(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178027
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置と保線車両
(51)【国際特許分類】
B61D 15/00 20060101AFI20221125BHJP
B61L 29/28 20060101ALI20221125BHJP
B61F 13/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B61D15/00 B
B61L29/28 Z
B61F13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084515
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000101101
【氏名又は名称】アクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】塩野 幸策
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM02
5H161MM14
5H161NN02
5H161PP06
5H161PP12
5H161QQ05
(57)【要約】
【課題】 台車と車軸の間隔が変動しても一次コイルと二次コイル間の間隔が変動せず、確実に誘起電圧を得ることができる。給電効率を高めリレーも駆動できる電力を誘起できるようにする。
【解決手段】 絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置は、一次コイル及び二次コイルが車軸の周方向に横長形状であり、両コイルは電磁誘導結合可能な間隔をあけて車軸の外周に対向配置され、一次コイルは車軸の外周に回転可能に配置され且つ、台車側に連結されて車軸の回転時に回転しない回転止めとなり、二次コイルは車軸に固定されて車軸と共に回転するようにしてある。保線車両は、従来の保線車両の車軸に、前記絶縁・短絡切替え装置の一次コイルと二次コイルを対向配置し、一次コイルは車軸の回転時に回転せず、二次コイルは車軸の回転時に車軸とともに回転するようにしてある。スイッチボックスを車軸又は絶縁車輪の近くに配置した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと二次コイルとの電磁誘導結合による誘起電圧によりスイッチが開閉操作されて、絶縁車輪の内輪と外輪が完全短絡と、完全絶縁と、部分短絡に切り替えられ、完全短絡時には遮断機が降り、表示灯が点灯し、警報機が鳴り、完全絶縁時には遮断機が降りず、表示灯が点灯せず、警報機が鳴らず、部分短絡時には遮断機が降りて表示灯が点灯するが警報機は鳴らないようにした絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイル及び二次コイルは車軸の周方向に横長形状であり、両コイルは電磁誘導結合可能な間隔をあけて車軸の外周に対向配置可能であり、
一次コイルは車軸の外周に回転可能に配置され且つ台車側に連結具で連結されて車軸の回転時に回転せず、二次コイルは車軸に固定されて車軸と共に回転するように対向配置できる、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項2】
請求項1記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
絶縁・短絡切替え装置が絶縁・短絡側の送電ユニット及び受電ユニットと、LPF側の送電ユニット及び受電ユニットと、スイッチボックスを備え、
前記送電ユニットに一次コイルが、受電ユニットに二次コイルがあり、
前記スイッチボックスは絶縁・短絡径路とLPF径路を備え、絶縁・短絡径路とLPF径路の夫々がスイッチを備え、絶縁・短絡径路のスイッチの出力側に絶縁車輪が、LPF径路側のスイッチの出力側にLPFがあり、
前記絶縁・短絡径路とLPF径路の夫々のスイッチが、メカ式スイッチ又は半導体スイッチであり、
前記絶縁・短絡径路のスイッチは絶縁・短絡側の一次コイルと二次コイルの電磁誘導結合により得られた電圧で開閉され、LPF径路のスイッチはLPF側の一次コイルと二次コイルの電磁誘導結合により得られた電圧で開閉され、
絶縁・短絡径路のスイッチが閉じると内輪と外輪が短絡して完全短絡となり、
絶縁・短絡径路のスイッチが開くと内輪と外輪が短絡前の完全絶縁となり、
LPF径路のスイッチが閉じると内輪と外輪がLPFを通して短絡されて低周波の遮断機・表示灯信号はLPFを通過し、高周波の警報機信号はLPFでカットされる部分短絡になる、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイルは導線を巻いたコイルが送電側基板に装備され、二次コイルは導線を巻いたコイルが受電側基板に装備されている、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項4】
請求項3記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイルが送電側基板に印刷され、二次コイルが受電側基板に印刷されている、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項5】
