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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178112
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】自律移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221125BHJP
   A47L 9/24 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G05D1/02 K
A47L9/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084666
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】円谷 優佑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DA00
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB10
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
(57)【要約】
【課題】
移動不能な状態になる確率の高い領域を走行する前に掃除済となる領域を増大させるロボット掃除機を提供する
【解決手段】
ロボット掃除機100であって、周囲の物体やゴミを検知するセンサ101と、ロボット掃除機100を走行させる為の駆動部103と、各部から受信した情報から経路を生成し、各部から受信した情報から前記移動体を制御する制御部102を備え、制御部102では、領域の順番と障害物によって移動を妨げられる可能性とに基づいて経路を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動に伴い掃除を実行する自律移動体であって、
前記掃除を行う掃除領域を構成する複数の領域それぞれを検知する検知部と、
前記検知部での検知結果に応じて、前記掃除領域における掃除に関する見込値を算出し、
算出された前記見込値に従って、前記掃除のための移動経路を特定し、
特定された前記移動経路で掃除を実行するための制御指令を出力する制御部と、
前記制御指令に従って、前記自律移動体の移動を行うための駆動部を有する自律移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の自律移動体において、
前記制御部は、
前記掃除のための複数の移動経路候補を生成し、
前記見込値として、生成された複数の移動経路候補それぞれの見込値を算出し、
算出されたそれぞれの見込値に従って、前記複数の移動経路候補から前記掃除のための移動経路を選択する自律移動体。
【請求項3】
請求項2に記載の自律移動体において、
前記制御部は、
さらに、前記検知結果に応じて、前記領域における移動が妨げられる確率を算出し、
前記見込値として、前記掃除の期待値を、前記確率を用いて算出する自律移動体。
【請求項4】
請求項3に記載の自律移動体において、
前記制御部は、前記期待値として、前記掃除を行う面積の期待値を算出する自律移動体。
【請求項5】
:実施例4
請求項3に記載の自律移動体において、
前記制御部は、前記見込値として、前記期待値および前記掃除の時間からなる評価値を用いる自律移動体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の自律移動体において、
前記制御部は、前記移動経路がより短くなるように当該移動経路を特定する自律移動体。
【請求項7】
請求項6に記載の自律移動体において、
前記検知部は、前記複数の領域ごとに、障害物を検知し、
前記制御部は、前記移動経路として、障害物が検知さない領域を、障害物が検知された領域より出発位置に近い位置に配置する移動経路を特定する自律移動体。
【請求項8】
請求項3または4のいずれかに記載の自律移動体において、
前記制御部は、前記期待値を、前記領域に存在するゴミの量に基づいて算出する自律移動体。
【請求項9】
請求項3に記載の自律移動体において、
前記制御部は、前記複数の移動経路候補を、前記領域における移動が妨げられる確率が予め定められた閾値以下の領域で構成するように生成する自律移動体。
【請求項10】
請求項1に記載の自律移動体において、
前記制御部は、通信部を用いて、前記駆動部を用いた移動に伴う掃除の結果を、端末装置に送信し、
