(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178116
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】室圧制御装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20221125BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221125BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F13/02 Z
F24F7/06 C
F24F3/044
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084672
(22)【出願日】2021-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】森重 公康
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕紀
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3L053BB10
3L058BF09
3L080AA03
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】風路と対象室の圧力変動を、迅速に抑制できる圧力変動抑制ユニットを提供する。
【解決手段】圧力変動抑制ユニット100は、室圧を所定の圧力に調整される対象室に接続し対象室に空気を供給する給気ダクトと、対象室に接続して対象室から空気を排出する排気ダクトの少なくとも一方に設けられ、風路の圧力の変動を抑制する。圧力変動抑制ユニット100は、給気ダクト又は排気ダクトに連通する筐体110と、風路の圧力の変動により筐体110の内を変位する可動板130と、可動板130を風路に向けて付勢する付勢部材140と、風路の圧力の変動により弛張し、筐体110と可動板130とを接続して筐体110の内を密閉する弛張部材150と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室圧を所定の圧力に調整される対象室に接続して前記対象室に空気を供給する給気ダクトと、前記対象室に接続して前記対象室から空気を排出する排気ダクトの少なくとも一方に設けられ、風路の圧力の変動を抑制する圧力変動抑制ユニットであって、
前記給気ダクト又は前記排気ダクトに連通する筐体と、
前記風路の圧力の変動により、前記筐体の内を変位する可動板と、
前記可動板を前記風路に向けて付勢する付勢部材と、
前記風路の圧力の変動により弛張し、前記筐体と前記可動板とを接続して前記筐体の内を密閉する弛張部材と、を有する、
圧力変動抑制ユニット。
【請求項2】
前記給気ダクトは、前記風路の風量を制御する定風量装置と、前記定風量装置よりも下流側に位置するフィルタとを有し、
前記給気ダクトの前記定風量装置と前記フィルタとの間に設けられる、
請求項1に記載の圧力変動抑制ユニット。
【請求項3】
前記可動板が前記風路の圧力の変動により変位する方向をガイドする、ガイド部を有する、
請求項1又は2に記載の圧力変動抑制ユニット。
【請求項4】
前記給気ダクト又は前記排気ダクトと前記筐体とを接続する接続部を有し、
前記接続部は、前記給気ダクト又は前記排気ダクトに接続する側が狭いホッパー形状を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力変動抑制ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風路と対象室の圧力変動を抑制する圧力変動抑制ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造室、クリーンルーム、チャンバ等の室圧を所定の圧力に調整する制御装置が知られている。例えば、特許文献1は、密閉チャンバの内部圧力を所定の圧力に維持する内圧制御装置を開示している。
【0003】
特許文献1の内圧制御装置は、無菌フィルタを介して密閉チャンバ内に給気する給気通路と、無菌フィルタを介して密閉チャンバと連結され密閉チャンバから排気する排気通路と、給気通路を開閉する給気バルブと、排気通路を開閉する排気バルブと、バルブの開閉を制御する制御手段と、を備える。内圧制御装置は、更に、排気通路の無菌フィルタと排気バルブの間に設けられ、密閉チャンバ内の急激な圧力変動を緩和する圧力緩和手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の圧力緩和手段は、密閉チャンバ内を除染する過酸化水素蒸気の供給と凝縮によって生じる、密閉チャンバ内の圧力の急激な変動を緩和する。特許文献1の圧力緩和手段は、給気又は排気を行うことなく、密閉チャンバ内の圧力の急激な変動を緩和する構成であり、使用中に室内の圧力が細かく変動する医薬品製造室、食品加工室、細菌実験室、クリーンルーム等における室圧の変動を特許文献1の圧力緩和手段により抑制することは、困難である。
