(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178003
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】推定システムおよび推定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221125BHJP
G06Q 90/00 20060101ALI20221125BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20221125BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20221125BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20221125BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q90/00
G16Y10/35
G16Y20/30
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084480
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 将人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
(72)【発明者】
【氏名】南波 和樹
(72)【発明者】
【氏名】茂森 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】飯村 洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 広晃
(72)【発明者】
【氏名】浜場 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 潤
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
5L049DD01
(57)【要約】
【課題】比較的長い将来期間(例えば数か月先)までにわたり比較的短い時間(例えば、15分または30分)単位での値(推定対象の値)を推定する。
【解決手段】推定システムが、過去の期間における推定対象の時系列の値から、推定対象の値の推移の複数のパターンを生成する。推定システムが、生成された複数のパターンと、過去の期間における因子の時系列の値とを基に、推移パターンと、因子の値および過去(または将来)の時点での推移パターンとの依存関係を特定し、特定された依存関係に従うモデルを同定する。推定システムが、推定モデルに将来の期間における因子の時系列の値を入力することで、少なくとも一つの推移パターンを用いて、推定対象の当該将来の期間における値の時系列を特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの入力を受け付けるインターフェース装置と、
標本用推定対象データ、標本用因子データおよび推定用因子データが格納される記憶装置と、
前記インターフェース装置および前記記憶装置に接続されたプロセッサと
を備え、
前記インターフェース装置が受け付けるデータは、前記標本用推定対象データおよび標本用因子データを含み、
前記標本用推定対象データは、過去の期間における推定対象の時系列の値を表すデータであり、
前記標本用因子データは、前記推定対象の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の因子の各々について前記過去の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータであり、
前記推定用因子データは、前記一つ以上の因子の各々について将来の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータであり、
前記プロセッサが、
前記標本用推定対象データから、それぞれが推定対象の値の推移のパターンである複数の推定対象推移パターンを生成し、
前記標本用因子データおよび前記複数の推定対象推移パターンを基に、下記(X)と(Y)との依存関係であるパターン因子依存関係を特定し、
(X)推定対象推移パターン、
(Y)前記一つ以上の因子の値、および、過去または将来の時点での推定対象推移パターン、
前記パターン因子依存関係に従うモデルであり前記一つ以上の因子の値と過去または将来の時点での推定対象推移パターンとを入力とし推定対象推移パターンを出力とするモデルである推定モデルを同定し、
前記推定モデルに前記推定用因子データを入力することで、前記複数の推定対象推移パターンの少なくとも一つを用いて、前記推定対象の前記将来の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである推定結果データを生成する、
推定システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記標本用因子データおよび前記推定用因子データのうち少なくとも前記推定用因子データを前記推定モデルに入力することで、前記推定対象の前記将来の期間を含む所定の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである推定結果データを生成し、
前記推定結果データに含まれる前記一つ以上のデータセットは、前記推定モデルを用いて前記プロセッサにより生成された一つまたは複数のデータセットのうち、推定対象についての観測値の時系列との差が閾値以下のデータセットである、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
前記推定結果データに含まれる前記一つ以上のデータセットの各々について、前記将来の期間における一部の時点に関し、当該データセットにおける値と所定の方法で予測された値を一つ以上含む予測データセットとの差が閾値以下である、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項4】
前記推定結果データにおける少なくとも一つのデータセットに関し、前記将来の期間における少なくとも一部の時点について、当該データセットにおける値と所定の方法で予測された値との差である第一の差がある場合、前記プロセッサが、前記同定された推定モデルの変更として当該第一の差を縮める変更を行う、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項5】
前記第一の差に代えてまたは加えて、前記推定結果データにおける少なくとも一つのデータセットに関し、前記将来の期間における少なくとも一部の時点について、当該データセットにおける値と前記標本用推定対象データから特定される値との差である第二の差がある場合、前記同定された推定モデルの変更として、前記第一の差に代えてまたは加えて前記第二の差を縮める変更を行う、
請求項4に記載の推定システム。
【請求項6】
前記インターフェース装置が受け付けるデータは、標本用要素データを含み、
前記記憶装置が、前記標本用要素データおよび推定用要素データを格納し、
前記標本用要素データは、前記少なくとも一つの因子の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の要素の各々について前記過去の期間における当該要素の時系列の値を表すデータセットを含んだデータであり、
前記推定用要素データは、前記一つ以上の要素の各々について前記将来の期間における当該要素の時系列の値を表すデータセットを含んだデータであり、
前記プロセッサが、
