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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178127
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】アンチグレア基板の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/896 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01N21/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084688
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆義
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB07
2G051BA20
2G051BB01
2G051BC05
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051CB05
2G051CD06
2G051EC04
(57)【要約】
【課題】アンチグレア面におけるムラを簡便にかつ確実に判別することができる、アンチグレア基板の評価方法を提供する。
【解決手段】透明基板2の表面2aにアンチグレア処理が施されてなる、アンチグレア基板1において、アンチグレア面1aにおけるムラを判別するための評価方法であって、アンチグレア基板1のアンチグレア面1a側において、光源を移動させつつ連続的に光照射し、アンチグレア面1a側から反射した正反射成分及び拡散反射成分を分離して連続的に画像撮影し、正反射成分及び/又は拡散反射成分の画像を取得する工程と、連続的に撮影された正反射成分及び/又は拡散反射成分の画像を用いて、アンチグレア面1aにおけるムラを評価する工程と、を備える、アンチグレア基板1の評価方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面にアンチグレア処理が施されてなる、アンチグレア基板において、アンチグレア面におけるムラを判別するための評価方法であって、
前記アンチグレア基板の前記アンチグレア面側において、光源を移動させつつ連続的に光照射し、前記アンチグレア面側から反射した正反射成分及び拡散反射成分を分離して連続的に画像撮影し、前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を取得する工程と、
連続的に撮影された前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価する工程と、
を備える、アンチグレア基板の評価方法。
【請求項2】
前記光照射に際し、ライン光源を移動させつつ連続的に光照射する、請求項1に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【請求項3】
前記アンチグレア基板の面方向と直交する方向を法線方向としたときに、前記法線方向に対して斜め方向から、カメラにより連続的に画像撮影し、前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を得る、請求項1又は2に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【請求項4】
前記連続的に画像撮影された前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像について、合成処理を行うことにより、前記アンチグレア面全体の正反射像及び拡散反射像を取得し、該正反射像及び拡散反射像を用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【請求項5】
前記正反射像及び拡散反射像について、フーリエ変換処理を行うことにより、空間周波数スペクトルを取得し、該空間周波数スペクトルを用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価する、請求項4に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【請求項6】
前記アンチグレア基板が、前記透明基板と、前記透明基板の表面上に設けられたアンチグレア層とを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【請求項7】
前記アンチグレア層が、前記透明基板の表面上に、スプレーコート法によりコーティング液を塗布することによって形成されてなる、請求項6に記載のアンチグレア基板の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にアンチグレア処理が施されてなる、アンチグレア基板の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機、タブレット端末、テレビ、あるいはデジタルサイネージ等のディスプレイにおいては、室内照明(蛍光灯等)や太陽光等の外光により反射像が表示面に映り込むことによって視認性が低下することがある。このような外光による映り込みを抑える処理としては、アンチグレア処理や反射防止処理が知られている。
【0003】
