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特開2022-178097ロボットアームの制御装置および生産システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178097
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ロボットアームの制御装置および生産システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084640
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】池本 慎太郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS15
3C707JS02
3C707KS03
3C707KS36
3C707LT08
3C707LV02
3C707MT02
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑える。
【解決手段】ワーク選択部13は、複数のワーク11の中からピックアンドプレース作業の対象となる対象ワークを選択する。位置選択部14は、複数の投入位置P1~P9の中から対象ワークを投入する対象投入位置を選択する。動作制御部15は、選択された対象ワークを所定の取得位置にて取るとともに、その取った対象ワークを選択された対象投入位置に配置するようにロボットアーム3の動作を制御する。ワーク選択部13は、複数のワーク11の中から、複数のワーク11の現在の位置である現在ワーク位置が、ロボットアーム3の先端の現在の位置である現在先端位置よりコンベア2の流れ方向において上流側の位置となるワーク11を選択対象としたうえで、それら選択対象のワーク11の中から、現在先端位置から現在ワーク位置までの距離が最も短くなるワーク11を対象ワークとして選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置により所定の流れ方向に向けて搬送される複数のワークのうちいずれかを取り、その取ったワークを予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行うロボットアームを制御するロボットアームの制御装置であって、
前記複数のワークの中から前記ピックアンドプレース作業の対象となるワークである対象ワークを選択するワーク選択部と、
前記複数の投入位置の中から前記対象ワークを投入する投入位置である対象投入位置を選択する位置選択部と、
前記ワーク選択部により選択された前記対象ワークを所定の取得位置にて取るとともに、前記対象ワークを前記位置選択部により選択された前記対象投入位置に配置するように前記ロボットアームの動作を制御する動作制御部と、
を備え、
前記ワーク選択部は、
前記複数のワークの中から、前記複数のワークの現在の位置である現在ワーク位置が、前記ロボットアームの先端の現在の位置である現在先端位置より前記流れ方向において上流側の位置となるワークを選択対象とし、
前記選択対象のワークの中から、前記現在先端位置から前記現在ワーク位置までの距離が最も短くなるワークを前記対象ワークとして選択するロボットアームの制御装置。
【請求項2】
前記位置選択部は、前記複数の投入位置の中から、前記ロボットアームにより前記ワークを取る時点における前記対象ワークの位置である未来ワーク位置からの距離が最も短くなる投入位置を前記対象投入位置として選択する請求項1に記載のロボットアームの制御装置。
【請求項3】
所定の流れ方向に向けて複数のワークを搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される複数のワークのうちいずれかを取り、その取ったワークを予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行う複数のロボットアームと、
請求項1または2に記載のロボットアームの制御装置と、
を備えた生産システムであって、
前記複数のロボットアームは、前記流れ方向に沿って前記流れ方向の上流側から下流側へと並ぶように設けられており、
前記ロボットアームの制御装置は、前記複数のロボットアームのうち、前記流れ方向において最も下流側に設けられるロボットアーム以外の所定のロボットアームを制御するようになっている生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアンドプレース作業を行うロボットアームを制御するロボットアームの制御装置および生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、複数のワークをコンベアなどの搬送装置により搬送することで工場内の生産ラインに流通させ、それら流通されるワークに対してロボットアームが所定の作業を行うといった生産システムがある。このようなロボットアームによる作業の一つとして、搬送されるワークを取って所定の投入位置に投入するといったピックアンドプレース作業が挙げられる。この場合、ロボットアームは、搬送装置により所定の流れ方向に向けて搬送される複数のワークのうちいずれかを選択して取り、その取ったワークを投入トレー内の所定の投入位置に投入することになる。
【0003】