請求項4記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイルは導線を巻いたコイルが送電側基板の表面と裏面の両面に印刷され、両面のコイルは巻き数が増加するように接続され、二次コイルは導線を巻いたコイルが受電側基板の表面と裏面の両面に印刷され、両面の二次コイルの巻き数が増加するように接続されている、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項6】
請求項4記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイルは送電側基板の表面と裏面の両面に印刷され、両面の一次コイルは巻き数が増加するように接続され、二次コイルは受電側基板の表面と裏面の両面に印刷され、両面の二次コイルの巻き数が増加するように接続されている、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置において、
一次コイルと二次コイルが電磁界共振結合可能である、
ことを特徴とする絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置。
【請求項8】
絶縁車輪付きの車軸を二対以上備えた保線車両において、
保線車両に請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置が装備され、
車上側に電源を制御する制御盤と、制御盤を操作する操作ボックスがあり、車両の床下側に送電ユニットと受電ユニットがあり、
一次コイルと二次コイルが共に車軸の外周に、電磁誘導可能な間隔をあけて対向配置され、一次コイルは車軸の外周に回転可能に配置され且つ台車側に連結具で連結されて車軸の回転時に回転しないように回転止めにし、二次コイルは車軸に固定されて車軸と共に回転するようにした、
ことを特徴する保線車両。
【請求項9】
請求項8記載の保線車両において、
一次コイルを備えた送電側基板と、二次コイルを備えた受電側基板を、車軸の外周に電磁誘導結合可能な間隔をあけて対向配置した、
ことを特徴する保線車両。
【請求項10】
請求項8又は請求項9記載の保線車両において、
スイッチボックスが車軸又は絶縁車輪の近くに配置されて、絶縁車輪を短絡するケーブルに接続されている、
ことを特徴する保線車両。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の保線車両において、
操作ボックスが車両の前方運転席と後方運転席に一つずつ配置されており、後から操作された操作ボックスからの指令が先に操作された操作ボックスからの指令に優先して制御盤を操作できるようにした、
ことを特徴する保線車両。
【請求項12】
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の保線車両において、
車両の前方運転席にある操作ボックスからの指令だけで制御盤を操作できるようにした、
ことを特徴する保線車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁車輪の絶縁と短絡を切り替える絶縁・短絡切替え装置と、その装置を備えた保線車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路(レール:軌道)は保線車両を用いて保守作業が行われている。保守作業は、通常、夜間に行われる。踏切の保守作業も夜間に行われる。
【0003】
軌道には、踏切監視区域に列車が入ると、踏切の遮断機を降ろし、表示灯を点灯或いは点滅(以下「点灯」という。)させるための踏切制御信号(以下「遮断機・表示灯信号」という。)と、警報機を鳴らすための踏切制御信号(以下「警報機信号」という。)が流れている。遮断機・表示灯信号はDC~50Hz程度の低周波、警報機信号は8~10kHz程度の高周波であり、両信号は重畳されて流れている。
【0004】
営業列車の左右一対の車輪は車軸を通して導通しており、左右一対のレールを導通している。営業列車が踏切監視区域に入ると、遮断機・表示灯信号と警報機信号が左右の車輪間に電流が流れて遮断機が降りて表示灯が点灯し、警報機が鳴るようにしてある。
【0005】
保線車両の車輪が営業列車の車輪と同じものであると、保線車両が踏切監視区域に入ったときも、踏切監視区域内で保守作業をしているときも、営業列車が通過する場合と同様の動作となり、遮断機が降り、表示灯が点灯し、警報機が鳴る。しかし、保線作業の多くは夜中に行われているため、夜中の保線作業中に警報機が鳴ると踏切付近の住民にとっては迷惑である。このため、保線車両には、内輪と外輪が絶縁材で絶縁されている絶縁車輪が装備されている。
【0006】
