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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178004
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/06 20060101AFI20221125BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 53/44 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 8/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F27B5/06
F27D17/00 104G
B01D53/44 ZAB
B01D53/44 130
B01D53/74
B01D8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084482
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】森元 陽介
【テーマコード(参考)】
4D002
4D076
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4D002AA00
4D002AC02
4D002BA13
4D002CA20
4D076AA16
4D076AA22
4D076BC04
4D076BC08
4D076BC25
4D076BE04
4D076CD42
4K056AA11
4K056BA02
4K056BA04
4K056CA01
4K056DB04
4K056DB05
4K056FA08
4K061AA03
4K061BA02
4K061CA08
4K061FA05
4K061FA12
4K061FA13
4K061GA04
4K061HA05
(57)【要約】
【課題】被処理物から放出されるバインダ等の成分を捕集するための機構のメンテナンスが容易な熱処理炉を提供する。
【解決手段】内部に収容された被処理物Wを加熱する炉本体1と、前記被処理物Wから放出される放出ガスを排出するガス排出流路Lと、前記ガス排出流路L上に設けられ、前記放出ガスの成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップ2と、前記トラップ2に接続されて、該トラップ2から流れ出る前記放出ガスの液化成分を回収する回収ボックス3と、前記炉本体1、ガス排出流路L、トラップ2、及び、回収ボックス3を内部に収容する筐体5と、を備え、前記筐体5の収容空間52を形成する壁体51に、前記トラップ2の少なくとも一部及び前記回収ボックス3の少なくとも一部を露出させる開口53が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容された被処理物を加熱する炉本体と、
前記被処理物から放出される放出ガスを排出するガス排出流路と、
前記ガス排出流路上に設けられ、前記放出ガスの成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップと、
前記トラップに接続されて、該トラップから流れ出る前記放出ガスの液化成分を回収する回収ボックスと、
前記炉本体、ガス排出流路、トラップ、及び、回収ボックスを内部に収容する筐体と、を備え、
前記筐体の収容空間を形成する壁体に、前記トラップの少なくとも一部及び前記回収ボックスの少なくとも一部を露出させる開口が形成されていることを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記筐体が前記開口を閉止する開閉扉を有したものである請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記トラップが長尺状をなし、その長手方向が鉛直となるように配置されている請求項1又は2いずれかに一項に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記トラップが、前記液化成分が外部に流出する液体流出口を下側に具備し、
前記回収ボックスが、前記液体流出口の下側に着脱可能に連結され、前記トラップ及び前記回収ボックスが鉛直方向に並ぶように構成された請求項1乃至3いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記ガス排出流路の下流側に接続され、前記炉本体の側方に配置された排気ポンプをさらに備え、
