(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178066
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】エアクリーナ及びエアクリーナ用吸音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02M 35/14 20060101AFI20221125BHJP
F02M 35/024 20060101ALI20221125BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20221125BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20221125BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20221125BHJP
B29C 44/58 20060101ALI20221125BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20221125BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
F02M35/14 G
F02M35/024 511A
C08J9/36 CFF
B29C44/00 A
B29C44/36
B29C44/58
B29C39/24
B29K105:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084584
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 義則
【テーマコード(参考)】
4F074
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA78
4F074CE04
4F074CE16
4F074CE66
4F074CE77
4F074CE83
4F074DA47
4F074DA57
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AG20
4F204AJ11
4F204EA01
4F204EB01
4F204EK13
4F204EK17
4F204EK24
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AG20
4F214AJ11
4F214UA01
4F214UB01
4F214UC17
4F214UD13
4F214UD17
4F214UD27
4F214UF27
4F214UK31
(57)【要約】
【課題】浸水による吸音性能の低下を抑制できるエアクリーナ及びエアクリーナ用吸音材の製造方法を提供する。
【解決手段】エアクリーナ10は、インレット21及びアウトレット31を有するハウジング11と、ハウジング11の内部に設けられ、ハウジング11の内部を、インレット21を含むダスティ空間13とアウトレット31を含むクリーン空間14とに区画するフィルタエレメント12と、軟質な樹脂発泡体により形成されてダスティ空間13の内部に設けられた吸音材40とを備える。吸音材40は、通気性のコア層41と、コア層41の周囲に設けられてコア層41よりも密度の高いスキン層42とを有する。吸音材40には、撥水剤が添加されている。スキン層42は、吸音材40においてダスティ空間13を形成する表面40aを構成する通気性スキン層42Aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレット及びアウトレットを有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ハウジングの内部を、前記インレットを含むダスティ空間と前記アウトレットを含むクリーン空間とに区画するフィルタエレメントと、
軟質な樹脂発泡体により形成されて前記ダスティ空間の内部に設けられた吸音材と、を備えるエアクリーナにおいて、
前記吸音材は、通気性のコア層と、前記コア層の周囲に設けられて前記コア層よりも密度の高いスキン層と、を有しており、
前記吸音材には、撥水剤が添加されており、
前記スキン層は、前記吸音材において前記ダスティ空間を形成する表面を構成する通気性スキン層を含む、
エアクリーナ。
【請求項2】
前記スキン層は、前記吸音材において前記表面とは反対側の面であり、前記ハウジングと対向する裏面を構成する非通気性スキン層を含む、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
請求項1に記載の吸音材を製造する方法であって、
発泡性の樹脂材料に対して撥水剤が添加された原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、
前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する散布工程と、を備える、
エアクリーナ用吸音材の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の吸音材を製造する方法であって、
