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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178049
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】自己乳化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/34 20220101AFI20221125BHJP
   C09K 23/38 20220101ALI20221125BHJP
   C09K 23/44 20220101ALI20221125BHJP
【FI】
B01F17/34
B01F17/38
B01F17/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084555
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】桂 健太
(72)【発明者】
【氏名】黒須 良太
【テーマコード(参考)】
4D077
【Fターム(参考)】
4D077AB17
4D077AC02
4D077BA04
4D077BA15
4D077DC32Y
4D077DC35Y
4D077DD32Y
4D077DD33Y
(57)【要約】
【課題】脂肪酸エステルを含む製剤を簡便かつ良好に水に乳化できる組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):特定の脂肪酸エステル、成分(B):ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステル、および成分(C):特定のオキシアルキレンアルキルエーテル、を有する、自己乳化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):下記化学式(1);
【化1】

化学式(1)において、Rは、炭素数7~23の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは炭素数1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す;で表される脂肪酸エステル
成分(B):ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、および
成分(C):下記化学式(2);
【化2】

化学式(2)において、Rは、炭素数6~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、Rは、炭素数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示し、mは1~20を表す;で表されるオキシアルキレンアルキルエーテル、を有する、自己乳化性組成物。
【請求項2】
前記成分(B)に対する前記成分(C)の含有質量比(C)/(B)が0.2以上2.5以下である、請求項1に記載の自己乳化性組成物。
【請求項3】
さらに成分(D):ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルおよび/またはポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルを含む、請求項1または2に記載の自己乳化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量が35~94質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の自己乳化性組成物。
【請求項5】
前記成分(B)のHLBが8~16である、請求項1~4のいずれか1項に記載の自己乳化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸エステルは活性成分を懸濁、分散させる溶剤として広く用いられている。例えば、農薬の分野では、粉末状の活性成分を懸濁するための溶剤として、また、油性の活性成分の溶剤として用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、キシロールやメチルナフタレンなどの芳香族溶剤の代替溶剤として、皮膚刺激性や刺激臭を低減することを目的として、水溶解度が2重量%以上のエステル溶剤と、水溶解度が2重量%未満のエステル溶剤との2種類のエステル溶剤を組み合わせて用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/031621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液状油性形態の農薬は、使用時に、使用者が水に希釈してエマルジョンとして散布されることが多い。エマルジョンの乳化性が悪い場合には、活性成分を均一に散布することができなかったり、散布機が目詰まりを起こし、安定的に散布できない問題が生じることがある。また、当該エマルジョンの形成の際には、簡便性の観点から振盪など機械的撹拌力を用いることなく乳化させることを要する。
【0006】
そこで本発明は、脂肪酸エステルを含む製剤を簡便かつ良好に水に乳化できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、成分(A):下記化学式(1);
【0008】
【化1】
【0009】
化学式(1)において、Rは、炭素数7~23の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは炭素数1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す;で表される脂肪酸エステル
成分(B):ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、および
成分(C):下記化学式(2);
【0010】
【化2】
【0011】
化学式(2)において、Rは、炭素数6~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、Rは、炭素数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示し、mは1~20を表す;で表されるオキシアルキレンアルキルエーテル、を有する、自己乳化性組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自己乳化性組成物によれば、簡便かつ良好に水に乳化できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
