(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178041
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】画像読取装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H04N1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084545
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】筒井 黎
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB17
5C062AB32
5C062AB40
5C062AB49
5C062AC02
5C062AC08
5C062AC11
5C062AC65
5C062AD02
(57)【要約】
【課題】読取の開始指示を受けた後に読取部の校正を実行することで、媒体の搬送を開始したり媒体の読取を開始したりするまでに時間を要してしまう。
【解決手段】画像読取方法は、媒体が載置される媒体載置部における前記媒体の有無を検出する媒体検出工程と、前記媒体載置部に載置された前記媒体を搬送する搬送工程と、搬送される前記媒体を読取部により読み取って読取結果を出力する読取工程と、を備え、さらに、前記媒体検出工程によって前記媒体有りと検出された場合に、前記読取部を校正する校正工程と、前記校正工程の後、前記媒体検出工程によって前記媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に前記校正を繰り返す繰り返し校正工程と、を備え、前記媒体の読取の開始指示を受けた場合に、前記搬送工程を開始し、直近の前記校正による校正情報に基づいて前記読取工程を開始する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を載置する媒体載置部と、
前記媒体載置部における前記媒体の有無を検出する媒体検出センサーと、
前記媒体載置部に載置された前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取って読取結果を出力する読取部と、
前記搬送部および前記読取部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された場合に、前記読取部を校正する校正処理を実行し、
前記校正処理の後、前記媒体検出センサーによって前記媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に前記校正処理を実行し、
前記媒体の読取の開始指示を受けた場合に、前記搬送部による前記媒体の搬送を開始し、直近の前記校正処理による校正情報に基づいて前記読取部に前記媒体の読取をさせる、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記校正処理では、前記読取部の読取解像度を第1読取解像度に設定して前記読取部を校正する第1校正処理と、前記読取解像度を前記第1読取解像度よりも低い第2読取解像度に設定して前記読取部を校正する第2校正処理と、を実行し、
前記開始指示を受けた場合に、前記開始指示による前記読取解像度の設定に応じて、前記第1校正処理による校正情報または前記第2校正処理による校正情報のいずれか一方を選択し、選択した校正情報に基づいて前記読取部に前記媒体の読取をさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記校正処理では、前記読取部の読取解像度を第1読取解像度に設定して前記読取部を校正する第1校正処理と、前記読取解像度を前記第1読取解像度よりも低い第2読取解像度に設定した場合の前記読取部を校正するための校正情報を前記第1校正処理による校正情報に基づいて生成する校正情報生成処理と、を実行し、
前記開始指示を受けた場合に、前記開始指示による前記読取解像度の設定に応じて、前記第1校正処理による校正情報または前記校正情報生成処理により生成した校正情報のいずれか一方を選択し、選択した校正情報に基づいて前記読取部に前記媒体の読取をさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記校正処理では、前記読取部が前記媒体の読取に採用する読取解像度として所定の記憶部に記憶されている既定読取解像度を前記記憶部から取得し、前記既定読取解像度を前記読取部の読取解像度に設定して前記読取部を校正する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記校正処理では、前記読取部が採用し得る読取解像度のうちこれまでに前記媒体の読取に採用された回数が相対的に多い読取解像度を、前記読取部の読取解像度に設定して、前記読取部を校正する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記画像読取装置を所定の通常モードから前記通常モードよりも電力消費を抑制した省電力モードへ遷移させることが可能であり、
前記媒体検出センサーによって前記媒体有りが検出されている状態で、前記通常モードから前記省電力モードへ遷移させた場合、前記省電力モードにおいては、前記第1時間が経過しても前記校正処理を実行しない、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像読取装置を前記省電力モードから前記通常モードへ復帰させた場合、前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出されたことに応じて前記校正処理を実行する、ことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記画像読取装置の筐体の少なくとも一部を開閉するために変位可能なカバーを有し、
前記制御部は、前記カバーが閉状態から開状態へ変位した場合に、前記校正処理を実行する、ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記カバーが前記開状態へ変位したことに応じて前記校正処理を実行してから前記第1時間が経過するよりも前に前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された時に前記校正処理を実行せず、
前記カバーが前記開状態へ変位したことに応じて前記校正処理を実行してから前記第1時間が経過した後に前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された場合に、前記校正処理を実行する、ことを特徴とする請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記搬送部による前記媒体の排出を受けるための排出トレイであって、前記排出を受けることが可能な排出姿勢と、前記排出を受けることが不能な不使用姿勢とに変位可能な前記排出トレイを有し、
