(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178123
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20221125BHJP
F01N 1/24 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F01N1/08 L
F01N1/08 F
F01N1/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084683
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕平
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004BA01
3G004CA04
3G004CA13
3G004DA01
(57)【要約】
【課題】限られたスペースを有効に活用して、十分な消音効果を得ることができる排気装置を提供する。
【解決手段】排気装置は、エンジンの下方に配置されたチャンバ(41)と、排気管からチャンバに排気ガスを導く入口パイプ(50)と、チャンバから外部に排気ガスを排出するテールパイプ(61)と、チャンバの内側を左右一対の空間に仕切る第1の隔壁(43)と、左右一対の空間の一方を前後一対の空間に仕切る第2の隔壁(44)と、を備えている。左右一対の空間の他方が、入口パイプが入り込む第1の膨張室(45)になり、前後一対の空間の後側が、第1の膨張室の下流の第2の膨張室(46)になり、前後一対の空間の前側が、第2の膨張室の下流でテールパイプが入り込む第3の膨張室(47)になっている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気管を通じて排気された排気ガスを浄化する排気装置であって、
前記エンジンの下方に配置されたチャンバと、
前記排気管から前記チャンバに排気ガスを導く入口パイプと、
前記チャンバから外部に排気ガスを排出するテールパイプと、
前記チャンバの内側を左右一対の空間に仕切る第1の隔壁と、
前記左右一対の空間の一方を前後一対の空間に仕切る第2の隔壁と、を備え、
前記左右一対の空間の他方を、前記入口パイプが入り込む第1の膨張室とし、
前記前後一対の空間の後側を、前記第1の膨張室の下流の第2の膨張室とし、
前記前後一対の空間の前側を、前記第2の膨張室の下流で前記テールパイプが入り込む第3の膨張室とすることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
左右に延びて前記第1の隔壁を貫通する第1の連通パイプと、
前後に延びて前記第2の隔壁を貫通する第2の連通パイプと、を備え、
前記第1の連通パイプを通じて前記第1の膨張室と前記第2の膨張室が連通し、
前記第2の連通パイプを通じて前記第2の膨張室と前記第3の膨張室が連通し、
後面視にて前記第2の連通パイプの入口に前記第1の連通パイプが重なっていることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記テールパイプが前後に延びて前記第2の隔壁を貫通した後、左右に延びて前記第1の隔壁を貫通しており、
後面視にて前記第1の連通パイプの前方で前記第2の連通パイプの入口に前記テールパイプの左右の延在部分が重なっていることを特徴とする請求項2に記載の排気装置。
【請求項4】
後面視にて前記第1の連通パイプの前方で前記入口パイプの出口に前記テールパイプの左右の延在部分が重なっていることを特徴とする請求項3に記載の排気装置。
【請求項5】
前記テールパイプの左右の延在部分が前記第2の連通パイプの左右方向の一端から前記入口パイプの左右方向の他端までの距離よりも長いことを特徴とする請求項4に記載の排気装置。
【請求項6】
前記チャンバの外壁には前記第3の膨張室を前方に拡張する膨出部が形成されており、
前記テールパイプの前後の延在部分が前記第2の連通パイプと平行であり、
前記テールパイプの入口が前記第2の連通パイプの出口よりも前方で前記膨出部の内側に位置付けられていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の排気装置。
【請求項7】
前記第1の膨張室を囲む外壁がアウターボディとインナーボディの間に吸音材を詰めた2層構造になっており、前記第2の膨張室及び前記第3の膨張室を囲む外壁が前記アウターボディの単層構造になっており、