絶縁車輪が装備された保線車両は、踏切の保線作業時は踏切内にとどまるが、踏切監視区域内にとどまらずに踏切を通過するだけの場合もある。絶縁状態のままでは、軌道を流れる遮断機・表示灯用信号も警報機用信号も流れないため、保線車両が踏切を通過しても遮断機が降りず、表示灯が点灯せず、警報機が鳴らず、踏切が通行止めにならない。これを解消するため、保線車両が踏切を通過するだけの場合は、内輪と外輪を短絡して左右一対の絶縁車輪が車軸を通して導通し、踏切を通過するだけの場合でも遮断機が降り、表示灯が点灯し、警報機が鳴って踏切の通行が遮断される完全短絡状態(営業列車が踏切を通過する場合と同様の状態)になり、踏切内にとどまって保線作業をするときは絶縁車輪を短絡前の絶縁状態に戻して、警報機の鳴りが停止し、表示灯の点灯が停止し、遮断機が上がって踏切を通行できる完全絶縁状態になるようにしてある。これら、完全短絡状態、完全絶縁状態に切り替える装置として特許文献1~4がある。
【0007】
特許文献1、2の絶縁・短絡切替え装置は、絶縁車輪の内輪と外輪を、台車側に装備された一次コイル(給電側コイル)と車軸側に装備された二次コイル(受電側コイル)の電磁誘導結合により誘起される電圧でリレー式スイッチの接点を開閉して、完全短絡状態(通行止め)と完全絶縁状態(通行可能)に切り替えるものである。
【0008】
特許文献1、2の切替え装置を使用して完全絶縁状態にすれば、警報機が鳴らないので、踏切付近の住民に迷惑を掛けることなく、踏切付近及び踏切内で保線作業を行うことができるが、この状態では、踏切の遮断機が降りず、表示灯が点灯しないため、歩行者や自動車が踏切に侵入する恐れがあり、危険である。このため、踏切内作業時は完全短絡状態にするのではなく、遮断機は降り、表示灯は点灯するが、警報機だけが鳴らないようにする必要がある。
【0009】
特許文献3の切替え装置は、絶縁車輪の内輪と外輪を台車側に装備された一次コイルと車軸側に装備された二次コイルの電磁誘導結合により誘起される電圧で、左右一対の車輪間に設けた短絡回路のスイッチの接点を開閉し、閉時に絶縁車輪の内輪と外輪が短絡されて踏切が前記完全短絡状態になり、開時に内輪と外輪が短絡前の絶縁状態に戻って完全絶縁状態に切り替えられるようにしてある。更に、短絡回路にローパスフィルタ(LPF)を入れることにより、遮断機が降り、表示灯は点灯するが、警報機は鳴らない部分短絡状態(通行止めであるが警報機は鳴らない)に切替え制御可能としたものである。この切替え装置を使用すれば静かで安全な状態で踏切内作業ができる。
【0010】
特許文献4の切替え装置は、本件出願人の出願であり、本件出願時には未公開であるが、特許文献1~3と同様に、完全短絡状態と完全絶縁状態に切替え可能であり、更に、台車と車軸の間隔が変動しても、一次コイルと二次コイル間で確実に誘起電圧を得ることができる。しかし、半導体スイッチを駆動できる電力を得ることはできるが、リレースイッチを駆動できる程の電力を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公平7-016534号公報
【特許文献2】特開2000-052980号公報
【特許文献3】特開2009-018598号公報
【特許文献4】特願2020-187409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1~3の切替え装置では、台車側の一次コイルと車軸側の二次コイルが電磁誘導結合(トランス方式)であるため、両コイル間の電磁誘導結合を確実にするためには、両コイル間の間隔(ギャップ)を狭くしなければならない。しかし、保線車両の台車と車軸のギャップは、走行やレールが敷設されている地面の傾斜等により、左右方向(X軸方向)に横揺れしたり、縦方向(Y軸方向)に上下動したり、奥行き方向(Z軸方向)に傾いたりすることがある。これら変動に伴って台車と車軸の間隔が変動し、両コイル間のギャップが変動する(広くなる)。この場合、両コイル間の電磁誘導結合が不確実になり、必要な誘起電圧が得られないこともある。台車と車軸の間隔変動に対応できるようにするためには、両コイル間のギャップが広くなっても電磁誘導結合できるようにする(ギャップの動作範囲を広くする)か、機構的に間隔が広がらないようにすればよいが、広くすると両コイル間で確実な電磁誘導結合が得られないため、広くするにも限度がある。また、ギャップを広くすると一次・二次コイルが大きくなる。車両には駆動車軸と従動車軸があり、二次コイルはそのいずれの車軸にも取り付け可能であるが、駆動車軸にはギヤボックスがあるため、取り付けスペースに制約がある。このため、台車に固定される一次コイルと車軸に取り付ける二次コイルのギャップ調整に精度が要求され、車軸への二次コイルの取り付け位置の設定が難しくなり、取り付けが面倒になる。
【0013】
特許文献3では、保線車両のスイッチに、機械式接点のスイッチ(例えば、リレー)を使用しているため、リレーの駆動に比較的大きな電流が必要になる。また、リレー接点が経年劣化で迅速な開閉、正確な開閉ができなくなり、誤動作の原因になるといった難点があった。
【0014】
特許文献4は、特許文献1~3のような難点はないが、一次側・二次側のコイルの数が多いため、アッセンブリが面倒であり、コスト高にもなる。また、コイルの品質と故障率、海外製のため市場から安定供給ができ難いという難点もある。また、半導体スイッチを駆動する程度の給電能力しかなく、リレーのような機械式スイッチ(以下「メカ式スイッチ」という。)を駆動できる電力を得ることはできなかった。このため、短絡・切替えスイッチとしてリレー(リレースイッチ)を使用している従来の短絡・切替え装置には利用できないという難点もあった。
【0015】