このようなピックアンドプレース作業が行われる生産システムでは、複数のロボットアームがコンベアの流れ方向に沿うように流れ方向の上流側から下流側へと並ぶように配置されており、それら複数のロボットアームのそれぞれが同様の作業を行うことになる。従来、このような生産システムの各ロボットアームは、ワークの取りこぼしの発生を確実に防止することを最優先として、いずれも複数のワークのうち流れ方向において最も下流側に存在するワークを選択して取るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-125989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような従来のワークの選択基準によれば、ワークの取りこぼしの発生については確実に防止することができる。しかしながら、従来のワークの選択基準では、作業対象として選択されたワークの位置、そのワークを投入する投入トレー内の投入位置などによっては、ロボットアームの移動距離が非常に長いものとなって作業に要する時間が長引いてしまい、その結果、ロボットアームによる作業時間が想定している設備のサイクルタイムに収まらなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができるロボットアームの制御装置および生産システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のロボットアームの制御装置は、搬送装置により所定の流れ方向に向けて搬送される複数のワークのうちいずれかを取り、その取ったワークを予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行うロボットアームを制御するものであって、ワーク選択部、位置選択部および動作制御部を備える。ワーク選択部は、複数のワークの中からピックアンドプレース作業の対象となるワークである対象ワークを選択する。位置選択部は、複数の投入位置の中から対象ワークを投入する投入位置である対象投入位置を選択する。
【0008】
動作制御部は、ワーク選択部により選択された対象ワークを所定の取得位置にて取るとともに、その対象ワークを位置選択部により選択された対象投入位置に配置するようにロボットアームの動作を制御する。上記構成において、ワーク選択部は、次のような選択基準で対象ワークを選択するようになっている。すなわち、ワーク選択部は、複数のワークの中から、複数のワークの現在の位置である現在ワーク位置が、ロボットアームの先端の現在の位置である現在先端位置より流れ方向において上流側の位置となるワークを選択対象とする。そして、ワーク選択部は、選択対象のワークの中から、現在先端位置から現在ワーク位置までの距離が最も短くなるワークを対象ワークとして選択する。
【0009】
ピックアンドプレース作業に要する時間は、ロボットアームの姿勢にも依存するが、主に、現在先端位置から対象ワークを取る時点における対象ワークの位置までのロボットアームの移動距離と、対象ワークを取る時点における対象ワークの位置から対象投入位置までのロボットアームの移動距離と、に応じた時間となる。以下、これら移動距離のうち、前者を第1移動距離と称するとともに、後者を第2移動距離と称することとする。上記構成における対象ワークの選択基準では、選択対象のワークの中から第1移動距離が最も短くなるようなワークを対象ワークとして選択するようになっており、これにより、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができる。
【0010】
また、この場合、ワーク選択部は、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において上流側の位置となるワークを選択対象としており、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において下流側の位置であるワークについては選択の対象外としている。このようにする理由は、次の通りである。すなわち、ワークは、搬送装置により流れ方向に向けて搬送されているため、その位置は刻一刻と流れ方向に向けて移動することになる。そのため、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において下流側の位置であるワークが対象ワークとして選択された場合、ロボットアームが現在先端位置から対象ワークに向けて移動する間、その対象ワークはロボットアームから確実に離れていく方向へ移動し続けることになり、第1移動距離がむやみに長くなったり、最悪の場合にはロボットアームが対象ワークの取得に失敗したりする可能性がある。
【0011】
これに対し、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において上流側の位置であるワークが対象ワークとして選択された場合、ロボットアームが現在先端位置から対象ワークに向けて移動する間、その対象ワークは大半の場合にはロボットアームに近づいていく方向へ移動することになり、ロボットアームが対象ワークの取得に失敗する可能性が極めて低くなり、また、第1移動距離が短く抑えられることになる。したがって、上記構成のように、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において上流側の位置であるワークを選択対象とすれば、ロボットアームが対象ワークの取得に失敗する可能性を低く抑えつつ、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載のロボットアームの制御装置において、位置選択部は、複数の投入位置の中から、ロボットアームによりワークを取る時点における対象ワークの位置である未来ワーク位置からの距離が最も短くなる投入位置を対象投入位置として選択するようになっている。