(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178063
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】栓の装着装置、および該装置を使用した二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/664 20210101AFI20221125BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221125BHJP
H01M 50/645 20210101ALI20221125BHJP
【FI】
H01M50/664
H01G11/84
H01M50/645
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084579
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 正剛
【テーマコード(参考)】
5E078
5H023
【Fターム(参考)】
5E078LA06
5H023AA03
5H023AS01
5H023BB10
5H023CC11
5H023CC16
5H023CC30
(57)【要約】
【課題】対象物をより高い気密性で封止できる技術を提供する。
【解決手段】ここで開示される栓装着装置は、対象物Sの貫通孔Shに、一の端面24aに開口部24hを有する非貫通の穴24が内部に形成された筒状の栓20を装着する装置である。この装置は、栓20の開口部24hから穴24の内部に挿入される挿入ピン300と、挿入ピン300の周壁面をガイドし、かつ、挿入ピン300の軸方向においてスライド可能なガイド部400と、を備えている。この装置は、栓20を貫通孔Shに配置して、ガイド部400を開口部24hの周囲に配置した状態で、挿入ピン300を穴24の内部に押し込んで栓20を貫通孔Shに装着し、装着後、挿入ピン300を穴24と逆方向に移動させて該穴から取り除いた後に、ガイド部400を開口部24hから離脱させるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する対象物の該貫通孔に、筒状の栓であって、一の端面に開口部を有する非貫通の穴が内部に形成された栓、を装着する装置であって、
前記栓の前記開口部から前記穴の内部に挿入される挿入ピンと、
前記挿入ピンの周壁面をガイドし、かつ、該挿入ピンの軸方向においてスライド可能なガイド部と、
を備えており、
前記栓を前記貫通孔に配置して、
前記ガイド部を前記開口部の周囲に配置した状態で、前記挿入ピンを前記穴の内部に押し込んで前記栓を前記貫通孔に装着し、
前記装着後、前記挿入ピンを前記穴と逆方向に移動させて該穴から取り除いた後に、前記ガイド部を前記開口部から離脱させる
ように構成されている、装置。
【請求項2】
前記挿入ピンは、同軸上に、柱状の大径部と、該大径部よりも径が小さい柱状の小径部とを有しており、
前記小径部は、前記大径部の前記軸方向における一方の端部から突出しており、
前記大径部は、前記穴の内壁面に沿って前記軸方向にスライド可能であり、
前記大径部の少なくとも一部、および前記小径部が前記穴に挿入され、かつ、該挿入方向における前記小径部の端部が、前記穴の底面の少なくとも一部と接触した状態で、前記栓を前記貫通孔に装着するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記栓は、前記対象物の前記貫通孔に嵌め込まれる栓本体と、前記栓の前記貫通孔への嵌め込みを規制する規制部と、を備えており、
前記栓本体と前記規制部とは、相互に連なって形成されており、
前記栓本体と前記規制部とが連なる方向において、前記穴の前記開口部は前記規制部側の外表面に形成されており、
前記穴は、前記開口部から前記規制部を貫通して前記栓本体の内部に至っており、
前記栓本体の内部に、前記穴の前記底面が形成されている、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
正極および負極を有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体と前記非水電解液とを収容する電池ケースであって、前記非水電解液を注液するための注液孔を有する電池ケースと、
を備える二次電池を製造する方法であって、
