(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178107
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハンドルスイッチおよび鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 6/16 20200101AFI20221125BHJP
H01H 25/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B62J6/16
H01H25/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084656
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】橘 真澄
【テーマコード(参考)】
5G031
【Fターム(参考)】
5G031AS33H
5G031GS24
5G031HU02
(57)【要約】
【課題】ジョイスティックを備えたハンドルスイッチの操作性を向上させること。
【解決手段】ジョイスティック30は、棒状のピン41を有するスティック40と、スティック40を少なくとも左方、上方、および右方に傾倒可能に支持する支持ケース50と、を備えている。支持ケース50には、ピン41が挿入されかつ円周状の中央内周縁53iを有するピン孔53と、左方に凹んだ円弧状の第1内周縁53aと、上方に凹んだ円弧状の第2内周縁53bと、右方に凹んだ円弧状の第3内周縁53cと、中央内周縁53iから第1内周縁53aに延び、ピンの軸線方向に対して傾斜した第1斜面54aと、中央内周縁53iから第2内周縁53bに延び、ピンの軸線方向に対して傾斜した第2斜面54bと、中央内周縁53iから第3内周縁53cに延び、ピンの軸線方向に対して傾斜した第3斜面54cと、が形成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョイスティックを備え、ハンドルバーのグリップの側方に配置されるハンドルスイッチであって、
前記ジョイスティックは、棒状のピンを有するスティックと、前記ピンの軸線方向と交差するように配置された基板と、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線方向から見て前記ピンの軸線に対して第1方向、第2方向、第3方向にそれぞれ配置された第1ボタン、第2ボタン、第3ボタンと、前記スティックを少なくとも前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向に傾倒可能に支持する支持ケースと、を有し、
前記スティックは、前記ピンが貫通された筒部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第1方向に延びる第1脚部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第2方向に延びる第2脚部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第3方向に延びる第3脚部と、を有し、
前記スティックが前記第1方向に傾倒すると前記第1脚部が前記第1ボタンを押し、前記スティックが前記第2方向に傾倒すると前記第2脚部が前記第2ボタンを押し、前記スティックが前記第3方向に傾倒すると前記第3脚部が前記第3ボタンを押すように構成され、
前記支持ケースには、前記ピンが挿入されかつ円周状の中央内周縁を有するピン孔と、前記ピンの軸線方向から見て前記第1方向に凹んだ円弧状の第1内周縁と、前記ピンの軸線方向から見て前記第2方向に凹んだ円弧状の第2内周縁と、前記ピンの軸線方向から見て前記第3方向に凹んだ円弧状の第3内周縁と、前記中央内周縁から前記第1内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第1斜面と、前記中央内周縁から前記第2内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第2斜面と、前記中央内周縁から前記第3内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第3斜面と、が形成されている、ハンドルスイッチ。
【請求項2】
前記ジョイスティックは、
前記スティックの前記第1脚部と前記第1ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第1スライダと、
前記スティックの前記第2脚部と前記第2ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第2スライダと、
前記スティックの前記第3脚部と前記第3ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第3スライダと、を有している、請求項1に記載のハンドルスイッチ。
【請求項3】
前記ジョイスティックは、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線方向から見て前記ピンの軸線に対して第4方向に配置された第4ボタンを有し、
前記支持ケースは、前記スティックを前記第4方向に傾倒可能に支持し、
前記スティックは、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第4方向に延びる第4脚部を有し、
前記スティックが前記第4方向に傾倒すると前記第4脚部が前記第4ボタンを押すように構成され、
前記支持ケースには、前記ピンの軸線方向から見て前記第4方向に凹んだ円弧状の第4内周縁と、前記ピン孔の前記中央内周縁から前記第4内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第4斜面と、が形成され、
前記ピンの軸線方向から見て、前記第2方向は前記第1方向に垂直な方向であり、前記第3方向は前記第1方向と反対の方向であり、前記第4方向は前記第2方向と反対の方向である、請求項1に記載のハンドルスイッチ。
【請求項4】
前記ジョイスティックは、
前記スティックの前記第1脚部と前記第1ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第1スライダと、
前記スティックの前記第2脚部と前記第2ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第2スライダと、
前記スティックの前記第3脚部と前記第3ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第3スライダと、
前記スティックの前記第4脚部と前記第4ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第4スライダと、を有している、請求項3に記載のハンドルスイッチ。
【請求項5】
前記ジョイスティックは、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線上に配置された中央ボタンを有し、
前記支持ケースは、前記スティックを前記ピンの軸線方向に移動可能に支持し、
