(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178084
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】充填システム
(51)【国際特許分類】
B67C 3/24 20060101AFI20221125BHJP
B67C 3/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B67C3/24
B67C3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084620
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】西納 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲本 孝之
【テーマコード(参考)】
3E079
【Fターム(参考)】
3E079AA10
3E079AB01
3E079BB05
3E079EE01
3E079EE16
3E079FF03
3E079FF16
3E079FG10
3E079GG10
(57)【要約】
【課題】首部を把持して搬送を行う充填システムにおいて容器の搬送状態を検出する。
【解決手段】充填システム10は、複数の回転ホイール間において容器Vの首部をグリッパで交互に把持して容器Vを搬送し、フィラ20Aにおいて容器Vの充填を行う。フィラ20Aの上流に、加速度センサを搭載した検査容器Vtを供給する第4検査容器供給ホイール24Dを接続する。第1運転モードでは、容器Vを搬送して充填作業を行う。第2運転モードでは、検査容器Vtを第4検査容器供給ホイール24Dから供給し、検査容器Vtを搬送する際の加速度センサからの加速度信号を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の首部を把持するグリッパが外周に設けられ、前記容器の首部を把持しつつ搬送する回転ホイールと、
前記回転ホイールを複数連続して配置するとともに、前記回転ホイールのうちの少なくとも1つを充填装置とし、前記グリッパで前記容器の首部を交互に把持しながら容器を搬送する充填システムにおいて、
前記充填装置の上流に、加速度センサを搭載した検査容器を供給する供給ホイールを接続するとともに、
前記容器を搬送して充填を行う第1運転モードと、前記検査容器を前記供給ホイールから受け取り、前記回転ホイール間で搬送する際の加速度を前記加速度センサで検出する第2運転モードとを切り替え可能としたことを特徴とする充填システム。
【請求項2】
前記複数の回転ホイールを外部の雰囲気と隔離するチャンバ内に配置することを特徴とする請求項1に記載の充填システム。
【請求項3】
前記充填装置の上流に配置された複数の回転ホイールのうち少なくとも1つの回転ホイールを、搬送される前記容器に殺菌剤を吹き付ける殺菌ホイールとするとともに、前記供給ホイールを前記殺菌ホイールの上流に配置し、
前記第2運転モードで供給される前記検査容器に対して前記殺菌ホイールによって殺菌剤を吹き付けて殺菌することを特徴とする請求項2に記載の充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の搬送状態を検出可能な充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
充填機やキャップ装着機など複数の物品処理機を備える充填設備において、ボトル搬送ラインの搬送性の異常の有無を検査する目的で、容器を搬送するハカマに加速度センサを組み込み、搬送時にハカマに作用する衝撃力を計測する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、充填システムにはハカマを用いず、容器の首部を把持して容器の搬送を行うシステムが知られている。同充填システムでは、特許文献1の構成を用いて搬送性の異常の有無を検出することはできない。
【0005】