発泡性の樹脂材料に対して撥水剤を添加した原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、
前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部及び前記裏面を形成する裏面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する散布工程と、
前記成形工程に先立ち、前記裏面形成部を拭くことにより前記離型剤に含まれる前記シリカを除去する除去工程と、を備える、
エアクリーナ用吸音材の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の吸音材を製造する方法であって、
発泡性の樹脂材料に対して撥水剤を添加した原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、
前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する第1散布工程と、
前記成形工程に先立ち、前記裏面を形成する裏面形成部に対して、液状のシリコンを含むとともに粒状のシリカを含まない離型剤を散布する第2散布工程と、を備える、
エアクリーナ用吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナ及びエアクリーナ用吸音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載内燃機関の吸気通路には、エアクリーナが設けられている(例えば特許文献1参照)。エアクリーナは、インレットを有するケースと、アウトレットを有するキャップと、ケースとキャップとの間に設けられて空気を濾過するフィルタエレメントとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のエアクリーナでは、ケースの底壁が多孔質材料によって形成されている。エアクリーナのケースの底壁の外面には、撥水加工が施されている。これにより、多孔質材料内への水の浸入が防止されている。
【0004】
また、エアクリーナにおいては、ケースの内部に、吸音材が設けられているものがある。吸音材は、軟質ウレタンフォームなどの通気性材料によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車載内燃機関においては、吸気口を通じて吸気通路内に雨水などが流入することがある。
この場合、ケースの内部に設けられている通気性の吸音材の内部に水が浸入する。これにより、吸音材の孔が水によって埋められることで、吸音材の吸音性能の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するエアクリーナは、インレット及びアウトレットを有するハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ハウジングの内部を、前記インレットを含むダスティ空間と前記アウトレットを含むクリーン空間とに区画するフィルタエレメントと、軟質な樹脂発泡体により形成されて前記ダスティ空間の内部に設けられた吸音材と、を備える。前記吸音材は、通気性のコア層と、前記コア層の周囲に設けられて前記コア層よりも密度の高いスキン層と、を有しており、前記吸音材には、撥水剤が添加されており、前記スキン層は、前記吸音材において前記ダスティ空間を形成する表面を構成する通気性スキン層を含む。
【0008】
同構成によれば、吸音材においてダスティ空間を形成する表面を構成する通気性スキン層及び通気性スキン層によって囲まれたコア層が通気性を有している。このため、通気性スキン層から吸音材に入射される吸気音の振動波、すなわち音波は、通気性スキン層を振動させるとともに、通気性スキン層及びコア層の内部に進入するようになる。音波が吸音材の内部を進む際に、吸音材自体を振動させたり吸音材内の空気を振動させたりすることによって音波のエネルギーが摩擦熱として消費されることで吸音される。
【0009】
ここで、吸音材の内部に水が浸入すると、吸音材の孔が水によって埋められる。その結果、吸音材に入射する音波が吸音材の内部まで伝播できなくなるため、吸音性能の低下を招く。
【0010】
この点、上記構成によれば、スキン層の密度がコア層よりも高いため、吸音材全体がコア層によって構成される場合に比べて、吸音材の内部への水の浸入が抑制される。また、吸音材に撥水剤が添加されているため、吸音材の孔が水によって埋められにくくなる。したがって、浸水による吸音性能の低下を抑制できる。
【0011】
上記エアクリーナにおいて、前記スキン層は、前記吸音材において前記表面とは反対側の面であり、前記ハウジングと対向する裏面を構成する非通気性スキン層を含むことが好ましい。
【0012】
ハウジングの内部に浸入した水が、ハウジングと吸音材との間を通じて吸音材の内部に浸入するおそれがある。
この点、上記構成によれば、吸音材の裏面が非通気性スキン層によって構成されているため、吸音材の裏面が通気性スキン層によって構成されている場合に比べて、吸音材の裏面から内部に水が侵入することを抑制できる。