前記電極体および前記非水電解液が収容された状態の電池ケースの前記注液孔を仮封止することを包含し、
前記仮封止を、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置を用いて実施する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栓の装着装置、および該装置を使用した二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔を有する対象物の該貫通孔に栓を装着することによって、該対象物の内部を外部から封止することがある。例えば特許文献1には、第1の治具および第2の治具を用いてワーク(対象物)の開口に栓を着脱することが記載されている。この栓本体は、筒状であり、上記開口への挿入位置を規制するストッパと、該ストッパ側から栓本体の途中まで形成されて底面を有する穴と、を備える。栓の装着では、第1の治具の一部を上記穴に挿入して栓をストッパの位置まで開口に押し込む。ここで、第1の治具は穴に挿入される部分とは異なる他の部分がストッパに当接し、ストッパをワークの表面に押し付けるため、ストッパの変形を抑制することができる。その一方、栓の脱着では、装着された栓の孔に第2の治具を挿入し、挿入方向に押し込むことで、ストッパが変形して、栓が開口から脱落する。このような技術によれば、ワークへの栓の着脱を簡易、かつ迅速に行うことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示される技術には、まだまだ改善の余地があった。特許文献1における栓本体の装着は、ストッパがワークの表面に接触したときに完了する。このとき、第1の治具が栓本体の穴から取り除かれるが、栓本体が第1の治具に追随してワークの開口から外れる虞がある。これは、栓による封止の対象物の気密性を低下させる要因となるため、好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、対象物をより高い気密性で封止できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される栓の装着装置は、貫通孔を有する対象物の該貫通孔に、筒状の栓であって、一の端面に開口部を有する非貫通の穴が内部に形成された栓、を装着する装置である。この装置は、上記栓の上記開口部から上記穴の内部に挿入される挿入ピンと、上記挿入ピンの周壁面をガイドし、かつ、該挿入ピンの軸方向においてスライド可能なガイド部と、を備えている。この装置は、上記栓を上記貫通孔に配置して、上記ガイド部を上記開口部の周囲に配置した状態で、上記挿入ピンを上記穴の内部に押し込んで上記栓を上記貫通孔に装着し、上記装着後、上記挿入ピンを上記穴と逆方向に移動させて該穴から取り除いた後に、上記ガイド部を上記開口部から離脱させるように構成されている。
【0007】
かかる構成の装着装置では、栓の穴に挿入される挿入ピンを備えることによって、対象物の貫通孔に栓をより容易に装着することができる。また、挿入ピンの周壁面をガイドするガイド部を備えることによって、挿入ピンをより確実に穴に挿入することができる。また、栓を装着した後、挿入ピンを穴から取り除いた後にガイド部を開口部から離脱させることによって、装着された栓が挿入ピンの移動に追随して貫通孔から外れるのを防止し、対象物の気密性を高めることができる。
【0008】
ここで開示される装着装置の好適な一態様では、上記挿入ピンは、同軸上に、柱状の大径部と、該大径部よりも径が小さい柱状の小径部とを有している。上記小径部は、上記大径部の上記軸方向における一方の端部から突出している。上記大径部は、上記穴の内壁面に沿って上記軸方向にスライド可能である。上記大径部の少なくとも一部、および上記小径部が上記穴に挿入され、かつ、該挿入方向における上記小径部の端部が、上記穴の底面の少なくとも一部と接触した状態で、上記栓を上記貫通孔に装着するように構成されている。かかる構成によると、上記効果に加えて、対象物の貫通孔への栓装着の好適な自動化を実現することができる。
【0009】