本発明の解決課題は、ワイヤレス給電方式で、少ない数のコイルでリレーなどのメカ式スイッチを駆動するのに十分な電力を誘起でき、絶縁車輪が装備された保線車両に取り付け易く、コイルの品質信頼性も高く、故障が少なく、部品調達も、メンテナンスも容易な絶縁・短絡切替え装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置は、一次コイルと二次コイルとの電磁誘導結合による誘起電圧によりスイッチが開閉操作されて、車軸で連結されている絶縁車輪の内輪と外輪が完全短絡、完全絶縁、部分短絡に切り替えられ、軌道に流れている遮断機・表示灯信号による遮断機の昇降、表示灯の点灯・消灯、警報機信号による警報機の鳴動・停止を切替え制御できるものである。その特徴は、一次コイル及び二次コイルを車軸の周方向に細長にしたこと、一次コイルと二次コイルを共に車軸の外周に対向配置できるようにしたことである。両コイルは電磁界共振結合して電力を誘起できるようにしてある。一次コイル及び二次コイルは導線を巻いたコイルを基板に取り付けたものでも、基板にコイルを印刷したものでもよい。一次コイル、二次コイルは基板の表裏両面又は片面に設けることもできる。両面に設けた場合は両面のコイルを巻き数が増加するように接続する。
【0017】
本発明の保線車両は、前記絶縁・短絡切替え装置を装備したものであり、その特徴は、一次コイルと二次コイルを共に車軸の外周に電磁誘導結合可能なギャップをあけて対向配置し、一次コイルは、車軸が回転しても回転しないように自在継手などの連結具で台車に連結固定して回転止めにし、二次コイルは車軸の回転に伴って回転できるように車軸の外周に固定して、走行時に台車と車軸の間隔変動が発生しても、一次コイルと二次コイルの間のギャップが変化しないようにしたことにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置は、次のような効果がある。
(1)一次コイルと二次コイルが車軸の外周方向に細長であるため、車軸の外周に対向配置すると両コイルの対向距離が長くなり、対向面積が大きくなり、少ない数のコイルでも電磁誘導結合が強くなり、確実になる。このため、リレーを使用した既存の短絡・切替え装置に適用できる。
(2)一次コイルと二次コイルの数が少なくても確実に電磁誘導結合できるため、車軸外周への一次コイルと二次コイルの取り付けが容易になり、故障も少なくなり、保守も容易になる。
(3)一次コイルと二次コイルの数が少ないため、多くのコイルを間隔をあけてリング状に配置する場合のように、隣接するコイル間にスペースがなく、コイルを小型化できるため、台車の下の狭い設置スペースにも設置し易くなる。コイルのアッセンブリも容易になり、コストも低減できる、
(4)一次コイルと二次コイルを車軸と台車の相対位置変位が変化しない機構にし、更に、電磁界共振結合できるようにしてあるので、メカ式スイッチでも駆動できる電力が得られる。
(5)一次コイル、二次コイルが基板に印刷されたものの場合は、特に故障しにくくなり、品質の信頼性が向上する。国内生産でき、安定供給ができ、交換などの保守に迅速に対応できる。
(6)一次コイル、二次コイルを、一枚の基板の両面に設けて、両面のコイルを巻き数が多くなるように接続すれば、小型の一次コイル、二次コイルでもメカ式スイッチを駆動可能な電力を誘起できる。
【0019】
本発明の保線車両は次のような効果がある。
(1)車両の車軸に、前記絶縁・短絡切替え装置が装備されているので、当該絶縁・短絡切替え装置の効果を備えた保線車両となる。
(2)一次コイルと二次コイルが共に車軸の外周に配置されているため、車両が揺れたり、振動したり、傾いたりして、台車と車軸の間隔が変動しても、両コイルの対向間隔は確保され、電磁誘導結合による誘起電力が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置の全体概要図。
【
図2】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置における操作ボックスと制御盤の説明図。
【
図3】本発明における送電ユニットと受電モジュールの説明図。
【
図4】本発明におけるスイッチボックスの概要説明図であり、(a)は切替えスイッチがリレーの場合の説明図、(b)は半導体スイッチの場合の説明図。
【
図5】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置における一次コイルの説明図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図、(c)は基板表面のコイルと裏面のコイルの結線図。
【
図6】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置における二次コイルの説明図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図、(c)は基板表面のコイルと裏面のコイルの結線図。
【
図7】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置を車軸へ取り付けた状態の断面図。
【
図8】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置の分解図。
【