【0013】
また、上記のように吸音材の裏面を非通気性スキン層によって構成しても、吸音材の吸音性能が損なわれることはない。
また、上記課題を解決するエアクリーナ用吸音材の製造方法は、上記吸音材を製造する方法であって、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤が添加された原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する散布工程と、を備える。
【0014】
同方法によれば、成形工程において、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤が添加された原液を成形型内において発泡させることで、コア層と、コア層の周囲に設けられてコア層よりも密度の高いスキン層とを有する吸音材が形成される。
【0015】
また、成形工程に先立ち、散布工程が行われることで、成形型の成形面のうち表面形成部が離型剤を構成する液状のシリコンによって覆われるとともに、同表面形成部には粒状のシリカが点在することになる。ここで、シリカは、気泡(セル)を消す消泡作用を有する。また、シリコンは、気泡の膜を破る破泡作用及び離型作用を有する。その後、成形工程が行われることで、スキン層の表面においてシリカの存在している箇所は、消泡の起点となる。また、シリカの周囲を取り囲むように存在しているシリコンの破泡作用により、消泡が促進される。これにより、スキン層の表面に、吸音材の内部の孔に連通する多数の孔が開口されることで、通気性スキン層が形成される。したがって、表面を構成する通気性スキン層及び通気性スキン層によって囲まれたコア層が通気性を有する吸音材を容易に製造することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するエアクリーナ用吸音材の製造方法は、上記吸音材を製造する方法であって、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤を添加した原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部及び前記裏面を形成する裏面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する散布工程と、前記成形工程に先立ち、前記裏面形成部を拭くことにより前記離型剤に含まれる前記シリカを除去する除去工程と、を備える。
【0017】
同方法によれば、成形工程において、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤が添加された原液を成形型内において発泡させることで、コア層と、コア層の周囲に設けられてコア層よりも密度の高いスキン層とを有する吸音材が形成される。
【0018】
また、成形工程に先立ち、散布工程が行われることで、成形型の成形面のうち表面形成部及び裏面形成部が離型剤を構成する液状のシリコンによって覆われるとともに、同表面形成部及び裏面形成部には粒状のシリカが点在することになる。また、除去工程が行われることで、裏面形成部に点在するシリカが除去される。その後、成形工程が行われることで、スキン層の表面においてシリカの存在している箇所は、消泡の起点となる。また、シリカの周囲を取り囲むように存在しているシリコンの破泡作用により、消泡が促進される。これにより、スキン層の表面に、スキン層の内部の孔に連通する多数の孔が開口することで、通気性スキン層が形成される。
【0019】
また、裏面形成部については、スキン層の表面に開口する孔の起点となるシリカが除去されることで、裏面形成部によって成形されるスキン層の表面、すなわち吸音材の裏面に、スキン層の内部の孔に連通する多数の孔が形成されることが阻止される。これにより、非通気性スキン層が形成される。したがって、表面を構成する通気性スキン層及び通気性スキン層によって囲まれたコア層が通気性を有するとともに、裏面が非通気性スキン層によって構成されている吸音材を容易に製造することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するエアクリーナ用吸音材の製造方法は、上記吸音材を製造する方法であって、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤を添加した原液を成形型内において発泡させることで前記吸音材を成形する成形工程と、前記成形工程に先立ち、前記成形型の成形面のうち前記表面を形成する表面形成部に対して、粒状のシリカと液状のシリコンとを含む離型剤を散布する第1散布工程と、前記成形工程に先立ち、前記裏面を形成する裏面形成部に対して、液状のシリコンを含むとともに粒状のシリカを含まない離型剤を散布する第2散布工程と、を備える。
【0021】
同方法によれば、成形工程において、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤が添加された原液を成形型内において発泡させることで、コア層と、コア層の周囲に設けられてコア層よりも密度の高いスキン層とを有する吸音材が形成される。