前記トラップ及び回収ボックスが、前記炉本体の側方であって、前記排気ポンプよりも前面側に配置されている請求項1乃至4いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記トラップ及び回収ボックスが前記炉本体よりも低い位置に配置されている請求項1乃至5いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項7】
前記トラップが、
一端が開閉可能に構成された外筒体と、
前記外筒体内に収容されて、前記放出ガスをその表面で液化又は固化させるフィン機構と、を備え、
前記フィン機構が前記外筒体の一端から外部へ取り外せるように構成された請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項8】
内部に収容された被処理物を加熱する炉本体と、
前記被処理物から放出される放出ガスを排出するガス排出流路と、
前記ガス排出流路上に設けられ、前記放出ガスを冷却してその成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップと、
前記トラップに接続され、該トラップから流れ出る前記放出ガスの液化成分を回収する回収ボックスと、を備え、
前記回収ボックスが、
前記トラップから前記液化成分が流入するインナーカップと、
前記インナーカップの外側を覆うように設けられたアウターケースと、を具備することを特徴とする熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属又は磁性材料等からなる被処理物を熱処理炉に入れ、所定圧力下において所定温度に加熱し、被処理物の脱脂や焼結が行われている。このような熱処理中には、ガス状になったバインダや粒子状のダスト等を含む放出ガスが被処理物から発生する。炉内を減圧するポンプ等を長期間に亘って安定稼働させるために、例えば特許文献1には、ガス状になったバインダをトラップで液化させて捕集し、トラップの下方に接続されたワックスポッドで回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02―228404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、金属3Dプリンタが市場投入され、少量多品種の熱処理が可能な熱処理炉が求められつつある。このような用途の熱処理炉は、従来の大規模な工場で使用される熱処理炉と異なり、ラボルームやオフィス等の設置面積が限られた場所で使用できるように小型化する必要がある。また、従来のように工場作業によってトラップやワックスポッド等のメンテナンスを行うことは難しい。
【0005】
そこで、本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、被処理物から放出されるバインダ等の成分を捕集するための機構のメンテナンスが容易な熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る熱処理炉は、内部に収容された被処理物を加熱する炉本体と、前記被処理物から放出される放出ガスを前記炉本体内から外部へ排出するガス排出流路と、前記ガス排出流路上に設けられ、前記放出ガスの成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップと、前記トラップに接続されて、該トラップから流れ出る前記放出ガスの液化成分を回収する回収ボックスと、前記炉本体、ガス排出流路、トラップ、及び、回収ボックスを内部に収容する筐体と、を備え、前記筐体の収容空間を形成する壁体に、前記トラップの少なくとも一部及び前記回収ボックスの少なくとも一部を露出させる開口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記開口が形成されているので、前記収容空間内に配置されている前記トラップ及び回収ボックスを前記開口から簡単に取り外すことができる。このため、例えば前記トラップで固化したワックス等を除去したり、前記回収ボックスに回収された液化成分の廃棄を行ったりしやすい。したがって、ラボルームやオフィス等で使用しやすい熱処理炉にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態における熱処理炉の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態におけるトラップ及び回収ボックスの詳細を示す模式図である。
