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特開2022-178031感染予測装置、感染予測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178031
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】感染予測装置、感染予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/80 20180101AFI20221125BHJP
【FI】
G16H50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084525
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】相馬 健人
(72)【発明者】
【氏名】小戸 司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】大曲 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】山元 佳
(72)【発明者】
【氏名】野本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】松永 展明
(72)【発明者】
【氏名】田島 太一
(72)【発明者】
【氏名】美代 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅通
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】感染の原因を含めて、患者の感染症の感染の可能性を予測し得る、感染予測装置、感染予測方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】感染予測装置100は、患者の検体検査に関する検体検査データ、及び患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得部10と、検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化部21と、患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類部22と、検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、検査データから求められた統計と患者状態データの分類結果とを入力し、予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測部30と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得部と、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化部と、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類部と、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測部と、
を備えている、ことを特徴とする感染予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該感染予測装置が、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化部を更に備え、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測部が、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とする感染予測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の感染予測装置であって、
前記予測部が、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とする感染予測装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化部が、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とする感染予測装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類部が、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とする感染予測装置。
【請求項6】
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする感染予測方法。
【請求項7】
請求項6に記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該感染予測方法が、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化ステップを更に有し、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測ステップにおいて、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とする感染予測方法。
【請求項8】
請求項7に記載の感染予測方法であって、
前記予測ステップにおいて、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とする感染予測方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化ステップにおいて、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とする感染予測方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれかに記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類ステップにおいて、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とする感染予測方法。
【請求項11】
コンピュータに、
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を実行させる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該プログラムが、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化ステップを更に実行させ、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測ステップにおいて、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムであって、
前記予測ステップにおいて、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項11~13のいずれかに記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化ステップにおいて、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項11~14のいずれかに記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類ステップにおいて、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症に感染している可能性を予測するための、感染予測装置、及び感染予測方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療現場においては、医療行為を要因とした院内感染が起こることがあり、院内感染の発生を抑制することは重要である。但し、高度の医療を行う現場である病院において感染症を完全に抑え込むことは極めて困難であることから、院内感染によって感染症が発生した患者を早期に見つけ出して、適切な治療を行うことがより重要である。
