203から離隔する。この状態で、フック81と被係止部材203との係止状態を解除すると、ジブ35が勢いよく振り出され、係合部88aに被係止部材203がぶつかって係合部88aを損傷させるおそれがある。そこで、フック81と被係止部材203との係止状態を解除した後に、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させることで、ジブ35を緩やかに垂下した状態にすることができる。
【0157】
なお、タワー34およびジブ35の長さを変更した際に取り付け位置を変更する必要性や、輸送性を考慮して、ガイド部材91、ブラケット84、および、移動部材93の各々をタワー34のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。被係止部材203も同様に、ジブ35のメインパイプにUボルト等で着脱可能に取り付けるのが好ましい。
【0158】
上記の構成において、折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する際には、
図12に示すように、タワー34が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされる。この状態で、
図16に示すように、係合部材88の係合部88aが第1の位置から第3の位置に移動される。その後、ジブ35が垂下される。そして、
図15に示すように、係合部材88の係合部88aが第2の位置に移動されて、被係止部材203に係合部88aが係合される。その後、
図14に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが収縮されていくと、垂下したジブ35がタワー34の方に引き寄せられていく。
【0159】
被係止部材203がフック81に接近すると、フック81のガイド部81bに被係止部材203が当接する。そして、被係止部材203がガイド部81bを摺動しながら、嵌合部81aの方に案内されていく。そして、
図17に示すように、嵌合部81aに被係止部材203が嵌ることで、被係止部材203がフック81で係止される。
【0160】
そして、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが最も収縮されると、係合部材88の係合部88aが第1の位置に位置し、ジブ35がタワー34に係留される。
【0161】
一方、タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する際には、
図17に示すように、被係止部材203がフック81で係止された状態で、タワー34が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされる。この状態で、
図18に示すように、ロープ14が引っ張られることで、係合部材88の係合部88aから被係止部材203が外れる。
【0162】
その後、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを伸長させることで、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させる。すると、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔していく。そして、
図15に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが設定長さまで伸長されると、係合部材88の係合部88aが第2の位置に位置し、ジブ35が垂下する。
【0163】
その後、
図16に示すように、係合部材88の係合部88aが第3の位置に移動されると、係合部材88の係合部88aと被係止部材203との係合が解除される。
【0164】
(ジブ係留装置の動作)
次に、ジブ係留装置201の動作について、
図12~
図20を参照しつつ説明する。
【0165】
(係留ステップ)
折り畳まれた状態のジブ35をタワー34に係留する場合、まず、
図12に示すように、ブーム起伏ロープ51を繰り出すことで、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0166】
次に、
図16に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを最も伸長させることで、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第3の位置に移動させる。そして、ジブ起伏ロープ48を繰り出して、ジブ35を鉛直方向に垂下した状態にする。
【0167】
このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられ、方向切換弁211は中立位置211bに切り換えられている(
図20参照)。また、フック81は係止位置に位置し、ロック解除部材82はロック位置に位置し、回動レバー86は待機位置に位置している(
図19参照)。運転室33内では、非係止ランプ22が点灯し、係止ランプ21が消灯している。
【0168】
次に、ジブ引寄スイッチ212が操作されると、コントローラ7により方向切換弁211が収縮位置211aに切り換えられる。これにより、
図15に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを設定長さまで収縮させることで、係合部材88の係合部88aを第3の位置から第2の位置に移動させ、係合部88aと被係止部材203とを係合させる。
【0169】
その後、
図19に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを収縮させていくことで、垂下したジブ35をタワー34の方に引き寄せる。
【0170】
被係止部材203がフック81に接近すると、フック81のガイド部81bに被係止部材203が当接する。そして、被係止部材203がガイド部81bを摺動しながら、嵌合部81aの方に案内される。そして、
図17に示すように、嵌合部81aに被係止部材203が嵌ることで、被係止部材203がフック81に係止される。
【0171】
そして、
図13に示すように、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを最も収縮させることで、係合部材88の係合部88aを第1の位置に移動させる。これにより、ジブ35がタワー34に係留される。
【0172】
被係止部材203が嵌合部81aに嵌ると、回動レバー86が作動位置に移動し、これが角度検出器85で検出される。その結果、方向切換弁211が中立位置211bに切り換えられる。また、非係止ランプ22が消灯し、係止ランプ21が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材203がフック81に係止されていることを認識することができる。
【0173】
次に、ブーム起伏ロープ51を繰り出すことで、ストラット37が着地するまでタワー34を倒伏させる。このとき、ジブ35がタワー34に係留されているので、ジブ35がふらついて不安定になることがない。
【0174】
なお、ジブ35をタワー34に係留する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、ロープ14をウインチ16から取り外すかロープ14を切断するかして、人力でロープ14を繰り出すことで、ロック解除部材82をロック位置に移動可能にし、ひいては、被係止部材203をフック81に係止させることができる。
【0175】
(解放ステップ)
タワー34に係留されたジブ35をタワー34から解放する場合、被係止部材203をフック81で係止した状態で、