図3】同実施形態における開閉扉が閉じた状態の筐体を示す模式図である。
図4】同実施形態における開閉扉が開き、トラップ及び回収ボックスが露出している状態を示す模式図である。
図5】同実施形態における熱処理炉の平面視における各部材の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[装置構成]
本発明の一実施形態における熱処理炉100について図1乃至図5を参照しながら説明する。
【0010】
この熱処理炉100は、例えばラボルームやオフィス等の限られたスペース内で設置できるように構成されたものであり、例えば金属や磁性材料等の被処理物Wの脱脂や焼結を行うために用いられる。なお、熱処理炉100は、半焼結、焼成、ろう付け、メタライズ、焼き入れ、焼戻し、焼きなまし、溶体化処理、または時効熱処理等を行うために用いてもよい。
【0011】
図1に示すように熱処理炉100は、被処理物Wが内部に収容されて、加熱される炉本体1と、炉本体1内を排気又は減圧する排気ポンプ4と、炉本体1内の被処理物Wから発生する放出ガスからバインダや油脂成分等を捕集するトラップ2及び回収ボックス3を具備する捕集機構TMと、を備えている。
【0012】
炉本体1は、内部が所定圧力に保たれる圧力容器11と、圧力容器11内に設けられた概略直方体状をなす断熱体12と、断熱体12内に設けられ、概略直方体形状をなすとともに内部に被処理物Wが収容されるタイトボックス13と、断熱体12とタイトボックス13との間に設けられたヒータ機構14と、を備えている。すなわち、圧力容器11、断熱体12、タイトボックス13は入れ子構造をなす。
【0013】
また、炉本体1と排気ポンプ4との間には炉本体1内の被処理物Wから発生する放出ガスを炉本体1の外部に排出するためのガス排出流路Lが接続されている。
【0014】
圧力容器11は、その一部が蓋体により開閉可能に構成されており、蓋体が閉じられると圧力容器11内は気密空間になる。圧力容器11内は排気ポンプ4の作用によって内部が減圧されたり、図示しないガス源から圧力容器11内に供給される不活性ガス等によって加圧されたりする。
【0015】
断熱体12は例えばグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。この断熱体12はヒータ機構14で発生する熱が断熱体12の外側へ放熱されるのを防止する。
【0016】
タイトボックス13(インナーケース)は、内部に加熱空間を形成する概略直方体形状をなす箱体である。
【0017】
ヒータ機構14は、断熱体12とタイトボックス13との間に設けられる。
【0018】
トラップ2及び回収ボックス3を具備する捕集機構TMは、タイトボックス13の排出口13Bから排気される被処理物Wから発生した放出ガス中からバインダやワックス等の成分を分離捕集する。本実施形態では捕集機構TMは概略円筒状をなすとともに、その中心軸(長手方向)が鉛直となるように配置される。
【0019】
図2に示すようにトラップ2は鉛直方向に長尺状をなすとともに二重管構造を有し、内部にラビリンスが形成されたものである。具体的にはトラップ2は、下側から放出ガスが流入し、上側からバインダやワックス等が除去されたガスが流出するように構成された外筒体21と、冷却媒体が流れる内筒体23と、外筒体21内に着脱可能に設けられる多数のフィンからなり、その表面で放出ガスの少なくとも一部の成分を液化又は固化させるフィン機構22と、を備えている。
【0020】
外筒体21の下側から流入した放出ガスはフィン機構22及び内筒体23によって冷却されて、ガス状のバインダやワックスを液化又は固化させる。放出ガスの液化成分は自重で外筒体21の下側に移動し、外筒体21の下側開口である液体流出口24から回収ボックス3内へと流入するように構成されている。また、バインダやワックスのうち固体化したものは、フィンに付着することになる。このような固体化したバインダやワックスをフィンから除去するために、外筒体21の外側周面を覆うように配管ヒータ25が設けてある。具体的には、炉本体1内における被処理物の熱処理工程後に、配管ヒータ25で外筒体21を加熱することによって、フィンに付着しているバインダやワックスを液化させ、回収ボックス3へ流し、回収する。加えて、外筒体21の上側の閉鎖端は開閉可能に構成されており、内部に収容されているフィン機構22をメンテナンス時に取り出すことができる。
【0021】
回収ボックス3は、トラップ2の下側部分に対して真空用クランプVCによって着脱可能に取り付けられており、トラップ2から流れてくる液化成分が貯留される。具体的には回収ボックス3は、トラップ2から液化成分が流入するインナーカップ31と、インナーカップ31の外側を覆うように設けられたアウターケースであるワックスポッド32と、を具備する。