ここで開示される装着装置の好適な他の一態様では、上記栓は、上記対象物の上記貫通孔に嵌め込まれる栓本体と、上記栓の上記貫通孔への嵌め込みを規制する規制部と、を備えている。上記栓本体と上記規制部とは、相互に連なって形成されている。上記栓本体と上記規制部とが連なる方向において、上記穴の上記開口部は上記規制部側の外表面に形成されている。上記穴は、上記開口部から上記規制部を貫通して上記栓本体の内部に至っている。上記栓本体の内部に、上記穴の上記底面が形成されている。かかる構成の栓を使用することによって、上記の効果に加えて、該栓が対象物の内部に栓が落ち込むのを抑制することができる。
【0010】
本発明者は、より具体的に、二次電池の製造に着目した。即ち、ここで開示される技術によると、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、上記電極体と上記非水電解液とを収容する電池ケースであって、上記非水電解液を注液するための注液孔を有する電池ケースと、を備える二次電池を製造する方法が提供される。当該製造方法は、上記電極体および上記非水電解液が収容された状態の電池ケースの上記注液孔を仮封止することを包含する。上記仮封止を、上記栓の装着装置を用いて実施する。かかる構成によると、より高い気密性の仮封止ができる。このため、二次電池の製造設備の一部を省略することができ、より低コストで二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る栓装着装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】一実形態に係る栓装着装置を用いて対象物の貫通孔に栓を装着した状態を示す断面図である。
【
図3】一実形態に係る栓装着装置が備える挿入ピンおよびガイド部の構造を示す断面図である。
【
図4】一実形態に係る栓装着装置の一動作を説明する断面図である。
【
図5】一実形態に係る栓装着装置の一動作を説明する断面図である。
【
図6】一実形態に係る栓装着装置の一動作を説明する断面図である。
【
図7】一実形態に係る栓装着装置の一動作を説明する断面図である。
【
図8】一実形態に係る栓装着装置の一動作を説明する断面図である。
【
図9】一実施形態に係る製造方法によって製造される二次電池を模式的に示す斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る二次電池の製造方法の工程図である。
【
図11】一実施形態に係る二次電池の製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図12】試験例の例2に係る仮封止栓の構造を示す断面図である。
【
図13】試験例の例3に係る仮封止栓の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であってここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。
【0013】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」という意味とともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」という意味も包含する。
【0014】
ここで開示される栓装着装置は、貫通孔を有する対象物の該貫通孔に、筒状の栓であって、一方の端面に開口部を有する非貫通の凹部が内部に形成された栓、を装着する装置である。
図1に示すように、栓装着装置1000は、機能ブロックとして制御部100、栓供給部200、ピン挿入部500、栓装着部600、および、離脱部700を備える。また、栓装着装置1000は、挿入ピン300とガイド部400とを備える(
図3参照)。制御部100は、栓装着装置1000の一連の動作(例えば、栓への挿入ピンの挿入、対象物への栓の装着、挿入ピンの栓からの離脱、およびガイド部の離脱等)を制御する。制御部100は、処理プログラムを実行するCPUと、該処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートおよび通信ポートとを備える。制御部100の基本的な構成は、従来のこの種の制御部と同様でよく、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0015】
栓供給部200は、対象物に装着される栓を供給する。栓供給部200は、栓をストックする貯蔵部(図示なし)と連結している。