前記端末装置では、前記掃除の結果を表示する自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動に伴い所定の機能を実行する自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動に伴い所定の機能として、部屋の掃除を行う自律移動体としては、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の段落0010には「移動不能の状態となる可能性のある対象物の掃除とそれ以外の部分の掃除との順番を考慮した移動モードを自動的に生成して、ユーザに提供することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-171018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自律移動体の1つであるロボット掃除機においては移動不能な状態に陥らず、部屋全体の掃除を行うことが望まれる。特許文献1には、自律移動掃除機が移動できない領域の情報を用いて、移動モードを生成することは開示されているが、より多くの領域を掃除することは考慮されていない。このように、単に移動できない領域を考慮しただけでは、本来移動できる領域でも掃除を行わないまま残されてしまうことがある。例えば、移動経路の最初の領域が移動不能な場合、まったく移動ができない、つまり、掃除ができないことになる。また、移動が不能な領域を避ける移動経路を作成すると、経路が長くなる場合が考えられる。このように、経路が長いと掃除時間が長くなるため、掃除途中で電池が切れる等の課題が生じる。
【0005】
そこで、本発明では、自律移動体について、より効率的に機能を実行するための移動を実現する移動経路を作成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明では、掃除などの機能に関する見込値に基づいて、移動体の移動経路を特定する。より詳細には、移動に伴い掃除を実行する自律移動体であって、前記掃除を行う掃除領域を構成する複数の領域それぞれを検知する検知部と、前記検知部での検知結果に応じて、前記掃除領域における掃除に関する見込値を算出し、算出された前記見込値に従って、前記掃除のための移動経路を特定し、特定された前記移動経路で掃除を実行するための制御指令を出力する制御部と、前記制御指令に従って、前記自律移動体の移動を行うための駆動部を有する自律移動体である。
【0007】
なお、自律移動体には、他の装置(端末装置など)からの指示に応じて、該当の機能を実行するものも含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自律移動体の機能により達成する見込値に応じた移動経路を特定でき、より効率的な機能を実現できる。その一例として、掃除済となる面積をより増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るロボット掃除機のシステムの構成図である。
図2】本発明の実施例1に係るロボット掃除機の掃除領域を示す模式図である。
図3】本発明の実施例1に係るルート候補情報を示す図である。
図4】本発明の実施例1における効果を説明するための図である。
図5】本発明の実施例2に係るロボット掃除機の掃除領域を示す模式図である。
図6】本発明の実施例2に係るルート候補情報を示す図である。
図7】本発明の実施例2における効果を説明するための図である。
図8】本発明の実施例3に係るルート候補情報を示す図である。
図9】本発明の実施例4に係るルート候補情報を示す図である。
図10】本発明の実施例5で作成される物体確率テーブルを示す図である。
図11】本発明の実施例に係る全体構成を示す図である。
図12】本発明の実施例1で用いられる確率マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例1~6について、説明する。各実施例では、自律移動体として、ロボット掃除機を例に説明する。つまり、各実施例では、その機能として掃除を例に、走行経路である掃除のルートの特定を例に説明する。但し、本発明は、ロボット掃除に限定されず、巡回ロボット、案内ロボット、保守ロボットなど各種移動体に適用できる。
【実施例0011】
<全体構成>
まず、実施例1を、図1~4を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るロボット掃除機100のシステムの構成図である。図1において、ロボット掃除機100は、センサ101、制御部102、駆動部103および記憶部104を有する。また、ロボット掃除機100は、図示しない掃除を実行するための機構を有する。例えば、その機構として、モーターなどの吸引機構やブラシ機構を有する。さらに、ロボット掃除機100は、さらに、利用者からの入力を受け付ける入力部や利用者に対する情報を出力する出力部を有することが望ましい。ここで、入力部および出力部は、タッチパネルで構成することが可能である。また、入力や出力は、音声を介して実現してもよい。
【0012】
以下、ロボット掃除機100の構成要素について、説明する。
<センサ101>