図9】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置を車軸へ取り付けた状態であり、(a)はラジアル軸受けの取付け断面図、(b)はスラスト軸受けの取付け断面図。
【
図10】本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置を車軸へ取り付けた外観図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
本発明の絶縁車輪の絶縁・短絡切替え装置(以下単に「絶縁・短絡切替え装置」と記す。)の一例を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の絶縁・短絡切替え装置の概要図であり、絶縁車輪Bは既存の絶縁車輪と同様に、内輪B1と外輪B2と絶縁材B3が同心円状に配置されて、内輪B1と外輪B2が絶縁されている。絶縁車輪Bは二つが車軸(輪軸)Aで連結されて一本としてある。絶縁車輪は一両の車両の台車に二本以上装備されている。この場合、いずれか一本の絶縁車輪が駆動車輪、他が従動車輪である。
【0023】
[絶縁・短絡切替え装置の概要]
図1の絶縁・短絡切替え装置は、保線車両の車上側に操作ボックス1と、操作ボックス1からの操作によって動作する制御盤2がある。保線車両の床下側に絶縁・短絡側の送電ユニット3、LPF側の送電ユニット4、絶縁・短絡側の受電モジュール8とLPF側の受電モジュール9をまとめた受電ユニット5を設け、一方の絶縁車輪Bにスイッチボックス17を設けてある。スイッチボックス17はリレー接点回路(
図4(a))又は半導体スイッチ回路(
図4(b))が内蔵されている。
【0024】
[操作ボックス]
図1の操作ボックス1は絶縁ボタン1a、短絡ボタン1b、LPF(短絡)ボタン1cを備えている。これらボタンの操作により制御盤2を操作して、制御盤2からの+24VのDC電圧の給電、停止を設定するものである。これらボタンは押すとランプが点灯する照光式押しボタン式にして、絶縁ボタン1aを押すと青色、短絡ボタン1bを押すと赤色、LPFボタン1cを押すと橙色に点灯するようにしてある。各ボタンの色は何色であってもよい。
図1、
図2の操作ボックス1は二つあり、車両の前方運転席と後方運転席に一つずつ配置されており、後から操作された操作ボックス1からの指令が先に操作された操作ボックス1からの指令に優先して制御盤2を操作できるようにすることも、前方運転席にある操作ボックス1からの指令だけで制御盤2を操作できるようにすることもできる。
【0025】
[制御盤]
図1の制御盤2は、車両電源+24VDCを送電ユニット3(4)(
図1、
図3)に給電するものであり、操作ボックス1のボタン操作により給電又は給電停止となる。
【0026】
[送電ユニット]
図1の絶縁・短絡側の送電ユニット3と、LPF側の送電ユニット4は同じ構成であるため、以下の説明では、絶縁・短絡側の送電ユニット3について説明し、LPF側の送電ユニット4の説明は省略する。また、絶縁・短絡側の送電ユニット3を単に送電ユニットということもある。
【0027】
[絶縁・短絡側の送電ユニット]
図1の送電ユニット3は、
図3のように送電ユニット3(4)と送電側コイル(一次コイル)L2を備えている。一次コイルL2は
図5のように約1/4円板状の送電側基板30の円周方向に横長である。送電側基板30の形状は他の形状、例えば、半円板状であってもよく、この場合は、一次コイルL2の形状も送電側基板30の形状に合わせて変える(略半円状にする)。
【0028】
送電ユニット3は制御盤2から給電される+24VDCをAC(150kHz)に変換して出力するものであり、
図3のように発振器11、ゲートドライバ12、二つのMOSFETQ1、Q2、コイルL1、コンデンサC1、コンデンサC2を備えている。コイルL1、コンデンサC1は駆動信号の方形波を正弦波に変換するLPFを構成している。コンデンサC2は一次コイルL2との共振コンデンサである。
【0029】
[絶縁・短絡側の受電モジュール]
図1の受電モジュール8は、
図3のように二次コイルL3は半円板状の受電側基板40にコイルL3a、L3bを設けた半円状の二つの受電パーツ5a、5bを円形に組み合わせてある。コイルL3a、L3bは半円板状の受電側基板40の半円方向に横長である。この受電モジュール8は、絶縁・短絡側とLPF側が同じ構成である。
【0030】
図3の受電モジュール8は二次コイルL3(L3は半円状のコイルL3a、L3bを二枚使用している)に誘起される電力をスイッチボックス17(
図1、
図3)に出力するものであり、
図3のよう二次コイルL3との共振コンデンサC3、二次コイルL3に誘起される電圧を整流するブリッジ式の整流回路15、3端子レギュレータ16を備えている。3端子レギュレータ16は安定化電源であり、受電モジュールの出力電圧を12Vに変換してスイッチボックス17のスイッチ回路(
図4(a)(b))に供給するものである。
【0031】
[電磁界共振結合]
一次コイルL2と二次コイルL3は、電磁誘導結合可能なギャップG(
図3)を設けて対向配置されており、二次コイルL3にコンデンサC3(
図4)を入れて、非接触で電磁界共振結合するようにしてある。
【0032】
[スイッチ回路の実施例1]
図1のスイッチボックス17は