図2に示すように、栓20は筒状の栓であり、対象物Sの貫通孔Shに嵌め込まれる栓本体27と、栓20の貫通孔Shへの嵌め込みを規制する規制部23とを備えている。栓本体27(詳しくは後述のシール部25)と規制部23(詳しくは後述の、筒部22)とは相互に連なって形成されており、これによって規制部23と栓本体27とが一体化して栓20を構成している。
【0016】
図2に示すように、栓本体27は、筒状のシール部25と、断面がテーパ状のテーパ部26と、を有する。シール部25とテーパ部26とは、栓20の軸方向に連なっている。シール部25の外径Raは、上記貫通孔Shへの押し込み(圧入)ができる程度の大きさに設定される。特に限定するものではないが、シール部25の外径Raと貫通孔Shの径Rsとの比(Ra/Rs)は0.6以上1.2以下とすることができる。
【0017】
規制部23は、円盤状のフランジ部21と、筒状の筒部22と、を有する。フランジ部21と筒部22とは、栓20の軸方向に連なっている。規制部23が2つの部分を有することで、対象物Sから栓20をより容易に脱着することができる。特に限定するものではないが、本実施形態では、フランジ部21の径は、筒部22の径よりも大きい。こうすることで、後述のとおり、貫通孔Shに栓20を装着するときに、ガイド部400がフランジ部21を押すところ、この押す力を筒部22が弾性変形して吸収することができる。このため、対象物Sの貫通孔Shの周囲に変形が生じるのを抑制することができる。
【0018】
規制部23は、栓本体27から外側に向かって広がっている。具体的には、
図2に示すように、筒部22の径はシール部25の径Raよりも大きい。筒部22の面22aは、対象物Sの表面Saに当接している。また、筒部22の径は対象物Sの貫通孔Shの径Rsよりも大きいため、規制部23によって、栓20全体が貫通孔Shを貫通するのを防止することができる。なお、筒部22の径は、栓20全体が押し込まれた場合であっても貫通孔Shを貫通するのを防止できる程度の大きさであれば、特に限定されない。
【0019】
栓20では、一の端面24aに開口部24hを有する非貫通の穴24が、内部に形成されている。具体的には、
図2に示すように、栓本体27と規制部23とが連なる方向(即ち、栓20の軸方向)において、穴24の開口部24hは規制部23側の外表面に形成されている。より詳しくは、栓20の内部には、上記軸方向の規制部23側においては栓20の外表面(端面24a)に達して開口部24hを形成しつつ、軸方向の栓本体27側においては栓20の外表面に達していない穴24(空洞)が形成されている。穴24は、開口部24hからフランジ部21および筒部22を貫通して栓本体27の内部に至っている。栓本体27の内部に、穴24の底面241が形成されている。本実施形態において、穴24の内壁面245と底面241との間には段差部243が設けられている。底面241の直径Rcは、穴24の径Rbよりも小さくなっている。特に限定するものではないが、直径Rcと径Rbとの比(Rc/Rb)は、例えば0.5以上であり、1未満(例えば0.95以下、0.90以下)に設定するとよい。穴24に挿入された挿入ピン300の先端を底面241に安定して接触させることができる。これによって、穴24の内部で挿入ピン300がずれるのを抑制し、より確実に栓を対象物の貫通孔に装着することができる。
【0020】
栓20は、弾性体であって非水電解液に対する耐薬品性を有する材料で構成されていることが好ましい。栓20の材料としては、ブチルゴム、スチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等のゴム(またはエラストマー)等が挙げられる。耐薬品性の観点から、EPDMを好ましく使用することができる。栓本体27と規制部23とが別の材料で構成されてもよいが、少なくとも栓本体27は、ゴム(例えばEPDM)で形成されていることが好ましい。
【0021】
挿入ピン300は、栓20の開口部24hから穴24の内部に挿入されるピンである。
図3に示すように、挿入ピン300は、同軸上(
図3では軸心SC上)に、柱状(
図3では円柱状)の大径部350と、該大径部350よりも径が小さい柱状(
図3では円柱状)の小径部370とを有している。小径部370は、大径部350の軸方向における一方の端部351から突出している。小径部370を設けることによって、対象物Sの貫通孔Shに、より確実に栓20を装着し(
図2参照)、栓装着後における対象物の気密性を高めることができる。
【0022】
大径部350は、穴24の内壁面245(