前記第1の隔壁には前記入口パイプの出口の前方位置から前記第1の連通パイプの前方位置までの所定範囲にプレートが取り付けられ、前記第1の隔壁と前記プレートの間に吸音材が詰められていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両の排気系には、エンジンから延びる排気管の下流に消音用のチャンバが設けられている。排気管からチャンバに排気ガスが流れ込むことで、チャンバ内で排気ガスが膨張して排気音のエネルギーが減衰される。この種の排気装置として、エンジンの下方にチャンバを配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のチャンバの内側には隔壁によって複数の膨張室が形成されており、複数の膨張室を通過する過程で排気ガスの膨張が繰り返された後、下流の膨張室からテールパイプを通じて外部に排気ガスが排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のチャンバはエンジンの下方に配置されているため、バンク角や周辺部品との関係でチャンバの容積を十分に確保できない場合がある。チャンバの内側に複数の膨張室を形成して消音対策が取られているが、複数の膨張室が前後に並んだ構造であるため、エンジンの下方の限られたスペースに複数の膨張室の容積を広く確保することが難しい。このため、排気ガスが膨張しきれずに消音効果が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、限られたスペースを有効に活用して、十分な消音効果を得ることができる排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の排気装置は、エンジンから排気管を通じて排気された排気ガスを浄化する排気装置であって、前記エンジンの下方に配置されたチャンバと、前記排気管から前記チャンバに排気ガスを導く入口パイプと、前記チャンバから外部に排気ガスを排出するテールパイプと、前記チャンバの内側を左右一対の空間に仕切る第1の隔壁と、前記左右一対の空間の一方を前後一対の空間に仕切る第2の隔壁と、を備え、前記左右一対の空間の他方を、前記入口パイプが入り込む第1の膨張室とし、前記前後一対の空間の後側を、前記第1の膨張室の下流の第2の膨張室とし、前記前後一対の空間の前側を、前記第2の膨張室の下流で前記テールパイプが入り込む第3の膨張室とすることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の排気装置によれば、チャンバの内側には第1の膨張室と第2、第3の膨張室が左右に分かれて形成され、第2の膨張室と第3の膨張室が前後に分かれて形成されている。第1の膨張室から第2の膨張室への排気ガスの流れの向きと、第2の膨張室から第3の膨張室への流れの向きが交差している。第1の膨張室から第3の膨張室まで排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1-第3の膨張室で排気ガスを十分に膨張させることができる。エンジンの下方の限られたスペースにチャンバが配置されても、チャンバの内側に第1-第3の膨張室を形成することで、排気ガスを段階的に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】本実施例のチャンバの内部構造を示す斜視図である。
【
図6】本実施例の上側のアウターボディを取り外したチャンバの斜視図である。
【
図7】本実施例のチャンバの内部構造を示す上面図である。
【
図8】本実施例のチャンバの内部構造を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の排気装置は、エンジンから排気管を通じて排気された排気ガスを浄化している。エンジンの下方にはチャンバが配置されており、入口パイプを通じて排気管からチャンバに排気ガスが導かれ、テールパイプを通じてチャンバから外部に排気ガスが排出されている。チャンバの内側が第1の隔壁によって左右一対の空間に仕切られ、左右一対の空間の一方が第2の隔壁によって前後一対の空間に仕切られている。左右一対の空間の他方は入口パイプが入り込む第1の膨張室になり、前後一対の空間の後側は第1の膨張室の下流の第2の膨張室になり、前後一対の空間の前側は第2の膨張室の下流でテールパイプが入り込む第3の膨張室になっている。このように、チャンバの内側には第1の膨張室と第2、第3の膨張室が左右に分かれて形成され、第2の膨張室と第3の膨張室が前後に分かれて形成されている。第1の膨張室から第2の膨張室への排気ガスの流れの向きと、第2の膨張室から第3の膨張室への流れの向きが交差している。第1の膨張室から第3の膨張室まで排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1-第3の膨張室で排気ガスを十分に膨張させることができる。エンジンの下方の限られたスペースにチャンバが配置されても、チャンバの内側に第1-第3の膨張室を形成することで、排気ガスを段階的に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は、本実施例のエンジン周辺の左側面図である。