本発明は、首部を把持して搬送を行う充填システムにおいて容器の搬送状態を検出することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明である充填システムは、容器の首部を把持するグリッパが外周に設けられ、前記容器の首部を把持しつつ搬送する回転ホイールと、前記回転ホイールを複数連続して配置するとともに、前記回転ホイールのうちの少なくとも1つを充填装置とし、前記グリッパで前記容器の首部を交互に把持しながら容器を搬送する充填システムにおいて、前記充填装置の上流に、加速度センサを搭載した検査容器を供給する供給ホイールを接続するとともに、前記容器を搬送して充填を行う第1運転モードと、前記検査容器を前記供給ホイールから受け取り、前記回転ホイール間で搬送する際の加速度を前記加速度センサで検出する第2運転モードとを切り替え可能としたことを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の発明である充填システムは、第1の発明において、前記複数の回転ホイールを外部の雰囲気と隔離するチャンバ内に配置することを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の発明である充填システムは、第2の発明において、前記充填装置の上流に配置された複数の回転ホイールのうち少なくとも1つの回転ホイールを、搬送される前記容器に殺菌剤を吹き付ける殺菌ホイールとするとともに、前記供給ホイールを前記殺菌ホイールの上流に配置し、前記第2運転モードで供給される前記検査容器に対して前記殺菌ホイールによって殺菌剤を吹き付けて殺菌することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、首部を把持して搬送を行う充填システムにおいて容器の搬送状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である充填システムの全体の配置を示す平面図である。
【
図2】本実施形態で用いられる検査容器の縦断面図である。
【
図3】上流側ホイールから下流側ホイールへと検査容器が受け渡される様子を示す斜視図である。
【
図4】加速度センサで計測される信号の時系列変化を示すグラフである。
【
図5】第4検査容器供給ホイールを中心に第3検査容器供給ホイール、検査供給ホイールの一部の配置を示す平面図である。
【
図7】第4検査容器供給ホイールの開閉式グリッパと検査供給ホイールのバネ式グリッパとの間で検査容器の受け渡しが行われる状態を示す縦断面図である。
【
図8】
図7の開閉式グリッパを第4検査容器供給ホイールの径方向外側から見た縦断面図である。
【
図9】閉じられた状態の開閉式グリッパの平面図である。
【
図10】開かれた状態の開閉式グリッパの平面図である。
【
図11】退避位置まで開いた状態の開閉グリッパの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である第1運転モード時における充填システムの全体の配置を示す平面図である。
【0012】
本実施形態の充填システム10は、回転ホイールの外周に設けられたグリッパで樹脂製の容器Vの首部Vnのフランジ下を交互に把持し、回転ホイール間で容器Vを受け渡して搬送を行う。充填システム10は、例えば無菌充填システムであり、成型チャンバ12、検査チャンバ14、殺菌/エアリンサチャンバ16、水リンサチャンバ18、充填チャンバ20、キャッピングチャンバ22、検査容器供給チャンバ24を備えている。また、生産時には成型チャンバ12以外のチャンバ内を無菌状態とし、容器Vは各チャンバ内を外部の雰囲気から隔離された無菌状態で搬送される。なお、
図1においては各回転ホイールに把持される容器Vの一部を示している。
【0013】