図2参照)に沿って挿入ピン300の軸方向にスライド可能であるように構成されている。具体的には、大径部350の径R1と穴24の径Rbとの比(R1/Rb)を1未満とするとよい。上記比(R1/Rb)は、0.98以下であってよく、0.96以下であってよい。また、径R1は、大径部350が穴24に挿入された状態で栓20を保持しながら移動できる程度の大きさであることが好ましい。上記比(R1/Rb)は、0.70以上とするとよく、0.75以上であってよく、0.80以上であってよい。
【0023】
挿入ピン300を穴24に挿入したときに、小径部370と穴24の内壁面245との間に空隙が存在することが好ましい。これによって、栓20を対象物Sの貫通孔Shに装着したとき、栓20が弾性変形しやすくなる。このため、貫通孔Shの内壁面に加わる負荷を軽減し、貫通孔Shの周囲が変形するのを抑制することができるとともに、栓20の傷つき等のダメージを抑制することで再利用をしやすくすることができる。具体的には、例えば、大径部350の径R1と小径部370の径R2との比(R2/R1)は、1未満に設定するとよい。上記比は、例えば0.9以下とすることができ、0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。
【0024】
また、栓20を確実に貫通孔Shに装着させるため、上記比(R2/R1)は、0.2以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。同様の観点から、小径部370の径R2は、穴24の底面241の直径Rcよりも小さいことが好ましく、例えば4/5Rc以下であってよい。一方で、径R2は、1/8Rc以上であってよく、1/5Rc以上であってよく、1/3Rc以上としてもよい。あるいは、穴24の深さを1としたときに、小径部370の高さ(軸方向の長さ)を0.2以上、0.3以上、または0.4以上とし、0.9以下、0.8以下、または0.7以下とするとよい。
【0025】
ガイド部400は、挿入ピン300の周壁面352をガイドし、かつ、挿入ピン300の軸方向においてスライド可能であるように構成されている。ガイド部400は、円筒状であり、栓装着装置1000の動作時に、ガイド部400の内部に、挿入ピン300の大径部350が配置される。ガイド部400の内径は、内部に配置された大径部350が円滑にスライドできる限りは特に限定されず、大径部350の径R1の大きさに応じて適宜変更され得る。
【0026】
ピン挿入部500は、挿入ピン300を栓20の穴24に挿入し、挿入ピン300と栓20との合体物を形成する部位である。栓装着部600は、栓20を対象物Sの貫通孔Shに装着する部位である。離脱部700は、対象物Sの貫通孔Shに装着された栓20の穴24から、挿入ピン300およびガイド部400を離脱させる部位である。以下、
図3~8に示す断面図を用いて、制御部100による栓装着装置1000の動作の一例をより詳細に説明する。まず、ピン挿入部500は、挿入ピン300をガイド部400の内部に配置して(
図3)、この挿入ピン300を、栓供給部200から供給された栓20の開口部24hから穴24の内部に挿入する。具体的には、
図4に示すように(
図3も参照)、まず、挿入ピン300の大径部350の少なくとも一部、および小径部370を穴24の内部に挿入する。次いで、ガイド部400を開口部24hの周囲に配置する。このとき、ガイド部400は端面24aに当接する。ここで、小径部370の端部371を穴24の底面241の少なくとも一部と接触させる。
【0027】
次いで、栓装着部600は、この状態の栓20を貫通孔Shに配置する。具体的には、
図5に示すように、栓装着部600は、栓20のテーパ部26を装着の先端として、端面261の位置を対象物Sの貫通孔Sh周囲の表面Saに合わせる。次いで、上記で用意したように、ガイド部400を開口部24hの周囲に配置した状態で、挿入ピン300をスライドさせ、穴24の内部に押し込んで栓20を貫通孔Shに嵌め込む。このとき、テーパ部26、シール部25の順で栓本体27が貫通孔Shに挿入され、シール部25が貫通孔Shの内壁面に嵌め込まれる。挿入ピン300は、
図6に示すように、筒部22の面22aが対象物Sの表面Saに当接するまで穴24の内部に押し込まれる。面22aが表面Saに当接したときに、栓20の貫通孔Shへの装着が完了する。
【0028】