前記一つ以上の因子のうちの少なくとも一つの因子について、前記標本用因子データにおけるデータセットから、それぞれが因子値の推移のパターンである複数の因子推移パターンを生成し、
前記標本用要素データおよび前記複数の因子推移パターンを基に、下記(x)と(y)との依存関係である因子要素依存関係を特定し、
(x)因子推移パターン、
(y)前記一つ以上の要素の値および過去または将来の時点での因子推移パターン、
前記因子要素依存関係に従うモデルであり前記一つ以上の要素の値と過去または将来の因子推移パターンとを入力とし因子推移パターンを出力とするモデルである因子モデルを同定し、
前記因子モデルに前記推定用要素データを入力することで、前記複数の因子推移パターンの少なくとも一つを用いて、前記少なくとも一つの因子の前記将来の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである前記推定用因子データを出力する、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項7】
前記推定対象は、電力の市場価格であり、
前記一つ以上の因子は、気象および電力需要量のうちの少なくとも一つである、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項8】
前記複数の推定対象推移パターンの各々が表す推移の期間は、前記将来の期間よりも短く、分、時間、日または週のオーダーであり、
前記推定結果データが、発電機の燃料の量であり前記将来の期間分の量を前記発電機の運用計画の少なくとも一部として決定することに利用される、
請求項7に記載の推定システム。
【請求項9】
コンピュータが、過去の期間における推定対象の時系列の値を表すデータである標本用推定対象データから、それぞれが推定対象の値の推移のパターンである複数の推定対象推移パターンを生成し、
コンピュータが、前記推定対象の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の因子の各々について前記過去の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータである標本用因子データ、および、前記複数の推定対象推移パターンを基に、下記(X)と(Y)との依存関係であるパターン因子依存関係を特定し、
(X)推定対象推移パターン、
(Y)前記一つ以上の因子の値、および、過去または将来の時点での推定対象推移パターン、
コンピュータが、前記パターン因子依存関係に従うモデルであり前記一つ以上の因子の値と過去または将来の時点での推定対象推移パターンとを入力とし推定対象推移パターンを出力とするモデルである推定モデルを同定し、
コンピュータが、前記一つ以上の因子の各々について将来の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータである推定用因子データを前記推定モデルに入力することで、前記複数の推定対象推移パターンの少なくとも一つを用いて、前記推定対象の前記将来の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである推定結果データを生成する、
推定方法。
【請求項10】
請求項1に記載の推定システムと、
当該推定システムから出力された推定結果データを基に、前記将来の期間における発電機の燃料の量を決定する計画管理装置と
を備える発電機運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、推定システムおよび推定方法に関し、例えば、電力に関わる将来の物理量や指標値を算出する推定システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電力事業やガス事業などのエネルギー事業分野や、通信事業分野や、タクシーや配送業などの運送事業分野などでは、需要量等の各種の指標値の所定の時間先までの推定値に基づいて、消費者の需要に合わせた設備稼働や資源配分が計画され実行される。
【0003】
例えば電力需要量や電力取引価格は気温の影響を受ける事が知られており、この場合は外気温を説明変数(因子の一例)として電力需要量や電力取引価格の推定モデルが同定される。同定された推定モデルを用いて所定の時間先までの推定値が出力される。
【0004】
特許文献1に開示の方法は、利用者から予測モデル情報の入力を受け、原油FOB価格およびJCC価格の履歴に基づいて回帰分析を行い、予測対象となる時期tの指定を受け付け、予測モデルに適用して、時期tにおけるJCC価格の予測値を算出する。
【0005】
特許文献2に開示の方法は、需要想定データ、電源データおよび市場データに基づいて発電計画を作成することにより発電コストを算出し、発電コストから電力市場への入札量と入札価格を決定し、入札量と入札価格に基づき連系線の託送可能量を考慮したアルゴリズムにより取引量と取引価格を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-048235号公報
【特許文献2】特開2006-331229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、発電機の燃料の確保には、燃料の輸送に要する期間またはその他の理由から、比較的長い将来期間(例えば、数か月といった月オーダーの期間)を要する地域(例えば国)またはケースがあり得る。また、電力市場価格(取引価格)は、比較的短い時間(例えば、15分や30分といった分オーダー)の単位で管理されている。これらの理由から、比較的長い将来期間までにわたり比較的短い時間単位での推定(電力市場価格の推定)が重要となる。
【0008】
特許文献1は、月次での原油FOB価格およびJCC価格を用いた数か月先にわたる月次の推定値を算出する方法を開示しているが、上記比較的短い時間単位での推定値を算出する方法を開示も示唆もしていない。特許文献2は、気象データを用いて電力市場価格を予測する方法を開示しているが、数か月先といった将来期間までにわたる気象の予測値を低偏差で算出することは難しい。従って、特許文献1および2に開示の方法では、数か月先といった将来期間までにわたり短時間単位で電力市場価格を精度良く推定することは困難である。
【0009】
以上の課題は、電力市場価格以外の推定対象についてもあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
推定システムが、標本用推定対象データ、標本用因子データおよび推定用因子データを記憶する。標本用推定対象データは、過去の期間における推定対象の時系列の値を表すデータである。標本用因子データは、推定対象の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の因子の各々について過去の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータである。推定用因子データは、一つ以上の因子の各々について将来の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータである。推定システムが、標本用推定対象データから、それぞれが推定対象の値の推移のパターンである複数の推定対象推移パターンを生成する。推定システムが、標本用因子データおよび複数の推定対象推移パターンを基に、パターン因子依存関係(推定対象推移パターンと、一つ以上の因子の値および過去または将来の時点での推定対象推移パターンとの依存関係)を特定し、特定されたパターン因子依存関係に従う推定モデル(一つ以上の因子の値と過去または将来の時点での推定対象推移パターンとを入力とし推定対象推移パターンを出力とするモデル)を同定する。推定システムが、推定モデルに推定用因子データを入力することで、複数の推定対象推移パターンの少なくとも一つを用いて、推定対象の将来の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである推定結果データを生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的長い将来期間(例えば数か月先)までにわたり比較的短い時間(例えば、15分または30分)単位での値(推定対象の値)を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施の形態によるデータ管理システムの構成例を示す図である。