【0014】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。
【0015】
<乳化剤組成物>
本発明の第一実施形態は、
【0016】
【化3】
【0017】
化学式(1)において、Rは、炭素数7~23の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは炭素数1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す;で表される脂肪酸エステル
成分(B):ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、および
成分(C):下記化学式(2);
【0018】
【化4】
【0019】
化学式(2)において、Rは、炭素数6~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、Rは、炭素数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示し、mは1~20を表す;で表されるオキシアルキレンアルキルエーテル、を有する、自己乳化性組成物である。
【0020】
ここで、自己乳化性とは、水などの水性溶媒に接触する前は油性(外相が油相である場合を含む)であるが、水性溶媒に接触すると、攪拌等の強い機械的エネルギーを必要とせずに自発的にエマルジョンが形成される性質を指す。ゆえに、本実施形態の自己乳化性組成物によれば、水への希釈時に振盪などの簡便な手段でエマルジョンとすることができる。また、本実施形態の自己乳化性組成物によれば、振盪などの簡便な手段で粒子径の細かいエマルジョンが得られる(乳化性が良好である)。ゆえに、水で希釈後も油相が分離することなく希釈物の安定性が保たれる。
【0021】
なお、本実施形態の自己乳化性組成物は油性形態であり、好ましくは、自己乳化性組成物自体は乳化組成物ではない。具体的には、本実施形態の自己乳化性組成物は、水の含有量は少ないことが好ましく、水の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0022】
本実施形態の自己乳化性組成物は、液状形態であることが好ましい。ここで、液状であるとは、25℃にて流動性を有するものを指す。より具体的には、組成物を45°傾けた場合、その形状を10分以上保持できず、形状の変化を生じることをいう。
【0023】
以下、自己乳化性組成物を構成する各成分について説明する。
【0024】
(成分(A):脂肪酸エステル)
脂肪酸エステルは、下記化学式(1)で表される構造を有する。
【0025】
【化5】
【0026】
化学式(1)において、Rは、炭素数7~23の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す。引火性が低いことが望ましいことから、Rのアルキル基またはアルケニル基における炭素数は、好ましくは9以上であり、より好ましくは11以上である。また、ハンドリング性の良さから、Rのアルキル基またはアルケニル基における炭素数は、好ましくは21以下、より好ましくは17以下である。
【0027】
化学式(1)において、Rは炭素数1~22の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す。低コストであることやハンドリングの良さから、Rはアルキル基であることが好ましく、Rのアルキル基における炭素数は、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4であり、Rはメチル基またはエチル基であることがさらにより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
【0028】
一般式(1)で表される脂肪酸エステルとしては、2-エチルヘキサン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸セテアリル、プロピルへプタン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸イソブチル、エルカ酸オレイル等が挙げられる。これらの中でも、低引火性、低コスト、ハンドリング性の良さから、脂肪酸エステルは、ラウリン酸メチルおよび/またはオレイン酸メチルであることが好ましく、オレイン酸メチルであることが特に好ましい。
【0029】
脂肪酸エステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0030】
自己乳化性組成物中、成分(A)の含有量は、活性成分の懸濁または溶解を考慮すると、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらにより好ましい。また、自己乳化性を考慮すると、自己乳化性組成物中、成分(A)の含有量は、98.9質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましい。好適な一実施形態は、自己乳化性組成物中、成分(A)の含有量は、35~94質量%である。
【0031】
(成分(B):ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシアルキレンソルビタンオレエート))
ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルを以下単にポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルとも称する。
【0032】
ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルは、例えば、化学式(3)にて表される化学構造を有する化合物であるが、特に限定されるものではなく、異性体構造、非環構造、イソソルバイト構造のものを含む。
【0033】
ソルビタン由来部とは、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルにおけるソルビタン由来の部分を指す。また、脂肪酸由来部は、ソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪酸由来の部分を指す。
【0034】
本明細書において、ソルビタン由来部1モルに対する脂肪酸由来部の平均モル比率が2.5~3.5であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン1モルの仕込みに対して脂肪酸を2.5~3.5モル添加して得られるものを指す。また、後述の比較例で用いられるポリオキシアルキレンソルビタンモノ脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸との平均モル比率がソルビタン:脂肪酸=1:0.5~1.5モルであるものを指す。