【0022】
また、成形工程に先立ち、第1散布工程が行われることで、成形型の成形面のうち表面形成部が離型剤を構成する液状のシリコンによって覆われるとともに、同表面形成部には粒状のシリカが点在することになる。また、第2散布工程が行われることで、裏面形成部が離型剤を構成する液状のシリコンによって覆われるとともに、同裏面形成部にはシリカが存在しない。その後、成形工程が行われることで、スキン層の表面においてシリカの存在している箇所は、消泡の起点となる。また、シリカの周囲を取り囲むように存在しているシリコンの破泡作用により、消泡が促進される。これにより、スキン層の表面に、スキン層の内部の孔に連通する多数の孔が開口することで、通気性スキン層が形成される。
【0023】
また、裏面形成部については、スキン層の表面に開口する孔の起点となるシリカが存在しないことで、裏面形成部によって成形されるスキン層の表面、すなわち吸音材の裏面に、スキン層の内部の孔に連通する多数の孔が形成されることが阻止される。これにより、非通気性スキン層が形成される。したがって、表面を構成する通気性スキン層及び通気性スキン層によって囲まれたコア層が通気性を有するとともに、裏面が非通気性スキン層によって構成されている吸音材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】吸音材による吸音作用を説明するための断面図。
【
図5】(a)は、吸音材のコア層及びスキン層を示す写真、(b)は、吸音材の非通気性スキン層を示す写真。
【
図7】(a)~(d)は、吸音材の製造手順を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1~
図7を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、エアクリーナ10は、ハウジング11と、フィルタエレメント12と、吸音材40とを備えている。エアクリーナ10は、車載内燃機関の吸気系の一部を構成するものである。
【0026】
ハウジング11は、筒状のインレット21を有するケース20と、筒状のアウトレット31を有するキャップ30とを有している。
<ケース20>
図1及び
図2に示すように、ケース20は、開口22を取り囲む四角筒状の周壁23と底壁24とを備える。開口22の周縁には、外周側に向けて突出するフランジ25が全周に亘って設けられている。インレット21は、周壁23の外周面に突設されている。ケース20は、硬質の合成樹脂材料によって構成されている。
【0027】
<キャップ30>
図1に示すように、キャップ30は、開口32を取り囲む四角筒状の周壁33と頂壁34とを備える。開口32の周縁には、外周側に向けて突出するフランジ35が全周に亘って設けられている。アウトレット31は、周壁33の外周面に突設されている。キャップ30は、硬質の合成樹脂材料によって構成されている。
【0028】
<フィルタエレメント12>
ケース20の開口22とキャップ30の開口32との間には、フィルタエレメント12が設けられている。フィルタエレメント12は、濾紙や不織布などの濾材シートを襞折りすることにより形成された濾過部12aと、濾過部12aの外周縁に設けられた環状のシール部12bとを有している。エアクリーナ10では、ケース20のフランジ25とキャップ30のフランジ35とによってシール部12bが全周にわたって挟持されている。シール部12bにより、ケース20とキャップ30との間がシールされている。
【0029】
フィルタエレメント12によって、ハウジング11の内部が、インレット21を含むダスティ空間13とアウトレット31を含むクリーン空間14とに区画されている。
<吸音材40>
図1及び
図2に示すように、ケース20の内部には、吸音材40が設けられている。吸音材40は、底壁24に沿って延びる第1部分40Aと、インレット21に対向するとともに周壁23に沿って延びる第2部分40Bとを有する断面L字形状である。吸音材40は、ダスティ空間13を形成する表面40aを有している。吸音材40は、表面40aとは反対側の面であり、ケース20の内面と対向する裏面40bを有している。ケース20の内面に対して裏面40bが接合されることにより、吸音材40はケース20の内部に固定されている。
【0030】
図1~
図3に示すように、吸音材40は、軟質な樹脂発泡体により形成されている。本実施形態の吸音材40は、軟質ウレタンフォームにより形成されている。
図6に示すように、吸音材40には、撥水剤50が添加されている。撥水剤50は、例えばフッ素化合物やパラフィンである。
【0031】
図1及び
図3に示すように、吸音材40は、通気性のコア層41と、コア層41の周囲に設けられてコア層41よりも密度の高いスキン層42とを有している。スキン層42は、数mm(本実施形態では、約0.5mm)の厚みを有している。吸音材40内部の密度分布についての理解を容易にするために、吸音材40の内部に形成された軟質ウレタンフォームの気泡(セル)の一部のみを概念的に示している。
【0032】
スキン層42は、表面40aを構成する通気性スキン層42A(
図3及び
図5(a)参照)と、裏面40bを構成する非通気性スキン層42B(