本実施例において、センサ101はカメラであり、ロボット掃除機100の周囲の物体の形状や位置を検知する。ここで、センサ101で検知された物体の形状や位置を、制御部102に送信され、記憶部104に記憶される。このように、センサ101では、検知結果を取得する。
【0013】
なお、本実施例では、センサ101をカメラとしたが、この限りでなく、超音波センサ、光学センサ、変位センサ等を用いても良い。つまり、センサ101は、検知機能を有する、つまり、検知部として機能できればよい
<制御部102>
制御部102は、制御プログラムに従って、ロボット掃除機100の稼働を制御するための制御指令を出力するものであり、CPUといったプロセッサで実現できる。より具体的には、制御部102は、駆動部103やブラシ機構、吸引機構の稼働を制御する。また、制御部102は、タッチパネルが受け付けた操作指示に従うことも可能である。
【0014】
なお、制御部102の処理の詳細は、後述する。また、制御プログラムは、後述する記憶部104に記憶される。
<駆動部103>
駆動部103は、制御部102から受信した制御指令に基づいて動作し、ロボット掃除機100を移動させる。このため、駆動部103は、モーターで実現でき、図示しない被駆動部を、制御信号に従って駆動する。
<記憶部104>
記憶部104は、上述の制御プログラム、センサ101で検知された情報など、ルートの特定に必要な情報を記憶する。これらの情報については、後述する。
<掃除領域>
次に、図2に、ロボット掃除機100が掃除を行う掃除領域を示す模式図を示す。図2では、掃除領域として、部屋200を記載している。そして、部屋200は、各領域(A~I)で構成されている。また、図2では、領域IとCのそれぞれに、障害物として電気コード201と扇風機202が置かれていることを示す。また、ロボット掃除機100が、掃除の出発位置として、領域Aに存在している。
【0015】
以下、ロボット掃除機100は、これら障害物を考慮して、部屋200に対する掃除のためのルート特定について、説明する。本処理は、制御部102で実行される。
<制御部でのルート特定処理>
制御部102は、各領域(A~I)における移動不能となる確率を用いて、掃除を行うためのルートを生成する。以下、その詳細を説明する。
【0016】
まず、制御部102は、センサ101で検知された部屋200を、領域(A~I)に分割する。この際、領域(A~I)は略同一の面積、形状であることが望ましい。これは、移動不能となる確率を用いるため、その条件を統一化するためである。なお、予め記憶部104が、各領域(A~I)に分割された部屋200の情報を格納しておいてもよし、他の装置などからこの情報を受け付けてもよい。
【0017】
次に、制御部102は、検知された結果を用いて、各領域(A~I)においてロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率Pa~Piを算出する。このために、例えば、制御部102は、Pk=Nerrork/Nallkにより、この確率を求める。
【0018】
ここで、Pkは、領域kにおける移動不能な状態となる確率である。また、Nerrorkは、領域kにおいて、ロボット掃除機100が移動不能な状態となった回数である。Nallkは、ロボット掃除機100が領域に侵入(走行)した回数である。このため、制御部102は、事前にロボット掃除機100を、試走させることが望ましい。
【0019】
なお、移動体がある領域において移動不能な状態となる確率は形状や機構等の移動体の構造によって異なるが、上記手法で移動不能な状態となる確率を求めることで異なる移動体においても同様の経路生成手法を適用することが可能となる。ここで、一般的には、ロボット掃除機は電気コードが機体に絡まる、扇風機等の台座に乗り上げる等によってスタックが生じる。特に、電気コードはロボット掃除機の苦手とする物体であり、高い確率でスタックが生じる。また、障害物のない箇所でスタックすることは稀である。
【0020】
ここで、実施例1においては、電気コード201が存在する領域Iのロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率Piが0.9である。また、扇風機202が存在する領域Cにおいてロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率Pcが0.5である。さらに、物体の存在しない他の領域におけるロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率が0である。これらは、記憶部104に格納される物体確率テーブルに記録され、制御部102はこれを読み込むことで、以下の処理において、各確率を特定する。なお、本実施例では物体確率テーブルを用いたが、何らかの手段で確率が特定できればよいので、これに限定されない。
【0021】
なお、制御部102は、このように算出された確率を、領域に対応付けて、確率マップとして、記憶部104に記憶する。この確率マップを、図12に示す。なお、図12では、確率マップをマトリックス状に表現しているが、確率マップは領域とその確率の対応関係が示されればよく、図12に示される形状に限定されない。