【0006】
例えば、医薬品製造室、食品加工室、細菌実験室、クリーンルーム等では、室内に設けられた機器による局所的な排気が生じるので、局所的な排気に応じた空気を室内に取り込む必要がある。また、医薬品製造室、食品加工室、細菌実験室、クリーンルーム等では、外部空気の圧力変動(屋外風圧の変動)を吸収して、室間の圧力差の逆転を防ぐ必要もある。したがって、密閉チャンバ内の圧力の急激な変動を緩和する圧力緩和手段を、医薬品製造室、食品加工室、細菌実験室、クリーンルーム等に適用することは、困難である。
【0007】
また、特許文献1では、圧力緩和手段として、シリンダとピストンとを有する気体収容容器が挙げられている。この気体収容容器は、連通路を介して排気ダクトに接続され、ピストンよって分割された一方のシリンダ室がパスボックス(密閉チャンバ)に連通され、ピストンを一方のシリンダ室に向けて押圧するバネが他方のシリンダ室に設けられている。気体収容容器では、ピストンがシリンダ内を移動することによって、パスボックスの内部圧力の急激な変動を抑制する。ここで、一方のシリンダ室から過酸化水素蒸気が漏れることを防ぐためには、ピストンはシリンダに密着する必要がある。したがって、ピストンが、室圧の細かな変動に追随して迅速に移動し、室圧の変動を抑制することは困難である。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、風路と対象室の圧力変動を、迅速に抑制できる圧力変動抑制ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る圧力変動抑制ユニットは、
室圧を所定の圧力に調整される対象室に接続して前記対象室に空気を供給する給気ダクトと、前記対象室に接続して前記対象室から空気を排出する排気ダクトの少なくとも一方に設けられ、風路の圧力の変動を抑制する圧力変動抑制ユニットであって、
前記給気ダクト又は前記排気ダクトに連通する筐体と、
前記風路の圧力の変動により、前記筐体の内を変位する可動板と、
前記可動板を前記風路に向けて付勢する付勢部材と、
前記風路の圧力の変動により弛張し、前記筐体と前記可動板とを接続して前記筐体の内を密閉する弛張部材と、を有する。
【0010】
上記の給気ダクトは、
前記風路の風量を制御する定風量装置と、前記定風量装置よりも下流側に位置するフィルタとを有し、
上記の圧力変動抑制ユニットは、
前記給気ダクトの前記定風量装置と前記フィルタとの間に設けられてもよい。
【0011】
上記の圧力変動抑制ユニットは、
前記可動板が前記風路の圧力の変動により変位する方向をガイドする、ガイド部を有してもよい。
【0012】
上記の圧力変動抑制ユニットは、
前記給気ダクト又は前記排気ダクトと前記筐体とを接続する接続部を有し、
前記接続部は、前記給気ダクト又は前記排気ダクトに接続する側が狭いホッパー形状を有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風路の圧力の変動により変位する可動板と、給気ダクト又は排気ダクトに連通する筐体とを、風路の圧力の変動により弛張する弛張部材により接続するので、風路の圧力変動を迅速に抑制できる。さらに、風路の圧力変動を迅速に抑制することにより、対象室の圧力変動を迅速に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1に係る室圧制御システムの構成を示す図
【
図2】実施形態1に係る圧力変動抑制ユニットの断面を示す模式図
【
図3】実施形態1に係る圧力変動抑制ユニットの動作を説明するための模式図
【
図4】実施形態1に係る圧力変動抑制ユニットの動作を説明するための模式図
【
図5】実施形態2に係る圧力変動抑制ユニットの断面を示す模式図
【
図6】実施形態3に係る圧力変動抑制ユニットの断面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る圧力変動抑制ユニットについて、図面を参照して説明する。
【0016】
<実施形態1>
まず、
