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  • 特開-燃料タンクシステム 図1
  • 特開-燃料タンクシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178091
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】燃料タンクシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20221125BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221125BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20221125BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F02M25/08 H
F02M25/08 301L
F02M25/08 Z
F02M37/00 301G
B60K15/035 B
B60K15/035 C
B60K15/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084627
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 奨英
(72)【発明者】
【氏名】三浦 夏司
【テーマコード(参考)】
3D038
3G144
【Fターム(参考)】
3D038CA15
3D038CA25
3D038CA26
3D038CA27
3D038CC02
3D038CC03
3D038CC05
3D038CC15
3G144AA10
3G144BA27
3G144CA02
3G144DA02
3G144DA07
3G144FA04
3G144GA02
3G144GA03
3G144GA04
(57)【要約】
【課題】燃料蒸気の大気への排出量を低減することのできる燃料タンクシステムを提供すること。
【解決手段】燃料タンクと、燃料タンクに燃料を注入するための給油口と、燃料タンクと給油口とを連通するインレットパイプと、燃料タンクの燃料蒸気を吸着するためのキャニスタと、インレットパイプと燃料タンクとを連通し、燃料蒸気をインレットパイプに導く循環通路と、キャニスタと連通し、燃料蒸気をキャニスタに導く蒸気通路と、キャニスタと大気とを連通する大気通路と、大気通路を開閉する第1開閉弁と、キャニスタと内燃機関とを連通するパージ通路と、パージ通路を開閉する第2開閉弁と、を備える燃料タンクシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクシステムであって、
燃料タンクと、
前記燃料タンクに燃料を注入するための給油口と、
前記燃料タンクと前記給油口とを連通するインレットパイプと、
前記燃料タンクの燃料蒸気を吸着するためのキャニスタと、
前記インレットパイプと前記燃料タンクとを連通し、前記燃料蒸気を前記インレットパイプに導く循環通路と、
前記キャニスタと連通し、前記燃料蒸気を前記キャニスタに導く蒸気通路と、
前記キャニスタと大気とを連通する大気通路と、
前記大気通路を開閉する第1開閉弁と、
前記キャニスタと内燃機関とを連通するパージ通路と、
前記パージ通路を開閉する第2開閉弁と、を備える、燃料タンクシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料タンクシステムであって、
前記第1開閉弁は、前記燃料タンクの内圧が予め定められた圧力範囲である場合に閉弁状態である、燃料タンクシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料タンクシステムであって、さらに、
前記給油口を覆うリッドを開く開指示を受け付ける受付部と、
前記燃料タンクの内圧を検出する圧力センサーと、
前記燃料タンクシステムの動作を制御する動作制御部と、を備え、
前記動作制御部は、前記受付部が前記開指示を受け付けた場合に、
前記圧力センサーの検出圧力を取得し、
取得した前記検出圧力が前記圧力範囲の上限よりも低い基準圧力より高い場合に、前記リッドを閉じた状態で前記第2開閉弁を開弁することで、前記検出圧力を前記基準圧力以下に低下させた後に、前記リッドを開き、