【0035】
【化6】
【0036】
式(3)において、Aはオキシアルキレン基、Rはアルキル基またはアルケニル基を示し、w、x、y、zは0以上の数を表し、w、x、y、zのうちいずれかが1以上であり、好ましくはwが1以上である。
【0037】
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルにおけるポリオキシアルキレン基の例としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基とのブロック状ポリオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基とのランダム状ポリオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基とポリオキシブチレン基とのブロック状ポリオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基とポリオキシブチレン基とのランダム状ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。中でも、本発明の効果が一層奏されることから、ポリオキシアルキレン基はポリオキシエチレン基であることが好ましい。
【0038】
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルにおける脂肪酸成分としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリラウレート等が挙げられる。中でも、乳化性(エマルジョンの乳化滴が細かいこと)が向上することから、ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートであることが特に好ましい。
【0040】
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルにおけるポリオキシアルキレン鎖の平均付加モル数(例えば、上記式(3)におけるw+x+y+zの平均値)は、乳化性を考慮すると、10~60であることが好ましく、15~50であることがより好ましく、15~40であることがさらにより好ましく、15~30であることが特に好ましい。ここでポリオキシアルキレン鎖の平均付加モル数とは、骨格1モルの仕込みに対して仕込んだポリオキシアルキレン原料(例えば、酸化エチレン(C=2)、酸化プロピレン(C=3)など)のモル数を指す。
【0041】
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルのHLBは、成分(C)との組み合わせによる乳化性、乳化安定性を考慮すると、8~16であることが好ましく、10~15であることがより好ましく、10~13であることがさらにより好ましい。
【0042】
なお、ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルを複数組み合わせる場合には、上記ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルのHLBは、各ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルのHLB値をその配合比率(質量%)に基づいて相加平均した総HLBとする。具体的には、以下の式で表される。
【0043】
総HLB=Σ(HLBA×A(%)/100)
HLBAは、ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルAのHLB値を示す。A(%)は、HLBAの値を有するポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルAのポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステル中の配合比率を示す。
【0044】
本発明におけるポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルのHLB値は、例えば、オキシアルキレン基がオキシエチレン基の場合は、GriffinによるHLB値を用いることができ、具体的には、以下の式に基づいて、算出される。
HLB=(E+P)/5(ただし、Eはオキシアルキレン基の重量分率、Pは多価アルコール基の重量分率である)
ポリオキシアルキレンソルビタントリ脂肪酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0045】
成分(B)の自己乳化性組成物中の含有量は、乳化性を考慮すると、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0046】
(成分(C):オキシアルキレンアルキルエーテル)
成分(C)は成分(B)と併用して用いられる。成分(C)を併用することで、乳化性が向上する(乳化滴が小さくなる)という効果が奏される。また、成分(C)を併用することで、希釈によって調製されたエマルジョンが一時保管される場合などの乳化安定性の向上も図ることができる。
【0047】
成分(C)の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルは、下記化学式(2);
【0048】
【化7】
【0049】
で表される。
【0050】
化学式(2)において、Rは、炭素数6~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。Rは、より具体的には、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖、または分岐のアルキル基が挙げられる。Rの炭素数が5以下、または9以上であると、乳化性が著しく劣る(後述の比較例参照)。
【0051】
化学式(2)において、Rは、炭素数2~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。Rは、より具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基が挙げられる。これらのうち、Rは、炭素数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0052】
mは、オキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレンの平均付加モル数を示し、1~20である。乳化性を考慮すると、1~15であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~8であることがさらに好ましく、3~5であることがさらにさらにより好ましい。