【
図3】推定システムのデータフローの一例を示す図である。
【
図4】推定システムが行う処理のフローの一例を示す図である。
【
図5A】パターン分類部のデータフローの一例を示す図である。
【
図6A】パターン遷移モデル同定部のデータフローの一例を示す図である。
【
図7A】推定データ生成部のデータフローの一例を示す図である。
【
図8A】比較例に従う方法によって生成された時系列データの一例を示す図である。
【
図8B】実施の形態に記載の方法によって生成された時系列データの一例を示す図である。
【
図9A】第二の実施の形態による推定データ生成部のデータフローを示す図である。
【
図9B】時系列データセットの選択の一例の説明図である。
【
図10A】第三の実施の形態による推定データ生成部のデータフローを示す図である。
【
図10B】時系列データセットの抽出の一例の説明図である。
【
図11】第四の実施の形態によるパターン遷移モデル同定部のデータフローを示す図である。
【
図12】第五の実施の形態による推定システムのデータフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボードおよびポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0015】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の永続記憶デバイスである。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)であり、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)である。
【0016】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0017】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスである。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0018】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記憶媒体(例えば非一時的な記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0019】
また、以下の説明では、「データセット」とは、アプリケーションプログラムのようなプログラムから見た一つの論理的な電子データの塊であり、例えば、レコード、ファイル、キーバリューペアおよびタプル等のうちのいずれでもよい。
【0020】
以下図面を参照して、本発明の幾つかの実施の形態を詳述する。
(1)第一の実施の形態
(1-1)本実施の形態によるデータ管理システムの構成
【0021】
図1において、符号1は、全体として本実施の形態によるデータ管理システムを示す。データ管理システム1は、例えば電力事業分野に適用される場合、過去の電力需要の実績量に基づいて将来の所定期間の電力の需要量、発電量、市場市場価格などの値を推定し、推定された結果に基づいて、発電機の運転計画の策定と実行、そして、他の電気事業者からの電力の調達取引計画の策定や実行など電力の需給管理を可能にするものである。
【0022】
データ管理システム1は、推定システム12(例えば、推定演算装置2およびデータ管理装置3)、計画管理装置5、情報入出力端末4、データ観測装置6、データ配信装置7および制御対象装置9から構成される。また通信経路8は、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)のような通信ネットワークであり、データ管理システム1を構成する各種装置および端末を互いに通信可能に接続する通信経路である。
【0023】
データ管理装置3は、推定対象の推定値を算出するために使用する推定対象や因子の標本用データ、および因子の推定用データを記憶する。
【0024】
推定対象の標本用データは、時間推移に伴い観測された推定対象の過去の観測値の時系列を表す標本用推定対象データを少なくとも含んでよい。また因子の標本用データは、推定対象の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の因子の各々の過去の観測値の時系列を表すデータセットを含んだデータである標本用因子データを少なくとも含んでよい。また、因子の推定用データは、標本用因子データに含まれる値に対応した因子毎の値の時系列を表すデータセットを含んだデータである推定用データを少なくとも含んでよい。
【0025】
推定対象は、例えば、電力、ガス、水道などのエネルギー消費量、あるいは太陽光発電や風力発電などのエネルギーの発電出力量、あるいは卸取引所で取引されるエネルギーの取引量や市場価格などでよい。また電力事業分野以外では、推定対象は、通信基地局などで計測される通信量、自動車などの移動体の位置情報履歴などでよい。またこれらの標本用データは、計測器単位のデータ、あるいは複数の計測器の合計としてのデータでよい。
【0026】
また、因子は、例えば、気温、湿度、日射量、風速、気圧などの気象関連項目、原油や天然ガスなどの取引量や市場価格などの燃料関連項目、送電線の送電容量などの送電線関連項目、発電機の運転もしくは保守スケジュールなどの発電機稼働状況に関連する項目、年月日、曜日、任意に設定した日の種別を示すフラグ値などの暦日関連項目、台風やイベントなどの突発事象の発生有無、エネルギーの消費者数、産業動向や景況指数などの経済状況に関連する項目、特急列車の乗車率、乗車客数、予約席数、あるいは道路交通状況などの人や移動体の移動状況に関連する項目、あるいは通信基地局に接続する通信端末数などの項目でよい。また一部の因子は、上記の推定対象でもよく、その場合、因子値は、過去の観測値そのもの、あるいは推定対象の推定対象日時における推定値自体などでもよい。
【0027】
データ管理装置3は、情報入出力端末4を介して予め設定した過去日時から最新の観測日時までの標本用データを記憶する。またデータ管理装置3は、他装置からのデータ取得要求に応じて、標本用データの検索および送信を行う。
【0028】
推定演算装置2は、データ管理装置3に記憶されたデータを用いて推定を行う。推定演算装置2の詳細は、後述する。
【0029】
計画管理装置5は、推定演算装置2が出力した推定結果データを基に、所定の目標を達成するための物理的な設備(制御対象装置9)の運用計画の作成と実行を行う。運用計画は、物理的な設備のために調達される燃料の量の決定を含んでもよいし、物理的な設備の運転計画を含んでよい。ここで物理的な設備の運転計画とは、エネルギー分野においては、例えば、推定した将来のエネルギー需要値、発電出力、市場価格に基づいた発電機の運転計画でよい。具体的には、運転計画は、発電機の起動台数およびそれら発電機の出力配分の計画や、ガス導管や水道管に流すガスや水の流量や圧力の配分計画でよい。あるいはデマンドレスポンスと呼ばれる電力需要の調整制御においては、運転計画は、デマンドレスポンスに参加している電力消費者もしくは電力消費者の需要設備の需要調整量配分の計画でよい。また通信分野においては、運転計画は、例えば、通信基地局の収容容量を超えないように、各通信基地局に接続する通信端末数の制御計画でよい。また運送分野においては、運転計画は、例えば、推定した利用者数を充足させることが出来るようなタクシーの配車計画でよい。