前記検出圧力が前記基準圧力以下である場合に、前記第2開閉弁の開閉状態にかかわらず前記リッドを開く、燃料タンクシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の燃料タンクシステムであって、さらに、
前記給油口に取り付けられた、キャップ正圧弁を有する給油キャップを備え、
前記キャップ正圧弁は、前記燃料タンクの内圧が前記圧力範囲の上限よりも高い開圧力以上である場合に開弁状態である、燃料タンクシステム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の燃料タンクシステムであって、
前記第1開閉弁は、チェック弁である、燃料タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクを搭載している車両には、燃料蒸気の大気への排出量を低減するためにキャニスタが搭載されている。内燃機関にて燃焼が行われていない期間に発生した燃料蒸気は、キャニスタに一時的に吸着され、内燃機関にて燃焼が再開された後に、吸気により脱離され、内燃機関に送られ燃焼される。
【0003】
しかし、キャニスタがアイドリングストップ機能のある車両に搭載された場合や、ハイブリッド車へ搭載された場合などには、内燃機関での燃焼の頻度が低くなり、キャニスタに吸着されている燃料蒸気が脱離される頻度は低くなる。このため、キャニスタで十分吸着しきれなかった燃料蒸気が大気へ排出されるおそれがある。そこで、内燃機関での燃焼の頻度が低い場合であっても、大気に排出される燃料蒸気の量を低減するための技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、燃料タンクとキャニスタとを連通するベーパ通路に封鎖弁を設け、封鎖弁を閉弁することで燃料蒸気のキャニスタへの流入量を低減する燃料タンクシステムが開示されている。ただし、この場合、燃料タンクの内圧が高くなる場合があるため、特許文献1に記載の燃料タンクシステムでは、燃料タンクの内圧に応じて、封鎖弁の開弁量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-84956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料タンクシステムでは、封鎖弁が開弁されると、燃料タンク内の燃料蒸気はキャニスタに接続された大気通路から、直接大気へ排出されてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、燃料タンクシステムが提供される。この燃料タンクシステムは、燃料タンクと、前記燃料タンクに燃料を注入するための給油口と、前記燃料タンクと前記給油口とを連通するインレットパイプと、前記燃料タンクの燃料蒸気を吸着するためのキャニスタと、前記インレットパイプと前記燃料タンクとを連通し、前記燃料蒸気を前記インレットパイプに導く循環通路と、前記キャニスタと連通し、前記燃料蒸気を前記キャニスタに導く蒸気通路と、前記キャニスタと大気とを連通する大気通路と、前記大気通路を開閉する第1開閉弁と、前記キャニスタと内燃機関とを連通するパージ通路と、前記パージ通路を開閉する第2開閉弁と、を備える。この形態によれば、燃料タンクの燃料蒸気は、キャニスタと連通する蒸気通路により、キャニスタに導かれる。大気通路の開閉は第1開閉弁にて行われる。パージ通路の開閉は第2開閉弁で行われる。これにより、燃料タンクの内圧が高い場合には、第1開閉弁を閉弁し、第2開閉弁を開弁することにより、燃料蒸気をキャニスタで十分吸着しきれない場合であっても、燃料タンク内の燃料蒸気を、大気通路を通じて直接大気へ排出するのではなく、パージ通路へ排出することにより、燃料タンクの内圧を低下させることができる。
(2)上記形態の燃料タンクシステムにおいて、前記第1開閉弁は、前記燃料タンクの内圧が予め定められた圧力範囲である場合に閉弁状態であってもよい。この形態によれば、燃料タンクの内圧が圧力範囲である場合、第1開閉弁は閉弁状態であるので、第2開閉弁を閉弁状態にすることにより、燃料蒸気を燃料タンクシステム内に封鎖することができる。これにより、燃料蒸気の大気への排出を適切に抑制することができる。