つまり、この場合、位置選択部は、複数の投入位置の中から第2移動距離が最も短くなるような投入位置を対象と入位置として選択するようになっている。したがって、上記構成によれば、ピックアンドプレース作業に要する時間を主に決定する第1移動距離および第2移動距離の双方を短く抑えることが可能となり、その結果、ピックアンドプレース作業に要する時間を一層短く抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の生産システムは、所定の流れ方向に向けて複数のワークを搬送する搬送装置と、搬送装置により搬送される複数のワークのうちいずれかを取り、その取ったワークを予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行う複数のロボットアームと、請求項1または2に記載のロボットアームの制御装置と、を備えたものである。この場合、複数のロボットアームは、流れ方向に沿って流れ方向の上流側から下流側へと並ぶように設けられている。そして、上記したロボットアームの制御装置は、複数のロボットアームのうち、流れ方向において最も下流側に設けられるロボットアーム以外の所定のロボットアームを制御するようになっている。
【0014】
請求項1または2に記載のロボットアームの制御装置における対象ワークの選択基準によれば、ピックアンドプレース作業に要する時間を短くすることを優先したものであることから、ワークの取りこぼしが発生する可能性がある。ただし、上記構成の生産システムによれば、このような取りこぼしが発生する可能性があるロボットアームは、流れ方向において最も下流側に設けられるものではないことから、その下流側には少なくとも1つのロボットアームが存在する。したがって、仮に請求項1または2に記載のロボットアームの制御装置により制御されるロボットアームにおいて取りこぼしが発生した場合でも、それより下流側に設けられたロボットアームが、その取りこぼしをカバーすることが可能となる。したがって、上記構成によれば、生産システム全体として、ワークの取りこぼしの発生を防止しつつ、ピックアンドプレース作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る生産システムの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その1
図3】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その2
図4】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その3
図5】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その4
図6】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その5
図7】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例を説明するための図その6
図8】第1実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な処理内容の一例を模式的に示す図
図9】第2実施形態に係るピックアンドプレース作業に関する具体的な処理内容の一例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図8を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の生産システム1は、ベルトコンベア装置であるコンベア2、ロボットアーム3、4、5、コントローラ6、7、8、視覚装置9、エンコーダ10などを備えている。コンベア2は、所定の流れ方向に向けて複数のワーク11を搬送するものであり、搬送装置として機能する。本明細書では、図1において白抜きの太い矢印で表すコンベア2の流れ方向A1に沿う方向、つまり図1における左右方向をY軸とし、そのY軸方向および鉛直方向と直交する方向、つまり図1における上下方向をX軸とする。また、本明細書では、Y軸については、図1における右方向をプラス方向とし、X軸については、図1における下方向がプラス方向とする。
【0018】
生産システム1では、複数のワーク11をコンベア2により搬送することで工場内の生産ラインに流通させるようになっている。生産システム1には、図1に示すような工程、つまりワーク11がコンベア2により搬送されてくると、そのワーク11をロボットアーム3、4、5で取って矩形容器状の投入トレー12に整列状態で投入する工程、つまりコンベア2から投入トレー12への移し変え工程が含まれる。
【0019】
コンベア2は、基本的には、停止することなく動作し続けるようになっている。ワーク11は、例えばお菓子などの食品であり、本工程よりも前の前工程において包装が施され、個包装された状態で本工程へと搬送される。ワーク11は、コンベア2により所定の速度で連続して搬送される。なお、図1などでは、一部のワークにだけ符号を付し、他のワークの符号は省略している。ロボットアーム3、4、5は、例えば4軸のアームを有する水平多関節型ロボットとして構成されている。
【0020】