【0022】
インナーカップ31は使い捨て可能な例えば樹脂等の材料で形成されたカップであって、トラップ2により放出ガスから分離された液化成分、又は、液化成分が再び固化したものが内部に貯留される。インナーカップ31は、その上端開口部が外筒体21の液体流出口24を外側から覆うように着脱可能に取り付けられる。メンテナンス時にはこのインナーカップ31は未使用のインナーカップ31に交換される。
【0023】
ワックスポッド32は、インナーカップ31から何らかの原因で液化成分等が漏出したとしても外部に液化成分が撒き散らされるのを防ぐように構成されている。具体的にはインナーカップ31全体を内部に収容する容積を有し、側面部に一対の取っ手が設けられた一端が開口した円筒状をなす。ワックスポッド32はインナーカップ31全体がその内部に収容された状態で外筒体21に対して着脱可能に取り付けられる。想定されている使用態様では、インナーカップ31にすべての液化成分が貯留されるため、メンテナンス時にはワックスポッド32については簡単な清掃のみでよい。
【0024】
炉本体1、捕集機構TM、排気ポンプ4、減圧排気流路L1、及び、ガス排出流路Lは図3乃至図5に示す筐体5内に収容されている。この筐体5は概略直方体形状をなし、壁体51によって形成される内側に各部材が収容される収容空間52が形成される。なお、筐体5の前面側は炉本体1内に被処理物Wを搬入するための搬入口15が露出するように構成されている。
【0025】
また、筐体5の前面には開閉扉54が設けられており、開閉扉54が開けられた状態ではトラップ2の上側部分と回収ボックス3が露出するように構成されている。具体的には図4に示すように壁体51において開閉扉54で閉じられる部分にはトラップ2の上側部分と、回収ボックス3を筐体5の外部に露出させるための開口53がそれぞれ形成されている。また、収容空間52において開口53が形成されている近傍ではトラップ2の上側に他の部材が設けられていない空間が設けてある。同様に収容空間52において回収ボックス3下側にも他の部材が設けられていない所定容積の空間が設けてある。このようにトラップ2内のフィン機構22の上方向への取り外しや回収ボックス3の下方向への取り外しができるようにしてある。この開口53は筐体5の開閉扉54が閉じられている状態では閉止される。すなわち、炉本体1内において被処理物Wの熱処理が行われて、高温の放出ガスが流れている間は外部からトラップ2及び回収ボックス3にはユーザは触ることができないように構成されている。
【0026】
次に図4におけるA-A線断面模式図である図5を参照しながら収容空間52内における炉本体1、トラップ2、回収ボックス3,排気ポンプ4のレイアウトについて説明する。なお、炉本体1の内部構造、及び、減圧排気流路L1、ガス排出流路Lについては図5では省略している。筐体5内において横幅方向に対して左側には炉本体1が配置されるとともに、炉本体1の側方である横幅方向に右側にはトラップ2及び回収ボックス3を具備する捕集機構TM、及び、排気ポンプ4が集めて配置される。さらに、筐体5内においてトラップ2及び回収ボックス3を具備する捕集機構TMは、排気ポンプ4よりも前面側に配置される。また、図1及び図4に示すように炉本体1は筐体5内において上方に配置されるとともに、捕集機構TM及び排気ポンプ4は炉本体1よりも低い位置である筐体5のほぼ底面近傍に配置される。ここで低い位置とは、例えば炉本体1の下面よりも捕集機構TM全体が低い位置にあること、あるいは、炉本体1の下面よりも低い位置に捕集機構TMの下面があることを意味する。
【0027】
[熱処理時の動作]
次に熱処理炉100による使用した被処理物Wの熱処理方法について説明する。(1)被処理物Wをタイトボックス13に収納し、圧力容器11の蓋をして密閉する。(2)ヒータ機構14をオンにしてタイトボックス13内を所定温度に昇温するとともに、ガス源から圧力容器11及びタイトボックス13内に所定のガスを導入し、被処理物Wに対して所定の熱処理を行う。(3)必要に応じて排気ポンプ4を駆動させ、圧力容器11内又はタイトボックス13内からガスを強制排気し、炉本体1内の空気や被処理物Wから発生する放出ガスをガス源から供給されるガスに置換する。なお、タイトボックス13内から排気された放出ガスはガス排出流路を流れ、トラップ2において放出ガスに含まれるガス状のバインダやワックスが冷却によって液化又は固化される。放出ガスの液化成分は自重によってトラップ2から回収ボックス3内へと流れて捕集される。(4)被処理物Wの処理が終了したら、被処理物Wが冷却された後、圧力容器11とタイトボックス13を開けて被処理物Wを取り出す。