前記スティックが前記ピンの軸線方向に移動すると前記ピンが前記中央ボタンを押すように構成され、
前記支持ケースは、前記ピン孔の前記中央内周縁から前記第1斜面、前記第2斜面、および前記第3斜面と反対側に向かって前記ピンの軸線方向に延びる円筒部を有している、請求項1~4のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項6】
前記スティックは、前記筒部に対して前記第1脚部、前記第2脚部、および前記第3脚部と反対の方に配置され、前記ピンに固定された操作ボタンを有し、
前記操作ボタンの前記ピンの周囲に、円周状の溝が形成され、
前記操作ボタンと前記筒部とは、前記筒部が前記溝内において前記ピンの軸線方向に移動可能なように係合している、請求項5に記載のハンドルスイッチ。
【請求項7】
前記支持ケースは、前記スティックを少なくとも前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向に傾倒可能に支持するケース本体と、前記ケース本体と別体に形成され、前記ケース本体に組み付けられたガイド部材と、を有し、
前記ピン孔、前記中央内周縁、前記第1内周縁、前記第2内周縁、前記第3内周縁、前記第1斜面、前記第2斜面、および前記第3斜面は、前記ガイド部材に形成されている、請求項1~6のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項8】
前記ケース本体は、樹脂により形成され、
前記ピンおよび前記ガイド部材は、金属により形成されている、請求項7に記載のハンドルスイッチ。
【請求項9】
前記ピンは、第1端部と、前記第1端部よりも前記基板の方に位置する第2端部と、を有し、
前記ピンは、前記第1端部の方が前記第2端部よりも前記グリップの方に位置するように、前記グリップの軸線に垂直な面に対して傾いている、請求項1~8のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項10】
前記スティックよりも前記グリップの方に配置されたボタンを備えている、請求項1~9のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項11】
前記スティックは、前記ハンドルスイッチの下半部に設けられている、請求項1~10のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項12】
方向指示器を操作するターンスイッチと、
警音器を操作するホーンボタンと、を備え、
前記ジョイスティックにおける前記グリップの径方向の外端は、前記ターンスイッチおよび前記ホーンボタンよりも前記グリップの径方向の外方に位置している、請求項1~11のいずれか一つに記載のハンドルスイッチ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載のハンドルスイッチを備えた鞍乗型車両。
【請求項14】
前記ハンドルバーの右端部に配置された回動可能なアクセルグリップを備え、
前記グリップは、前記ハンドルバーの左端部に配置された回動不能な固定グリップであり、
前記ハンドルスイッチは、前記固定グリップの右方に配置されている、請求項13に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルスイッチおよび鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の鞍乗型車両において、ジョイスティックを備えたハンドルスイッチが用いられている。例えば特開2018-125266号公報に、そのようなハンドルスイッチが開示されている。
【0003】
ハンドルスイッチは、ハンドルバーに取り付けられ、グリップの側方に配置される。ハンドルスイッチは、ライダーの親指等によって操作される。ジョイスティックは、複数の方向に傾倒可能なスティックを有する入力装置である。スティックは、例えば、ライダーから見て上方、下方、左方、右方に傾けることができる。ジョイスティックによれば、単一の装置により複数の入力が可能である。ハンドルスイッチがジョイスティックを備えることにより、ハンドルスイッチを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スティックの実際の傾倒方向によっては、ライダーがどのような操作を意図しているかが分かりにくい場合がある。例えば、ライダーがスティックを左方に傾けようとしたときに、スティックに左方の力だけでなく下方の力を加えてしまう場合がある。その場合、スティックは左方かつ下方に傾倒する。ジョイスティックは、ライダーの左方への操作を正確に検出できない場合がある。自動二輪車等では、例えば冬期において、ライダーが手袋を嵌めて乗車する場合がある。その場合、手袋を嵌めた手の指先の感覚が鈍くなる傾向がある。そのため、ジョイスティックを意図した方向からずれた方向に操作していることに気付き難くなってしまうことが懸念される。そこで、ジョイスティックを備えたハンドルスイッチにおいて、操作性の更なる向上が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、ジョイスティックを備えたハンドルスイッチの操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されるハンドルスイッチは、ジョイスティックを備え、ハンドルバーのグリップの側方に配置されるハンドルスイッチである。前記ジョイスティックは、棒状のピンを有するスティックと、前記ピンの軸線方向と交差するように配置された基板と、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線方向から見て前記ピンの軸線に対して第1方向、第2方向、第3方向にそれぞれ配置された第1ボタン、第2ボタン、第3ボタンと、前記スティックを少なくとも前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向に傾倒可能に支持する支持ケースと、を有している。前記スティックは、前記ピンが貫通された筒部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第1方向に延びる第1脚部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第2方向に延びる第2脚部と、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第3方向に延びる第3脚部と、を有している。前記ハンドルスイッチは、前記スティックが前記第1方向に傾倒すると前記第1脚部が前記第1ボタンを押し、前記スティックが前記第2方向に傾倒すると前記第2脚部が前記第2ボタンを押し、前記スティックが前記第3方向に傾倒すると前記第3脚部が前記第3ボタンを押すように構成されている。前記支持ケースには、前記ピンが挿入されかつ円周状の中央内周縁を有するピン孔と、前記ピンの軸線方向から見て前記第1方向に凹んだ円弧状の第1内周縁と、前記ピンの軸線方向から見て前記第2方向に凹んだ円弧状の第2内周縁と、前記ピンの軸線方向から見て前記第3方向に凹んだ円弧状の第3内周縁と、前記中央内周縁から前記第1内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第1斜面と、前記中央内周縁から前記第2内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第2斜面と、前記中央内周縁から前記第3内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第3斜面と、が形成されている。