下記の特許文献1には、アンチグレア処理された透明基体において、定量化された防眩性指標値や、ぎらつき指標値を取得し、透明基体の光学特性を評価する方法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、防眩フィルムのムラ測定方法が開示されている。特許文献2では、固体撮像素子により撮像された物体の画像に対し多重解像度解析をおこなうことにより画像を周波数毎の成分に分解するステップと、周波数毎に分解された成分に視覚系の周波数毎の感度を掛け合わせるステップとを備える、ムラ測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015-174132号
【特許文献2】特開2009-229391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板上にアンチグレア膜を形成する際には、基板上の汚れ等に起因して、形成されたアンチグレア膜の凹凸構造に形状バラつきが生じることがあり、その結果形成されたアンチグレア膜には、ムラが生じることがある。このようなアンチグレア膜におけるムラは、目視により観察することができるが、角度を変えて観察するなどの工夫をしないと、ムラを確認できない場合があり、煩雑な作業が必要となる。また、このような方法では、見落としもあり、ムラを確実に評価することが難しいという問題もある。従って、アンチグレア面におけるムラを、簡便、迅速、かつ正確に評価する方法が求められている。しかしながら、特許文献1や特許文献2の評価方法では、特に、形成されるアンチグレア面の面積が大きくなると、ムラを正確に評価できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、アンチグレア面におけるムラを簡便にかつ確実に判別することができる、アンチグレア基板の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアンチグレア基板の評価方法は、透明基板の表面にアンチグレア処理が施されてなる、アンチグレア基板において、アンチグレア面におけるムラを判別するための評価方法であって、前記アンチグレア基板の前記アンチグレア面側において、光源を移動させつつ連続的に光照射し、前記アンチグレア面側から反射した正反射成分及び拡散反射成分を分離して連続的に画像撮影し、前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を取得する工程と、連続的に撮影された前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明においては、前記光照射に際し、ライン光源を移動させつつ連続的に光照射することが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記アンチグレア基板の面方向と直交する方向を法線方向としたときに、前記法線方向に対して斜め方向から、カメラにより連続的に画像撮影し、前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像を得ることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記連続的に画像撮影された前記正反射成分及び/又は前記拡散反射成分の画像について、合成処理を行うことにより、前記アンチグレア面全体の正反射像及び前記拡散反射像を取得し、該正反射像及び拡散反射像を用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価することが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記正反射像及び拡散反射像について、フーリエ変換処理を行うことにより、空間周波数スペクトルを取得し、該空間周波数スペクトルを用いて、前記アンチグレア面におけるムラを評価することが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記アンチグレア基板が、透明基板と、前記透明基板の表面上に設けられたアンチグレア層とを備えることが好ましい。
【0014】
本発明においては、前記アンチグレア層が、前記透明基板の表面上に、スプレーコート法によりコーティング液を塗布することによって形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンチグレア面におけるムラを簡便にかつ確実に判別することができる、アンチグレア基板の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法で用いる一例としてのアンチグレア基板を説明するための模式的断面図である。
図2図2(a)及び(b)は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法で用いる一例としてのアンチグレア基板の製造方法を説明するための模式的断面図である。
図3図3は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法における測定原理を説明するための模式図である。
図5図5は、本発明で用いるアンチグレア基板に映り込んだ反射像を示す画像である。
図6図6は、実験例1~3において、ライン光源及びカメラを設置した位置を説明するための模式図である。