前記制御部は、前記排出トレイが前記不使用姿勢から前記排出姿勢へ変位した場合に、前記校正処理を実行する、ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記排出トレイが前記排出姿勢へ変位したことに応じて前記校正処理を実行してから前記第1時間が経過するよりも前に前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された時に前記校正処理を実行せず、
前記排出トレイが前記排出姿勢へ変位したことに応じて前記校正処理を実行してから前記第1時間が経過した後に前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された場合に、前記校正処理を実行する、ことを特徴とする請求項10に記載の画像読取装置。
【請求項12】
媒体が載置される媒体載置部における前記媒体の有無を検出する媒体検出工程と、
前記媒体載置部に載置された前記媒体を搬送する搬送工程と、
搬送される前記媒体を読取部により読み取って読取結果を出力する読取工程と、を備え、さらに、
前記媒体検出工程によって前記媒体有りと検出された場合に、前記読取部を校正する校正工程と、
前記校正工程の後、前記媒体検出工程によって前記媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に前記校正を繰り返す繰り返し校正工程と、を備え、
前記媒体の読取の開始指示を受けた場合に、前記搬送工程を開始し、直近の前記校正による校正情報に基づいて前記読取工程を開始する、ことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取部の校正を行う画像読取装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナーは、読取対象の原稿としての媒体を搬送し、搬送中の媒体を読取部により光学的に読み取る。このようなスキャナーにおいては、温度等の環境変化や、経時的変化により、読取部の出力が適正値から劣化するため、読取部の校正を行う必要がある。校正を、キャリブレーションとも言う。
【0003】
また、シートに印刷された検査パターンをスキャナー部が読み取る前に、スキャナー部のセンサーユニットに校正部材を読み取らせて、校正部材の測定結果からセンサーユニットの校正を行う読取装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
読取部の校正は、読取部に媒体を読み取らせる前に実行する必要があるが、校正にはある程度の時間を要する。そのため、従来のように、スキャナーが読取の開始指示を受けてから校正を実行すると、媒体読取のための搬送を開始したり読取を開始したりするまでに時間を要し、ユーザーを待たせることになっていた。つまり、ユーザーが前記開始指示をしてから、実際に媒体読取のための搬送や読取が開始されるまでの反応速度が充分ではなかった。また、スキャナーは、前記反応速度の低下を避けるために、前記開始指示を受ける前に校正を実行した場合であっても、その後、前記開始指示を受けた時点で校正から一定時間以上が経過していると、校正が古くなっているため改めて校正を実行する必要があり、結局、前記反応速度の低下を解決することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
画像読取装置は、媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部における前記媒体の有無を検出する媒体検出センサーと、前記媒体載置部に載置された前記媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取って読取結果を出力する読取部と、前記搬送部および前記読取部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体検出センサーによって前記媒体有りと検出された場合に、前記読取部を校正する校正処理を実行し、前記校正処理の後、前記媒体検出センサーによって前記媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に前記校正処理を実行し、前記媒体の読取の開始指示を受けた場合に、前記搬送部による前記媒体の搬送を開始し、直近の前記校正処理による校正情報に基づいて前記読取部に前記媒体の読取をさせる。
【0007】
画像読取方法は、媒体が載置される媒体載置部における前記媒体の有無を検出する媒体検出工程と、前記媒体載置部に載置された前記媒体を搬送する搬送工程と、搬送される前記媒体を読取部により読み取って読取結果を出力する読取工程と、を備え、さらに、前記媒体検出工程によって前記媒体有りと検出された場合に、前記読取部を校正する校正工程と、前記校正工程の後、前記媒体検出工程によって前記媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に前記校正を繰り返す繰り返し校正工程と、を備え、前記媒体の読取の開始指示を受けた場合に、前記搬送工程を開始し、直近の前記校正による校正情報に基づいて前記読取工程を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】画像読取装置の構成を簡易的に示すブロック図。
【
図2】画像読取装置の内部構成等を側方からの視点により簡易的に示す図。
【
図3】校正処理を繰り返し実行する流れを示すフローチャート。
【
図4】スキャン開始指示に応じた媒体読取の流れを示すフローチャート。
【
図5】第1実施例におけるスキャン開始指示に応じた媒体読取の流れを示すフローチャート。
【
図6】第2実施例におけるスキャン開始指示に応じた媒体読取の流れを示すフローチャート。
【
図7】第5実施例における校正処理を繰り返し実行する流れを示すフローチャート。
【
図8】原稿トレイが閉状態であり排出トレイが不使用姿勢である画像読取装置の外観を示す斜視図。
【
図9】原稿トレイが開状態であり排出トレイが排出姿勢である画像読取装置の外観を示す斜視図。
【
図10】原稿トレイおよび排出トレイをそれぞれ延長させたときの画像読取装置の外観を示す斜視図。
【
図11】第6実施例における校正処理を繰り返し実行する流れを示すフローチャート。
【
図12】第7実施例における校正処理を繰り返し実行する流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0010】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる画像読取装置10の構成を簡易的に示している。
画像読取装置10は、制御部11、操作パネル13、通信IF15、搬送部16、読取部17、AFE20、記憶部21等を備える。操作パネル13は、表示部14を含んでいる。表示部14は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。IFは、インターフェイスの略である。AFEは、アナログフロントエンドの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0011】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、画像読取装置10の各部を制御する。画像読取装置10は、画像読取方法を実現する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0012】