【0030】
なお設備の運用計画は、計画管理装置5を利用する主体者による直接的な実行に限定されるものではなく、間接的に実現される形態で実現されてもよい。間接的な設備の運用(例えば運転)とは、電力分野においては、例えば、直接的な相対取引契約や取引所を介した取引契約に基づいた他者による物理的な設備の運用でよい。この場合、取引契約の実行計画が設備の運用計画に相当する。
【0031】
情報入出力端末4は、典型的にはラップトップ型のパーソナルコンピュータやスマートフォンのような計算機であり、推定演算装置2、データ管理装置3および計画管理装置5へのデータ入力や、これら装置が記憶するデータまたは出力するデータの表示を行う。データ観測装置6は、標本用推定対象データ、標本用因子データ、および推定用因子データを所定の時間間隔で定期的に計測もしくは収集し、データ配信装置7またはデータ管理装置3に送信する。データ配信装置7は、データ観測装置6から受信したデータを記憶し、データ管理装置3、推定演算装置2またはその両方に送信する。
(1-2)装置内部構成
【0032】
【0033】
推定システム12は、推定演算装置2とデータ管理装置3とから構成される。なお、「推定システム」は、推定演算装置2やデータ管理装置3のような物理的な計算機を備えたシステムに代えて、他種のシステム、例えば、物理的な計算リソース群(例えば、クラウド基盤)上に実現されたシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)でもよい。
【0034】
データ管理装置3は、データ管理装置3の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)31、入力装置32、出力装置33、通信装置34および記憶装置35から構成される。データ管理装置3は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータまたはハンドヘルドコンピュータなどの情報処理装置である。
【0035】
入力装置32は、キーボードまたはマウスから構成され、出力装置33は、ディスプレイまたはプリンタから構成される。
【0036】
通信装置34は、無線LANまたは有線LANに接続するためのNIC(Network Interface Card)を備えて構成される。通信装置34が例えばデータ観測装置6およびデータ配信装置7のうちの少なくとも一つからデータを受け付ける。受け付けたデータが、標本用推定対象データ351および標本用因子データ352を含む。受け付けたデータが、更に推定用因子データ353を含んでもよい。
【0037】
記憶装置35は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶媒体である。出力装置33を介して各処理部の出力結果や中間結果が適宜出力されてもよい。記憶装置35には、標本用推定対象データ351、標本用因子データ352および推定用因子データ353が格納される。
【0038】
標本用推定対象データ351は、過去の期間における推定対象の時系列の値を表すデータであり、具体的には、例えば、推定対象の過去の一つまたは複数の時点での観測値を含むデータである。推定対象の具体例は、上述の通りでよい。
【0039】
標本用因子データ352は、推定対象の値に影響を与える一つ以上の因子の各々について過去の期間における当該因子の値の時系列(例えば、一つまたは複数の時点での観測値や推定値)を表すデータセットを含んだデータである。因子の具体例は、上述の通りでよい。また、この段落で言う「観測値」または「推定値」が、標本用因子値の一例である。以下、適宜、「観測値」または「推定値」を「標本用因子値」と言うことがある。また、標本用推定対象データ351に関する「過去の期間」と、標本用因子データ352に関する「過去の期間」は、同じ期間でよい。例えば、標本用推定対象データ351に関する期間が、2020年1月1日~2020年12月31日であり、標本用因子データ352に関する期間が、2020年5月1日~2021年5月31日の場合、同じ期間としての「過去の期間」は、重複した期間である2020年5月1日~2020年12月31日でよい。
【0040】
推定用因子データ353は、上述の一つ以上の因子の各々について将来の期間における当該因子の時系列の値を表すデータセットを含んだデータであり、例えば、推定対象の推定値の算出において使用する各因子の入力値を含んだデータである。この段落で言う「入力値」が、推定用因子値の一例である。以下、適宜、「入力値」を「推定用因子値」と言うことがある。
【0041】
推定演算装置2は、推定演算装置2の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)21、入力装置22、出力装置23、通信装置24および記憶装置25から構成される。推定演算装置2は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータまたはハンドヘルドコンピュータなどの情報処理装置である。通信装置24および34のうちの少なくとも一つが、「インターフェース装置」の一例である。記憶装置25または35の少なくとも一つが、「記憶装置」の一例である。CPU21および31の少なくとも一つが「プロセッサ」の一例である。
【0042】
記憶装置25には、パターン分類部251、パターン遷移モデル同定部252および推定データ生成部253といった機能を実現するための各種コンピュータプログラムが格納されている。そのような各種コンピュータプログラムがCPU21により実行されることでパターン分類部251、パターン遷移モデル同定部252および推定データ生成部253が実現される。
【0043】
パターン分類部251は、標本用推定対象データ351を入力し、標本用推定対象データ351から複数の推移パターンを生成し(時間推移を推移パターンに分類し)出力する。具体的には、例えば、パターン分類部251は、標本用推定対象データ351を例えば24時間ごとなどの所定期間で区切った複数の時系列データ標本に分割し、時系列データ標本間の類似性を示す指標に基づいて複数の遷移パターンを生成する(時系列データ標本を複数の推移パターンのうちのいずれかの推移パターンに分類する)。パターン分類部251は、各推移パターンについて当該推移パターンを示す値と当該推移パターンの代表的な時系列データ標本(一つ以上の時系列データ標本に基づく時系列データの一例)とを含んだデータをパターン分類結果データ251C(
図5参照)として出力する。
【0044】
パターン遷移モデル同定部252は、パターン分類結果データ251Cと標本用因子データ352とを入力し、パターン遷移モデル252D(
図6参照)を出力する。例えば、パターン遷移モデル同定部252は、標本用因子データ352とパターン分類結果データ251Cとを基に、推移パターンの遷移のモデルをパターン遷移モデルとして同定する。具体的には、例えば、パターン遷移モデル同定部252は、パターン分類結果データ251Cに含まれるそれぞれの推移パターンを示す値(例えばパターン番号)と、過去(または将来)の時点での遷移パターンを示す値および標本用因子データ352が表す因子値との依存関係に従うモデル(一つ以上の因子の値と過去の時点での推移パターンとを入力とし推移パターンを出力とするモデル)を同定し、当該モデルをパターン遷移モデル252Dとして出力する。
【0045】
