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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178075
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A01C11/02 320B
A01C11/02 322C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084602
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】宇山 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】芝田 哲男
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA20
2B062BA61
2B062CA04
2B062CA14
2B062CA25
2B062CB01
2B062CB06
(57)【要約】
【課題】前記植付作業機を圃場面に対して水平となるように制御可能な制御部を備えた移植機において、前記植付作業機を左右揺動作動させるアクチュエータの不必要な連続稼働を防止し、アクチュエータの寿命を延ばすことのできる移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、水平制御機構を介して前記植付作業機を左右揺動させる水平制御用アクチュエータと、フロートの姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記植付作業機の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサと、前記走行機体の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜検出センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記植付作業機を圃場面に対して水平な水平姿勢を維持する水平制御が実行可能に構成され、前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以下になるとともに、前記フロートが圃場面に接地したことが検出された場合に実行されるように構成された。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に昇降可能に連結される植付作業機と、
前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、
前記植付作業機を前記走行機体に対して左右方向に傾斜させた姿勢で支持する水平制御機構と、
前記水平制御機構を介して前記植付作業機を左右揺動させる水平制御用アクチュエータと、
前記植付作業機側に設けられたフロートと、
前記フロートの姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記植付作業機の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサと、
前記走行機体の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜検出センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記走行機体が左右方向に傾斜している場合に、前記植付作業機を圃場面に対して水平な水平姿勢を維持する水平制御が実行可能に構成され、
前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以下となったことが検出されるとともに、前記フロートの姿勢が圃場面に接地した所定の姿勢となったことが検出された場合に実行されるように構成された
移植機。
【請求項2】
前記水平制御機構は、前記植付作業機との間に緩衝部材を有し、
前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以上となったことが検出された場合には、前記植付作業機を前記走行機体に対して平行な基本姿勢に切換えるように構成された
請求項1に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機を圃場面に対して水平にする水平制御が実行可能な制御部を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に昇降可能に連結される植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、前記植付作業機を前記走行機体に対して左右方向に傾斜させた姿勢で支持する水平制御機構とを備え、前記水平制御機構は、前記植付作業機との間に緩衝部材を有し、前記植付作業機が圃場面に接地した際に、前記植付作業機が圃場面に対して水平となるように構成したことにより、機械的な構成で前記植付作業機を圃場面に対して水平に保つことができる特許文献1に記載の移植機が従来公知である。