ロボットアーム3、4、5は、コンベア2により搬送される複数のワーク11のうちいずれかを取り、その取ったワーク11を予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行う。具体的には、ロボットアーム3、4、5は、アームを旋回させて先端をコンベア2の上方に位置させた後、そのアーム先端に取り付けられた図示しないハンドを下降させ、ハンドでワーク11を把持または吸着して引き上げる。ロボットアーム3、4、5は、アームを旋回させて先端を投入トレー12の上方に位置させた後、ハンドを下降させ、そのハンドからワーク11を離して投入トレー12内の所定の投入位置に配置する。この場合、複数の投入位置としては、投入トレー12内の9つの投入位置P1~P9となっている。
【0021】
ロボットアーム3、4、5は、コンベア2の流れ方向A1、つまりY軸に沿って、流れ方向A1の上流側から下流側へと並ぶように設けられている。流れ方向A1において最も上流側に設けられるロボットアーム3は、コントローラ6により制御される。また、流れ方向A1において2番目に上流側に設けられるロボットアーム4は、コントローラ7により制御される。流れ方向A1において最も下流側に設けられるロボットアーム5は、コントローラ8により制御される。このように、コントローラ6、7、8は、ロボットアーム3、4、5をそれぞれ制御するものであり、ロボットアームの制御装置として機能する。
【0022】
ロボットアーム3によるワーク11の投入先となる2つの投入トレー12は、ロボットアーム3の近傍において、コンベア2を挟んで互いに対向するようにコンベア2の両側に設けられている。ロボットアーム4によるワーク11の投入先となる2つの投入トレー12は、ロボットアーム4の近傍において、コンベア2を挟んで互いに対向するようにコンベア2の両側に設けられている。ロボットアーム5によるワーク11の投入先となる2つの投入トレー12は、ロボットアーム5の近傍において、コンベア2を挟んで互いに対向するようにコンベア2の両側に設けられている。
【0023】
生産システム1では、次のような構成により、ロボットアーム3、4、5がワーク11に追従し、コンベア2を停止させることなくピックアンドプレース作業を可能とするコンベアトラッキングの機能が実現されている。すなわち、カメラなどからなる視覚装置9は、ロボットアーム3、4、5よりも流れ方向A1における上流側の所定の撮像範囲において各ワーク11の画像を撮像する。
【0024】
図示しない制御装置またはコントローラ6、7、8は、視覚装置9により撮像された画像に対して所定の画像認識処理を実施することにより、コンベア2上の各ワーク11の位置、姿勢などを取得する。また、コンベア2に取り付けられたエンコーダ10は、コンベア2の移動距離、移動速度などに応じたパルス信号を出力する。上記制御装置またはコントローラ6、7、8は、そのパルス信号に基づいて撮像範囲において位置、姿勢などが取得された各ワーク11がどのように流れてくるかを逐次計算してロボットアーム3、4、5をワーク11に追従させるようになっている。
【0025】
3つのロボットアーム3、4、5のうち、流れ方向A1において最も下流側に設けられるロボットアーム5を制御するコントローラ8は、詳細な説明は省略するが、従来のコントローラと同様の構成および機能を有している。そのため、ロボットアーム5は、ワーク11の取りこぼしの発生を確実に防止することを最優先として、複数のワーク11のうち流れ方向A1において最も下流側に存在するワーク11を選択して取るようになっている。
【0026】
3つのロボットアーム3、4、5のうち、流れ方向A1において最も下流側に設けられるロボットアーム5以外のロボットアーム3、4を制御するコントローラ6、7は、いずれも、次のような特有の構成および機能を有している。以下の各説明では、コントローラ6、7の具体的な構成および機能について、コントローラ6を例にして説明するが、コントローラ7の具体的な構成および機能についても同様である。コントローラ6は、図示しないCPU、ROMおよびRAMなどで構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボットアーム3を制御している。
【0027】
具体的には、コントローラ6は、インバータ回路などから構成された駆動部を備えており、ロボットアーム3の各軸を駆動するモータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。コントローラ6は、予め設定された動作プログラムを実行することにより、ロボットアーム3の各軸が予め定められた所定の動作を自動的に実行するようにロボットアーム3を制御する。
【0028】
コントローラ6は、ワーク選択部13、位置選択部14および動作制御部15などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、コントローラ6が備えるCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0029】
ワーク選択部13は、複数のワーク11の中からピックアンドプレース作業の対象となるワーク11である対象ワークを選択する。具体的には、ワーク選択部13は、ワーク11の現在の位置である現在ワーク位置が、ロボットアーム3の先端、つまりハンドの現在の位置である現在先端位置より流れ方向A1において上流側の位置となるワーク11を選択対象としたうえで、それら選択対象のワーク11の中から、現在先端位置から現在ワーク位置までの距離が最も短くなるワーク11を対象ワークとして選択する。
【0030】