操作パネル13は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段として、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、キーボード等によって実現される。タッチパネルは、表示部14の一機能として実現される。通信IF15は、画像読取装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。
図1の例では、画像読取装置10は、通信IF15を通じて外部の端末装置30と通信可能に接続している。
【0013】
搬送部16は、読取部17による読取対象となる原稿を所定の搬送路に沿って搬送する。搬送部16を有する点で、画像読取装置10をシードフィードスキャナーと呼ぶことができる。本実施形態では、原稿を「媒体」とも呼ぶ。搬送部16は、例えば、媒体を搬送するためのローラーや、ローラーを回転させるためのモーター等を備える。読取部17は、搬送部16が搬送する媒体を光学的に読み取る。読取部17は、例えば、媒体を照射する光源18や、媒体からの反射光や透過光を受光して光電変換する複数の光電変換素子を有するイメージセンサー19や、レンズやミラーといった不図示の光学系等を有する。
【0014】
イメージセンサー19は、各光電変換素子が受光量に応じて生成する電子信号による読取結果を、AFE20へ出力する。AFE20は、イメージセンサー19から出力されたアナログデータとしての電気信号をデジタルデータに変換する回路である。AFE20は、これらアナログデータやデジタルデータに対して補正処理や画像処理を施すことができる。AFE20は、これら変換等の各処理を施したデジタルデータを、媒体の読取結果として制御部11へ出力する。制御部11がAFE20から入力する、媒体の読取結果としてのデジタルデータを、読取画像データとも呼ぶ。なお、AFE20については、これを読取部17の一部と捉えてもよいし、制御部11の一部と捉えてもよい。
【0015】
記憶部21は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブや、その他のメモリーによる記憶手段である。制御部11が有するメモリーの一部を記憶部21と捉えてもよい。記憶部21を、制御部11の一部と捉えてもよい。
【0016】
画像読取装置10は、独立した一台のスキャナーであってもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置によるシステムとして実現されてもよい。例えば、画像読取装置10は、搬送部16や読取部17やAFE20を含むスキャナーと、制御部11や記憶部21を含む制御装置と、により実現されてもよい。
【0017】
画像読取装置10は、スキャナーとしての機能に加え、プリンターやファクシミリ等としても機能する複合機であってもよい。
端末装置30は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)や、ネットワークサーバーや、タブレット型端末や、スマートフォンや、これらと同様に機能する情報処理装置である。端末装置30には、画像読取装置10を制御するためのドライバーやアプリケーションといったプログラムがインストールされている。
【0018】
図2は、画像読取装置10の搬送路45を含む内部構成等を、側方からの視点によりごく簡単に示している。
図2では、画像読取装置10に関する上下前後の方向を示している。画像読取装置10は、筐体としての下ユニット40と、上ユニット41とを有する。下ユニット40と上ユニット41とは、搬送される媒体Mが通過するための搬送路45を挟んで対向している。下ユニット40は、不図示の台座により水平面に設置され、下ユニット40の上方を上ユニット41が覆っている。
【0019】
図2の例では、下ユニット40と上ユニット41とがヒンジ46で結合しており、上ユニット41がヒンジ46を中心に回動可能である。ユーザーは、上ユニット41を回動させることにより、上ユニット41を閉じた状態としたり開いた状態としたりすることができる。
図2では、上ユニット41は閉じた状態である。符号43は、搬送路45の上流の供給口43を示し、符号44は、搬送路45の下流の排出口44を示している。符号D1は、搬送路45の上流から下流を向く搬送方向D1を示している。下ユニット40の後方には、媒体Mが載置される原稿トレイ42が配設されている。原稿トレイ42は「媒体載置部」の例である。原稿トレイ42を、給紙トレイ等と称してもよい。
【0020】
原稿トレイ42に載置された媒体Mは、供給口43から搬送路45内へ取り込まれ、搬送路45を下流へ搬送されて、排出口44から外へ排出される。
図2の例では、排出口44は、供給口43よりも前方に在る。
図2には、搬送部16の例として、搬送路45を挟んで下ユニット40と上ユニット41とに配設されて相対するローラーの対を、何組か示している。各ローラー対は、搬送路45に沿って点在している。各ローラー対は、対を構成するローラーとローラーとの間に媒体Mを挟持して、不図示のモーターの動力で回転することにより媒体Mを搬送する。
【0021】
各ローラー対のうち最も上流のローラー50,51からなるローラー対は、供給口43のやや下流の位置に配設されている。このローラー対は、原稿トレイ42に載置された媒体Mを一枚単位で搬送路45へ取り込んで下流へ搬送する。他のローラー対については個々の説明は省略する。ローラー50,51からなるローラー対よりも下流の搬送路45において、下ユニット40には第1イメージセンサー48が設けられており、上ユニット41には第2イメージセンサー49が設けられている。第1イメージセンサー48および第2イメージセンサー49は、それぞれがイメージセンサー19に該当する。第1イメージセンサー48は、搬送路45を下流へ搬送される媒体Mの下ユニット40を向く面を読み取り、第2イメージセンサー49は、搬送路45を下流へ搬送される媒体Mの上ユニット41を向く面を読み取る。
【0022】
符号47は、制御部11やAFE20等を搭載した回路基板47である。回路基板47には、第1イメージセンサー48の他、詳しくは記載していないが第2イメージセンサー49や操作パネル13等も接続されている。上ユニット41の外から見易い位置には、表示部14を含む操作パネル13が配設されている。なお本実施形態において、読取部17が、第1イメージセンサー48および第2イメージセンサー49のような、媒体Mの両面を同時に読み取るための上下のイメージセンサーを有することは必須ではなく、イメージセンサー19は、第1イメージセンサー48と第2イメージセンサー49とのいずれか一方のみであってもよい。以下では、第1イメージセンサー48や第2イメージセンサー49を特に区別せず、単にイメージセンサー19と記載する。
【0023】
イメージセンサー19は、複数の光電変換素子を搬送方向D1に交差する方向へ並べて構成されたラインセンサーである。ここで言う交差とは、直交あるいはほぼ直交と解してよい。つまり、ラインセンサーとしてのイメージセンサー19と媒体Mとが搬送方向D1において相対的に位置を変化させることにより、媒体Mの面が2次元的に読み取られる。以下では、搬送方向D1に交差する方向を、媒体の「幅方向」とも言う。