図1を参照して、本実施形態の圧力変動抑制ユニット100が設けられる室圧制御システム10を説明する。室圧制御システム10は、施設Fに設けられている対象室R1の室圧と対象室R2の室圧を制御する。施設Fは、製薬工場、食品加工工場、電子部品製造工場等である。対象室R1、R2は、医薬品製造室、食品加工室、細菌実験室、クリーンルーム等である。本実施形態では、室圧制御システム10は、対象室R1、R2の室圧のそれぞれを、所定の圧力(例えば、大気圧よりも40Pa高い圧力)に制御する。
【0017】
(室圧制御システム)
室圧制御システム10は、
図1に示すように、給気機構20と、排気機構40と、室圧センサS1、S2と、制御部80とを備える。給気機構20は対象室R1、R2に空気を供給する。排気機構40は対象室R1、R2から空気を排出する。室圧センサS1は対象室R1の室圧を測定し、室圧センサS2は対象室R2の室圧を測定する。制御部80は、給気機構20から対象室R1、R2に供給される空気の量と、後述する給気ファン34の吐出側の第1給気ダクト24内の圧力及び後述する排気ファン52の吸込側の第1排気ダクト44内の圧力と、対象室R1、R2の室圧とを制御する。
【0018】
室圧制御システム10の給気機構20は、給気ダクト22と、空気清浄機32と、給気ファン34と、外気ダンパ35と、定風量装置36a、36bと、フィルタ38a、38bとを有する。さらに、本実施形態では、給気機構20は圧力変動抑制ユニット100を有する。圧力変動抑制ユニット100については、後述する。
【0019】
給気機構20の給気ダクト22は、対象室R1、R2に空気を供給する風路を形成する。給気ダクト22は、第1給気ダクト24と第2給気ダクト26a、26bとを有する。第1給気ダクト24は、外気OA、又は、外気OAと排気機構40から還流された還気RAを対象室R1、R2に供給する。第2給気ダクト26a、26bのそれぞれは、第1給気ダクト24から分岐して、対象室R1、R2のそれぞれに接続している。
【0020】
給気機構20の空気清浄機32は、第1給気ダクト24の最も上流に設けられる。空気清浄機32は、外気OA中の異物を除く。
【0021】
給気機構20の給気ファン34は、第1給気ダクト24に設けられる。給気ファン34は、外気OA又は外気OAと還気RAを取り込む。給気ファン34は、第2給気ダクト26a、26bと定風量装置36a、36bとフィルタ38a、38bとを介して、外気OA又は外気OAと還気RAを対象室R1、R2に供給する。給気ファン34は、吐出側の第1給気ダクト24内の圧力を、制御部80からの制御信号に基づいて制御する。
【0022】
給気機構20の外気ダンパ35は、第1給気ダクト24の空気清浄機32と給気ファン34の間に設けられる。外気ダンパ35は、給気ファン34に取り込まれる外気OAの量を調整する。
【0023】
給気機構20の定風量装置36aは第2給気ダクト26aに設けられる。定風量装置36aは、対象室R1に供給される空気(すなわち、外気OA又は外気OAと還気RA)の風量が一定になるように制御する。給気機構20の定風量装置36bは第2給気ダクト26bに設けられる。定風量装置36bは、対象室R2に供給される空気の風量が一定になるように制御する。定風量装置36aと定風量装置36bは、制御部80からの制御信号に基づいて、対象室R1、R2に供給される空気の風量を制御する。
【0024】
給気機構20のフィルタ38aは第2給気ダクト26aの定風量装置36aよりも下流側に設けられ、給気機構20のフィルタ38bは第2給気ダクト26bの定風量装置36bよりも下流側に設けられる。フィルタ38a、38bは、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。
【0025】
室圧制御システム10の排気機構40は、排気ダクト42と、排気ファン52と、排気ダンパ53と、還気ダクト54と、還気ダンパ55と、室圧制御ダンパ56a、56bと、フィルタ58a、58bと、を有する。
【0026】
排気機構40の排気ダクト42は、対象室R1、R2から空気を排出する風路を形成する。排気ダクト42は、第1排気ダクト44と第2排気ダクト46a、46bとを有する。第1排気ダクト44は、対象室R1、R2から排出される空気を屋外に排出する。第2排気ダクト46a、46bのそれぞれは、第1排気ダクト44から分岐して、対象室R1、R2のそれぞれに接続している。
【0027】
排気機構40の排気ファン52は、第1排気ダクト44に設けられる。排気ファン52は、フィルタ58a、58bと室圧制御ダンパ56a、56bと第2排気ダクト46a、46bとを介して、対象室R1、R2内から空気を吸入し、吸入した空気を屋外に排出する。排気ファン52は、吸込側の第1排気ダクト44内の圧力を、制御部80からの制御信号に基づいて制御する。