図2は、本実施例のエンジン周辺の右側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、エンジン10は、クランクケース11の上部にシリンダブロック12を配置した並列2気筒エンジンである。シリンダブロック12の上部にはシリンダヘッド13が取り付けられ、シリンダヘッド13の上部にはヘッドカバー(不図示)が取り付けられている。クランクケース11の下部には、潤滑及び冷却用のオイルが貯留されるオイルパン14が取り付けられている。クランクケース11の左側面にはケース内のマグネト室を覆うマグネトカバー15が取り付けられ、クランクケース11の右側面にはケース内のクラッチ室を覆うクラッチカバー16が取り付けられている。
【0012】
エンジン10は、鞍乗型車両の左右一対のメインフレーム21に支持されている。一対のメインフレーム21には後輪(不図示)を支持するスイングアーム22が揺動可能に支持されている。スイングアーム22には後輪緩衝用のリアサスペンション23に連結されている。リアサスペンション23の上端はメインフレーム21に連結され、リアサスペンション23の下端はリンクアーム24及びリンクブラケット25を介してスイングアーム22に連結されている。また、一対のメインフレーム21の下部には、左右のブラケット42a、42bを介して排気装置30のチャンバ41が支持されている。
【0013】
チャンバ41には一対の排気管31a、31bを通じて排気ガスが流れ込み、チャンバ41からマフラー35を経て排気ガスが外部に排気される。チャンバ41の内側には複数の膨張室が形成されており、各膨張室で排気ガスが段階的に膨張することで排気音のエネルギーが減衰される。しかしながら、エンジン10の下方の限られたスペースにチャンバ41が配置されているため、チャンバ41の内側に複数の膨張室を広く確保することが難しい。そこで、本実施例のチャンバ41は、複数の膨張室の間で排気ガスをダイレクトに流れ難くして、各膨張室で排気ガスを十分に膨張させて消音性能を向上させている。
【0014】
以下、
図3から
図6を参照して、排気装置の詳細構成について説明する。
図3は、本実施例の排気装置の上面図である。
図4は、本実施例の排気装置の側面図である。
図5は、本実施例のチャンバの内部構造を示す斜視図である。
図6は、本実施例の上側のアウターボディを取り外したチャンバの斜視図である。
【0015】
図3及び
図4に示すように、排気装置30は、エンジン10(
図1参照)から排気管31a、31bを通じて排気された排気ガスの排気音を低減する共に排気ガスを浄化している。排気管31a、31bはエンジン10の前面から下方に向かって延びており、排気管31a、31bが集合パイプ32によってまとめられて入口パイプ50に接続されている。集合パイプ32の外周面には上流排気ガスセンサ(不図示)用の取付ボス38が形成されている。上流排気ガスセンサによって排気管31a、31bから流入した排気ガスの平均的な酸素濃度が検出される。上流排気ガスセンサの検出結果は燃料噴射量のフィードバック制御に使用される。
【0016】
入口パイプ50は、連結パイプ51を介して第1の触媒36と第2の触媒37(
図5参照)を連結している。連結パイプ51の上流側はチャンバ41外に出ており、この連結パイプ51の上流側に第1の触媒36が配置されている。連結パイプ51の下流側はチャンバ41内に入り込んでおり、この連結パイプ51の下流側に第2の触媒37が配置されている。連結パイプ51の外周面には第1、第2の触媒36、37の間に下流排気ガスセンサ(不図示)用の取付ボス39が形成されている。下流排気ガスセンサによって排気管31a、31bから流入した排気ガスの平均的な酸素濃度が検出される。下流排気ガスセンサの検出結果は燃料噴射量のフィードバック制御及び触媒劣化の診断に使用される。
【0017】
排気管31a、31bから入口パイプ50に排気ガスが流れ込むことで、第1、第2の触媒36、37によって排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の大気汚染物質が浄化される。また、入口パイプ50からチャンバ41に排気ガスが流れ込むことで、チャンバ41内の各膨張室で排気ガスが膨張されて排気音が低減される。チャンバ41の下流側にはテールパイプ61を介してマフラー35(