図7図7は、図3に示すフローチャートのステップS2において、カメラにより連続的に画像撮影することによって得られた画像を示す図である。
図8図8は、図7に示す画像を台形補正することにより得られた画像を示す図である。
図9図9は、図8に示す画像をグレースケールに変換することにより得られた画像を示す図である。
図10図10は、図9に示す画像をフィルタ処理することにより得られた画像を示す図である。
図11図11は、図10に示す画像における明るさ分布の中心点を説明するための図である。
図12図12は、図10に示す画像におけるライン光源の位置を説明するための図である。
図13図13は、図8の画像における正反射成分及び拡散反射成分のエリアを説明するための図である。
図14図14は、合成した正反射像画像を示す図である。
図15図15は、合成した拡散反射像画像を示す図である。
図16図16は、実験例1で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。
図17図17は、実験例2で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。
図18図18は、実験例3で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法で用いる一例としてのアンチグレア基板を説明するための模式的断面図である。
【0019】
図1に示すように、アンチグレア基板1は、透明基板2と、アンチグレア層3とを備える。透明基板2の表面2a上に、アンチグレア層3が設けられている。アンチグレア層3は、外光の映り込み等を抑制する、いわゆる防眩効果を付与するために設けられている。このように、本実施形態のアンチグレア基板1では、透明基板2の表面2a上にアンチグレア層3が設けられることにより、アンチグレア処理がなされている。
【0020】
図2(a)及び(b)は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法で用いる一例としてのアンチグレア基板の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【0021】
本実施形態の製造方法では、まず、透明基板2を用意する。次に、透明基板2の表面2a上に、スプレーコート法によりコーティング液を塗布する。それによって、透明基板2の表面2a上にアンチグレア層3を形成し、アンチグレア基板1を得ることができる。
【0022】
本実施形態の評価方法は、上記のようなアンチグレア基板1のアンチグレア面1aにおけるムラを判別するための評価方法である。
【0023】
本実施形態の評価方法では、まず、アンチグレア基板1のアンチグレア面1a側において、光源を移動させつつ連続的に光照射する。次に、アンチグレア面1a側から反射した正反射成分及び拡散反射成分を分離して連続的に画像撮影する。それによって、正反射成分及び/又は拡散反射成分の画像を取得する。次に、連続的に撮影された正反射成分及び/又は拡散反射成分の画像を用いて、アンチグレア面1aにおけるムラを評価する。なお、本明細書において、「正反射成分及び/又は拡散反射成分」とは、「正反射成分及び拡散反射成分のうち少なくとも一方」のことをいうものとする。
【0024】
本実施形態の評価方法は、上記の構成を備えるので、アンチグレア面1aにおけるムラを簡便にかつ確実に判別することができる。なお、この点については、以下のように説明することができる。
【0025】
従来、基板上にアンチグレア膜を形成する際には、基板上の汚れ等に起因して、形成されたアンチグレア膜の凹凸構造に形状バラつきが生じることがあり、その結果アンチグレア膜には、ムラが生じることがあった。このようなアンチグレア膜におけるムラは、目視により観察することができるが、角度を変えて観察するなどの工夫をしないと、ムラを確認できない場合があり、煩雑な作業が必要となっていた。また、このような方法では、見落としもあり、ムラを確実に評価することが難しいという問題もあった。従って、アンチグレア面におけるムラを、簡便、迅速、かつ正確に評価する方法が求められていた。
【0026】
しかしながら、照明の正反射像を撮像素子で捉え、画像処理によりアンチグレア面におけるムラを評価する方法では、アンチグレア面の面積が大きくなると、ムラを正確に評価できないという問題があった。特に、アンチグレア基板を10インチ以上のディスプレイにおけるカバー部材に用いたときにその傾向は顕著であった。
【0027】
この点につき、本発明者は、アンチグレア面における形状バラつきにより生じるムラは、正反射成分で観察すると確認できるものと、拡散反射成分で観察すると確認できるものがあり、正反射成分と拡散反射成分の強度は相反する特性を有することから、これらの2つの成分が混ざった状態で観察すると、それぞれの特徴の認識が難しくなることを見出した。
【0028】
そして、本発明者は、正反射成分及び拡散反射成分を分離して連続的に画像撮影することにより、正反射成分及び/又は拡散反射成分の画像を取得して評価すれば、角度を変えて観察するなどの工夫をせずとも、ムラを確実に確認できることを見出した。
【0029】
従って、本実施形態に係るアンチグレア基板1の評価方法によれば、アンチグレア面1aにおけるムラを簡便にかつ正確に判別することができる。
【0030】
以下、アンチグレア基板1のような本発明のアンチグレア基板の評価方法について、より具体的に説明する。
【0031】
(アンチグレア基板の評価方法の詳細)