【0003】
これに対し、前記水平制御機構を介して前記植付作業機を左右揺動させる水平制御用アクチュエータと、前記植付作業機の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサと、前記走行機体の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜検出センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記走行機体が左右方向に傾斜している場合に、前記植付作業機を圃場面に対して水平となるように左右揺動作動させる水平制御が実行可能に構成された特許文献2に記載の移植機が従来公知である。
【0004】
上記特許文献2の移植機によれば、前記制御部による水平制御によって、前記植付作業機を下降作動させた際に該植付作業機の左右一方側が先に地面に接触することによる破損や故障を確実に防止することができるものであるが、前記水平制御の実行中は前記水平制御用アクチュエータが高頻度で駆動し続けるため、該アクチュエータが破損し易く、メンテナンス等にもよりコストが掛かるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6573081号公報
【特許文献2】特開2011-246061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記植付作業機を圃場面に対して水平となるように制御可能な制御部を備えた移植機において、前記植付作業機を左右揺動作動させるアクチュエータが不必要なタイミングで連続稼働することを防止し、アクチュエータの寿命を延ばすことのできる移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、走行機体の後部に昇降可能に連結される植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、前記植付作業機を前記走行機体に対して左右方向に傾斜させた姿勢で支持する水平制御機構と、前記水平制御機構を介して前記植付作業機を左右揺動させる水平制御用アクチュエータと、前記植付作業機側に設けられたフロートと、前記フロートの姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記植付作業機の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサと、前記走行機体の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜検出センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記走行機体が左右方向に傾斜している場合に、前記植付作業機を圃場面に対して水平な水平姿勢を維持する水平制御が実行可能に構成され、前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以下となったことが検出されるとともに、前記フロートの姿勢が圃場面に接地した所定の姿勢となったことが検出された場合に実行されるように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第2に、前記水平制御機構は、前記植付作業機との間に緩衝部材を有し、前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以上となったことが検出された場合には、前記植付作業機を前記走行機体に対して平行な基本姿勢に切換えるように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前記制御部によれば、前記植付作業機を所定高さで保持した状態で待機する場合、言い換えると、スタンド等を用いて前記植付作業機を前記フロートが接地しない高さで保持する場合には前記水平制御が実行されないため、前記水平制御用アクチュエータの不要なタイミングでの駆動を回避し、該アクチュエータの寿命を延ばすことができる。
【0010】
また、前記水平制御機構は、前記植付作業機との間に緩衝部材を有し、前記水平制御は、前記植付作業機が所定高さ以上となったことが検出された場合には、前記植付作業機を前記走行機体に対して水平な基本姿勢に切換えるように構成されたものによれば、前記植付作業機を作業高さまで下降作動させる際に、前記水平制御用アクチュエータを殆ど作動させることなく圃場面に接地させることができる他、傾斜面に対して平行な水平姿勢で接地した前記植付作業機を所定高さ以上に上昇作動させた場合にも基本姿勢に切換えられるため、緩衝部材の付勢力による跳ね返りも生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