図2参照)が接続されており、チャンバ41を通過した排気ガスがマフラー35から外部に排気される。チャンバ41で排気音が低減されるため、マフラー35の膨張室を小さくしてマフラー35の小型化が実現されている。
【0018】
チャンバ41は、エンジン10の下方かつオイルパン14(
図1参照)の後方に位置付けられている。チャンバ41はボックス状であり、チャンバ41の前壁の右側には入口パイプ50が挿し込まれ、チャンバ41の後壁の右側からはテールパイプ61が後方に延出している。入口パイプ50によって排気管31a、31bからチャンバ41に排気ガスが導かれ、テールパイプ61によってチャンバ41から外部に排気ガスが排出される。また、チャンバ41の左右両側壁にはブラケット42a、42bが設けられ、ブラケット42a、42bを介してチャンバ41がメインフレーム21(
図1参照)の下部に取り付けられている。
【0019】
図5に示すように、チャンバ41の内側は、前後方向に延在する第1の隔壁43によって左右一対の空間に仕切られている。さらに、左右一対の空間のうち左側の空間が左右方向に延在する第2の隔壁44によって前後一対の空間に仕切られている。左右一対の空間のうち右側の空間は、入口パイプ50が入り込む第1の膨張室45になっている。前後一対の空間のうち後側の空間は、第1の膨張室45の下流の第2の膨張室46になっている。前後一対の空間のうち前側の空間は、第2の膨張室46の下流でテールパイプ61が入り込む第3の膨張室47になっている。
【0020】
このように、第1の膨張室45の後側と第2の膨張室46が左右方向で隣接し、第1の膨張室45の前側と第3の膨張室47が左右方向で隣接している。また、第1の膨張室45の容積が最も大きく形成され、第2の膨張室46の容積が次に大きく形成され、第3の膨張室47の容積が最も小さく形成されている。チャンバ41の前壁には入口パイプ50が設けられ、入口パイプ50の上流側の第1の触媒36がチャンバ41外に配置され、入口パイプ50の下流側の第2の触媒37がチャンバ41内に配置されている。第2の触媒37は第1の膨張室45にて第1の隔壁43と平行に配置されている。
【0021】
第1の隔壁43の後端側にはストレート形状の第1の連通パイプ53が設けられ、第2の隔壁44の右端側(左右方向の他方側)にはストレート形状の第2の連通パイプ57が設けられている。第1の連通パイプ53は左右に延びて第1の隔壁43を貫通し、第1の連通パイプ53を通じて第1の膨張室45と第2の膨張室46が連通している。第2の連通パイプ57は前後に延びて第2の隔壁44を貫通し、第2の連通パイプ57を通じて第2の膨張室46と第3の膨張室47が連通している。チャンバ41の内側には、第1、第2の連通パイプ53、57の延在方向が交差するように配置されている。
【0022】
第2の隔壁44の左端側(左右方向の一方側)には略クランク形状に屈曲したテールパイプ61が設けられている。テールパイプ61は、第2の連通パイプ57の左方で前後に延びて第2の隔壁44を貫通した後、第1の連通パイプ53の前方で左右に延びて第1の隔壁43を貫通し、さらに右斜め後方に延びてチャンバ41の後壁を貫通している。すなわち、テールパイプ61は、第3の膨張室47から第2の膨張室46まで前後方向に延び、第2の膨張室46から第1の膨張室45まで左右方向に延びて、第1の膨張室45の後壁の右隅からチャンバ41外に延びている。
【0023】
テールパイプ61の前端には有底筒状のキャップ62が装着されている。キャップ62の前端は閉じており、キャップ62の外周面には無数のパンチング穴が形成されている。無数のパンチング穴によってテールパイプ61の入口が形成されている。チャンバ41の前壁の左側には第3の膨張室47を前方に拡張する膨出部49が形成されており、この膨出部49の内側にテールパイプ61のキャップ62が位置付けられている。テールパイプ61の入口がキャップ62のパンチング穴であるため、テールパイプ61の入口が狭められて、膨出部49の内側に排気ガスを留め易くしている。
【0024】
図5及び
図6に示すように、チャンバ41の外壁の右半部はアウターボディ71及びインナーボディ72の間に吸音材73を詰めた2層構造になっており、チャンバ41の外壁の左半部はアウターボディ71の単層構造になっている。2層構造の外壁によって第1の膨張室45が囲まれており、単層構造の外壁によって第2の膨張室46及び第3の膨張室47が囲まれている。第2の膨張室46にはアウターボディ71を内側から覆う上下一対の大型プレート74が配置され、第3の膨張室47にはアウターボディ71を内側から覆う上下一対の小型プレート76が配置されている。
【0025】