図3は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法を説明するためのフローチャートである。図4は、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法における測定原理を説明するための模式図である。図5は、本発明で用いるアンチグレア基板に映り込んだ反射像を示す画像である。
【0032】
以下、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法について、図3に示すステップS1~S5の順に説明する。
【0033】
ステップS1;
図4に示すように、本実施形態に係るアンチグレア基板の評価方法では、まず、アンチグレア基板1を黒板ガラス11に貼り合わせる。アンチグレア基板1を黒板ガラス11に貼り合わせる方法としては、特に限定されず、例えば、アンチグレア基板1と屈折率が近い液体により貼り合わせることができる。次に、図4に示すように、測定用のカメラ12の視野にアンチグレア基板1を配置する。カメラ12の位置は、特に限定されないが、本実施形態のようにアンチグレア基板1の斜め上方に配置することが望ましい。なお、カメラ12の位置は、アンチグレア基板1の大きさに合わせて適宜決定することができる。
【0034】
次に、図4に示すように、アンチグレア基板1の上方にライン光源13を配置し、アンチグレア基板1にライン光源13のラインを映り込ませる。本実施形態では、ライン光源13として、蛍光灯を用いている。もっとも、本発明においては、蛍光灯以外の光源を用いてもよいが、ライン光源を用いることが好ましく、蛍光灯を用いることがより好ましい。アンチグレア基板1にライン光源13のラインを映り込ませることにより、反射像として、図5に示すような正反射像及び拡散反射像(散乱光像)を観察することができる。
【0035】
ステップS2;
次に、図4及び図5に示すように、ライン光源13をアンチグレア基板1上においてスキャンさせ、正反射成分及び拡散反射成分をそれぞれ分離して連続的に撮影する。具体的には、ライン光源13を移動させつつ連続的に光照射し、アンチグレア面1a側から反射した正反射成分及び拡散反射成分を分離して、カメラ12により連続的に画像撮影する。
【0036】
ステップS3;
次に、連続的に撮影された正反射成分及び拡散反射成分それぞれの画像について、合成処理を行うことにより、アンチグレア基板1全体の正反射像及び拡散反射像を得る。この際、ライン光源13の位置は、カメラ画像の光量分布から認識することができる。
【0037】
また、アンチグレア基板1全体の正反射像は、連続撮影画像の反射光強度の高い部分を合成して得ることができる。正反射像エリアは、ライン光源13、カメラ12、アンチグレア基板1のそれぞれの位置から計算する。ライン光源13が動いた場合、常に明るいデータを上書きしていくことで合成する。
【0038】
また、アンチグレア基板1全体の拡散反射像は、連続撮影画像の反射光強度の高い成分以外の成分を合成して得ることができる。拡散反射像エリアは、正反射像エリアより一定距離離れたエリアとして求めることができる。
【0039】
ステップS4;
得られたそれぞれの画像に対し、フーリエ変換処理を行うことにより、正反射像及び拡散反射像の空間周波数スペクトルを得る。
【0040】
ステップS5;
得られた画像または空間周波数スペクトルを評価し、アンチグレア面1aにおけるムラを評価する。なお、アンチグレア面1aにおけるムラは、ステップS2で得られた画像を用いて評価してもよいし、ステップS3で得られた画像を用いて評価してもよい。また、アンチグレア面1aにおけるムラは、ステップS4で得られた空間周波数スペクトルを用いて評価してもよい。従って、ステップS3やステップS4は行わなくともよい。いずれの場合においても、正反射成分及び拡散反射成分それぞれの画像を取得して評価しているので、アンチグレア面1aにおけるムラを簡便にかつ正確に判別することができる。なお、得られた空間周波数スペクトルにおいて、アンチグレア面1aにおけるムラは、模様の有無により確認することができる。特に、アンチグレア面1aにおけるムラに周期性がある場合、周期性のあるパターン模様が観察される。そのため、ステップS1~S5の全てを行う場合、アンチグレア面1aにおけるムラを定量的に評価することも可能となる。
【0041】
以下、本発明に係るアンチグレア基板の評価方法の具体例について、実験例1~3を参照して説明する。
【0042】
実験例1~3では、上述したステップS1~S5を行い、アンチグレア基板1の評価を行った。実験例1~2では、目視によりアンチグレア面1aのムラが観察されたアンチグレア基板1を用いた。また、実験例3では、目視によりアンチグレア面1aのムラが観察されなかったアンチグレア基板1を用いた。なお、アンチグレア基板1は、その寸法が、150mm×250mm×1mmのものを用いた。
【0043】
図6は、実験例1~3において、ライン光源及びカメラを設置した位置を説明するための模式図である。図6に示すように、ライン光源13は、黒板ガラス11から120mmの高さに設置した。ライン光源13としては、蛍光灯(10W、長さ:300mm、スリット幅:5mm)を用いた。また、カメラ12は、黒板ガラス11から380mmの高さに設置した。また、カメラ12は、法線方向に対して40°傾斜した方向から測定するように配置した。なお、法線方向は、アンチグレア基板1の面方向に直交する方向である。カメラとしては、ホーザン社製、L-385を用いた(レンズ:焦点距離6mm、f値1.4)。