【0003】
このため、例えば、特許文献1は、患者の感染症に対するリスクを判定するシステムを開示している。特許文献1に開示されたシステムは、「糖尿病」、「肝疾患」等のリスクファクターに対するリスクスコアと、リスクスコアをリスクレベルに換算するための判定基準とに、医師が入力する患者情報を適用することで、患者の感染源に対する抵抗力を5段階で評価する。
【0004】
特許文献1に開示されたシステムを用いれば、医療行為を受けた患者が院内感染によって感染するリスクを判定できるので、感染しやすい患者を重点的に監視でき、院内感染の発生を抑制できるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-220034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の医療現場では、院内感染が発生する原因を特定することまでが求められているが、特許文献1に開示されたシステムは、患者が院内感染しやすいかどうかを判定するに過ぎず、当該システムでは、原因の特定は不可能である。
【0007】
本発明の目的の一例は、感染の原因を含めて、患者の感染症の感染の可能性を予測し得る、感染予測装置、感染予測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における感染予測装置は、
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得部と、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化部と、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類部と、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における感染予測方法は、
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0010】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、感染の原因を含めて、患者の院内感染の可能性を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1における感染予測装置の概略構成を示す構成図である。
図2図2は、実施の形態1における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。
図3図3は、患者の検体検査に関する検査データの統計化の一例を示す図である。
図4図4は、患者の状態を示す患者状態データの分類化の一例を示す図である。
図5図5は、患者に対して行われた処置に関する処置データの統計化の一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態1において機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態1における感染予測装置の動作を示すフロー図である。
図8図8は、図7に示した予測処理を具体的に示すフロー図である。
図9図9は、実施の形態2における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。
図10図10は、患者に対して行われた薬剤の処方に関する薬剤データの統計化の一例を示す図である。
図11図11は、患者の体調に関する体調データの統計化の一例を示す図である。
図12図12は、実施の形態2において機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。
図13図13は、実施の形態2における感染予測装置の動作を示すフロー図である。
図14図14は、実施の形態3における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。
図15図15は、患者に対して行われた手術に関する手術データの統計化の一例を示す図である。
図16図16は、患者に対して登録された病名に関する病名データの統計化の一例を示す図である。
図17図17は、実施の形態3においてSSI予測モデルの機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。
図18図18は、実施の形態3における感染予測装置の動作を示すフロー図である。
図19図19は、図18に示した予測処理を具体的に示すフロー図である。
図20図20は、実施の形態1~3における感染予測装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1における、感染予測装置、感染予測方法、及びプログラムについて、図1図8を参照しながら説明する。
【0014】
[装置構成]
最初に、実施の形態1における感染予測装置100の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1における感染予測装置の概略構成を示す構成図である。
【0015】
図1に示す実施の形態1における感染予測装置100は、感染症に感染している可能性を予測するための装置である。図1に示すように、感染予測装置100は、データ取得部10と、検体検査データ統計化部21と、患者状態データ分類部22と、予測部30とを備えている。
【0016】
データ取得部10は、患者の検体検査に関する検体検査データ、及び患者の状態を示す患者状態データを取得する。検体検査データ統計化部21は、検体検査データの統計を求める。患者状態データ分類部22は、患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する。
【0017】
予測部30は、検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと感染症との関係を機械学習している予測モデルに、検体検査データから求められた統計と患者状態データの分類結果とを入力する。そして、予測部14は、予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測する。
【0018】
このように、実施の形態1では、感染の可能性の予測に用いられる予測モデルは、検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと感染症との関係を機械学習している。このため、実施の形態1によれば、感染の原因を含めて、患者の感染症への感染の可能性を予測することができる。
【0019】
続いて、図2図5を用いて、実施の形態1における感染予測装置の構成及び機能について具体的に説明する。図2は、実施の形態1における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。図3は、患者の検体検査に関する検体検査データの統計化の一例を示す図である。図4は、患者の状態を示す患者状態データの分類化の一例を示す図である。図5は、患者に対して行われた処置に関する処置データの統計化の一例を示す図である。
【0020】
図2に示すように、実施の形態1では、感染予測装置100は、上述したデータ取得部10、検体検査データ統計化部21、患者状態データ分類部22、及び予測部30に加えて、処置データ統計化部23と、記憶部40とを備えている。また、これらのうち、検体検査データ統計化部21、患者状態データ分類部22、及び処置データ統計化部23は、予測モデルに入力するデータの前処理を行う前処理部20として機能する。
【0021】