【0008】
上記ハンドルスイッチによれば、ピンの軸線方向(なお、ピンの軸線方向とは、ピンが傾倒していないときのピンの軸線が延びる方向のことである。)から見て、ピン孔の周囲には第1~第3内周縁が形成されている。ピンの軸線方向から見て、第1~第3内周縁はそれぞれ円弧状に形成されている。ピンが傾倒するときに、ピンの外周面が複数の内周縁にまたがって接触することはない。例えば、第1方向から若干ずれた方向の力がスティックに加えられた場合であっても、ピンは第1内周縁および第1斜面によって第1方向に案内され、スティックは第1方向に傾倒する。よって、ライダーは意図通りの操作を行いやすい。したがって、上記ハンドルスイッチによれば、操作性を向上させることができる。
【0009】
前記ジョイスティックは、前記スティックの前記第1脚部と前記第1ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第1スライダと、前記スティックの前記第2脚部と前記第2ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第2スライダと、前記スティックの前記第3脚部と前記第3ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第3スライダと、を有していてもよい。
【0010】
このことにより、ライダーがスティックを第1方向に倒すと、第1脚部は第1スライダを介して第1ボタンを押す。ライダーがスティックを第2方向に倒すと、第2脚部は第2スライダを介して第2ボタンを押す。ライダーがスティックを第3方向に倒すと、第3脚部は第3スライダを介して第3ボタンを押す。スティックと基板との間に第1~第3スライダが配置されているので、スティックと基板との距離が比較的長くても、スティックにより第1~第3ボタンを押すことができる。スティックを基板から比較的遠くに配置することができるので、ライダーはスティックを操作しやすい。よって、操作性を向上させることができる。
【0011】
前記ジョイスティックは、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線方向から見て前記ピンの軸線に対して第4方向に配置された第4ボタンを有していてもよい。前記支持ケースは、前記スティックを前記第4方向に傾倒可能に支持していてもよい。前記スティックは、前記筒部から前記ピンの軸線方向かつ前記第4方向に延びる第4脚部を有していてもよい。前記ジョイスティックは、前記スティックが前記第4方向に傾倒すると前記第4脚部が前記第4ボタンを押すように構成されていてもよい。前記支持ケースには、前記ピンの軸線方向から見て前記第4方向に凹んだ円弧状の第4内周縁と、前記ピン孔の前記中央内周縁から前記第4内周縁に延び、前記ピンの軸線方向に対して傾斜した第4斜面と、が形成されていてもよい。前記ピンの軸線方向から見て、前記第2方向は前記第1方向に垂直な方向であってもよく、前記第3方向は前記第1方向と反対の方向であってもよく、前記第4方向は前記第2方向と反対の方向であってもよい。
【0012】
前記ジョイスティックは、前記スティックの前記第1脚部と前記第1ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第1スライダと、前記スティックの前記第2脚部と前記第2ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第2スライダと、前記スティックの前記第3脚部と前記第3ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第3スライダと、前記スティックの前記第4脚部と前記第4ボタンとの間に配置され、前記支持ケースに前記ピンの軸線方向に移動可能に支持された第4スライダと、を有していてもよい。
【0013】
前記ジョイスティックは、前記基板に設けられ、前記ピンの軸線上に配置された中央ボタンを有していてもよい。前記支持ケースは、前記スティックを前記ピンの軸線方向に移動可能に支持していてもよい。前記ジョイスティックは、前記スティックが前記ピンの軸線方向に移動すると前記ピンが前記中央ボタンを押すように構成されていてもよい。前記支持ケースは、前記ピン孔の前記中央内周縁から前記第1斜面、前記第2斜面、および前記第3斜面と反対側に向かって前記ピンの軸線方向に延びる円筒部を有していてもよい。
【0014】
このことにより、ライダーがスティックを押す操作を行うときに、スティックがピンの軸線方向から若干傾いた方向に押された場合であっても、ピンは円筒部によって軸線方向に案内される。そのため、スティックは傾倒しない。ライダーは意図通りの操作を行いやすい。また、ライダーがスティックを倒す操作を行うときに、ピンの軸線方向の移動は円筒部により規制される。そのため、スティックはピンの軸線方向に移動しない。ライダーは意図通りの操作を行いやすい。したがって、ハンドルスイッチの操作性を更に向上させることができる。
【0015】
前記スティックは、前記筒部に対して前記第1脚部、前記第2脚部、および前記第3脚部と反対の方に配置され、前記ピンに固定された操作ボタンを有していてもよい。前記操作ボタンの前記ピンの周囲に、円周状の溝が形成されていてもよい。前記操作ボタンと前記筒部とは、前記筒部が前記溝内において前記ピンの軸線方向に移動可能なように係合していてもよい。
【0016】
このことにより、操作ボタンをピンの軸線方向に押したときに、操作ボタンおよびピンは、筒部に対して移動可能である。そのため、操作ボタンをピンの軸線方向に押したときに、第1脚部が第1ボタンを押してしまうこと、第2脚部が第2ボタンを押してしまうこと、および、第3脚部が第3ボタンを押してしまうことを防止することができる。ライダーがスティックを押す操作を行ったときに、スティックを傾倒させる操作が行われたと誤検出されることを防止することができる。
【0017】
前記支持ケースは、前記スティックを少なくとも前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向に傾倒可能に支持するケース本体と、前記ケース本体と別体に形成され、前記ケース本体に組み付けられたガイド部材と、を有していてもよい。前記ピン孔、前記中央内周縁、前記第1内周縁、前記第2内周縁、前記第3内周縁、前記第1斜面、前記第2斜面、および前記第3斜面は、前記ガイド部材に形成されていてもよい。
【0018】
このようにガイド部材をケース本体と別体とすることにより、ピン孔、中央内周縁、第1~第3内周縁、および第1~第3斜面を比較的容易に加工することができる。
【0019】
前記ケース本体は、樹脂により形成されていてもよい。前記ピンおよび前記ガイド部材は、金属により形成されていてもよい。
【0020】