(3)上記形態の燃料タンクシステムにおいて、さらに、前記給油口を覆うリッドを開く開指示を受け付ける受付部と、前記燃料タンクの内圧を検出する圧力センサーと、前記燃料タンクシステムの動作を制御する動作制御部と、を備え、前記動作制御部は、前記受付部が前記開指示を受け付けた場合に、前記圧力センサーの検出圧力を取得し、取得した前記検出圧力が前記圧力範囲の上限よりも低い基準圧力より高い場合に、前記リッドを閉じた状態で前記第2開閉弁を開弁することで、前記検出圧力を前記基準圧力以下に低下させた後に、前記リッドを開き、前記検出圧力が前記基準圧力以下である場合に、前記第2開閉弁の開閉状態にかかわらず前記リッドを開いてもよい。この形態によれば、燃料タンクの内圧が基準圧力よりも高い場合に、第2開閉弁を開弁することで、燃料タンクの内圧を下げることができる。燃料タンクの内圧が基準圧力以下に低下した後に、リッドが開くことで、給油口に取り付けられた給油キャップが取り外されても、給油口からの燃料蒸気の噴出を抑制することができる。
(4)上記形態の燃料タンクシステムにおいて、さらに、前記給油口に取り付けられた、キャップ正圧弁を有する給油キャップを備え、前記キャップ正圧弁は、前記燃料タンクの内圧が前記圧力範囲の上限よりも高い開圧力以上である場合に開弁状態であってもよい。この形態によれば、燃料タンクの内圧が異常に高くなる異常状態において、給油キャップのキャップ正圧弁より先に、大気通路の第1開閉弁が開弁するため、給油口からの燃料蒸気の排出を抑制することができる。
(5)上記形態の燃料タンクシステムにおいて、前記第1開閉弁は、チェック弁であってもよい。この形態によれば、第1開閉弁を電磁弁とする構成と比較して、燃料タンクシステムの制御を簡素化することができる。
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、上記形態の他に、燃料タンクシステムの制御方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】燃料タンクシステムの概略構成図である。
図2】内圧低下処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
A1.燃料タンクシステムの構成:
図1は、燃料タンクシステム100の概略構成図である。燃料タンクシステム100は、内燃機関210が搭載された車両に搭載されている。燃料タンクシステム100は、燃料タンク10と、給油口20と、キャニスタ30と、第1開閉弁としてのチェック弁40と、第2開閉弁としての電磁弁50と、給油キャップ60と、制御部90と、インレットパイプ70と、循環通路72と、蒸気通路74と、パージ通路78とを有する。燃料タンク10は、燃料を貯留する。燃料タンク10には、燃料ポンプ11と圧力センサー12とが取り付けられている。燃料ポンプ11は、燃料タンク10に貯留された燃料を内燃機関210へ送出するために設けられている。圧力センサー12は、燃料タンク10のゲージ圧で示される内圧を検出し、制御部90に検出圧力を送信する。
【0010】
給油口20は、燃料タンク10に燃料を注入するために設けられている。燃料タンク10に燃料が注入される際には、開放された給油口20に給油ガンが挿入される。燃料タンク10と給油口20とはインレットパイプ70により連通されている。インレットパイプ70には、燃料タンク10から給油口20へ向かう燃料の逆流を防ぐための逆止弁21が取り付けられている。循環通路72は、インレットパイプ70と燃料タンク10とを連通し、燃料タンク10にて生じる燃料蒸気をインレットパイプ70に導く。具体的には、循環通路72の一端は、インレットパイプ70の給油口20に近い接続点P1に接続され、循環通路72の他端は、燃料タンク10に接続されている。給油されている間、給油口20から燃料が流入するのに伴い、燃料タンク10では、燃料蒸気が多く発生する。ここで、循環通路72が設けられていることにより、発生した燃料蒸気は循環通路72を通じて給油口20付近のインレットパイプ70へ戻される。これにより、キャニスタ30へ流れる燃料蒸気の量を低減することができる。
【0011】
給油口20には、給油キャップ60が着脱可能に取り付けられる。給油キャップ60は、第1キャップ流路61と、第2キャップ流路62とを有する。第1キャップ流路61および第2キャップ流路62は、給油キャップ60が給油口20に装着された場合に、給油口20と大気とを連通する。第1キャップ流路61にはキャップ正圧弁63が設けられている。第2キャップ流路62には、キャップ負圧弁64が設けられている。キャップ正圧弁63は、燃料タンク10の内圧が、開圧力としての第1キャップ基準圧力未満である場合に閉弁状態となり、開圧力としての第1キャップ基準圧以上である場合に開弁状態となる。キャップ負圧弁64は、燃料タンク10の内圧が、第2キャップ基準圧力より高い場合に閉弁状態となり、第2キャップ基準圧力以下である場合に開弁状態となる。