【0028】
排気機構40の排気ダンパ53は、第1排気ダクト44の排気ファン52よりも下流側に設けられる。排気ダンパ53は、屋外に排出される排気EAの量を調整する。また、排気ダンパ53は、還気ダンパ55と共に、給気ファン34に還流される還気RAの量を調整する。
【0029】
排気機構40の還気ダクト54は、第1排気ダクト44の排気ファン52と排気ダンパ53の間と、第1給気ダクト24の外気ダンパ35と給気ファン34との間とを接続している。還気ダクト54は、対象室R1、R2から排出される空気の一部を還気RAとして、給気ファン34に還流する。
【0030】
排気機構40の還気ダンパ55は、還気ダクト54に設けられる。還気ダンパ55は、排気ダンパ53と共に、給気ファン34に還流される還気RAの量を調整する。
【0031】
排気機構40の室圧制御ダンパ56aは、第2排気ダクト46aに設けられる。室圧制御ダンパ56aは、対象室R1の室圧を調整する。排気機構40の室圧制御ダンパ56bは第2排気ダクト46bに設けられ、対象室R2の室圧を調整する。室圧制御ダンパ56aと室圧制御ダンパ56bは、制御部80からの制御信号に基づいて、対象室R1と対象室R2のそれぞれの室圧を制御する。
【0032】
排気機構40のフィルタ58aは第2排気ダクト46aの室圧制御ダンパ56aよりも上流側に設けられ、排気機構40のフィルタ58bは第2排気ダクト46bの室圧制御ダンパ56bよりも上流側に設けられる。フィルタ58a、58bは、例えば、HEPAフィルタである。
【0033】
室圧センサS1、S2のそれぞれは、対象室R1、R2のそれぞれに配置される。室圧センサS1は対象室R1の室圧を測定して、測定した室圧を表す信号を制御部80に送信する。室圧センサS2は対象室R2の室圧を測定して、測定した室圧を表す信号を制御部80に送信する。
【0034】
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等から構成される。制御部80は、室圧センサS1、S2によって測定された対象室R1、R2の室圧に基づいて、室圧制御ダンパ56a、56bを制御する。また、定風量装置36a、36bは、対象室R1、R2に供給される空気(すなわち、外気OA又は外気OAと還気RA)の風量を設定した風量に制御する。これにより、対象室R1、R2に供給される空気の量が制御され、対象室R1、R2の室圧が所定の圧力に制御される。
【0035】
(圧力変動抑制ユニット)
次に、
図2を参照して、圧力変動抑制ユニット100を説明する。本実施形態では、圧力変動抑制ユニット100は、第2給気ダクト26aの定風量装置36aとフィルタ38aの間と、第2給気ダクト26bの定風量装置36bとフィルタ38bの間とに設けられる。第2給気ダクト26aに設けられる圧力変動抑制ユニット100と第2給気ダクト26bに設けられる圧力変動抑制ユニット100は同様であるので、ここでは、第2給気ダクト26aに設けられる圧力変動抑制ユニット100について、説明する。
【0036】
圧力変動抑制ユニット100は、
図2に示すように、筐体110と、カバー120と、可動板130と、付勢部材140と、弛張部材150とを備える。本明細書では、理解を容易にするために、圧力変動抑制ユニット100が第2給気ダクト26aの鉛直上方に設けられているとし、鉛直上方を+Z方向と、風路の方向を+X方向と、+Z方向と+X方向に垂直な方向を+Y方向(紙面の奥方向)として説明する。
【0037】
圧力変動抑制ユニット100の筐体110は、四角筒形状の枠体であり、合成樹脂、金属等から形成される。筐体110は、第2給気ダクト26aに直接接続されて、第2給気ダクト26aに連通している。筐体110の内周面110aには、弛張部材150が取り付けられる。
【0038】
圧力変動抑制ユニット100のカバー120は、箱形形状を有し、側面の1つに開口122が設けられている。カバー120は、合成樹脂、金属等から形成される。カバー120は、
図2に示すように、筐体110の上端部に接続して、筐体110の上端部の開口を覆う。また、カバー120の底板124の内面124aには、付勢部材140の一端が取り付けられている。
【0039】
圧力変動抑制ユニット100の可動板130は、四角形状の平板であり、合成樹脂、金属等から形成される。可動板130は、
図2に示すように、後述する弛張部材150の開口152を塞いだ状態で、弛張部材150に取り付けられる。可動板130は、例えば、接着により弛張部材150に取り付けられる。また、可動板130は、付勢部材140により支持され、付勢部材140により第2給気ダクト26aの風路に向けて付勢されている。可動板130は、第2給気ダクト26aの風路の圧力の変動により、筐体110の内をZ方向に変位する。可動板130の変位と圧力変動抑制ユニット100の動作については、後述する。