このようにケース本体を樹脂製とすることにより、ジョイスティックを軽量化することができる。操作時に互いに接触するピンおよびガイド部材を金属製とすることにより、ジョイスティックの耐久性を高めることができる。
【0021】
前記ピンは、第1端部と、前記第1端部よりも前記基板の方に位置する第2端部と、を有していてもよい。前記ピンは、前記第1端部の方が前記第2端部よりも前記グリップの方に位置するように、前記グリップの軸線に垂直な面に対して傾いていてもよい。
【0022】
このことにより、スティックはグリップの方に傾いているので、ライダーはグリップを握ったまま親指によりスティックを操作しやすい。
【0023】
前記ハンドルスイッチは、前記スティックよりも前記グリップの方に配置されたボタンを備えていてもよい。
【0024】
このことにより、上記ボタンはグリップの方に配置されているので、ライダーが上記ボタンを操作するときに、ジョイスティックは邪魔になりにくい。
【0025】
前記スティックは、前記ハンドルスイッチの下半部に設けられていてもよい。
【0026】
このことにより、ライダーはグリップを握ったまま親指によりスティックを操作しやすい。
【0027】
前記ハンドルスイッチは、方向指示器を操作するターンスイッチと、警音器を操作するホーンボタンと、を備えていてもよい。前記ジョイスティックにおける前記グリップの径方向の外端は、前記ターンスイッチおよび前記ホーンボタンよりも前記グリップの径方向の外方に位置していてもよい。
【0028】
このことにより、ライダーの指がジョイスティックを操作するときに、ライダーの指はターンスイッチおよびホーンボタンに触れにくい。よって、ターンスイッチまたはホーンボタンを誤操作し難い。
【0029】
ここに開示される鞍乗型車両は、前記ハンドルスイッチを備えたものである。
【0030】
前記鞍乗型車両は、前記ハンドルバーの右端部に配置された回動可能なアクセルグリップを備えていてもよい。前記グリップは、前記ハンドルバーの左端部に配置された回動不能な固定グリップであってもよい。前記ハンドルスイッチは、前記固定グリップの右方に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ジョイスティックを備えたハンドルスイッチの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図3】左グリップおよび左ハンドルスイッチを車両後方から見た図である。
【
図5】左ハンドルスイッチを左方から見た図である。
【
図6】スティックが初期位置にあるときのジョイスティックの断面図である。
【
図8】ピンの軸線方向に沿って支持ケースを車両後方から見た図である。
【
図9】ピンの軸線方向に沿ってガイド部材を車両後方から見た図である。
【
図10】ピンおよびガイド部材の拡大断面図である。
【
図11】ピンの軸線方向に沿って基板を車両後方から見た図である。
【
図12】スティックを左方に倒したときのジョイスティックの断面図である。
【
図13】スティックを押したときのジョイスティックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の左側面図である。
図2は自動二輪車1の平面図である。本実施形態に係る自動二輪車1はスクータである。ただし、自動二輪車1の形式はスクータに限定される訳ではない。自動二輪車1の形式は何ら限定されない。
【0034】
自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に支持された駆動源3と、前輪4と、駆動源3によって駆動される後輪5と、車体フレーム2に支持されたシート6とを備えている。駆動源3は、自動二輪車1が走行するための動力を発生させる装置である。ここでは、駆動源3は内燃機関である。ただし、駆動源3は電動モータであってもよい。駆動源3は後輪5と連結されている。後輪5は駆動源3により駆動される。
【0035】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート6に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0036】
前方とは、車両中心線CL(
図2参照)に沿って水平に前向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。後方とは、車両中心線CLに沿って水平に後向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。左方とは、車両中心線CLに垂直な水平線に沿って左向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。右方とは、車両中心線CLに垂直な水平線に沿って右向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。上方とは、鉛直線に沿って上向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。下方とは、鉛直線に沿って下向きに延びる方向だけでなく、当該方向から90度未満の角度で傾いた方向も含まれるものとする。
【0037】
車体フレーム2はヘッドパイプ7を有している。ヘッドパイプ7には、ステアリング軸8が左右に回転可能に支持されている。ステアリング軸8の下部は、フロントフォーク9に接続されている。フロントフォーク9は前輪4を回転可能に支持している。ステアリング軸8の上部にはハンドルバー10が固定されている。
【0038】
図2に示すように、ハンドルバー10は左方および右方に延びている。ハンドルバー10の左端部には、左グリップ11Lが取り付けられている。ハンドルバー10の右端部には、右グリップ11Rが取り付けられている。左グリップ11Lは、回動不能な固定グリップである。右グリップ11Rは、回動可能なアクセルグリップである。右グリップ11Rを回動させることにより、駆動源3の出力を調整することができる。
【0039】
左グリップ11Lの前方には、左レバー12Lが配置されている。右グリップ11Rの前方には、右レバー12Rが配置されている。なお、
図1では、左レバー12Lおよび右レバー12Rの図示は省略している。左レバー12Lを操作することにより、後輪5のブレーキ(図示せず)を作動させることができる。右レバー12Rを操作することにより、前輪4のブレーキ(図示せず)を作動させることができる。
【0040】
ハンドルバー10には、左グリップ11Lの側方に配置された左ハンドルスイッチ15Lと、右グリップ11Rの側方に配置された右ハンドルスイッチ15Rとが取り付けられている。なお、
図1および
図2では、左ハンドルスイッチ15Lおよび右ハンドルスイッチ15Rを簡略化して図示している。左ハンドルスイッチ15Lは、左グリップ11Lの右方に配置されている。右ハンドルスイッチ15Rは、右グリップ11Rの左方に配置されている。以下では、左ハンドルスイッチ15Lのことを、単にハンドルスイッチ15Lと呼ぶこととする。
【0041】
図3は、左グリップ11Lおよびハンドルスイッチ15Lを車両後方から見た図である。
図4は、ハンドルスイッチ15Lの斜視図である。
図5は、ハンドルスイッチ15Lを左方から見た図である。