また、図2に示すように、実施の形態1では、予測モデルとして、カテーテル血流感染症予測モデル41と、尿路感染症予測モデル42と、原因菌予測モデル43とが用いられており、これらは記憶部40に格納されている。
【0022】
図2に示すように、データ取得部10は、上述した、検体検査データ及び患者状態データに加えて、患者に対して行われた処置に関する処置データも更に取得する。データ取得部10のデータの取得先としては、ネットワーク等によってデータ通信可能に接続された端末装置、キーボード等の入力装置が挙げられる。
【0023】
図3に示すように、検体検査データとしては、例えば、患者の白血球、赤血球、血小板といった血液検査で得られたデータが挙げられる。図3の例では、患者Aの入院からカテーテル挿入までの期間1と、患者Aのカテーテル挿入から感染症の疑いが発生したときまでの期間2とで行われた、白血球数の検査で得られたデータが、検体検査データとして示されている。
【0024】
検体検査データ統計化部21は、実施の形態1では、例えば、図3に示すように、期間毎に、白血球数の検査結果から、最大値、及び最小値を特定し、更に、平均値を算出し、得られた最大値、最小値、及び平均値を、検体検査データの統計とする。なお、検体検査データ統計化部21は、最大値、最小値、及び平均値のいずれか一つのみを統計としても良いし、平均値の代わりに分散等が用いられても良い。
【0025】
図4に示すように、患者状態データとしては、例えば、感染症の疑いのあった日における、患者の体温、血圧(収縮期)、脈拍(HR:Heart Rate)、酸素飽和度(SPO2)等が挙げられる。また、患者状態データには、これら以外の項目が含まれていても良いし、これらのいずれかが省略されていても良い。更に、患者状態データには、患者の個人情報、例えば、年齢、性別、入院期間、カテーテルの挿入の有無、等が含まれていても良い。
【0026】
患者状態データ分類部22は、実施の形態1では、例えば、図4に示すように、予め設定されている分類ルールに従って、患者状態データの各値をカテゴリ「-3」から「3」のいずれに分類する。なお、カテゴリは、例えば、下記の参照文献に示すNEWS(National Early Warning Score)に基づいて設定されていても良い。また、患者状態データに、上述した患者の個人情報が含まれている場合、個人情報については分類が行われなくても良い。
参照文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/25/6/25_25_453/_pdf/-char/en
【0027】
図5に示すように、処置データとしては、例えば、患者に対して行われた歯科処置の実施日等を示すデータが挙げられる。図5の例では、患者Aの入院からカテーテル挿入までの期間1と、患者Aのカテーテル挿入から感染症の疑いが発生したときまでの期間2とで行われた、歯科処置が処置データとして示されている。
【0028】
処置データ統計化部23は、データ取得部10によって取得された処置データの統計を求める。処置データ統計化部23は、実施の形態1では、例えば、図5に示すように、各期間で行われた歯科処置の回数を求め、求めた期間毎の歯科処置の回数を統計とする。なお、実施の形態1において、処置データの対象となる処置は、歯科処置に限定されるものではない。
【0029】
予測モデルは、実施の形態1では、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習している。図2に示すように、予測モデルとして、カテーテル血流感染症予測モデル41と、尿路感染症予測モデル42と、原因菌予測モデル43とが用いられる。
【0030】
カテーテル血流感染症予測モデル41は、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習することによって構築された機械学習モデルである。
【0031】
尿路感染症予測モデル42は、検体検査データの統計、及び患者の状態のカテゴリと、尿路感染症と、の関係を機械学習することによって構築された機械学習モデルである。
【0032】
原因菌予測モデル43は、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル血流感染症の原因菌と、の関係を機械学習することによって構築された機械学習モデルである。
【0033】
予測部30は、実施の形態1では、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43といった予測モデルに、検体検査データから求められた統計、患者状態データの分類結果、及び処置データから求められた統計を、入力する。そして、予測部30は、各予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測する。予測部30における処理については、後述する。
【0034】
ここで、図6を用いて、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43における機械学習について説明する。図6は、実施の形態1において機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。
【0035】
図6に示すように、カテーテル血流感染症予測モデル41用の訓練データは、カテーテル血流感染症の有無を正解ラベルとし、データ取得先の患者の年代、性別、入院期間、白血球数、血圧のカテゴリ、及び歯科処置の回数で構成されている。
【0036】
また、図6に示すように、尿路感染症予測モデル42用の訓練データは、尿路感染症の有無を正解ラベルとし、データ取得先の患者の年代、性別、入院期間、C-リアクティブ・プロテイン(CRP)、及び酸素飽和度のカテゴリで構成されている。
【0037】
更に、図6に示すように、原因菌予測モデル43用の訓練データは、CNS(コアクラーゼ陰性菌)が原因かどうかを正解ラベルとし、データ取得先の患者の年齢、性別、入院期間、白血球数、血圧のカテゴリ、及び歯科処置の回数で構成されている。
【0038】
各予測モデルの機械学習は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク、グラフ畳み込みネットワーク、サポートベクトルマシン、回帰モデル等に、訓練データの説明変数を入力し、出力された値が正解ラベルと一致するように、パラメータを更新することによって行われる。
【0039】
[装置動作]
次に、実施の形態1における感染予測装置100の動作について図7を用いて説明する。図7は、実施の形態1における感染予測装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図1図6を参照する。実施の形態1では、感染予測装置100を動作させることによって、感染予測方法が実施される。よって、実施の形態1における感染予測方法の説明は、以下の感染予測装置100の動作説明に代える。
【0040】
最初に、図7に示すように、データ取得部10は、検体検査データ、患者状態データ、及び処置データを取得する(ステップA1)。そして、データ取得部10は、取得した、検体検査データ、患者状態データ、及び処置データを、前処理部20に入力する。
【0041】
次に、検体検査データ統計化部21は、ステップA1で取得された検体検査データの統計を求める(ステップA2)。具体的には、検体検査データ統計化部21は、例えば、図3に示すように、期間毎に、白血球数の検査結果から、最大値、及び最小値を特定し、更に、平均値を算出する。
【0042】
次に、患者状態データ分類部22は、ステップA1で取得された患者の患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する(ステップA3)。具体的には、患者状態データ分類部22は、例えば、図4に示すように、予め設定されている分類ルールに従って、患者の体温、血圧(収縮期)、脈拍、(HR:Heart Rate)、酸素飽和度等を、カテゴリ「-3」から「3」のいずれに分類する。
【0043】