【0024】
画像読取装置10は、原稿トレイ42における媒体Mの有無を検出可能な媒体検出センサー52を有する。
図2の例では、媒体検出センサー52は、原稿トレイ42における供給口43の近傍位置に設けられている。媒体検出センサー52による媒体Mの検出方式は特に限定されず、光学式のセンサーや、機械式のセンサー等、様々なセンサーを採用可能である。媒体検出センサー52による検出結果を示す信号は、制御部11へ送られる。
【0025】
2.校正処理を含む画像読取処理:
図3および
図4は、制御部11がプログラム12に従って実行する、校正処理を含む画像読取処理をフローチャートで示している。
図3は、校正処理を繰り返し実行する流れをフローチャートにより示し、
図4は、スキャン開始指示に応じた媒体読取の流れをフローチャートにより示している。
【0026】
図3に示すように、制御部11は、媒体載置部における媒体の有無を判定する(ステップS100)。制御部11は、媒体検出センサー52から“媒体無し”の旨の検出結果が入力されている状態では、媒体載置部に媒体無し(ステップS100において“No”)と繰り返し判定し、媒体検出センサー52から“媒体有り”の旨の検出結果が入力された場合に、媒体載置部に媒体有り(ステップS100において“Yes”)と判定して、ステップS110へ進む。従って、
図3のフローチャートによれば、先ず、原稿トレイ42に媒体が無い状態でユーザーが原稿トレイ42へ媒体を置いたときに、ステップS100で“Yes”と判定される。ステップS100は、媒体載置部における媒体の有無を検出する「媒体検出工程」に該当する。
【0027】
ステップS110では、読取部17を校正する「校正処理」を実行する。校正処理とは、読取部17を通じた出力、つまり読取画像データが結果的に適正な値となるように、読取部17を含む各部を調整する処理である。具体的には、制御部11は、搬送路45に媒体Mが無い状態で、イメージセンサー19に、校正の基準色、例えば、搬送路45内に配設された不図示の背景板の色を読み取らせる。そして、この基準色の読取結果が、基準色の読取結果として予め定めた理想値となるように必要な調整を行う。ここで言う調整とは、例えば、光源18の発光強度、発光時間の調整や、イメージセンサー19からの出力に対するAFE20によるゲインの調整等である。また、制御部11は、イメージセンサー19の光電変換素子毎の出力ばらつきに起因する幅方向の画素毎の黒レベル、白レベルそれぞれのばらつきを抑制するシェーディング補正を行ってもよい。
【0028】
制御部11は、このような校正処理としての調整や補正の結果や値を、校正情報として記憶部21に記憶させる。校正情報を生成し、記憶部21に記憶するまでが校正処理である。
図3のフローチャートにおいて実行する1回目のステップS110は、媒体検出工程によって媒体有りと検出された場合に、読取部17を校正する「校正工程」に該当する。
【0029】
ステップS120では、制御部11は、ステップS110の校正処理を終えてから所定の第1時間が経過したか否かを判定し、第1時間が経過した場合に、“Yes”の判定からステップS100へ進む。第1時間はユーザーが任意に設定可能であるが、例えば、第1時間=120秒である。
図3から判るように、ステップS110の校正処理を終えてから第1時間が経過したとき(ステップS120において“Yes”)、媒体載置部に媒体有りの状態であれば(ステップS100において“Yes”)、制御部11は、再びステップS110で校正処理を行う。
図3のフローチャートにおいて実行する2回目以降のステップS110は、校正工程の後、媒体検出工程によって媒体有りが検出されている状態で第1時間が経過する度に校正を繰り返す「繰り返し校正工程」に該当する。
【0030】
このように、媒体載置部に媒体が載置されていれば第1時間の経過の度に校正処理を行うことで、制御部11は、最新の校正情報を記憶部21に記憶させることができる。第1時間は、校正情報の信頼性が維持される時間の上限と言える。
なお、制御部11は、ステップS110の校正処理を終えてから第1時間が経過したとき(ステップS120において“Yes”)、媒体載置部に媒体無しの状態であれば(ステップS100において“No”)、再びユーザーによって媒体載置部に媒体が置かれた場合に、ステップS110を実行する。
【0031】
図4のステップS200では、制御部11は、媒体の読取の開始指示が有ったか否かを判定する。このような開始指示を「スキャン開始指示」と称する。スキャン開始指示は、例えば、ユーザーが端末装置30を操作し、端末装置30から通信IF15を介して画像読取装置10へ入力される。また、操作パネル13における所定のスタートボタンをユーザーが押下げすることによっても、スキャン開始指示が画像読取装置10へ入力される。制御部11は、スキャン開始指示の入力を認識した場合、ステップS200において“Yes”と判定し、ステップS210へ進む。
【0032】
ユーザーは、媒体載置部に媒体が有る状態でスキャン開始指示を行う。そのため、本実施形態では、媒体載置部に媒体が有る状態でスキャン開始指示が入力されることを前提とする。媒体載置部に媒体が有る状態でスキャン開始指示が入力されるということは、これまでの説明から解るように、スキャン開始指示が入力された時点で、過去第1時間以内に実行した校正処理による校正情報が記憶部21に記憶されている、ということである。
【0033】
ステップS210では、制御部11は、搬送部16を制御して、媒体載置部に載置されている媒体の搬送を開始させる。
ステップS210に続き、ステップS220では、制御部11は、読取部17を制御して、搬送中の媒体の読取を実行させる。このとき、制御部11は、その時点で記憶部21に記憶されている最新の校正情報、つまり直近の校正処理による校正情報に基づいて、読取部17に媒体の読取をさせる。校正情報に基づく読取とは、光源18の発光強度や発光時間、AFE20によるゲイン等を、校正情報に従って調整したり、校正情報に従ってシェーディング補正したりして、読取画像データを出力する処理である。
【0034】
制御部11は、媒体の読取後、搬送対象の媒体を搬送部16に排出させ、搬送部16による搬送を終了させる(ステップS230)。以上で、一枚の媒体に関する
図4のフローチャートが終了する。ステップS210~S230は、媒体載置部に載置された媒体を搬送する「搬送工程」と、搬送される媒体を読取部17により読み取って読取結果を出力する「読取工程」とに該当する。また、
図4によれば、制御部11は、スキャン開始指示を受けた場合に、搬送工程を開始し、直近の校正による校正情報に基づいて読取工程を開始する。制御部11は、ステップS220の結果として取得した読取画像データについて、さらに二値化等の処理を施してもよいし、このような読取画像データを、画像読取装置10内外のメモリーに保存したり、通信IF15を介して端末装置30へ送信したり、プリンター機能により印刷したり、ファクシミリ機能により所定の宛先へ送信したりしてもよい。
【0035】