図4に示すように、ハンドルスイッチ15Lは、ハンドルバー10に取り付けられるハンドルスイッチケース20を備えている。ハンドルスイッチケース20には、ジョイスティック30、入力ボタン21、ホーンボタン22、ターンスイッチ23、ヘッドライトスイッチ24、および設定スイッチ25が設けられている。
【0042】
ホーンボタン22は、図示しない警音器を操作するボタンである。ターンスイッチ23は、図示しない方向指示器を操作するスイッチである。ターンスイッチ23は、左方および右方にスライド可能なボタンにより構成されている。ヘッドライトスイッチ24は、ヘッドライト13(
図1参照)を操作するスイッチである。設定スイッチ25は、クルーズコントロールの設定等を行うスイッチである。
【0043】
ジョイスティック30は、単一の装置により複数の入力が可能なスイッチである。ここでは、ジョイスティック30は5つの入力が可能に構成されている。ジョイスティック30の操作内容は特に限定されない。例えば、ナビゲーション装置の操作、音楽プレーヤーの操作、各種画面の切り替え、図示しない電動スクリーンの昇降操作、各種の設定などにジョイスティック30を用いることができる。次に、ジョイスティック30の構成について説明する。
【0044】
図6はジョイスティック30の断面図である。ジョイスティック30は、ジョイスティックケース32と、スティック40と、支持ケース50と、第1~第5スライダ70a~70eと、基板60と、を備えている。
【0045】
スティック40は、操作ボタン34と、棒状のピン41と、レバー42と、スライダ47と、ばね48とを有している。なお、
図6は、ピン41の軸線41xを含む断面図である。後述するように、スティック40は傾倒可能である。本明細書では、スティック40が傾倒していないときにピン41の軸線41xが延びる方向および当該方向と平行の方向のことを、「ピンの軸線方向」と呼ぶこととする。
【0046】
ピン41の太さは一定であってもよく、一定でなくてもよい。本実施形態では、ピン41は、大径部41Aと、大径部41Aよりも小径の小径部41Bとを有している。ピン41は、第1端部41aと、第1端部41aよりも基板60の方に位置する第2端部41bとを有している。ピン41の材料は特に限定されないが、本実施形態では金属である。ピン41は、例えば、ステンレス、アルミニウム等により形成することができる。
【0047】
ピン41の第1端部41aは、操作ボタン34に挿入されている。操作ボタン34には、ピン41の大径部41Aが挿入されている。操作ボタン34はピン41に固定されている。操作ボタン34は、天板を有する筒状に形成されている。操作ボタン34のピン41の周囲には、円周状の溝34aが形成されている。
【0048】
レバー42は、ピン41が貫通された筒部42Aを有している。筒部42Aの一部は、操作ボタン34の溝34aに挿入されている。ピン41は、筒部42Aにスライド可能に支持されている。操作ボタン34およびピン41は、レバー42に対して、ピンの軸線方向に移動可能である。操作ボタン34と筒部42Aとは、筒部42Aが溝34a内においてピンの軸線方向に移動可能なように係合している。一方、操作ボタン34およびピン41は、レバー42に対して、左方、上方、右方、および下方に移動不能である。操作ボタン34、ピン41、およびレバー42は、左方、上方、右方、および下方には、一緒に移動する。
【0049】
図7はレバー42の斜視図である。レバー42は、筒部42Aからピンの軸線方向かつ左方に延びる第1脚部42aと、筒部42Aからピンの軸線方向かつ上方に延びる第2脚部42bと、筒部42Aからピンの軸線方向かつ右方に延びる第3脚部42cと、筒部42Aからピンの軸線方向かつ下方に延びる第4脚部42dと、を有している。
【0050】
図6に示すように、支持ケース50は、スティック40をピンの軸線方向に移動可能、かつ、左方、上方、右方、および下方に傾倒可能に支持している。
図8は、ピンの軸線方向に沿って支持ケース50を車両後方から見た図である。支持ケース50は、ケース本体51と、ガイド部材52とを有している。ケース本体51は樹脂により形成されている。ケース本体51は、例えば、PP、PE、ABSなどの合成樹脂により形成されている。ガイド部材52は金属により形成されている。ガイド部材52は、例えば、ステンレス、アルミニウムなどにより形成されている。
【0051】
ケース本体51には、それぞれピンの軸線方向に延びる中央孔51e、第1孔51a、第2孔51b、第3孔51c、および第4孔51dが形成されている。第1孔51aは中央孔51eの左方に形成されている。第2孔51bは中央孔51eの上方に形成されている。第3孔51cは中央孔51eの右方に形成されている。第4孔51dは中央孔51eの下方に形成されている。
【0052】
ガイド部材52は、ピン41の移動および傾倒を案内する部材である。ガイド部材52は、ケース本体51と別体に形成され、ケース本体51に組み付けられている。
図9は、ピンの軸線方向に沿ってガイド部材52を車両後方から見た図である。
図10は、ピン41およびガイド部材52の拡大断面図である。ガイド部材52には、ピン41が挿入されるピン孔53が形成されている。
【0053】
図9に示すようにピンの軸線方向から見て、ピン孔53は円周状の中央内周縁53iを有している。ピンの軸線方向から見て、ガイド部材52は、左方に凹んだ円弧状の第1内周縁53aと、上方に凹んだ円弧状の第2内周縁53bと、右方に凹んだ円弧状の第3内周縁53cと、下方に凹んだ円弧状の第4内周縁53dと、を有している。ピンの軸線方向から見て、第1内周縁53aと第2内周縁53bとの間、第2内周縁53bと第3内周縁53cとの間、第3内周縁53cと第4内周縁53dとの間、および、第4内周縁53dと第1内周縁53aとの間には、それぞれ段差53gが形成されている。
【0054】
ガイド部材52は、中央内周縁53iから第1内周縁53aに延びる第1斜面54aと、中央内周縁53iから第2内周縁53bに延びる第2斜面54bと、中央内周縁53iから第3内周縁53cに延びる第3斜面54cと、中央内周縁53iから第4内周縁53dに延びる第4斜面54dと、を有している。第1斜面54a、第2斜面54b、第3斜面54c、および第4斜面54dは、ピンの軸線方向に対して傾斜している(
図10参照)。
【0055】
図10に示すように、ピン41の第2端部41bにはテーバーが付けられている。ピン41の第2端部41bは先細り形状に形成されている。第2端部41bは、ピン孔53に挿入されている。
【0056】
図11は、ピンの軸線方向に沿って基板60を車両後方から見た図である。
図11に示すように、基板60には、第1ボタン61、第2ボタン62、第3ボタン63,第4ボタン64、および中央ボタン65が設けられている。第1ボタン61、第2ボタン62、第3ボタン63、第4ボタン64、および中央ボタン65は、いわゆるタクトスイッチであり、押されることによって入力されるスイッチである。中央ボタン65は、ピン41が傾倒していないときのピン41の軸線41x上に配置されている。第1ボタン61、第2ボタン62、第3ボタン63、第4ボタン64は、ピン41が傾倒していないときのピン41の軸線41xに対して、左方、上方、右方、下方にそれぞれ配置されている。なお、左方、上方、右方、下方は、それぞれ「第1方向」、「第2方向」、「第3方向」、「第4方向」の一例である。