成型チャンバ12内には、容器Vのブロー成型を行うホイール式のブロー成型機12Aが配置される。成型チャンバ12には、パリソン用シュート26Aからパリソンが供給され、成型チャンバ12に供給されたパリソンは、複数のパリソン供給ホイール26B、パリソン予熱搬送装置26C、ブロー成型供給ホイール26Dを介してブロー成型機12Aへと搬送される。ブロー成型機12Aではパリソンにエアが吹き込まれ、容器Vが形成される。ブロー成型機12において成型された容器Vは、ブロー成型排出ホイール26Eを介して、検査チャンバ14内の第1中間ホイール28Aに受け渡される。
【0014】
第1中間ホイール28Aに受け渡された容器Vは、検査供給ホイール28Bを介して検査ホイール14Aに受け渡される。検査ホイール14Aでは、例えばカメラ等を用いて成型された容器Vの良否が判定される。検査ホイール14Aにおいて不良と判定された容器Vは、次のリジェクトホイール28Cにおいて搬送ラインから排出される。一方、問題がないと判定された容器Vは、第2中間ホイール28Dを介して殺菌/エアリンサチャンバ16内の殺菌供給ホイール30Aに受け渡される。
【0015】
殺菌/エアリンサチャンバ16内には、殺菌ホイール16Aとエアリンサ16Bが配置される。殺菌供給ホイール30Aに受け渡された容器Vは、まず殺菌ホイール16Aに受け渡され、殺菌剤を容器Vに吹き付ける殺菌処理が施される。殺菌処理が完了した容器Vは、殺菌供給ホイール30Aからエアリンサ供給ホイール30Bを介してホイール式のエアリンサ16Bへと受け渡される。エアリンサ16Bでは容器Vに加熱エアを吹き付けて殺菌剤の乾燥が行われる。その後、容器Vは、水リンサ供給ホイール32を介して水リンサチャンバ18内に配置されるホイール式の水リンサ18Aに受け渡される。
【0016】
水リンサ18Aでは容器Vに洗浄液を吹き付けて洗浄が行われる。洗浄が完了した容器Vは、フィラ供給ホイール34を介してフィラチャンバ20内に配置されるホイール式のフィラ(充填装置)20Aに受け渡される。フィラ20Aでは、容器Vに例えば液体が充填され、充填が完了した容器Vは、キャッパ供給ホイール36Aを介してキャッピングチャンバ22内に配置されるホイール式のキャッパ22Aに受け渡される。キャッパ22Aにおいてキャップが装着された容器Vは、キャッパ排出ホイール36Bおよび排出ホイール36Cを介してキャッピングチャンバ22から下流側の装置へと容器Vを搬送する排出コンベヤ38へ受け渡される。
【0017】
また、本実施形態の充填システム10の排出コンベヤ38には、後述する第2運転モードにおいて搬送される検査容器Vtを検査容器供給チャンバ24へと搬送する戻りコンベヤ40が設けられる。戻りコンベヤ40は排出コンベヤ38の途中から分岐し、後述するように、第1運転モードにおいて搬送される容器Vと第2運転モードにおいて搬送される検査容器Vtとに応じて、進路を排出コンベヤ38と戻りコンベヤ40との間で切り替え可能に構成される。排出コンベヤ38と戻りコンベヤ40の間の搬送経路の切り替えは、排出コンベヤ38の分岐部に設けられるガイド38Aによって行われる。ガイド38Aは例えば垂直軸周りに揺動可能なレバーであり、第1運転モードでは排出コンベヤ38の搬送路から退避され、容器Vは排出コンベヤ38に沿って下流側へと排出される。一方、第2運転モードではガイド38Aが排出コンベヤ38の搬送路上へと押し出され、検査容器Vtの進路を戻りコンベヤ40へ切り替える。これにより、排出コンベヤ38上を搬送される検査容器Vtは戻りコンベヤ40へとガイドされる。
【0018】
戻りコンベヤ40は排出コンベヤ38から分岐した後、その下流端は検査容器供給チャンバ24内へと延出する。検査容器供給チャンバ24内において戻りコンベヤ40の下流部にはインフィードスクリュー40Aが設けられる。検査容器供給チャンバ24内には、例えば第1~第3検査容器供給ホイール24A、24B、24Cが隣接して配置され、戻りコンベヤ40を搬送される容器Vは、インフィードスクリュー40Aを介して第1検査容器供給ホイール24Aへと受け渡される。
【0019】