このように本実施形態によれば、画像読取装置10は、媒体を載置する媒体載置部と、媒体載置部における媒体の有無を検出する媒体検出センサー52と、媒体載置部に載置された媒体を搬送する搬送部16と、搬送部16が搬送する媒体を読み取って読取結果を出力する読取部17と、搬送部16および読取部17を制御する制御部11と、を備える。制御部11は、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出された場合に、読取部17を校正する校正処理を実行し、校正処理の後、媒体検出センサー52によって媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に校正処理を実行し、媒体の読取の開始指示を受けた場合に、搬送部16による媒体の搬送を開始し、直近の校正処理による校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせる。
【0036】
前記構成によれば、制御部11は、媒体載置部に媒体が載置されている場合、校正処理を実行した後、第1時間が経過する度に校正処理を繰り返す。そのため、スキャン開始指示を受けた場合に、校正処理を実行せず、直近の校正処理による校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせることができる。つまり、スキャン開始指示を受けてから校正を実行する必要が無いため、従来課題とされてきた前記反応速度の低下を解消することができる。また、直近の校正処理による校正情報は、スキャン開始指示が入力された時点で、過去第1時間以内に実行した校正処理による校正情報であるため信頼性が高く、制御部11は、適切な校正を反映した高品質な読取結果を得ることができる。また、むやみに校正回数を増やすと、その都度、読取部17が消耗して製品寿命が短くなるおそれがあるが、媒体載置部に媒体が載置されている状況で第1時間毎というように、校正の頻度に一定の制限を設けることで、製品寿命の短縮化を抑制しつつ、前記反応速度の低下を解消することができる。
【0037】
本実施形態は、画像読取装置10やシステムに限らず、これら装置やシステムが実行する画像読取方法や、方法をプロセッサーに実行させるプログラム12を開示する。
例えば、画像読取方法は、媒体が載置される媒体載置部における媒体の有無を検出する媒体検出工程と、媒体載置部に載置された媒体を搬送する搬送工程と、搬送される媒体を読取部17により読み取って読取結果を出力する読取工程と、を備え、さらに、媒体検出工程によって媒体有りと検出された場合に、読取部17を校正する校正工程と、校正工程の後、媒体検出工程によって媒体有りが検出されている状態で、所定の第1時間が経過する度に校正を繰り返す繰り返し校正工程と、を備え、媒体の読取の開始指示を受けた場合に、搬送工程を開始し、直近の校正による校正情報に基づいて読取工程を開始する。
【0038】
本実施形態に関して、様々な状況を考慮した具体的な実施例を以下に幾つか説明する。
以下では、本実施形態のこれまでの説明を前提として、各実施例の説明を行う。
【0039】
3.第1実施例:
制御部11は、読取部17の読取解像度を幾つかの解像度の中から設定することができる。ここで言う読取解像度とは、幅方向および搬送方向D1の読取解像度であり、例えば、600dpiや300dpiを設定することができる。600dpiは、「第1読取解像度」の一例であり、300dpiは、第1読取解像度よりも低い「第2読取解像度」の一例である。イメージセンサー19は、幅方向において第1読取解像度で媒体を読み取ることが可能な数の光電変換素子を有すると解してよい。制御部11は、第2読取解像度で媒体を読み取る場合は、読取のために駆動させる光電変換素子を間引いたり、逆に、各光電変換素子によって読み取られた各画素の情報を間引いたり近傍の画素同士で平均化したりして、低解像度化すればよい。
【0040】
媒体読取時の読取解像度を幾つかの解像度の中から設定可能な状況においては、校正情報も、それら各読取解像度に対応させて用意しておく必要がある。
そこで第1実施例では、制御部11は、ステップS110の校正処理では、読取部17の読取解像度を第1読取解像度に設定して読取部17を校正する「第1校正処理」と、読取部17の読取解像度を第2読取解像度に設定して読取部17を校正する「第2校正処理」と、を実行する。つまり、ステップS110の度に、第1校正処理および第2校正処理を実行し、第1校正処理による校正情報と、第2校正処理による校正情報とを記憶部21に記憶させる。
【0041】
制御部11は、第1校正処理では、読取部17に600dpiで校正の基準色を読み取らせて上述の調整やシェーディング補正を行うことにより、読取部17が600dpiで媒体を読み取るときに必要な校正情報を生成すればよい。また、制御部11は、第2校正処理では、読取部17に300dpiで校正の基準色を読み取らせて上述の調整やシェーディング補正を行うことにより、読取部17が300dpiで媒体を読み取るときに必要な校正情報を生成すればよい。
【0042】
図5は、このような第1実施例において、スキャン開始指示に応じて実行する媒体読取の流れをフローチャートにより示している。
図5については、
図4との相違点を説明する。
ステップS200で“Yes”と判定した後、制御部11は、ステップS202において、読取解像度の設定が第1読取解像度であるか、或いは、第2読取解像度であるかを判定する。例えば、スキャン開始指示が端末装置30から入力された場合、スキャン開始指示には読取解像度の設定も含まれている。従って、制御部11は、スキャン開始指示により設定されている読取解像度が第1読取解像度であれば、ステップS202で“Yes”と判定してステップS204へ進み、スキャン開始指示により設定されている読取解像度が第2読取解像度であれば、ステップS202で“No”と判定してステップS206へ進む。
【0043】
ステップS204では、制御部11は、第1校正処理による校正情報を選択し、ステップS210へ進む。一方、ステップS206では、制御部11は、第2校正処理による校正情報を選択し、ステップS210へ進む。ステップS202,S204,S206は、読取解像度の設定に応じて、第1校正処理による校正情報または第2校正処理による校正情報のいずれか一方を選択するだけであるため、第1校正処理や第2校正処理を実行するよりも処理に時間を要しない。
【0044】
ステップS210を経たステップS220では、制御部11は、読取部17を制御して、設定にかかる読取解像度で媒体の読取を実行させる。このとき、制御部11は、その時点で記憶部21に記憶されている最新の校正情報であって、ステップS204またはステップS206で選択した方の校正処理による校正情報に基づいて、読取部17に媒体の読取をさせる。従って、制御部11は、読取部17の読取解像度に対応した校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせることができる。
【0045】
このように第1実施例によれば、制御部11は、校正処理では、読取部17の読取解像度を第1読取解像度に設定して読取部17を校正する第1校正処理と、読取解像度を第1読取解像度よりも低い第2読取解像度に設定して読取部17を校正する第2校正処理と、を実行する。そして、媒体の読取の開始指示を受けた場合に、開始指示による読取解像度の設定に応じて、第1校正処理による校正情報または第2校正処理による校正情報のいずれか一方を選択し、選択した校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせる。