上側の大型プレート74は第2の膨張室46の上面から左側面に亘って広がっており、下側の大型プレート74は第2の膨張室46の下面から左側面に亘って広がっている。上側の小型プレート76は第3の膨張室47の上面から左側面に亘って広がっており、下側の小型プレート76は第3の膨張室47の下面から左側面に亘って広がっている。大型プレート74及び小型プレート76の表面には浅い窪み75、77が形成されており、この窪み75、77に吸音材(不図示)が詰められている。なお、図示は省略しているが、大型プレート74及び小型プレート76には無数のパンチング穴が形成されている。
【0026】
第1の隔壁43の左側面には、第2の触媒37の後端からテールパイプ61の前方までの所定範に隔壁プレート78が取り付けられている。第1の隔壁43と隔壁プレート78の間には吸音材(不図示)が詰められている。このように、最大容積の第1の膨張室45が2層構造の外壁や隔壁で形成され、第2、第3の膨張室46、47についても部分的に2層構造の外壁や隔壁で形成されている。よって、チャンバ41を大型化せずに消音性能を向上させることができる。また、2層構造を最小限にして、重量の増加を抑えると共に熱を籠り難くしている。なお、吸音材73としては、例えばグラスウールが使用される。
【0027】
以下、
図7及び
図8を参照して、チャンバの内側の部材の位置関係について説明する。
図7は、本実施例のチャンバの内部構造を示す上面図である。
図8は、本実施例のチャンバの内部構造を示す後面図である。
【0028】
図7に示すように、チャンバ41の右半部に第1の膨張室45が形成され、チャンバ41の左半部の後側に第2の膨張室46が形成され、チャンバ41の左半部の前側に第3の膨張室47が形成されている。第1の膨張室45の前後方向中間に入口パイプ50(第2の触媒37)の出口52が位置し、第1の膨張室45の後側に第1の連通パイプ53の入口54が位置している。第2の膨張室46の後側に第1の連通パイプ53の出口55が位置し、第2の膨張室46の前後方向中間に第2の連通パイプ57の入口58が位置している。第3の膨張室47の後側に第2の連通パイプ57の出口59が位置し、膨出部49の内側にテールパイプ61のキャップ62が位置している。
【0029】
入口パイプ50の出口52から第1の膨張室45に排気ガスが流れ込み、第1の膨張室45から第1の連通パイプ53の入口54に排気ガスが流れ込んでいる。入口パイプ50は後方に向かって高くなるように傾斜し、後面視にて第1の連通パイプ53の前方で入口パイプ50の出口52にテールパイプ61の左右の延在部分63が重なっている(
図8参照)。第1の連通パイプ53の前方で排気ガスの流れがテールパイプ61の左右の延在部分63に遮られて、入口パイプ50の出口52から第1の連通パイプ53の入口54に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第1の膨張室45で排気ガスが十分に膨張し易くなっている。
【0030】
後面視にて第1の連通パイプ53の入口54はテールパイプ61の左右の延在部分63よりも下方に位置し(
図8参照)、入口パイプ50の出口52と第1の連通パイプ53の入口54が上下に位置ズレしている。また、入口パイプ50と第1の連通パイプ53の向きが交差しており、後面視にて第1の膨張室45で入口パイプ50の出口52に第1の連通パイプ53が部分的に重なっている(
図8参照)。これにより、入口パイプ50の出口52から第1の連通パイプ53の入口54に排気ガスがダイレクトに流れ難くなって、第1の膨張室45で排気ガスがさらに膨張し易くなっている。
【0031】
第1の連通パイプ53の出口55から第2の膨張室46に排気ガスが流れ込み、第2の膨張室46から第2の連通パイプ57の入口58に排気ガスが流れ込んでいる。第2の連通パイプ57はテールパイプ61の左右の延在部分63と略同じ高さであり、後面視にて第1の連通パイプ53の前方で第2の連通パイプ57の入口58にテールパイプ61の左右の延在部分63が重なっている(
図8参照)。第1の連通パイプ53の前方で排気ガスの流れがテールパイプ61の左右の延在部分63に遮られて、第1の連通パイプ53の出口55から第2の連通パイプ57の入口58に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第2の膨張室46で排気ガスが十分に膨張し易くなっている。
【0032】
後面視にて第1の連通パイプ53の出口55はテールパイプ61の左右の延在部分63よりも下方に位置し(
図8参照)、第1の連通パイプ53の出口55と第2の連通パイプ57の入口58が上下に位置ズレしている。また、第1の連通パイプ53と第2の連通パイプ57の向きが交差しており、後面視にて第2の膨張室46で第2の連通パイプ57の入口58に第1の連通パイプ53が重なっている(