図4(a)のように絶縁・短絡径路20とLPF短絡径路21の二つの径路の夫々にメカ式スイッチ(例えば、リレーRLY1、RLY2)SW1、SW2を備えたものである。スイッチボックス17の絶縁・短絡径路20のスイッチSW1は絶縁・短絡側の受電モジュール8(
図3)から供給される電圧によりON、OFFし、LPF側のスイッチSW2はLPF側の受電モジュール9(
図3)から供給される電圧によりON、OFFする。なお、スイッチSW1とSW2は同時ONになることはないように構成されている。
【0033】
[スイッチ回路の実施例2]
図1のスイッチボックス17は、可能であれば、
図4(b)のような構成とすることもできる。
図4(b)のスイッチボックス17は絶縁・短絡径路20とLPF径路21の二つの径路の夫々に半導体スイッチ(例えば、MOSFETスイッチ)SW1、SW2を使用した場合である。半導体スイッチSW1、SW2には汎用のMOSFETを使用することができる。
図4(b)の絶縁・短絡径路20とLPF径路21の夫々には表示灯(LED1、LED2)が挿入されている。LED1は絶縁・短絡径路20のスイッチがONとなると点灯して絶縁・短絡側が作動していることを表示し、LED2はLPF径路21のスイッチがONとなると点灯してLPF側が作動していることを表示するようにしてある。
【0034】
スイッチボックス17(
図1)内のスイッチ回路(
図4(a)(b))は
図1のようにLPF6と接続され、LPF側の受電モジュールが動作した場合のみ動作するようにしている。また、絶縁車輪Bを短絡するケーブル18(
図1)とも接続する必要がある。短絡時にケーブル18に流れる電流の最大値は約30Aと大きいので、太く、短い長さのケーブルを使用する必要がある。スイッチボックス17のスイッチSW1、SW2を受電ユニット5(
図1)の中に組み込むと配線が長くなり内部抵抗が増加する。内部抵抗の増加を防止するためには、太いケーブルを使用しなければならなくなる。ケーブルが太くなると剛性が高まり、引き回しなどの作業性が悪くなる。本発明では、これら問題を解消するため、スイッチ回路(
図4(a)又は
図4(b))を受電ユニット5(
図1)とは別に、スイッチボックス17(
図1)にまとめて、一方の絶縁車輪B(
図1)側に設けてある(外付けにしてある)。
【0035】
[LPF]
LPF6(
図1)には汎用のものを使用可能である。LPF6はLPF径路21(
図4(a)(b))の出力側に接続されており、車軸A(
図1)側に設けてある。
【0036】
[送電ユニットの具体的構成]
絶縁・短絡側とLPF側の送電ユニット3、4(
図1、
図3)の具体的構成は同じであるため、以下の説明では絶縁・短絡側の送電ユニット3の具体的構成だけを説明し、LPF側の具体的構成は省略する。
【0037】
[一次コイル、二次コイル]
図5は一次コイル、
図6は二次コイルの説明図である。送電ユニット3の一次コイルL2(
図3)は約1/4円板状の一枚の送電側基板30に横長に設けてあり、取り付ける車軸Aの周方向に横長の略半円形状である。受電ユニット5の二次コイルL3(
図3)は半円板状の二枚の受電側基板40の夫々に設けてあり、取り付ける車軸Aの周方向に横長の略半円形状である。一次コイルL2も二次コイルL3も前記形状であれば、巻き径、巻き数等は任意に設計可能である。送電側基板30、受電側基板40は共に、絶縁性の樹脂製である。
【0038】
一次コイルL2は導線を
図5(a)(b)のように横長に巻いたコイルを送電側基板30に固定するとか、送電側基板30に印刷するなどして形成することができる。二次コイルL3も導線を
図6(a)(b)のように横長に巻いたコイルを受電側基板40に固定するとか、受電側基板40に印刷するなどして形成することができる。
【0039】
一次コイルL2は一枚の送電側基板30の表裏両面に設けることも、片面にだけ設けることもできる。二次コイルL3も受電側基板40の夫々の表裏両面に設けることも、片面にだけ設けることもできる。
図5(a)(b)は一次コイルL2を一枚の送電側基板30の表面と裏面の両面に設けた場合の一例である。表面(
図5(a))に設けた表面側コイル30aと、裏面(
図5(b))に設けた裏面側コイル30bを同じ形状、同じ巻き径、巻き数とし、表面側コイル30aの巻き終端31b(
図5(a))と、裏面側コイル30bの巻き始端31c(
図5(b))を
図5(c)のように接続(結線)して、コイルを送電側基板30の表裏いずれかの片面にだけ設けた場合の2倍の巻き数にしてある。表面側コイル30aの巻き始端31a(
図5(a))と裏面側コイル30bの巻き終端31d(
図5(b))は出力端としてある。
【0040】
二次コイルL3を
図6(a)(b)のように、二枚の受電側基板40の夫々の表面と裏面の両面に設けた場合も、
図5(a)(b)の一次コイルL2の場合と同様に、表面側コイル40aの巻き終端41b(
図6(a))と、裏面側コイル40bの巻き始端41c(
図6(b))を
図6(c)のように接続(結線)して、コイルを受電側基板40の表裏いずれかの片面にだけ設けた場合の2倍の巻き数にしてある。
【0041】
[車軸への一次コイルと二次コイルの取り付け]
前記した一次コイルL2と二次コイルL3は、
図7、
図8のように、車両の車軸Aに取り付けられる。
図7、