【0057】
図6に示すように、基板60の第1ボタン61、第2ボタン62、第3ボタン63,第4ボタン64、および中央ボタン65は、弾性変形可能なカバー68によって覆われている。カバー68は、基板60に水分や埃等が付着することを防止する防塵部材である。カバー68は、基板60とスティック40との間に配置されている。カバー68の材料は特に限定されないが、ゴム等を好適に用いることができる。ここでは、カバー68の材料はシリコンである。カバー68は弾性を有している。カバー68は力を加えると変形するが、力を取り除くと元の形状に復元する。
【0058】
図6に示すように、ケース本体51の中央孔51e、第1孔51a、第2孔51b、第3孔51c、および第4孔51dには、それぞれ中央スライダ70e、第1スライダ70a、第2スライダ70b、第3スライダ70c、および第4スライダ70dが挿入されている。中央スライダ70e、第1スライダ70a、第2スライダ70b、第3スライダ70c、および第4スライダ70dの形状は特に限定されない。中央スライダ70e、第1スライダ70a、第2スライダ70b、第3スライダ70c、および第4スライダ70dは、例えば、棒状であってもよく、両端部が閉じた筒状に形成されていてもよい。
【0059】
第1スライダ70aは、レバー42の第1脚部42aと第1ボタン61との間に配置されている。第2スライダ70aは、レバー42の第2脚部42bと第2ボタン62との間に配置されている。第3スライダ70cは、レバー42の第3脚部42cと第3ボタン63との間に配置されている。第4スライダ70dは、レバー42の第4脚部42dと第4ボタン64との間に配置されている。中央スライダ70eは、ピン41と中央ボタン65との間に配置されている。ここでは、基板60はカバー68に覆われている。そのため、第1スライダ70aは、レバー42の第1脚部42aとカバー68との間に配置されている。第2スライダ70bは、レバー42の第2脚部42bとカバー68との間に配置されている。第3スライダ70cは、レバー42の第3脚部42cとカバー68との間に配置されている。第4スライダ70dは、レバー42の第4脚部42dとカバー68との間に配置されている。中央スライダ70eは、ピン41とカバー68との間に配置されている。第1スライダ70a、第2スライダ70b、第3スライダ70c、第4スライダ70d、および中央スライダ70eは、支持ケース50により、ピンの軸線方向に移動可能に支持されている。
【0060】
図6に示すように、スライダ47は、円筒部47Aおよび円板部47Bを有している。ピン41の小径部41Bは、円筒部47Aおよび円板部47Bを貫通している。ケース本体51には、ピン41の小径部41Bが挿入された穴が形成されている。ケース本体51の穴の内周縁には、ピン41の軸線41xに対して傾いた斜面51sが形成されている。斜面51sは、
図6の上方かつピン41の径方向の外方に延びている。スライダ47の円板部47Bの
図6における下方の面には、斜面47sが形成されている。斜面47sは、
図6の上方かつピン41の径方向の外方に延びている。ばね48は、ピン41の大径部41Aとスライダ47の円板部47Bとの間に設けられている。ばね48はコイルスプリングにより構成されている。ばね48の一端部はピン41の大径部41Aに接触し、他端部はスライダ47の円板部47Bに接触している。ばね48は、スティック40を初期位置に向けて付勢する。
図6は、スティック40が初期位置にある状態を表している。スティック40が初期位置にあるときに、第1脚部42aは第1スライダ70aから離間し、第2脚部42bは第2スライダ70bから離間し、第3脚部42cは第3スライダ70cから離間し、第4脚部42dは第4スライダ70dから離間し、ピン41は中央スライダ70eから離間している。
【0061】
図3に示すように、スティック40は左方に傾いている。スティック40は左グリップ11Lの方に傾いている。詳しくは、ピン41がピンの軸線方向から傾いていないときに、スティック40のピン41は、第1端部41aの方が第2端部41bよりも左グリップ11Lの方に位置するように、左グリップ11Lの軸線11Lcに垂直な面P1に対して傾いている。
【0062】
図5に示すように、左グリップ11Lの軸線11Lcの方向から見たときに、ジョイスティック30の先端30tは、ターンスイッチ23およびホーンボタン22よりも後方に位置している。ジョイスティック30の先端30tは、ジョイスティック30における左グリップ11Lの径方向の外端である。ジョイスティック30における左グリップ11Lの径方向の外端30tは、ターンスイッチ23およびホーンボタン22よりも左グリップ11Lの径方向の外方に位置している。
【0063】
以上がハンドルスイッチ15Lの構成である。次に、ジョイスティック30の操作について説明する。
【0064】
ジョイスティック30に対しては、スティック40を左方に倒す操作、スティック40を上方に倒す操作、スティック40を右方に倒す操作、スティック40下方に倒す操作、および、スティック40をピンの軸線方向に押す操作が可能である。ジョイスティック30に対しては、5つの操作が可能である。
【0065】
図12に示すように、スティック40を左方に倒すと、第1スライダ70aが第1脚部42aによって押される。第1スライダ70aは第1ボタン61の方に移動し、カバー68を介して第1ボタン61を押す。このように、スティック40を左方に倒すと、第1ボタン61が入力される。
【0066】
同様に、スティック40を上方に倒すと、第2スライダ70bが第2脚部42bによって押される。第2スライダ70bは第2ボタン62の方に移動し、カバー68を介して第2ボタン62を押す。このように、スティック40を上方に倒すと、第2ボタン62が入力される。
【0067】
スティック40を右方に倒すと、第3スライダ70cが第3脚部42cによって押される。第3スライダ70cは第3ボタン63の方に移動し、カバー68を介して第3ボタン63を押す。このように、スティック40を右方に倒すと、第3ボタン63が入力される。
【0068】
スティック40を下方に倒すと、第4スライダ70dが第4脚部42dによって押される。第4スライダ70dは第4ボタン64の方に移動し、カバー68を介して第4ボタン64を押す。このように、スティック40を下方に倒すと、第4ボタン64が入力される。
【0069】
図13に示すように、スティック40を押すと、操作ボタン34およびピン41はレバー42に対してスライドし、中央スライダ70eはピン41によって押される。中央スライダ70eは中央ボタン65の方に移動し、カバー68を介して中央ボタン65を押す。このように、スティック40を押すと、第5ボタン65が入力される。
【0070】
ところで、例えばライダーがスティック40を左方に倒そうと意図しているにも拘わらず、スティック40に対して左方の力だけでなく、上方の力を若干加えてしまう場合がある。ライダーが手袋を嵌めている場合、そのようなことが起こりやすい傾向がある。この場合、スティック40が左方かつ上方に倒れると、第1ボタン61の入力が良好に検出されない場合がある。しかし、本実施形態によれば、支持ケース50は、ピンの軸線方向から見て左方に凹んだ円弧状の第1内周縁53a(
図9参照)と、中央内周縁53iから第1内周縁53aに延びる第1斜面54a(