図8参照)。これにより、第1の連通パイプ53の出口55から第2の連通パイプ57の入口58に排気ガスがダイレクトに流れ難くなって、第2の膨張室46で排気ガスがさらに膨張し易くなっている。
【0033】
第2の連通パイプ57の出口59から第3の膨張室47に排気ガスが流れ込み、第3の膨張室47からテールパイプ61のキャップ62に排気ガスが流れ込んでいる。上記したように第2の隔壁44の右端側に第2の連通パイプ57が設けられ、第2の隔壁44の左端側にテールパイプ61の前後の延在部分64が設けられている。チャンバ41の前壁には膨出部49が形成されているが、第2の連通パイプ57の出口59は膨出部49の裾野部分に対向し、テールパイプ61のキャップ62が膨出部49の頂部分に対向している。このため、第2の連通パイプ57の出口59からの排気ガスが膨出部49の内側だけでなく広い範囲に拡散される。
【0034】
第2の連通パイプ57の出口59は第3の膨張室47の後側に位置付けられ、テールパイプ61のキャップ62が第2の連通パイプ57の出口59よりも前方で膨出部49の内側に位置付けられている。第2の連通パイプ57とテールパイプ61の前後の延在部分64が平行であり、第2の連通パイプ57の出口59とテールパイプ61のキャップ62が前後に位置ズレしている。第2の連通パイプ57の出口59からテールパイプ61のキャップ62に排気ガスがダイレクトに流れ難くなって、第3の膨張室47で排気ガスが膨張し易くなっている。キャップ62が膨出部49の内側に位置付けられるため、膨出部49の容積が排気ガスの膨張に有効活用されている。
【0035】
このように、第1の膨張室45から第2の膨張室46に排気ガスがダイレクトに流れ難く、第2の膨張室46から第3の膨張室47に排気ガスがダイレクトに流れ難く、第3の膨張室47からテールパイプ61に排気ガスがダイレクトに流れ難くなっている。第1-第3の膨張室45-47で排気ガスが十分に膨張されてチャンバ41の消音性能が向上されている。第1-第3の膨張室45-47で段階的に膨張されて、排気音のエネルギーが大幅に減衰されているため、エンジン10の下方の狭いスペースにチャンバ41を配置することが可能になっている。
【0036】
また、入口パイプ50及び第2の連通パイプ57はテールパイプ61の前後の延在部分64に平行に延びており、第1の連通パイプ53はテールパイプ61の左右の延在部分63に平行に延びている。テールパイプ61の左右の延在部分63は、第1の連通パイプ53の前方で、入口パイプ50及び第2の連通パイプ57を横切っている。第1の連通パイプ53は、第2の連通パイプ57の左端から入口パイプ50(第2の触媒37)の右端までの距離Lよりも短く形成されている(
図8参照)。テールパイプ61の左右の延在部分63は、第2の連通パイプ57の左端から入口パイプ50(第2の触媒37)の左右方向の右端までの距離Lよりも長く形成されている(
図8参照)。
【0037】
上記したように、第1の膨張室45及び第2の膨張室46にて第1の連通パイプ53の前方で排気ガスの流れがテールパイプ61の左右の延在部分63に遮られる。入口パイプ50の出口52から第1の連通パイプ53の入口54に排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1の連通パイプ53の出口55から第2の連通パイプ57の入口58に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第1、第2の膨張室45、46で排気ガスを十分に膨張させてチャンバ41の消音性能を向上させることができる。テールパイプ61は、第1、第2の膨張室45、46で排気ガスの流れを遮る障壁として機能している。
【0038】
第1の膨張室45が全体的に2層構造の外壁に囲まれ、第2、第3の膨張室46、47が部分的に2層構造の外壁に囲まれている。第2の膨張室46の大型プレート74は、平面視にて第1の連通パイプ53の出口55側及び第2の連通パイプ57の入口58側に重なるように配置されている。第1の連通パイプ53の出口55は下側の大型プレート74の側面部分に対向している(
図8参照)。第3の膨張室47の小型プレート76は、平面視にて膨出部49の後方で第2の連通パイプ57の出口59側に重なるように配置されている。排気ガスが集中する連通パイプ53、57の周辺を2層構造にしてチャンバ41の消音効果が高められている。
【0039】