図2】左右揺動機構を示した正面図である。
図3】フロート支持機構を示した要部側面図である。
図4】フロート支持機構を示した要部斜視図である。
図5】制御部のブロック図である。
図6】水平制御の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の後方に昇降リンク5を介して連結された植付作業機4と、前記植付作業機4と後輪2との間に配置された左右方向の整地作業機6とを備え、前進方向(進行方向)に走行し、前方の整地作業機6によって整地された圃場に植付作業機4によって苗を植付けていく。
【0013】
前記走行機体3は、エンジン(図示しない)を収容するボンネット7の後方にオペレータが乗込む操縦部8を有し、前記操縦部8にはオペレータが着座する座席9と、該座席9の前方に配置されたステアリングハンドル11と、該ステアリングハンドル11の左右側方側に配置された前後進切換レバー12とが設けられている。
【0014】
エンジン動力は、トランスミッション(図示しない)を介して一対の前輪1,1に変速伝動されるとともに、該トランスミッションから後方に延設された駆動軸と、該駆動軸が連結されるリアアクスルケース14とを介して一対の後輪2,2へと伝動される。
【0015】
また、前記トランスミッションから後方に突出する前後方向の植付伝動軸16等を介して、前記植付作業機4側にエンジン動力が伝動される他、前記リアアクスルケース14側から後方に延設された整地伝動軸17及びユニバーサルジョイント等を介して、前記整地作業機6側にもエンジン動力が伝動されるように構成されている。
【0016】
前記植付作業機4は、昇降リンク5を介して前記走行機体3の後部側に昇降自在に連結され、圧油の供給・排出によって伸縮作動する昇降シリンダ10によって昇降駆動されるように構成されている。
【0017】
また、前記植付作業機4は、その左右側方部に図示しない一対のスタンドが設けられている。前記スタンドは、地面(圃場面)に安定的に接地することによって前記植付作業機4を地面から所定高さ離間させた所定の待機高さで載置支持するための作用姿勢と、地面から離間して前記植付作業機4の左右側方側を保護するようにカバーする格納姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。
【0018】
なお、前記スタンドを作用姿勢に切換えた際の前記植付作業機4の待機高さは、後述するフロートが地面(圃場面)に接地させない高さに設定されている。
【0019】
次に、図1乃至4に基づいて、植付作業機の具体的な構成について説明する。図2は、左右揺動機構を示した正面図である。
【0020】
前記植付作業機4は、左右方向に延設された四角柱状部材である横フレーム21と、前記横フレーム21の真後側近傍から前方上側に向かって延設された支持フレーム22と、前記横フレーム21の左右両端側から上方側に向けて立設された一対の縦フレーム23,23と、前記横フレーム21に対して左右移動自在に支持された苗載台24と、前記苗載台24上の苗を掻き取って圃場に植付ける植付部26と、前記苗載台24の下方側に設けられた前後方向のフロート27とを備えており、前記フロート27には、前記フロート27を前記横フレーム21に対して上下位置調整可能に支持するフロート支持機構30と、前記フロート27の上下位置調整操作を行う調整レバー29とが設けられている。
【0021】
上記横フレーム21は、左右中央部から前方に向けてローリング軸(図示しない)が突設されており、前記ローリング軸を、前記昇降リンク5の後端側に連結される植付部ホルダを介して左右回動自在に支持することにより、前記植付作業機4を前記走行機体3に対して左右傾斜可能に支持できるように構成されている。ちなみに、前記横フレーム21と前記植付部ホルダとの間には前記支持フレーム22が介在しており、該支持フレーム22の下端部に設けられるボス部22aに前記ローリング軸が回動自在に嵌合されている。
【0022】
これに対し、前記支持フレーム22と、前記植付部ホルダとの間には、前記植付作業機4(支持フレーム22)を前記走行機体3(植付部ホルダ)側に対して左右揺動作動(強制的に左右傾斜)させる左右揺動機構40と、詳しくは後述する緩衝装置45とが設けられている。該左右揺動機構40と緩衝装置45の具体的な構成については後述する。
【0023】
上記調整レバー29は、それぞれ、前記横フレーム21上面に取付固定されたガイド体33に挿通された状態で、前記植付作業機4の左右一方側(図示する例では左側)に前後揺動操作可能に支持される一方で、前記植付作業機4の左右他方側(図示する例では右側)には、前記フロート支持機構30が配置されている(図2参照)。すなわち、前記調整レバー29と、前記フロート支持機構30とが、前記ローリング軸(支持フレーム22)を境に左右に振分けて配置されている。