これにより、燃料タンク10の内圧が、過度に高くなること、および、過度に低くなることを抑制することができる。給油口20および給油キャップ60は、車両の車体に設けられたリッド80に覆われている。リッド80は、図示しない車体に開閉可能に取り付けられている。リッド80には、リッド80を開閉するための開閉部81が接続されている。開閉部81は、リッド80と係合する図示しない係合部を有する。係合部がリッド80と係合することにより、リッド80の閉状態が維持される。開閉部81は、制御部90からリッド80の開放指示を受信すると、リッド80と係合部との係合を解除することでリッド80を開く。
【0012】
キャニスタ30は、燃料タンク10の燃料蒸気を吸着する。キャニスタ30は、筐体31と、第1多孔質膜32と、第2多孔質膜33と、隔壁34と、第1室35と、第2室36とを有する。第1多孔質膜32および第2多孔質膜33は、筐体31の内側に、互いに対向して設けられている。筐体31と、第1多孔質膜32と、第2多孔質膜33とにより区画された内部空間は、隔壁34により、さらに第1室35と、第2室36とに区画されている。第2室36は、第1室35よりも小さい。第1室35および第2室36には、燃料蒸気を吸着する図示しない活性炭が収納されている。蒸気通路74は、キャニスタ30と連通し、燃料タンク10の燃料蒸気をキャニスタ30に導く。本実施形態では、蒸気通路74は、循環通路72とキャニスタ30とを連通する。具体的には、蒸気通路74の一端は、循環通路72の分岐点P2に接続され、蒸気通路74の他端は、キャニスタ30の第2室36と連通するように、キャニスタ30に接続されている。つまり、燃料タンク10とキャニスタ30とは循環通路72および蒸気通路74を通じて連通している。そして、燃料蒸気は、循環通路72および蒸気通路74を通じて、キャニスタ30に導かれる。なお、他の実施形態として、蒸気通路74は、一端が燃料タンク10に接続され、他端がキャニスタ30に接続される構成としてもよい。つまり、燃料タンク10とキャニスタ30とが蒸気通路74を通じて連通する構成としてもよい。この構成の場合には、燃料蒸気は、蒸気通路74を通じて、キャニスタ30に導かれる。
【0013】
キャニスタ30と大気とは、大気通路76により連通している。具体的には、大気通路76は、第1大気通路76aと、第2大気通路76bと、第3大気通路76cとを有する。第1大気通路76aと、第2大気通路76bとは、並列に設けられている。そして、第1大気通路76aおよび第2大気通路76bの各々は、大気通路76に設けられた合流点P3にて、第3大気通路76cと合流する。具体的には、第1大気通路76aは、一端が第3大気通路76cに接続され、他端がキャニスタ30の第1室35と連通するように、キャニスタ30に接続されている。第2大気通路76bは、一端が第3大気通路76cに接続され、他端がキャニスタ30の第2室36と連通するように、キャニスタ30に接続されている。第3大気通路76cの一端は、第1大気通路76aおよび第2大気通路76bと接続され、他端は大気と連通している。第3大気通路76cにはエアーフィルタ77が設けられている。
【0014】
大気通路76には、大気通路76を開閉する第1開閉弁としてのチェック弁40が設けられている。チェック弁40は、大気正圧弁41と、大気負圧弁42とを有する。大気正圧弁41は、第1大気通路76aに設けられている。大気負圧弁42は、第2大気通路76bに設けられている。上記したように、燃料タンク10とキャニスタ30とは循環通路72および蒸気通路74を通じて連通しているため、燃料タンク10の内圧とキャニスタ30の内圧とは略同等となる。よって、チェック弁40は、燃料タンク10の内圧に応じて開弁状態と閉弁状態とのいずれかの状態となる。具体的には、大気正圧弁41は、燃料タンク10の内圧が、第1基準圧力未満である場合に閉弁状態となり、第1基準圧力以上である場合に開弁状態となる。大気負圧弁42は、燃料タンク10の内圧が、第2基準圧力より高い場合に閉弁状態となり、第2基準圧力以下である場合に開弁状態となる。第1基準圧力は、第2基準圧力よりも高い。つまり、チェック弁40は、燃料タンク10の内圧が予め定められた圧力範囲としての、第2基準圧力より大きく第1基準圧力未満の圧力範囲である場合に閉弁状態となる。第1基準圧力は、圧力範囲の上限である。第2基準圧力は、圧力範囲の下限である。本実施形態において、第1基準圧力は、20kPa程度である。第2基準圧力は、-5kPa程度である。