位置選択部14は、複数の投入位置P1~P9の中から対象ワークを投入する投入位置である対象投入位置を選択する。具体的には、位置選択部14は、複数の投入位置P1~P9の中から、ロボットアーム3によりワーク11を取る時点における対象ワークの推定位置である未来ワーク位置からの距離が最も短くなる投入位置を対象投入位置として選択する。動作制御部15は、ワーク選択部13により選択された対象ワークを所定の取得位置にて取るとともに、その取った対象ワークを位置選択部14により選択された対象投入位置に配置するようにロボットアーム3の動作を制御する。
【0031】
次に、上記構成のロボットアーム3を制御するコントローラ6によるピックアンドプレース作業に関する具体的な動作の一例について図2図7を参照して説明する。なお、図2図7では、ロボットアーム3の図示は省略し、その先端の位置だけを点線の丸印で表している。ここでは、ロボットアーム3が前回の作業によりワーク11を投入位置P9に配置した場合を想定している。この場合、ロボットアーム3の先端は、投入位置P9に位置しているため、投入位置P9が最初の現在先端位置となる。
【0032】
また、この場合、トラッキング範囲は図2において破線の四角で囲われた範囲T1となっており、ロボットアーム3は、範囲T1内に存在する7つのワーク11を追従の対象としている。以下の説明では、追従の対象となる7つのワーク11について、それらの末尾に小文字のアルファベットa~gを付して区別することとする。なお、7つのワーク11について区別する必要がない場合には末尾のアルファベットを省略してワーク11と総称することとする。なお、図2に示すワーク11の位置は、いずれも現在ワーク位置を表している。
【0033】
ワーク選択部13は、図2に示すように、現在先端位置を中心とするとともに-X軸方向および+Y軸方向に向けて延びる90度の扇形の探索範囲である第1探索範囲R1を形成する。ワーク選択部13は、このような90度の扇形の第1探索範囲R1を徐々に拡大してゆき、第1探索範囲R1において最初に検出されたワーク11を対象ワークとして選択する。本実施形態では、ワーク選択部13は、ワーク11の中心位置が第1探索範囲R1内に存在する場合、そのワーク11が第1探索範囲R1内に存在すると判断するようになっている。つまり、この場合、ワーク選択部13は、各ワーク11の存在を点で判断するようになっているため、最初に検出されるワーク11が複数現れる可能性は極めて低くなる。この場合、ワーク選択部13は、第1探索範囲R1においてワーク11cを最初に検出したため、そのワーク11cを対象ワークとして選択する。
【0034】
続いて、コントローラ6は、ロボットアーム3により対象ワークであるワーク11cを取る時点におけるワーク11cの推定位置である未来ワーク位置を求める。このような未来ワーク位置の計算は、前述したコンベアトラッキング機能により実現することができる。なお、図3では、各ワーク11の未来ワーク位置を実線で表すとともに、ワーク11cの現在ワーク位置を破線で表している。図3に示すように、ワーク11cの未来ワーク位置は、その現在ワーク位置から、ロボットアーム3がワーク11cを取るために移動する時間分だけ-Y軸方向に移動した位置となっている。
【0035】
位置選択部14は、図3に示すように、ワーク11cの未来ワーク位置を中心とするとともに、+X軸方向、つまりワーク11cの投入先となる投入トレー12側に向けて延びる180度の扇形の探索範囲である第2探索範囲R2を形成する。この場合、コンベア2の+X軸方向側に設けられた投入トレー12内の投入位置P1~P9を探索対象としているため、+X軸方向に向けて延びる180度の扇形の第2探索範囲R2が形成されているが、図示が省略されているコンベア2の-X軸方向側に設けられた投入トレー12内の投入位置P1~P9を探索対象とする場合、位置選択部14は、-X軸方向に向けて延びる180度の扇形の第2探索範囲R2を形成すればよい。
【0036】
位置選択部14は、このような180度の扇形の第2探索範囲R2を徐々に拡大してゆき、第2探索範囲R2において最初に検出された投入位置を対象投入位置として選択する。本実施形態では、位置選択部14は、投入位置の中心位置が第2探索範囲R2内に存在する場合、その投入位置が第2探索範囲R2内に存在すると判断するようになっている。つまり、この場合、位置選択部14は、各投入位置の存在を点で判断するようになっているため、最初に検出される投入位置が複数現れる可能性は極めて低くなる。この場合、位置選択部14は、第2探索範囲R2において投入位置P3を最初に検出したため、その投入位置P3を対象投入位置として選択する。
【0037】
続いて、動作制御部15は、ワーク選択部13により対象ワークとして選択されたワーク11cを取るとともに、そのワーク11cを位置選択部14により対象投入位置として選択された投入位置P3に配置するようにロボットアーム3の動作を制御する。この際のロボットアーム3の動作軌跡は、図4に実線の矢印で示すように、現在先端位置である投入位置P9からワーク11cの未来ワーク位置を経由して対象投入位置である投入位置P3へと至る軌跡となる。なお、図4に示すワーク11の位置は、いずれも未来ワーク位置を表している。これにより、ワーク11cに対するピックアンドプレース作業が完了となり、その後、次のワーク11に対するピックアンドプレース作業が開始される。
【0038】
このとき、図5に示すように、ロボットアーム3の先端は、投入位置P3に位置しているため、投入位置P3が現在先端位置となる。なお、図5に示すワーク11の位置は、いずれも現在ワーク位置を表している。図5に示すように、ワーク選択部13は、前回の作業時と同様、現在先端位置を中心とする90度の扇形の第1探索範囲R1を形成し、第1探索範囲R1において最初に検出されたワーク11を対象ワークとして選択する。この場合、ワーク選択部13は、第1探索範囲R1においてワーク11dを最初に検出したため、そのワーク11dを対象ワークとして選択する。