【0053】
成分(C)としては、具体的には、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン-n-ヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0054】
オキシアルキレンアルキルエーテルのHLBは、成分(B)との組み合わせによる乳化性、乳化安定性を考慮すると、8~16であることが好ましく、10~12であることがより好ましい。
【0055】
なお、オキシアルキレンアルキルエーテルを複数組み合わせる場合には、上記オキシアルキレンアルキルエーテルのHLBは、各オキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値をその配合比率(質量%)に基づいて相加平均した総HLBとする。具体的には、以下の式で表される。
【0056】
総HLB=Σ(HLBA’×A’(%)/100)
HLBA’は、オキシアルキレンアルキルエーテルA’のHLB値を示す。A’(%)は、HLBA’の値を有するオキシアルキレンアルキルエーテルA’のオキシアルキレンアルキルエーテル中の配合比率を示す。
【0057】
本発明におけるオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値は、例えば、オキシアルキレン基がオキシエチレン基の場合は、GriffinによるHLB値を用いることができ、具体的には、以下の式に基づいて、算出される。
【0058】
HLB=E/5(Eはオキシアルキレン基の重量分率である)
オキシアルキレンアルキルエーテルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0059】
成分(B)に対する成分(C)の含有質量比(C)/(B)は、乳化性を考慮すると、0.2以上2.5以下であることが好ましく、0.25以上2.5以下であることがより好ましく、0.3以上2.3以下であることがさらにより好ましい。
【0060】
(成分(D):ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルおよび/またはポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル)
本実施形態の自己乳化性組成物は、乳化性の観点から、さらに成分(D)ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルおよび/またはポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルを含むことが好ましい。
【0061】
ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルは、ヒマシ油にオキシアルキレンが付加重合した化合物である。また、硬化ヒマシ油は、ヒマシ油の水素添加物であり、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルは、硬化ヒマシ油にオキシアルキレンが付加重合した化合物である。以下、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルおよび/またはポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルを、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルとも称する。
【0062】
乳化性を考慮すると、成分(D)はポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルであることが好ましい。
【0063】
ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルにおけるポリオキシアルキレン鎖の平均付加モル数は、乳化安定性を考慮すると、5~60であることが好ましく、15~50であることがより好ましい。
【0064】
ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルのHLBは、成分(C)との組み合わせによる乳化性を考慮すると、8~15であることが好ましく、10~14であることが好ましい。
【0065】
なお、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルを複数組み合わせる場合には、上記ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルのHLBは、各ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルのHLB値をその配合比率(質量%)に基づいて相加平均した総HLBとする。具体的には、以下の式で表される。
【0066】
総HLB=Σ(HLBa×a(%)/100)
HLBaは、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルaのHLB値を示す。
【0067】
a(%)は、HLBaの値を有するポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルaのポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテル中の配合比率を示す。
【0068】
本発明におけるポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エーテルのHLB値の算出式としてはGriffinによるHLB値を用いる。
【0069】
ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテルおよび/またはポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0070】
成分(B)に対する前記成分(D)の含有質量比(D)/(B)は、乳化性を考慮すると、0.01以上1以下であることが好ましく、0.05以上0.8以下であることがより好ましく、0.1以上0.5以下であることがさらにより好ましく、0.1以上0.3以下がさらに好ましい。
【0071】
成分(B)、(C)および場合によって存在する成分(D)の合計含有量は、乳化性を考慮すると、自己乳化性組成物中、5~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらにより好ましい。