【0024】
上記植付部26は、左右方向に複数並列配置されており、各植付部26は前後方向に延設された筒状のプランタケース34と、該プランタケース34の後部側に支持された植付爪36とを備えている。各プランタケース34は、前端側が前記横フレーム21側に支持固定され、後部の前記植付爪36に前記走行機体3側から伝動された動力を伝動するように構成されている。
【0025】
上記フロート27は、左右方向に複数並べて配置されており、特に左右方向中央には感知フロート(センターフロート)が設けられている。前記フロート27は、前記フロート支持機構30によって、その後部を上下位置調整可能に支持するとともに、前記フロート27の前部を昇降作動させることにより該フロートの姿勢と上下位置とを調整することができるように支持されている。
【0026】
特に前記感知フロート27は、その前部側をある程度下方揺動させることにより、感知フロート27を圃場面に接地可能な接地姿勢に切換えることができる他、前記感知フロート27の接地姿勢中の状態を感知することで、圃場面の硬さ等を把握することもできる。前記フロート支持機構の詳細については後述する。
【0027】
前記左右揺動機構40は、図2に示されるように、前記植付ホルダの左右一方側にブラケット(図示しない)を介して取付固定された水平制御モータ(水平制御用アクチュエータ)41と、前記支持フレーム22の上下方向中途部に取付固定されて左右方向に突出するように延設された円弧状の支持アーム42とを有し、前記水平制御モータ41と噛合う減速ギヤ43は、前記支持フレーム22の左右一方上部側に形成されたラック部(図示しない)と噛合うように構成されている。
【0028】
該構成の左右揺動機構40によれば、前記水平制御用モータ41を正逆転駆動させることにより、前記植付作業機4(支持フレーム22)を前記走行機体3(植付ホルダ)に対して強制的に左右揺動(傾斜)させることができる。
【0029】
なお、上記支持フレーム22の背面側には、前記支持フレーム22(植付作業機4)の絶対傾斜角、言い換えると、水平(地面、圃場面、走行面)に対する傾斜角度を検出するジャイロセンサ等からなる傾斜角センサ44が設けられている。
【0030】
さらに、上記支持フレーム22と上記植付ホルダとの間には、前記走行機体3に対する前記植付作業機4の相対的な傾斜角(対機傾斜角)を検出する平行制御ポテンショ46が設けられている。
【0031】
これにより、詳しくは後述する制御部50は、前記水平制御用モータ41の駆動を制御することにより、前記植付作業機4(の左右方向)を地面(圃場面、走行面)に対して常に水平(平行)な水平姿勢に保つ水平制御が実行可能に構成されている。前記水平制御については後述する
【0032】
前記緩衝装置45は、図2に示されるように、前記支持アーム42と、前記支持アーム42の左右両端側と前記横フレームとの間に係止された一対の弾性部材(緩衝部材、付勢部材)47、47とによって構成されている。このとき、上記弾性部材の弾性力は、前記植付作業機4の全体荷重をバランスするように設定されている。
【0033】
該構成の緩衝装置45によれば、左右方向が傾斜した傾斜面(圃場面)上で植付作業を行う場合に、前記フロート27の浮力に基づく前記植付作業機の従動的な左右傾斜を許容することができる。言い換えると、前記植付作業機に従動的な圃場面追随性を与えることができる。
【0034】
該構成によれば、前記植付作業機4を作業高さまで下降作動させて且つ前記フロート27を圃場面に接地させた状態で植付作業を行うにあたり、圃場面に傾斜や凹凸があった場合であっても、前記緩衝装置45の弾性力によって前記植付作業機4を圃場面の形状に沿って追従させることができるため、前記植付作業機4が大きくガタつくことを防止することができる。。
【0035】
次に、図3及び図4に基づき、フロート支持機構の構成について説明する。図3は、フロート支持機構を示した要部側面図及び要部斜視図である。
【0036】
前記フロート支持機構30は、前記フロートの前部を昇降作動させることにより姿勢を切換えるフロート前部支持機構30Aと、前記フロートの後部の上下位置を調整可能に支持するフロート後部支持機構30Bとを有している。
【0037】
前記フロート前部支持機構30Aは、左右一対の前記縦フレーム23、23の中途部を架渡すように設けられた左右方向の操作軸51と、前記操作軸51の左右一方側(図示する例では右側)半部に回動自在に支持されて前記操作軸51の外周面を覆う筒状(円筒状)に形成された回動軸52と、前記回動軸52を軸に昇降作動することにより、前記フロート27(及び整地作業機6)を昇降作動させる昇降作動機構と、前記フロート27の昇降位置を検出するフロート姿勢検出装置とを有している。
【0038】