【0022】
次に、制御部102は、領域(A~I)を重複なくすべてを巡回するルート候補(1~8)を生成する。つまり、図3の掃除順序を含むルート候補(1~8)を生成する。なお、ルート候補は、掃除のための移動経路候補であって、領域(A~I)の一部を含むものとしてもよいし、重複を許容してもよい。
【0023】
次に、制御部102は、(数1)を用いて、各ルート候補(1~8)における、ロボット掃除機100が掃除を行う面積の期待値を算出する。つまり、制御部102は、見込値として、面積の期待値を算出する。
【0024】
ここで、Pkはk番目に通過する領域におけるロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率であり、nは領域の個数、各領域の面積は1である。
【0025】
【数1】
【0026】
この結果、制御部102は、各ルート候補とその期待値を対応付けたルート候補情報を作成することになる。このルート候補情報を、図3に示す。そして、制御部102は、ルート候補情報を記憶部104に記憶することが望ましい。
【0027】
次に、制御部102は、各ルート候補(1~8)の期待値を比較する。そして、制御部102は、最も期待値の高いルート候補を、ルートとして選択する。
【0028】
そして、制御部102は、選択されたルートに応じた制御指令を作成し、駆動部103にこれを出力する。この結果、ロボット掃除機100は、選択されたルートに従って移動することになる。
【0029】
次に、図4を用いて、本実施例の効果を説明する。図4において、図4(a)は、最も期待値の高いルート候補1の経路401およびルート候補情報を示す。また、図4(b)に、最も期待値の低いルート候補8の経路402およびルート候補情報を示す。
【0030】
まず、図4(a)において、経路401は、A-D-G-H-E-B-C-F-Iの順に各領域を移動すること示している。ここで、経路401においては、出発位置Aに近い領域D-G-H-E-Bとの6つの領域では障害物もなく、移動が可能であり掃除を実行できる可能性が高いことが分かる。また、経路401は、移動不能な状態となる確率の高い領域Iを最後としている。これらから、ルート候補1(経路401)の期待値が高いことが判断できる。
【0031】
また、図4(b)において、経路402は、A-B-C-F-I-H-E-D―Gの順に各領域を移動すること示している。経路401においては、出発位置Aに近い領域Bまでしか、障害物がなく、さたに、領域Iを5番目に通過することから期待値が低く算出されている。
【0032】
さらに、経路402(ルート候補8)は、経路401(ルート候補1)と比べ、領域DGEHとの走行できる可能性が高い領域を後にしている。このため、本来掃除ができるこれらの領域について、領域CやIでの走行不能のために掃除ができない可能性が高まる。このように、本実施例では、障害物が検知さない領域を、障害物が検知された領域より出発位置に近く配置するルートとすることで、掃除できる面積を増加させることが可能になる。これは、移動不能の確率が低い領域を優先し、無駄な移動を防ぐことを可能とする。
【0033】
以上のように、最も期待値の高いルート候補を、ルートして選択することで、ロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率の低い領域を優先して掃除を行うルートを選択可能となる。なお、実施例1においては、部屋200を領域(A~I)に分割したが、この限りでなく、他の分割方法でもよい。また、実施例1においては、ロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率をPk=Nerrork/Nallkから求めたが、この限りでなく、センサ101から受信した情報に基づいて決定してもよい。また、実施例1において制御部102はルート候補(1~8)について、(数1)に基づいてルートを選択する手法でルートの特定、つまり、移動経路の特定を行った。但し、移動経路の特定はこの限りでなく、ロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率を考慮した経路生成手法であれば局所探索法や動的計画法、分枝限定法等の他の手法でルートを生成してもよい。
【実施例0034】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、実施例1に比べ、埃を含むゴミの量、つまり、掃除の必要性も考慮して、期待値を算出するものである。なお、実施例2においても、実施例1と同じロボット掃除機100を用いるため、この構成についての説明は省略する。
<掃除領域>
まず、図5は、本実施例に係るロボット掃除機100の掃除領域を示す模式図である。実施例1の掃除領域を示す図2と比較して、領域Gに埃203が溜まっている。なお、埃203は、他の領域と比較して、領域Gに多く溜まっていることを示し、他の領域に埃があることを妨げない。