後述するように、第2運転モードでは、第1検査容器供給ホイール24Aに保持される検査容器Vtは、第2、第3検査容器供給ホイール24B、24Cを介して検査チャンバ14内に配置される第4検査容器供給ホイール24Dへと搬送され、第4検査容器供給ホイール24Dから検査供給ホイール28Bへと受け渡し可能であり、キャッピングチャンバ22から排出コンベヤ38へ受け渡された容器Vは、戻りコンベヤ40を通して第1検査容器供給ホイール24Aへと戻され、充填システム10内を循環可能である。なお、第1、第2運転モード間における各装置(第1~第4検査容器供給ホイール24A、24B、24C、24Dを含む各ホイールやガイド38A等)の駆動やその切り替えは制御装置42によって行われる。また、本実施形態の排出コンベヤ38および戻りコンベヤ40は、各コンベヤを覆うチャンバ43内に収容されている。
【0020】
第1運転モードは、容器Vへの充填処理を行う通常モードであり、容器Vはブロー成型チャンバ12から供給され、フィラ20Aで充填され、キャッパ22Aでキャッピングされた容器Vは、排出コンベヤ38により下流の処理装置へと排出される。一方、第2運転モードは、充填システム10における搬送性能の異常を検出するため、容器Vの搬送状態を検出するモードである。充填システム10における容器Vの搬送状態は、センサを搭載した検査容器Vtを充填システム10で搬送することにより検出される。
【0021】
本実施形態の第1~第3検査容器供給ホイール24A、24B、24Cには、予め検査容器Vtが保持されている。第2運転モードでは、ブロー成型機12Aの運転は停止され、第1~第3検査容器供給ホイール24A、24B、24Cに保持される検査容器Vtが、第4検査容器供給ホイール24Dおよび検査供給ホイール28Bを介して検査ホイール14Aに供給される。検査ホイール14Aに供給された検査容器Vtは、殺菌ホイール16A、エアリンサ16B、水リンサ18A、フィラ20A、キャッパ22Aを介して、排出コンベヤ38に排出され、ガイド38Aにより戻りコンベヤ40を通して第1検査容器供給ホイール24Aに戻される。
【0022】
第1検査容器供給ホイール24Aに戻された検査容器Vtは、再び第2~第4検査容器供給ホイール24B、24C、24Dを介して検査供給ホイール28Bに供給され、同様に充填システム10内を循環される。検査容器Vtを複数回循環させることで、検査供給ホイール28Bから排出ホイール36Cまでの間の各ホイールの全てのグリッパで検査容器Vtが受ける外力(衝撃力)が検出される。制御装置42は、各ホイールのエンコーダからの情報により、各検査容器Vtがどのタイミングでどのホイールのどのグリッパに保持されているかを把握できるので、充填システム10における異常個所を特定することができる。
【0023】
なお、第2運転モードによる検査容器Vtの循環は、異なる日時に行うことも可能である。例えば、フィラ20Aのグリッパが120個で検査容器Vtを30本用意していた場合、1回目の検査でNo.1~30のグリッパへ検査容器Vtを供給するタイミングで充填システムを運転し、2回目の検査でNo.31~60のグリッパへ、3回目の検査でNo.61~90のグリッパへ、4回目の検査でNo.91~120のグリッパへ検査容器Vtを供給するタイミングで充填システムを運転するなど、複数回に分けて検査容器Vtを供給することも可能である。1回目から2回目、2回目から3回目、3回目から4回目の間隔は、1時間後や1日後、1週間後などユーザが適宜所望の間隔に設定することができる。また、検査容器Vtを供給して検査を行うタイミングとしては、毎日、1週間に1回、1月に1回、オーバーホールなどの調整作業を行った時などが考えられる。
【0024】
図2は、本実施形態で用いられる検査容器Vtの縦断面図である。
図2(a)は、検査容器Vt全体の縦断面図であり、
図2(b)は、検査容器Vtの繋ぎ部の拡大図である。
【0025】
検査容器Vtは、例えば充填システム10で取り扱われる容器Vと同様の樹脂ボトル本体を、中央よりもやや下の位置で上部パーツV1と下部パーツV2に分割し、下部パーツV2内に無線式の加速度センサ44を収容したものである。