図10参照)とを有している。第1内周縁53aの端部には、段差53gが設けられている。そのため、スティック40に対して左方の力に加えて上方の力が若干加えられたとしても、ピン41の外周面が第1斜面54aおよび第2斜面54bの両方に跨がって接触することはない。ピン41は、第1内周縁53aおよび第1斜面54aによって、左方に案内される。よって、ピン41は左方に倒れるので、第1ボタン61の入力は良好に検出される。なお、説明は省略するが、ライダーがスティック40を上方、右方、下方に倒そうとしたときにも、それぞれ同様にして第2ボタン62、第3ボタン63、第4ボタン64の入力が良好に検出される。ライダーは、スティック40を意図した方向から若干ずれた方向に倒してしまったとしても、意図した操作を行うことができる。
【0071】
また、例えばスティック40を左方に倒しているときには、第1内周縁53aおよび第1斜面54aによって、スティック40の上方または下方への移動は規制される。ライダーがスティック40を左方に倒した後、上方または下方に力を加えてしまった場合であっても、スティック40が上方または下方に傾倒してしまうことは防止される。第1ボタン61の入力中に、第2ボタン62または第4ボタン64が入力されてしまうことは防止される。そのため、スティック40を倒した後の誤操作を防止することができる。
【0072】
ライダーがスティック40を押そうと意図しているにも拘わらず、スティック40にピンの軸線方向の力だけでなく、ピンの軸線方向から傾いた方向の力を若干加えてしまう場合がある。この場合、スティック40がピンの軸線方向に移動しながら若干傾くと、第5ボタン65の入力が良好に検出されない場合がある。しかし、本実施形態によれば、支持ケース50は、中央内周縁53iからピンの軸線方向に延びる円筒部55を有している(
図10参照)。そのため、スティック40がピンの軸線方向に移動すると、円筒部55により、ピン41が傾くことは防止される。よって、スティック40はピンの軸線方向に真っ直ぐ移動するので、第5ボタン65の入力は良好に検出される。このように、ライダーは、スティック40を押すときにピンの軸線方向の力だけでなく、ピンの軸線方向から傾いた方向の力を若干加えてしまった場合でも、意図した操作を行うことができる。
【0073】
また、ピン41の第2端部41bが円筒部55に挿入されると、円筒部55により、ピン41の傾倒は規制される。ライダーがスティック40を押した後、スティック40にピンの軸線方向から傾いた方向の力を加えてしまった場合であっても、スティック40が傾倒してしまうことは防止される。第5ボタン65の入力中に、第1ボタン61等が入力されてしまうことは防止される。そのため、スティック40を押した後の誤操作を防止することができる。
【0074】
例えば、ライダーがスティック40を左方に倒そうと意図しているにも拘わらず、スティック40に対して左方の力だけでなく、押す力を若干加えてしまう場合がある。この場合、スティック40が傾倒すると共にピンの軸線方向に移動してしまうと、第1ボタン61の入力が良好に検出されない場合がある。しかし、本実施形態によれば、支持ケース50は円筒部55を有しているので、スティック40が倒れると、スティック40のピンの軸線方向の移動は規制される。よって、第1ボタン61の入力は良好に検出される。ライダーがスティック40を上方、右方、または下方に倒そうと意図した場合についても同様である。このように、ライダーは、スティック40を倒そうとしたときに、スティック40を倒すと同時に若干押してしまったとしても、意図した操作を行うことができる。また、スティック40を倒した後、スティック40にピンの軸線方向の力を加えてしまった場合であっても、スティック40がピンの軸線方向に移動してしまうことは防止される。例えば、第1ボタン61の入力中に、第5ボタン65が入力されてしまうことは防止される。よって、スティック40を倒した後の誤操作を防止することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るハンドルスイッチ15Lによれば、ライダーがスティック40を倒すときに、意図した方向から若干ずれた方向に力を加えたとしても、ピン41がガイド部材52に案内されることにより、スティック40は意図した方向に傾倒する。よって、ジョイスティック30はライダーの操作を誤検出しにくい。ライダーは意図通りの操作を行いやすい。したがって、ハンドルスイッチ15Lによれば、操作性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態に係るハンドルスイッチ15Lによれば、
図6に示すように、スティック40の第1脚部42aと第1ボタン61との間には第1スライダ70aが配置され、第2脚部42bと第2ボタン62との間には第2スライダ70bが配置され、第3脚部42cと第3ボタン63との間には第3スライダ70cが配置され、第4脚部42dと第4ボタン64との間には第4スライダ70dが配置されている。そのため、スティック40と基板60との間の距離を長くすることができる。スティック40をより後方に配置することができる。よって、ライダーはスティック40を操作しやすい。ハンドルスイッチ15Lの操作性を更に向上させることができる。
【0077】
本実施形態に係るハンドルスイッチ15Lによれば、支持ケース50は、ピン孔53の中央内周縁53iからピンの軸線方向に延びる円筒部55を有している(
図10参照)。スティック40がピンの軸線方向から若干傾いた方向に押された場合であっても、ピン41は円筒部55によってピンの軸線方向に案内されるので、スティック40は傾倒しない。よって、ジョイスティック30は、ライダーによるスティック40を押すという操作を誤検出しにくい。また、スティック40が倒されると共に若干押された場合、スティック40のピンの軸線方向の移動は円筒部55によって阻止される。よって、ジョイスティック30は、ライダーによるスティック40を倒すという操作を誤検出しにくい。したがって、ライダーは意図通りの操作を行いやすい。
【0078】
本実施形態に係るハンドルスイッチ15Lによれば、スティック40の操作ボタン34と筒部42Aとは、筒部42Aが操作ボタン34の溝34a内においてピンの軸線方向に移動可能なように係合している。操作ボタン34を押したときに、操作ボタン34およびピン41は筒部42Aに対して移動可能である。そのため、操作ボタン34を押したときに、第1脚部42aが第1スライダ70aを介して第1ボタン61を押してしまうこと、第2脚部42bが第2スライダ70bを介して第2ボタン62を押してしまうこと、第3脚部42cが第3スライダ70cを介して第3ボタン63を押してしまうこと、および、第4脚部42dが第4スライダ70dを介して第4ボタン64を押してしまうことを、より確実に防止することができる。ジョイスティック30は、ライダーによるスティック40を押すという操作を誤検出しにくい。したがって、ライダーは意図通りの操作を行いやすい。
【0079】