【0072】
(活性成分)
自己乳化性組成物は、活性成分を含んでいてもよい。また、活性成分は、上記自己乳化性組成物を製造後に添加してもよい。本実施形態の自己乳化性組成物によれば、種々の水難溶性物質(油性成分、粉末等)を含有させて水に対する乳化製剤とすることができる。また、本実施形態の自己乳化性組成物は、乳化性が良好である(乳化滴が小さい)ため、有効成分の濃度ムラが発生しにくく、活性成分の効能が安定しやすい。また、本実施形態の自己乳化性組成物は、乳化性が良好である(乳化滴が小さい)ため、活性成分が対象の表面に均一に付着することで、活性成分の薬効が向上するという効果も期待できる(例えば、活性成分の病害虫や雑草などへの接触確率の向上、植物への活性成分の吸収率の向上、蒸気圧の高い活性成分ではガス化速度の上昇が期待される。)。
【0073】
活性成分は、水に難溶性であることが好ましい。難溶性とは、水に対する溶解度が低いことを意味し、具体的には、第十六改正日本薬局方でいう溶解性が「やや溶けにくい」(溶質1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量が30mL以上100mL未満)、「溶けにくい」(同溶媒量が100mL以上1000mL未満)、「極めて溶けにくい」(同溶媒量が1000mL以上10000mL未満)又は「ほとんど溶けない」(同溶媒量が10000mL以上)であることを意味する。
【0074】
活性成分としては、例えば、農薬有効成分が挙げられる。農薬有効成分としては、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤または植物成長調節剤を挙げることができる。したがって、本発明の一実施形態は、さらに、農薬有効成分を含む、自己乳化性組成物(農薬組成物)である。
【0075】
殺虫剤としては、例えば、イソキサチオン、ダイアジノン、ダイスルフォトン、プロパホス、トリクロルフォン、ホルモチオン、ジメトエート、モノクロトフォス、アセフェート、カルボフラン、カルボスルファン、チオシクラム、カルタップ、ベンスルタップ、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、ブプロフェジン、フェノブカルブ、メトールカルブ、プロポクシュア、イミダクロプリド、ニッテンピラム及びアセタミプリド等の浸透移行性殺虫剤;又は、シクロプロトリン、エトフェンプロックス及びシラフルオフェン等のイネミズゾウムシやイネドロオイムシのような水中又は水面近くに生息する害虫に有効な合成ピレスロイドが挙げられる。
【0076】
殺菌剤としては、例えば、ヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)、プロベナゾール、イソプロチオラン、イプロベンフォス、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、オリブライト、アゾキシストロビン及び7-フルオロ-1,2,5,6-テトラヒドロ-4H-ピロロ[3.2.1-i.j]キノリン-4-オン等のイモチ剤;フルトラニル、メプロニル、チフルザミド、フラメトピル及び2-(4-フルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-トリメチルシリルプロパン-2-オール等の紋枯剤;テクロフタラム;又は、ベノミルであり得、好適には、プロベナゾール、イソプロチオラン、ピロキロン、カルプロパミド、オリブライト、アゾキシストロビン、7-フルオロ-1,2,5,6-テトラヒドロ-4H-ピロロ[3.2.1-i.j]キノリン-4-オン、フルトラニル、チフルザミド、フラメトピル、2-(4-フルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-トリメチルシリル-プロパン-2-オール又はテクロフタラムである。
【0077】
除草剤としては、例えば、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ブロモブチド、ブタミホス、メフェナセット、ベンスルフロン-メチル、アニロホス、ブタクロール、プレチラクロール、チオベンカルブ、クロルニトロフェン、クロメトキシフェン、ダイムロン、ビフェノックス、ナプロアニリド、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ベンタゾン、モリネート、ピペロホス、ジメピペレート、エスプロカルブ、ジチオピル、イマゾスルフロン、ベンフレセート、キノクラミン、シンメチリン、MCPA若しくはそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類又はエステル類、2,4-D若しくはそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類又はエステル類、MCPB若しくはそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類又はエステル類、キンクロラック、ピラゾスルフロンエチル、ペントキサゾン、テニルクロール、クミルロン、シノスルフロン、シメトリン、ジメタメトリン、シハロホップブチル、エトベンザニド、カフェンストロール、エトキシスルフロン、アジムスルフロン、シクロスルファムロン、インダノファン、ピリミノバックメチル、オキサジクロメホン、4-(2-クロロフェニル)-N-シクロヘキシル-4,5-ジヒドロ-N-エチル-5-オキソ-1H-テトラゾール-1-カルボキシアミド(NBA061)、[3-(2-クロロ-4-メチルスルホニルベンゾイル)-4-フェニルチオ]ビシクロ[3.2.1]オクト-3-エン-2-オン(ベンゾビシクロン、SB500)、メチル=N-[4-(ベンゾチアゾール-2-イルメトキシ)-2-メチルフェニル]カルバマート及びメチル=N-[4-(ベンゾオキサゾール-2-イルメトキシ)-2-メチルフェニル]カルバマートなどが挙げられる。
【0078】
植物成長調節剤としては、例えば、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ウニコナゾール又はトリアペンテノールなどが挙げられる。
【0079】
これらの活性成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0080】
活性成分の添加量は、効能などを考慮して適宜設定されるが、例えば、自己乳化性組成物中、0.01~50質量%であり、0.01~25質量%であってもよく、0.01~10質量%であってもよい。
【0081】
(添加成分)
本実施形態の自己乳化性組成物は、固体活性成分の沈降や凝集抑制を目的として、増粘剤を添加してもよい。
【0082】