図12に示すように、ブーム起伏ロープ51を巻き取ることで、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー34の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0176】
このとき、方向切換弁6は第2位置6bに切り換えられ、方向切換弁211は中立位置211bに切り換えられている(
図20参照)。また、フック81は係止位置に位置し、ロック解除部材82はロック位置に位置し、回動レバー86は作動位置に位置している(
図17参照)。運転室33内では、係止ランプ21が点灯し、非係止ランプ22が消灯している。
【0177】
次に、ジブ振出スイッチ213が操作されると、コントローラ7により方向切換弁6が第1位置6aに切り換えられる。その結果、ウインチ16が一方向に回転される。すると、
図18に示すように、ロック解除部材82がロック解除位置に移動するとともに、フック81が解除位置に移動し、被係止部材203の係止状態が解除される。
【0178】
被係止部材203の係止状態が解除されると、回動レバー86が待機位置に移動し、これが角度検出器85で検出される。その結果、係止ランプ21が消灯し、非係止ランプ22が点灯する。これにより、オペレータは、被係止部材203がフック81に係止されていないことを認識することができる。
【0179】
その後、コントローラ7により、方向切換弁6が第2位置6bに切り換えられるとともに、方向切換弁211が伸長位置211cに切り換えられる。その結果、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さが伸長される。すると、
図15に示すように、係合部材88の係合部88aが第2の位置に移動する。これにより、タワー34に引き寄せられていたジブ35がタワー34から離隔する。移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さがさらに伸長されると、
図16に示すように、係合部材88の係合部88aが第3の位置に移動し、係合部88aと被係止部材203との係合状態が解除される。
【0180】
その後、コントローラ7により方向切換弁211が中立位置211bに切り換えられる。その結果、ばね70の引張力によってウインチ16が他方向に作動され、ロック解除部材82がロック位置に移動すると同時に、フック81が係止位置に移動する。そして、ジブ起伏ロープ48を巻き取ることで、ジブ35を水平かそれ以上に起こす。その後、移動部材93のシリンダロッドの伸縮長さを最も収縮させることで、係合部材88の係合部88aを第3の位置から第1の位置に移動させる。そして、タワー34を起伏させて作業姿勢にする。
【0181】
なお、ジブ35をタワー34から解放する際に、ウインチ16が作動不能となった場合には、人力でロープ14を引っ張ることで、フック81と被係止部材203との係止状態を解除することができる。
【0182】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るジブ係留装置201によると、係合部材88の係合部88aが、第1の位置と第2の位置との間で移動される。よって、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、係合部材88の係合部88aを第2の位置から第1の位置に移動させることで、垂下したジブ35をタワー34に引き寄せることができる。また、タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させることで、タワー34に引き寄せられているジブ35をタワー34から離隔させることができる。
【0183】
また、ウインチ16が一方向に作動され、フック81と被係止部材203との係止状態が解除されると、係合部材88の係合部88aが第1の位置から第2の位置に移動される。タワー34を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、タワー34に引き寄せられているジブ35をタワー34から離隔させる際に、フック81と被係止部材203との係止状態を解除する前に、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させると、係合部88aが被係止部材203から離隔する。この状態で、フック81と被係止部材203との係止状態を解除すると、ジブ35が勢いよく振り出され、係合部88aに被係止部材203がぶつかって係合部88aを損傷させるおそれがある。そこで、フック81と被係止部材203との係止状態を解除した後に、係合部材88の係合部88aを第1の位置から第2の位置に移動させることで、ジブ35を緩やかに垂下した状態にすることができる。
【0184】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0185】
例えば、ウインチ16を作動させるモータは、油圧モータ17でなく電動モータであってもよい。。
【0186】
また、油圧モータ17とウインチ16との間にカムクラッチを設けて、油圧モータ17からの動力でウインチ16が一方向のみに作動するように構成されていてもよい。
【0187】
また、タワー34の傾斜角度を検出する検出手段を設けて、これの検出信号をコントローラ7に入力するように構成し、コントローラ7は、タワー34の傾斜角度が既定値以上になった場合に、係止解除スイッチ9(ジブ振出スイッチ213)からの指令を受け付けるようにしてもよい。この場合、タワー34が既定値の角度に達していない場合に、被係止部材3,103,203の係止状態が意図せずに解除されて、ジブ35が勢いよく振り出されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0188】
1,101,201 ジブ係留装置
2,102,202 係止装置
3,103,203 被係止部材
4,104,204 検出装置
5 油圧ポンプ
6 方向切換弁(切換装置)
7 コントローラ
8 圧力調整弁
9 係止解除スイッチ(出力装置)
11 ラッチ(係止部材)
12 ロック解除部材
13 付勢部材(引張部材)
14 ロープ
15 支持ブラケット
16 ウインチ
17 油圧モータ(モータ)
18 リミットスイッチ
19 回動レバー
20 ばね
21 係止ランプ
22 非係止ランプ
25 ジブ側ブラケット
30 タワークレーン
31 下部走行体
32 上部旋回体
33 運転室
34 タワー(ブーム)
35 ジブ
36 ガントリ
37 ストラット
38 下部スプレッダ
39 カウンタウエイト
40 バックストップ装置
41 ジブポイントシーブ
44 ジブガイライン
45 ジブ起伏用下部スプレッダ
46 ストラットガイライン
47 ジブ起伏用上部スプレッダ
48 ジブ起伏ロープ
49 ブームガイライン
50 上部スプレッダ
51 ブーム起伏ロープ
52 ブームフットピン
61 ロックピン(係止部材)
62 ロック解除部材
63 付勢部材
65 支持ブラケット
66 タワー側ブラケット
67 ロックフレーム
68 ピンブロック部材
69 連結部材
70 ばね(連結部材付勢部材、引張部材)
71 連結部材支持ブラケット
72 連結ピン
75 軸支持ブラケット
76 ジブ側ブラケット
77 第1リミットスイッチ
78 第2リミットスイッチ
79 ストッパ
81 フック(係止部材)
82 ロック解除部材
83 付勢部材(引張部材)
84 ブラケット
85 角度検出器
86 回動レバー
87 ばね
88 係合部材
88a 係合部
89 移動手段
91 ガイド部材
92 リンク部材(回動制限手段)
93 移動部材
94 ピン
210 駆動機構
211 方向切換弁
212 ジブ引寄スイッチ
213 ジブ振出スイッチ(出力装置)