【0040】
圧力変動抑制ユニット100の付勢部材140は、例えば、コイルばねである。付勢部材140の一端はカバー120の底板124に取り付けられ、付勢部材140の他端は可動板130に取り付けられている。これにより、付勢部材140は、可動板130を支持し、また、可動板130を第2給気ダクト26aの風路に向けて付勢している。なお、本実施形態では、コイルばねの伸縮方向をガイドするばねガイド126が、カバー120の底板124の内面124aに設けられている。
【0041】
圧力変動抑制ユニット100の弛張部材150は、例えば、中央に開口152を有する合成樹脂製のシートである。弛張部材150は、可動板130により開口152を塞がれた状態で、外周部154を筐体110の内周面110aに固定される。これにより、筐体110内は、弛張部材150と可動板130により密閉される。すなわち、弛張部材150は、筐体110と可動板130とを接続して、筐体110内を密閉している。
【0042】
また、弛張部材150は、第2給気ダクト26aの風路の圧力の変動により、弛張する。具体的には、第2給気ダクト26aの風路の圧力が低い場合、弛張部材150は弛んだ状態にある。そして、第2給気ダクト26aの風路の圧力が増加すると、弛張部材150は張っていく。弛張部材150の弛張と圧力変動抑制ユニット100の動作については、後述する。
【0043】
(圧力変動抑制ユニットの動作)
図2~
図4を参照して、圧力変動抑制ユニット100の動作を説明する。
第2給気ダクト26aの風路の圧力が、対象室R1の室圧を所定の圧力に調整するために最適な圧力である場合(以下、中間状態と記載)、
図2に示すように、付勢部材140が可動板130を風路に向かって付勢する付勢力と風路から可動板130に掛かる圧力とが釣り合い、弛張部材150は弛んだ状態となっている。
【0044】
風路の圧力が中間状態よりも高くなると、風路から可動板130に掛かる圧力も高くなるので、
図3に示すように、付勢部材140が収縮して可動板130は+Z方向に変位し、可動板130の+Z方向の変位により弛張部材150は張っていく。これにより、風路に接続している筐体110の内容積が増加するので、風路の圧力の増加を抑制できる。更に、風路の圧力の増加を抑制できるので、対象室R1の室圧の増加も抑制できる。なお、カバー120と、可動板130と弛張部材150との間の空気は、カバー120の開口122から排出される。
【0045】
一方、風路の圧力が中間状態よりも低くなると、風路から可動板130に掛かる圧力も低くなるので、
図4に示すように、付勢部材140が伸長して可動板130は-Z方向に変位し、可動板130の-Z方向の変位により弛張部材150は更に弛んでいく。これにより、風路に接続している筐体110の内容積が減少するので、風路の圧力の低下を抑制できる。更に、対象室R1の室圧の減少も抑制できる。なお、空気が、カバー120と、可動板130と弛張部材150との間に、カバー120の開口122から流入する。
【0046】
圧力変動抑制ユニット100では、筐体110内を変位する可動板130が弛張部材150により筐体110の内周面110aに接続しているので、可動板130が、筐体110の内周面110aに接触せず、風路の圧力の変動に追随して迅速に変位する。したがって、圧力変動抑制ユニット100は、第2給気ダクト26aの風路の圧力変動を迅速に抑制でき、更に、対象室R1の圧力変動を迅速に抑制できる。
【0047】
以上のように、圧力変動抑制ユニット100は、第2給気ダクト26a、26bの風路の圧力変動と対象室R1、R2の圧力変動を迅速に抑制できる。なお、第2給気ダクト26a、26bの風路の圧力変動が抑制されるので、第2給気ダクト26a、26bの風路の圧力変動に接続している第1給気ダクト24の風路の圧力変動も抑制され、給気ダクト22全体の圧力変動が抑制される。
【0048】
また、圧力変動抑制ユニット100では、可動板130が第2給気ダクト26a、26bに連通する筐体110の内を変位するので、圧力変動抑制ユニット100は、風路抵抗の増加を抑えて、風路の圧力変動を抑制できる。さらに、筐体110を接続するだけで、圧力変動抑制ユニット100を第2給気ダクト26a、26bに設置できるので、既存のダクトにも圧力変動抑制ユニット100を容易に設置できる。
【0049】
<実施形態2>
実施形態1の圧力変動抑制ユニット100では、筐体110が直接第2給気ダクト26a、26bに接続されている。筐体110は接続部160を介して第2給気ダクト26a、26bに接続されてもよい。