【0044】
図7は、図3に示すフローチャートのステップS2において、カメラ12により連続的に画像撮影することによって得られた画像を示す図である。このカメラ画像のサイズは、1024ピクセル×768ピクセルとした。また、カメラ画像は、アンチグレア基板1に対して、斜め上方より撮影しているため、台形補正を行ない、図8に示す画像を得た。なお、ライン光源13のスキャンは、アンチグレア基板1のアンチグレア面1aにおける中心から開始して1往復行なった。
【0045】
また、得られた画像において、ライン光源13の位置検出、正反射像の合成、拡散反射像の合成、空間周波数スペクトルの解析は、以下のようにして行った。なお、画像処理は、画像処理ライブラリ(OpenCV4)を用いて行った。
【0046】
ライン光源の位置検出;
ライン光源13を位置検出するに際しては、まず、図8に示す画像を、図9に示すグレースケール画像に変換した。次に、アンチグレアムラによる濃淡や、ゴミなどによるノイズを除去するフィルタ処理を行ない、図10に示す画像を得た。フィルタ処理に際しては、画像の膨張×3回、画像の縮小×3回(構造要素:3ピクセル×3ピクセル)行い、閾値70でカットした。次に、図11に示すように、図10に示す画像の画像幅×1/3の縦ラインX1と、画像幅×2/3の縦ラインX2における明るさ分布の中心点(明るさ中心位置)を求めた。次に、図12に示すように、求めた明るさ分布の中心点を結ぶ直線を求め、この直線の位置をライン光源13の位置(ライン光源位置)とした。
【0047】
正反射像の合成;
図13に示すように、上記のようにして求めたライン光源13の位置直線における幅3ピクセル分を正反射成分とし、図8における台形補正後の画像より正反射成分を抽出した。抽出した正反射成分を図14に示す正反射像画像に上書きした。上書きの条件は、元画像の各画素において抽出した正反射成分画素が明るい場合とした。
【0048】
拡散反射像の合成;
図13に示すように、上記のようにして求めたライン光源13の位置直線より20ピクセル分をカメラ側に平行移動させ、線幅を6ピクセルとした範囲を拡散反射成分とし、図8における台形補正後の画像より拡散反射成分を抽出した。抽出した拡散反射成分を図15に示す拡散反射像画像に上書きした。上書きの条件は、元画像の各画素において抽出した拡散反射成分画素が明るい場合とした。
【0049】
空間周波数スペクトルの解析;
図14で得られた正反射像画像及び図15で得られた拡散反射像画像について、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、フーリエ変換を行い、空間周波数スペクトル像を得た。
【0050】
図16は、実験例1で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。図17は、実験例2で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。また、図18は、実験例3で得られた拡散反射像の空間周波数スペクトル像を示す図である。
【0051】
図16及び図17に示すように、目視によりアンチグレア面1aのムラが観察されたアンチグレア基板1を用いた場合、周期性のあるパターン模様が観察された。他方、図18に示すように、目視によりアンチグレア面1aのムラが観察されなかったアンチグレア基板1を用いた場合、模様は観察されなかった。
【0052】
以下、アンチグレア基板1のような本発明のアンチグレア基板の評価方法で用いるアンチグレア基板について、より具体的に説明する。
【0053】
(アンチグレア基板の詳細)
本発明で用いるアンチグレア基板は、上記実施形態で説明したように、透明基板の表面上にアンチグレア層が設けられることにより、アンチグレア処理が施されていてもよい。
【0054】
透明基板の材料としては、ガラス、セラミックス、ガラスセラミックス、樹脂等の透明材料が挙げられる。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。この場合、透明基板には、風冷強化、化学強化等の強化処理がなされていてもよい。セラミックスとしてはサファイヤ等が挙げられる。また、樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0055】
透明基板の形状は、特に限定されず、例えば、略矩形板状とすることができる。透明基板は、略円板状等の形状を有していてもよい。
【0056】
透明基板の厚みは、特に限定されず、光透過率などに応じて適宜設定することができる。透明基板の厚みは、例えば、0.1mm~3mm程度とすることができる。
【0057】
また、透明基板は、表面に機能層を有するものであってもよい。機能層としては、アンダーコート層、密着改善層、保護層、着色層等が挙げられる。
【0058】
アンチグレア層としては、例えば、無機膜を用いることができる。このようなアンチグレア層は、透明基板上に、コーティング液を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。塗布方法としては、上記実施形態のように、スプレーコート法を用いることができる。もっとも、塗布方法は、スピンコート法のような他の塗布方法であってもよい。
【0059】
コーティング液としては、例えば、ゾル状の無機塗料が挙げられる。この場合、スプレーコート法やスピンコート法などのコーティング法によってゾル状の無機塗料を塗布し、乾燥させることにより、ゾル-ゲル法によって成膜することができる。