【0039】
続いて、コントローラ6は、ロボットアーム3により対象ワークであるワーク11dを取る時点におけるワーク11dの推定位置である未来ワーク位置を求める。なお、図6では、各ワーク11の未来ワーク位置を実線で表すとともに、ワーク11dの現在ワーク位置を破線で表している。図6に示すように、ワーク11dの未来ワーク位置は、その現在ワーク位置から、ロボットアーム3がワーク11dを取るために移動する時間分だけ-Y軸方向に移動した位置となっている。
【0040】
図6に示すように、位置選択部14は、前回の作業時と同様、ワーク11dの未来ワーク位置を中心とする180度の扇形の第2探索範囲R2を形成し、第2探索範囲R2において最初に検出された投入位置を対象投入位置として選択する。この場合、位置選択部14は、第2探索範囲R2において投入位置P3を最初に検出したが、その投入位置P3には既にワーク11cが配置済みである。そのため、位置選択部14は、投入位置P3を対象投入位置として選択することなく投入位置の検出を継続する。その後、位置選択部14は、第2探索範囲R2において投入位置P2を検出したため、その投入位置P2を対象投入位置として選択する。
【0041】
続いて、動作制御部15は、ワーク選択部13により対象ワークとして選択されたワーク11dを取るとともに、そのワーク11dを位置選択部14により対象投入位置として選択された投入位置P2に配置するようにロボットアーム3の動作を制御する。この際のロボットアーム3の動作軌跡は、図7に実線の矢印で示すように、現在先端位置である投入位置P3からワーク11dの未来ワーク位置を経由して対象投入位置である投入位置P2へと至る軌跡となる。なお、図7に示すワーク11の位置は、いずれも未来ワーク位置を表している。これにより、ワーク11dに対するピックアンドプレース作業が完了となり、その後、次のワーク11に対するピックアンドプレース作業が開始される。
【0042】
本実施形態では、このような作業が繰り返し実行されることにより、投入トレー12内の全ての投入位置P1~P9にワーク11が配置されるようになっている。なお、この場合、図7に示すように、ワーク11a、11b、11eは、ロボットアーム3により取られることなくトラッキング範囲より下流側に移動することになるため、ロボットアーム3による取りこぼしワークとなる。ただし、これらロボットアーム3により取りこぼされたワーク11a、11b、11eについては、下流側に設けられたロボットアーム4、5による作業で取ることが可能となる。
【0043】
この場合、2つの投入トレー12のうち、一方に対して連続してワーク11を投入するようになっているが、2つの投入トレー12の両方に対して均等にワーク11が配置されるように、2つの投入トレーに対して交互にワーク11を投入するようにしてもよい。このようにする場合であっても、上述したような具体的な動作により、同様にピックアンドプレース作業を実施することができる。
【0044】
次に、上記構成のロボットアーム3を制御するコントローラ6によるピックアンドプレース作業に関する具体的な処理内容の一例について図8を参照して説明する。なお、ここでは、ロボットアーム3の動作軌跡が決定されるまでの処理を説明し、動作軌跡が決定された後の処理については説明を省略する。まず、ステップS1では、ロボットアーム3の現在先端位置が取得される。ステップS2では、現在先端位置を中心とするとともに-X軸方向および+Y軸方向に向けて延びる90度の扇形の探索範囲である第1探索範囲R1が形成される。ステップS3では、第1探索範囲R1においてワーク11が検出されたか否かが判断される。
【0045】
第1探索範囲R1においてワーク11が検出された場合、ステップS3で「YES」となり、ステップS4に進む。ステップS4では、検出されたワーク11が対象ワークとして選択される。一方、第1探索範囲R1においてワーク11が検出されない場合、ステップS3で「NO」となり、ステップS5に進む。ステップS5では、扇形の半径を所定値だけ大きくするように第1探索範囲R1が拡大される。ステップS5の実行後はステップS6に進み、第1探索範囲R1が上限に達したか否かが判断される。なお、第1探索範囲R1の上限は、例えばロボットアーム3の可動範囲の上限に基づいて決定したり、ロボットアーム3によるピックアンドプレース作業に要する時間の上限に基づいて決定したりすることができる。
【0046】
ここで、第1探索範囲R1が上限未満である場合、ステップS6で「NO」となり、ステップS3に戻ってワーク11の探索が継続される。一方、第1探索範囲R1が上限に達した場合、ステップS6で「YES」となり、ステップS7に進む。ステップS7では、対象ワークとして選択するべきワーク11が検出できなかったとして、所定のエラー処理が実行される。ステップS7の実行後、本処理が終了となる。ステップS4の実行後、ステップS8に進み、対象ワークの未来ワーク位置を中心とするとともに、投入トレー12に向けて延びる180度の扇形の探索範囲である第2探索範囲R2が形成される。
【0047】
ステップS9では、第2探索範囲R2において投入位置が検出されたか否かが判断される。第2探索範囲R2において投入位置が検出された場合、ステップS9で「YES」となり、ステップS10に進む。ステップS10では、検出された投入位置が対象投入位置として選択される。一方、第2探索範囲R2において投入位置が検出されない場合または検出された投入位置にワーク11が既に配置されていた場合、ステップS9で「NO」となり、ステップS11に進む。ステップS11では、扇形の半径を所定値だけ大きくするように第2探索範囲R2が拡大される。ステップS11の実行後はステップS12に進み、第2探索範囲R2が上限に達したか否かが判断される。なお、第2探索範囲R2の上限は、投入トレー12内の全ての投入位置P1~P9を丁度カバーできる範囲より所定のマージン分だけ広い範囲に設定されている。
