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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178047
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】遮音板の固定金具及び固定方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084551
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】592093914
【氏名又は名称】新中央工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 顕郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 辰嘉
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
(57)【要約】
【課題】前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ハンマー等で叩かずに低騒音で固定金具により透光性遮音板を支柱に固定することができる遮音板の固定金具及び固定方法を提供する。
【解決手段】遮音壁W1の支柱H1と透光性遮音板B1との隙間に差し込まれて透光性遮音板B1を支柱H1に押圧して固定する遮音板の固定金具1において、弾性変形時の復元力で透光性遮音板B1の端部を押圧するくの字状の板バネ材2と、この板バネ材2の開放端側を押し込んで広げる押し金具3と、この押し金具3を貫通してねじ込むボルト40とナット(41,42)を有するボルトセット4と、を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音壁の支柱と遮音板との隙間に差し込まれて遮音板を支柱に押圧して固定する遮音板の固定金具であって、
弾性変形時の復元力で遮音板の端部を押圧するくの字状の板バネ材と、この板バネ材の開放端側を押し込んで広げる押し金具と、この押し金具を貫通してねじ込むボルトとナットを有するボルトセットと、を備えること
を特徴とする遮音板の固定金具。
【請求項2】
前記板バネ材には、前記押し金具をスライド不能に掛け止める掛け止め片が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の遮音板の固定金具。
【請求項3】
前記板バネ材は、複数枚の板材が重ね合わさって形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の遮音板の固定金具。
【請求項4】
前記板バネ材及び前記押し金具は、それぞれ左右一対設けられ、
前記ボルトセットは、前記ボルトを前記支柱に止め付ける第1ナットと、前記一対の押し金具のいずれかに掛け止める第2ナットと、を有すること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の遮音板の固定金具。
【請求項5】
前記遮音板の端部と前記板バネ材との間にアングル材からなる押えアングルが介装されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の遮音板の固定金具。
【請求項6】
支柱に遮音板を固定する遮音板の固定方法であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の遮音板の固定金具を用いて、前記ボルトセットのボルト又はナットを回すことにより、前記押し金具で前記板バネ材の開放端側を押し込んで広げることにより、前記板バネ材の弾性変形時の復元力で前記支柱に前記遮音板を押圧して固定すること
を特徴とする遮音板の固定方法。
【請求項7】
請求項4に記載の遮音板の固定金具を用いて、前記ボルトセットのボルトを回すことにより、前記一対の押し金具の一方で対応する前記一対の板バネ材の一方の開放端側を押し込んで広げることにより前記支柱に前記遮音板を押圧して固定した後、
前記ボルトセットの前記第2ナットを回すことにより、前記一対の押し金具の他方で対応する前記一対の板バネ材の他方の開放端側を押し込んで広げることにより前記支柱に前記遮音板と違う他の遮音板を押圧して固定すること
を特徴とする請求項6に記載の遮音板の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音板を支柱に固定する遮音板の固定金具及び固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路、線路、工場等の騒音源から騒音を遮蔽(遮音)するとともに、光を取り込むことができ、見通しを確保するために遮音壁の外側が視認可能な透光性遮音壁が設置されている。この透光性遮音壁は、H形鋼などの鋼製の支柱に、アクリル板、ポリカーボネイト板などの樹脂製透光板や石英ガラスや強化ガラスなどのガラス板などからなる可視光線を透過する透光性遮音板が差し込まれて固定金具で支柱のフランジに押圧されて固定されている。
【0003】