つまり制御部11は、媒体載置部に媒体が載置されている場合、第1校正処理および第2校正処理を実行した後、第1時間が経過する度に第1校正処理および第2校正処理を繰り返す。そのため、スキャン開始指示を受けた場合に、第1校正処理および第2校正処理のいずれも実行する必要が無く、直近の校正処理による校正情報であって、設定にかかる読取解像度に対応する校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせることができる。
【0046】
4.第2実施例:
第1実施例を一部変更した第2実施例を説明する。制御部11は、ステップS110の校正処理では、読取部17の読取解像度を第1読取解像度に設定して読取部17を校正する第1校正処理と、読取解像度を第2読取解像度に設定した場合の読取部17を校正するための校正情報を第1校正処理による校正情報に基づいて生成する「校正情報生成処理」と、を実行する。つまり第2実施例では、ステップS110では、第2校正処理の替わりに、校正情報生成処理を実行する。校正情報生成処理では、読取部17に校正の基準色を読み取らせる訳では無いため、第1校正処理および第2校正処理を実行するよりも、第1校正処理および校正情報生成処理を実行する方が、処理時間が短くて済む。
【0047】
制御部11は、ステップS110の度に、第1校正処理および校正情報生成処理を実行し、第1校正処理による校正情報と、校正情報生成処理により生成した校正情報とを記憶部21に記憶させる。制御部11は、校正情報生成処理では、例えば、第1校正処理により生成した校正情報のうち、幅方向の画素位置毎のシェーディング補正値を、間引いたり近傍画素で平均化したりして、読取部17が300dpiで媒体を読み取るときに必要なシェーディング補正値に変更することにより、校正情報を生成すればよい。
【0048】
図6は、第2実施例において、スキャン開始指示に応じて実行する媒体読取の流れをフローチャートにより示している。
図6については、
図5との相違点を説明する。
制御部11は、設定にかかる読取解像度が第1読取解像度であれば、ステップS202で“Yes”と判定してステップS204へ進み、設定にかかる読取解像度が第2読取解像度であれば、ステップS202で“No”と判定してステップS208へ進む。
ステップS208では、制御部11は、第2読取解像度用に生成した校正情報、つまり、校正情報生成処理により生成した校正情報を選択し、ステップS210へ進む。
ステップS220では、制御部11は、読取部17を制御して、設定にかかる読取解像度で媒体の読取を実行させる。このとき、制御部11は、その時点で記憶部21に記憶されている最新の校正情報であって、ステップS204またはステップS208で選択した方の校正情報に基づいて、読取部17に媒体の読取をさせる。
【0049】
このように第2実施例によれば、制御部11は、校正処理では、読取部17の読取解像度を第1読取解像度に設定して読取部17を校正する第1校正処理と、読取解像度を第1読取解像度よりも低い第2読取解像度に設定した場合の読取部17を校正するための校正情報を第1校正処理による校正情報に基づいて生成する校正情報生成処理と、を実行する。そして、媒体の読取の開始指示を受けた場合に、開始指示による読取解像度の設定に応じて、第1校正処理による校正情報または校正情報生成処理により生成した校正情報のいずれか一方を選択し、選択した校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせる。
つまり制御部11は、媒体載置部に媒体が載置されている場合、第1校正処理および校正情報生成処理を実行した後、第1時間が経過する度に第1校正処理および校正情報生成処理を繰り返す。そのため、スキャン開始指示を受けた場合に、第1校正処理および校正情報生成処理のいずれも実行する必要が無く、直近の第1校正処理または校正情報生成処理による校正情報であって、設定にかかる読取解像度に対応する校正情報に基づいて読取部17に媒体の読取をさせることができる。
なお、第1実施例や第2実施例では、制御部11は、2種類よりも多い読取解像度のそれぞれに対応した校正情報を、スキャン開始指示よりも前に生成、記憶しておき、スキャン開始指示が有った後、それらの中から、読取部17に設定する読取解像度に対応した校正情報を選択するようにしてもよい。
【0050】
5.第3実施例:
第1実施例や第2実施例は、スキャン開始指示を受けたときに読取部17の読取解像度の設定が判明する場合に好適な実施例である。
一方で、第3実施例では、読取部17が媒体の読取に採用する読取解像度としての「既定読取解像度」が記憶部21に記憶されており、ユーザーが操作パネル13のスタートボタンを押下げすると、制御部11が、ステップS200で“Yes”と判定し、既定読取解像度にて読取部17に読取を実行させる場合を想定する。
【0051】
このような第3実施例では、制御部11は、ステップS110の校正処理では、読取部17が媒体の読取に採用する読取解像度として記憶部21に記憶されている既定読取解像度を記憶部21から取得し、既定読取解像度を読取部17の読取解像度に設定して読取部17を校正する。例えば、既定読取解像度が300dpiであれば、制御部11は、ステップS110では、読取部17の読取解像度を300dpiに設定して校正を行えばよい。この場合、
図4のステップS220では、制御部11は、読取部17を制御して、既定読取解像度で媒体の読取を実行させる。このとき、制御部11は、その時点で記憶部21に記憶されている、既定読取解像度に対応する最新の校正情報に基づいて、読取部17に媒体の読取をさせる。
【0052】
第3実施例によれば、読取部17が媒体の読取に採用する読取解像度が、スキャン開始指示を受ける前から判明しているため、ステップS110における校正処理の負担を低減することができる。そして、これまでの実施形態や実施例と同様に、第3実施例においても、制御部11は、スキャン開始指示を受けてから、読取部17の校正処理を行う必要が無い。
【0053】
6.第4実施例:
制御部11は、読取部17が採用し得る読取解像度のうちこれまでに媒体の読取に採用された回数が相対的に多い読取解像度(以下、優先読取解像度)を、読取部17の読取解像度に設定して、読取部17を校正するとしてもよい。第4実施例では、優先読取解像度が、記憶部21に記憶されているものとする。
【0054】
第4実施例では、制御部11は、ステップS110の校正処理では、優先読取解像度を記憶部21から取得し、優先読取解像度を読取部17の読取解像度に設定して読取部17を校正する。例えば、既定読取解像度が300dpiであれば、制御部11は、ステップS110では、読取部17の読取解像度を300dpiに設定して校正を行えばよい。
図4のステップS220では、制御部11は、読取部17を制御して、多くの場合、優先読取解像度で媒体の読取を実行させる。このとき、制御部11は、その時点で記憶部21に記憶されている、優先読取解像度に対応する最新の校正情報に基づいて、読取部17に媒体の読取をさせればよい。
【0055】