これにより、燃料タンク10の内圧が、第2基準圧力より大きく、第1基準圧力未満である場合に、大気通路76における流体の流れは、チェック弁40が閉弁状態であることにより遮断される。これにより、後に詳述するように、内燃機関210の運転停止中における、燃料蒸気の大気への排出を抑制することができる。燃料タンク10の内圧が、第2基準圧力以下である場合、大気通路76における流体の流れは大気負圧弁42が開弁状態であることにより許容される。これにより、後に詳述するように、大気通路76を通じてキャニスタ30に空気を送り込むパージ動作を行うことができる。燃料タンク10の内圧が、第1基準圧力以上である場合、大気通路76における流体の流れは大気正圧弁41が開弁することにより許容される。これにより、燃料タンク10の内圧が異常に高くなった場合に、燃料タンク10の内圧を下げることができる。なお、第1基準圧力は、第1キャップ基準圧力より低い。これにより、燃料タンク10の内圧が異常に高くなった場合、キャップ正圧弁63が開弁するより先に、大気正圧弁41が開弁する。よって、給油口20近くにユーザーがいる場合における、そのユーザー付近への燃料蒸気の排出を抑制することができる。
【0015】
キャニスタ30と、内燃機関210とは、パージ通路78を通じて連通されている。具体的には、パージ通路78の一端は、キャニスタ30の第1室35と連通するように、キャニスタ30に接続されている。そして、パージ通路78の他端は、内燃機関210の燃焼室に通じるインテークマニホールド200に接続されている。パージ通路78には、パージ通路78を開閉する第2開閉弁としての電磁弁50が設けられている。
【0016】
制御部90は、ECU(engine control unit)などにより実現される。制御部90には機能部として、受付部91と動作制御部92とを有する。受付部91および動作制御部92は、予め記憶されたプログラムが制御部90によって実行されることにより実現される。受付部91は、リッド80を開ける指示をユーザーから受け付けるためのリッドオープナーがユーザーにより操作された場合に、操作された事を示す開指示の信号を受信する。リッドオープナーは車両に設けられている。動作制御部92は、燃料タンクシステム100の各要素、具体的には、燃料ポンプ11、開閉部81、および電磁弁50などを制御する。また、動作制御部92は、圧力センサー12が検出する検出圧力を受信する。
【0017】
A2.燃料タンクシステムにおける燃料蒸気の流れ:
燃料タンクシステム100における燃料蒸気の流れについて説明する。内燃機関210が運転停止中である場合、典型的には、車両が駐車している場合、動作制御部92は電磁弁50を閉弁させる。燃料タンク10の内圧が、第2基準圧力より大きく、第1基準圧力未満である場合、チェック弁40と、キャップ正圧弁63と、キャップ負圧弁64とは閉弁状態である。このため、燃料蒸気は、燃料タンクシステム100内に封鎖され、燃料蒸気の大気への排出が抑制される。ここで、燃料タンクシステム100内とは、具体的には、燃料タンク10と、キャニスタ30と、インレットパイプ70と、循環通路72と、蒸気通路74と、大気正圧弁41とキャニスタ30との間の第1大気通路76aと、大気負圧弁42とキャニスタ30との間の第2大気通路76bと、電磁弁50とキャニスタ30との間のパージ通路78とを指す。また、発生する燃料蒸気は、キャニスタ30の活性炭に吸着される。吸着された燃料蒸気は、内燃機関210の運転が再開された後、典型的には、車両の走行中に、パージ動作により内燃機関210へ送出され、燃焼される。具体的には、パージ動作において、動作制御部92は、電磁弁50を開弁させる。内燃機関210の運転における吸気工程にて、インテークマニホールド200が負圧になるのに伴い、キャニスタ30の内圧は、第2基準圧力より小さくなり、大気負圧弁42は開弁する。そして、大気通路76を通じて流入した空気は、キャニスタ30を通り、インテークマニホールド200へ流れ込む。空気がキャニスタ30を通過するのに伴い、キャニスタ30に吸着されていた燃料蒸気は、脱離される。脱離された燃料蒸気は、空気と共にインテークマニホールド200を通じて内燃機関210の燃料室に送り込まれ、燃焼される。
【0018】
A3.内圧低下処理:
燃料タンク10の内圧が高い状態で、給油のため、給油キャップ60が取り外されると、給油口20から燃料蒸気が噴出する場合がある。燃料蒸気の大気への排出は、大気汚染の観点から抑制することが好ましい。詳述すると、燃料タンク10の内圧が異常に高くなった場合、チェック弁40が開弁することにより、燃料タンク10の内圧は第1基準圧力未満となるように調整される。しかし、燃料タンク10の内圧が第1基準圧力未満であっても、数kPaよりも高い場合には、燃料蒸気が開放された給油口20から噴出する場合がある。そこで、動作制御部92により、図2に示す燃料タンク10の内圧低下処理が行われる。これにより、給油口20からの燃料蒸気の噴出を抑制することができる。図2に示す内圧低下処理のフローチャートを用いて、内圧低下処理について説明する。
【0019】
動作制御部92は、例えば、数msec毎に、内圧低下処理を行う。内圧低下処理が開始されると、まず、動作制御部92は、受付部91がリッド80の開指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS10)。動作制御部92は、受付部91がリッド80の開指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS10:NO)、本処理ルーチンを終了する。受付部91がリッド80の開指示を受け付けたと判断した場合(ステップS10:YES)、動作制御部92は、圧力センサー12の検出圧力を取得し、取得した検出圧力が、基準圧力より高いか否かを判断する(ステップS20)。ここで、基準圧力は、第1基準圧力よりも低い。また、基準圧力は、燃料タンク10の内圧が基準圧力以下の場合に、給油口20からの燃料蒸気の噴出が抑制される程度の圧力である。本実施形態では、基準圧力は、2kPaに設定されている。
【0020】
動作制御部92によって検出圧力が基準圧力より高くない、すなわち、検出圧力が基準圧力以下であると判断された場合(ステップS20:NO)、給油口20からの燃料蒸気の噴出が生じない程度に燃料タンク10の内圧は低いため、動作制御部92は、電磁弁50の開閉状態に拘わらず、開閉部81に開放指示を送信してリッド80を開けさせ(ステップS50)、本処理ルーチンを終了する。なお、本実施形態では、ステップS50では、電磁弁50は閉弁状態に維持される。動作制御部92によって検出圧力が基準圧力より高いと判断された場合(ステップS20:YES)、動作制御部92は、リッド80を閉じた状態、すなわちリッド80と係合部との係合を維持した状態で、電磁弁50を開弁させる(ステップS30)。具体的には、動作制御部92は、開閉部81に開放指示を送信せずに、電磁弁50を開弁させる。これにより、燃料タンク10の内圧よりも圧力の低いインテークマニホールド200に、燃料タンクシステム100内の流体は、パージ通路78を通じて排出される。よって、燃料タンクシステム100内の流体にキャニスタ30で十分吸着しきれない量の燃料蒸気が含まれる場合であっても、燃料蒸気を直接大気へ排出することなく、燃料タンク10の内圧を低下させることができる。
【0021】
動作制御部92は、ステップS20と同様に、検出圧力が基準圧力より高いか否かを判断する(ステップS40)。動作制御部92によって、検出圧力が基準圧力より高いと判断された場合(ステップS40:YES)、動作制御部92は、燃料タンク10の内圧が基準圧力以下であると判断するまで、予め定められた時間間隔にてステップS40を繰り返し実行する。動作制御部92によって、検出圧力が基準圧力より高くない、すなわち、基準圧力以下であると判断された場合(ステップS40:NO)、給油口20からの燃料蒸気の噴出が生じない程度に燃料タンク10の内圧が低下したため、動作制御部92は、開閉部81に開放指示を送信してリッド80を開けさせ(ステップS50)、本処理ルーチンを終了する。リッド80が開放されると、露出した給油キャップ60はユーザーにより取り外される。ここで、燃料タンク10の内圧は、燃料蒸気が噴出しない程度に低いため、給油キャップ60が取り外されても、給油口20からの燃料蒸気の噴出は抑制される。
【0022】
以上、説明した実施形態によれば、燃料タンクシステム100は、大気通路76に設けられたチェック弁40と、パージ通路78に設けられた電磁弁50と備える。また、燃料タンク10とキャニスタ30とは、循環通路72および蒸気通路74により連通されている。これにより、燃料タンク10の内圧が高い場合には、チェック弁40を閉弁し、電磁弁50を開弁することにより、燃料蒸気をキャニスタ30で十分吸着しきれない場合であっても、燃料タンク10内の燃料蒸気を、大気通路76を通じて直接大気へ排出するのではなく、パージ通路78へ排出することにより、燃料タンク10の内圧を低下させることができる。また、チェック弁40は、燃料タンク10の内圧が第2基準圧力より大きく第1基準圧力未満の圧力範囲である場合に閉弁状態となる。これにより、燃料タンク10の内圧が圧力範囲である場合、チェック弁40は閉弁状態であるので、電磁弁50を閉弁状態にすることにより、燃料蒸気を燃料タンクシステム100内に封鎖することができる。これにより、燃料蒸気の大気への排出を適切に抑制することができる。