図2(b)に示されるように、上部パーツV1と下部パーツV2は、両パーツの上下の端部周囲に設けられたネジにより連結され、その間にはシール部材46が介装される。なお、本実施形態の検査容器Vtの開口部は閉鎖されており、加速度センサ44は、検査容器Vt内に密封されている。そのため第2運転モードでは、殺菌ホイール16Aによる殺菌処理、エアリンサ16Bにおける洗浄処理を行うことができる。なお、検査チャンバ14、殺菌/エアリンサチャンバ16、水リンサチャンバ18、充填チャンバ20、キャッピングチャンバ22、検査容器供給チャンバ24内の無菌を解除した状態で検査容器Vtを供給した場合は検査容器Vtに殺菌ホイール16Aによる殺菌処理やエアリンサ16Bにおける乾燥処理を行わなくても良い。
【0026】
図3、
図4は、検査容器Vtによる搬送時の衝撃力検出の様子を説明する図である。
図3は、上流側ホイール48Aから下流側ホイール48Bへと検査容器Vtが受け渡される様子を示す斜視図である。なお、上流側ホイール48Aおよび下流側ホイール48Bは、充填システム10における検査供給ホイール28Bよりも下流側の任意の隣接するホイールを代表する。また
図4は、このとき加速度センサ44で計測される信号の時系列変化を示すグラフである。
【0027】
図3に示されるように、上流側ホイール48Aと下流側ホイール48Bとでは、ホイール外周を搬送される検査容器Vtの回転方向が反転される。例えば、
図3の上流側ホイール48Aでは検査容器Vtは反時計回りに搬送され、下流側ホイール48Bでは時計回りに搬送される。したがってホイール48A、48Bの回転による検査容器Vtが受ける遠心力の向きは、ホイール間の受け渡し前後で反転する。
【0028】
図4には、搬送状態に異常がないときの加速度センサ44からの信号(正常波形)S1と、異常があるときの加速度センサ44からの信号(異常波形)S2が示される。区間Aは、検査容器Vtの首部が上流側ホイール48Aに把持されて搬送されるときの出力であり、区間Bは上流側ホイール48Aから下流側ホイール48Bに検査容器Vtが受け渡される区間の出力である。また、区間Cは検査容器Vtの首部が下流側ホイール48Bに把持されて搬送されるときの出力である。
【0029】
図4に示されるように、加速度センサ44からの信号は、例えば区間A、区間Cにおいては、各ホイールにおける遠心力に対応する略一定のマイナスの値あるいはプラスの値を出力する。これらの値は、受け渡し区間Bにおいて急激に変化し反転する。このとき出力信号はグリッパ間での受け渡しにおける衝撃によりオーバーシュートを主とする波形の乱れを示すが、搬送システムが正常か異常かで出力波形が異なる。本実施形態では、各検査容器Vtの加速度センサ44からの信号を制御装置42において記憶し、信号波形の違いから搬送システムの異常の有無およびその箇所を制御装置42により特定する。
【0030】
本実施形態の検査供給ホイール28Bは、第1運転モードでは第1中間ホイール28Aから容器Vを受け取り、第2運転モードでは第4検査容器供給ホイール24Dから検査容器Vtを受け取る。すなわち、第1、第2運転モードに応じて検査供給ホイール28Bが容器を受け取るホイールが切り替えられ、同切り替えは、第4検査容器供給ホイール24Dにおいて実行される。以下、
図5~
図11を参照して、検査供給ホイール28Bと第4検査容器供給ホイール24Dの構成について説明する。
【0031】
本実施形態の充填システム10のネックグリッパを用いた搬送システムでは、カム機構など駆動機構を用いて開閉される開閉式グリッパを備えるホイールと、閉じる方向にのみ付勢されるバネ式グリッパを備えるホイールとの間で交互に受け渡される。本実施形態では、
図5に示されるように、検査供給ホイール28Bおよび第3検査容器供給ホイール24Cが、
図6に示されるバネ式グリッパ50を外周に沿って所定間隔で備え、第4検査容器供給ホイール24Dは開閉式グリッパを用いる。なお、
図5は、第4検査容器供給ホイール24Dを中心に第3検査容器供給ホイール24C、検査供給ホイール28Bの一部の配置を示す平面図である。
【0032】