第4実施例によれば、第3実施例と同様に、ステップS110における校正処理の負担を低減することができる。また、第4実施例によれば、制御部11は、スキャン開始指示を受けた場合に、読取部17の校正処理を実行しなくても済む可能性が高い。ただし、スキャン開始指示によって、優先読取解像度とは異なる読取解像度が設定された場合には、制御部11は、ステップS220では、優先読取解像度とは異なる設定にかかる読取解像度で読取部17に媒体の読取を実行させなければならない。そのため第4実施例では、優先読取解像度とは異なる読取解像度が設定された場合は例外的に、制御部11は、ステップS200の“Yes”の後、ステップS210を行う前に、この設定にかかる読取解像度に対応させた読取部17の校正処理を実行して、ステップS220に必要な校正情報を取得する。
【0056】
7.第5実施例:
制御部11は、画像読取装置10を所定の通常モードから、通常モードよりも電力消費を抑制した省電力モードへ遷移させることが可能である。通常モードは、画像読取部10の各機能を特に停止させずに通常の動作をさせるモードであり、一方、省電力モードは、搬送部16や読取部17等といった一部機能への電力供給を停止して電力消費を抑制するモードである。省電力モードを、節電モードと呼んだり、省エネルギーモードと呼んだりしてもよい。これまでに説明した実施形態や実施例は、基本的には、通常モードであることを前提としている。
【0057】
図7は、第5実施例における、校正処理を繰り返し実行する流れをフローチャートにより示している。
図7については、
図3との相違点を説明する。
ステップS110で校正処理を実行した後、制御部11は、ステップS112において、現在の通常モードから省電力モードへ遷移すべきか否かを判定する。通常モードから省電力モードへ遷移する条件は様々である。例えば、制御部11は、省電力モードへの遷移指示を、操作パネル13等を通じて受け付けた場合に、省電力モードへ遷移すべきと判定する。
【0058】
また、制御部11は、外部からの入力が無い時間が所定の第2時間継続した場合に、省電力モードへ遷移すべきと判定してもよい。外部からの入力とは、操作パネル13や通信IF15を通じた指示やデータの入力である。また、制御部11は、媒体載置部に媒体が無い状態から有る状態へ切り替わってから、第2時間が経過する間、外部から入力が無かった場合に、省電力モードへ遷移すべきと判定してもよい。第2時間は、第1時間より長くてもよいし、短くてもよい。
【0059】
制御部11は、省電力モードへ遷移すべきと判定した場合、画像読取装置10を通常モードから省電力モードへ遷移させ、ステップS112の“Yes”からステップS114へ進む。一方、制御部11は、省電力モードへ遷移すべきと判定しなかった場合、通常モードを維持し、ステップS112の“No”からステップS120へ進む。
【0060】
ステップS120では、制御部11は、ステップS110の校正処理の後に第1時間が経過していないと判定した場合(ステップS120において“No”)、ステップS112の判定を繰り返す。つまり、
図7によれば、制御部11は、通常モードであれば
図3と同様の処理を繰り返す。
【0061】
ステップS114では、制御部11は、省電力モードから通常モードへ復帰すべきか否かを判定する。そして、通常モードへ復帰すべきと判定した場合、画像読取装置10を省電力モードから通常モードへ復帰させ、ステップS114の“Yes”からステップS1100へ進む。制御部11は、省電力モード中、外部からの入力を認識したり、媒体載置部への媒体の載置等の、ユーザーの所定の操作を検出したりした場合に、通常モードへ復帰すべきと判定する。
【0062】
このような第5実施例によれば、制御部11は、省電力モードにおいては、ステップS110の校正処理後の第1時間の経過にかかわらず、校正処理を実行しない。つまり、制御部11は、媒体検出センサー52によって媒体有りが検出されている状態で、通常モードから省電力モードへ遷移させた場合、省電力モードにおいては、第1時間が経過しても校正処理を実行しない。これにより、省電力モードによる電力消費の抑制が的確に実現される。
【0063】
また、第5実施例によれば、制御部11は、画像読取装置10を省電力モードから通常モードへ復帰させた場合(ステップS114において“Yes”)、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出されたことに応じて(ステップS100において“Yes”)、ステップS110の校正処理を実行する。つまり、制御部11は、画像読取装置10を省電力モードから通常モードへ復帰させた場合、媒体載置部に媒体有りと判定できたら読取部17を校正し、その後、第1時間の経過の度に読取部17を校正することができる。
第5実施例には、第1実施例~第4実施例のいずれかを組み合わせたり、後述する第6実施例や第7実施例を組み合わせたりすることも可能である。
【0064】
8.第6実施例:
図8,9,10は、画像読取装置10の外観を斜視図により例示している。
図2と比べると、
図8~10では、画像読取装置10を実製品により近いデザインで表現している。
図2でも示したように、画像読取装置10の外観は、概略、下ユニット40および上ユニット41により構成され、画像読取装置10は供給口43や排出口44を有する。符号5は、下ユニット40および上ユニット41を含む製品の筐体を、設置面において支持する支持部5である。支持部5を台座とも呼ぶ。互いに直交するX,Y,Z方向において、X方向は左方向、Y方向は前方向、Z方向は上方向に対応している。
【0065】
原稿トレイ42は、筐体に対して回動可能に支持されており、
図8においては閉状態である。閉状態の原稿トレイ42は、供給口43を塞ぐ。ユーザーは、閉状態の原稿トレイ42を、前方から後方へ回動させ
図9に示すように起立させることにより、開状態とする。原稿トレイ42を開状態とすることで、原稿トレイ42および供給口43が使用できるようになる。
図8~10によれば、原稿トレイ42は、画像読取装置10の筐体の少なくとも一部を開閉するために変位可能な「カバー」の例に該当する。
【0066】
画像読取装置10は、搬送部16による媒体の排出を受けるための排出トレイ53であって、媒体の排出を受けることが可能な排出姿勢と、排出を受けることが不能な不使用姿勢とに変位可能な排出トレイ53を有する。
図2では、排出トレイ53の記載を省略している。排出トレイ53は、原稿トレイ42よりも前方で、筐体に対して回動可能に支持されており、
図8においては不使用姿勢である。不使用姿勢の排出トレイ53は、前方から上ユニット41の大部分を覆い、上ユニット41に設けられた操作パネル13等を塞ぐ。
【0067】
ユーザーは、不使用姿勢の排出トレイ53を、後方から前方へ回動させ
図9に示すように倒すことにより、排出姿勢とする。排出姿勢の排出トレイ53は、搬送部16によって排出口44から排出される媒体を受けることができる。また、ユーザーは、排出トレイ53を排出姿勢とすることにより、操作パネル13を操作することが可能となる。つまり、ユーザーは、画像読取装置10を使用しないときは、原稿トレイ42を閉状態とし、排出トレイ53を不使用姿勢としておき、画像読取装置10を使用するために、原稿トレイ42を開状態とし、排出トレイ53を排出姿勢とする。
【0068】