推定データ生成部253は、パターン遷移モデル252Dと推定用因子データ353とを入力し、推定結果データ254を出力する。具体的には、例えば、推定データ生成部253は、パターン遷移モデル252Dに推定用因子データ353を入力することで、推移パターンを示す値の時系列データを生成する。そして、推定データ生成部253は、パターン分類結果データ251Cに含まれる各パターンの代表的な時系列データ標本から、生成したパターンを示す値の時系列データを推定対象の値の時系列データに変換する。推定データ生成部253は、変換した時系列データを推定結果データ254として出力する。
【0046】
本実施の形態によれば、比較的長い将来期間(例えば数か月先)までにわたり比較的短い時間(例えば、15分または30分)単位での値(推定対象の値)を推定することができる。
(1-3)本実施の形態による推定システム12の全体の処理およびデータフロー
【0047】
図3および
図4を参照して、本実施の形態における推定システム12の処理およびデータフローについて説明する。なお、以下の説明では、制御対象装置9が発電機であり、推定システム12は、発電機の運用計画の少なくとも一部の作成(例えば、発電機の燃料として調達される量であり将来の期間分の量の決定)のためのシステムであるとする。また、以下の説明では、複数の推移パターンの各々が表す推移の期間は、上述の将来の期間よりも短く、分、時間、日または週のオーダーであるとする。また、推定対象は、電力の市場価格(取引価格)であり、一つ以上の因子は、気象および電力需要量のうちの少なくとも一つであるとする。つまり、本実施の形態による推定システム12は、比較的長い将来期間(例えば数か月先)までにわたり比較的短い時間(例えば、15分または30分)単位での電力市場価格を推定することができる。
【0048】
データ管理装置3は、例えば、データ観測装置6から標本用推定対象データ351および標本用因子データ352を受信して記憶する。また、データ管理装置3は、データ配信装置7から推定用因子データ353を受信し記憶する。
【0049】
推定演算装置2のパターン分類部251が、標本用推定対象データ351が時系列の観測値(電力市場価格)を例えば24時間ごとなどの所定期間で区切った複数の時系列データ標本に分割し、時系列データ標本間の類似性を示す指標に基づいて時系列データ標本を複数の推移パターンのいずれかの推移パターンに分類し、推移パターンを示す値と推移パターンの代表的な時系列データ標本とを含んだパターン分類結果データ251C(
図5参照)を出力する(
図4のS401)。
【0050】
次いで、パターン遷移モデル同定部252が、パターン分類結果データ251Cに含まれる時系列データ標本それぞれの推移パターンを示す値と標本用因子データ352が表す標本用因子値との関係の規則性と、時系列データ標本それぞれの推移パターンの経時的な遷移の規則性とに基づくモデルを同定し、当該モデルをパターン遷移モデル252Dとして出力する(
図4のS402)。
【0051】
そして、推定データ生成部253が、パターン遷移モデル252Dに推定用因子データ353を入力することで、パターンを示す値の時系列データを生成し、パターン分類結果データ251Cに含まれる各パターンの代表的な時系列データ標本から、生成したパターンを示す値の時系列を推定対象の値の時系列に変換する。推定データ生成部253が、変換した時系列の値を示すデータを推定結果データ254として出力する(
図4のS403)。
【0052】
その後、推定演算装置2は、出力された推定結果データ254を、計画管理装置5に送信する。計画管理装置5において、計画部51が、推定結果データ254を基に、制御対象装置9(発電機)の運用計画(例えば、発電機の燃料として調達される量であり将来の期間分の量、及び、当該燃料調達量の運用計画)を決定し、決定した計画に従う命令を制御対象装置9に送信したり、決定された燃料調達量を情報入出力端末4(または出力装置23(例えば表示装置))に表示したりする。
【0053】
以上の処理を以って、本実施形態におけるデータ推定処理が終了する。
【0054】
以降、
図5から
図7を用いて、各構成要素の詳細な実施の形態を説明する。
(1-4)各構成要素の詳細
(1-4-1)パターン分類部
【0055】
図5Aおよび
図5Bを参照して、本実施の形態におけるパターン分類部251のデータフローおよび処理動作を説明する。
【0056】
本実施の形態によるパターン分類部251は、標本用推定対象データ351が表す時間推移をいずれかの推移パターンに分類し、パターン分類部データ353Cとして出力する。具体的には、例えば、パターン分類部251は、標本化処理部251Aおよびパターン化処理部251Bを有する。
【0057】
標本化処理部251Aが、標本用推定対象データ351が表す時間推移の期間(過去の期間)を複数の期間で区切ることで、標本用推定対象データ351としての時系列データ(電力市場価格の時系列を表すデータ)を複数の時系列データ標本(第一の推定対象標本)に分割する。複数の期間の各々は、例えば24時間単位、1週間単位などの期間でよい。また、複数の期間は、同じ長さの期間で構成されていてもよいし異なる期間の混在(例えば、或る期間は24時間であり別の期間は1週間)でもよい。説明を簡単にするために、本実施の形態では、24時間単位(日単位)で標本用推定対象データ351が区切られたとする。
【0058】
次いで、パターン化処理部251Bが、第一の推定対象標本の間の類似性を示す指標に基づいて、各第一の推定対象標本を複数の推移パターンのいずれかに分類し、各第一の推定対象標本について、当該推定対象標本の分類先の推移パターンを示す番号を特定する(第二の推定対象標本)。第一の推定対象標本の間の類似性を示す指標とは、例えば標本間のユークリッド距離や、第一の推定対象標本それぞれを周波数解析によって周波数成分に変換し、変換した周波数成分間のユークリッド距離などでよい。
【0059】
そして、パターン化処理部251Bが、第一の推定対象標本と第二の推定対象標本とを含んだデータを、パターン分類結果データ251Cとして出力する。例えば、パターン分類結果データ251Cは、推移パターンの時系列(推移パターンの番号の並び)と、推移パターン番号毎の代表的な時系列データ標本(
図5B参照)とを含んでよい。
【0060】
以上をもってパターン分類部251の動作が終了する。
(1-4-2)パターン遷移モデル同定部
【0061】
図6Aおよび
図6Bを参照して、本実施の形態におけるパターン遷移モデル同定部252のデータフローおよび処理動作を説明する。
【0062】
本実施の形態によるパターン遷移モデル同定部252は、標本用因子データ352とパターン分類結果データ251Cを用いて、所定期間における推定対象の推定値を算出するためのパターン遷移モデルを同定し、パターン遷移モデル252Dを出力する。具体的には、例えば、パターン遷移モデル同定部252は、静的説明変数生成部252A、動的説明変数生成部252Bおよびモデル同定部252Cを有する。
【0063】
静的説明変数生成部252Aが、パターン分類結果データ251Cに含まれる第二の推定対象標本(各時系列データ標本の推移パターンを示す値)のそれぞれに対する静的因子の値(静的説明変数の値)を、標本用因子データ352を用いて生成する。ここで推定対象が電力市場価格であって、かつ第二の推定対象標本の期間単位が一日単位である場合、静的因子(静的説明変数)とは、例えば、第二の推定対象標本の各日に対応する気温および電力需要量(需要がある電力量)の少なくとも一つであるが、さらに、太陽光発電や風量区発電などの発電量、火力発電機等の発電機の稼働停止情報、系統の送電容量等の系統情報、原油等の燃料の現物や先物価格、地域の人口動態や産業動態情報、暦情報などでよく、これら因子の1時間単位等の時別値や日ごとの平均値、分散値、最大値、最小値などの代表値などが採用されてよい。