【0048】
ここで、第2探索範囲R2が上限未満である場合、ステップS12で「NO」となり、ステップS9に戻って投入位置の探索が継続される。一方、第2探索範囲R2が上限に達した場合、ステップS12で「YES」となり、ステップS13に進む。ステップS13では、対象投入位置として選択するべき投入位置が検出できなかったとして、所定のエラー処理が実行される。ステップS13の実行後、本処理が終了となる。ステップS10の実行後、ステップS14に進む。ステップS14では、現在先端位置をスタート点とし、未来ワーク位置を中継点とし、対象投入位置をエンド点とした動作軌跡が決定される。ステップS14の実行後、本処理が終了となる。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のコントローラ6、7は、複数のワーク11の中からピックアンドプレース作業の対象となるワーク11である対象ワークを選択するワーク選択部13、複数の投入位置の中から対象ワークを投入する投入位置である対象投入位置を選択する位置選択部14を備えている。ワーク選択部13は、次のような選択基準で対象ワークを選択するようになっている。すなわち、ワーク選択部13は、ワーク11の現在の位置である現在ワーク位置が、ロボットアーム3、4の先端の現在の位置である現在先端位置よりコンベア2の流れ方向A1において上流側の位置となるワーク11を選択対象としたうえで、それら選択対象のワーク11の中から、現在先端位置から現在ワーク位置までの距離が最も短くなるワーク11を対象ワークとして選択する。
【0050】
ピックアンドプレース作業に要する時間は、ロボットアーム3、4の姿勢にも依存するが、主に、現在先端位置から対象ワークを取る時点における対象ワークの位置である未来ワーク位置までのロボットアーム3、4の移動距離と、対象ワークの未来ワーク位置から対象投入位置までのロボットアーム3、4の移動距離と、に応じた時間となる。以下、これら移動距離のうち、前者を第1移動距離と称するとともに、後者を第2移動距離と称することとする。上記構成における対象ワークの選択基準では、選択対象のワーク11の中から第1移動距離が最も短くなるようなワーク11を対象ワークとして選択するようになっており、これにより、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができる。
【0051】
また、この場合、ワーク選択部13は、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向A1において上流側の位置となるワーク11を選択対象としており、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において下流側の位置であるワーク11については選択の対象外としている。このようにする理由は、次の通りである。すなわち、ワーク11は、コンベア2により流れ方向A1に向けて搬送されているため、その位置は刻一刻と流れ方向に向けて移動することになる。
【0052】
そのため、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向A1において下流側の位置であるワーク11が対象ワークとして選択された場合、ロボットアーム3、4が現在先端位置から対象ワークに向けて移動する間、その対象ワークはロボットアーム3、4から確実に離れていく方向へ移動し続けることになり、ロボットアーム3、4の第1移動距離がむやみに長くなったり、最悪の場合にはロボットアーム3、4が対象ワークの取得に失敗したりする可能性がある。
【0053】
これに対し、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向において上流側の位置であるワークが対象ワークとして選択された場合、ロボットアーム3が現在先端位置から対象ワークに向けて移動する間、その対象ワークは大半の場合にはロボットアーム3、4に近づいていく方向へ移動することになり、ロボットアーム3、4が対象ワークの取得に失敗する可能性が極めて低くなり、また、第1移動距離が短く抑えられることになる。したがって、上記構成のように、現在ワーク位置が現在先端位置より流れ方向A1において上流側の位置であるワーク11を選択対象とすれば、ロボットアーム3、4が対象ワークの取得に失敗する可能性を低く抑えつつ、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができる。
【0054】
位置選択部14は、投入トレー12内の複数の投入位置P1~P9の中から、ロボットアーム3、4によりワーク11を取る時点における対象ワークの位置である未来ワーク位置からの距離が最も短くなる投入位置を対象投入位置として選択するようになっている。つまり、この場合、位置選択部14は、複数の投入位置P1~P9の中からロボットアーム3、4の第2移動距離が最も短くなるような投入位置を対象と入位置として選択するようになっている。したがって、上記構成によれば、ピックアンドプレース作業に要する時間を主に決定する第1移動距離および第2移動距離の双方を短く抑えることが可能となり、その結果、ピックアンドプレース作業に要する時間を一層短く抑えることができる。
【0055】