次に、処置データ統計化部23は、ステップA1で取得された処置データの統計を求める(ステップA4)。具体的には、処置データ統計化部23は、例えば、図5に示すように、各期間で行われた歯科処置の回数を求め、求めた期間毎の歯科処置の回数を統計とする。
【0044】
次に、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43に、ステップA2~A4で求められた統計を入力する。そして、予測部30は、各予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測し、予測結果を出力する(ステップA5)。
【0045】
続いて、図8を用いて、図7に示した予測処理(ステップA5)についてより具体的に説明する。図8は、図7に示した予測処理を具体的に示すフロー図である。
【0046】
図8に示すように、最初に、予測部30は、患者に対してカテーテルの挿入が行われているかどうかを判定する(ステップA51)。外部からカテーテルの挿入の有無について通知がなされている場合は、予測部30は、通知に基づいて判定する。患者状態データに付加されている患者の個人情報に、カテーテルの挿入の有無が含まれている場合は、予測部30は、患者状態データに基づいて判定する。
【0047】
ステップA51の判定の結果、患者に対してカテーテルの挿入が行われている場合(ステップA51:Yes)は、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41に、ステップA2で求められた統計、ステップA3で求められた統計(分類結果)、及びステップA4で求められた統計を、入力する(ステップA52)。
【0048】
そして、カテーテル血流感染症予測モデル41は、出力として、「カテーテル血流感染症」又は「非感染症」を出力するので、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41の出力結果に基づいて、陽性かどうかを判定する(ステップA53)。
【0049】
ステップA53の判定の結果、陽性でない場合(ステップA53:No)は、予測部30は、感染症の可能性は無いと判定し、判定結果を予測結果として出力する(ステップA56)。
【0050】
一方、ステップA53の判定の結果、陽性である場合(ステップA53:Yes)は、予測部30は、原因菌予測モデル43に、ステップA2で求められた統計、ステップA3で求められた統計、及びステップA4で求められた統計を入力して、予測を実行する(ステップA54)。
【0051】
原因菌予測モデル43は、入力に応じて、CNSが原因であるかどうかを出力するので、予測部30は、ステップA54の実行後、「CNSは原因である」又は「CNSは原因でない」という出力結果を、予測結果として出力する(ステップA56)。
【0052】
また、上述したステップA51の判定の結果、患者に対してカテーテルの挿入が行われていない場合(ステップA51:No)は、予測部30は、尿路感染症予測モデル42に、ステップA2で求められた統計、及びステップA3で求められた分類結果を、入力する(ステップA55)。
【0053】
そして、尿路感染症予測モデル42は、出力として、「尿路感染症」又は「非感染症」を出力するので、予測部30は、尿路感染症予測モデル42の出力結果に基づいて、尿路感染症の可能性を判定する。予測部30は、尿路感染症予測モデル42の出力結果を、予測結果として出力する(ステップA56)。
【0054】
以上のように、実施の形態1では、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43が用いられる。このため、実施の形態1によれば、感染の原因を含めて、患者の感染の可能性を予測することができる。
【0055】
[プログラム]
実施の形態1におけるプログラムは、コンピュータに、図7に示すステップA1~A5を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態1における感染予測装置100と感染予測方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30として機能し、処理を行なう。
【0056】
また、実施の形態1では、記憶部40は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現されていても良いし、別のコンピュータの記憶装置によって実現されていても良い。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0057】
実施の形態1におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30のいずれかとして機能しても良い。
【0058】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における、感染予測装置、感染予測方法、及びプログラムについて、図9図13を参照しながら説明する。
【0059】
[装置構成]
最初に、実施の形態2における感染予測装置200の構成について図9を用いて説明する。また、図10及び図11を用いて、実施の形態2における感染予測装置200の機能についても説明する。図9は、実施の形態2における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。図10は、患者に対して行われた薬剤の処方に関する薬剤データの統計化の一例を示す図である。図11は、患者の体調に関する体調データの統計化の一例を示す図である。
【0060】
図9に示す実施の形態2における感染予測装置200は、実施の形態1における感染予測装置100と同様に、データ取得部10と、前処理部20と、予測部30と、記憶部40とを備えている。但し、実施の形態2における感染予測装置200は、前処理部20の構成において、実施の形態1における感染予測装置100と異なっている。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0061】
図9に示すように、実施の形態2においては、感染予測装置200は、前処理部20において、実施の形態1で説明した、検体検査データ統計化部21、患者状態データ分類部22、及び処置データ統計化部23に加えて、薬剤データ統計化部24と、体調データ統計化部25とを備えている。
【0062】
データ取得部10は、実施の形態2では、上述した、検体検査データ、患者状態データ、及び処置データに加えて、患者に対して行われた薬剤の処方に関する薬剤データと、患者の体調に関する体調データも取得する。
【0063】
薬剤データとしては、例えば、どのような薬剤が、いつ、患者に処方されたかを示すデータが用いられる。図10の上段は薬剤データの一例を示している。
【0064】
薬剤データ統計化部24は、データ取得部10によって取得された薬剤データの統計を求める。例えば、図10の中段に示すように、薬剤データ統計化部24は、まず、期間として、患者Aの入院からカテーテル挿入までの期間1と、患者Aのカテーテル挿入から感染症の疑いが発生したときまでの期間2とを設定し、各期間で行われた薬剤の処方の回数を計測する。
【0065】
続いて、図10の下段に示すように、薬剤データ統計化部24は、期間毎に、薬剤の処方の回数を各期間の日数で除算し、得られた各期間の値を薬剤データの統計とする。例えば、ある期間において薬剤Aが5回処方されており、その期間の日数が10日であるとすると、統計は0.5となる。
【0066】
また、図10に示す薬剤データの統計は、カテーテルの挿入時期を期間の区切りとして用いており、カテーテル血流感染症予測モデル41への入力に用いられる。但し、実施の形態2では、薬剤データの統計は、尿路感染症予測モデル42への入力に用いることもできる。この場合は、薬剤データ統計化部24は、患者の入院から感染症の疑いが発生したときまでの期間を期間1とし、感染症の疑いが発生したときから退院するまでの期間を期間2とする。
【0067】