図6は、バネ式グリッパ50の平面図である。バネ式グリッパ50は、容器Vや検査容器Vtの首部Vnを把持する一対のグリップアーム50Aと、各グリップアーム50Aの基端部を保持する一対の平行なプレート50Bと、プレート50B同士の間にあって、両プレート50Bを互いに引き寄せる方向に付勢するスプリング50Cと、グリップアーム50A同士の間に配置され、グリップアーム50Aによって把持される首部Vnにグリッパの内側から当接し、首部Vnをグリップアーム50Aとで3方から支持する当接部50Dとから構成される。
【0033】
通常、グリップアーム50A同士は、スプリング50Cの付勢力により首部Vnの径よりも狭い間隔を隔てて閉じられている。各グリップアーム50Aの先端内側面はテーパ状に成形され、左右のグリップアーム50Aの先端は外側に向けてV字形に開かれている。これにより容器V(Vt)の首部Vnが、グリップアーム50Aの先端のV字部に押し当てられると、グリップアーム50A同士が付勢力に抗して開かれ、首部Vnがグリップアーム50Aの間に押し込まれ当接部50Dに押し当てられる。これにより
図5に示されるように首部Vnはグリップアーム50Aと当接部50Dにより3方から保持される。
【0034】
図7は、第4検査容器供給ホイール24Dの外周に沿って設けられる開閉式グリッパ52と、検査供給ホイール28Bのバネ式グリッパ50との間で検査容器Vtの受け渡しが行われる状態を示す拡大縦断面図である。
【0035】
第4検査容器供給ホイール24Dの開閉式グリッパ52は、検査容器Vtの首部Vnを把持する一対のグリップアーム52A、52Bを備える。各グリップアーム52A、52Bの基端部は、回転軸54A、54Bの下端にそれぞれ一体的に取り付けられ、回転軸54A、54Bは第4検査容器供給ホイール24Dの支持部材56により回転自在に支持される。
【0036】
回転軸54A、54Bには、同じ大きさで、互いに噛み合うギヤ58A、58Bがそれぞれ一体的に設けられる。これにより、回転軸54A、54B、すなわちグリップアーム52A、52Bは互いに反対向きに同じ角度だけ回転される。回転軸54Bの外周には、その一端が支持部材56に連結されるトーションスプリング60が配置され、回転軸54Bにグリップアーム52A、52Bを閉じる方向への回転付勢力を与える。なお、
図8は、
図7の開閉式グリッパ52を第4検査容器供給ホイール24Dの径方向外側から見た縦断面図である。
【0037】
ギヤ58A、58Bは略半周分の歯部を備え、その反対側には、それぞれギヤレバー60A、60Bが設けられる。ギヤレバー60Aの先端には垂直方向に突出するピン61が設けられる。また、回転軸54Aのギヤ58Aの直下には、カムレバー62が回転自在に軸支される。
図9、
図10の開閉式グリッパ52の平面図に示されるように、カムレバー62の先端にはカムフォロア62Aが設けられる。カムフォロア62Aは、
図5に示されるように、第4検査容器供給ホイール24Dの外周において、第3検査容器供給ホイール24Cと検査供給ホイール28Bとの間の容器受け渡し位置に設けられるカム64に係合し、カムレバー62を回転軸54B周りにグリップアーム52A、52Bを開く方向に回転する。なお、
図9は開閉式グリッパ52が閉じられた状態、
図10は開閉式グリッパ52が開かれた状態が示される。
【0038】
カムレバー62において、回転軸54Bを軸にカムフォロア62Aとは反対側には、ピン61と係合するピン係合部62Bが設けられる。ピン係合部62Bは、カムレバー62がグリップアーム52A、52Bを開く方向に回転するときにピン61と係合するように形成されている。ギヤレバー60A、60Bは、トーションスプリング60により、グリップアーム52A、52Bを閉じる方向に付勢されているため、ギヤレバー60Aに設けられたピン61は、ピン係合部62Bに押し当てられ、カムレバー62はカム64に押し当てられる方向に付勢される。
【0039】
また、回転軸54Bのギヤ58Bの直上には、グリッパ退避レバー66が回転自在に軸支される。グリッパ退避レバー66の先端には、上下方向に延出するピン68が設けられる。下方に延出するピン68は、ギアレバー60Bの先端に設けられた円弧状の長穴70に挿通し、ピン68の上端および下端は、エアシリンダ72のロッド72Aの先端72Bに回転自在に取り付けられる。エアシリンダ72は、第4検査容器供給ホイール24Dの略径方向にロッド72Aを進退可能であり、選択される運転モードに対応して制御装置42がロッド72Aを進退を制御する。