図3及び
図5(b)参照)とを有している。
【0033】
なお、
図3においては、吸音材40の孔を模式的に円形にて示している。
しかし、実際には、コア層41を構成する各孔41pは互いに連通していることで、コア層41は通気性を有している。
【0034】
通気性スキン層42Aを構成する各孔42pは互いに連通している。通気性スキン層42Aの表面においては、孔42pが開口している。このことにより、通気性スキン層42Aは通気性を有している。
【0035】
非通気性スキン層42Bを構成する各孔42pは互いに連通している。ただし、非通気性スキン層42Bの表面においては、孔42pが開口していない。このことにより、非通気性スキン層42Bは通気性を有していない。
【0036】
次に、
図7を参照して、吸音材40の製造方法について説明する。
まず、吸音材40を成形する成形型60について説明する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、成形型60は、第1凹部61aを有する第1型61と、第2凹部62aを有する第2型62とを備えている。第1凹部61aの内面及び第2凹部62aの内面が、吸音材40を成形する成形面70を構成する。成形面70は、吸音材40の表面40aを形成する表面形成部71と、吸音材40の裏面40bを形成する裏面形成部72とを有している。また、第1凹部61aと第2凹部62aとによって形成される空間が、吸音材40を成形するキャビティ63を構成する。
【0037】
次に、成形型60を用いた吸音材40の製造手順について説明する。
まず、成形面70全体に対して離型剤80を散布する(散布工程)。離型剤80は、粒状(固体)のシリカ(二酸化珪素)81と液状のシリコン82とが混合されたものである。本実施形態では、スプレーによって離型剤80を散布する。
【0038】
ここで、シリカ81は、気泡(セル)を消す消泡作用を有する。また、シリコン82は、気泡の膜を破る破泡作用及び離型作用を有する。
次に、
図7(a)に示すように、裏面形成部72を拭くことにより離型剤80に含まれるシリカ81を除去する(除去工程)。
【0039】
次に、
図7(b)に示すように、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤50が添加された原液40Xを第2凹部62a内に注入する。また、第1型61と第2型62とを型閉じするとともに型締めする。
【0040】
次に、
図7(c)に示すように、キャビティ63内において原液40Xを発泡させることで吸音材40を成形する(成形工程)。なお、本実施形態では、成形型60の加熱温度、すなわち成形温度を40度以下に設定することで、離型剤80に含まれるシリカ81が加熱されてシリコンに変化することを抑制している。これにより、裏面形成部72の離型剤80に一部残留しているシリカ81が液化することに起因して吸音材40の裏面40bに孔が形成されることを抑制している。
【0041】
次に、
図7(d)に示すように、成形型60を型開きするとともに、成形型60から吸音材40を取り出す。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0042】
吸音材40においてダスティ空間13を形成する表面40aを構成する通気性スキン層42A及び通気性スキン層42Aによって囲まれたコア層41が通気性を有している。このため、
図4に矢印W1にて示すように、通気性スキン層42Aから吸音材40に入射される吸気音の振動波、すなわち音波は、通気性スキン層42Aを振動させる。また、
図4に矢印W2にて示すように、上記音波は、通気性スキン層42A及びコア層41の内部に進入するようになる。上記音波が吸音材40の内部を進む際に、吸音材40自体を振動させたり吸音材40内の空気を振動させたりすることによって音波のエネルギーが摩擦熱として消費されることで吸音される。
【0043】
ここで、吸音材40の内部に水が浸入すると、吸音材40の孔41p,42pが水によって埋められる。その結果、吸音材40に入射する音波が吸音材40の内部まで伝播できなくなるため、吸音性能の低下を招いてしまう。
【0044】
この点、本実施形態によれば、スキン層42の密度がコア層41よりも高いため、吸音材40全体がコア層41によって構成される場合に比べて、吸音材40の内部への水の浸入が抑制される。また、吸音材40に撥水剤50が添加されているため、吸音材40の孔41p,42pが水によって埋められにくくなる(以上、作用1)。
【0045】
ところで、ハウジング11の内部に浸入した水が、ハウジング11と吸音材40との間を通じて吸音材40の内部に浸入するおそれがある。
この点、本実施形態によれば、吸音材40の裏面40bが非通気性スキン層42Bによって構成されている。このため、吸音材40の裏面40bが通気性スキン層42Aによって構成されている場合に比べて、吸音材40の裏面40bから内部への水の侵入が抑制される(以上、作用2)。
【0046】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)吸音材40は、通気性のコア層41と、コア層41の周囲に設けられてコア層41よりも密度の高いスキン層42とを有している。吸音材40には、撥水剤50が添加されている。スキン層42は、吸音材40においてダスティ空間13を形成する表面40aを構成する通気性スキン層42Aを有する。