本実施形態に係るハンドルスイッチ15Lによれば、ピン孔53、第1内周縁53a、第2内周縁53b、第3内周縁53c、第4内周縁53d、第1斜面54a、第2斜面54b、第3斜面54c、第4斜面54d、および円筒部55は、ガイド部材52に形成されている。ガイド部材52は、ケース本体51と別体である。ケース本体51およびガイド部材52は、それぞれ別々に作製され、互いに組み付けられている。本実施形態によれば、ピン孔53、第1内周縁53a、第2内周縁53b、第3内周縁53c、第4内周縁53d、第1斜面54a、第2斜面54b、第3斜面54c、第4斜面54d、および円筒部55を比較的容易に加工することができる。
【0080】
ケース本体51は樹脂により形成されている。そのため、ジョイスティック30を軽量化することができる。ピン41およびガイド部材52は、金属により形成されている。そのため、ジョイスティック30の耐久性を高めることができる。
【0081】
図3に示すように、スティック40は初期位置にあるときに左方に傾いている。そのため、ライダーは、左手で左グリップ11Lを握ったまま、左手の親指でスティック40を操作しやすい。
【0082】
ホーンボタン22、ターンスイッチ23、およびヘッドライトスイッチ24は、スティック40よりも左方に配置されている。ホーンボタン22、ターンスイッチ23、およびヘッドライトスイッチ24は、スティック40よりも左グリップ11Lの方に配置されている。よって、ライダーがホーンボタン22、ターンスイッチ23、およびヘッドライトスイッチ24を操作するときに、ジョイスティック30は邪魔になりにくい。ライダーは、ホーンボタン22、ターンスイッチ23、およびヘッドライトスイッチ24を操作しやすい。
【0083】
図3に示すように、スティック40はハンドルスイッチ15Lの下半部に設けられている。そのため、ライダーは、左手で左グリップ11Lを握ったまま、左手の親指でスティック40を操作しやすい。
【0084】
図5に示すように、ジョイスティック30における左グリップ11Lの径方向の外端30tは、ターンスイッチ23およびホーンボタン22よりも左グリップ11Lの径方向の外方に位置している。ジョイスティック30の方が、ターンスイッチ23およびホーンボタン22よりも後方に配置されている。そのため、ライダーは、ジョイスティック30を操作するときに、ターンスイッチ23およびホーンボタン22に触れにくい。ジョイスティック30を操作するときに、ターンスイッチ23およびホーンボタン22を誤操作しにくい。
【0085】
以上、一実施形態について説明したが、前述の実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。以下、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0086】
前記実施形態では、スティック40は4方向に傾倒可能であるが、スティック40の傾倒方向は3方向であってもよい。また、スティック40の傾倒方向は5方向以上であってもよい。スティック40の傾倒方向は、左方、上方、右方、下方に限定されない。
【0087】
前記実施形態では、ジョイスティック30は、スティック40を左方へ倒す操作、上方へ倒す操作、右方へ倒す操作、下方へ倒す操作、およびスティック40を押す操作が可能である。ジョイスティック30では、5つの入力が可能である。加えて、スティック40を長押しする操作が可能であってもよい。すなわち、ジョイスティック30は、第5ボタン65を押す時間が所定時間未満の場合と、所定時間以上の場合とで、異なる入力と判定してもよい。これにより、ジョイスティック30において6つの入力が可能となる。
【0088】
第1~第4スライダ70a~70dおよび中央スライダ70eは無くてもよい。スティック40の第1~第4脚部42a~42dは、カバー68を直接押すことにより第1~第4ボタン61~64を押すように構成されていてもよい。ピン41は、カバー68を直接押すことにより中央ボタン65を押すように構成されていてもよい。
【0089】
カバー68は無くてもよい。第1~第5スライダ70a~70eは、それぞれ第1~第5ボタン61~65を直接押すように構成されていてもよい。カバー68、第1~第4スライダ70a~70d、および中央スライダ70eが無くてもよい。スティック40の第1~第4脚部42a~42dおよびピン41は、それぞれ第1~第5ボタン61~65を直接押すように構成されていてもよい。
【0090】
支持ケース50のケース本体51の材料は樹脂に限定されない。ケース本体51は、例えば金属によって形成されていてもよい。ガイド部材52の材料は金属に限定されない。ケース本体51とガイド部材52とは、別体でなくてもよい。ケース本体51とガイド部材52とは一体物であってもよい。
【0091】
スティック40は初期位置にあるときに左方に傾いていなくてもよい。スティック40が初期位置にあるときに、ピン41の軸線41xは、左グリップ11Lの軸線11Lcに垂直な面P1内にあってもよい。スティック40は初期位置にあるときに右方に傾いていてもよい。
【0092】
ハンドルスイッチ15Lは、ジョイスティック30以外のスイッチを備えていてもよく、備えていなくてもよい。ハンドルスイッチ15Lに備えられるボタンは、ジョイスティック30のスティック40よりも右方に配置されていてもよい。ハンドルスイッチ15Lに備えられるボタンの位置は、特に限定されない。また、ジョイスティック30の位置も特に限定されない。スティック40はハンドルスイッチ15Lの下半部に設けられていなくてもよい。例えば、スティック40はハンドルスイッチ15Lの上半部に設けられていてもよい。
【0093】
ジョイスティック30における左グリップ11Lの径方向の外端30tは、ターンスイッチ23およびホーンボタン22よりも左グリップ11Lの径方向の外方に位置していなくてもよい。
【0094】
ジョイスティック30は、右ハンドルスイッチ15Rに備えられていてもよい。ジョイスティック30は、右グリップ11Rの左方に配置されていてもよい。
【0095】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。前述のハンドルスイッチ15Lは、ハンドルバーを備える任意の車両に対して適用可能である。
【0096】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0097】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、10…ハンドルバー、11L…左グリップ(グリップ、固定グリップ)、11R…右グリップ(アクセルグリップ)、15L…左ハンドルスイッチ(ハンドルスイッチ)、22…ホーンボタン、23…ターンスイッチ、24…ヘッドライトボタン(ボタン)、30…ジョイスティック、34…操作ボタン、34a…溝、40…スティック、41…ピン、41a…第1端部、41b…第2端部、42…レバー、42A…筒部、42a…第1脚部、42b…第2脚部、42c…第3脚部、42d…第4脚部、50…支持ケース、51…ケース本体、52…ガイド部材、53…ピン孔、53a…第1内周縁、53b…第2内周縁、53c…第3内周縁、53d…第4内周縁、53i…中央内周縁、54a…第1斜面、54b…第2斜面、54c…第3斜面、54d…第4斜面、55…円筒部、60…基板、61…第1ボタン、62…第2ボタン、63…第3ボタン、64…第4ボタン、65…中央ボタン、70a…第1スライダ、70b…第2スライダ、70c…第3スライダ、70d…第4スライダ、70e…中央スライダ、