上記装着後、離脱部700は、
図7に示すように、挿入ピン300を穴24と逆方向(上記押し込み方向と逆方向)に移動(スライド)させ、小径部370の端部371を底面241から離脱させる。このとき、ガイド部400を開口部24hの周囲に配置した状態にしておく。そして、離脱部700は上記移動によって挿入ピン300を穴24から取り除く。この後、離脱部700は、
図8に示すように、ガイド部400を穴24と逆方向に移動させて、開口部24hから離脱させる。そうすることで、上記移動によって栓20が貫通孔Shから外れることを防止できる。
【0029】
栓装着装置1000による栓装着がなされる対象物Sの種類は、特に限定されない。対象物Sは、貫通孔Shの封止(即ち、栓装着)によって内部に閉空間を有する容器であり得る。例えば、対象物Sは、二次電池の電池ケースであり得る。即ち、ここで開示される栓装着装置を使用することによって、二次電池の製造方法が提供される。
図9に示すように、当該方法によって製造される二次電池10は、電極体(図示なし)と、非水電解液(図示なし)と、電池ケース1と、を備える。二次電池10は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0030】
電池ケース1は、開口を有するケース本体11と、該開口を塞ぐ蓋体12と、を備えている。電池ケース1は、ケース本体11の開口の周縁に蓋体12が接合されることによって、一体化されて気密に封止(密閉)されている。蓋体12には、注液孔12hと、安全弁(図示なし)と、正極外部端子5と、負極外部端子6と、が設けられている。注液孔12hは、電池ケース1内に電解液を注液するための孔であり、封止栓により封止されている。安全弁は、ケース内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース内のガスを外部に排出するように構成されている。正極外部端子5および負極外部端子6は、電池ケース1に収容された電極体と電気的に接続されている。電池ケース1には、電解液と非水電解液とが収容されている。電池ケース1を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。あるいは、電池ケース1はポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂材料により構成されてもよい。
【0031】
電極体は、二次電池1の発電要素であり、正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備えている。なお、上述した以外の二次電池10の構成材料(例えば、電極体や非水電解液の構成材料)は、この種の二次電池において使用されるものを特に制限なく使用することができ、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0032】
ここで開示される製造方法は、
図10に示すように、下記S1~S8の工程:組立工程S1;乾燥工程S2;注液工程S3;仮封止工程S4;含浸工程S5;開封工程S6;初期充電工程S7;および、封止工程S8;を包含する。
【0033】
組立工程S1では、電極体を電池ケースに収容する。具体的には、例えば、
図9、11に示すように、従来公知の方法で作製した電極体8に正極内部端子51および負極内部端子61を取り付ける。次いで、蓋体12に取り付けられた正極外部端子5および負極外部端子6に、同極の内部端子を従来公知の方法(例えば、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接等)で接合する。そして、電極体8をケース本体11に収容する。この状態で、ケース本体11の開口部に蓋体12を重ね合わせて、これらを溶接する。このようにして、ケース本体11を封口し、電池組立体10aを作製する。
【0034】
乾燥工程S2では、電池組立体の内部を乾燥させる。例えば、
図11に示すように、二次電池組立体10aを気密チャンバ90内に収容して、気密チャンバ90内が予め定められた温度になるまで昇温し、当該温度に達してから所定の時間(例えば、10分~4時間)維持する。上記温度は、電池組立体10aの内部から水分を十分に除去できる温度であれば特に限定されないが、例えば、100℃以上150℃以下となるように設定するとよい。このため、気密チャンバ内90内に発熱体(プレートヒータ等)を設置してよい。