前記昇降作動機構は、前記回動軸52と一体的に上下揺動するように前記回動軸52から前方に突出するように取付固定された板状のベース体53と、前記操作軸51と一体的に上下揺動するように前記操作軸から前方に突出するように取付固定された板状扇形の従動ギヤ54と、前記ベース体53に固設された昇降モータ(アクチュエータ)56と、前記昇降モータ56の動力が直接的に伝動されて前記従動ギヤ54と噛合う駆動ギヤ56aとを有し、前記ベース体53の前部側には、前記フロート27の前端側と連結される上下方向に延設された連結ロッド58の上端側が連結されている。
【0039】
上記従動ギヤ54は、平行に対抗した状態で前記ベース体53に隣接配置されており、扇形の中心側が前記操作軸51に取付固定されている。該構成により、前記昇降モータ56が正逆転方向に駆動されると、前記駆動ギヤ56aを介して前記従動ギヤ54が上下揺動されるため、前記回動軸52を軸に前記ベース体53を上下動させることができる。
【0040】
すなわち、前記フロート支持機構30は、前記昇降モータ56の駆動を制御することにより、前記ベース部材53を上下揺動操作することにより、前記連結ロッド58を介して前記フロート27の前部を上下揺動操作することができる(図3参照)。
【0041】
前記フロート姿勢検出装置は、前記回動軸52と一体的に上下揺動するように前記回動軸52から前方に突出した状態で取付固定された板状のフロート検出側支持体59と、該フロート検出側支持体59から前方に延設されて前記連結ロッド58の上端側と連結される揺動リンク60と、前記フロート検出側支持体59に設置されたポテンショからなるフロート姿勢検出センサ62とを有し、前記フロート姿勢検出センサ62から前方に向けて突出された検出アーム62aは、前記連結ロッド58の上端側上下動に応じて揺動する前記揺動リンク60に突設された係止ピン60aに当接するように構成されている(図4参照)。
【0042】
該構成によれば、前記フロート姿勢検出センサ62によって前記連結ロッド58の上下位置を検出することによって、前記フロート29の姿勢、すなわち、前記フロート27が圃場面に接地した接地姿勢であるか否かを検出することができる。このとき、前記フロート27の前部側が圃場面の状態によって上下動した場合、前記連結ロッド58→前記ベース部材53を介して前記回動軸52が前記操作軸51回りを回動すると、前記昇降モータ56と前記従動ギヤ54も一体的に揺動されるため、
【0043】
前記フロート後部支持機構30Bは、前記植付作業機の横幅の略全体に亘って形成されるとともに、左右方向に並列された前記プランタケース34に軸回りに前後回動自在な構成で支持された左右方向の単一のフロート支持軸66と、前記フロート支持軸66と一体的に上下揺動するフロート支持アーム67とをフロート毎に設けて構成されている。
【0044】
上記フロート支持軸66には、前記調整レバー29の基端部が取付固定されており、前記調整レバー29の前後揺動操作に応じて、前記フロート支持軸66が一体的に軸回転するように構成されている。その一方で、上記フロート支持アーム67は、その前端部(基端部)が前記フロート支持軸66に取付固定され、その後端部は前記フロート27の後部側を上下動可能に支持している。
【0045】
該構成によれば、前記調整レバー29の前後揺動操作に応じて、前記フロート支持軸66を軸回転操作することで、前記フロート支持アーム67が一体的に上下揺動するため、前記フロート27の前記プランタケース34(横フレーム21)に対する相対的な上下位置を変更調整することができる。
【0046】
具体的に説明すると、前記調整レバー29を後方揺動することによって、前記フロート支持アーム67を下方揺動させることができるため、前記フロート27を(前記植付部26を基準として)下方に変位させることができる一方で、前記調整レバー29を前方揺動することによって、前記フロート支持アーム67を上方揺動させることができるため、前記フロート27を(前記植付部26を基準として)上方に変位させることができる。
【0047】
これにより、上述の移植機では、前記フロート27を圃場面に接地させた状態で植付作業を行うため、前記調整レバー29を用いて、前記植付部26を基準とした前記フロートの上下位置を変更することによって、圃場への苗の植付深さを調整することができる。
【0048】
次に、図5及び図6に基づいて、前記植付作業機の水平制御について説明する。図5は、制御部のブロック図である。
【0049】
前記制御部50の入力側には、前記昇降リンク5の角度を検出する昇降角度検出ポテンショ等を用いて前記植付作業機の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサ61と、前記傾斜検出センサ44と、前記平行制御センサ46と、前記フロートの姿勢を検出するフロート姿勢検出センサ62と、が接続されており、前記制御部50の出力側には、前記昇降シリンダ10と、前記水平制御モータ41とが接続されている。
【0050】