以上、本実施例によれば、チャンバ41の内側には第1の膨張室45と第2、第3の膨張室46、47が左右に分かれて形成され、第2の膨張室46と第3の膨張室47が前後に分かれて形成されている。第1の膨張室45から第2の膨張室46への排気ガスの流れの向きと、第2の膨張室46から第3の膨張室47への流れの向きが交差している。第1の膨張室45から第3の膨張室47まで排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1-第3の膨張室45-47で排気ガスを十分に膨張させることができる。エンジン10の下方の限られたスペースにチャンバ41が配置されても、チャンバ41の内側に第1-第3の膨張室45-47を形成することで、排気ガスを段階的に膨張させてチャンバ41の消音性能を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施例では、チャンバの右側に第1の膨張室が形成され、チャンバの左側に第2、第3の膨張室が形成されているが、チャンバの左側に第1の膨張室が形成され、チャンバの右側に第2、第3の膨張室が形成されてもよい。
【0041】
また、本実施例では、第1の連通パイプが左右に延びているが、第1の連通パイプは第1の膨張室と第2の膨張室を連通していればよい。例えば、第1の連通パイプは斜めに延びていてもよい。
【0042】
また、本実施例では、第2の連通パイプが前後に延びているが、第2の連通パイプは第2の膨張室と第3の膨張室を連通していればよい。例えば、第2の連通パイプは斜めに延びていてもよい。
【0043】
また、本実施例では、第2、第3の膨張室を囲むチャンバの外壁が部分的に2層構造になっているが、第2、第3の膨張室を囲むチャンバの外壁が全体的に単層構造になっていてもよい。また、チャンバの外壁が全体的に2層構造又は単層構造になっていてもよい。
【0044】
また、本実施例では、第1の隔壁において第2の触媒の後端からテールパイプの前方までの所定範囲に隔壁プレートが取り付けられているが、隔壁プレートが取り付けられる所定範囲は適宜変更が可能である。例えば、隔壁プレートは第1の隔壁において入口パイプの前方位置から第1の連通パイプの前方位置までの所定範囲に取り付けられていればよい。
【0045】
また、本実施例では、第1、第2の膨張室にテールパイプの左右の延在部分が配置されえいるが、第1、第2の膨張室にテールパイプが配置されなくてもよい。例えば、第3の膨張室からチャンバ外にテールパイプが延出してもよい。
【0046】
また、本実施例では、チャンバに膨出部が形成されたが、第3の膨張室の容積を十分に確保可能であればチャンバに膨出部が形成されていなくてもよい。
【0047】
また、本実施例では、テールパイプの入口がキャップのパンチング穴によって形成されたが、テールパイプの入口は排気ガスが流れ込むことが可能な形状であれば特に限定されない。
【0048】
また、本実施例の排気装置は、バギータイプの自動三輪車等の他の鞍乗型車両にも適宜適用することができる。ここで、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0049】
以上の通り、本実施例の排気装置(30)は、エンジン(10)から排気管(31a、31b)を通じて排気された排気ガスを浄化する排気装置であって、エンジンの下方に配置されたチャンバ(41)と、排気管からチャンバに排気ガスを導く入口パイプ(50)と、チャンバから外部に排気ガスを排出するテールパイプ(61)と、チャンバの内側を左右一対の空間に仕切る第1の隔壁(43)と、左右一対の空間の一方を前後一対の空間に仕切る第2の隔壁(44)と、を備え、左右一対の空間の他方を、入口パイプが入り込む第1の膨張室(45)とし、前後一対の空間の後側を、第1の膨張室の下流の第2の膨張室(46)とし、前後一対の空間の前側を、第2の膨張室の下流でテールパイプが入り込む第3の膨張室(47)とする。この構成によれば、チャンバの内側には第1の膨張室と第2、第3の膨張室が左右に分かれて形成され、第2の膨張室と第3の膨張室が前後に分かれて形成されている。第1の膨張室から第2の膨張室への排気ガスの流れの向きと、第2の膨張室から第3の膨張室への流れの向きが交差している。第1の膨張室から第3の膨張室まで排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1-第3の膨張室で排気ガスを十分に膨張させることができる。エンジンの下方の限られたスペースにチャンバが配置されても、チャンバの内側に第1-第3の膨張室を形成することで、排気ガスを段階的に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0050】