<制御部102でのルート特定処理>
上述のように、本実施例では、埃の量を考慮して、ルートを特定する。以下、その詳細を説明する。
【0035】
まず、制御部102は、センサ101で検知された部屋200を領域(A~I)に分割する。この際、この際、領域(A~I)は略同一の面積、形状であることが望ましい。これは、移動不能となる確率を用いるため、その条件を統一化するためである。なお、予め記憶部104が、各領域(A~I)に分割された部屋200の情報を格納しておいてもよいし、他の装置などからこの情報を受け付けてもよい。
【0036】
次に、制御部102は、検知された結果を用いて、各領域(A~I)においてロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率Pa~Piを算出する。本実施例の確率Pa~Piも、実施例1に算出する。つまり、電気コード201が存在する領域Iの確率Piが0.9、扇風機202が存在する領域Cの確率Pcが0.5、電気コード201や扇風機202の存在しない他の領域確率が0とである。この結果、制御部102は、実施例1で説明した確率マップを作成し、記憶部104に記憶する。ここまでは、実施例1と同様である。
【0037】
また、制御部102は、センサ101から受信した情報に基づいて各領域(A~I)におけるゴミの量Da~Diを算出する。本実施例では、埃203の存在する領域Gのゴミの量が5、埃203の存在しない他の領域のゴミの量が1である。
【0038】
次に、制御部102は、上述の確率やゴミの量を用いて、領域(A~I)を重複なくすべてを巡回するルート候補(1~8)を生成する。つまり、制御部102は、図6に示す掃除順序を特定する。なお、実施例1と同様に、ルート候補は、領域(A~I)の一部を含むものとしてもよいし、重複を許容してもよい。
【0039】
次に、制御部102は、各ルート候補について、(数2)に基づいて掃除を完了する気期待値を算出する。この(数2)は、(数1)と比較して、ゴミの量(Dk)を加味したものである。
【0040】
【数2】
【0041】
(数2)において、Pkはk番目に通過する領域におけるロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率であり、Dkはk番目に通過する領域に存在するゴミの量である。
【0042】
この結果、制御部102は、図6に示すルート候補情報を作成することになる。つまり、ルート候補情報として、掃除順序およびその期待値が対応付けられる。制御部102は、このルート候補情報を記憶部104に記憶する。
【0043】
次に、制御部102は各ルート候補(1~8)の期待値を比較し、最も期待値の高いルート候補を、ルートとして選択する。
【0044】
そして、制御部102は、選択されたルートに応じた制御指令を作成し、駆動部103にこれを出力する。この結果、ロボット掃除機100は、選択されたルートに従って移動することになる。
【0045】
次に、図7を用いて、本実施例の効果を説明する。図7において、図7(a)は、ルート候補4に従った経路501を示す。図7(b)は、ルート候補8に従った経路502を示す。経路501では、ロボット掃除機100がゴミの量が多い領域Gを7番目に走行していることから期待値が、経路502より高い。逆に、経路502では領域Gを最後に通過することから、経路501と比較して期待値が低く算出されている。上記のとおり、期待値の高いルートを選択することで、埃203が存在する領域を優先して掃除可能となる。
【0046】
実施例2において部屋200を領域(A~I)に分割したが、この限りでなく、他の分割方法でもよい。また、実施例2においてロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率とゴミの量を用いたが、この限りでなく、センサ101から受信した情報や過去に取得した情報に基づいて決定してもよい。また、実施例2において制御部102はルート候補(1~8)を生成したが、この限りでなく、局所探索法や動的計画法、分枝限定法等、他の手法でルートを生成してもよい。
【0047】
以上のように、本実施例では、ゴミの量を考慮したルートの特定ができるため、掃除の必要性の高い領域から優先的に掃除が可能になる。
【実施例0048】
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3では、部屋200のうち、所定条件を満たす領域を抽出して、これらを巡回するルートを特定するものである。本実施例では、所定条件として、ロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率が閾値より低い場合を例に説明する。ここで、本実施例では、閾値の一例として、0.8を用いる。
【0049】
なお、本実施例においても、実施例1と同じロボット掃除機100を用いるため、この構成についての説明は省略する。また、掃除領域についても実施例1や2と同様であるため、その説明も省略する。