このような透光性遮音板を支柱に固定する従来の固定金具10は、一般に溶融亜鉛めっきされたSS400の一般構造用圧延鋼板からなり、図10に示すように、対辺の一辺が短くこれと対向する他辺が長く、残りの対辺が互いに傾斜した水平断面が台形状の矩形の枠体となっている。この固定金具10は、H形鋼からなる支柱H1に、アクリル板からなる透光性遮音板B1を差し込んだ後、透光性遮音板B1と支柱H1のフランジH1fとの間に台形状の固定金具10を叩き込まれて設置される。その後、固定金具10は、経時的に振動等で外れないように、円形の工具孔10aを介してインパクトレンチ等の電動工具で、ボルト(M12)で支柱H1のウェブH1wにねじ止め固定されていた。
【0004】
また、近年の遮音壁工事は、取替工事が中心になってきている。そして、取替工事は、共用中(使用中)の道路で行われることから、必然的に夜間工事が多くなり、工事騒音の問題が生じている。つまり、前述のように、従来の固定金具10では、透光性遮音板を固定する際に、透光性遮音板B1と支柱H1のフランジH1fとの間に台形状の固定金具10を叩き込むため、騒音発生の原因となっていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、回転させるに従って接触部までの回転中心からの距離が徐々に大きくなる周方向楔止面を有し、板材を支柱側壁に向け押しつけた状態で支柱中央壁に回転中心においてボルト締結手段により固定される透光性遮音板の固定金具が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0015]~[0020]、図面の図4図7等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の固定金具も、固定金具をハンマー等で叩いて被打撃部に打撃を加えることにより固定金具を回転させて透光板を支柱のフランジに押し付けて固定するものであり、騒音発生の原因であることに変わりはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-20388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ハンマー等で叩かずに低騒音で固定金具により遮音板を支柱に固定することができる遮音板の固定金具及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る遮音板の固定金具は、遮音壁の支柱と遮音板との隙間に差し込まれて遮音板を支柱に押圧して固定する遮音板の固定金具であって、弾性変形時の復元力で遮音板の端部を押圧するくの字状の板バネ材と、この板バネ材の開放端側を押し込んで広げる押し金具と、この押し金具を貫通してねじ込むボルトとナットを有するボルトセットと、を備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る遮音板の固定金具は、第1発明において、前記板バネ材には、前記押し金具をスライド不能に掛け止める掛け止め片が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る遮音板の固定金具は、第1発明又は第2発明において、前記板バネ材は、複数枚の板材が重ね合わさって形成されていることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る遮音板の固定金具は、第1発明ないし第3発明のいずれかの発明において、前記板バネ材及び前記押し金具は、それぞれ左右一対設けられ、前記ボルトセットは、前記ボルトを前記支柱に止め付ける第1ナットと、前記一対の押し金具のいずれかに掛け止める第2ナットと、を有することを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る遮音板の固定金具は、第1発明ないし第4発明のいずれかの発明において、前記遮音板の端部と前記板バネ材との間にアングル材からなる押えアングルが介装されていることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る遮音板の固定方法は、支柱に遮音板を固定する遮音板の固定方法であって、請求項1ないし5のいずれかに記載の遮音板の固定金具を用いて、前記ボルトセットのボルト又はナットを回すことにより、前記押し金具で前記板バネ材の開放端側を押し込んで広げることにより、前記板バネ材の弾性変形時の復元力で前記支柱に前記遮音板を押圧して固定することを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る遮音板の固定方法は、第6発明において、請求項4に記載の遮音板の固定金具を用いて、前記ボルトセットのボルトを回すことにより、前記一対の押し金具の一方で対応する前記一対の板バネ材の一方の開放端側を押し込んで広げることにより前記支柱に前記遮音板を押圧して固定した後、前記ボルトセットの前記第2ナットを回すことにより、前記一対の押し金具の他方で対応する前記一対の板バネ材の他方の開放端側を押し込んで広げることにより前記支柱に前記遮音板と違う他の遮音板を押圧して固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明~第7発明によれば、ボルトを締め込むことにより、板バネ材を押し広げて遮音板を支柱に押圧して固定することができる。このため、固定金具を支柱と遮音板との隙間にハンマー等で叩いて挿し込むことが不要となり、衝撃音の発生を防止して、遮音壁の設置工事の騒音を低減することができる。