【0023】
また、動作制御部92は、内圧低下処理において、燃料タンク10の内圧を示す検出圧力が基準圧力より高い場合に、リッド80を閉じた状態で電磁弁50を開弁させる。そして、動作制御部92は、検出圧力が基準圧力以下に低下した後に、リッド80を開けさせる。これにより、燃料タンク10の内圧が基準圧力よりも高い場合に、電磁弁50を開弁することで、燃料タンク10の内圧を下げることができる。燃料タンク10の内圧が基準圧力以下に低下した後に、リッド80が開けられることで、給油口20に取り付けられた給油キャップ60が取り外された場合、給油口20からの燃料蒸気の噴出を抑制することができる。また、給油キャップ60が備えるキャップ正圧弁63は、第1基準圧力よりも高い第1キャップ基準圧力以上である場合に開弁する。燃料タンク10の内圧が異常に高くなる異常状態において、給油キャップ60のキャップ正圧弁63より先に、チェック弁40が開弁するため、給油口20からの燃料蒸気の噴出を抑制することができる。また、大気通路76を開閉する弁として、動作制御部92の制御によらず開閉するチェック弁40が用いられている。これにより、大気通路76を開閉する弁として電磁弁とする構成と比較して、燃料タンクシステム100の制御を簡素化することができる。
【0024】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、大気通路76を開閉する第1開閉弁としてチェック弁40が用いられている。これに対して、大気通路76を開閉する第1開閉弁として、電磁弁が用いられてもよい。弁の種類に拘わらず、大気通路76に第1開閉弁が設けられ、パージ通路78に第2開閉弁が設けられていることにより、燃料タンクシステム100内の流体の排出を、大気通路76を通じてだけでなく、パージ通路78を通じても行うことができる。そして、燃料タンク10の内圧が高い場合には、第1開閉弁を閉弁し、第2開閉弁としての電磁弁50を開弁することにより、燃料タンク10内の流体を、大気通路76を通じて大気へ直接排出するのではなく、パージ通路78へ排出することにより、燃料タンク10の内圧を低下させることができる。さらに、第1開閉弁として、電磁弁が用いられる場合には、動作制御部92により、燃料タンク10の内圧を示す検出圧力が予め定められた圧力範囲である場合に電磁弁は閉弁状態に制御され、圧力範囲でない場合に開弁状態に制御される構成とするとよい。これにより、燃料タンク10の内圧が過度に高い、または過度に低い異常状態でない場合には、燃料蒸気を燃料タンク10内に封鎖することができ、燃料蒸気の大気への排出を適切に抑制することができる。なお、第1開閉弁として電磁弁が用いられている場合には、電磁弁が故障しても、燃料タンク10の内圧が異常に高く、または低くなる異常状態を回避するために、電磁弁と並列にチェック弁を設ける構成とするとよい。
【0025】
(B2)上記実施形態では、第2開閉弁として電磁弁50が用いられている。第2開閉弁の種類は、電磁弁に限られず、動作制御部92の制御により開閉する、例えば電動弁でもよい。
【0026】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10…燃料タンク、11…燃料ポンプ、12…圧力センサー、20…給油口、21…逆止弁、30…キャニスタ、31…筐体、32…第1多孔質膜、33…第2多孔質膜、34…隔壁、35…第1室、36…第2室、40…チェック弁、41…大気正圧弁、42…大気負圧弁、50…電磁弁、60…給油キャップ、61…第1キャップ流路、62…第2キャップ流路、63…キャップ正圧弁、64…キャップ負圧弁、70…インレットパイプ、72…循環通路、74…蒸気通路、76…大気通路、76a…第1大気通路、76b…第2大気通路、76c…第3大気通路、77…エアーフィルタ、78…パージ通路、80…リッド、81…開閉部、90…制御部、91…受付部、92…動作制御部、100…燃料タンクシステム、200…インテークマニホールド、210…内燃機関、P1…接続点、P2…分岐点、P3…合流点
図1
図2