本実施例の排気装置において、左右に延びて第1の隔壁を貫通する第1の連通パイプ(53)と、前後に延びて第2の隔壁を貫通する第2の連通パイプ(57)と、を備え、第1の連通パイプを通じて第1の膨張室と第2の膨張室が連通し、第2の連通パイプを通じて第2の膨張室と第3の膨張室が連通し、後面視にて第2の連通パイプの入口(58)に第1の連通パイプが重なっている。この構成によれば、第1の連通パイプと第2の連通パイプの向きが交差し、第1の連通パイプの出口から第2の連通パイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第2の膨張室で排気ガスを十分に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0051】
本実施例の排気装置において、テールパイプが前後に延びて第2の隔壁を貫通した後、左右に延びて第1の隔壁を貫通しており、後面視にて第1の連通パイプの前方で第2の連通パイプの入口にテールパイプの左右の延在部分(63)が重なっている。この構成によれば、第1の連通パイプの前方で排気ガスの流れがテールパイプの左右の延在部分に遮られ、第1の連通パイプの出口から第2の連通パイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第2の膨張室で排気ガスを十分に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0052】
本実施例の排気装置において、後面視にて第1の連通パイプの前方で入口パイプの出口(52)にテールパイプの左右の延在部分が重なっている。この構成によれば、第1の連通パイプの前方で排気ガスの流れがテールパイプの左右の延在部分に遮られ、入口パイプの出口から第1の連通パイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第1の膨張室で排気ガスを十分に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0053】
本実施例の排気装置において、テールパイプの左右の延在部分が第2の連通パイプの左右方向の一端から入口パイプの左右方向の他端までの距離よりも長い。この構成によれば、第1の膨張室及び第2の膨張室にて第1の連通パイプの前方で排気ガスの流れがテールパイプの左右の延在部分に遮られる。入口パイプの出口から第1の連通パイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなり、第1の連通パイプの出口から第2の連通パイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。よって、第1、第2の膨張室で排気ガスを十分に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0054】
本実施例の排気装置において、チャンバの外壁には第3の膨張室を前方に拡張する膨出部(49)が形成されており、テールパイプの前後の延在部分が第2の連通パイプと平行であり、テールパイプの入口(キャップ62)が第2の連通パイプの出口(59)よりも前方で膨出部の内側に位置付けられている。この構成によれば、膨出部によって第3の膨張室の容積を拡大することができる。第2の連通パイプとテールパイプの前後の延在部分が平行であり、第2の連通パイプの出口からテールパイプの入口に排気ガスがダイレクトに流れ難くなる。また、テールパイプの入口が膨出部の内側に位置付けられることで、排気ガスの膨出に膨出部の容積を有効活用することができる。よって、第3の膨張室で排気ガスを十分に膨張させてチャンバの消音性能を向上させることができる。
【0055】
本実施例の排気装置において、第1の膨張室を囲む外壁がアウターボディ(71)とインナーボディ(72)の間に吸音材(73)を詰めた2層構造になっており、第2の膨張室及び第3の膨張室を囲む外壁がアウターボディの単層構造になっており、第1の隔壁には入口パイプの出口の前方位置から第1の連通パイプの前方位置までの所定範囲にプレート(隔壁プレート78)が取り付けられ、第1の隔壁とプレートの間に吸音材が詰められている。この構成によれば、最大容積の第1の膨張室を形成するチャンバの外壁及び隔壁が吸音材を詰めた2層構造になっている。よって、チャンバを大型化せずに消音性能を向上させることができる。また、2層構造を最小限にして、重量の増加を抑えると共に熱を籠に難くしている。
【0056】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0057】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。