本実施形態の生産システム1は、所定の流れ方向A1に向けて複数のワーク11を搬送するコンベア2と、コンベア2により搬送される複数のワーク11のうちいずれかを取り、その取ったワーク11を予め定められた複数の投入位置のうちいずれかに投入するピックアンドプレース作業を行う複数のロボットアーム3、4、5と、コントローラ6、7、8と、を備えたものである。この場合、複数のロボットアーム3、4、5は、流れ方向A1に沿って流れ方向A1の上流側から下流側へと並ぶように設けられている。
【0056】
そして、複数のロボットアーム3、4、5のうち、流れ方向A1において最も下流側に設けられるロボットアーム5以外のロボットアーム3、4を制御するコントローラ6、7は、前述したような特有の構成および機能を備えている。このようなコントローラ6、7における対象ワークの選択基準によれば、ピックアンドプレース作業に要する時間を短くすることを優先したものであることから、ワーク11の取りこぼしが発生する可能性がある。ただし、上記構成の生産システム1によれば、このような取りこぼしが発生する可能性があるロボットアーム3、4は、流れ方向A1において最も下流側に設けられるものではなく、その下流側にはロボットアーム5が存在する。
【0057】
そのため、仮にコントローラ6、7により制御されるロボットアーム3、4において取りこぼしが発生した場合でも、それより下流側に設けられたロボットアーム5が、その取りこぼしをカバーすることが可能となる。しかも、この場合、ロボットアーム5は、ワーク11の取りこぼしの発生を確実に防止することを最優先として、複数のワーク11のうち流れ方向A1において最も下流側に存在するワーク11を選択して取るようになっている。したがって、上記構成によれば、生産システム1全体として、ワーク11の取りこぼしの発生を防止しつつ、ピックアンドプレース作業に要する時間を短縮することができる。
【0058】
ワーク選択部13は、第1探索範囲R1が上限に達した場合、対象ワークの選択を実施しない、つまり、その時点でのワーク11の取得を放棄するようになっている。ここで、第1探索範囲R1の上限を、ロボットアーム3、4によるピックアンドプレース作業に要する時間の上限に基づいて決定しておけば、トラッキング範囲T1内に第1移動距離が極端に長くなるようなワーク11しか存在しない場合、そのようなワーク11の取得を放棄し、下流側のロボットアーム5に作業を任せることが可能となる。このようにすれば、ロボットアーム3、4によるピックアンドプレース作業に要する時間の更なる短縮に寄与することができる。
【0059】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図9を参照して説明する。
本実施形態では、ロボットアーム3、4、5は、取ったワーク11を、投入トレー12内の投入位置P1~P9へと、この順番で投入するようになっている。したがって、本実施形態の位置選択部14は、複数の投入位置P1~P9の中から、その末尾の数字が小さいものから順番に対象投入位置として選択するようになっている。
【0060】
そのため、本実施形態のロボットアーム3を制御するコントローラ6によるピックアンドプレース作業に関する具体的な処理内容の一例としては、例えば図9に示すような内容となる。図9に示す本実施形態の処理内容は、図8に示した第1実施形態の処理内容に対し、ステップS8~S13が省かれるとともにステップS21が追加されている点などが異なっている。この場合、ステップS8の実行後、ステップS21が実行される。ステップS21では、複数の投入位置P1~P9の中から順番に対象投入位置が選択される。ステップS21の実行後、ステップS14に進み、動作軌跡が決定される。
【0061】
以上説明した本実施形態によっても、第1実施形態と同様の選択基準で対象ワークが選択されるため、第1実施形態と同様の効果、つまり、ロボットアーム3、4が対象ワークの取得に失敗する可能性を低く抑えつつ、また、生産システム1全体としてワーク11の取りこぼしの発生を防止しつつ、ピックアンドプレース作業に要する時間を短く抑えることができるという効果が得られる。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0063】
生産システム1は、3つのロボットアーム3、4、5を備えたものであったが、ロボットアームの数は複数であればよく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。ロボットアームの数が変更された場合、複数のロボットアームのうちコンベア2の流れ方向A1において最も下流側に設けられるロボットアーム以外の所定のロボットアームを制御するコントローラを、上記各実施形態において説明したコントローラ6と同様の構成および機能を備えるものとすればよい。
【0064】
本発明は、生産システム1に適用されるロボットアーム3、4を制御するコントローラ6、7に限らず、ピックアンドプレース作業を行うロボットアームを制御するロボットアームの制御装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…生産システム、2…コンベア、3、4、5…ロボットアーム、6、7、8…コントローラ、11…ワーク、12…投入トレー、13…ワーク選択部、14…位置選択部、15…動作制御部、P1~P9…投入位置。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
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図9