体調データとしては、例えば、図11の上段に示すように、患者の一日の便の量を示すデータが用いられる。図11の例では、便の量は、例えば、量に応じて0~10の10段階で評価される。
【0068】
体調データ統計化部25は、まず、例えば、図11の中段に示すように、「1」~「10」を「1」に統一して、一日の便の量を「0」と「1」との2値データに変換する。更に、体調データ統計化部25は、図11の下段に示すように、患者の入院から感染症の疑いが発生したときまでの期間において、「0」が50%を超えるかどうかを判定する。そして、体調データ統計化部25は、超える場合は、その期間における体調データを「0:便無」とし、超えない場合は、その期間における体調データを「1:便有」とする。得られた結果が、体調データの統計となる。また、実施の形態2では、体調データの統計は、尿路感染症予測モデル42への入力に用いられる。
【0069】
ここで、図12を用いて、実施の形態2における、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43における機械学習について説明する。図12は、実施の形態2において機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。
【0070】
図12に示すように、カテーテル血流感染症予測モデル41用の訓練データは、図6に示した例と同様に、カテーテル血流感染症の有無を正解ラベルとする。但し、実施の形態2では、カテーテル血流感染症予測モデル41用の訓練データは、図6に示した例と異なり、データ取得先の患者の年代、性別、入院期間、白血球数、血圧のカテゴリ、及び歯科処置の回数に加えて、手術回数及び薬剤の期間平均の処方回数も、構成要素としている。
【0071】
また、図12に示すように、尿路感染症予測モデル42用の訓練データは、図6に示した例と同様に、尿路感染症の有無を正解ラベルとする。但し、実施の形態2では、尿路感染症予測モデル42用の訓練データは、図6に示した例と異なり、データ取得先の患者の年代、性別、入院期間、C-リアクティブ・プロテイン(CRP)、及び酸素飽和度のカテゴリに加えて、便の有無も、構成要素としている。
【0072】
更に、実施の形態2では、薬剤データの統計が尿路感染症予測モデル42への入力に用いられる場合は、尿路感染症予測モデル42用の訓練データは、薬剤の期間平均の処方回数を構成要素とすることもある。
【0073】
なお、図12に示すように、実施の形態2でも、原因菌予測モデル43用の訓練データは、図6に示した例と同様である。原因菌予測モデル43用の訓練データは、CNS(コアクラーゼ陰性菌)が原因かどうかを正解ラベルとし、データ取得先の患者の年代、性別、入院期間、白血球数、血圧のカテゴリ、及び歯科処置の回数で構成されている。
【0074】
各予測モデルの機械学習は、実施の形態1と同様に行われる。例えば、畳み込みニューラルネットワーク、グラフ畳み込みネットワーク、サポートベクトルマシン、回帰モデル等に、訓練データの説明変数を入力し、出力された値が正解ラベルと一致するように、パラメータを更新することによって、機械学習が行われる。
【0075】
[装置動作]
次に、実施の形態2における感染予測装置200の動作について図13を用いて説明する。図13は、実施の形態2における感染予測装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図9図12を参照する。実施の形態2では、感染予測装置200を動作させることによって、感染予測方法が実施される。よって、実施の形態2における感染予測方法の説明は、以下の感染予測装置200の動作説明に代える。
【0076】
最初に、図13に示すように、データ取得部10は、検体検査データ、患者状態データ、処置データ、薬剤データ、及び体調データを取得する(ステップB1)。そして、データ取得部10は、取得した各種データを前処理部20に入力する。
【0077】
次に、検体検査データ統計化部21は、ステップB1で取得された検体検査データの統計を求める(ステップB2)。ステップB2は、図7に示したステップA2と同様のステップである。
【0078】
次に、患者状態データ分類部22は、ステップB1で取得された患者の患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する(ステップB3)。ステップB3は、図7に示したステップA3と同様のステップである。
【0079】
次に、処置データ統計化部23は、ステップB1で取得された処置データの統計を求める(ステップB4)。ステップB4は、図7に示したステップA4と同様のステップである。
【0080】
次に、薬剤データ統計化部24は、ステップB1で取得された薬剤データの統計を求める(ステップB5)。
【0081】
具体的には、薬剤データ統計化部24は、まず、期間を設定し、各期間で行われた薬剤の処方の回数を計測し、続いて、期間毎に、計測した回数を各期間の日数で除算し、得られた各期間の値を薬剤データの統計とする。
【0082】
次に、体調データ統計化部25は、ステップB1で取得された体調データの統計を求める(ステップB6)。
【0083】
具体的には、体調データ統計化部25は、まず、便の量が10段階で示されている体調データを、患者の一日の便の量が「0」と「1」と表現される2値データに変換する。続いて、体調データ統計化部25は、設定期間において、「0」が50%を超えるかどうかを判定し、超える場合は、その期間における体調データを「0:便無」とし、超えない場合は、その期間における体調データを「1:便有」として、統計化する。
【0084】
次に、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43に、ステップB2~B6で求められた統計を入力する。そして、予測部30は、各予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測し、予測結果を出力する(ステップB7)。
【0085】
ステップB7における予測処理は、実施の形態1において図8に示したステップに準じて行われる。但し、実施の形態2では、ステップA53において、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41に、ステップB2~B4で求められた統計に加えて、ステップB5で求められた薬剤データの統計も入力する。
【0086】
更に、実施の形態2では、ステップA55において、予測部30は、尿路感染症予測モデル42に、ステップB2及びB3で求められた統計に加えて、ステップB6で求められた体調データの統計も入力する。
【0087】
以上のように、実施の形態2では、実施の形態1と異なり、薬剤データ及び体調データも用いられ、これらの統計が予測モデルを用いた予測に用いられる。このため、実施の形態2によれば、いっそう、患者の感染の可能性を予測することができる。
【0088】
[プログラム]
実施の形態2におけるプログラムは、コンピュータに、図13に示すステップB1~B7を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態2における感染予測装置200と感染予測方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30として機能し、処理を行なう。
【0089】
また、実施の形態2でも、記憶部40は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現されていても良いし、別のコンピュータの記憶装置によって実現されていても良い。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0090】
実施の形態2におけるプログラムも、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30のいずれかとして機能しても良い。