【0050】
ここでは、本実施形態の圧力変動抑制ユニット100Aについて説明する。室圧制御システム10のその他の構成は実施形態1の構成と同様である。
【0051】
圧力変動抑制ユニット100Aは、実施形態1の圧力変動抑制ユニット100と同様に、筐体110と、カバー120と、可動板130と、付勢部材140と、弛張部材150とを備える。圧力変動抑制ユニット100Aは、更に、接続部160を備える。本実施形態の筐体110とカバー120と可動板130と付勢部材140と弛張部材150は、実施形態1と同様であるので、
図5を参照して、接続部160を説明する。
【0052】
接続部160は、
図5に示すように、筐体110と第2給気ダクト26a、26bとを接続する。接続部160は合成樹脂、金属等から形成される。接続部160は、第2給気ダクト26a、26bに接続する側が狭いホッパー形状(例えば、中空の逆四角錐台形状)を有している。
【0053】
本実施形態では、接続部160を接続する側が狭いホッパー形状とすることにより、筐体110のXY平面に平行な面での断面積を、第2給気ダクト26a、26bの開口28a、28bのXY平面に平行な面での面積よりも広くできる。これにより、可動板130の面積を広くできると共に、付勢部材140に掛かる力が増大して、可動板130の変位量が大きくなる。すなわち、可動板130の面積を広くすることにより、第2給気ダクト26a、26bの風路の圧力が変動した場合に、筐体110内の体積変化量が大きくなるので、圧力変動をより大きく抑制できる。
また、圧力変動抑制ユニット100Aは、実施形態1の圧力変動抑制ユニット100と同様に、第2給気ダクト26a、26bの風路の圧力変動と対象室R1、R2の圧力変動を迅速に抑制できる。
【0054】
<実施形態3>
圧力変動抑制ユニット100、100Aは、可動板130の変位方向をガイドするガイド部170を備えてもよい。本実施形態では、圧力変動抑制ユニット100Bがガイド部170を備えることを除き、室圧制御システム10の構成は実施形態2と同様であるので、ここでは、本実施形態の圧力変動抑制ユニット100Bについて説明する。
【0055】
圧力変動抑制ユニット100Bは、実施形態2の圧力変動抑制ユニット100Aと同様に、筐体110~接続部160を備える。圧力変動抑制ユニット100Bは、更に、ガイド部170を備える。本実施形態の筐体110~接続部160は、実施形態2と同様であるので、
図6を参照して、ガイド部170を説明する。
【0056】
ガイド部170は、ガイド172とロッド174とを有する。ガイド172は、Z方向に延びる円筒形状を有している。ガイド172は、カバー120の底板124に形成された貫通孔に配置される。ガイド172は、例えば合成樹脂から形成される。
【0057】
ロッド174は、Z方向に延びる棒状体であり、可動板130のカバー側の面に設けられる。ロッド174は、例えば金属から形成される。ロッド174は、ガイド172内に挿入されて、可動板130の変位に伴いガイド172内をZ方向に移動する。
【0058】
本実施形態では、可動板130に設けられたロッド174がガイド172内をZ方向に移動して、可動板130の変位方向をZ方向にガイドする。これにより、可動板130を安定して変位させることができる。
【0059】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本発明は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、筐体110とカバー120は、一体に形成されてもよい。また、可動板130は、筐体110とカバー120とが形成する空間内を変位してもよい。
【0061】
カバー120の開口122は、可動板130の変位によるカバー120内(カバー120と、可動板130と弛張部材150との間)への空気の流入と排気に十分な、開口面積を有することが、好ましい。これにより、風路の圧力が中間状態よりも高くなる場合に、カバー120内の空気が速やかに排出されて、カバー120内の圧力の上昇を防ぎ、可動板130のより迅速な+Z方向への変位(上昇)が可能となる。また、風路の圧力が中間状態よりも低くなる場合に、外部の空気がカバー120内に速やかに流入して、カバー120内の圧力の低下を防ぎ、可動板130のより迅速な-Z方向への変位(下降)が可能となる。
【0062】
圧力変動抑制ユニット100~100Bは、カバー120を備えなくともよい。この場合、付勢部材140、ガイド172等は、第2給気ダクト26a、26bに設けられた支持部材によって支持されてもよい。
【0063】