増粘剤としては、例えば、ポリマー系増粘剤または無機系増粘剤等が挙げられる。ポリマー系増粘剤としては、キサンタンガム、ウエランガム、ラムザンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、ダイユータンガム等が挙げられる。無機系増粘剤としては、ホワイトカーボン、ベントナイト、コロイド状シリカ、コロイド状含水ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が例示される。その他に増粘剤として働き得るものとしては、例えば、糖脂肪酸エステル類(例、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等)、高級脂肪酸類(例、ステアリン酸ナトリウム等)、PEG、合成ワックス、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油、プルラン、ペクチン、アラビノガラクタン、カゼイン、タラガム、アラビアガム、タマリントガム、カラヤガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、セルロース類(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。これら増粘剤は2種以上を併用することもできる。増粘剤自体の組成物全体に占める割合は、通常約0.01質量%~10質量%の範囲、好ましくは、約0.03質量%~5質量%の範囲である。
【0083】
その他、本発明の自己乳化性組成物には、分散剤、湿潤剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、水などの添加剤を添加してもよい。
【0084】
(乳化物)
本実施形態の自己乳化性組成物は、一実施形態として、使用時に水で希釈されて乳化物を形成する。一例では、本実施形態の自己乳化性組成物は、好ましくは、重量基準で2~10000倍、5~5000倍で希釈される。
【0085】
乳化物の平均粒子径は、例えば、4μm以下であり、さらには、2μm以下が好ましい。「平均粒子径」とは、動的光散乱法により測定される体積換算の平均粒子径を意味する。平均粒子径は、動的光散乱法を利用した測定装置(例えば、粒度分布測定装置(例えば、HORIBA社製、partica LA-950V2(型番))により測定することができる。
【0086】
(用途)
第一実施形態の自己乳化性組成物の用途としては、特に限定されるものではないが、農薬、木材保存剤、防黴剤などが挙げられる。
【実施例0087】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0088】
(実施例1-1~1-10、比較例1-1~1-3)
下記表1に記載の組成の自己乳化性組成物を製造した。具体的には、成分(A)に、成分(B)、成分(C)を添加し、均一に混合して、自己乳化性組成物を得た。ラウリン酸メチルは、ラウリン酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)を用いた。なお、各成分の( )内は、酸化エチレン(EO)の平均付加モル数を表す。また、実施例で使用する成分(B)のポリオキシエチレンソルビタントリオレエートは、ソルビタンと脂肪酸との平均モル比率がソルビタン:脂肪酸=1:3である。
【0089】
下記評価方法1、2の評価にしたがって、評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(評価方法1:乳化性)
水道水19gを入れた試験管に、上記で得られた自己乳化性組成物 1gを入れ、10回の振盪により混合して乳化物を得た。下記評価基準にしたがって乳化性を評価した。
【0091】
【表1】
【0092】
(評価方法2:乳化安定性)
上記評価方法1と同様にして乳化物を得た後、25℃での乳化安定性を下記評価基準にしたがって評価した。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
上記の結果の通り、実施例の自己乳化性組成物は、乳化性が良好で、水で乳化後、15時間経過しても安定であった。一方で、成分(C)が配合されていない比較例1-1、2では、乳化性が良好ではなく、3時間で分離がおきた。また、成分(C)のオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数が12及び13である比較例2-3は、乳化性が良好ではなく、3時間で分離がおきた。
【0096】
(実施例2-1~2-5、比較例2-1~2-5)
下記表2に記載の組成の自己乳化性組成物を製造した。具体的には、成分(A)に、成分(B)、成分(C)を添加し、均一に混合して、自己乳化性組成物を得た。
【0097】
(実施例2-6、7)
下記表2に記載の組成の自己乳化性組成物を製造した。具体的には、成分(A)に、成分(B)、成分(C)、活性成分を添加し、均一に混合して、自己乳化性組成物を得た。
【0098】
オレイン酸メチルは、オレイン酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)を用いた。
【0099】
上記評価方法1、2の評価にしたがって、評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
【表4-1】
【0101】
【表4-2】
【0102】
上記の結果の通り、実施例の自己乳化性組成物は、乳化性が良好で、水で乳化後、15時間経過しても安定であった。一方で、成分(B)がポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルである比較例1では、乳化性が良好ではなく、また、3時間は安定であったが7時間で分離がおきた。また、成分(C)のオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数が4である比較例2-2、アルキル基の炭素数が10である比較例2-3、4、成分(C)が配合されていない比較例2-5は、乳化性が良好ではなく、また、3時間で分離がおきた。
【0103】
(実施例3-1~3-4)
下記表3に記載の組成の自己乳化性組成物を製造した。具体的には、成分(A)に、成分(B)、成分(C)を添加し、均一に混合して、自己乳化性組成物を得た。
【0104】
オレイン酸メチルは、オレイン酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)を用いた。
【0105】
上記評価方法1の評価にしたがって、評価を行った。結果を表3に示す。
【0106】
【表5】
【0107】
上記の結果の通り、実施例の自己乳化性組成物は、乳化滴が4μm以下であり、乳化性が良好であった。