【0047】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することにより、浸水による吸音性能の低下を抑制できる。
(2)スキン層42は、吸音材40において表面40aとは反対側の面であり、ハウジング11と対向する裏面40bを構成する非通気性スキン層42Bを有する。
【0048】
こうした構成によれば、上記作用2を奏することにより、浸水による吸音性能の低下を一層抑制できる。
また、上記のように吸音材40の裏面40bを非通気性スキン層42Bによって構成しても、吸音材40の吸音性能が損なわれることはない。
【0049】
(3)吸音材40の製造方法は、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤50が添加された原液40Xを成形型60内において発泡させることで吸音材40を成形する成形工程を備える。また、吸音材40の製造方法は、成形工程に先立ち、成形型60の成形面70のうち表面40aを形成する表面形成部71に対して、粒状のシリカ81と液状のシリコン82とを含む離型剤80を散布する散布工程を備える。
【0050】
こうした方法によれば、成形工程において、発泡性の樹脂材料に対して撥水剤50が添加された原液40Xを成形型60内において発泡させることで吸音材40が形成される。
また、成形工程に先立ち、散布工程が行われることで、成形型60の成形面70のうち表面形成部71が離型剤80を構成する液状のシリコン82によって覆われるとともに、同表面形成部71には粒状のシリカ81が点在することになる。その後、成形工程が行われることで、スキン層42の表面においてシリカ81の存在している箇所は、消泡の起点となる。また、シリカ81の周囲を取り囲むように存在しているシリコン82の破泡作用により、消泡が促進される。これにより、スキン層42の表面40aに、吸音材40の内部の孔41pに連通する多数の孔42pが開口されることで、通気性スキン層42Aが形成される。したがって、吸音材40を容易に製造することができる。
【0051】
(4)吸音材40の製造方法は、成形工程に先立ち、成形型60の成形面70のうち表面40aを形成する表面形成部71及び裏面40bを形成する裏面形成部72に対して、粒状のシリカ81と液状のシリコン82とを含む離型剤80を散布する散布工程を備える。また、成形工程に先立ち、裏面形成部72を拭くことにより離型剤80に含まれるシリカ81を除去する除去工程を備える。
【0052】
こうした方法によれば、成形工程に先立ち、除去工程が行われることで、成形型60の成形面70のうち裏面形成部72に点在するシリカ81が除去される。その後、成形工程が行われると、スキン層42の表面に開口する孔の起点となるシリカ81が除去されている。このため、裏面形成部72によって成形されるスキン層42の表面、すなわち吸音材40の裏面40bに、スキン層42の内部の孔42pに連通する多数の孔が形成されることが阻止される。これにより、非通気性スキン層42Bが形成される。したがって、吸音材40を容易に製造することができる。
【0053】
<変形例>
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0054】
・上記実施形態では、散布工程において成形面70全体に対して離型剤80を散布するようにしたが、表面形成部71のみに対して、粒状のシリカ81と液状のシリコン82とを含む離型剤80を散布するようにしてもよい(以上、第1散布工程)。この場合、裏面形成部72に対しては、液状のシリコン82を含むとともに粒状のシリカ81を含まない離型剤を散布すればよい(以上、第2散布工程)。
【0055】
・スキン層42は、非通気性スキン層42Bを含まないものであってもよい。すなわち、スキン層42全体が通気性スキン層42Aにより構成されるものであってもよい。この場合、除去工程を省略すればよい。
【0056】
・スキン層42が非通気性スキン層42Bを含まない構成においては、吸音材40の裏面40bに、非通気フィルムを設けるようにしてもよい。この場合であっても、裏面40bから吸音材40の内部への水の侵入が抑制される。
【符号の説明】
【0057】
10…エアクリーナ
11…ハウジング
12…フィルタエレメント
12a…濾過部
12b…シール部
13…ダスティ空間
14…クリーン空間
20…ケース
21…インレット
22…開口
23…周壁
24…底壁
25…フランジ
30…キャップ
31…アウトレット
32…開口
33…周壁
34…頂壁
35…フランジ
40…吸音材
40X…原液
40A…第1部分
40B…第2部分
40a…表面
40b…裏面
41…コア層
41p,42p…孔
42…スキン層
42A…通気性スキン層
42B…非通気性スキン層
50…撥水剤
60…成形型
61…第1型
61a…第1凹部
62…第2型
62a…第2凹部
63…キャビティ
70…成形面
71…表面形成部
72…裏面形成部
80…離型剤
81…シリカ
82…シリコン