【0060】
ゾル状の無機塗料は、例えば、シリカ前駆体により構成することができる。もっとも、無機塗料は、例えば、アルミナ前駆体、ジルコニア前駆体、チタニア前駆体等により構成されていてもよい。これらの前駆体は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、無機塗料の溶媒としては、例えば、水、アルコール等を用いることができる。
【0061】
シリカ前駆体としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、アルコキシシランの加水分解縮合物(ゾルゲルシリカ)、シラザン等が挙げられる。防眩効果をより一層高める観点からは、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、それらの加水分解縮合物であることが好ましく、テトラエトキシシランの加水分解縮合物であることがより好ましい。
【0062】
アルミナ前駆体としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドの加水分解縮合物、水溶性アルミニウム塩、アルミニウムキレート等が挙げられる。
【0063】
ジルコニア前駆体としては、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0064】
チタニア前駆体としては、チタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0065】
また、無機塗料は、他の無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、ハフニア粒子、イットリア粒子等が挙げられる。
【0066】
アンチグレア層の平均厚みは、特に限定されない。もっとも、防眩効果をより一層高める観点から、アンチグレア層の平均厚みは、0.1μm以上、2μm以下であることが好ましく、0.15μm以上、1.75μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0067】
アンチグレア層の二乗平均平方根高さ(Rq)は、特に限定されない。もっとも、防眩効果をより一層高める観点から、アンチグレア層の二乗平均平方根高さ(Rq)は、30nm以上、500nm以下であることが好ましく、50nm以上、300nm以下であることがより好ましく、80nm以上、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0068】
また、アンチグレア基板では、上記のようなアンチグレア層が必ずしも設けられていなくともよい。例えば、透明基板の表面をエッチングすることにより、アンチグレア処理を施し、それによってアンチグレア基板が形成されていてもよい。また、透明基板の表面にフロスト処理、サンドブラスト処理、ウェットブラスト処理等の表面処理を施すことにより、アンチグレア処理を施し、それによってアンチグレア基板が形成されていてもよい。上記のいずれの方法においても、透明基板上の汚れ等に起因して、形成されたアンチグレア面の凹凸構造に形状バラつきが生じることがあるので、本発明の効果を享受することができる。
【0069】
フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、透明基板を浸漬し、浸漬面を化学的に表面処理することにより、透明基板の表面に凹凸を形成する処理方法である。特に、フッ化水素等の薬液を用いたフロスト処理は、被処理体表面におけるマイクロクラックが生じ難く、機械的強度の低下が生じにくいため、好ましい。
【0070】
サンドブラスト処理は、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気で透明基板の表面に吹きつけることにより、透明基板の表面に凹凸を形成する処理方法である。また、このようにして凹凸を作製した後に、表面形状を整えるために、透明基板表面を化学的にエッチングすることが一般的に行われている。このようにすることで、サンドブラスト処理等で生じたクラックを除去できる。エッチングとしては、フッ化水素を主成分とする溶液に、被処理体である透明基板を浸漬する方法が好ましく用いられる。
【0071】
ウェットブラスト処理は、アルミナなどの個体粒子にて構成される砥粒と、水などの液体とを均一に撹拌してスラリーとしたものを、圧縮エアーを用いて噴射ノズルから透明基板の表面に高速で噴射することにより、透明基板の表面に凹凸を形成する処理方法である。ウェットブラスト処理により透明基板の表面に形成される凹凸面の表面粗さは、主にスラリーに含まれる砥粒の粒度分布と、スラリーを透明基板に噴射する際の噴射圧力とにより調整することができる。ウェットブラスト処理においては、スラリーを透明基板に噴射した場合、液体が砥粒を透明基板まで運ぶため、サンドブラスト処理に比べて微細な砥粒を使用することができるとともに、砥粒がワークに衝突する際の衝撃が小さくなり、精密な加工を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…アンチグレア基板
1a…アンチグレア面
2…透明基板
2a…表面
3…アンチグレア層
11…黒板ガラス
12…カメラ
13…ライン光源
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