【0017】
特に、第2発明によれば、ボルトを締めすぎることを確実に防止でき、遮音板の固定作業を容易に短時間で行うことができる。
【0018】
特に、第3発明によれば、一枚の板バネ材を薄く柔軟にできるとともに、必要な押圧力を確保することができ、適切な押圧力で遮音板を支柱に押圧して固定することができる。
【0019】
特に、第4発明及び第7発明によれば、一本の支柱に固定する二枚の遮音板を一枚ずつ固定することが可能となり、同時に固定する必要がなくなるため、少ない人員で遮音板の固定作業を行うことが可能となる。
【0020】
特に、第5発発明によれば、固定作業時等において、遮音板を傷付けるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係る遮音板の固定金具で遮音板を支柱に固定した遮音壁の固定構造を示す水平断面図である。
図2図2は、同上の遮音壁の固定構造を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る遮音板の固定金具を示す斜視図である。
図4図4は、同上の固定金具の板バネ材のみを示す斜視図である。
図5図5は、同上の固定金具の押し金具のみを示す斜視図である。
図6図6は、同上の固定金具のボルトセットを主に示す斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る遮音板の固定方法のボルト挿通工程を水平断面図で示す工程説明図である。
図8図8は、同上の遮音板の固定方法の第1の遮音板固定工程を水平断面図で示す工程説明図である。
図9図9は、同上の遮音板の固定方法の第2の遮音板固定工程を水平断面図で示す工程説明図である。
図10図10は、従来の遮音板の固定金具で遮音板を支柱に固定した遮音壁の固定構造を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る遮音板の固定金具及びそれを用いた遮音板の固定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
[遮音板の固定金具]
先ず、図1図6を用いて、本発明の実施形態に係る遮音板の固定金具について説明する。H形鋼からなる支柱H1に、アクリル板からなる透光性遮音板B1を遮音板の固定金具1(以下、単に固定金具1ともいう。)で固定する場合を例示して説明する。図1は、本実施形態に係る遮音板の固定金具1で透光性遮音板B1を支柱H1に固定した遮音壁W1の固定構造を示す水平断面図であり、図2は、遮音壁W1の固定構造を示す斜視図である。
【0024】
図1図2に示すように、H形鋼からなる支柱H1は、その下端部が壁高欄などの鉄筋コンクリート構造物に埋設されて立設され、その支柱H1のフランジH1fの一方に内側から、アクリル板からなる透光性遮音板B1(B1’)が固定金具1で押し付けられて固定されている。この遮音壁W1は、高速道路、線路等の騒音源から騒音を遮音するとともに、光を取り込むことができ、見通しを確保するために外側が視認可能な透光性遮音壁である。
【0025】
なお、透光性遮音板B1の端部である四周の縁には、透光性遮音板B1の端部を保護するとともに、隙間から音が漏れないように密閉するEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのゴム弾性体からなるガスケットG1が嵌着されている。
【0026】
図3は、本実施形態に係る固定金具1を示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態に係る固定金具1は、くの字状の左右一対の板バネ材2,2と、これらの板バネ材の開放端側をそれぞれ押し込んで広げる左右一対の押し金具3,3と、これらの押し金具を貫通してねじ込むボルトセット4と、を備えている。
【0027】
(板バネ材)
図4は、本実施形態に係る固定金具1の板バネ材2のみを示す斜視図である。板バネ材2は、耐食耐候性の高い厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304)からなり、幅45mm×177mm程度の短冊状の鋼板本体20から折り曲げ形成されている。
【0028】
また、本実施形態に係る板バネ材2は、図4に示すように、一対のそれぞれの板バネ材2が、ステンレス鋼板からなる鋼板本体20,20が複数枚(図示形態では2枚)重なり合って形成されている。このため、板バネ材2は、一枚当たりの鋼板本体20,20の厚さを薄くして、柔軟で変形性に富んだ板材とすることができるとともに、複数枚重ね合わせることにより必要な押圧力を確保することができる。
【0029】
また、各鋼板本体20,20は、30mm程度の長さの中央部21を残し、その両端部22が同一側(側面2a側)に折り曲げられて倒れて傾斜し、くの字状となっている(図1も参照)。
【0030】