<制御部102でのルート特定処理>
まず、制御部102は、図12に示す確率マップを用いて、部屋200のうち移動不能な状態となる確率が0.8以下の領域を抽出する。具体的には、制御部102は、領域A~Iのうち、領域Iを除く、領域A~Fの8領域を抽出する。
【0050】
次に、制御部102は、実施例1もしくは実施例2と同様の処理で、ルート候補を生成し、期待値の算出することで、ルート候補情報を生成する。この結果、制御部102は、図8に示すルート候補情報を生成することになる。そして、制御部102は、ルート候補情報から、7.0と期待値が最も高いルート候補1を選択する。
【0051】
次に、制御部102は、実施例1や2と同様に、ルート候補1で移動するための制御指令を作成し、駆動部103に出力する。この結果、ロボット掃除機100は、選択されたルートに従って移動することになる。
【0052】
以上の実施例3によれば、所定条件を満たす領域を選択してルートを特定するため、移動不能となる可能性の高い領域を避けた掃除が可能になる。このため、より移動不能になる可能性を低減できる。さらに、ルート候補の数が減らせるため、演算量を削減でき、より効率的なルート特定が可能となる。
【実施例0053】
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例4では、見込値として、上述の期待値に加え、掃除の時間も考慮して、ルートの特定を行う。以下、実施例4の説明を行うが、本実施例においても、実施例1と同じロボット掃除機100を用いるため、この構成についての説明は省略する。また、掃除領域についても実施例1や2と同様であるため、その説明も省略する。
<制御部102でのルート特定処理>
制御部102は、実施例1~3と同様の処理で、掃除順序を含むルート候補を作成する。ここで、制御部102は、図3、6、8と同様のルート候補を作成できるが、本実施例では図9に示す掃除順序を作成したものとする。
【0054】
次に、制御部102は、各ルート候補について、ロボット掃除機100が掃除を完了する面積の期待値および掃除を完了するまでにかかる時間を用いて、評価値を算出する。
【0055】
具体的には、制御部102は、以下の(数3)を用いて、評価値を算出する。
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、Pkはk番目に通過する領域におけるロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率であり、Timeは掃除にかかる時間である。また、s、tは重みであり、実施例4においてはsを1、tを0.1とする。ロボット掃除機100の旋回には時間がかかる為、旋回回数が多いルートを選択した場合には掃除完了までに時間が多くかかることを考慮している。
【0058】
また、一般的なロボット掃除機が1m直進に要する時間は2秒、90度旋回に要する時間が0.5秒程度であることから、実施例1において領域を掃除する際にかかる時間を2、90度の旋回にかかる時間を0.5とし、各ルートにおけるTimeを算出できる
次に、制御部102は、図9の各ルート候補(1~8)の評価値を比較し、評価値の最も高いルート候補を、ルートとして選択する。
【0059】
そして、制御部102は、選択されたルートに応じた制御指令を作成し、駆動部103にこれを出力する。この結果、ロボット掃除機100は、選択されたルートに従って移動することになる。これによりロボット掃除機100は、自身が移動不能な状態となる確率の低い領域を優先しつつ、かつ短時間で部屋の掃除を行うことが可能となる。
【0060】
実施例4において、部屋200を領域(A~I)に分割したが、この限りでなく、他の分割方法でもよい。また、実施例4においてロボット掃除機100が移動不能な状態となる確率を設定したが、この限りでなく、センサ101から受信した情報に基づいて決定してもよい。
【0061】
また、実施例4において重みs、tを設定したが、この限りでなく、他の値でもよい。例えば、t/sの値を大きく設定することにより、短時間で掃除可能なルートを選択することが可能となり、t/sの値を小さくすることで掃除面積の期待値が大きいルートを選択することが可能となる。また、実施例4において制御部102はルート候補(1~8)を生成したが、この限りでなく、局所探索法や動的計画法、分枝限定法等、他の手法でルートを生成してもよい。
【実施例0062】
次に、実施例5について説明する。実施例5では、図10に示す物体確率テーブルに作成を行う。なお、本実施例においても、実施例1と同じロボット掃除機100を用いるため、この構成についての説明は省略する。また、掃除領域についても実施例1や2と同様であるため、その説明も省略する。
<制御部102での物体確率テーブル作成処理>
まず、制御部102は、センサ101を起動して、部屋200を検知する。この結果、制御部102は、部屋200の領域(A~I)の物体を特定し、物体が存在する領域と対応付けておく。