圧力変動ユニット100~100Bの筐体110とカバー120は、円筒型でもよい。また、可動板130は、円形の平板であってもよい。
【0064】
弛張部材150は合成樹脂製のシートに限られない。弛張部材150は伸縮するゴムシートから形成されてもよい。
【0065】
圧力変動抑制ユニット100~100Bは、排気ダクト42に設けられてもよい。例えば、圧力変動抑制ユニット100~100Bは、第2排気ダクト46a、46bの室圧制御ダンパ56a、56bの上流側に設けられてもよい。
【0066】
実施形態では、室圧制御システム10は対象室R1、R2の室圧を大気圧よりも高く調整しているが、室圧制御システム10は対象室R1、R2の室圧を大気圧よりも低く調整してもよい。
【0067】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【実施例0068】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0069】
実施例として、実施形態3の圧力変動抑制ユニット100Bを、模擬的な給排気機構200の給気ダクト210に設けて、風路の圧力変動を測定した。また、比較例として、圧力変動抑制ユニットを設けていない給排気機構200の風路の圧力変動を測定した。
【0070】
まず、給排気機構200について説明する。
図7に示すように、外気OAを供給する給気ダクト210は、給気ファン214に接続している。給気ダクト210には、第1ダンパ212、給気ファン214、第2ダンパ216、第3ダンパ218が順に設けられている。また、給気ダクト210の第2ダンパ216と第3ダンパ218との間に、風路の圧力を測定する圧力計Pが設けられている。
【0071】
供給された空気(すなわち、外気OA)を排気EAとして排出する排気ダクト220は、排気ファン222から延び、風路の風量を測定する風量計Qと第4ダンパ224が順に設けられている。また、還気ダクト230が、排気ダクト220の風量計Qと第4ダンパ224との間と、給気ダクト210の第1ダンパ212と給気ファン214との間を接続している。還気ダクト230には、第5ダンパ232が設けられている。
【0072】
実施例では、
図7に示すように、2つの圧力変動抑制ユニット100Bを給気ダクト210の圧力計Pと第3ダンパ218との間に設けた。筐体110のX方向の長さとY方向の長さを500mmと、筐体110とカバー120とを合わせたZ方向の長さを400mmとした。また、可動板130として、X方向の長さとY方向の長さが470mm、厚さ(Z方向の長さ)が9mmのプラスチック段ボールを用いた。付勢部材140として、ばね定数380N/mのコイルばねを用いた。さらに、弛張部材150として、ビニール製のシートを用いた。
比較例では、圧力変動抑制ユニット100Bの筐体110、可動板130等を除いて接続部160を残し、接続部160の上端部の開口を塞いだ。
【0073】
圧力変動の測定は、給気ファン214の出力を変えることにより実施した。定常時の筐体110の開口(すなわち、筐体110の入り口)における圧力を100Paと、風路の風量を1100m3/hとした。
【0074】
図8は、実施例と比較例における、風路の圧力変動の測定結果を示す。
図8に示すように、圧力変動抑制ユニット100Bを設けた実施例では、比較例に比べて、圧力変動が抑制されている。以上のように、圧力変動抑制ユニット100Bにより、風路の圧力変動を抑制できる。
10 室圧制御システム、20 給気機構、22 給気ダクト、24 第1給気ダクト、26a,26b 第2給気ダクト、28a,28b 開口、32 空気清浄機、34 給気ファン、35 外気ダンパ、36a,36b 定風量装置、38a,38b フィルタ、40 排気機構、42 排気ダクト、44 第1排気ダクト、46a,46b 第2排気ダクト、52 排気ファン、53 排気ダンパ、54 還気ダクト、55 還気ダンパ、56a,56b 室圧制御ダンパ、58a,58b フィルタ、80 制御部、100,100A,100B 圧力変動抑制ユニット、110 筐体、120 カバー、122 開口、124 底板、124a 内面、126 ばねガイド、130 可動板、140 付勢部材、150 弛張部材、152 開口、154 外周部、160 接続部、170 ガイド部、172 ガイド、174 ロッド、200 給排気機構、210 給気ダクト、212 第1ダンパ、214 給気ファン、216 第2ダンパ、218 第3ダンパ、220 排気ダクト、222 排気ファン、224 第4ダンパ、230 還気ダクト、232 第5ダンパ、F 施設、EA 排気、OA 外気、RA 還気、P 圧力計、Q 風量計、R1,R2 対象室、S1,S2 室圧センサ