図8では車軸Aの外周に被せたバンド60の外側に、半円状の二つの固定具70をリング状に被せ、両固定具70を螺子締めして車軸Aに固定してある。固定具70はその周方向に凹溝71を備えており、その凹溝71(
図8)に半円状の二枚の支持盤80(
図8)をリング状に配置し、夫々の支持盤80の表裏両面に一次コイルL2を備えた送電側基板30を取り付け、支持盤80の両側面に二次コイルL3を備えた受電側基板40を固定し、二次コイルL3の外側に保護カバー90を設けてある。
【0042】
バンド60は弾性を備え、滑りにくい材質製、例えば、ゴム製や樹脂製としてある。固定具70は金属製であり、内部が中空であり、中空部内に配線したり、電子部品を内蔵したりすることができる。
【0043】
支持盤80は金属製であり、半円盤状であり、
図7、
図8のように半円弧状の内周面にラジアル軸受け81とスラスト軸受け82を取り付けてある。ラジアル軸受け81とスラスト軸受け82は凹溝71内に嵌合配置され、
図9(a)のように、ラジアル軸受け81は凹溝71の底面に回転可能に接触し、スラスト軸受け82は
図9(b)のように凹溝71の側面に接触している。また、支持盤80の外周面に自在接手などの連結具100(
図10)を突設し、この連結具100を保線車両の台車に連結固定して、車軸Aが回転して固定具70が回転しても、ラジアル軸受け81が回転し、支持盤80は回転しないように回り止めにしてある。また、スラスト軸受け82が凹溝71の側面に接触しているため、台車が横揺れしても支持盤80は横移動せず、一次コイルL2と二次コイルL3の対向間隔が変動しないようにもしてある。
図10の101は給電ケーブルであり送電ユニット3(4)(
図3)に電源24Vを給電するためのものである。
【0044】
一次コイルL2と二次コイルL3は電磁誘導結合可能な間隔を設けて対向配置されている。この場合、支持盤80の表面に取り付けてある一次コイルL2と、固定具70の表面に取り付けて一次コイルL2と対向配置してある二次コイルL3とを絶縁・短絡側のコイルとし、支持盤80の裏面に取り付けてある一次コイルL2と、固定具70の裏面に取り付けて一次コイルL2と対向配置してある二次コイルL3とをLPF側のコイルとしてある。
【0045】
[半導体スイッチを用いた場合]
スイッチボックス17に半導体スイッチSW1、SW2を使用した場合(
図4(b))は、半導体スイッチSW1、SW2を基板に実装する。基板は受電側基板40であってもよく、それらとは別体の基板(図示しない)であってもよい。半導体スイッチは放熱するため、半導体スイッチの近くに放熱板を設けるのが望ましい。
【0046】
[保線車両]
本発明の保線車両は、従来の保線車両と同様に、二以上の車軸に絶縁車輪Bを備えており、一本を駆動車輪、他は従動車輪としてある。
【0047】
本発明の保線車両は、本発明の絶縁・短絡切替え装置を
図10のように少なくとも、いずれか一本の車軸Aに取り付けてある。また、従来の保線車両と同様に、操作ボックス1、その他の機器を備えている。
【0048】
[絶縁・短絡切替え装置の動作]
本発明の絶縁・短絡切替え装置の動作について、操作ボックス1(
図2)の短絡ボタンが押された場合、絶縁ボタンが押された場合、LPFボタンが押された場合に分けて説明する。以下の説明は、一本の車軸に装備されている左右の絶縁車輪Bのうち、一方の絶縁車輪Bの外輪B2と内輪B1を常時短絡しておき(
図1)、他方の絶縁車輪Bの外輪B2と内輪B1を絶縁・短絡して踏切の遮断機、表示灯、警報機を、前記した完全短絡状態と完全絶縁状態と部分短絡状態に切り替え操作する場合である。車両によっては、両絶縁車輪Bを切替え式とする場合もある。
【0049】
[操作ボックスの短絡ボタンが押された場合]
(1)作業員が、車上の操作ボックス1(
図2)の短絡ボタン1bを押すと、制御盤2(
図2)から、+24VDCの電圧が絶縁・短絡側の送電ユニット3に供給される。このとき短絡ボタン1bが赤色に照光する。
(2)給電された+24VDCは、送電ユニット3で約150kHzの高周波に変換されて一次コイルL2に流れ、電磁誘導結合により二次コイルL3(
図3)に電圧が誘起される。このとき、共振コンデンサC2、C3(
図3)があるため、一次コイルL2と二次コイルL3は電磁界共振結合して、電力が誘起される。誘起電圧は受電モジュールの整流回路15で整流されてスイッチボックス17(
図4(a)又は(b))に給電される。
(3)給電された電圧により絶縁・短絡径路のメカ式スイッチSW(
図4(a))又は半導体スイッチSW(
図4(b))が作動(ON)の状態になり、絶縁車輪Bの内輪B1と外輪B2が短絡される。この短絡により、軌道を流れる遮断機・表示灯用信号と警報機用信号が左右の絶縁車輪に流れて遮断機が降り、表示灯が点灯し、警報機が鳴って、踏切が通行止めされる完全短絡状態になる。
【0050】
[操作ボックスの絶縁ボタンが押された場合]
作業員が前記操作ボックス1の絶縁ボタン1a(
図2)を押すと、+24VDCが制御盤2から送電ユニットに給電されず、一次コイルL2と二次コイルL3は電磁誘導結合せず、電圧が誘起されない。このため、制御回路10(
図4)のスイッチSWが開き、絶縁車輪Bの内輪B1と外輪B2が短絡されず、短絡前の絶縁状態のままとなり、軌道を流れる遮断機・表示灯用信号も警報機用信号も左右の絶縁車輪間に流れず、遮断機が上がり、表示灯が消灯し、警報機が停止して、踏切が通行可能な完全絶縁状態になる。このとき絶縁ボタン1aが青色に照光する。