【0040】
第1運転モードでは、ロッド72Aが径方向内側に引っ込められ
図11の状態とされる。
図11の状態では、ピン68が長穴70の一端に係合してギアレバー60Bを径方向内側に向けて移動する。これにより開閉式グリッパ52はグリップアーム52A、52Bの先端が検査供給ホイール28Bのバネ式グリッパ50の移動経路から退避される位置まで大きく開かれる。このとき、ギアレバー60Aのピン61は、カム64と係合するカムレバー62のピン係合部62Bから離間するので、開閉式グリッパ52の退避動作が妨げられることはない。
【0041】
このように第1運転モードでは、開閉式グリッパ52が検査供給ホイール28Bの搬送経路から退避されているので、第4検査容器供給ホイール24Dの上流側において、第1中間ホイール28Aから検査供給ホイール28Bのバネ式グリッパ50に受け渡された容器Vは、第4検査容器供給ホイール24Dの開閉式グリッパ52と干渉することなく、下流側の検査ホイール14Aへと搬送される。
【0042】
一方、第2運転モードでは、ロッド72Aが径方向外向きに押し出され、
図9、
図10の状態とされる。このときギアレバー60Bはピン68が係合する長穴70の範囲で回動可能であり、開閉式グリッパ52はカム64とカムフォロア62Aの係合により開閉可能である。
図9には、トーションスプリング60の付勢力により開閉式グリッパ52が閉じられた状態が示され、
図10にはカム64とカムフォロア62Aの係合により開閉式グリッパ52が開かれた状態が示される。
【0043】
第2運転モードでは、上流側のブロー成型機12Aが停止され、第1中間ホイール28Aからの容器Vの供給がなく、第4検査容器供給ホイール24Dから開閉式グリッパ52に把持される検査容器Vtが検査供給ホイール28Bの各バネ式グリッパ50へと受け渡される。
【0044】
以上のように、本実施形態の充填システムによれば、首部を把持して搬送を行う充填システムにおいて、第1運転モードで通常の充填作業を行うとともに、第2運転モードに切り替えることで、検査用の容器を用いて容器の搬送状態を検出することができる。
【0045】
充填システムでは、据え付け時にベストな状態に搬送システムが調整されているが、経時的に部品(カムやカムフォロアのブッシュ等)が摩耗してグリッパの開閉タイミングがずれてきたり、運転中に変形容器の噛み込みがあった場合など、グリッパに強い負荷がかりグリッパの位置が若干ずれたりすることがある。しかし、本実施形態では、上述したように運転モードを切り替えることで、容器の搬送状態を定量的に把握でき、問題箇所を簡単に見つけ出し、搬送時のトラブルを未然に防止することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態では、戻りコンベヤにより検査容器をシステム内で循環させることができるので、少ない数の検査容器で全てのグリッパの状態を簡単に検査することができる。なお、戻りコンベヤは省略することもできる。
【0047】
本実施形態では、制御装置のメモリに信号を記録したが、検査容器内にメモリを設け、同メモリに信号を記録してもよい。また、検査容器内にGPSを搭載して検査容器を戻りコンベヤへは搬送させずに排出コンベヤから下流へ搬送することにより、充填システムから排出された後のコンベヤ搬送時における検査容器の位置およびその時の衝撃を把握することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 充填システム
16 殺菌/エアリンサチャンバ
16A 殺菌ホイール
20 充填チャンバ
20A フィラ(充填装置)
24A~24D 第1~第4検査容器供給ホイール(供給ホイール)
28B 検査供給ホイール
42 制御装置
44 加速度センサ
50 バネ式グリッパ
52 開閉式グリッパ
V 容器
Vn 首部
Vt 検査容器