【0035】
注液工程S3では、注液孔12hを介して電池ケース1の内部に非水電解液を注液する(
図9,11参照)。非水電解液の注液方法としては、従来公知の注液方法を特に制限なく使用することができる。一例として、非水電解液を電池ケース1に減圧注液する。この場合、まず、電池ケース1の内圧を大気圧よりも低くなるように減圧する。例えば、気密チャンバ90内を減圧雰囲気とすることで、電池ケース1内を減圧することができる。減圧後の電池ケース1の内圧は、特に限定されないが、大気圧(0.1MPa)に対して-0.05MPa以下、-0.08MPa以下、-0.09MPa以下とするとよく、より低い圧力であるほどよい。上記のような減圧雰囲気で、電池ケース1に非水電解液を所定量注液する。具体的には、例えば、非水電解液の供給源(例えば、非水電解液を収容するタンク等)に接続された注液用の配管を注液孔12hに接続し、ケース本体12に非水電解液を注液する。この後、電池ケース1の内圧を大気圧にまで昇圧する。この昇圧では、例えば、気密チャンバ90内に乾燥空気や不活性ガス(窒素ガス等)を導入するとよい。
【0036】
仮封止工程S4では、電極体8および非水電解液が収容された状態の電池ケース1の注液孔12hを仮封止する。この仮封止を、ここで開示される栓装着装置を用いて実施する。即ち、対象物としての二次電池10の注液孔12h(貫通孔)に、
図2に示す構造の栓20を仮封止部材(仮封止栓)として装着する。
【0037】
含浸工程S5では、注液孔12hの仮封止をした状態で、電極体8に、非水電解液の少なくとも一部を含浸させる。上記のとおり、電池ケース1の内圧は、大気圧に昇圧されている。そのため、電極体8内の圧力が電池ケース1の内圧よりも低くなっている。この圧力差によって、電極体8内に非水電解液が含浸する。本工程では、例えば、電池ケース1内に注液された非水電解液が所定の高さに低下するまで、二次電池組立体を大気圧下および所定の温度条件下で、所定時間放置する。上記温度条件は、例えば20℃~30℃であり、室温(25℃)程度とすることができる。上記放置時間は、製造する二次電池のサイズにもよるが、5時間~45時間(概ね20時間~30時間)とすることができる。
【0038】
上記のとおり、ここで開示される製造方法では、非水電解液の注液後に、注液孔12hが上記栓装着装置を用いて仮封止されている。この仮封止後の電池ケース1では、高い気密性が実現されている。そのため、上記含浸工程S5を、気密チャンバ90の外で実施することができる。あるいは、気密チャンバ90に乾燥空気や不活性ガス(窒素ガス等)を導入しない状態で、上記含浸工程S5を実施することができる。このように、上記栓装着装置を用いることによって、二次電池の製造設備の一部を省略することができる。
【0039】
開封工程S6では、仮封止部材を取り除いて注液孔12hを開封する。具体的には、例えば、二次電池組立体10aに装着された仮封止部材を注液孔12hと逆方向に移動させることによって、注液孔12hから脱着し、これを開封することができる。仮封止部材を脱着する機能を上記装置に付与してもよく、別の装置(即ち、栓脱着装置)を使用してもよい。なお、開封後の仮封止部材は、回収し、再利用することができる。
【0040】
初期充電工程S7では、注液孔12hを開封した状態で二次電池組立体10aの充電を行う。本工程を行うことによって、ガスを発生させるとともに、このガスを電池ケース1外に放出することができる。また、負極活物質層の表面に良質な被膜を形成させることができる。本工程における充電条件は特に限定されず、適宜設定され得る。
【0041】
封止工程S8では、封止部材を用いて注液孔12hを封止する。この封止部材としては、この種の二次電池で使用される封止部材を特に限定なく使用することができる。一例として、金属製の封止栓を用い、該封止栓を注液孔12hに嵌め込む。次いで、この封止栓で注液孔12hを塞いだ状態で、レーザ溶接等を施し、注液孔12hを封止する。なお、この後、所定の条件の下、二次電池組立体10aの充電およびエージング処理を行うことで、使用可能状態の二次電池10を得ることができる。
【0042】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、以下の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
【0043】