【0051】
[操作ボックスのLPFボタンが押された場合]
(1)作業員が前記操作ボックス1のLPFボタン1c(
図2)を押すと、制御盤2からの+24VDCが送電ユニット4(
図1)に給電される。
(2)給電された+24VDCは、送電ユニット4(
図1)の送電ユニット3(
図3)で交流に変換されて一次コイルL2に流れ、電磁界共振結合により二次コイルL3(
図3)に電圧が誘起される。このときも、共振コンデンサC2、C3があるため、送電側コイルL2と受電側コイルL3は電磁界共振結合して電圧が効率良く誘起される。誘起電圧(電流)は受電モジュールの整流回路15(
図3)で整流されてスイッチボックス17(
図3)に供給される。
(3)給電された電圧により、LPF径路21(
図4)のメカ式スイッチSW(
図4(a))又は半導体スイッチSW(
図4(b))が作動(ON)の状態になり、絶縁車輪Bの内輪B1と外輪B2が短絡される。この短絡により、軌道を流れる遮断機・表示灯用信号と警報機用信号が左右の車輪間に流れるが、LPF6を通して流れるため、低周波の遮断機・表示灯用信号は通過するが、高周波の遮断機用信号はカットされる。このため、遮断機が降り、表示灯は点灯するが、警報機は鳴らない通行止めの状態(部分短絡状態)になり、静かな状態で踏切内の保線作業を行うことができる。このときLPFボタン1cが橙色に照光する。
【0052】
保線車両は横揺れしたり、上下動したり、傾いたりする(変動する)が、本発明の絶縁・短絡切替え装置は前記したように、一次コイルL2と二次コイルL3が共に車軸Aに取り付けられ、一次コイルL2を備えた支持盤80が連結具100で車体に連結固定され、ラジアル軸受け81と、スラスト軸受け82で支持されていることから、前記変動しても一次コイルL2と二次コイルL3の対向間隔が変動せず、常に安定した電磁誘導結合が可能となる。
【0053】
(他の実施形態)
前記実施形態の回路構成、回路の動作、台車及び車軸への本発明の絶縁・短絡切替え装置の取付け構造等はあくまでも一例であるため、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱せず、解決課題を解決できる限りにおいて種々の変形、変更が可能である。
【0054】
前記実施形態は、左右の絶縁車輪の一方が常時短絡(
図1)で、他方を本発明の絶縁・短絡切替え装置で切替え制御する場合であるが、両方の絶縁車輪を本発明の絶縁・短絡切替え装置で切替え制御することもできる。
【0055】
前記実施形態は、絶縁・短絡側の送電ユニットと受電ユニットを同じ構成としてあるが、本発明の課題を解決できれば、異なる構成であってもよい。
【0056】
前記実施形態は、一次コイルL2が一つ(一次コイルL2を設けた送電側基板30が一枚)、二次コイルL3が二つ(二次コイルL3を設けた受電側基板40が二枚)の場合であるが、一次コイルL2も二次コイルL3もそれより多くの枚数(車軸Aの外周にリング状に配置できる数枚)の基板に設けることもできる。また、一枚の基板に、二以上のコイルを横に並べて設けることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 操作ボックス
1a 絶縁ボタン
1b 短絡ボタン
1c LPF(短絡)ボタン
2 制御盤
3 (短絡・絶縁側の)送電ユニット
4 (LPF側の)送電ユニット
5 受電ユニット
5a、5b 受電パーツ
6 ローパスフィルタ(LPF)
8 (短絡・絶縁側の)受電モジュール
9 (LPF側の)受電モジュール
11 発振器
12 ゲートドライバ
14 コネクタ
15 整流回路
16 3端子レギュレータ
17 スイッチボックス
18 ケーブル
20 絶縁・短絡径路
21 LPF径路
30 送電側基板
30a (送電側基板の)表面側コイル(一次コイル)
30b (送電側基板の)裏面側コイル(一次コイル)
31a (送電側基板の表面側コイルの)巻き始端(一次コイル)
31b (送電側基板の表面側コイルの)巻き終端(一次コイル)
31c (送電側基板の裏面側コイルの)巻き始端(一次コイル)
31d (送電側基板の裏面側コイルの)巻き終端(一次コイル)
40 受電側基板
40a (受電側基板の)表面側コイル(二次コイル)
40b (受電側基板の)裏面側コイル(二次コイル)
41a (受電側基板の表面側コイルの)巻き始端(二次コイル)
41b (受電側基板の表面側コイルの)巻き終端(二次コイル)
41c (受電側基板の裏面側コイルの)巻き始端(二次コイル)
41d (受電側基板の裏面側コイルの)巻き終端(二次コイル)
60 バンド
70 固定具
71 (固定具の)凹溝
80 支持盤
81 ラジアル軸受け
82 スラスト軸受け
90 保護カバー
100 連結具(自在継手)
101 給電ケーブル
A 車軸
B 絶縁車輪
B1 内輪
B2 外輪
B3 絶縁材
D、D1、D2 ダイオード
G 一次コイルと二次コイルのギャップ(間隔)
L1 コイル
L2 送電側(一次)コイル
L3 受電側(二次)コイル
L3a コイル
L3b コイル
Q1、Q2 MOSFET
SW1、SW2 スイッチ(半導体スイッチ、リレースイッチ)