【0028】
[捕集機構TMのメンテナンス]
次に捕集機構TMのメンテナンスについて説明する。前述した熱処理工程後、トラップ2のフィン機構22には固化したバインダやワックス等が付着している。これらを再び液化して回収ボックス3内へと流すために、配管クリーニングが実施される。すなわち、排気ポンプ4が停止された状態において配管ヒータ25でトラップ2が加熱され、固化している成分を再び液化し、自重によって回収ボックス3まで流す。このような配管クリーニングは例えば被処理物Wの冷却工程時に行う。
【0029】
このような配管クリーニングを定期的に行っても、フィン機構22には少しずつバインダやワックス等に由来する固形成分が堆積していくので、例えば配管クリーニングが所定回数行われるごとにユーザによってフィン機構22の清掃や交換が行われる。すなわち、炉本体1及び排気ポンプ4等を停止させた状態において筐体5の開閉扉54が開放され、図4に示すようにトラップ2及び回収ボックス3が開口53から露出される。次に開口53を介してトラップ2又は回収ボックス3の取り外しが行われて、清掃又は交換作業が行われる。
【0030】
具体的にはトラップ2の外筒体21の上面を開放して内部からフィン機構22が上方向に引き抜かれて、筐体5の前面側へ引き出される。フィン機構22に固着している成分等が清掃された後、再びフィン機構22は開口53を介して外筒体21の中に挿入される。
【0031】
また、トラップ2と回収ボックス3との間を連結している真空用クランプVCが外されると、回収ボックス3において外側の構造体であるワックスポッド32が下側へと引き抜かれて、筐体5の前面側へ引き出される。次にインナーカップ31を取り外して別のインナーカップ31に交換された後、再びワックスポッド32がインナーカップ31の外側からトラップ2に対して取り付けられる。最後に開閉扉54を閉じることで作業が終了する。
【0032】
[効果]
このように構成された熱処理炉100であれば、操作面である筐体5の前面側にトラップ2と回収ボックス3を外部に露出させるための開口53が設けられているので、上述したようにメンテナンス時において捕集機構TMの各部品を筐体5の外側に取り外すことが簡単にできる。具体的には、概略円筒状をなす捕集機構TMは炉本体1よりも低い位置に配置されているとともに筐体5において底面近傍に配置されており、かつ、各機器はコンパクトに構成されているので、例えば脚立等を用いなくてもフィン機構22を上方向に引き抜き、その後筐体5の前面側から取り出すことは容易にできる。同様に回収ボックス3のインナーカップ31もユーザは筐体5の前面側から簡単にアクセスできるので、交換作業を簡単に行うことができる。
【0033】
また、従来であれば上述したようなトラップ2や回収ボックス3のメンテナンスを容易にするために、長尺状をなすトラップ2を横方向に向けて配置していたので、熱処理炉100としてのフットプリントが大きくなってしまっていた。これに対して本実施形態の熱処理炉100であれば捕集機構TMのメンテナンスを容易にしつつ、長尺状をなすトラップ2を垂直方向に沿って配置できるので、熱処理炉100としてのフットプリントを小さくし、コンパクトに構成できる。したがって、例えばラボルームやオフィスのような限られたスペースに好適な熱処理炉100として構成できる。
【0034】
その他の実施形態について説明する。
【0035】
捕集機構又はトラップについてはその長手方向が鉛直をなすものに限られず、例えば長手方向が鉛直方向に対して所定角度内で斜めに配置されていてもよい。熱処理炉としてのフットプリントを小さくするには、できる限り捕集機構又はトラップの長手方向が鉛直をなすようにすればよい。
【0036】
開口の設け方や各機器の筐体内の配置について前記実施形態において説明した態様に限られない。例えば筐体の側面や背面に開口が形成されて、トラップ及び回収ボックスの交換を行えるようにしてもよい。
【0037】
回収ボックスについてはインナーカップを設けずにワックスポッドのみを設けても良い。
また、炉本体の上面を基準として、捕集機構TMの上端部が炉本体の上面よりも低い位置にあるように構成してもよい。
【0038】
フィン機構については外筒体に対して固定されたものであってもよい。この場合、トラップ全体を筐体内から取り外してメンテナンスが行えるようにしてもよい。また、トラップは水冷によってバインダやワックスを液化又は固化させるものに限られず、例えば空冷やその他の冷媒を用いて除去した成分を液化又は固化させるものであってもよい。