【0063】
また、制御部102は、部屋200を試走するための制御指令を作成し、駆動部103に出力する。この結果、ロボット掃除機100は、駆動部103の駆動に従って、部屋200内を複数回試走する。この際、制御指令は、領域(A~I)のそれぞれをまんべんなく走行するようにする指令であることが望ましい。また、制御指令は、各領域(A~I)への侵入方向、退出方向がまんべんなくなるようにすることが望ましい。
【0064】
次に、制御部102は、試走の結果を取得し、計測する。つまり、各領域での走行回数(Nallk)および移動不能な状態となった回数(Nerrork)を計数する。そして、領域ごとに、Pk=Nerrork/Nallkを算出する。
【0065】
次に、制御部102は、各領域に対応付けられた物体と、算出された確率Pkを対応づけて、物体確率テーブルを作成する。そして、制御部102は、物体確率テーブルを記憶部104に記憶することができる。この結果、実施例1~4で、物体確率テーブルを用いることが可能となる。
【実施例0066】
次に、実施例6について、説明する。実施例6では、ロボット掃除機100が、スマートフォンなどの端末装置600と連携する実施例である。以下、実施例6の説明を行うが、本実施例においても、実施例1と同じロボット掃除機100を用いるため、この構成についての説明は省略する。また、掃除領域についても実施例1や2と同様であるため、その説明も省略する。
<全体構成および端末装置600>
図11に、本実施例の全体構成を示す。本実施例には、ロボット掃除機100と端末装置600が互いに通信できるようになっている。
【0067】
ここで、端末装置600は、スマートフォン、タブレット、PCといったコンピュータで実現できる。このため、端末装置600は、タッチパネルやディスプレイ、キーボードといったインターフェース部を有する。また、端末装置600は、ロボット掃除機100の管理プログラムに従って各種処理を事項する。
【0068】
そして、端末装置600は、通信機能を有し、ロボット掃除機100と、近距離無線通信を介して通信してもよいし、インターネットなどに接続されるサーバを介して通信してもよい。
<ロボット掃除機100と端末装置600の通信処理>
まず、実施例1~4の結果、ロボット掃除機100が移動し、掃除を実行する。そして、ロボット掃除機100の制御部102が、実行した掃除の結果を特定する。つまり、制御部102は、領域(A~I)のうち、掃除が完了した領域と完了していない領域を特定する。
【0069】
次に、制御部102は、図示しないロボット掃除機100の通信部を用いて、端末装置600に掃除の結果を送信する。
【0070】
この結果、端末装置600は、掃除の結果を表示する。この表示は、図11に示すように図形で表示してもよいし、リスト形式で表示してもよい。図11では、掃除は完了していない領域は白抜きで示されている。これによりユーザはロボット掃除機100が掃除を完了していない箇所を認識することが可能となる。
【0071】
本実施例では、掃除の実行した領域を示しているが、実施例1~4で特定したルートを、端末装置600が表示する構成としてもよい。この際、実施例3のように、所定条件を満たす領域を掃除領域とする場合、図11と同様の形式で掃除領域とそれ以外を区別して表示してもよい。
【0072】
以上の各実施例では、以下の手順で、ルートを特定することになる。
(1)センサ101での検知結果に基づいて、各領域(A~I)の状況の一種である不能となる確率を特定。
(2)各領域(A~I)を含む複数のルート候補を生成。
(3)生成された複数のルート候補それぞれについて、掃除の見込値の一種である期待値を算出。
(4)算出された掃除の見込値に基づいて、ルートを選択することで、ルートを生成。
【0073】
なお、本実施例において、(3)では(1)の確率を用いているが、これに限定されない。掃除の見込値については、センサ101での検知結果に基づき算出するものであればよい。また、見込値は、掃除の面積、移動距離、時間を考慮したものを用いてもよい。この際、見込値として、これらの期待値や時間およびこれらの組み合わせを用いてもよい。
【0074】
また、本発明は、上述の各実施例に限定されず、様々な変形例も含まれる。例えば、過去に特定したルートもしくは掃除を実行したルートを流用してもよい。また、掃除中にロボット掃除機100が移動不能(スタック等)した場合、当該領域を後回しにしてリルート行ってもよいし、確率マップを用いてリルートしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
100…ロボット掃除機、101…センサ、102…制御部、103…駆動部、104…記憶部、200…部屋、201…電気コード、202…扇風機、203…埃、600…端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12