【0064】
動的説明変数生成部252Bが、パターン分類結果データ251Cに含まれる第二の推定対象標本のそれぞれに対する時間前後した動的因子の値(動的説明変数の値)を標本用因子データ352およびパターン分類結果データ251Cを用いて生成する。ここで推定対象が電力市場価格であって、かつ第二の推定対象標本の期間単位が一日単位である場合、動的因子(動的説明変数)とは、例えば、第二の推定対象標本の各日の所定過去日もしくは将来日に対応する気温および電力需要量の少なくとも一つであるが、さらに、太陽光発電や風量区発電などの発電量、火力発電機等の発電機の稼働停止情報、系統の送電容量等の系統情報、原油等の燃料の現物や先物価格、地域の人口動態や産業動態情報、暦情報、および第二の推定対象標本自身などでよく、これら因子の1時間単位等の時別値や日ごとの平均値、分散値、最大値、最小値などの代表値などが採用されてよい。
【0065】
モデル同定部252Cが、第二の推定対象標本と、静的因子の値および動的因子の値の間の規則性、具体的には、例えば、
図6Bが示すように、各時点(各日)について、推移パターンの番号と、一つ以上の因子の値(
図6Bが示す、“A”、“B”など)、および、過去または将来の時点での推移パターンの番号との依存関係を特定する。モデル同定部252Cが、特定された依存関係(規則性)に基づくモデルであり一つ以上の因子(例えば静的因子)の値と過去または将来の時点での推移パターンとを入力とし推移パターンを出力とするモデルを同定し、当該モデルをパターン遷移モデル252Dとして出力する。
図6Bが例示するパターン遷移モデル252Dによれば、或る時点についての入力が、過去の時点(直前の時点)の推移パターンを示す値“1”と当該或る時点での因子の値が“D”であれば、当該或る時点についての出力が、推移パターンを示す値“4”である。なお、依存関係は、必ずしも一通りとは限らず、複数通りが特定され得る。具体的には、例えば、当該或る時点について、値“4”の推移パターンが出力される確率が70%、値“2”の推移パターンが出力される確率が20%といったことがあり得る。
【0066】
また、モデルの同定には公知の方法を適用されてもよい。公知の方法に基づき同定されたパターン遷移モデル252Dは、例えば重回帰分析などの複数の因子を用いたパラメトリックな線形モデルでもよいし、多項式回帰やロジスティック回帰などのパラメトリックな非線形モデルでもよいし、決定木やニューラルネットワークを用いたノンパラメトリックな非線形モデルでもよい。
【0067】
以上をもってパターン遷移モデル同定部252の動作が終了する。
(1-4-3)推定データ生成部
【0068】
図7Aおよび
図7Bを参照して、本実施の形態における推定データ生成部253のデータフローおよび処理動作を説明する。
【0069】
本実施の形態による推定データ生成部253は、推定用因子データ353と、パターン遷移モデル252D、およびパターン分類結果データ251Cを用いて、推定対象の所定期間にわたる値の系列(推定対象の値の時系列を表すデータセット)を一組以上出力する。具体的には、例えば、推定データ生成部253は、パターン遷移系列生成部253Aおよび時系列データ生成部253Bを有する。
【0070】
パターン遷移系列生成部253Aが、パターン遷移モデル252Dの基になっている因子(説明変数)のそれぞれの所定期間(例えば将来の期間)における初期時点(t1)のデータを、推定用因子データ353およびパターン分類結果データ251Cに含まれる第二の推定対象標本(推移パターンを示す値)から生成し、当該データをパターン遷移モデル252Dに入力することで、当該所定期間における初期時点(t1)(例えば或る日)の推移パターンを示す値(推移パターンの番号)を生成する。初期時点(t1)について、パターン遷移モデル252Dに入力される、推移パターンを示す値は、初期時点(t1)についての動的因子に対応した推移パターンの値でよい(例えば、パターン遷移モデル252Dの同定の際に用いた動的因子が「t-1の推移パターンを示す値」を含んでいれば、初期時点(t1)に対するt-1(≒0)の推移パターンを示す値が入力され、動的因子が「t-2の推移パターンを示す値」を含んでいれば、初期時点(t1)に対するt-2(≒t(-1))の推移パターンを示す値が入力される)。次いで、パターン遷移系列生成部253Aは、因子(説明変数)のそれぞれの上記所定期間における次時点(t2)(例えば或る日の次の日)のデータを、推定用因子データ353および上記の初期時点(t1)についての生成値(推移パターンを示す値)とから生成し、当該データ(次時点(t2)についての因子の値、および、初期時点(t1)についての生成値)をパターン遷移モデル252Dに入力することで、当該所定期間における次時点(t2)の推移パターンを示す値を生成する。以降、所定期間における終了時点(tn)まで同処理が繰り返される。これにより、所定期間にわたる(t1、t2、…、tnの各々についての)推移パターンを示す値の系列が生成される(
図7B参照)。
【0071】
次いで、時系列データ生成部253Bが、パターン遷移系列生成部253Aが生成した系列のそれぞれの値(推移パターンを示す値)をキーとして、パターン分類結果データ251Cに含まれる第二の推定対象標本から、当該キーとが一致する標本を抽出する。時系列データ生成部253Bが、同じくパターン分類結果データ251Cに含まれる第一の推定対象標本から、当該抽出した標本の時系列データ標本を抽出する。時系列データ生成部253Bが、抽出した時系列データ標本から推移パターンの代表的な時系列データを生成する。代表的な時系列データとは、例えば、抽出した時系列データ標本の時別での平均値や中央値などでよい。最後に、時系列データ生成部253Bは、推定対象の時系列データ(代表的な時系列データの時系列)(
図7B参照)を推定結果データ254として出力し、当該推定結果データ254を記憶装置25に格納する。
【0072】
なお、パターン遷移系列生成部253Aが行う生成(推移パターンを示す値の生成)においては、パターンを示す値を一つに絞り込むことができない場合がある。その場合は、推移パターンを示す値が複数生成されてもよい。その場合、生成したそれぞれの推移パターンを示す値を基に次時点の推移パターンを示す値がそれぞれ生成される。このため、推移パターンを示す値の出力系列も複数となり、従って、推定結果データ254に含まれるデータセット(推定対象の値の時系列を表すデータセット)も複数となる。
【0073】
以上をもって推定データ生成部253の動作が終了する。
(1-5)本実施の形態の効果の説明
【0074】
次に
図8Aおよび
図8Bを参照して、本実施の形態における推定システム12の効果を説明する。なおここでは現在の日をnとして、推定対象期間をn+1からn+365日として例示している。また推定対象は電力市場価格の例としている。
【0075】
図8Aは、一比較例に従う方法によって生成された時系列データ(所定期間にわたる推定対象の値の時系列を表すデータ)を示している。比較例では、時刻毎の気象予測値を用いることで、n+1日やn+2日の至近の推定値(現在の日に近い日について推定された電力市場価格)は比較的精度が良く、また時刻毎の推定値を出力することができる。しかし、n+180日付近では、使用可能な因子データは時間粒度が大きな気象予測値や燃料価格値のみとなるため、符号801が示すように、出力される推定対象の値も日単位などの大きな時間粒度の値となる。さらに、n+365日付近先の期間では、気象予測値等の因子がモンテカルロ法などの乱数に基づいた値であるため、符号802が示すように、推定対象の値の範囲が増大する。
【0076】
他方で、