厚み1.4mmのアルミニウム製の電池ケースであって、蓋体に直径5mmの円形の注液孔を有する電池ケースを用意した。また、
図2に示す構造の仮封止部材(仮封止栓)を用意した。この仮封止栓は、Ra=3.6mm、Rb=2.4mm、Rc=2.0mm、Da=5.3mm、Db=0.2mm、La=7.6mmであった。なお、Laは、端面24aから端面261までの長さ(仮封止栓の高さ)であり、Daは開口部24hから段差部243までの長さであり、Dbは段差部243から底面241までの長さである。
【0044】
また、下記例1~例3に係る挿入ピンを用意した。
-例1-
例1に係る挿入ピンとして、
図3に示す構造の挿入ピン300を用意した。挿入ピン300の構成は上記のとおりであり、R1=2.8mm、R2=1.4mm、L1=3.7mmであった。なお、L1は小径部370の軸方向の長さである。
-例2-
例2に係る挿入ピンとして、
図12に示す構造の挿入ピン230を用意した。挿入ピン230は、大径部235からなり、小径部を有さないものであった。大径部235の径R5は、2.8mmであった。なお、
図12における符号232は、挿入ピン230の周壁面を示している。
【0045】
-例3-
例3に係る挿入ピンとして、
図13に示す構造の挿入ピン330を用意した。挿入ピン330は、大径部335と、小径部337とを有するものであった。大径部335の径R6は、2.8mmであった。小径部337の径R7は1.6mmであり、長さL7は0.7mmであった。なお、L7は小径部337の軸方向の長さである。また、
図13における符号332は、挿入ピン330の周壁面を示している。
【0046】
各例に係る挿入ピンをそれぞれガイド部400の内部に配置し、上記用意した仮封止栓20の穴24に挿入した(
図2、3、12、13参照)。各例に係る挿入ピンを挿入した仮封止栓を、上記実施形態に記載の手順にて上記電池ケースの注液孔に装着した。このとき、該注液孔の周囲にかかった負荷(荷重)を、測定装置のマニュアルに従って測定した。結果を
図14に示す。なお、この測定装置として、島津製作所製のオートグラフAG50kNXを使用した。
【0047】
図14に示すグラフの横軸は挿入ピンの移動量(mm)を示し、縦軸は注液孔の内壁面にかかった荷重(N)を示している。グラフ中の符号A~Dは以下のとおり、仮封止栓と注液孔との位置関係を示しており:
Aは、仮封止栓20のテーパ部26の端面261の位置と対象物S(上記蓋体)の貫通孔Sh(上記注液孔)の周囲の表面Saの位置とが一致した状態であり(
図5参照);
Bは、仮封止栓20のシール部25が貫通孔Sh(上記注液孔)に嵌め込まれ始めた状態であり;
Cは、仮封止栓20の筒部22の面22aが対象物S(上記蓋体)の表面Saに当接した状態であり(
図6参照);
Dは、上記Cの状態からさらに挿入ピンを押し込み、これによって筒部22が撓んだ状態であった。
【0048】
図14に示すように、各例に係る挿入ピンを用いて仮封止栓を注液孔に装着した場合の、上記Aの位置関係から上記Cの位置関係になるまでに注液孔の内壁面にかかった負荷の増大度合いに関して、例1での増大度合いが最小であった。これに対して、例2では、小径部がないため、挿入ピンの押し込みによって仮封止栓にヨレが生じ、負荷の増大度合いが大きくなった。また、例3では、挿入ピンが挿入された穴の内部に十分な空間がなく、仮封止栓の嵌め込み時に、挿入ピンと仮封止栓と注液孔の内壁面との間に摩擦が生じ、上記増大度合いがさらに大きくなったと考えられる。
【0049】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記実施形態では、栓20の穴24の内部に段差部243を設けている。しかし、ここで開示される技術の効果を実現し得る限り、これに限定されない。例えば、段差部243を傾斜部としてもよいし、段差部243を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 電池ケース
5 正極外部端子
51 正極内部端子
6 負極外部端子
61 負極内部端子
8 電極体
10 二次電池
10a 二次電池組立体
12h 注液孔
20 栓
23 規制部
24 穴
24h 開口部
27 栓本体
100 制御部
200 栓供給部
300 挿入ピン
400 ガイド部
350 大径部
370 小径部
500 ピン挿入部
600 栓装着部
700 離脱部
1000 栓装着装置