【0091】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3における、感染予測装置、感染予測方法、及びプログラムについて、図14図19を参照しながら説明する。
【0092】
[装置構成]
最初に、実施の形態3における感染予測装置300の構成について図14を用いて説明する。また、図15及び図16を用いて、実施の形態3における感染予測装置300の機能についても説明する。図14は、実施の形態3における感染予測装置の構成を具体的に示す構成図である。図15は、患者に対して行われた手術に関する手術データの統計化の一例を示す図である。図16は、患者に対して登録された病名に関する病名データの統計化の一例を示す図である。
【0093】
図14に示す実施の形態3における感染予測装置300は、実施の形態1及び2における感染予測装置と同様に、データ取得部10と、前処理部20と、予測部30と、記憶部40とを備えている。但し、実施の形態3における感染予測装置300は、前処理部20の構成において、実施の形態1及び2における感染予測装置と異なっている。以下、実施の形態1及び2との相違点を中心に説明する。
【0094】
図14に示すように、実施の形態3においては、感染予測装置300は、前処理部20において、実施の形態2で説明した、検体検査データ統計化部21、患者状態データ分類部22、処置データ統計化部23、薬剤データ統計化部24、及び体調データ統計化部25に加えて、手術データ統計化部26と、病名データ統計化部27とを備えている。
【0095】
データ取得部10は、実施の形態3では、上述した、検体検査データ、患者状態データ、処置データ、薬剤データ、及び体調データに加えて、患者に対して行われた手術に関する手術データと、患者に対して登録された病名に関する病名データも取得する。
【0096】
手術データとしては、例えば、手術がいつ患者に対して実施されたのかを示すデータが用いられる。図15の上段は手術データの一例を示している。
【0097】
手術データ統計化部26は、データ取得部10によって取得された手術データの統計を求める。例えば、図15の下段に示すように、手術データ統計化部26は、まず、期間として、患者Aの入院からカテーテル挿入までの期間1と、患者Aのカテーテル挿入から感染症の疑いが発生したときまでの期間2とを設定し、各期間で手術が実施された回数を計測する。そして、手術データ統計化部26は、計測した期間毎の手術の実施回数を、統計化手術データとして、記憶部40に格納する。
【0098】
病名データとしては、例えば、患者に対して、どのような病名がいつ登録されたかを示すデータが用いられる。図16の上段は、病名データの一例を指名している。
【0099】
病名データ統計化部27は、データ取得部10によって取得された病名データの統計を求める。例えば、図16の中段に示すように、病名データ統計化部27は、まず、期間として、患者Aの入院からカテーテル挿入までの期間1と、患者Aのカテーテル挿入から感染症の疑いが発生したときまでの期間2とを設定する。
【0100】
続いて、図16の中段に示すように、病名データ統計化部27は、登録された病名を、予め用意された分類表を用いてコードに変換する。この場合に用いられる分類表としては、ICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)国際疾病分類(www.byomei.org/icd10/index.html)が挙げられる。
【0101】
次に、図16の下段に示すように、病名データ統計化部27は、コード変換された病名データを用いて、期間毎に、特定のコードが登録された回数を計測する。この期間毎の登録回数が、病名データの統計となる。また、病名データの統計は、SSI(Surgical Site Infection)予測モデル44への入力に用いられる。
【0102】
ここで、図17を用いて、SSI予測モデル44について説明する。図17は、実施の形態3においてSSI予測モデルの機械学習に用いられる訓練データの一例を示す図である。なお、実施の形態3において、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、及び原因菌予測モデル43としては、実施の形態3で示した予測モデルが用いられている。
【0103】
SSI予測モデル44は、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、処置データの統計、及び病名データの統計と、術後感染症の原因菌と、の関係を機械学習することによって構築された機械学習モデルである。
【0104】
図17に示すように、SSI予測モデル44用の訓練データは、SSI(術後感染症)に該当するか否かを正解ラベルとし、データ取得先の患者の年齢、性別、入院期間、白血球数、体温、手術回数、薬剤の期間平均の処方回数、及び特定期間での病名の登録回数で構成されている。また、正解ラベルとしては、SSIである可能性を示す確率値(%)が用いられていても良い。
【0105】
SSI予測モデル44の機械学習も、実施の形態1と同様に行われる。例えば、畳み込みニューラルネットワーク、グラフ畳み込みネットワーク、サポートベクトルマシン、回帰モデル等に、訓練データの説明変数を入力し、出力された値が正解ラベルと一致するように、パラメータを更新することによって、機械学習が行われる。
【0106】
[装置動作]
次に、実施の形態3における感染予測装置300の動作について図18を用いて説明する。図18は、実施の形態3における感染予測装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図14図17を参照する。実施の形態3では、感染予測装置300を動作させることによって、感染予測方法が実施される。よって、実施の形態3における感染予測方法の説明は、以下の感染予測装置300の動作説明に代える。
【0107】
最初に、図18に示すように、データ取得部10は、検体検査データ、患者状態データ、処置データ、薬剤データ、体調データ、手術データ、及び病名データを取得する(ステップC1)。そして、データ取得部10は、取得した各種データを前処理部20に入力する。
【0108】
次に、検体検査データ統計化部21は、ステップC1で取得された検体検査データの統計を求める(ステップC2)。ステップC2は、図7に示したステップA2と同様のステップである。
【0109】
次に、患者状態データ分類部22は、ステップC1で取得された患者の患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する(ステップC3)。ステップC3は、図7に示したステップA3と同様のステップである。
【0110】
次に、処置データ統計化部23は、ステップC1で取得された処置データの統計を求める(ステップC4)。ステップC4は、図7に示したステップA4と同様のステップである。
【0111】
次に、薬剤データ統計化部24は、ステップC1で取得された薬剤データの統計を求める(ステップC5)。ステップC5は、図13に示したステップB5と同様のステップである。
【0112】
次に、体調データ統計化部25は、ステップC1で取得された体調データの統計を求める(ステップC6)。ステップC6は、図13に示したステップB6と同様のステップである。
【0113】
次に、手術データ統計化部26は、ステップC1で取得された手術データの統計を求める(ステップC7)。
【0114】
具体的には、手術データ統計化部26は、まず、期間を設定し、各期間で手術が実施された回数を計測し、続いて、期間毎の手術の実施回数を、統計化手術データとして、記憶部40に格納する。
【0115】
次に、病名データ統計化部27は、ステップC1で取得された病名データの統計を求める(ステップC8)。
【0116】
具体的には、病名データ統計化部27は、まず、期間を設定し、登録された病名を、予め用意された分類表を用いてコードに変換する。続いて、病名データ統計化部27は、コード変換された病名データを用いて、期間毎に、特定のコードが登録された回数を計測する。この期間毎の登録回数が、病名データの統計となる。
【0117】