図8Bは、本実施の形態に記載の方法によって生成された時系列データ(所定期間にわたる推定対象の値の時系列を表すデータ)を示している。本実施の形態に記載の方法は、電力市場価格の例えば日ごとの時系列値(電力市場価格の時系列)を推移パターンに分類し、パターンの遷移を推定するモデルを同定している。このため、n+1日やn+2日の至近の推定値(現在の日に近い日について推定された電力市場価格)は、比較例と同様比較的精度が良く、符号803が示すように、n+180日付近であっても時別の推定値を出力することができる。また、推移パターンの遷移の規則性に基づいた推定が行われるため、符号804が示すように、n+365日付近の先の期間であっても細かい時間粒度の推定値を得ることができ、かつ推定値の上下限範囲をより限定することができる。
【0077】
以上のように本実施の形態において、推定対象の経時的な依存関係を反映し、数日先までの正確な予測データと整合させながら、所定期間にわたった短時間単位でのより精度の高い推定結果データの生成を行うことができる。さらに、短時間単位での高精度な推定結果データを、例えば発電機の運転制御での計画生成の入力に用いることで、所定の将来期間にわたる計画の偏差を低減し、燃料調達量を適正化することができ、発電機の運用と経済性を安定化することができる。
【0078】
以下、幾つかの更なる実施の形態を説明する。以下の各実施の形態の説明では、前述の実施の形態との相違点を主に説明し、前述の実施の形態との共通点については説明を省略または簡略する。
(2)第二の実施の形態
【0079】
第一の実施の形態における推定データ生成部253は、時系列データ生成部253Bが生成したすべてのデータセットを含んだデータを推定結果データ254として出力するが、第二の実施の形態では、推定データ生成部253は、時系列データ生成部253Bが生成した一つまたは複数のデータセットのうち観測データセット(例えば、データ観測装置6から取得された観測値(例えば電力市場価格)の時系列)との差が閾値以下のデータセットを抽出し、抽出されたデータセットを含んだデータを推定結果データ254として出力する。「閾値」は、一つまたは複数のデータセットの各々について算出された差を基に(例えばそれらの差の統計を基に)決定された閾値でもよいし、予め定められている閾値でもよい。閾値は0(つまり差が無い)でもよい。
【0080】
具体的な例を、
図9Aおよび
図9Bを用いて説明する。推定データ生成部253は、更に、時系列データ選択部253Cを有する。
【0081】
パターン遷移系列生成部253Aおよび時系列データ生成部253Bは、
図7Aおよび
図7Bを用いて説明した処理と同様の処理により、推定対象の時系列データセットを一つまたは複数生成する。次いで、時系列データ選択部253Cは、時系列データ生成部253Bが生成した一つまたは複数の時系列データセットの各々に関し、所定の期間900について、当該時系列データセットにおけるそれぞれの時点での推定値と、観測データセット(例えば、標本用推定対象データ351の少なくとも一部でもよい)におけるそれぞれの時点での観測値との差を算出する。時系列データ選択部253Cは、それらの差が閾値以下のデータセットを含んだデータを、推定結果データ254として出力する。具体的には、例えば、下記のうちのいずれかが採用されてよい。
・所定の期間900は、過去の期間である。観測データセットは、標本用推定対象データ351の少なくとも一部である。推定データ生成部253が、推定用因子データ353の他に標本用因子データ352をパターン遷移モデル252Dに入力することで、過去の期間および将来の期間について一つまたは複数の時系列データセットを生成する。そして、時系列データ選択部253Cが、標本用推定対象データ351における過去の期間での推定対象値の時系列と、一つまたは複数の時系列データセットの各々における過去の期間での推定値の時系列とを比較する。それらの差が閾値以下の一つ以上の時系列データセットが出力される。
・所定の期間900は、現在から比較的近い先のまでの将来の期間である。時系列データ選択部253Cが、観測データセットにおける当該将来の期間での観測値の時系列と、一つまたは複数の時系列データセットの各々における当該将来の期間での推定値の時系列とを比較する。それらの差が閾値以下の一つ以上の時系列データセットが出力される。
【0082】
これにより、時系列データ生成部253Bが生成した推定対象の時系列データセットのうち、将来期間において実際に発生する可能性の高いデータセットを抽出することができ、より精度の高い推定結果データ254を得ることができる。なお、
図9Bが示す例によれば、観測データセットも推定データ生成部253により生成される時系列データセットも、便宜上、推移パターンを示す値の時系列で表現されている。
図9Bによれば、例えば、所定の期間900について、観測データセットとの差が小さい時系列データセット2および3を含んだデータが推定結果データ254として出力される。
(3)第三の実施の形態
【0083】
第一の実施の形態における推定データ生成部253では、時系列データ生成部253Bが生成したすべてのデータセットを含んだデータを推定結果データ254として出力するが、第三の実施の形態では、推定データ生成部253は、時系列データ生成部253Bが生成した一つまたは複数のデータセットのうち、別途所定の方法により生成された予測値を一つ以上含む予測データセットとの差が閾値以下であるデータをセット抽出し、抽出されたデータセットを含んだデータを推定結果データ254として出力する。「閾値」は、一つまたは複数のデータセットの各々について算出された差を基に(例えばそれらの差の統計を基に)決定された閾値でもよいし、予め定められている閾値でもよい。閾値は0(つまり差が無い)でもよい。
【0084】
【0085】
パターン遷移系列生成部253Aおよび時系列データ生成部253Bは、
図7Aおよび
図7Bを用いて説明した処理と同様の処理により、推定対象の時系列データセットを一つまたは複数生成する。次いで、時系列データ選択部253Cは、時系列データ生成部253Bが生成した一つまたは複数の時系列データセットの各々に関し、当該時系列データセットにおける所定の期間1000についての値と、予測値生成部1001が所定の期間1000について生成した予測データセット(一つ以上の予測値の時系列)1001Aとの差を算出し、当該差が閾値以下の時系列データセットを抽出し、抽出された時系列データセットを含んだデータを推定結果データ254として出力する。なお、所定の期間1000Aは、例えば、翌日または翌々日といった比較的現在から近い将来の期間でよく、所定の期間1000Bは、例えば、6か月先といった比較的現在から遠い将来の期間でよい。
【0086】
ここで、予測値生成部1001は、CPU25がプログラムを実行することにより実現される機能でもよいし、推定演算装置2とは別の装置における機能でもよい。予測値生成部1001における予測モデルの同定および予測値算出には公知の手法が適用されてよい。公知の手法は、例えば、重回帰モデルなどの線形回帰モデルやロジスティック回帰などの一般化線形モデルなどの線形性を仮定する手法、ARX(Auto Regressive with Exogenous)モデルなどの自己回帰性を仮定する手法、Ridge回帰、Lasso回帰、ElasticNetなどの縮小推定器を利用する手法、部分最小二乗法や主成分回帰などの次元縮退器を利用する手法、多項式を用いた非線形モデル、あるいはサポートベクトル回帰、回帰木、ガウス過程回帰、ニューラルネットなどのノンパラメトリックと呼ばれる手法でよい。
【0087】
これにより、時系列データ生成部253Bが生成した推定対象の時系列データセットのうち、将来期間において実際に発生する可能性の高いデータセットを抽出することができ、より精度の高い推定結果データ254を得ることができる。なお、