この板バネ材2は、図1に示すように、くの字状に開いた開放端側(両端部22が折り曲げられて倒された側)となる一側面2aに、支柱H1のウェブH1w側に引き寄せられた押し金具3で押されることにより、折り曲げられた両端部22が押し開かれるバネ材である。つまり、板バネ材2は、押し金具3が一側面2aに当接しながらスライド移動(摺動)することで、押し開かれた両端部22の先端が支柱H1のフランジや後述の押えアングル5に当接して弾性変形する。そして、板バネ材2は、の弾性変形時の復元力で透光性遮音板B1の端部を押圧することにより、支柱H1の一方のフランジに押圧して固定する。
【0031】
また、図4に示すように、この板バネ材2の一側面2aの中央部21には、板バネ材2を貫通するための後述のM12のボルトを挿通するボルト孔23が形成されている。
【0032】
そして、図4に示すように、この板バネ材2の両端部22には、両端部付近に矩形状に切り起された掛け止め片24が形成されている。この掛け止め片24は、一側面20aに沿ってスライド移動する押し金具3の板面に対して掛け止め片24の先端面を直交するように当接させることで(図1も参照)、押し金具3がそれ以上支柱H1のウェブ側に引き寄せられないように、スライド不能に掛け止める機能を有している。このため、固定金具1は、ボルトを締めすぎて押圧力が高くなりすぎることを確実に防止でき、透光性遮音板B1の固定作業を容易に短時間で行うことができる。
【0033】
(押し金具)
図5は、本実施形態に係る固定金具1の押し金具3のみを示す斜視図である。図5に示すように、押し金具3は、ステンレス鋼板(SUS304)からなる50mm×15mm×1.5mmの溝形鋼を金具本体30とする。即ち、溝形鋼である金具本体30は、長手方向の縁に沿って側壁部31が形成された金具であり、中央にボルト40を挿通するボルト孔32が形成されている。
【0034】
本実施形態に係る押し金具3,3は、前述の板バネ材2に対応して左右一対設けられ、ボルトセット4で締め付けられることにより互いに引き寄せられて、前述のように、傾斜する一側面2aに沿ってスライド移動し、くの字状の板バネ材2を押し開く機能を有している(図1参照)。
【0035】
また、押し金具3は、長手方向の縁が折り曲げられて断面コの字状の溝形鋼となっていることで、板バネ材2を押圧しても板バネ材2の両端部22が側壁部31でガイドされ、押し金具3から外れることを防止する機能も有している。
【0036】
(ボルトセット)
図6は、本実施形態に係る固定金具1のボルトセット4を主に示す斜視図である。図6に示すように、ボルトセット4は、溶融亜鉛めっきされた一般構造用圧延鋼材(SS400)からなるM12のボルト40と、このボルト40に螺合する第1ナット41と、第2ナット42など、から構成されている。
【0037】
また、図1図3に示すように、このボルト40は、前述の一対の板バネ材2をボルト孔23で貫通するとともに、押し金具3をボルト孔32で貫通するように設けられる。ボルト40は、インパクトレンチ等で締め付けられることにより、一対の押し金具3,3の間の距離を縮めてそれぞれの押し金具3,3で一対の板バネ材2を押し広げる機能を有している。
【0038】
そして、図3図6に示すように、このボルト40には、押し金具3,3と当接する位置に大ワッシャー43が装着され、大ワッシャー43とボルト40のボルト頭40aとの間に樹脂ワッシャー44が装着されている。また、大ワッシャー43と第2ナット42との間と、第1ナット41と板バネ材2との間にも樹脂ワッシャー44が装着されている。
【0039】
本実施形態に係る大ワッシャー43は、ステンレス製の直径φ=40mm×厚さ3mmのステンレスワッシャーであり、本実施形態に係る樹脂ワッシャー44は、ナイロン樹脂製の直径φ=24mm×厚さ2.5mmのワッシャーである。
【0040】
(押えアングル)
また、図1図2に示すように、本実施形態に係る固定金具1には、透光性遮音板B1の端部(ガスケットG1)と板バネ材2との間に、押えアングル5が介装されている。押えアングル5は、ステンレス製のアングル材である。この押えアングル5は、板バネ材2で押圧されることで支柱H1のウェブと当接する一辺に沿ってスライド移動する。また、押えアングル5の他辺が、透光性遮音板B1と板バネ材2との間に介在することで、板バネ材2の鋭利な端部で透光性遮音板B1を傷付けることないようにするための部材である。
【0041】
[遮音板の固定方法]
次に、図7図9を用いて、本発明の実施形態に係る遮音板の固定方法の施工手順について説明する。前述の固定金具1を用いて、前述の支柱H1のフランジの一方に内側から前述の透光性遮音板B1を押し付けて固定し、透光性の遮音壁W1を構築する場合を例示して説明する。図7は、本実施形態に係る遮音板の固定方法のボルト挿通工程を水平断面図で示す工程説明図である。
【0042】
(ボルト挿通工程)
図7に示すように、本実施形態に係る遮音板の固定方法では、先ず、ボルト40を支柱H1のウェブH1wに挿通するボルト挿通工程を行う。なお、本実施形態に係る遮音板の固定方法では、図7に示すように、支柱H1の左側の第1の透光性遮音板B1から先に取り付ける手順で施工する場合を例示している。
【0043】
本工程では、予め、ボルト40を左右一対の左側の押し金具3のボルト孔32及び板バネ材2のボルト孔23に挿通しておく。そして、支柱H1のウェブH1wに穿設されたボルト孔に、左側の押し金具3及び板バネ材2が挿通された状態のボルト40を挿通する。その後、支柱H1に挿通されたボルト40に右側の板バネ材2を挿通して、樹脂ワッシャー44を挿通し、第1ナット41である程度締めてねじ止め固定する。