【0039】
(第1項)一態様における熱処理炉は、内部に収容された被処理物を加熱する炉本体と、前記被処理物から放出される放出ガスを排出するガス排出流路と、前記ガス排出流路上に設けられ、前記放出ガスの成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップと、前記トラップに接続されて、該トラップから流れ出る前記放出ガスの液化成分を回収する回収ボックスと、前記炉本体、ガス排出流路、トラップ、及び、回収ボックスを内部に収容する筐体と、を備え、前記筐体の収容空間を形成する壁体に、前記トラップの少なくとも一部及び前記回収ボックスの少なくとも一部を露出させる開口が形成されていることを特徴とする。
【0040】
第1項に記載の熱処理炉によれば、前記開口が形成されているので、前記筐体内に収容されている前記トラップ及び前記回収ボックスを前記開口から簡単に取り外すことができる。このため、前記トラップ及び前記回収ボックスのメンテナンスが容易となり、例えばラボルームやオフィス等で使用しやすい熱処理炉にすることが可能となる。
【0041】
(第2項)メンテナンス時以外は高温のガスが流れる可能性がある前記トラップ及び前記回収ボックスに対してユーザが触れることができないようにして、安全性を高められるようにするには、前記筐体が前記開口を閉止する開閉扉を有したものであればよい。
【0042】
(第3項)熱処理炉としてのフットプリントを小さくし、ラボルームやオフィス等のようにスペースの限られている場所でも設置可能な熱処理炉を構成するには、前記トラップが長尺状をなし、当該トラップの長手方向が鉛直となるように配置されていればよい。
【0043】
(第4項)前記トラップ及び前記回収ボックスをコンパクトに構成するには、前記トラップが、前記液化成分が外部に流出する液体流出口を下側に具備し、前記回収ボックスが、前記液体流出口の下側に着脱可能に連結され、前記トラップ及び前記回収ボックスが鉛直方向に並ぶように構成されたものであればよい。
【0044】
(第5項)前記トラップ及び前記回収ボックスのメンテナンスを容易に行うことができるようにしながら、熱処理炉としてフットプリントを小さくできる具体的な各機器のレイアウトとしては、前記ガス排出流路の下流側に接続され、前記炉本体の側方に配置された排気ポンプをさらに備え、前記トラップ及び回収ボックスが、前記炉本体の側方であって、前記排気ポンプよりも前面側に配置されているものが挙げられる。
【0045】
(第6項)脚立等の器具を用いなくても前記トラップ及び前記回収ボックスの清掃や交換を行えるようにしてメンテナンス性を高められるようにするには、前記筐体内において前記トラップ及び前記回収ボックスが前記炉本体よりも低い位置に配置されるものであればよい。
【0046】
(第7項)前記トラップが、一端が開閉可能に構成された外筒体と、前記外筒体内に収容されるフィン機構と、を備え、前記フィン機構が前記外筒体の一端から外部へ取り外せるように構成された請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱処理炉。
【0047】
(第8項)また、本発明に係る熱処理炉の別態様は、被処理物が内部に収容され、加熱される炉本体と、前記被処理物から放出される放出ガスを前記炉本体内から外部へ排気するガス排出流路と、前記ガス排出流路上に設けられ、前記放出ガスを冷却してその成分の少なくとも一部を液化又は固化させるトラップと、前記トラップの下方に設けられ、当該トラップから流れ出る前記放出ガスの液化成分が回収される回収ボックスと、を備え、前記回収ボックスが、前記トラップから前記液化成分が流入するインナーカップと、前記インナーカップの外側を覆うように設けられたアウターケースと、を具備する。
【0048】
第8項の熱処理炉であれば、インナーカップを使い捨てることができ、回収ボックスのメンテナンスに係る手間を大幅に低減できる。
【符号の説明】
【0049】
100 :熱処理炉
1 :炉本体
11 :圧力容器
12 :断熱体
13 :タイトボックス
13A :導入口
13B :排出口
14 :ヒータ機構
14P :ヒータプレート
2 :トラップ
21 :外筒体
22 :フィン機構
23 :内筒体
24 :液体流出口
25 :配管ヒータ
3 :回収ボックス
31 :インナーカップ
32 :ワックスポッド(アウターケース)
4 :排気ポンプ
5 :筐体
51 :壁体
52 :収容空間
53 :開口
54 :開閉扉
L :ガス排出流路
TM :捕集機構
VC :真空用クランプ
W :被処理物
図1
図2
図3
図4
図5