次に、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、原因菌予測モデル43、及びSSI予測モデル44に、ステップC2~C6及びC8で求められた統計を入力する。そして、予測部30は、各予測モデルからの出力結果に基づいて、患者が感染症に感染している可能性を予測し、予測結果を出力する(ステップC9)。
【0118】
続いて、図19を用いて、図18に示した予測処理(ステップC9)についてより具体的に説明する。図19は、図18に示した予測処理を具体的に示すフロー図である。
【0119】
図19に示すように、最初に、予測部30は、患者に対してカテーテルの挿入が行われているかどうかを判定する(ステップC101)。外部からカテーテルの挿入の有無について通知がなされている場合は、予測部30は、通知に基づいて判定する。患者状態データに付加されている患者の個人情報に、カテーテルの挿入の有無が含まれている場合は、予測部30は、患者状態データに基づいて判定する。
【0120】
ステップC101の判定の結果、患者に対してカテーテルの挿入が行われている場合(ステップC101:Yes)は、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41に、ステップC2で求められた統計、ステップC3で求められた分類結果、ステップC4で求められた統計、及びステップC5で求められた薬剤データの統計を、入力する(ステップC102)。
【0121】
そして、カテーテル血流感染症予測モデル41は、出力として、「カテーテル血流感染症」又は「非感染症」を出力するので、予測部30は、カテーテル血流感染症予測モデル41の出力結果に基づいて、陽性かどうかを判定する(ステップC103)。
【0122】
ステップC103の判定の結果、陽性でない場合(ステップC103:No)は、予測部30は、感染症の可能性は無いと判定し、判定結果を予測結果として出力する(ステップC108)。
【0123】
一方、ステップC103の判定の結果、陽性である場合(ステップC103:Yes)は、予測部30は、原因菌予測モデル43に、ステップCで求められた統計、ステップC3で求められた分類結果、及びステップC4で求められた統計を入力して、予測を実行する(ステップC104)。
【0124】
原因菌予測モデル43は、入力に応じて、CNSが原因であるかどうかを出力するので、予測部30は、ステップC104の実行後、「CNSは原因である」又は「CNSは原因でない」という出力結果を、予測結果として出力する(ステップC108)。
【0125】
また、上述したステップC101の判定の結果、患者に対してカテーテルの挿入が行われていない場合(ステップC101:No)は、予測部30は、記憶部40に格納されている統計化手術データと、ステップC1で取得された病名データとを用いて、患者に対して手術が実施され、且つ、患者において炎症が発生しているかどうかを判定する(ステップC105)。
【0126】
ステップC105の判定の結果、「患者に対して手術が実施され、且つ、患者において炎症が発生している」に該当する場合(ステップC105:Yes)は、予測部30は、SSI予測モデル44に、ステップC2で求められた統計、ステップC3で求められた分類結果、ステップC4で求められた統計、及びステップC8で求められた病名データの統計を入力する(ステップC106)。
【0127】
SSI予測モデル44は、入力に応じて、SSIに該当するかどうかを出力するので、予測部30は、ステップC106の実行後、「患者はSSI(術後感染症)である」又は「患者は非感染症である」という出力結果を、予測結果として出力する(ステップC108)。
【0128】
一方、ステップC105の判定の結果、「患者に対して手術が実施され、且つ、患者において炎症が発生している」に該当しない場合(ステップC105:No)は、予測部30は、尿路感染症予測モデル42に、ステップC2で求められた統計、ステップC3で求められた分類結果、及びステップC6で求められた体調データの統計を入力する(ステップC107)。
【0129】
そして、尿路感染症予測モデル42は、出力として、「尿路感染症」又は「非感染症」を出力するので、予測部30は、尿路感染症予測モデル42の出力結果に基づいて、尿路感染症の可能性を判定する。予測部30は、尿路感染症予測モデル42の出力結果を、予測結果として出力する(ステップC108)。
【0130】
以上のように、実施の形態3では、カテーテル血流感染症予測モデル41、尿路感染症予測モデル42、原因菌予測モデル43、及びSSI予測モデル44が用いられる。このため、実施の形態3によれば、手術後の感染の原因を含めて、患者の感染の可能性を予測することができる。
【0131】
以上のように、実施の形態3では、実施の形態1及び2と異なり、手術データ及び病名データが用いられて、術後感染症に感染しているかどうかの予測も行われる。このため、実施の形態3によれば、いっそう、患者の感染の可能性を予測することができる。
【0132】
[プログラム]
実施の形態3におけるプログラムは、コンピュータに、図18に示すステップC1~C9を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態3における感染予測装置300と感染予測方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30として機能し、処理を行なう。
【0133】
また、実施の形態3でも、記憶部40は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現されていても良いし、別のコンピュータの記憶装置によって実現されていても良い。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0134】
実施の形態3におけるプログラムも、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、データ取得部10、前処理部20、及び予測部30のいずれかとして機能しても良い。
【0135】
[物理構成]
ここで、実施の形態1~3におけるプログラムを実行することによって、感染予測装置を実現するコンピュータについて図20を用いて説明する。図20は、実施の形態1~3における感染予測装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0136】
図20に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0137】
また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。この態様では、GPU又はFPGAが、実施の形態におけるプログラムを実行することができる。
【0138】
CPU111は、記憶装置113に格納された、コード群で構成された実施の形態におけるプログラムをメインメモリ112に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。
【0139】
また、実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0140】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0141】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0142】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0143】
なお、実施の形態1~3における感染予測装置は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、感染予測装置は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0144】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0145】