【0044】
(第1の遮音板固定工程)
図8は、本実施形態に係る遮音板の固定方法の第1の遮音板固定工程を水平断面図で示す工程説明図である。図8に示すように、本実施形態に係る遮音板の固定方法では、次に、先に取り付ける支柱H1のウェブH1wに対して左側の第1の透光性遮音板B1を支柱H1のフランジH1fに押し付けて固定する第1の遮音板固定工程を行う。
【0045】
具体的には、本工程では、インパクトレンチ等でボルト40のボルト頭を回すことにより、ボルト40と第1ナット41との間の距離を縮め、押し金具3で板バネ材2を押し広げる。そして、板バネ材2を押し広げることにより、押えアングル5を介して、左側のガスケットG1及び透光性遮音板B1の端部を押圧し、支柱H1の一方(図示状態の上部)のフランジH1fに押し付けて固定する。
【0046】
このとき、本工程では、前述のように、板バネ材2には、掛け止め片24が形成されているので、押し金具3の板面に掛け止め片24の先端面が当接して押し金具3がスライド移動できなくなるまで、ボルトセット4を締め込む。このように、固定金具1は、ボルトセット4を締め込む基準が明確で、板バネ材2による適切な押圧力の管理が容易であり、誰でも簡単に短時間で作業を完了させることができる。
【0047】
(第2の遮音板固定工程)
図9は、本実施形態に係る遮音板の固定方法の第2の遮音板固定工程を水平断面図で示す工程説明図である。図9に示すように、本実施形態に係る遮音板の固定方法では、次に、支柱H1のウェブH1wに対して右側の残りの第2の透光性遮音板B1’を支柱H1のフランジH1fに押し付けて固定する第2の遮音板固定工程を行う。
【0048】
具体的には、本工程では、前工程で支柱H1のウェブH1wに固定されて右側に突出したボルト40の先端部分に、左側の板バネ材2を挿通して、さらに樹脂ワッシャー44を挿通し、第2ナット42をインパクトレンチ等で回すことにより締め込む。
【0049】
このとき、本工程でも、前工程と同様に、押し金具3の板面に掛け止め片24の先端面が当接して右側の押し金具3がスライド移動できなくなるまで、ボルトセット4を締め込む。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る遮音板の固定金具1及びそれを用いた遮音板の固定方法によれば、ボルトセット4(ボルト40)を締め込むことにより、板バネ材2を押し広げて透光性遮音板B1,B1’を支柱に押圧して固定することができる。このため、固定金具1を支柱H1と遮音パネルとの隙間にハンマー等で叩いて挿し込むことが不要となり、衝撃音の発生を防止して、遮音壁W1の設置工事の騒音を低減することができる。
【0051】
また、固定金具1及びそれを用いた遮音板の固定方法によれば、柔軟な複数枚からなる板バネ材2で適切な押圧力で透光性遮音板B1,B1’を固定するので、遮音壁W1に作用する風荷重が変化しても安定的に固定することができる。このため、経時的にも透光性遮音板B1,B1’がバタついたり、部材の緩みが発生したりするおそれが低減される。
【0052】
その上、固定金具1及びそれを用いた遮音板の固定方法によれば、一本の支柱H1に固定する二枚の透光性遮音板B1,B1’を一枚ずつ固定することが可能となり、同時に複数枚の透光性遮音板B1,B1’を固定する必要がなくなるため、少ない人員で遮音板の固定作業を行うことが可能となる。
【0053】
以上、本実施形態に係る遮音板の固定金具及びそれを用いた遮音板の固定方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0054】
特に、支柱H1に固定する二枚の透光性遮音板B1,B1’のうち、左側の第1の透光性遮音板B1を先に固定する場合を例示したが、いずれを先に固定してもよいことは云うまでもない。但し、右側の透光性遮音板B1’を先に固定する場合は、ボルトセット4のボルト40のボルト頭が右側に来るように挿通する必要がある。ボルトセット4を支柱H1のウェブH1wに固定するためには、第1ナット41が後から施工する側に設ける必要があるからである。
【0055】
また、遮音板として、アクリル板を例示したが、これに限られず、ポリカーボネイト板などの樹脂製透光板や石英ガラスや強化ガラスなどの可視光線を透過する他の透光性遮音板とすることも可能である。その上、本発明は、可視光線を透過する透光性遮音板に限られず、鋼板などからなり重量側で騒音の伝播を防止する可視光線を透過しない遮音板の固定にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:固定金具(遮音板の固定金具)
10:従来の固定金具
10a:工具孔
2:板バネ材
2a:一側面
20:鋼板本体
21:中央部
22:両端部
23:ボルト孔
24:掛止め片
3:押し金具
30:金具本体
31:側壁部
32:ボルト孔
4:ボルトセット
40:ボルト
40a:ボルト頭
41:第1ナット(ナット)
42:第2ナット(ナット)
5:押えアングル
W1:遮音壁
H1:支柱
B1,B1’:透光性遮音板
G1:ガスケット
図1
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図10