前記制御部50は、上述の植付作業機4は、その左右方向が前記走行機体3に対してローリング自在に支持されているため、前記植付作業機4の左右方向を地面(圃場面、走行面)に対して水平となるように左右傾斜させた水平姿勢を維持する水平制御が実行可能に構成されている。
【0051】
該構成の水平制御によれば、前記走行機体が左右方向に傾斜する傾斜面上を作業走行(植付作業)する場合であっても、前記植付作業機の左右方向が常時傾斜面(圃場面、走行面)に対して水平な状態を保つことができるため、スムーズに植付作業を実行できるとともに、前記植付作業機の左右一方のみが地面に接触する事態を確実且つ効率的に防止することができる。
【0052】
また、前記制御部50による水平制御は、前記植付作業機4が所定高さ以下なったこと(植付作業機4と圃場面との間が所定以上近くなったこと)が検出されるとともに、前記感知フロート27が圃場面に接地した接地姿勢となったことが検出された場合には、前記植付作業機4を圃場面に対して常に水平な水平姿勢を保つ制御を実行し、前記植付作業機が所定高さより高くなったことが検出された場合には、前記植付作業機の左右方向が前記走行機体に対して水平な基本姿勢(対機水平姿勢)で保持(固定)するように構成されている。
【0053】
該構成によれば、前記水平制御は、前記植付作業機4を水平姿勢に保つことが確実に必要なタイミングでのみ、前記水平制御モータ41を駆動させて水平姿勢を維持するように構成されているため、前記水平制御モータ41の不要なタイミングでの駆動を回避し、該水平制御モータ41の寿命を延ばすことができる。
【0054】
ちなみに、前記水平制御における前記植付作業機4の姿勢切換を実行する前記所定高さは、前記植付作業機4が前記スタンド(図示しない)を用いて圃場面上に支持された際の所定の待機高さよりも低くなるように構成されている。
【0055】
該構成によれば、前記植付作業機4が前記スタンドを用いることによって所定の待機高さで載置固定された場合には、前記植付作業機4を確実に基本姿勢(対機水平姿勢)で保持することができるため、前記水平制御モータ41の摩耗をより効率的に防止できる。
【0056】
ちなみに、前記水平制御時の前記所定高さは、前記植付作業機4側の前記フロート27が圃場面上に接地しない高さ位置であれば上記範囲に限られない。すなわち、前記所定高さを前記待機高さよりも高く設定する構成としても良い。該構成の場合であっても、前記スタンドを用いて前記植付作業機4を待機高さで支持した場合、フロート27が接地姿勢とならないため、前記植付作業機4が基本姿勢で保持される。
【0057】
さらに、左右方向が傾斜した圃場面上で作業高さまで下降した前記植付作業機4を、水平姿勢で維持した状態のまま上昇作動させると、前記植付作業機4が圃場面から離間する際に、前記緩衝装置45の弾性力による跳ね返りによって、前記植付作業機6が揺れるおそれがあるところ、前記制御部50による水平制御で、前記植付作業機4が所定高さまで上昇作動した場合には、前記植付作業機4を基本姿勢で固定する制御を実行することで、上記事態を効率的に防止することができる。
【0058】
図6は、水平制御の処理フローを示した図である。前記制御部は水平制御の処理フローの実行が開始されると、ステップS1に進む。
【0059】
ステップS1では、前記昇降高さ検出センサにより、前記植付作業機が予め設定された所定高さ以下であるか否かが確認され、前記植付作業機4が所定高さ以下であることが検出された場合には、ステップS2に進む。
【0060】
ステップS2では、前記フロート姿勢検出センサにより、前記感知フロート27が圃場面に接地したことを示す接地姿勢となったか否かが確認され、前記感知フロート27が接地姿勢となったことが検出された場合には、ステップS3に進む。
【0061】
ステップS3では、前記傾斜検出センサ44によって検出された前記走行機体3の左右傾斜量に応じて、前記水平制御モータ41を常時駆動させることによって、前記植付作業機4の左右方向が、常時地面(圃場面、走行面)に対して水平(平行)な水平姿勢を維持する状態に切換えて、その後、リターンする。
【0062】
なお、ステップS2において、前記感知フロート27が接地姿勢となっていることが検出されなかった場合と、ステップS1において、前記植付作業機4の昇降高さが所定高さ以下であることが検出されなかった場合には、ステップS4に進む。
【0063】
ステップS4では、前記水平制御モータ41を所定位置まで駆動した状態で固定することによって、前記植付作業機の左右方向を前記走行機体に対して水平な基本姿勢(対機水平姿勢)を保持した状態に切換え、その後、リターンする。
【符号の説明】
【0064】
3 走行機体
4 植付作業機
10 昇降シリンダ
27 フロート、感知フロート
40 左右揺動機構(水平制御機構)
41 水平制御モータ(水平制御用アクチュエータ)
44 傾斜検出センサ
45 緩衝装置(緩衝部材)
50 制御部
61 昇降高さ検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6