原稿トレイ42は、
図10に示されるように原稿トレイ42から引き出した状態と、図 9に示されるように原稿トレイ42内に収納された状態と、を切り換え可能な補助原稿トレイ9を備えるとしてもよい。補助原稿トレイ9は、例えば、第1補助トレイ9a、第2補助トレイ9b、第3補助トレイ9cの3段のトレイによって構成されている。補助原稿トレイ9を、
図10のように引き出した状態とすることにより、原稿トレイ42の長さを延長することができる。また、ユーザーは、補助原稿トレイ9を原稿トレイ42内に収納してから、原稿トレイ42を
図8に示す閉状態とする。
【0069】
排出トレイ53は、
図10に示されるように、排出口44から排出される媒体を受ける 第1トレイ54と、第1トレイ54に対して収納可能に構成された第2トレイ55を備えるとしてもよい。また、第2トレイ55は、第2トレイ55に対して収納可能な第3トレイ56を備え、第3トレイ56は、第3トレイ56に対して収納可能な第4トレイ57を備えるとしてもよい。第2トレイ55、第3トレイ56、 第4トレイ57により、排出トレイ53の媒体排出方向の長さを延長することができる。第4トレイ57の先端には、第4トレイ57に対して折りたたみ可能に形成され、排出トレイ53に載置された媒体の前方への移動を規制する規制部58が設けられているとしてもよい。ユーザーは、第2トレイ55、第3トレイ56、第4トレイ57及び規制部58を収納してから、排出トレイ53を
図8に示す不使用姿勢とする。
【0070】
カバーとしての原稿トレイ42を閉状態から開状態へ変位させることは、原稿トレイ42へ媒体を載置する旨のユーザーの意思の表れと言える。そこで、制御部11は、カバーが閉状態から開状態へ変位した場合にも、読取部17の校正処理を実行するとしてもよい。
【0071】
図11は、第6実施例における、校正処理を繰り返し実行する流れをフローチャートにより示している。
図11については、
図3との相違点を説明する。
ステップS300では、制御部11は、カバーが開状態であるか否かを判定する。制御部11は、原稿トレイ42の閉状態や開状態への変位を不図示のセンサーを通じて検出可能である。従って、制御部11は、原稿トレイ42が閉状態から開状態へ変位したことを検出した場合に、ステップS300で“Yes”と判定し、ステップS310へ進めばよい。
【0072】
ステップS310は、ステップS110と同じである。また、ステップS310の後に、ステップS320,S330,S340を繰り返す流れは、ステップS120,S100,S110を繰り返す流れと同じである。つまり、第6実施例では、制御部11は、カバーが開状態へ変位したことに応じて(ステップS300において“Yes”)、校正処理(ステップS310)を実行してから、第1時間が経過した後に、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出された場合は(ステップS330において“Yes”)、校正処理を実行する(ステップS340)。
【0073】
一方、カバーが開状態へ変位したことに応じて(ステップS300において“Yes”)、校正処理(ステップS310)を実行してから、第1時間が経過するよりも前に、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出されたとしても、その時はステップS320で“No”と継続的に判定している期間であるため、制御部11は、ステップS340を実行しない。この場合は、制御部11は、ステップS320で“Yes”と判定した上で、ステップS330で“Yes”と判定してステップS340を実行する。
【0074】
第6実施例によれば、制御部11は、カバーが開状態となったことを契機として読取部17の校正処理を実行した後、第1時間が経過するよりも早いタイミング、つまり必要以上に早いタイミングで、次の校正処理を実行することは避けつつ、媒体載置部に媒体が載置されたことに応じて校正処理を実行したり、媒体載置部に媒体が載置されている状況で第1時間が経過する度に校正処理を実行したりすることができる。
【0075】
9.第7実施例:
第7実施例についても、
図8~10を参照する。排出トレイ53を不使用姿勢から排出姿勢へ変位させることは、画像読取装置10を使用する旨のユーザーの意思の表れと言える。そこで、制御部11は、排出トレイ53が不使用姿勢から排出姿勢へ変位した場合にも、読取部17の校正処理を実行するとしてもよい。
【0076】
図12は、第7実施例における、校正処理を繰り返し実行する流れをフローチャートにより示している。
図11のステップS300の“カバー開状態?”を“排出トレイは排出姿勢?”に読み替えて、
図11と同じように
図12を解釈することができる。つまり、ステップS410,S420,S430,S440は、ステップS310,S320,S330,S340と同じである。ステップS400では、制御部11は、排出トレイ53が排出姿勢であるか否かを判定する。制御部11は、排出トレイ53の不使用姿勢や排出姿勢への変位を不図示のセンサーを通じて検出可能である。従って、制御部11は、排出トレイ53が不使用姿勢から排出姿勢へ変位したことを検出した場合に、ステップS400で“Yes”と判定し、ステップS410へ進めばよい。
【0077】
つまり、第7実施例では、制御部11は、排出トレイ53が排出姿勢へ変位したことに応じて(ステップS400において“Yes”)、校正処理(ステップS410)を実行してから、第1時間が経過した後に、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出された場合は(ステップS430において“Yes”)、校正処理を実行する(ステップS440)。
【0078】
一方、排出トレイ53が排出姿勢へ変位したことに応じて(ステップS400において“Yes”)、校正処理(ステップS410)を実行してから、第1時間が経過するよりも前に、媒体検出センサー52によって媒体有りと検出されたとしても、その時はステップS420で“No”と継続的に判定している期間であるため、制御部11は、ステップS440を実行しない。この場合は、制御部11は、ステップS420で“Yes”と判定した上で、ステップS430で“Yes”と判定してステップS440を実行する。
【0079】
第7実施例によれば、制御部11は、排出トレイ53が排出姿勢となったことを契機として読取部17の校正処理を実行した後、第1時間が経過するよりも早いタイミング、つまり必要以上に早いタイミングで、次の校正処理を実行することは避けつつ、媒体載置部に媒体が載置されたことに応じて校正処理を実行したり、媒体載置部に媒体が載置されている状況で第1時間が経過する度に校正処理を実行したりすることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…画像読取装置、11a…CPU、11b…ROM、11c…RAM、12…プログラム、13…操作パネル、14…表示部、15…通信IF、16…搬送部、17…読取部、18…光源、19…イメージセンサー、20…AFE、21…記憶部、30…端末装置、40…下ユニット、41…上ユニット、42…原稿トレイ、43…供給口、44…排出口、45…搬送路、52…媒体検出センサー、53…排出トレイ、M…媒体