図10Bが示す例によれば、予測データセットも推定データ生成部253により生成される時系列データセットも、便宜上、推移パターンを示す値の時系列で表現されている。
図10Bによれば、例えば、所定の期間1000Aおよび1000Bについて、予測データセット1および2との差が無い時系列データセット3を含んだデータが推定結果データ254として出力される。
(4)第四の実施の形態
【0088】
第一乃至第三の実施の形態におけるパターン遷移モデル同定部252は、同定したパターン遷移モデルの変更をしないが、第四の実施の形態では、パターン遷移モデル同定部252は、予測値生成部1001が出力した予測値に適合する様に、パターン遷移モデルを調整する。
【0089】
具体的には、例えば、
図11を用いて説明する。パターン遷移モデル同定部252が、更に、モデル制御部1101を有する。
【0090】
静的説明変数生成部252A、動的説明変数生成部252B、およびモデル同定部252Cは、
図6Aおよび
図6Bを用いて説明した処理と同じ処理により、パターン遷移モデル252Dを出力する。そして、推定データ生成部253において所定期間にわたる推定対象の時系列データとしての推定結果データ254が生成される。
【0091】
その後、パターン遷移モデル同定部252におけるモデル制御部1101は、上述した推定結果データ254と、予測値生成部1001が出力した予測データセットとを取得する。そしてモデル制御部1101は、予測値生成部1001が出力した予測データセットと、推定結果データ254の同一期間におけるデータとの差が縮まる(例えば極小となる)ように、パターン遷移モデル252Dを変更する。ここで「変更」とは、例えば、パターン遷移モデル252Dに使用する説明変数を選択する処理でよい。具体的には、例えば、モデル制御部1101は、使用する説明変数の組み合わせごとにパターン遷移モデルを同定し、それぞれのパターン遷移モデルにより生成した推定結果データと予測データセットとの差を算出し、差が最小となったパターン遷移モデルに使用されている説明変数の組み合わせを抽出してよい。そしてモデル制御部1101は、抽出した説明変数の組み合わせをモデル同定部252Cに入力し、モデル同定部252Cは、入力された説明変数の組み合わせを用いて、再度パターン遷移モデルを同定し出力してよい。
【0092】
これにより、時系列データ生成部253Bが生成した推定対象の時系列データセットのうち、将来期間において実際に発生する可能性の高いデータの抽出確率を上げることができ、より精度の高い推定結果データ254を得ることができる。
【0093】
また上記説明でのモデル制御部1101は、予測データセットとの差だけに基づいて処理を行う説明としたが、これに代えてまたは加えて、予測データセットとパターン分類結果データ251Cに含まれる第一の推定対象標本との差に基づいて、パターン遷移モデルの変更を行ってもよい。これにより、予測値生成部1001が出力する予測結果への過適合を防止し、より精度の高い推定結果データ254を得ることができる。
(5)第五の実施の形態
【0094】
第一乃至第四の実施の形態におけるパターン分類部251は、標本用推定対象データ351のみをパターン分類するが、第五の実施の形態では、因子データも分類してもよい。
【0095】
具体的には、例えば、
図12を用いて説明する。パターン分類部251は、
図5Aおよび
図5Bを用いて説明した処理によって、標本用推定対象データ351と、標本用因子データ352および推定用因子データ353をそれぞれパターンに分類しパターン分類結果データ251Cとして出力する。そしてパターン遷移モデル同定部252は、パターン分類結果データ251Cに含まれる標本用の推定対象と因子のパターンを示す値(第二の推定対象、および因子標本)とを用いて、パターン遷移モデル252Dを出力する。そして推定データ生成部253は、パターン遷移モデル252Dに、パターン分類結果データ251Cに含まれる推定用因子のパターンを示す値を入力することで、将来の所定期間にわたる推定対象のパターンを示す値の系列を算出し、推定対象の値の時系列データを出力する。
【0096】
これにより、因子それぞれの時系列配列をパターンを示す値に縮約し、パターン遷移モデルの情報量を削減し、計算負荷を軽減することができる。また、因子それぞれの時系列配列をパターンを示す値に縮約することは説明変数の数の低減を行うことであり、説明変数過多によるパターン遷移モデルの同定計算の収束不足を回避することもできる。
【0097】
本実施の形態では、例えば、下記が可能である。
【0098】
通信装置24が受け付けるデータが、標本用要素データを含んだデータを含んでよい。記憶装置25が、標本用要素データおよび推定用要素データを格納してよい。標本用要素データは、少なくとも一つの因子の値に影響を及ぼす可能性があると定義された一つ以上の要素の各々について前記過去の期間における当該要素の時系列の値を表すデータセットを含んだデータでよい。推定用要素データは、一つ以上の要素の各々について将来の期間における当該要素の時系列の値を表すデータセットを含んだデータでよい。つまり、この段落で言う「要素」とは、上述の因子(推定対象の値に影響を与える可能性があると定義された因子)の値に影響を与えると定義された因子でよい。
【0099】
パターン分類部251が、一つ以上の因子のうちの少なくとも一つの因子について、標本用因子データにおけるデータセットから、それぞれが因子値の推移のパターンである複数の因子推移パターンを生成してよい。パターン遷移モデル同定部252が、標本用要素データおよび複数の因子推移パターンを基に、因子推移パターンと、一つ以上の要素の値および過去または将来の時点での因子推移パターンとの依存関係である因子要素依存関係を特定してよい。パターン遷移モデル同定部252が、因子要素依存関係に従うモデルであり一つ以上の要素の値と過去または将来の因子推移パターンとを入力とし因子推移パターンを出力とするモデルである因子モデルをパターン遷移モデル252Dとして同定してよい。推定データ生成部253が、因子モデルとしてのパターン遷移モデル252Dに推定用要素データを入力することで、複数の因子推移パターンの少なくとも一つを用いて、少なくとも一つの因子の将来の期間における値の時系列を表すデータセットを一つ以上含んだデータである推定用因子データを出力してよい。これにより、例えば、次の処理が可能である。すなわち、推定対象としての因子を気象とすることで、気象についてパターン遷移モデルが生成される。当該パターン遷移モデルを用いて、気象の推定値の時系列を表すデータである推定用要素データが推定結果データとして出力される。次いで、推定対象としての因子を電力需要量とし、因子としての要素を気象とすることで、電力需要量についてパターン遷移モデルが生成される。当該パターン遷移モデルに気象の推定値の時系列を表すデータである推定用要素データが入力されることで、電力需要量の推定値の時系列を表すデータである推定用因子データが推定結果データとして出力される。この推定用因子データが電力市場価格のパターン遷移モデルに入力されることで、電力市場価格の推定値の時系列を表す推定結果データが出力される。
【0100】
以上、本発明の幾つかの実施の形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施の形態に限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。例えば、上述した複数の実施の形態のうちの任意の二つ以上の実施の形態を組み合わせる事が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…データ管理システム、2…推定演算装置、3…データ管理装置、4…情報入出力端末、5…計画管理装置、6…データ観測装置、7…データ配信装置、8…通信経路、9…制御対象装置、12…推定システム。