(付記1)
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得部と、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化部と、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類部と、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測部と、
を備えている、ことを特徴とする感染予測装置。
【0146】
(付記2)
付記1に記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該感染予測装置が、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化部を更に備え、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測部が、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とする感染予測装置。
【0147】
(付記3)
付記2に記載の感染予測装置であって、
前記予測部が、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とする感染予測装置。
【0148】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化部が、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とする感染予測装置。
【0149】
(付記5)
付記1~4のいずれかに記載の感染予測装置であって、
前記データ取得部が、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類部が、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とする感染予測装置。
【0150】
(付記6)
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする感染予測方法。
【0151】
(付記7)
付記6に記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該感染予測方法が、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化ステップを更に有し、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測ステップにおいて、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とする感染予測方法。
【0152】
(付記8)
付記7に記載の感染予測方法であって、
前記予測ステップにおいて、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とする感染予測方法。
【0153】
(付記9)
付記6~8のいずれかに記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化ステップにおいて、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とする感染予測方法。
【0154】
(付記10)
付記6~9のいずれかに記載の感染予測方法であって、
前記データ取得ステップにおいて、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類ステップにおいて、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とする感染予測方法。
【0155】
(付記11)
コンピュータに、
患者の検体検査に関する検体検査データ、及び前記患者の状態を示す患者状態データを取得する、データ取得ステップと、
前記検体検査データの統計を求める、検体検査データ統計化ステップと、
前記患者状態データを、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、患者状態データ分類ステップと、
検体検査データの統計及び患者の状態のカテゴリと、感染症と、の関係を機械学習している予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計と前記患者状態データの分類結果とを入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、予測ステップと、
を実行させる、ことを特徴とするプログラム。
【0156】
(付記12)
付記11に記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、更に、前記患者に対して行われた処置に関する処置データを更に取得し、
当該プログラムが、前記処置データの統計を求める、処置データ統計化ステップを更に実行させ、
前記予測モデルが、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、感染症と、の関係を機械学習しており、
前記予測ステップにおいて、前記予測モデルに、前記検体検査データから求められた統計及び前記患者状態データの分類結果に加えて、前記処置データから求められた統計を入力し、前記予測モデルからの出力結果に基づいて、前記患者が感染症に感染している可能性を予測する、
ことを特徴とするプログラム。
【0157】
(付記13)
付記12に記載のプログラムであって、
前記予測ステップにおいて、予測モデルとして、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、カテーテル感染症と、の関係を機械学習している、第1の予測モデルと、検体検査データの統計、患者の状態のカテゴリ、及び処置データの統計と、尿路感染症と、の関係を機械学習している、第2の予測モデルと、を用いる、
ことを特徴とするプログラム。
【0158】
(付記14)
付記11~13のいずれかに記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、前記検体検査データとして、前記患者の血液検査のデータを取得し、
前記検体検査データ統計化ステップにおいて、前記検体検査データの統計として、最大値、最小値、及び平均値のいずれかを求める、
ことを特徴とするプログラム。
【0159】
(付記15)
付記11~14のいずれかに記載のプログラムであって、
前記データ取得ステップにおいて、前記患者状態データとして、前記患者の体温、血圧、脈拍、酸素飽和度の少なくとも一つを取得し、
前記患者状態データ分類ステップにおいて、取得した前記患者の体温、血圧、脈拍、及び酸素飽和度のいずれかを、その値に応じて、予め設定された複数のカテゴリのいずれかに分類する、
ことを特徴とするプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上のように、本発明によれば、感染の原因を含めて、患者の院内感染の可能性を予測することができる。本発明は、医療分野において有用である。
【符号の説明】
【0161】
100 感染予測装置
10 データ取得部
20 前処理部
21 検体検査データ統計化部
22 患者状態データ分類部
23 処置データ統計化部
30 予測部
40 記憶部
41 カテーテル血流感染症予測モデル
42 尿路感染症予測モデル
43 原因菌予測モデル
44 SSI予測モデル
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
200 感染予測装置(実施の形態2)
300 感染予測装置(実施の形態3)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20